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オーストラリアのDr. DeathことDr. Nitschkeが
世論喚起に向け、大きく仕掛けてきました。

総額6万ドルの広告費を投入し、
オーストラリア全土に看板を立て、
TVコマーシャルを流す安楽死啓発キャンペーン。

CMは手始めに、この日曜日の深夜、Brisbaneから始まり、
いずれMelbourne, SydneyそれからAdelaideでも。

CMでは、ターミナルな状態の高齢者が
自分で1つずつ決定してきた人生を振り返っていく。
そして、そうやって生きてきた人生の最後のところだけは
自己決定できないことに気づき、政治家に向けて
「その決定もさせてくれたら、どうだね」と呼びかけるというもの。

Dr.Nがこれを思い付いたきっかけは、
ABCテレビがギャグとして流した偽コマーシャルで、

その内容は
安楽死の義務付けを呼び掛けるものだったという。

Pro-euthanasia ads to hit TV screens
The Sydney Morning Herald, September 7, 2010


いつも思うけど、自殺幇助合法化ロビーって、
どこの国でも、しこたま、ゼニもってる。じゃぶじゃぶ。

前は、素朴に「一体どこから……?」と不思議なばかりだったけど、
そのゼニの出所は、やっぱり、こういうところと繋がっていたりするのか……?

ビル・ゲイツの音頭で米国の長者たちが各国政府の頭越しに世界人口抑制に取り組もうと合意(2010/6/9)
“優生主義者”ビル・ゲイツ、世界エリートの“陰のサミット”ビルダーバーグ会議に(2010/6/9)
2010.09.07 / Top↑
Montana州Libby在住のWilliam Hardgroveさん(81)は探偵業で
Lincoln郡のAndersonシェリフの友人だったらしい。

妻のSwanieさん(81)は脳性まひ以外にも、
crippling medical problems(不自由になるような病気や障害)があって
ここ数週間の間に痛みが激しくなって、薬ではどうにもならなくなっていたとのこと。

そこで8月の最後の土曜日、
Williamさんは財産価値のあるものをガレージに運び込み、
爆発する可能性のあるものを全部家の外に運び出したうえで
妻を射殺し、家に火を放ってから、自分も銃で自殺した。

この記事の表現をそのまま使うと、
「最後の、ギリギリの愛の行為」を説明するメモを残し、
妻の「苦痛を止めてあげた」のである。

友人であるAndersonシェリフは言う。
「基本的には、苦痛を止めてあげる慈悲殺だった。
善良な人たちだった。ただ、ひどい苦痛があったということなんだ」

「愛の行為だった。共感と思いやりと銃弾と放火の行為だった。
もっと他の方法があったはずなのだけど」と。

シェリフによれば、遺書には
妻があまりにひどく苦しむのを見ていることに疲れた、
もっとマシな場所がある、と書かれていたとのこと。

HE was tired of seeing her suffer so badly.

これが、慈悲殺を行う人の心理の本当のところなのでしょう。
SHE was tired of suffering ではなく、HE was tired of seeing her suffer.

しかし、この記事で、びっくりし、かつ不快なことは
こうした慈悲殺擁護の感情論だけに留まらない。まだまだ先がある。

シェリフの「他の方法もあったはずなのに」を受けて、
「支援と情報がちゃんとあるのに」と専門家が登場するのは
こうした報道のお決まりのパターンですが、

その専門家が何と、
自殺幇助合法化ロビーのCompassoin&Choiceだというのだから、
もう思わず、のけぞってしまう。

「終末期の計画、カウンセリング、オプションを
無料で提供するグループ」として紹介されるC&Cの代表者が喋っているのは、

モンタナ州では去年暮れの最高裁の判決以来、
オレゴンやワシントン州と同じく、医師による自殺幇助が認められているのだから
こんな過激な手段をとらなくても、尊厳のある死を選択することは可能だったのに、
そういう情報がちゃんと州民に届いていないからいけない。

