2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
夜の死体運び屋さんのブログに、すごい話が出てるんですけど。昨日、ある精神病院で亡くなった患者さんの「死後の解剖」に大学病院から医学生を呼び、遺族を待たせて延々と6時間。普通は1時間くらいで済むというんだけど。でね、最後に書いてあるのは「医学生、嬉しそうにクーラーボックス2つお土産を持っていったなぁ……」。亡くなった患者さんの遺体の「解剖」で、どーして「クーラーボックスのお土産」が出るんですか?
http://blogs.yahoo.co.jp/sougiyaoyaji/45069252.html

チューリッヒの住民投票に勢いづいたか、翌日スコットランドでMargo MacDonald議員が「私が再選されたってことは、自殺幇助を合法化してほしいという選挙民の願い」と。同議員は去年、合法化法案を提出して敗北を喫したのだけど、当初の対象者要件に「自立生活を送れない身体障害者」が含まれていたのが非難を浴びて途中で削除した経緯がある。基本線は16歳以上の自己決定能力のある人で1年以上スコットランドの保険制度に加入しているターミナルな患者または耐え難い痛苦のある人、みたい。
http://news.stv.tv/politics/249906-margo-macdonald-renews-campaign-for-assisted-suicide/

スイスで開かれた第64回World Health Assemblyで、Bill Gates氏、世界各国の保健当局トップに向けて、特にアフリカ各国のリーダーたちに向けて、「子どもたち全員にワクチンを」「新しくできたワクチン、5、6種類をすべての子どもたちの届けるために力を貸してください」と。
http://multivu.prnewswire.com/mnr/gatesfoundation/49363/
http://www.google.com/hostednews/afp/article/ALeqM5jjh9JlBPwHToZEweRkid5CaSdiuQ?docId=CNG.72fdb89220dcdc18731f851e3ffacf49.161

欧米ではしかが流行している。:これは数年前からDiekemaたちが問題視している米国のワクチン不信の影響。上のスピーチでGates氏も触れた模様。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/225432.php

以前は大統領以外は死後10年経った人の肖像画しか置かなかった方針を転換したワシントンの国立肖像画ギャラリーに、ゲイツ夫妻の肖像画がお目見え。夫妻が座っている後ろにアフリカの少女が2人のビデオが写って「すべての命に平等な価値がある」とゲイツ財団のスローガンが書かれている構図だとか。このスローガンは財団のHPにもあるけど、この財団の医療の効率化策って新・優生思想なのに? といつも思う。
http://www.nytimes.com/2011/05/17/opinion/17tue4.html?_r=1

米国のナーシング・ホームが、新しい改正医療法で義務付けられる職員への医療保険のコストをまかなえないから、免除してほしい、と。NYTに。
Nursing Homes Seek Exemptions From Health Law: Alarmed at the cost of providing health insurance to workers, many nursing homes are seeking an exemption from the new law, which is intended to ensure access to affordable coverage.

貧しい人の法律支援はますます必要度が増しているのに助成金がどんどん引き上げられている。:
これまで多くの人の努力によって長い長い時間をかけて築き上げられてきた、弱者の人権を守る仕組みや制度が、あっという間に崩壊していく。
http://www.propublica.org/blog/item/legal-services-for-poor-face-growing-need-and-less-funding

医師だって、苦しんでいる患者にどうやって共感を表わしたらいいのか困っている。
http://www.washingtonpost.com/national/health/doctors-often-struggle-to-show-compassion-while-dealing-with-patients/2011/05/02/AFiR8A5G_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

テクノロジーで死因が特定されることが増えて、米国の病院で死んだ患者の5%しか解剖されていない。1970年には20%だという。とはいえテクノロジーでは見過ごしてしまう病気が解剖では見つかるらしいのだけど。
http://www.washingtonpost.com/national/science/autopsies-which-can-reveal-medical-secrets-are-now-rare-in-us-hospitals/2011/05/12/AFJii74G_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

慢性肺疾患の患者さんの終末期医療の意思決定支援をコンピューターのプログラムで。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/225453.php

