http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/10/organ-donors-funeral-expenses-nhs?CMP=EMCGT_111011&
日本。<生体腎移植>養子縁組間で5例 臓器売買事件受け調査
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111011-00000009-mai-soci
本土から合法化ロビーが集結し、自殺幇助合法化運動が盛り上がるハワイで、「“選択”は幻想」というタイトルの反合法化ウェブ・サイトが誕生している。尊厳死議論の“選択”が幻想であることは“無益な治療”議論が同時進行していることを考えると、一目瞭然だと私は考えている。
http://www.choiceillusion.org/2011/10/hawaii-assisted-suicide-is-still-not.html
英国で2015年までに40万人の子どもが比較的貧困状態に。絶対的な貧困状態に陥る子どもは50万から300万人も増加の見込み。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/oct/11/children-poverty-institute-fiscal-studies?CMP=EMCGT_111011&
オーストラリア首都特別区で子どの人権侵害の訴えが急増し、当局が対応しきれない事態に。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/rise-in-childrens-rights-complaints/2319414.aspx?src=enews
米国の反格差デモに関して、シカゴ・トリビューンにデモを「金持ち叩き」と捉えた「我々は金持ちに腹を立てるべきか?」というタイトルの記事。その中に「米国民は金持ちがその富にふさわしいかどうかを重視する。例えばビル・ゲイツやオプラ・ウィンフリーは富にふさわしいと考えられるために、金持ちであることで嫌悪されることはない」という1節がある。そう考える人は現在のビル・ゲイツとオプラ・ウィンフリーが何をしているか、ビル・ゲイツの音頭で米国の長者たちが各国政府の頭越しに世界人口抑制に取り組もうと合意(2010/6/9)を読んでみてほしい。
http://www.chicagotribune.com/news/opinion/ct-oped-1011-rich-20111011,0,5857841.story
6月に出たばかりの「日本の介護システム――政策決定過程と現場ニーズの分析」結城康博 岩波書店。
この本に、「介護保険情報」10月号の「論壇」で地域ケア政策ネットワーク研究主幹の池田省三氏が「『空想的介護保険論』からは何も生まれない」という論文を書き、噛みついている。:論文の内容についても思うところはいろいろあるけれど、一番不快なのは「こういう人を研究者とは呼びたくない」とか研究手法が誤りで研究「弱者」だとか、現場のケアマネから研究者となった結城氏に対してアカデミズムからの差別意識のようなものがチラついていること(私が勝手にそこに、アシュリー事件や医療に関する諸々について素人の私がエントリーで所感を述べると「お前なんかに何が分かる?」と逆上・反発してコメントでブッたたきにくる医療職の人や学者さんたちを重ねてしまうから、かもしれないけど)。それは、池田氏に学者として現場職員を見下す意識がある、ということでは? でも制度って、「現場を知ろうが知るまいが、論理的におかしいものはおかしいのだ」と放言し、アカデミックな高みから現場の人たちを見下してかかる学者・研究者だけが云々して作っていくものなんだろうか。さらに言えば、こんなに長年、業界の人なら誰でも知っている“厚労省の御用学者”をやってきた池田氏が「私はケアの現場を200以上は訪れている」と自慢するのを読めば、いや、しかしそれは「200以上しか訪れていない」ということなんであって、それこそ一体どういう研究者よ? と、ぶったまげるし。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4000242814?tag=hatena-bu-22
ちなみにAshley事件を論じる学者さんたちに私が言いたいことはこちら ↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/61778427.html
3月29日の補遺でtu_ta9さんの掲示板を拾って、
次のように書いて以来、ずっと頭に引っかかったまま、うまく考えをまとめられずにいる。
tu_ta9さんが原発事故に関連して「障害児を産みたくない」というような言説について興味深い掲示板的エントリーを立ち上げている。: そのやりとりで出ている「癌のリスクを言うのはよくて障害リスクを言うのはいけないというのも差別的ではないか」という指摘を、グルグル考えている。反論する理屈が見いだせないまま、ふっと頭が飛躍して、そのうち出生前遺伝子診断で発がんリスクの高い胚は障害リスクの高い胚と同じようにはじかれていく時代 がくるかもしれない……みたいなことを、先に考えてしまった。
http://tu-ta.at.webry.info/201103/article_12.html
この問題について
8月10日にSOSHIRENがアジア女性資料センターと共催で
以下のおしゃべり会を開いている。
8/10おしゃべり会 脱原発! どう考える?
「母だから」「子どもに障害が……」
おしゃべり会では最初に
福島原発事故の後おおしばよしこさんらが原発の危険性を訴えるために制作した
アニメーション「みえないばくだん」を鑑賞。
「みえないばくだん」のYouTubeはこちら(約10分)
その後のおしゃべり会の内容から印象に残った部分を、
最新号のSOSHIRENニュース(9月29日発行NO.298)から以下に。
そもそも、障害の負のイメージは真実でしょうか。脱原発運動は「原発は安全」を疑って、神話だと見抜きました。「障害は不幸」「障害はあってはならない」も、疑ってみるべきだと思います。いつの時代にも障害児は生まれるし、生まれてからの障害もゼロにはならない。でもそれは、汚染物質やウィルスで傷ついても生き延びる、人間の適応力、生命力ではないでしょうか。私はむしろ希望だと思います。
脱原発の言説に障害者差別の意図がなくても、原発の怖さを障害児の出生で表現することは、結果として差別を深める恐れがあることを知ってほしい、またそうならない方法を考えたい。障害者について、実際に障害をもち暮らす人についての情報、障害者が生きやすい状況をどうやってつくるかという情報が発信されるといいと思います。実際の障害者は泣き続けてはいません。
米津知子さん(SOSHIREN)
私が反発を覚える「お母さんだから」というのは、「母だから」と言っている当のお母さんたちではなく、それを利用してレッテル貼りをしている周りの存在に違和感があるんだと思います。
母親を持ち上げるマスコミや脱原発の人は、自分の想定内の母親像だと耳を貸しますが、そのステレオタイプから外れると急に否定的な評価をします。子どもを守る美しい母というイメージと、わがまま、感情的、難しいことは分からないというネガティブなイメージとは鏡の両面です。
大橋由香子さん(SOSHIREN)
タンポポ舎も「お母さんにもよく分かる放射能講座」を提案している。お母さんはそんなバカなのか。お父さんは何をやっているのかと言いたくなるくらい意識が20年前と変わらない。中山千夏さんが「原発推進派はみんな男、反対派も男、女はみんなお母さん」と書いていたが、男の運動はお母さんを利用している。
会場からの発言
支援活動と共に当時者運動に詳しい男性保護者の方と話をしているときに「不当に健康被害を受けないために」と言われ、自分でも腑に落ちた。
(中略)
子どもの生存に関して、行政が責任をとらず社会が関心を払わないという根本的な問題があり、今回保護者(とくに女性)が「子どもを守る」役割を無理やり担わされているのだなと思った。
(中略)
いま、必要なことは対話だと思う。表面上対立しているように見える意見でも、よくよく話していったら根本は「生きる価値がない人なんていない」「何かを押し付けられることが嫌だ」という思いで共通しているかもしれない。
そうして最低限共有して、弱者にしわ寄せがこない社会の仕組みをつくっていきたい。
疋田香澄さん(子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク福島支援部門)
この中で語られている「"母"が利用されている」ということ、
利用されているだけだから「都合のよいステレオタイプに当てはまらないと
即座に否定の対象になる」ということが
「にもかかわらず明るく生きる姿に勇気をもらいました、ありがとう」などの言葉に象徴されるように、
メディアがそのように描き、世の中が暗黙のうちに障害児・者と家族に求めている
「社会のオアシス」役割のステレオタイプと、その鏡の表裏として、
権利を要求するや一転して叩かれる障害者。
Ashley事件、Katie事件、Angela事件などで繰り返された
「どんな苦労もいとわず、ここまでしても子を家でケアしようとする美しい親の愛」ステレオタイプと
それを批判するや、叩きに利用された「それをイデオロギーで邪魔立てする障害者運動」ステレオタイプ。
さらにいえば、臓器移植医療や生殖補助医療の分野の医師らばかりが
「苦悩する患者」にやたらと共感的であること、
その一方で
脳卒中の後遺症や重い障害に「苦悩する患者」の「苦悩」は
医療の世界から世論に向かって共感を大きな声で説かれることがないまま
そうした患者の命や生活を支えるリハビリテーションが切り捨てられ、
十分に支えることが可能な医療介入までが「無駄な延命」であるかのように
メディアに言いなされていくことにも、
これは通じていく構図なのだと思う。
強い者が強い側の利益をゴリ押ししていくために
利用するのが「美しい愛」という情緒のマジックであるならば、
それに対して弱い者の立場で異議を申し立てていく時には
いかにそれが魅力的で即効あらたかに思える戦術であったとしても、
それが問題を摩り替え、問題のありかを不分明にしてしまう手口である以上、
易々と手を出さない節度を持つこと。
その単純な分かりやすさ、伝わりやすさに安易に飛びつくのではなく、
そこにある、複雑でいろいろと絡まり合った問題のありかに
苦労して分け入り、手間をかけてあれとこれとを丁寧に選り分けて
それぞれの所在をきっちりと整理する努力が必要なのだろう、と思う。
そうした努力から出てきたのが
ここでは「不当な健康被害を受けないために」という表現なのだろうし、
コトの本質を突いて問題のありかを分明にする表現というものは
たぶん、いつだって、こんなふうに余分な湿り気を寄せ付けず、
さらりとシンプルに爽やかなんだなぁ……とも。
http://www.globalnews.ca/timeline/6442457485/story.html
上の記事から、ちょっと特記しておきたい情報として、重症障害のある12歳の娘を「死ぬことが本人のため」と殺したRobert Latimerに去年12月6日にfull parole が認められた、と。以下のエントリーで拾ったように、2008年に彼はすでに仮釈放になっている。その際に、2010年12月8日までの仮釈放とされていたので、上の記事が取り上げているように「最近カナダでは自殺幇助事件の無罪放免が続いている」事例には当たらない。またLatimer事件は慈悲殺事件なのだから、もともとこの記事が扱っている自殺幇助の問題とは区別すべき。なぜ同じ扱いにするのか?