そういって、C&Cの相談窓口の電話番号が書かれている。

「いつでもお電話ください。
我々の多くは死ぬことについてはアマチュアです。
どういう選択肢があって、どこで情報を得ることができるか知りません。
お電話ください。我々がお手伝いします。
選択肢をすべて理解した上で選択できるよう、あなたをお手伝いします」

C&Cは、医師と患者、患者と家族、家族と医師との間の
コミュニケーションのお手伝いをするだけなんだそうな。

ふ~ん。C&Cが誘導して、
息のかかった医師のところに連れて行って死なせているという話もあるけど……。

それに、モンタナの最高裁の判断だって、
ターミナルな患者で耐え難い苦痛がある人を前提にしたものであって、

この事件で殺されたSwanieさんに当てはまるとは思えない。

(脳性マヒ以外の病気や障害については詳細がないのは、
さほどの重大な病気や障害ではないからでは?

脳性まひが直接の原因となって、高齢者に起こる耐え難い痛みとしたら
身体の変形から整形外科分野の痛みか、
身体の変形が内臓に影響した苦痛かなんだろうか。

いずれにしても、Swanieさんに死が差し迫っていたとは思えない。
記事の中にも、そういう記述は一切ない。)


でも、この記事には、さらに、まだ先がある。
C&Cの次に出てくる専門家、なんと今度は癌の専門医。

耐え難い症状や平安な死への望みを患者が医師に率直に話しても大丈夫だと
感じることが大事……

……って、

脳性まひの女性が殺されて、いかに犯人の友人だったとしても警察官が
「殺人」とは言わず、法律用語でもないのに「慈悲殺」だと言い、

自殺幇助合法化ロビーやら癌の専門家が出てきて、寄ってたかって、
脳性まひが、あたかもターミナルな病状であるかのように……?

Libby shooting, arson tragedy puts focus on ‘aid in dying’
Missoulian, September 4, 2010


えーかげんにせーよ、あんたら。



【モンタナ州自殺幇助議論関連エントリー】
裁判所が自殺幇助認めたものの、やってくれる医師がいない?(MT州)(2009/4/6)
合法とされたMT州で自殺幇助受けられず子宮がん患者が死亡(2009/6/18)
自殺幇助を州憲法で認められたプライバシー権とするか、2日からモンタナ最高裁(2009/9/1)
モンタナの裁判で「どうせ死ぬんだから殺すことにはならない」(2009/9/3)
モンタナ州最高裁、医師による自殺幇助は合法と判断(2010/1/2)
MT州最高裁の判決文をちょっとだけ読んでみた(2010/1/5)
合法化判決出ても医師ら自殺ほう助の手続きに慎重(2010/1/11)
モンタナの自殺幇助合法化 続報(2010/1/1)
Montanaで最高裁判決後、少なくとも1人にPAS(2010/4/10)
2010.09.07 / Top↑
英国Sinclair氏の自殺幇助事件関連。7か月前に、氏が何度も自殺する計画を話すので施設内でミーティングがあった。その後、準備に 6カ月かかった。Dignitasで致死薬を飲むところがビデオ撮影されており、飲んだ後でカメラに向かって親指を立ててみせた。逮捕された2人と友人に交じって、弁護士もその場に立ち会っていた。
http://latestnews.virginmedia.com/news/uk/2010/09/02/talks_held_over_assisted_suicide
http://www.thenorthernecho.co.uk/news/local/tyneandwear/8372370.Suicide_man_used_camera_on_advice/
http://www.shieldsgazette.com/news/Suicide-man-spent-six-months.6511109.jp

ミズリー州で、夫が脳性まひの妻を殺した事件が「愛の行為」「慈悲殺」として扱われている。
http://missoulian.com/news/local/article_14e5e9b6-b7db-11df-aa1c-001cc4c03286.html

上記の「慈悲殺」報道を批判するWesley Smithのブログ記事。
http://missoulian.com/news/local/article_14e5e9b6-b7db-11df-aa1c-001cc4c03286.html

貧困国で食べ物を求めて暴動が頻発している。
http://www.nytimes.com/2010/09/04/world/04food.html?_r=1&th&emc=th
2010.09.05 / Top↑
【自殺幇助関連】