またウツ病の遺伝子変異説。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/225475.php

豪で家畜に奇形の出産が相次いで、殺虫剤の安全性が問題視されている。
http://www.canberratimes.com.au/news/national/national/general/deformities-spark-pesticide-fears/2163809.aspx?src=enews

結婚を断ったら顔に酸性の劇薬を投げつけられて失明した女性が、犯人の男性を同じ目にあわせてやりたいと望み、「目には目を」を旨とするイランの法廷は女性の訴えを認めて犯人は両目を劇薬で失明させられることに。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/13/iran-blind-criminal-acid?CMP=EMCGT_160511&

ソマリアの海賊対策で米海軍がゲーマーに助けを求めている?
http://www.washingtonpost.com/local/navy-calling-on-gamers-to-help-with-security/2011/05/13/AFRYiP4G_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

ミシシッピ川の水位が上がって、ニューオリーンズ洪水の危機。
http://guardianmail.co.uk/go.asp?/bGUA005/xM1DSK3/qQKHIK3
2011.05.17 / Top↑
前のエントリーで読んだカナダのRasouli訴訟の判決文の中に、
08年に当ブログで追いかけたGolubchuk事件の審議に関する個所があり、
非常に面白い議論があったみたいなので、その部分を。

Golubchuk事件については以下のエントリーに ↓
84歳患者巡る無益な治療論争、裁判へ(カナダ)(2008/2/14)
カナダの無益な治療論争:Golubchuk事件(2008/3/24)
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
「無益な治療」訴訟(加)のGolubchuk氏死亡(2008/6/29)


当該部分は判決文の[80]から[82]までの個所。

どうやらGolubchuk裁判の時に、
「医療職が患者の治療を差し控えたり中止するのに同意は無用。」
んなの、裁判所がイチイチ口を出すことじゃねぇ」と
病院側が主張したらしい。

ここを読んで、うぐっ、ふっふっ……思わず血沸き肉騒いでしまったのは、
これ、当ブログの一番のオトモダチ、Norman Fostの持論そのものだから。

Fostの持論通りの啖呵を
08年にカナダの裁判所で切った医師がいたのですね。

で、それに応えて、判事は “the court did have a role”
バ~カタレ、何を言うか。裁判所は口を出すんだもんね~、と。
(勢いでくっついただけで、もちろん前半部分は判事は言っていない)


あのGolubchuk事件で、こんなやりとりがあったとは……。

07年のシアトルこども病院生命倫理カンファでの
Fostの「医療は医師が決めること。裁判所になど行かず好きにしろ」発言には
私は、お尻から火を吹いてシアトルまで太平洋を越えてくくらいの
衝撃を受けたものだったけど、

カナダでも同様の考えが医師の間で広がりつつあったということなのでしょう。

「無益な治療」論ではカナダがどうやら最先端か……なんて
生意気な感想を抱くようになった今になって振り返れば
当たり前のことといえばそうなんだけど、当時は何も知らなかったし。

ただ、Golubchuk訴訟で判事が「口は出すんだもんね~」と応じた根拠は
身体接触のある治療には同意が必要だとか、その他あ~だこ~だと
学者の説を引っ張ってきてある内容が、私にはちょっと理解できないのですが。

それから、その他にもSawatzky訴訟、Sweiss訴訟と類似の判例があって、
そちらでも「治療の差し控えと中止に医療職は同意を必要としないとの判断は出ていない」とのこと。

結局、今回のRasouli訴訟の判事さんが言うには

[83] Sawatzky, Golubchuk and Sweiss demonstrate that the common law position on whether consent is needed to withdraw or withhold treatment in Canada is not firmly decided. The inconsistencies in Canadian case law on the issue and the existence of jurisprudence supporting a duty to obtain consent in withdrawal of treatment circumstances, lead to the conclusion that the law on whether consent is needed to withdraw or withhold treatment in Canada is not wellsettled.



