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10月1日のエントリーNE州で「こうのとりのゆりかご」ジレンマで紹介しましたが、

日本で言えば「赤ちゃんポスト」に当たる制度を利用して
10代の子どもを“棄て”に来る人たちがNebraska州で多発している問題を
The NY Timesが取り上げていました。

もともとは赤ちゃんが殺される事件の防止策として始まった制度が
これでは「無責任な親」に「悪用」「濫用」されているとして
Nebraska議会には法律改正を求める声が上がっていますが、

Nebraskaで起きている養育放棄から見えてくる問題を
様々な分野の専門家が分析しているあたりが
日本でも同じことは起こっているし当てはまるんじゃないかという気がするので、
そうした点について、以下に。

・最近の経済状況の悪化で、それ以前からぎりぎりのところで踏ん張っていた家庭の頑張りが利かなくなっているのではないか。(ただ、NE州で子どもの養育を放棄した人の理由の大半は、少なくとも表向きは経済的なものではなかったということですが)

・困難な育児をしている家族への支援に途切れ目が生じている。虐待やネグレクトがあれば児童福祉が介入するし、犯罪を犯した子どもは青少年向け司法制度が対応し、親も子もカウンセリングや支援につなげられるが、そのいずれにも当てはまらない子どもたちへの手当てが抜けている。

・無保険ではないにせよ中流家庭の保険では精神科医療が充分にカバーされていないことが多く、集中的な治療や入院ができない。メディケイドの対象になる貧困家庭では、そんな低いレートで見てくれるセラピストが見つからなかったり、受診そのものに抵抗があるのではないか。

・いきなり子どもを棄てるところまで行かずとも家族支援の福祉サービスもあるのに、利用することにに思いが至らない家族もあるのではないか。

・NE州では、そうした支援サービスにたどり着きながら結果的に支援できずに終わり、子どもを“棄て”にきた養育者もあった。

・いきなり「もうこれ以上できないから、子どもを病院に棄てます」というのではなく、まずは家族や友人、近所の人やサービスに対して助けを求めて欲しい。

・子どもたちに向けて本当に強力な精神医療を行うにはNE州の予算では不足だが、所得に応じた料金設定の精神科医カウンセリングなどのサービスもある。ただ、多くの親がその存在を知らない。

Older Children Abandoned Under Law for Babies
The New York Times, October 3, 2008


この記事に紹介されているJim Jenkinsという父親のエピソードがとても印象的です。

息子が8才の時に妻が死去。
息子は13歳の時には別人のように荒れて、
「何年も地獄のような年月を過ごしました。
 誰に助けを求めたらいいか分からなかったし、
私のせいだと自分を責め続けていました」と父親。

最終的にこの父親を救ったのは警察だった。

まず息子を病院に入院させ、
同時に施設にあるレスパイト制度を父親に紹介。
数日間の入院の後、息子はこの制度で1週間施設へ。
父親も娘も再婚した妻もやっと一息つくことができて
息子のセラピーを開始することができた、と。

「しばらく経ってやっと、すぐに解決できる問題ではないと分かってくるんです」とJenkins氏。
数年間のセラピーを経て、息子は高校卒業資格を取り、大学を目指している、と。


「困っているのなら親がセラピーに連れて行けばよいではないか」
「親が行動さえ起こせばいいじゃないか」
「誰かに相談すればよかったじゃないか」という問題に見えるけれど、
それは端から見ている傍観者だから思えること。

この人が「自分を責めた」というように
子どものことは自分の責任だと考えたり自責があったりするだけでも
親の考えは内向きになりがちだし、

また、荒れたり病弱だったり障害がある子どもに振り回される暮らしというのは
目の前に次々に起こる予想外の事態に対応していくのが精一杯で
吹き荒れる嵐の中を日々刻々生き延びることだけで過ぎていく「その日暮らし」。
落ち着いてものを考える余裕すらないことが多い。

要するに毎日が緊急事態モード、
頭に血が上がりっぱなしで暮らしている状態なのだから
(ここを書いた瞬間に、あの英国のAlison Thorpeを思い出した)