モントリオールで開催された第13回 World Congress on Painに出席中のNYのSloan-Kettering癌センターの神経科学者でWHOの癌と緩和ケア・ユニットのアドヴァイザーである Kathleen Foley氏が、Gazette紙のインタビューに応じ、世界中で自殺幇助合法化議論は実はすでに終わっている(dead)、人々が求めているのは自殺幇助ではなくケアである、今こそ正面から死と向き合い、痛みのケアに取り組むべきだ、と。
http://www.montrealgazette.com/health/need+pain/3476677/story.html

スイス、チューリッヒ大学による自殺幇助に関する世論調査。スイスではこの手の大規模調査は初めて。全体に死の自己決定権を認める方向ではあるものの、結果の詳細には微妙なニュアンスもちらほらしており、週明けにもエントリーにしたい。
http://www.swissinfo.ch/eng/swiss_news/Swiss_want_a_say_on_how_to_end_their_lives.html?cid=28250486

こちらは、その調査に関するスイスのラジオ。
http://worldradio.ch/wrs/news/switzerland/what-the-swiss-really-think-of-assisted-suicide.shtml?20634

英国の自殺幇助アドボケイトの広告塔 Debbie Purdyさんのインタビュー:読む気にならない。
http://www.newstatesman.com/health/2010/09/interview-suicide-8200-feel


【その他】

幼児期の子どもたちが、かんしゃくを起こすとか落ち着きがないといった理由で強い抗精神病薬を飲まされている問題。子どもの発達に影響している、と。:でも、なぜか、ビジネス記事。ある意味、医療よりもビジネスの問題だと捉えるのは正しい扱いなのかもしれないけど。
http://www.nytimes.com/2010/09/02/business/02kids.html?th&emc=th

そういう、幼児にまで強力な抗精神病薬を飲ませる風潮を作った元凶と言われて久しいBiederman博士が、成人のADHD患者にナントカいう薬が安全かつ有効だったという研究結果を報告している。
http://www.docguide.com/news/content.nsf/news/852576140048867C852577920063A978

ボトックス問題の昨日のNYT記事。どうも、FDAがまだ安全性を確信せず認可していないうちに、小児の脳性まひ患者への筋緊張治療薬として、適用外で違法な売り込みを行った、と。海外の官僚へのワイロなど穢い手を使ってまで……という疑いも出ている。:私は、もう何年も前に、日本でこの治療を実験的に受けた(受けさせられた?)青年を知っている。そういえば、あの医師は、それで論文書いてたなぁ。
http://www.nytimes.com/2010/09/02/business/02allergan.html?th&emc=th

新生児に点滴とか採血の際に痛み止めとして薄めた甘味料を与える慣行が医療現場にあるらしいのだけど、それ鎮痛効果はないからやめた方がいい、と。乳幼児期の痛みは後の神経発達に悪影響を及ぼすので、そんないいかげんなことはやめましょう、と。でも、とりあえず新生児の治療に伴う一過性の痛みに、どうしたらいいのか、というのはまた別の難問らしい。
http://www.guardian.co.uk/science/2010/sep/02/babies-sugar-pain-relief-warning?CMP=EMCGT_020910&CMP=EMCNEWEML961

ウチの子は生まれてすぐに保育器に入り呼吸器をつけられ、点滴ラインをとるために手首を切開された。今でも両手首に大きな跡が残っている。あの切開の時、麻酔はどうだったのか、本人にとって、傷口に異物を挿入されたままの状態が、あの時どういうものだったのか(もちろん本人に記憶があるわけはないと思うので、あくまでもリアルタイムの、あの時の本人の感覚)、当時からずっと小さな疑問なのだけど、怖くて誰にも聞いてみたことがない。

でも、あのICUは配慮がすばらしかったと思うのは、保育器のそばにカセットデッキをもってきて、童謡をかけてもらえたこと。頻繁に保育器のそばまで行かせてもらえたこと。中に入れない時にも、建物の外に回ると窓のところに保育器を運んできて、いくらでも気が済むまで娘を眺めさせてもらえたこと。