コモン・ロー的には、カナダでは
治療の差し控えと中止に同意が必要かどうかは、はっきり結論が出ていない。

で、昨日のエントリーで読んだ今回の判決の結論としては
医療同意法の「治療」には「治療の中止」も含まれているので同意は必要、
という解釈でした。

           ――――

「医療職が治療をやるまいとやめようと同意なんかいるか、そんなの裁判所の知ったこっちゃねぇ」
「ところが、ちゃ~んと裁判所の知ったことなんだよね~」

このやりとり、私は“Ashley療法”で聞きたいっ。

「重症児の成長を抑制するくらいのことに、裁判所が口出すこたぁ、ねぇ」な~んて
ゼニ印の虎の威を借りてタカビーこいてる Norman Fost や Diekema に、
誰か、はっきり言ってやっておくれ。

「バ~カタレめ、医療が障害者相手に犯した過去の過ちを忘れたか。
医療はなかったことにしたくとも、法には歴史性というものがあるのだ。
だから、障害者への侵襲度の高い不可逆な医療については
裁判所はしっかり口を出すんだもんね~。べぇ~ぇ、だ」
2011.05.17 / Top↑
カナダの移民男性に関する「無益な治療」訴訟
Rasouli v. Sunnybrook Health Science Centre における
Ontario上位裁判所の判決文から事件の概要と、結論のみ、読んでみました。

判決文はこちら。今年3月に出されたものです。

事件の経緯とは、

Hassan Rasouli氏(59)は2010年10月にSunnybrook Health Science Centreで脳の良性腫瘍の手術を受けた。
術後に細菌性の髄膜炎などを起こし、脳と脊髄を損傷、10月16日からこん睡状態に陥る。
人工呼吸器を装着し、経管栄養にて「生かされている」状態。

主治医2人と脳神経科のスタッフとの診断ではRasouli氏は遷延性植物状態にあり
医学的回復(medical recovery)の現実的な望みはなく、
このまま介入を続けても医学的利益がないばかりか害を生じかねないし
今の状態を続けると病院のベッドに寝たきりの場合に起こる合併症でゆっくりと死んでいくことになる、と。

そこで法的後見人である妻のParichehr Salaselさんに予後を伝えて、
今後は緩和ケアのみとしたいと同意を求めるも、妻は不同意。
セカンドオピニオンでも同じ予後が伝えられたが不同意は変わらず。

なお、Rasouliさん一家は2010年4月にイランからカナダに移住。
夫は退職したエンジニア、妻はイランでは医師だった。

妻によれば、命は生かされるべきだというのがイスラム教徒としての
夫と家族の考え方であり、医療へのアクセスは基本的人権であり、
命のすべての兆候が消えるまで医療は与えられるべきだ、と。

またRasouliさんにはある種の反応があり、改善もみられ、
最少意識状態が植物状態と誤診されているのではないか、とも。

そこで妻はHCCAの規定に基づき、夫の治療停止については
The Consent and Capacity Board (CCB)で本人の最善の利益を検討するよう求めると同時に

病院は州の機関として、カナダ憲法で保障された
宗教の自由ならび生命、自由、安全への権利を侵してはならない、とも主張。

で、法律の素人としては判決文の大半は面倒で読んでいられないし、
読んでも理解できそうもないので、いきなり結論に飛ぶと、

CONCLUSIONS:
[103] “Treatment” under the HCCA includes the withdrawal of life support. Therefore, doctors require consent when withdrawing life support in Ontario. End of life cases present very difficult considerations for all parties involved. It is clear from the evidence that the hospital, doctors and substitute decision-maker in this case all have as their priority the best interests of the applicant.We are fortunate in Ontario that our legislature has provided a statutory scheme to assist doctors and substitute decision-makers in determining when an incapable person should be removed from life support, complete with recourse to an independent, expert tribunal in the event that a dispute arises in applying the best interests test. This statutory scheme will allow the applicant’s doctors to challenge the substitute decision-maker’s decision refusing consent to the proposed plan at the CCB. While no end of life decision can be easy, the process established by the HCCA provides consistency and ensures a full consideration of an incapable person’s best interests in cases such as this.

