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Not Dead YetのKevin FitzpatrickがBMJに自殺幇助合法化に反対する論考を書いている。Baroness Campbellが入院した際に医師にそれほど重い障害があったらいざという時にも蘇生も呼吸器も望まないだろうと勝手に思い込まれたために、コワくて2昼夜も寝られなかった体験を引いて、ただでさえ医療に対する高齢者と障害者の信頼度はそれほど高くないのに、医師による自殺幇助が合法化されたりすれば信頼などできなくなる、と。また下院でMcColl議員が証言したオランダの実情を引いて、あまりにも医師がお気楽に安楽死をするので、オランダの高齢者はいざという時に病院やナーシング・ホームに入ることになっても「安楽死は希望しません」というカードを携帯している、とも。:そういえば、米国の黒人は脳卒中を起こした時に911に電話して救急車を呼ぶのではなく友人・知人に電話して助けを求める、という調査結果が先週どこかで出ていた。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/8466996/Fearful-elderly-people-carry-anti-euthanasia-cards.html

上記、FitzpatricのMBJ論文はこちら ↓
http://www.bmj.com/content/342/bmj.d1883

Telegraphに、自殺幇助合法化支持の立場で本を書いた Max Pemberton氏の寄稿。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthadvice/8497894/Finger-on-the-pulse-Max-Pemberton.html

同じくTelegraphの社会保障担当記者が、合法化すれば障害者に早く死ねということになる、と。:いずれにしても英国の合法化議論、少しずつ山場に近づいてゆく気配。
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/8501306/Allowing-assisted-suicide-would-pressurise-disabled-to-kill-themselves.html

英国の社会保障費カットで、職業安定所に「障害者手当などを求める人が『自殺してやる』と脅しをかけてきた場合の対応方法」6点からなるガイドラインが配布された。本気でやる人とそうでない人の区別は難しいので、どの人にも真面目に対応するように。:でも具体的な支援の方法を奪われているのだから、このガイドラインは現場職員に責任を背負わせるだけなのでは?
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/08/jobcentre-staff-guidelines-suicide-threats?CMP=EMCGT_090511&
2011.05.09 / Top↑
外国人の自殺幇助をもっぱら受け入れているDignitasと違い
スイス国内に在住の人だけを対象にしているExitが7日、
「高齢者が自殺幇助によりアクセスしやすいように」規定を緩和。

その目的は「健全な精神状態で死にたいと望む高齢者に、無用な障害を取り除く」こと。

ちょうどチューリッヒ郡では1週間後に
自殺幇助を禁じる提案で住民投票が予定されているところだ。

Exitには現在70000人の会員がおり、
去年だけで4000人も増加したが、
それは自殺幇助への規制強化が議論されている影響だろうとExit。

去年257人の自殺を幇助し、平均年齢は76歳で
2009年の74歳から2歳上がった。

Aged “should have easier assisted suicide access”
Swissinfo.ch, May 8, 2011


【スイスでの規制関連エントリー】
スイス議会が自殺幇助規制に向けて審議(2009/6/18)
Dignitas あちこち断られた末にお引越し(2009/6/28)
スイスで精神障害者の自殺幇助に「計画的殺人」との判断(2009/6/30)
スイス自殺幇助グループExit、当局と合意(2009/7/12)
APが「スイスは合法的自殺幇助を提供している」(2009/7/18)
チューリッヒ市が自殺幇助に“規制強化”とはいうものの……(2009/7/21)
スイス当局が自殺幇助規制でパブコメ募集(2009/10/29)
スイス連邦裁判所が「チューリッヒ市とExitの合意は無効」(2010/6/18)
スイス政府、“自殺ツーリズム”全面禁止せず、規制強化で対応の方針(2010/9/18)

【最近の気がかりな議論】
スイスで精神障害者への自殺幇助容認議論(2011/3/1)
スイスの地方自治体が高齢者施設での自殺幇助合法化巡り住民投票(2011/4/15)
2011.05.09 / Top↑
Lancet最新号のラインナップをなんとなしに眺めていたら、
HIV、HPVワクチン、stillbirth(死産)、グローバルヘルス……て、
なに、これ、ほとんどBill Gatesの関心事ばっかりじゃん????

Lancet, Vol 377 NO.9777 May 07, 2011

① HIVについては論文が2本。。詳細は省略。

② 死産撲滅キャンペーン

ゲイツ財団がシアトルこども病院などと一緒にGAPPSという組織を作り
グローバル・ヘルスにおける死産・早産撲滅に大々的に乗り出したのは
以下のエントリーで紹介したように2007年、“A療法”論争が起こった年のこと。

早産・死産撲滅に、シアトルこども病院がゲイツ財団、ユニセフ、WHOと乗り出す(2009/5/14)

それを知って、ふと気づいてみれば、
米国小児科雑誌の2009年6月号は、すでに、まるで世界中で
未熟児を産ませず、生まれても救命しないための科学的エビデンス作りが進んでいるかのようなコンテンツ。
もちろん、それは、その雑誌のその号に限ったことじゃない。

GAPPSの動きについては
もともと遺伝子診断による障害予防に熱心なメンバーの集まりだから、
死産・早産撲滅キャンペーンが「命を救おう」と言いながら
実は優生思想を復活させていきつつあるのでは、と私は個人的に疑っているし、

実際、以下のような動きも拾っている ↓
「途上国の女性に安価な薬で簡単中絶“革命”を」の陰には、やっぱりゲイツ財団(2010/8/3)

