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世界的な免疫学の権威で東大名誉教授、
脳梗塞で重度の障害を負い、
2006年の診療報酬改定でのリハビリ日数制限に対して激しい抗議を行って、
その後も弱者切り捨ての医療と福祉に怒りの声を上げ続けている
多田富雄氏の闘病記「寡黙なる巨人」を読んでいたら、
面白い話があった。

NHKが多田氏の闘病生活を取材してドキュメンタリーを放送したところ、
氏の元には激励や感想の手紙や電話だけでなく
怪しげな民間療法、代替療法の押し売りまがいの人たちが訪ねてきた、という。

厚かましくも上がりこんで、
その効能について延々と講釈を垂れる。

付き合わされる多田氏は
「私は曲がりなりにも免疫学の専門家だ。
素人の講義が間違っていることなどわかる」とムカつき

「私は民間療法を馬鹿にしているわけではない。
それを医療に取り入れるために、『補完代替医療学会』という学術団体も組織されている。
私も去年、その学会長を務めた」とも考えたりして、
たいそう不愉快なのだけれど

「しゃべれないから苦情を言いたてることも出来な」くて、さらに苦々しい。

科学的に実証されてもいない民間療法を自分が信じるだけでなく
他人の生活にまで介入するのは「善意の謀略」だと氏は怒りを込めて書いている。

訪ねていった人たちはテレビを見たのだから
もちろん氏の経歴は知っているのに
免疫学の専門家に向かって普通は出来ないはずのことが
その人の身体がひどくマヒして言葉が不自由だというだけで
何の抵抗もなく出来てしまうことの不思議──。

でも、これは、もしかしたら
誰の心の中にもありがちなステレオタイプの罠なのかも?
         
2008.10.18 / Top↑