しかし、その娘も今日、無事に23歳の誕生日を迎えました。
プレゼントは相変わらず「おかあさんといっしょファミリーコンサート」の最新版ですが、
生意気にも「もう私を子ども扱いしないで」とホザいております。
2010.09.05 / Top↑
ウォール・ストリート・ジャーナルの以下の記事によると、
米国医学会雑誌(JAMA)に掲載された論文で、

がんに関与する遺伝子BRCA1 またはBRCA2の変異がある女性が
予防的に乳房または卵巣の摘出手術を受けた場合には、
受けなかった女性よりも発がん率が下がり、
死ぬ確率も下がっていることが分かった、と。

一般に、女性1000人に1人にこれら遺伝子の変異があり、
そのうちの50%から80%の女性がいずれ乳がんまたは卵巣がんを発症するとされる。

そこで、そういう女性には医師らから
子どもを産んだ後で乳房摘出と卵巣並びに卵管摘出が勧められている。

とはいえ、手術よりも様子を見ようとする女性の方が多く、
乳房摘出では卵巣摘出よりもさらに躊躇が強い。

今回の調査に参加した2482人のうち、
乳房摘出をしたのは247人、卵巣摘出をしたのは1000人。

医師らは
卵巣がんは治療成績が良いわりに早期発見が乳がん以上に難しいため、
遺伝子変異のある女性には摘出を強く勧めている。

今回の調査結果が、その後押しになることは間違いない。

論文著者は、
卵巣摘出によって早期に更年期を経験することになった女性について
骨密度や心臓血管障害リスクをフォローしていく、と。


Preventative Surgery for Some Cut Breast-, Ovarian-Cancer Risk
The WSJ. August 31, 2010


去年、こういうことがアメリカでは既に一般的な医療だと書いたAERAの記事を読んで、
以下のエントリーを書いたことがあったのだけど、

かなり妙だよ、AERAの“予防的乳房切除”記事(2009/1/14)

一般的な“予防医療”にしようとしている人たちがいる、ということは確かなようですね。


この問題、例えば子どもの遺伝子を親がチェックさせて、
その子どもに当該遺伝子の変異があった場合に、
病気予防のために臓器摘出を親が決める権利はあるのか
という問題もはらんでいるのでは?

“Ashley療法”の関係で、
カナダ、アルベルタ大学のSobsey教授がこの問題を考察しています。
以下のエントリーに。

A事件に「小児乳房切除の倫理」Dr,Sobsey再び(2008/7/22)


また、今日の補遺にも拾いましたが(この後でアップ)、
子どもたちがあまりにも安易に強い精神科薬を飲まされていることが
米国では社会問題視されていますが、

その一方で、こんな話題も。

小児へのRisperdalの適応外処方で乳房切除術を受ける少年たち(2009/5/28)

Ashleyの父親も、ブログで、
背の低い男児に成長ホルモン療法をやると、
副作用として胸が膨らんでくるので、そういうケースでも
Ashleyのように、あらかじめ切除しておけばよい、と提案しています。

要らない臓器、あっても役に立たない臓器は、とっちゃってOK……
利益の方がリスクよりも大きいことは、本人の最善の利益だからOK……

……という人体のパーツ化、どこまでいくんだろう?
2010.09.03 / Top↑
英国で、自殺幇助容疑で逮捕者。施設で暮らしていた76歳の重症障害者(debilitating disorder multiple system atrophy)Douglas Sinclair氏が約一か月前にスイスに渡り、自殺したのを幇助したとして、47歳と48歳の男女2人が逮捕された。保釈にて捜査続行。:これもまた起訴しても公益にならないと言って不起訴にするのでしょうか、英国公訴局長さん?
http://www.independent.co.uk/news/uk/crime/two-held-over-disabled-mans-assisted-suicide-2068388.html

皺とりのボトックスで顔の形が変わったり感覚がなくなるなどの後遺症が報告されている件で、米国当局の調査にボトックスの製造元が不正行為を認めて賠償金支払いに同意。米国では、皺なんかないはずの子どもにまで広がっている。“科学とテクノで簡単解決”文化――。:でも、この話も日本では報じられないまま、いつのまにか整形美容界からボトックスが静かに姿を消していくのかな。例の、ホルモン補充療法みたいに。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/199674.php

