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70歳以上の高齢者に自殺幇助を認めよというオランダのニュースで、
1月に目にしつつ、ひるんでしまって読まないままになっている英国作家のぶっ飛び提言を思い出したので。

その提言とは、
来るべき”高齢者の津波”に備えるためには
「街角に高齢者がいつでも死ねるよう“安楽死ブース”の設置を」というもの。

現在の人口動態では
将来的に急激な人口の高齢化が避けられず、
このままでは”高齢者の津波”が押し寄せてきて
彼らを支えきれない若年層との間で内戦が起こるので、

それを避けるためには、
特に急増の激しい超高齢層に死んでもらうしかない……というわけです。

それで、街角ごとに“安楽死ブース”を設置して、そこへやってきた高齢者には、
まずマティニを飲んでもらってメダルも上げよう、それから死んでもらおう、と。

何らかの手段を講じれば、
意思決定ができる人が自分で決めたことだという確認だって可能なはず、とも。

もともと物議を醸す言動で知られた作家らくし、
どこまで具体案として本気なのかは不明ですが、

安楽死アドボケイトのDignity in DyingのDevina Hehir氏は
Amis氏の提案が身近な人々の不幸な死に方に由来していることを重視し、

「この問題への回答は2層になっています。
まず良質の終末期ケアが受けられて、そこに十分な予算が投資されること。

次にターミナルな病状で精神的にも意思決定可能な大人が望む場合には
自殺幇助が認められること」と。


そう。
Hehir氏が言うように、
終末期ケアの経費をかけないでいいように元気なうちからどんどん死んでもらおうというのでは、
どこが「自己決定」なんだ、話をグズグズにするのも、いいかげんにしてください、と言いたい。

なにやら、いよいよ「死の自己決定権」も化けの皮が剥げて正体が見えてきた感じですが、

こんなふうに「死の自己決定権」を盾にとった「死なせろ、殺せ」の声こそ
去年からうねりまくって、いよいよ今年に入ったかのように水門を脅かしている、
そして、もうじきその水門を決壊させて、世界中に荒れ狂おうとしている「殺せ!津波」じゃないか。
2010.02.10 / Top↑
オランダと言えば1994年に世界で初めて自殺幇助を合法化した国。
さすがは“尊厳死先進国”と言うべきか――。

オランダの学者・政治家らのグループから
「不治の病で耐え難い苦痛がある人が十分な説明を受けた上での自己決定で」という
現行法の要件を緩和し、

「生きるのが嫌になったから死にたい」と自己決定することなら
70歳以上の高齢者にも自殺幇助を権利として認めよう、と主張する声が上がっている。

4万人以上の賛同署名を集めて議会での議論を求めようと活動を開始したとのこと。

「自殺幇助は専門の研修を受けた医療の専門家が慎重なプロセスを経て行うのだから
それが高齢者虐待につながることはない」

「今の法律を作る際にも濫用が起きると言われたが、
実際には起きていないじゃないか」と。



グループの中にフェミニストの方が含まれていて
自己決定権の重要さを説いていることに、個人的には目を引かれました。

ものすごく広い意味では自分もフェミニストの一人だと考えているので、
本来あってしかるべき権利を与えられていないという不当な状況に抗い、
自己決定権をもぎ取るために壮絶な戦いを強いられてきたフェミニストにとって
自己決定権に他の立場からは想像できないほどの重みがあることは理解できるのですが、

女性に未だ十分に認められていない権利は自己決定権以外にも沢山あって、
医療や介護において男性と同等のサービスを受けることができていないという
調査結果もある。

男性を「ケアされる者」とし女性を「ケアする者」と無意識に位置付ける
社会の姿勢だって、別に日本だけの話じゃない。

そういうことをそのままにしておいて「死の自己決定権」だけを求めるのでは、
逆にすべての不十分や不平等が是認されてしまうことになるのではないのか、と思う。



【15日追記】
この人たち、議会に審議を求めるため必要な4万人以上の署名を集めたとのことです。


【3月9日追記】
なんと、人口1600万人の国で、現在112500人が署名とのこと。
ただ、医師でない人に研修をさせて幇助させようという提案で、
医師の関与がなくなることから医師会は反対。

2010.02.10 / Top↑