母親による障害児殺し起訴同日かつての障害児殺しの父親Latimer保釈(2008/3/7)
Latimer事件についてHendersonが批判(2008/3/10)
重症児の娘殺したLatimer「裁判所は正直に」と(2008/3/23)
来年5月31日から6月2日、シカゴで International Society of Advance Care Planning & End of Life Care カンファ。
http://www.acpelsociety.com/conference/
メディケアの高齢患者の3分の1が死ぬ直前に無用な手術を受けている、との調査結果。:医療費を高騰させている要因は、本当によく言われているように高齢患者や障害者の延命治療なのかどうか、ここでもまた「ない」情報は「ない」ことそのものが見えなくされてしまっている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/235680.php
【関連エントリー】
日本の尊厳死合法化議論を巡る4つの疑問(2010/10/28)
ナーシング・ホームによってインフルエンザ・ワクチンが不足している。ナーシング・ホームは事実上、白人向けと黒人向けに分かれる傾向があり、不足しているのは黒人のナーシング・ホーム。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/235568.php
核戦争防止国際医師会議から日本政府に出された「原発災害に関する勧告」。
http://ippnweupdate.files.wordpress.com/2011/08/ippnw_pmkan082211.pdf
[WAN的脱原発](10)「難しいことはわからないけど、母は強い? 『産むのが怖い』この時代に」by 大橋由香子。「何よりひっかかるのは、3・11以降とくに、母といえば、子どもを第一に考え、自分を犠牲にすることも厭わず必死に努力、健気にがんばるというイメージが 流布したこと。現実にはいろんな母親がいるし、そもそも母という属性とは別に、さまざまな仕事をしていたり家事専業だったり、家族や子どもとの関わりも雑 多であるにもかかわらず、何か一つの鋳型に入れた感じになる。そして母性愛とセットのようにして出てくるのが「難しいことはわからない、無知な母親」というイメージなのだ。」
http://wan.or.jp/reading/?p=3964
米国の教育改革で教師にも能力給を導入すべきだという議論が出ていることに対して、それは違う、との反論。:能力給といえば米国ではビル・ゲイツが筆頭で旗振ってるけど、今朝の朝日新聞で大阪維新の会の誰ぞが「格差を受け入れてでも国際競争力のあるエリートを育てる教育を」との趣旨で、「ダメ教師がのさばらないよう」能力給に触れていたけど、教師の能力とは余人では代替えの利かない、えも言われぬ、「持ち味」とか「芸風」のようなところがあって、数値で評価できるものじゃないと思うんだけど、こういうことを言う人は、数値で評価できる能力だけを教育の成果に期待しているんだろうし。それもまた極めてビル・ゲイツ的。……というよりも、ゲイツ財団に象徴されるグローバル強欲ひとでなし金融ネオリベ慈善資本主義の世の中が、各国政府に、生き残りのためにはこうして自国民を見殺しにしてでも国際競争に生き残っていくべく、ゲイツ財団的な能力と効率至上の価値意識に乗っかっていく以外に術がない場所へと急速に変貌しているんだと思う。
http://www.washingtonpost.com/blogs/answer-sheet/post/why-merit-pay-for-teachers-sounds-good--but-isnt/2011/10/09/gIQAVb72YL_blog.html?wpisrc=nl_cuzheads
【関連エントリー】
持ち味と芸、そして「かけがえのなさ」(2007/11/17)
ゲイツ財団の米国公教育コントロール(2011/5/2)
きらら理事長、高谷清氏の連載「言葉に見る人間の心 ⑥」を読ませてもらう機会があり、
ああ、こういう深い眼差しを親子に向けることのできる医師もおられるのだ、と、
またそれが重心医療の医師であるということが、さらに嬉しかった。
協力
医療をおこなうには、いろいろの手技が必要となる。注射や導尿などの手技がある。心身の重い障害のある人は自分で食事を摂れないのはもちろん、食事介助しても流動食や水分もなかなか呑みこんでくれないし、無理をすると気管に入り肺炎をおこすことになる。
そこでやむをえず、チューブ栄養(経管栄養)になる。鼻から細いチューブを胃まで通す。一日に何回も栄養を入れるので、抜かずにばんそこうで留めておく。このチューブがなにかの拍子で抜ける。かんたんに挿入できる子もいるが、変形や筋緊張があってうまく入らず、このときお母さんにやってもらうと、かんたんに入ることがある。
医療者はいろんな人に、その行為をしなければならないが、お母さんは自分の子だけだから慣れているのだ、と思っていた。しかしお母さんが入れる様子をみているとどうも違うのである。チューブ栄養が必要なのは障害が重い子が多く、周囲のことは何もわかっていないと思われている。呼びかけても反応がないし、身体にふれるとその接触に対して反応しているだけのようにみえる。しかしお母さんが挿入しているときには、身体がそれほど緊張しないし、気持ちが安心しているように見える。チューブの挿入を受け入れているのである。医療者が一方的に挿入しているのとは異なり、母と子が協力しあって挿入が可能となっている、と感じた。
こうした手技やさまざまな医療処置は、「おこなう人」と「おこなわれている人」という関係のようにみえるが、実は双方が協力しあって、その目的が実現しているのであると実感した。
医療、教育、育児、福祉などは、医療者、教師、親、介助者が一方的に「する」行為ではなく、「されている」とみえる当事者との、「協力」で成り立っている。
「協」という字は、「力」が三つから成り立っているが、「力」は農具の「すき」からきており、「農耕に協力する」意味であり、また「」と「十」で「会意」とするようである。医療、教育、育児、福祉はする人の一方的な行為でなく、一見「される」とされている人との双方の協力の行為であることを肝に銘ずる必要があると感じた。
参考 白川静「字統」「字訓」平凡社
これと同じことを、私は母子入園で初めてボイタ法を習った時に娘に感じたことがある。
入園中、赤ん坊の頭を苦しい位置に押さえつけて本能的に暴れさせ、その試行錯誤のあがきの中から正しい寝返り動作を身に付けさせるというボイタ法の訓練には、私は精神的な影響の方が気になって、正直なところ、あまり信頼を持てなかった。母親との信頼関係を形作るうえで一番大切な時期にこんな訓練をさせて、取り返しのつかない傷を心に負わせてしまったら、いったい誰が責任をとってくれるんだ……?