そんな中、今回のLancetの動きというのは、4月14日に立ち上げられた「死産シリーズ」。
Lancetの死産シリーズのサマリーはこちら。

いつのまにか「撲滅2点セット」から早産が消えて死産だけになっているのも、
ちょっと、あざとい感じがなきにしもあらずだし、
Stillbirths: missing from the family and from family healthというコメンタリーの
アブストラクト部分を読むと、死産が女性を差別の的にすることを重要視しており、
こういう話の進め方は、彼らが狙っている早産撲滅という名の障害予防にそのまま
地滑りさせることができそうだなぁ……とも。

シリーズの目玉らしい「死産:2020年への展望」という文書の著者を見てみると、
やっぱりゲイツ財団と上記の GAPPS が入っている。さらに、非常に興味深いことに、
ここにもオーストラリアのクイーンズランド大学が絡んできている。

なぁ~るほど~。

③ HPV(ヒト・パピローマ子宮頸がんウイルス)ワクチンについては論説3本の内の1本。

Financing HPV vaccination in developing countries
The Lancet

その概要は、ざっと

HPVワクチンが市場に出回って5年。2010年段階で33カ国が全国レベルの接種プログラムを持っている。

途上国、特にアフリカ諸国はこのような普及に至っていない中、ルワンダがアフリカで最初の子宮がん予防プログラムに乗り出したのはグッド・ニュースだ。12歳から15歳の女児へのHPVワクチン接種と35歳から45歳の女性のHPV感染検査の2本立て。それぞれMerck社とQiagen社が3年間で200万人分のGardasilと25万回分の検査を提供したことで可能となった。その後もMerck社はルワンダに格安価格でHPVワクチンを提供すると約束しているが、それをルワンダ政府が支払うには外部からの資金援助が必要となるだろう。

ルワンダのワクチン接種率が上がれば、それはサブ・サハラ地域各国へのモデルとなりうるが、いずれにせよ問題はそのための資金確保である。製薬会社との値引き交渉もありうる。GAVIを始めとする多くの国際組織が女性の貴重な命を救うために尽力している。HPVワクチンの登場は子宮頸がん予防の新たな時代の幕開けだったが、資金的なメカニズムがなくては資源の乏しい国々がせっかくのHPVワクチンの恩恵も実現することができない。(ゴチックはspitzibara)



読んで、まず頭に浮かんだ感想は

・緊急度が高いとも思えないし対象者の人口に占める割合が高いわけでもないワクチンが
市場に出てたった5年で世界中にこれだけ広まる、その速度と強引さは、やっぱり異様なのでは?

・ルワンダって、民族紛争から悲惨な大虐殺のあと大統領選挙がつい最近まですったもんだしていた国。
そういう政情不安状態の国への支援として、HPVワクチンの普及が何故それほど急務なのか?

・それから、上記Lancetの論説の主張を、当ブログの4月16日のエントリーの
「慈善てな、いろんな衣をまとってやってくるんだよ」という記事の指摘と合わせ読むと興味深い ↓

ゲイツ財団が作らせ支援しているthe Advance Market Commitment(AMC)なる組織が買い上げ、慈善と称して様々な国に届けているワクチンはグラクソとかファイザーなどビッグ・ファーマの製品で、しかも欧米市場で売れまくって既にコストが回収できたワクチンなのだという。慈善の名目で、インドなどの政府は自己負担分を体よく吐きださせられているだけ



そういえばMerckのHPVワクチン、Gardasilは
先進国ではライバルGlaxoSmithKlineのCervarixに負けたんだった。

先進国では思うように売れない商品を3年分無償提供して、
その後は割引するとはいえ、途上国に押しつけて買わせるわけですね。
もちろん、その国に十分な支払い能力がないのは分かっているから
「ワクチンで途上国の子どもたちの命を救おう」を掛け声に世界中から資金を集めて
そのカネで買わせる。そしてMerckはGlaxoに負けた分を回収できる。
株価も上がる。Bill Gatesを含め株主さんたちも儲かる。

でもって、そういうふうに考えた時に、背筋がぞお~っとするほどコワいのは、こちらの1本↓

④「臨床実験:そろそろ分別あるグローバルなガイドラインを」

Clinical research: time for sensible global guidelines

アブストラクトでは
「融通のきかない官僚主義が臨床実験のスピードを遅らせ、コストを上げる一方なので、
その悪影響が貧乏な途上国に波及しつつある。そこで……」

ここでも途上国に新薬開発の恩恵が届くためには、との「おためごかし」路線で
臨床実験の条件緩和が説かれているのだろうことは容易に想像される。

しかし、先進国のビッグ・ファーマが、外からは何が起こっているか分かりにくい途上国で
医療アクセスの乏しさと教育レベルの低さに付け込み非人道的な臨床実験を行っていることも事実。

詳細はこちらのエントリーで紹介したThe Body Huntersという本に書かれている。
現在どこかが版権を抑えて翻訳作業進行中とのことだから近く日本語でも読めるようになるはず。

「ナイロビの蜂」という映画もあったし、
当ブログが独自に拾った、こんなニュースもある ↓

ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)

ゲイツ財団の資金で開発期待されるマラリア・ワクチンの治験も
現在、鋭意アフリカ各地で行われているわけですね。HIVワクチンの治験もね。

今だって、アフリカの子どもたちが治験で副作用被害を受けても、
先進国の親たちのように訴訟が起こせるわけではないだろうに……。
2011.05.09 / Top↑