警察でも医療職でも教育関係でも福祉関係でも誰でもいいから、とりあえず
親を短期間でいいから子どもから引き離してあげることが必要なんじゃないだろうか。

そうして身体的にも精神的にも緊急事態モードを解除し、
我が身が常に脅かされている緊張状態から解放されることで初めて
親も本来の自分を取り戻すことができるし思考力も判断力も戻ってくる。
本来持っている子どもへの愛情も確認し、
子どものためにどうするべきかを前向きに考え始めることができるようになる。

Jenkinsさんは、
支援する側からうまく迎えに来てもらえた幸運なケースだったんじゃないだろうか。

まずは子どもからしばらく離れる。
ほっと一息ついて本来の自分を取り戻す――。

追い詰められている親にとって、
これは案外とても大切なことだったりする。

だけど、一番できにくいことだったりもする。
2008.10.06 / Top↑
製薬会社から医師への500ドルを超える金銭授受の公開を義務付ける法案
The Physician Payment Sunshine Act の提案者であるGrassley上院議員が行っている調査で

世界的に尊敬を集めるカリスマ的な科学者であるEmory大のDr. Charles B. Nemeroffが
2000年から2007年の間に製薬会社からコンサルタント料として支払われていた
280万ドルを超える金額のうち120万ドルを大学に申告していなかったことが判明。

すでに決定していた次期学部長就任を自主的に辞退することになると大学側が発表しています。

現在の法律では年間1万ドルを超える金銭授受について報告が義務付けられており、
国立衛生研究所(NIH)の資金による研究においては
利益の衝突を避ける厳格なルールが敷かれているものの
実際のチェックは大学に托されているのが現状。

Grassley上院議員の調査ではこれまでにも
Cincinnati大のDr. DelBello、Harvard大のDr. Biederman, Dr. Wilensの隠蔽が明らかになり、
次期米国精神医学会会長に選出されているStanford 大のDr. Alan F. Schatzbergにも
疑惑が出てきています。

Grassley議員は大学のチェックが機能していない、と。

Top Psychiatrist Didn’t Report Drug Makes’ Pay
The New York Times, October 3, 2008


それにしても記事に見られる Dr. Nemeroffのヤリクチは相当に悪辣で、
隠蔽を把握して調査した大学側に対して、
自分と製薬会社との関係によっていかに大学が利益を得てきたかを説いて正当化・抗弁、
見方によっては大学側を脅すような手紙まで書いている。

疑惑を指摘してDr. Nemeroffと対立までしながら
結局は同医師の名声とその名声がもたらしてくれる富に追及を緩め
結果的に隠蔽に加担した大学も同罪という印象。

それというのも1980年に出来た法律で
連邦政府の資金による研究のパテントは大学のものとなることになった、という背景があり、

その法律がインセンティブになって
数多くの医薬品が開発されて多くの命を救うことになった一方、
大学医学部では製薬会社とのコンサルタント契約が繁盛し、
一時は21の製薬会社や医療機器会社のコンサルタントであったDr. Nemeroffは
全国的なモデルともなっていた、とのこと。

      ―――――       ―――――

記事の中で、特にイヤ~な感じがしたのは、

2006年にCyberonicsという会社の製品が問題となった際には、
Dr. Nemeroffらが利益の衝突を隠したまま
自分が編集しているジャーナルでその製品を持ち上げていた、という話。

その際に調査を行った大学側が
「この論文は金で買われた販促行為だa piece of paid marketing」とまで言っているのに、
上院議員の調査まで、そういう記録も表ざたにならなかったという事実。

記事では妙なことに
その「製品」の詳細が触れられていないので、
CybernicsのHPを覗いてみたら、

薬だけでは治らないてんかん患者やうつ病患者向けの外科的療法として
胸部へのインプラントによって、てんかん発作をコントロールするVNS療法を
ウリにしている会社のようです。

そのメカニズムを簡単に説明したページがこちら。
VNS Therapy Basics


米国の親たちがワクチンを拒否していることも
最初はAshley療法のDiekema医師があちこちでワクチン関連の発言をしていることから偶然知っただけで
最初はどういう問題なのか、よく分からなかったのですが、

その後あれこれ目に付いた関連記事を読んでいると、
こういうニュースと実は無縁ではないんだろうな、と最近思えてきました。

そして、もしかしたら
Gates財団とのつながりの深いワシントン大学・シアトル子ども病院が
ワクチン問題に特に大きな関心を示していることも?


2008.10.06 / Top↑