けれど、母親のそんな懸念をよそに、むしろ、ふんが、ふんが、と鼻を膨らませてがんばってみせたのは、当の本人だった。これには内心、度肝を抜かれた。最初の数回こそパニックしたものの、すぐに泣かなくなった海は、一歳足らずの分際で、ちゃんと意欲的にリハビリに取り組もうとしていたのである。人間が何かを本能的に察知するということはきっと、頭で納得する以上にすごいことなのだ。
「海のいる風景」P.75-76
実はこのエピソードの最初の段落と次の段落の間には、とっておきの裏話がある。
最初、私のボイタ法に対する不信はとても強くて、
途中で母子入園をやめて帰ろうかと本気で悩んだほどだった。
毎日、決まった時間にみんなと一緒に訓練室に行きはするものの、
生まれて以来ずっと病院暮らしみたいだった1歳にも満たないミュウは
初めて体験する多くの人間の気配という、外界からの強すぎる刺激を
シャットアウトして自分の中に閉じこもり身を守ろうとするかのように
訓練室に入るや、すとんと眠り込んでしまう。
まずは雰囲気に慣れるまで、ゆっくり様子を見ようと
私は訓練開始を急ごうとは思わなかった。
一方、当時のボイタ法というのは
「早期発見・早期療育」の掛け声のもと「奇跡の療法」だと信じられていて、
訓練室は「私が歩かせてみせる!」という母親たちの気迫で張り詰めている。
のんびりと隣の休憩室で子どもを寝かせている私には
「いったい何しに来た?」「訓練室の雰囲気がダレる」などの非難が飛び始める。
自分が我が子のリハビリに命をかけるのは勝手だけど、
他人が子どものペースを尊重する方針にまで口を出される筋合いはない。
そういう人には、ちょいと水を差してあげた。
「あのね、調べてみたら、リハビリテーションという学問そのものが、
日本に入ってきて、まだせいぜい20年とか30年とか、そういう話なんだよ。
いま私たちがやれと言われて素直にやっている、こういうのが
今から10年も経ってみたら実は間違いだった……なんてことだって
あり得ないわけじゃないと思うよ。そう簡単に奇跡なんか起きないよ」
(ボイタ法については実際、私の予言通りになった。
この辺りのことについては「現代思想」2010年3月号で
杉本健郎、立岩真也両氏の対談が取り上げている)
そんな鬱屈を抱えていた頃、
ミュウのバギーを押しての夕食後の散歩で
がらんとした外来のあたりをウロついていたら、
向こうから小児科医の一人がこっちに向かって歩いてきた。
まだ一度受診しただけで、ちゃんとお話ししたこともない。
いかにもセカセカと忙しそうでもある。でも、その時の私はたぶん
もう誰かに話さないではいられないだけ満杯になっていたのだと思う。
「先生、ちょっとご相談したいことがあるんですけど」
自分でもびっくりするくらい真っすぐに声をかけてしまった。
忙しそうに見えたS先生は「じゃぁ」と
そのまま小児科外来に招き入れてくれた。
さし向いに座るや、私はしばし、
母子関係を作るべき大切な時期に母への信頼が揺らがないかとか、
心はどうなる、本当にそれだけのリスクを侵すだけの効果があるのか、など
ボイタ法に迷い揺らぐ気持ちを堰が切れたようにぶちまけた。
先生は途中で遮ることなく(ぶちまける迫力に口を挟めなかったのかもしれないけど)
最後まで聞いてくれてから、思いがけないことを言った。
「この訓練をやって、本当に効果があるかどうか、
お母さん、正直なところ僕にも分からない」
は?
「たぶん本当のところ、誰にも分からないと思う。
今はこれしか他にやってあげられることがないから、とりあえず、
これをやってみようというのが実際のところかもしれない」
はぁ、やっぱり、そういう話で……。
「でもね、お母さん、僕は思うんだけどね、
お母さんが自分の辛い気持ちを抱えながら、
ミュウちゃんのために、と思って押さえつけて訓練をやる、
その思いはミュウちゃんにはきっと伝わるはずだって、
僕はそう信じたいと思うんだよ」
その後、私はS先生との間に、なかなか味のある信頼関係を築かせてもらうのだけれど、
本当の意味で私にとって先生との「出会い」となったこの時に、
先生がすぐに時間をとってくれたこと。
私の思いを正面から受け止めて聞いてくれたこと。
「正直わからない」と率直に本当のことを話してくれたこと。
この3つは私たち親子の運命を変えてくれたと、今でも私は思っている。
この3つがあったことの先に出てきた
「ミュウちゃんには伝わるはずだと信じたい」という先生の言葉は
私の迷いをすぱんと断ち切ってくれた。
先生が「伝わるはずだ」と思うなら
母親である私は「伝えてみようじゃないか」と――。
そろそろ娘も雰囲気に慣れてきていた。
「奇跡を起こしてみせる」オーラが張りつめ、誰も余計なことは一切しゃべらない訓練室で
私はいつも通りにミュウに話しかけ(これは常時2人分の会話を一人でしゃべっていることを意味する)、
訓練の間はミュウへのエールとして必ず「おかあさんといっしょ」の歌を歌った。
するとウチの隣の訓練台の人も息子のために家からカセットデッキを持ってきた。
そのうち少しずつ訓練の時間帯にも親同士が普通に会話を交わすようになり、
やがて和気あいあいと母親同士がジョークを飛ばしながら
それぞれの子の訓練に励む訓練室になった。
そんな中でミュウは
頭を苦しい位置に押さえつけられても泣かなくなり、
何を求められているのかを一歳児なりに探り始めていた。
それは押さえつけている手からも、娘のクソ真面目な顔つきや目つき、鼻息からも
私にはしっかりと伝わってくる手応えだった。
まさに高谷氏が書いている「協力」――。
私の思いはS先生が言った通りミュウに伝わり、
ミュウは見事にそれに応えようとした。
そして、
海が自力でひょっこりと初めての寝返りを打って見せたのは、母子入園を終えて家に帰った日の夕方のことだった。
それまでは、いいところまではいくものの、最後の一山を越えられずに元に戻っていたのが、何のはずみか、その時はひょいっと簡単にでんぐり返ってしまったのだ。突然、目の前の景色までくるりと向きを変えたのに自分で仰天して、「な、な、なぁ~にが、起こったんだぁ……?」と、海は頓狂な顔で辺りを見回していた。
「海のいる風景」P.75
その日、達成感の旨みというやつを生まれて初めて知ったミュウはしっかりと味をしめ、
その後は放っておいても一人でせっせと寝がえりにチャレンジしては"一人リハ"を繰り返していた。
当然ながら、寝返りはどんどん上手になっていった。
あの日もしもS先生が
高いところから母親を「指導」しにかかってくるような医師だったら、
私は不信感をふっきることができず、
ミュウにもあの日のとてもスペシャルな寝返りは
きっと起こらなかったのではないか、という気がする。
子と親と、
そこに「親の慣れ」ではなく、親子の「協力」を見ることのできる
深い人間理解のまなざしをもった医師が寄り沿うことによって初めて、
子と親と医師との「協力」によって起こすことのできる“奇跡”――。
http://vtdigger.org/2011/10/06/%E2%80%98death-with-dignity%E2%80%99-bill-heads-for-renewed-vermont-debate/
本土から自殺幇助合法化ロビーが続々とハワイ州に。
http://www.hawaiireporter.com/oops-they-did-it-again-mainland-suicide-law-proponents-back-in-hawaii/123
熊本大学に「重症心身障がい学寄付講座」というのが出来ている。:これ、前にも某MLで教えてもらったような気がするのだけど、昨日また別のところから教えてもらった。
http://www.kuh.kumamoto-u.ac.jp/education/department/jyuusyou_kifu.html
で、この熊本大学の講座が中心になって「アジア太平洋地域重症心身障害円卓会議」というものが立ちあげられて、10月20日、21日に京都で第一回の会議を開催する。詳細は以下の日本小児神経学会のサイトから。あー、ただし言語は英語だそうです。ここで、ちょっと躓く……。この会議、どこに向かっていこうとするのだろう……?