RESULT:
[104] For the reasons outlined, I am of the view that the physicians’ proposal to end life sustaining treatment to Mr. Rasouli, a decision which is supported by the Hospital and opposed by Mr. Rasouli’s substitute decision-maker, must be referred to the Consent and Capacity Board.

[105] Pending the decision of the Board, the physicians are not permitted to withdraw mechanical ventilation and transfer Mr. Rasouli to palliative care. Should the circumstances change, the parties may return to court.

[106] I am of the view that the Canadian Charter of Rights and Freedoms does not apply to the proposed decision of the physicians to withdraw mechanical ventilation.




HCCAとは、恐らく the Health Care Concent Act(医療同意法)のこと。
その法律の「治療」には「治療の停止」も含まれているため中止にも同意が必要、と。

この判断、米国の無益な治療法とか、ついこの前 SavulescuとWilkinsonが書いていた論文なんかを考えると、
ちょっとほっとする解釈ではありますが(詳細は文末にリンク)

判決文のどこかで、医師らの言い分の中に
「患者に利益にならない治療をする義務は医師にはない」というものも目にしたので、
こちらの言い分の根拠は何なんだろう、その辺りの関係はどうなんだろう……と、ちょっと気になります。

ともあれ、判決の結論とは、

終末期の意思決定の困難ケースにはHCCAがCCB(同意・同意能力委員会?)で
一貫性と十全な検討を保障している……として、判断はCCBへ。
CCBの結論が出るまで病院は生命維持を中止してはならない。
なお、カナダ憲法はこのケースには当てはまらない。

          ―――――

フランスのブルカ禁止などイスラム教徒の移民を巡る文化的な摩擦が
法的な問題に至るケースが増えているようで、
カナダでもシャリア法の解釈の導入を禁止する州が出たりしているようです。

また、ちょっと前のものですが
カナダでシャリア保険を開発というニュースも。

そういえば、先日の米国の無益な治療事件でも治療を拒否された患者は移民だった。
それ以前の「無益な治療」事件でも患者が移民だったケースがあった。
いずれも非合法の移民だというわけじゃない。なんだか、なぁ……。

元をたどれば、先進諸国のビッグ・マネーの方々が、
自分たちがもっと効率よくガッポガッポ稼げるように、と、それだけを考えて
世の中のいろんなシステムを緩めたり消したり作り替えたりしつつ
「弱肉強食でイケイケ」の「強欲ひとでなしルール」を
グローバルにどんどん敷いていくものだから、そのあおりで
もともと貧しい国では経済など成り立たず政治すら機能しなくなり
安手な労働力として使い倒されることを覚悟で移民の道を選んで
母国を出ていくしかない人が大勢出てきたのではないのか。
(または海賊になるとか)

カナダ政府だって
子育てや介護に奴隷労働者を輸入するための釣り餌として
「一定の期間介護労働者として働いてくれたら永住権の申請も」と
送り出し国との間で協定まで結んでいる。そして実際には
何年も働いていけないような酷い労働環境を放置している。

そんなふうに、
自分たちが世界の経済・政治・労働もろもろの環境を荒したために食い詰めた人たちを
自国で安価な労働力として使い倒して更に踏みつけつつ、
そういう人が重い病気になってゼニがかかるようになったら
もはや治療は無益だと、切って捨てる――。

そういうこと……?

【関連エントリー】
Savulescuらが、今度はICUにおける一方的な「無益な治療」停止の正当化(2011/2/9)
「ダウン症の息子が社会の重荷」とドイツ人医師に永住権を拒否(豪)(2008/11/10)
カナダ政府、「障害のある子どもが社会の負担」と相次いで永住権を拒否(2011/5/3)
世界の「奴隷労働」を、拾った記事から概観してみる(2011/1/20)
2011.05.17 / Top↑
今日の午後、スイスの住民投票の日本語ニュースを検索していた際に、