http://child-neuro-jp.org/info2/other/other.html
昨日のジョブズ氏の兆報で、フランスの週刊誌が「ゲイツ死す」と誤報を打ったらしい。
http://www.timeslive.co.za/lifestyle/family/2011/10/06/french-weekly-mistakenly-announces-bill-gates-dead
そのゲイツ氏、この前ナイジェリアに行って議会の要人に「2年間でポリオ撲滅します」と約束させていたけど、やっぱ信じられなかったのかしら。「2012年のうちに撲滅に成功した州には50万ドルあげるよ」と賞金まで。:どうも、この人の発想にはこういうのが多い。中国でエイズ検査キャンペーンをやった時も「検査受けたらゼニあげるよ」だったし。
http://www.vanguardngr.com/2011/10/polio-eradication-bill-gates-to-give-states-500000-award/
http://allafrica.com/stories/201110070226.html
自治医大学長・日本医学会会長の高久史麿氏と北里大学精神科教授の宮岡等氏の対談に、
精神科医の斎尾武郎氏と医学雑誌編集者の栗原千絵子氏が司会の立場でからんでいく……
というか、むしろ勇猛なツッコミを入れていく。
誰が発言しているかを意識しながら読んでいくと面白い。
もちろん門外漢の私に議論の全てが分かったわけではないけど、
例によって独断と偏見でメモ的に。
プライマリケア医、産業医だけでなく、地域の精神科医、総合病院の精神科医もが
まずは精神障害・疾患を診断できる基本的な知識とノウハウをしっかり身につけて、
適切な医療に繋ぎ連携できる体制を作ることの必要とか、
総合病院の精神科ベッドが減って、
地域に精神科クリニックが“雨後のタケノコ状態”になっている現状とか
(「薬屋さんみたいなクリニックがやたらとできている」と
つい最近、私も薬屋のニイチャンに教えてもらった)
興味深い話もいっぱいあるのだけど、
この本を読んで一番印象的だったところを3つだけ。
① 診断姿勢のいい加減さや薬物療法への過剰な傾斜、薬物療法のエビデンスの欠落、
「うつ病」概念の拡大、過剰投薬(“薬漬け”にする)、製薬会社と研究者や医師の癒着、
医学雑誌の利益相反の危うさ……などなど、「素人が大嘘八百を流しやがって」と叩かれつつも
インターネットで多くの人が警鐘を鳴らしてきた精神科医療の問題点の数々は、
当の精神科医療の界隈でも実はちゃんと事実認定され問題視されている、という事実――。
例えばP.41では、宮岡氏が
「ここのところ、いわゆる向精神薬の大量服用による自殺が増えたと言われています」と言い、
2010年9月に厚労省の自殺・ウツ病対策プロジェクトチームから
「過量服薬への取り組み―薬物治療のみに頼らない診療体制の構築に向けて」という
報告書が出たことが語られる。
特に印象的な話として、
プライマリケア医がうつ病を診断する時の方が、
自分は専門外だからという自覚からスタンダードにのっとって慎重な対応をしていて、
トンデモな診断によりトンデモな多剤処方や大量処方をしている事例が目につくのは、
むしろ精神科医の方だといった指摘が様々な形で繰り返しされているし、
「ディジーズ・マンガリング」の傾向についても懸念が共有されている。
これは、病気でもないものを病気に仕立てて不安をかきたてるマーケッティング戦略。
簡単に言えば、例の「お医者さんに、相談だっ」のことですね。
こういうCMについては薬害オンブズパーソン会議が3月に問題にしていたし、
当ブログでも、いくつか関連エントリーがある ↓
「現代医学は健康な高齢者を病気にしている」(2009/3/8)
「老い」は自己責任で予防すべき「病気」であり「異常」であるらしい(2009/9/21)
これらはみんな栗原氏が言っているように
「こうした問題の背景には『商業的な』啓発という側面」(P.53)があるということであり、
実際、そういう利益誘導のために発言するセンセイ方がおられることも
この座談会では共通認識になっている。
それでも、ではどうするか……という話になると、
情報公開を義務付けることの必要などが言われつつも、
でも製薬会社のカネがないと研究は進まない以上、
情報を受け止める医師の側が癒着情報リテラシーを持つように、といった、
とたんに腰の砕けたグズグズの話になっていく……気がする。
② なにより個人的に最も切実に響いた個所は、
精神障害者が身体の病気になった時の精神科と身体科の連携の問題。
これは私自身が今だにトラウマを引きずっている悪夢のような体験から
重症重複障害児・者にもそのまま当てはまると痛感しながら読んだけど、
それはたぶん、ここに出ている認知症を始め、特別な配慮を要する障害や、
患者数の少ない病気の人が持病以外の病気になった時の医療にも言えることだろうと思う。
以前に以下のエントリーで紹介した
英国のオンブズマンの報告書も指摘している、実際、命にかかわる大問題――。
「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(英)(2009/3/3)
私の体験は、上のオンブズマン報告書のMarkのケースのエントリーでちょっと書いたけど、
「腸ねん転の重症重複障害児」を巡って入所施設と総合病院の外科・小児科との連携は
「送りました」「引き受けました」でしかなく、
あとは全てが医療機関間と診療科間の力・上下関係と、
各機関、各診療科、各医師のメンツとプライドの問題となってしまう。
患者は障害について無知な医療スタッフによって無用な苦しみを強いられているのに、
家族の言うことは「素人が何をエラソーに」とバカにして聞く耳を持たないし
分からないくせにメンツとプライドが邪魔をして知っている側に聞くこともしない、
知っている側も送ってしまえば口を出せない垣根が張り巡らされて、それはつまり
「患者本人のために何がよいかを正しく見つけ出そう」という姿勢が誰にもない、ということ。
あれでは本当に命にかかわる。
死ななければいいという問題でもないし。
宮岡氏が「精神疾患に関して一番偏見が強いのは、実は一般の方ではなくて」
精神科医以外の医療スタッフ」(P.87)と指摘しているのは、
重症児を巡っても全く同じだった、というのが私の切実な体験。
「重症児なんか、いつ何が起きるか分からないから、
とにかく余計なことは一切やりたくない」ため、
腸ねん転の手術直後に痛み止めの座薬すら入れてくれない。
重症児の細い血管に点滴を入れるだけの技術を持たない医師は、
中心静脈にラインを取る決断も経管栄養の決断すらせず放置。
「これでは、なぶり殺しにされる」と私は本気で恐怖した。
ああいう垣根だけは、早急に何とかしてほしい。
③ PUS(一般人の科学理解)という概念が
もともとイギリスでゲノムサイエンスが始まった時に言いだされたことについて
栗原氏の解説が、書かれているのとは逆の意味で私には興味深かった(p.155)のだけど、
逆の意味で、というのは、
どうしてもしゃべりすぎてしまう司会の斎尾氏が19ページで
オルテガ・イ・ガゼットという人を引用して言っているように、今は逆に
「科学者こそが自らの専門性の殻に閉じこもり、自分よりもすぐれた審判をいっさい認めない、
救い難い存在としての大衆である」という指摘がまさにツボを突いている、
科学とテクノの人たちの偏狭で薄っぺらな価値意識と人間観・人生観が
そのままPUSで一般人に拡散・コピーされていってるのこそが危うい、と思うから。
最後のあたりで宮岡氏が指摘している
「今の医学教育では、卒前に、
『自分が社会の中でどういう役割を果たすべきかを考えないといけない』という教育自体が
ないですよね。だから、医学部を卒業して臨床の現場に出ても、
ほとんど分かっていません」(p.176)というのも、
結局は、そういうことに繋がっていくんじゃないのかなぁ……。
http://www.businessinsider.com/jack-kevorkian-auction-paintings-2011-10
オーストラリアで電車にはねられて亡くなった3歳の男の子の両親が臓器提供に同意。「これで息子の命は無駄にならない」と。:こういうのが“まだ”トップ扱いでニュースになっていることに、ちょっとほっとはするものの、それにしても命ってのは、その人が「生きた」ということだけでもって既にして「無駄にはなっていない」と考えるのが正しい……という類のものだと思うのですが――?
http://www.canberratimes.com.au/news/national/national/general/parents-donate-young-sons-organs/2315166.aspx?src=enews
米ウォール・ストリートのデモ、全米のみならずカナダ、ヨーロッパへ拡大。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/04/wall-street-protest-movement-spreads?CMP=EMCGT_051011&
上記デモで、ガウタマ・シンラン・ソリドゥスさんのブログに、とても象徴的なYouTube動画がある。テラスからシャンパン片手にデモを文字通り「高みの見物」しているウォール街のエリートさんたち。:でも、このエリートさんたちだって、もっと高いところからもっとバカ高いシャンパン片手に見降ろされているんだと思うんだけど。うん。たぶん、クラウド・コンピューティングの上に着々と準備されつつある世界政府コントロール・ルームという”雲”の上から。
http://blogs.yahoo.co.jp/solidussolidarity/35226499.html
そのクラウド関連で、名前を聞くだに心の中が真っ黒な不安で塗りつぶされそうなほど恐ろしいカンファが11月に立ちあげられるみたい。その名も、Pharma Cloud World Europe。立ち上げるのは Health Network Communications。これがどういう団体で、どこに繋がっているのか……。コワくて、すぐには検索してみる勇気がない……。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/235455.php
こっちもなんだかなぁ……あれこれと妄想が広がってしまいそうなカンファ。Appropriate Healthcare For Developing Countries。これも今回が初。立ち上げたのはthe Institution of Mechanical Engineers。欧米社会の諸々を前提に作られた医療機器が途上国に送られているけど、道路もロクに舗装されていない国で救急車や、クリニックに電圧が違う透析機なんかをもっていって何の役に立つのか。もっとカネがかからない、その土地の生活に応じた機器や医療のやり方を工夫しないと、という話らしい。:これはカンファがコワいんじゃなくて、こういう話から透けて見えてくる現状というか実態というか、に、やっぱりワクチンの構図を思わせられるのがコワい。実際に途上国でどのように命が救われているかどうかではなく、大事なのは実は途上国には売れる、途上国支援だと言えばカネが集まり回る、ということなんでは、というような……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/234034.php
Appleの創設者で元CEOのSteve Jobs死去。56歳。Bill Gatesを筆頭に各界著名人の弔辞コメント。:56歳は若いけど、科学とテクノの億万長者もやっぱり普通に死ぬんだということに、なぜともなく安堵したりして。
http://www.macobserver.com/tmo/article/apple_co-founder_steve_jobs_passes_away_at_56/
http://www.macobserver.com/tmo/article/bill_gates_i_will_miss_steve_immensely/
ジョブス氏死去のニュースで頭に浮かんだのは、遺伝子診断でパーキンソン病になる確率が高かったのを気に病んで、治療法研究に大枚を投じ、予防のために生きると決意していたGoogleの創設者のこと……だったんだけど、こちら、いわゆる「消費者直結型DTC」の遺伝子診断の精神的な悪影響に関する研究。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/235452.php
こんな話も ↓
遺伝子診断、無用のストレスが体に悪いだけ(2008/9/19)
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)
新生児の遺伝子スクリーニングの“コラテラル・ダメージ”、“発症可能性”に振り回される親たち(2010/12/10)
英国のNottinghamshireで自治体がテレケア・サービス提供へ。:テレケア(遠隔介護)とは、要介護者とその周辺環境をセンサーだらけにすること?
http://www.guardian.co.uk/social-care-network/2011/oct/05/nottinghamshire-council-telecare?newsfeed=true
米国のテレケアについては去年、書いたことがある ↓
テクノロジーによる遠隔介護支援システム(米国)「介護保険情報」2010年9月号
その記事は、こちらと合わせ読んでもらったら面白いと思うのだけど ↓
米国で認知され始めた「介護の力」「介護保険情報」2011年2月号
あと、関連かなと思うエントリーは ↓
「サイボーグ患者宣言」(2008/6/19)
「患者の手を握って励ます人造の手ロボット」を考えた(2008/11/4)
「尿吸飲ロボ」から“QALY時代の排泄ケア”を想像してしまった……(2010/2/20)
「洗車機とUFキャッチャーでオムツ交換ロボットできる」と言う工学者の無知(2010/4/5)
クローン技術でヒト万能細胞作製…米チーム(日本語記事)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111006-00000120-yom-sci
知的障害、受胎時に父親が年を取っていたというケースが多い?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/235459.php
もとアラスカ州知事、お茶好きな人たちのアイドルPalinさんは大統領選には出馬しないそうです。
http://www.canberratimes.com.au/news/world/world/general/palin-will-not-run-for-president-in-2012/2315188.aspx?src=enews
http://www.guardian.co.uk/world/2011/oct/06/sarah-palin-not-run-president?CMP=EMCGT_061011&
アメリカのナーシング・ホームが入所者をホームで治療するか病院に送るかの判断は、その人がどういう保険に入っているかが左右する。:でもって、その人がホームで治療されるのが幸せか、病院に入院するのが幸せかを左右するのは、たぶんホームのケア体制と姿勢、受け入れ側の病院でその人の治療に当たるスタッフの体制と姿勢では、と。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/235453.php
メディケアの患者が脳卒中や骨折で入院したら、退院後はナーシング・ホーム送りになる確率が高い。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/235445.php
国家戦略会議でTPPを議論 来週にも初会合 藤村長官が表明:昨日のエントリー関連(かも)。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111005-00000520-san-pol
即、「あ、あのエントリーで書いたGM農業の話だ!」 頭にピンポン!と音を立てて電球が灯った ↓
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
この件については、
実は06年に「介護保険情報」誌の連載の仕事で医療ツーリズムについて調べた際に、
既にインドの農夫の自殺について、以下のように書いたことがある ↓
欧米のお金持ちが優雅に療養するアポロ病院から程遠い、国民の3分の1が暮らすとい うインドの田舎からは、こんなニュースが聞こえてくる。インドの農家も最近では国際競争に晒されるようになり、競争力をつけるには、アメリカから高価なバ イオテクの種や肥料などを買わなければならない。しかし、その一方でアメリカが自国の農家に巨額の助成を続けるので、綿の価格は下落。インドの零細な農家 が生き残るには高利貸から借金を重ねるしかなく、かんがい施設も災害保険も不備な中で、ひとたび娘の結婚や不作の年があれば完全なお手上げ状態だ。 2003年には17000人以上の農夫が自殺し、その後も続いている(NYTimes9月19日)。
前出のInternational Herald Tribuneの記事によると、インドでは簡単に治療できる下痢で年間60万人が命を落としている。結核で死ぬ人が年間50万人。人口1万人に対する医師 の数を比較すると、イギリスの18人に対して、インドは4人。もっと自国民の健康増進に力を入れろ!……と、インドのお医者さんたちは怒っている。
もっともな怒りだと思う。
「グローバルな新トレンド 医療ツーリズム(「介護保険情報」06年11月号)
そこで、今回「アグリビジネス」という言葉と出会ったのを機に、
農業バイオテクノロジー企業の最大手モンサントについて、
YouTubeに出ている情報を眺めてみたところ、
06年に上記の記事で大雑把な捉え方で書いたインドの農民の自殺の背景に
モンサントのGM種子と、その特許戦略があるとの詳細が出てきた。
モンサントと農民自殺(YouTube 2009/6/28)
インドの綿花生産者自殺とモンサント(YouTube, 2009/6/27)
従来の農業で考えれば、毎年、生き延びた種を収穫することを繰り返すことによって
その土地の土壌と気候に適した種子が取れるようになるのだけれど、
モンサントは遺伝子組み換え技術によって作った自社の種子に特許を設定し、
その種子から育った作物から取れた種子を再利用することを契約時に禁じているため、
農家は毎年モンサントの種子、肥料、農薬を買わなければならない。
特に綿種子はすべてモンサント製で
これは読み書きできない農民に強引に契約させたもの。
知らずに契約して、次々に種子、肥料、農薬を買わされるハメになる。
しかし種子自体がインドの気候や土壌に合っていないし
灌漑設備が十分でないので、すぐに枯れたり病気になったりしては
さらに肥料や農薬を買わされる口実となる。
借金するにつけても
昔は顔なじみの金貸しがどの村にもいて、それなりのショーバイだったけど
いつのまにか昔馴染みの金貸しに種子会社がとってかわって、
農民は土地を担保に、種子会社から種子や肥料の代金を借りることに。
もともとカネのかかる農業を強いられているのだから
ちょっと不作になるとアッという間に土地を失って、自殺に追い込まれていく――。
それでもインド政府はモンサント型農業を支持。
種子のメリットを生かせるように灌漑施設を作るというが、
現実には中央部のハイテク化に(上記の医療ツーリズムにも)ばかり熱心で、
国民の7割が住む農村部にはまったく無関心。
また、70年代に化学企業だったモンサントが
米国政府とつるんでGM種子や乳牛用人工ホルモン(乳の出をよくする)で急成長し、
農業バイオテクノロジーの巨大企業に成長してきた、えげつない戦略については
「アグリビジネスの巨人”モンサント“の世界戦略」の紹介(YouTube 2008/6/11)
「農業関連大手モンサント社の恐怖の収穫(1)(YouTube 2008/10/10)
「農業関連大手モンサント社の恐怖の収穫(2)(YouTube 2008/10/10)
リスク・データの隠ぺい、必要な検査の省略、FDAとの癒着、
各州、各国政府を巻き込んで、都合が悪くなれば食品表示の方を変更させるヤリクチ……
特に、遺伝子組み換え作物は自然に作られた作物と変わらないとする
「同種性」の主張には実際には科学的根拠がない、という話など、
(こっちも科学的根拠はないけど、これについてはクローン牛についてのエントリーで書いた)
この構図って、
ビッグ・ファーマがFDAや各国政府や“慈善”資本主義とつるんで
向精神薬やワクチンでやっていることと、全く同じなんでは……?