「妙なもの」というべきか「面白いもの」というべきか、
なにしろ「おや? おやおや、おや~ぁ?」と尻上がりに語尾が伸びそうな文書に
行き当たってしまいました。

インターネットってな、いろいろと、まさに“お宝”の宝庫ですね。

今回、全くの偶然に掘り当ててしまった“お宝”はこちら ↓
http://www.kals.jp/kouza/igakubu/news/pdf/2010/A.2.3.pdf

2ページ。タイトルは、シンプルに「A.2.3」。
内容は、世界のPAS(医師による自殺幇助)の概要を取りまとめたもの。

ただ、検索でPDF文書に行き当たるとよくあるように、
どこの誰が出した、どういう性格の文書であるかの情報が
そのページ内に含まれていない「名無しのゴンベさん文書」。

でも、内容が尊厳死法なので、気になって読んでみると、まず、その詳細なことに驚く。
例えば、こんな一見どうでもよさそうなことまで書いてある。

前ワシントン州知事、ブース・ガードナーは、パーキンソン病で、この病気自体は尊厳死法のもとでは、末期的疾患とは考えれていないが、法案を発議し、キャンペーンの陣頭に立ち、大口の寄付者にもなった。



それから、オレゴンの尊厳死法の実態について

1998~2007 年の間に医師等は致死量の薬剤投与の処方箋を総計541 枚書いたが、そのうち341 名が薬剤の摂取により死亡している。処方箋を受け取っても13名の患者は2007年末の時点で生存しており、処方箋を受け取った残りの患者は、結局、本来の病気が原因で亡くなっている。致死量の薬剤を摂取した後に、亡くなった患者グループの年齢中央値は69 歳であり、ほとんどすべてが白人で比較的、教養のある人達であった。ODHS のデータによると、グループの構成は男性のほうがやや多くなっている。約86%がホスピスに在院しており、81.5%が末期癌患者であった。

自ら行う医療の本質からか、あるいは個人的に(自殺幇助に)関わることに反対しているために、オレゴン州の多くの医師はこれまで致死量の薬剤を投与する処方箋を書いてはいない。2007 年に、45 人の医師が85 枚の処方箋を発行している(医師によって1枚から10 枚の幅がある)



こういう詳細を見ると、
毎年オレゴン州の保健当局から出される報告書の
たぶん2008年当たりの内容から拾っていると思われ、
「お、本気ね、あなた……」と唸るわけですが、

そのくせ、オレゴン州とワシントン州の対象者要件については、
詳細がなくて、ごく雑駁な説明で済まされていたりする。

なので、最初の印象は「なんだか、まだらに詳細だなぁ……」というものだった。

たぶん書いた人がたまたま手に入れた何本かの情報から
さささっと取りまとめて書いたもので、手元にたまたま詳細があった情報だけが詳細、
それで「まだらに詳細」という印象になるのかなぁ……と勝手な推理をしつつ、
読み進んで後半にさしかかると、

オレゴン州の尊厳死法施行は成功しているが、2007 年に致死量の薬剤を処方された85 人の患者が誰一人として、精神科医の評価を受けるように指図されていないということに対しては、懸念を覚える。



と、「名無しのゴンベ」さんが「懸念を覚える」と、いきなり個人の声になって力む。

この段落ではこの後も引き続き精神障害者に処方されたケースがあることが述べられていて、
じゃぁ、「懸念を覚える」あなたは、どういう立場の、いったい誰・・・?

不当な処方がされたケースがあると指摘し「懸念がある」と力みつつ
それでも「尊厳死法施行は成功している」って、どーゆーこと?