そういえば、つい先日、
ビル・ゲイツが農業関連の最大手企業 Deere & Coの株を買い、
同社の株式の6%を保有することになった、というニュースもあった ↓
Bill Gates Just Bought $571 Million Of This Stock
iStockAnalyst, October 1, 2011
ゲイツ財団がモンサントとパートナー関係にあるだろうことは前から想像がついていたけど、
そのエビデンスは9月16日の補遺で拾った。
もともとビル・ゲイツはこのところ、とても露骨にインドに入れ込んでいるし ↓
ゲイツ財団がインドのビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書(2010/5/17)
ゲイツ財団が、インドの貧しい村を「養子に」???(2010/5/17)
今年の3月にはウォーレン・バフェットと一緒に訪印している。
そういう大きな動きから読みとれるのは、たぶん
ゼニ回し・新興マーケット創出に向けた、「途上国へワクチンを」の次の
グローバル強欲ひとでなし金融ネオリベ慈善資本主義の戦略ターゲットは「途上国に農業新興を」。
これについては5月25日の補遺に。↓
Bill Gatesが金持ち国は貧しい国の農業振興にカネを出せ、と。:いよいよ始動ですね。ワクチンの次なるゲイツ財団の「途上国の農業支援」という名のGM農業新興・慈善資本主義。新たな科学とテクノロジーによるグリーン・レボリューション。
http://www.theglobeandmail.com/news/world/africa-mideast/bill-gates-urges-rich-countries-to-fund-poor-farmers/article2033487/
で、モノを知らないままに、オバタリは、ふと思ったりするのですが、
日本の「ワクチン産業ビジョン」や厚労省HPVワクチン議論のいかがわしさを思うと、
あのTPPも、実はこのアグリビジネス・グリーン・レボリューションに
ぐるりと回り回って繋がっている……のでは――?
http://www.guardian.co.uk/society/2011/sep/30/chris-woodhead-considers-assisted-suicide-dignitas?newsfeed=true
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/8799298/Chris-Woodhead-considers-ending-life-at-Dignitas-after-BBC-documentary.html
米国の障害者に「自分のニーズに適した、最も制約の少ない環境で暮らす権利」を認めた1999年のOlmstead判決。
http://www.accessiblesociety.org/topics/ada/olmsteadoverview.htm
上の判決は、AARPが9月8日に堕した「州ごとの介護サービスと支援の成績表」の中で触れられていて知った。これについては、これまでの補遺でも拾っているけど、AARPの成績表報告書、Raising Expectations: A State Scorecard on Long-Term Services and Supports for Older Adults, People with Physical Disabilities本体はこちら。
http://www.longtermscorecard.org/
上の情報をたどるついでに見つけたAARPの介護者支援サイト。なかなか良さそうなので、折を見てエントリーにしたい。
http://www.aarp.org/relationships/caregiving-resource-center/info-09-2010/pc_10_signs_of_caring_too_much.1.html
http://www.aarp.org/relationships/caregiving/info-09-2011/caregivers-dilemma.html
http://www.aarp.org/relationships/caregiving/info-06-2010/crc-10-caregiver-stress-managment-tips.1.html
http://www.aarp.org/relationships/caregiving/info-09-2011/caregiving-secrets-slideshow.420-caregivers-share-secrets-medical-records-1.jpg.html
http://www.aarp.org/personal-growth/life-long-learning/info-09-2011/things-you-dont-need-at-50.html
米国の親の10人に1人が、子どもに推奨どおりのスケジュールでワクチンを接種していない。:もちろんコメントはDiekema医師。けど、9月27日の情報では、ポリオ、麻疹、おたふくなど昔ながらのワクチンの接種率は90%を超えているという話だったから、ここで問題にされているのは、最近になって開発されたビフだとかHPVなどなんだろうな、と。そういえば今日、ウチの県の小児科医会の方々が県に対してこれまで通りのワクチン無料化を続けるようお願いに行かれたとのこと。この不況時に、HPVワクチンは一人4万5000円の助成ですよ。これ、問題視されない方がおかしいと思うんっすけど?
http://yourlife.usatoday.com/health/medical/pediatrics/story/2011-10-03/Many-parents-opt-for-alternative-vaccination-schedule/50638452/1
http://blogs.babble.com/strollerderby/2011/10/03/1-in-10-parents-choose-alternative-vaccine-schedule-for-children/
NYT。アフリカの女性に人気のホルモン注射の避妊薬で、男女ともHIV感染リスクが倍増する、との調査結果。
Contraceptive Used in Africa May Double Risk of H.I.V.: A new study suggests that an injectable, hormonal contraceptive popular with African women has biological properties that may make women and men more vulnerable to H.I.V. infection.
途上国の避妊といえばゲイツ財団がえらく熱心なんだけど、関係ないのかな ↓
ゲイツ財団資金で超音波による男性の避妊法を開発、途上国向け?(2010/5/12)
ゲイツ財団がインドのビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書(2010/5/17)
注目集めるインド発・男性向け避妊法、「女性にも」とゲイツ財団(2011/6/3)
ゲイツ財団が途上国の「家族計画、母子保健、栄養プログラム」に更に150億ドルを約束(2010/6/8)
「途上国の女性に安価な薬で簡単中絶“革命”を」の陰には、やっぱりゲイツ財団(2010/8/3)
「いかにしてビル・ゲイツは世界を救っているか」というタイトルの、実に長大な記事。世界を救うためにやっていることが、たぶん10挙げられて、詳細に解説されているんではないかと思う。:まさに、ほら1日の調査報道を忘れたジャーナリズムを叱るミステリー「ドラゴン・タトゥの女」のエントリーで書いた、まさに、あの、brainless, idolatrous portraits。一体こんな記事を書くのは誰?……と思ったら、siliconindiaというサイトだった。つまりインドの「科学とテクノの簡単解決バンザイ文化」が発信元の情報というわけ。納得。
http://www.siliconindia.com/shownews/How-Bill-Gates-is-Saving-the-World-nid-93474-cid-2.html
NHKスペシャル「生活保護 3兆年の衝撃」の残念さ 鈴木亘。BLOGOS
http://news.livedoor.com/article/detail/5869951/
裁判所が医師だけでなく直接ケアしている介護士たちの声に耳を傾けたという点でも、
日々のケアを担っている者にしか分かりにくい重症障害者の微妙な意識状態が確認された
レアなケースという点でも、とても大きな意味のある判決のニュース。
Revealed: The full troubling story of the brain-damaged woman in the court case that divided Britain this week
The Daily Mail, October 2011
2003年に突然にウイルス感染からこん睡状態となり、植物状態と診断されて
(ただし記事は他の場所では「原因不明」とも)
ケアホームで暮らしている女性Margotさん(仮名・53歳)を巡って、
栄養と水分の供給を停止して「尊厳ある死を」と夫と妹(姉かも)が望み、
その要望が先週、高等裁判所に却下された、という事件。
この事件でとても興味深いと思うのは、裁判所の判断の根拠になったのが
ケアホームでMargotさんをケアしている介護士の証言だということ。
それによって当初の「植物状態」という診断が覆り、
裁判所が指定した専門家によって「最少意識状態」であることが確認された。
まずは、植物状態との診断を覆した医師やナーシング・ホームで彼女をケアしている直接処遇職員の証言で
Margotさんがどのように語られているかというと、
簡単な指示に従う、自己意識があるだけではなく周囲で起こっていることも分かっている。微笑んだり、ポップ・ミュージックを聞くと手でリズムを取ったりする。特定の音楽を聴いて泣いているのを見た職員もいる。
夫のSteveさんが訪ねて来た後で涙を流していたこともある。
施設から外に出かけると、太陽の方に顔を向けて、顔に当たる日差しを楽しんでいるように見える。介護職員が海がきれいだと言うと目を開け、そちらを見たように思えた。
テレビでウインブルドンの試合がかかると、目を開けてテニスの試合を見たが、「あ、見てる」と言われると目をきつく閉じた。
いきなり「おはよう」とか「ハロー」と言ったという報告も。
ある介護士は、トム・ジョーンズの歌に合わせて「グリーン、グリーン、グラス・オブ・ホーム」と口を動かしたのを見た、と。
リラックスしている時には、腕の拘縮が収まって下に降りていたり、唸ることもなく
時にはハミングするような声を出している。辛いことがある時には白目をむいて、甲高い唸り声を上げる。
介護士の好みがあって、好みの介護士が部屋に入ってくると目を開けてにっこりする。ケア・ホームのスヌーズレンの部屋に連れて行ってもらうのが好きで、ゆっくり転倒する明りを目で追いかけている。
こうした証言を受け、植物状態の人と異なって、
栄養と水分を断たれるとMargotさんには正常な痛みや不快の感覚があるだろう、と裁判官が判断。
現在の暮らしについて本人がどのように感じているかは分からない以上
「絶対的なルールではないにせよ、法は命の保存を基本原理としている」、
「命を守ることの重要性が本件では決定的な要因」だ、として
「このような状況下で生命維持治療を差し控えたり中止したりすることは違法行為である。
もしも意図的に行われるとすれば、それは違法な殺害、殺人である」
しかし、夫のSteveさんと妹(姉?)のBrendaさんは
Margotさんが喋ったり、泣いたり、音楽に反応したところを見たことがない、と言う。
この2人がMargotさんについて、どのように語っているかというと、
27年間連れ添って来たSteveさんは、もはや奇跡は起こらないと希望をなくし、愛する妻の元に行くと、黙ってベッドサイドに座り、時には妻の膝に頭をのせて泣く。もう話しかけることはしない。そんなことをしたって聞こえないし、夫の声が分かるわけではないから。
Margotさんは祖母が年を取ってナーシング・ホームで衰えていく姿に、自分が入所施設に入って「誰かに面倒を見てもらうくらいなら10年くらい命を縮めたっていい」と言い、父親が病気でケアホームに入った時も、他人の世話になることを思ってMargotさんは身震いし、何かが起こって介護される身になるくらいなら「さっさと死にたい」と語り、夫に向かって「絶対にこんなところに私を入れないでね」と頼んだ。1992年のTony Bland裁判の時にも、Blandさんは死なせてあげるべきだとMargotさんは語っていたのを、夫のSteveさんも妹のBrendaさんも覚えている。(ただし、Margotさんは事前指示書を書いていない)
夫は、妻を意思の強い、自分の信じる道を突き進むタイプで誇り高く、自分がどのように見られるかをとても気にする人だった、と。
Brendaさんの法廷での証言
「Margotが生きていることから何を得ることができるというんです? 何の喜びもないんですよ。
毎日決まった時間にベッドから出されて、またベッドに戻されて、着替えさせられて、オムツをつけられて。そんなの生きているなんて言えません。そんなの存在しているだけです。本人だってそんなの望んではいません。Margotがベッドで寝ていたり椅子に座っているのを見るのは私には辛いのです。かつての彼女とは似てもつかない姿で。
立ち去ってしまえば簡単なのかもしれませんが、私はこれが正しいことだと思うからこうして裁判でMargotを死なせてやってほしいと訴えています。本人が心の底から望んでいることだと思うからです」
Steveさんの証言は
「私たちの気持ちの問題ではないんです。私たちのことはどうでもいい。ただ本人の考え方や意見を知っている者として、妻の代弁をするだけです」
ここで起こっていることは、まさにAshley事件で
アシュリーの認知能力を巡って「自分たちが見たいものしか見ない」人たちが
「赤ちゃんと同じ」と言い続けたことと全く同じなのでは――?
さらに、私はAshley事件やKatie事件の報道でDaily Mailには偏見があるからか、
記事の書き方にも、ものすごい偏りがあると思う。そもそもの記事の冒頭の数行からして、
かつて働き盛りで生き生きとしていたMargotさんを愛し知っている人々にとって、現在のMargotさんの姿は胸が張り裂けるという表現では足りないほど辛い。
イングランドの北部のケアホームで、Margotさんは何の反応もなくベッドに横たわっている。両手は曲がって顎の下に引きつけられ、自分で食べることも瞬きでのコミュニケーションすらできない。
排泄はオムツで、頭も体もほとんど動かすことができない。リフトで移動させられて、ケアのすべてが他者に全面的に依存している。
上記のケアホームの職員の証言を知っていながら「何の反応もなく」と書くのは正確な報道とは言えない。
この記事は、こんなふうに終始一貫、
倒れる前のMargotさんが如何に朝の5時から起き出して溌剌と働く美容師だったか
如何に自分の望みをはっきりと語る意思の強い人だったか、
如何に明るく前向きな優しい人物だったか、
それに引き換え現在の状態が如何に悲惨であるか、という比較を
くどいほど繰り返しながら、こう問いかける。
「Margotの宿命はほとんど想像もつかないほどの悲劇であり、
彼女を愛する家族にとっては絶え間ない苦しみである。
しかし、Margotの生は、果たして生きるに値する生なのか?」
この問い方に、
夫と妹の訴えや、その主張に加担するMail紙の欺瞞が透けて見える。
「家族にとって」絶え間ない苦しみ……なのであり、
それはBrendaさんの言葉にも見られるように
かつてのキビキビと立ち働く人ではなくなったMargotさんを
「見るのは私には辛い」のだ。
だから、Steveさん、「私たちの気持ちの問題ではない」ことはない、
「何の喜びもない」としか思えない、あなたたちの気持ちの問題なのですよね、これは。
音楽を楽しみ、テニスの試合に興味を持ち、外に出て頬に感じる日差しを浴びることに
生きている喜びを感じているMargotさん自身の気持ちの問題ではなく――。
――――――
重症障害者から栄養と水分の供給の引き上げを巡る訴訟や事件には2つのタイプがあって、
① 家族が本人の“死の自己決定権”を主張し、栄養と水分の停止を求めて、裁判になるもの。
こちらのタイプでは、有名なところで2005年のシャイボ事件、
それからナンシー・クルーザン事件などがあります。
② 医療や行政サイドが“無益な治療”の中止を主張し、家族サイドがそれに抵抗して裁判になるもの。