更に、それに続く結論部分では、

医師達は、自ら死を早めることを願う末期患者へ致死量の薬剤を処方するということに反対し続けるだろう。それにもかかわらず、ワシントン州の発議案が支持され、他州でも同様の法的な変更が起きる可能性があることで、医療関係者には、末期医療を改善し続けるために為しうることを見極める機会が与えられるのである



ここ、「ワシントン州の」から「与えられるのである」まで下線が引かれている。
(ここではゴチックにしてみました。)

この下線部、文脈から考えて、その意味するところは、要するに
「ワシントン州以外にも広がって行くなら、
医療職は末期医療の改善策として考えてみましょうね」ですね……。

ふ~む。興味深い結論だなぁ……。

そう思って振り返れば、真ん中あたりに
オレゴンで尊厳死法が出来たのは緩和ケアが改善されたからだ、と主張する段落もある。

そこには具体的なデータや情報は一切、全くないんだけど、
オレゴンでは医師が終末期の緩和ケアや在宅医療に秀でていて
死にたいと考えるような劣悪なケアを受ける患者が減ったから尊厳死法を作れたのだと
たぶん言いたいんだろうな……という感じの段落。
この段落が一番説得力に乏しいんだけどね。

これって……「まだらに詳細」なだけじゃなくて、「偏ってる」のか……?

だって、緩和ケアについていうなら、
オランダでは合法化以降、緩和ケアは崩壊していると前の保健相が言っているし、
「抗がん剤はダメだけどPASはOK」というのはオレゴンについては有名な話。
そういうのを全部はしょって、「成功している」って?

で、この文書、2ページめまで行くと、「回答例」なるものに出くわす。
ただし、問そのものは存在しない。

問1の回答例は面倒くさいから省いて、
問2と問3の回答例は、

問2 オレゴン州においては、医師による致死薬の処方が合法化されることによって、緩和治療の内容が改善されるという効果を生んだ。効果的な緩和治療やホスピスサービスは、患者が医師に自殺幇助を求める理由の多くに対応し、ひいては患者の自殺意思さえも変えうるということ。

問3  患者が法的判断をできる状態にあること、自発的に判断していること、十分な説明を受けた上で判断していること。



実は問2の回答の前半は、本文の内容の逆なんですわ。

本文は「緩和ケアが良くなったから尊厳死法が出来た」という趣旨なのに
回答例は「尊厳死法が出来たら緩和ケアが良くなった」と答えている。
さらに言えば、回答例の前半と後半の因果関係がムチャクチャ。
これ、本当ならペケ回答のはずなんだけど、なぜかこれが「回答例」。

で、問4のところには「訳例参照」とあるので、
ああ、さっきの下線部のことか……。

なに、これ? まさか、どこかの大学の医学部の試験問題とか……?
え、でも、それじゃぁ医学部の教育って、こんなに情報が偏向しているの……?
これで医学生に「米国の尊厳死法」とかって教育されたら、それって情報操作では……?

……と気になったので、
先のPDFのアドレスから、あれこれ検索してみたところ、
どこの医学部でもなくて、なんと河合塾! でした。

河合塾の中に「医学部学士編入コース」ってのがあるみたい↓
http://www.kals.jp/kouza/igakubu/index.html

Web講座とか公開実力テストとか通信講座とか公開模試とか、
いろいろあるみたいだから、上の「A.2.3」もそんな中の文書だったのでは?

訳例とあるから、もしかしたら英文の長文問題の日本語訳だったのか?

しかし、そういうことかぁ……と了解して改めて読み直してみると、
つくづく妙な解説文だと首をかしげてしまう。

どんなふうに妙か……というのが、
なかなか言葉で説明しにくいのだけど、

例えていうならば、Biedermanスキャンダルについて
以下のような問題文が作られているのを見せられた、みたいな……。

巨額のカネが顧問料として支払われたのは事実である。Biederman先生が2歳児だって双極性障害は診断できる、抗精神病薬を多剤投与して構わない、と論文や講演で言いまわったために、そういうのが流行になって子どもへの処方量が跳ね上がったことに懸念はある。

しかし、それでもBiederman先生の功績と権威は揺るがない。もちろん、それを疑う声は続くだろう。にもかかわらず、他の多くの著名児童精神科医が幼児期から双極性障害を診断し多剤投与を続ける可能性によって、医療関係者には、子どものメンタルヘルスを改善するために為し得ることを見極める機会が与えられるのである。

2011.05.17 / Top↑