このタイプの訴訟がどんどん増えてきていることが当ブログの懸念でもあり、
「無益な治療」の書庫に沢山の事件があります。
私はこれまで、①の方は“死の自己決定権”を巡る事件として捉え、
後者の②の方を“無益な治療”の流れに繋がる事件として、
区別して考えてきつつ、しかしこれら2つのタイプは底流で繋がって
実は1つではないかと感じてきたし、
「1つの流れにつながっていく移植医療、死の自己決定と『無益な治療』」で書いたように
政治的にも2つはいずれ繋げられていくのだろうと予感もしていました。
家族が治療の停止を求めて、専門家サイドがそれに抵抗しているところが、
最近とみに増えてきたように思える上記の②のタイプの訴訟とは
まったく逆のパターンの事件なのですね。
しかし、逆だからといって①になるわけでもない。
(上記で挙げた①のパターンでは
医療サイドも家族と同じ側に立っており、
家族の求めに抵抗しているわけではないので)
そこのところが、
考えるべきことがたっぷりとありそうな、この事件のキモだろう、と思う。
邦訳はこちら。
このエントリーは同作品のネタばれ(謎解きには無関係ですが)を含みますので、
いま読んでいる方、これから読む予定のある方はご注意ください。
退屈な部分と、ものすごく面白い部分とが画然としていて、
後者の割合が相当に勝っていたので、ミステリーとしては楽しめたけど、
あまりにも悲惨な話、あちこちすっきりしない終わり方で、
ヤ~な話だったなぁ……という後味の悪さが、ちょいと残ってしまった。
ただ、この作品にはミステリーの部分に仕掛けられたメッセージとは別に
全体としてもう1つのテーマというかメッセージがあって、
ここで主人公が言っていることが、そのテーマなんだろうなぁ、
調査報道を旨とする経済誌のジャーナリスト・経営者という主人公の設定は、
なるほど、そのためだったのか……と納得しつつ拍手を送った個所が、
最後の最後になって出てきた。
VINTAGE CRIME のペーパーバックス版では627~628ページにかけての部分。
スウェーデンのチョ―大物実業家が大スキャンダルを暴かれて、
彼のグループの株が急落、スウェーデンの株式市場が大混乱を起こしている中、
そのスキャンダルを暴露した主人公がテレビのインタビューを受けている場面。
スウェーデンの株式史上、最悪の株価暴落を招いているが、と暗に責任を追及されて
主人公が応えているのは、概ね、以下のような内容。
スウェーデン経済と、スウェーデンの株式市場とは別物。スウェーデンの経済は日々この国で生み出されている、エリクソンの電話機だとかボルボだとか、その他いろんな製品とサービスの総量のこと。その総量は昨日と今日で変わっているわけではなく、だからスウェーデンの経済は昨日から今日にかけて弱くなったわけじゃない。
株式市場にはスウェーデンの経済などありはしない。ただ、何時間か前に比べてこの会社の価値が何十億ぶん下がったの上がったのというファンタジーだけだ。そんなことには、わずかな数の大物投資家が資金をスウェーデンの会社からドイツの会社にせっせと移しているって意味しかない。そんなゼニの亡者なんて、肝っ玉のあるレポーターなら、誰がそういうことをやっているかを特定して、裏切り者として暴いてやればいい。そういう連中こそ、顧客の利益を出してやるために終始一貫、恐らくは意図的にスウェーデンの経済にダメージを与えているのだから。
そこでテレビのインタビュアーは
「では、あなたはメディアには責任はない、と?」
ここで主人公の答えが実にしびれるのですね。
もちろん、メディアの責任は大きいですよ。もう20年もの長い間、多くの経済ジャーナリストたちが、この億万長者について詳しく調べることを手控えてきたのだから。それどころか、逆に、空疎で中身のない偶像化記事を書いては持ち上げて、権威づけに加担してきた。経済ジャーナリストがなすべき仕事をきちんと果たしていれば、今日のような事態は起こらなかったのに。
(ゴチックはspitzibara)
「空疎で中身のない偶像化記事」と訳してみたところの原文は
brainless, idolatrous portraits
メディアがビル・ゲイツについて書く時の、
ほら、日本でも毎度おなじみの……。
最後の5分の1くらいを読んでいる間ずっと、私の頭では
「ジャーナリズムは死んだ」と言われる米国で調査報道を旨とする
ネット・メディア、ProPublica が主人公と重なり、
この億万長者が
ビッグ・ファーマや、ビッグ・ファーマが肥え太るように
世界中に策略と欺瞞を撒き散らしている人々と重なっていた。
【関連エントリー】
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
http://www.guardian.co.uk/world/2011/sep/29/south-african-prosecuted-mothers-death?CMP=EMCGT_300911&
内容は全然読んでいないので、無責任で申し訳ないけど、タイトルは「ビル・ゲイツは安全でクリーンな原電の制御法を考えついたのか?」。副題に「新たな原子力時代を始めようとのゲイツの大胆な計画をMark Peisingがレポート」:ビル・ゲイツは東日本大震災の直後に再生可能エネルギーみたいな「可愛らしいもの」ではどうにもならないって、発言してたからね。結局、この「新たな原子力時代」の話も、落ちていく先はTerraPowerという彼の投資先の話……じゃないかという気がするんだけど(読んでいないのに無責任でスミマセン)。
http://www.independent.co.uk/environment/green-living/has-bill-gates-come-up-with-a-safe-clean-way-to-harness-nuclear-power-2363205.html
ビル・ゲイツがポリオ撲滅推進でナイジェリアへ。:大統領選挙を巡って、すさまじい内乱状態が起きたばかりの国でも、この人は最重要課題はポリオの撲滅だ、ワクチン推進だ、と説く。「無政府状態のソマリアだってワクチン接種率は高いんだぞ」と胸を張るこの人にとって、いったい物事の優先順位ってどうなっているんだろう、とずっと不思議。
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5igG2I_nNG70Bo-ObivptdutviDGA?docId=CNG.211f4e001608b37db54efe2a0eef44b5.551
ビル・ゲイツが来たとなると、ナイジェリアの上院議長が「2年以内にポリオを撲滅してみせます」と約束したそうな。:2年で撲滅ったって当面それどころじゃなかろうに、それでも約束してみせたくなるほどに、何かイイコトがあるんだろうな……と、どうしても。
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5igg1wgeq1pHQyeh_DIHww-8eTniw?docId=CNG.11b830e74e89175fd9b015ca71842771.551
アパラチア地域の小児科医は、その他の地域に比べてHPVワクチンの推奨に消極的だという調査結果。「大問題だ。もしアパラチアの小児科医が、HPV感染は患者にとって問題ではないと(明らかに問題であるにもかかわらず)考えているなら、女性だって自分はもちろん自分の子どもにだってワクチンを打とうとは思わないだろう」: へぇぇ。HPVワクチンについては、こういう調査まであるわけですかぁ。地域ごとに、小児科医がどれだけ熱心に推奨しているかを調べて、熱心でないと「この地域は大問題だ」とね。まるで調査研究を装ったアカ狩りみたいな……。しかもHPVワクチンに限定して。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/235182.php
ADHDの治療薬の14歳から17歳までへの処方量、この12年間ずっと増えっぱなし。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/235243.php
不況で、ワシントン州では、介護施設にボランティアのオンブズマンを送る制度の予算が3分の2に。
http://www.columbian.com/news/2011/sep/29/watchdog-program-to-lose-one-third-of-funds/
英国NHSの生き残りのためにベッド数削減が必要、との提言。NHSの幹部Mike Farrar氏から。だって、サービスを削減しないとERと産科は閉鎖になるよ、と。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/sep/26/nhs-beds-funding-crisis?CMP=EMCGT_270911&
http://www.guardian.co.uk/society/2011/sep/26/nhs-cash-crisis-cuts-closure?CMP=EMCGT_270911&
米軍が兵力調達を民間企業にアウトソーシングしていて、それら「下請け」の兵士たちには負傷した場合の保障がない(薄い?)ことが前から指摘されているけど、イラクとアフガニスタンに派兵されたそうした下請け兵士たちから、医療保障と障害手当を求めて集団訴訟が起こされた。
http://www.propublica.org/article/injured-war-contractors-sue-over-health-care-disability-payments
「怒っているぞ! 障害者きりすて! 全国ネットワーク」という運動があることを今日、知った。いろんな人が闘っている。ずっと。以下はそのネットワーク関西のブログ。
http://ikari-net.cocolog-nifty.com/blog/
10月28日の日比谷IDF大フォーラム
http://www.normanet.ne.jp/~1028/