Homewatch Caregivers というところから、認知症の家族介護者向けに実践的アドバイス集が出ている。自分だけで介護なんて無謀だからやめておけと、ずいぶん最初の方できっぱり書いてあるのが頼もしい気がする。
http://www.homewatchcaregivers.com/downloads/guide_dementia.pdf

「ゲイのカップルは良い両親たりうるのか」という問いを立てたスタンフォード大学の研究者が、その基準に使ったのは、なんと小学校から中学校にかけての子どもたちの成績。無事に進級したか、その学年をやりなおさせられたか、を親の状況ファクターで分析して、ゲイのカップルに育てられた子どもたちはちゃんと進級しているから「親がゲイであることは子どもの不利益にはなっていない」と結論付けている。:この研究者も頭がいいだけのバカなの? ゲイの夫婦がどうとかいう以前に、「子どもの成績が良ければ、その子どもの親は良い親である」という前提は、なに、それ? 「学業に影響がなければ、子どもの不利益になっていない」って、なに、その、あまりにもお粗末な短絡は?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/199605.php

米国医学会誌で、超低体重新生児は病院の専門医療レベルが高ければ救命率が上がる、との研究結果。:意味があるのかないのか、この記事への一般・患者からの評価は5つ星で、医療職からは未評価。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/199678.php

女児の性的成熟が早まっているらしい。心理学的には、幼児期に安定したアタッチメントが得られないことが性的成熟を早めるのでは、という研究報告。昨日の、まず小児科医で対応しようという話はこういうことなのですね。:生い立ちも関係するのかもしれないけど、成長ホルモンとかワクチンだとか抗生物質だとかが、しこたま投入された食肉を通して身体に摂取しているものの影響も調べてほしいような気がする。もう追跡調査なんてやりようがないのかもしれないけど。この記事は上記と対照的に、一般・患者が未評価で、医療関係者から5つ星。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/199594.php
2010.09.02 / Top↑
ずっと、ちゃんと知りたいと思いつつ、
そのままになっていたことが

「発達障害白書 2011年版」(日本発達障害福祉連盟編)の
法政大学の佐藤彰一氏の「『障害者権利条約』と日本の成年後見制度」という文章で
分かりやすく解説されていた。

日本の成年後見制度は、
国連障害者権利条約の中の法の下の平等を定めた第12条に抵触する。

第12条の主張とは、
障害のある人もない人も法律社会の中での能力や資格(法的能力)を
等しく与えられるべきだというもの。

それに対して、日本の成年後見制度は
本人の法的行為を取り消す取消権と
本人からの委任がなくても本人に代わって法律行為を行う代理権という
2つの仕組みで成り立っていて、

本人の法的能力を制限することによって、
契約社会から本人を排除して保護する仕組みになっている。

それは「保護に名を借りた権利侵害ではないのか」と
佐藤氏は疑問を呈する。

一方、ドイツの世話人法でも英国のMCAでも
本人の法的能力に制約を加えるのは極めて例外的な場合に限られているという。

ハンガリーなど東欧圏では、
国連障害者権利条約に合わせて法改正が行われた、とも。

08年の国際育成会のオピニオンペーパーは
条約批准国に対して能力制限撤廃の法改正を求め、
その代案として「支援つき意思決定 supported decision-making」モデルを提示している。

オピニオンペーパーは日本育成会によって翻訳されています。
http://www.ikuseikai-japan.jp/pdf/position-paper2.pdf

ポジションペーパーの原文はこちら

まだ、ざっと読んでみただけなのだけど、
これに沿ってAshley事件を考えてみるとどういうことになるのだろう。

佐藤氏の解説を読みながらAshley事件を頭に浮かべた限りでは

父親やDiekema、Fostらの主張するところは、
重症児は、その障害の重さゆえに、介護者たる親の決定で、ということなのだから、

もちろん、supported decision-makingのスキームでも障害が重すぎて対象外だと主張するのだろうし、
それは、すなわち、保護するために排除する、排除して保護する、という立場だし、
だからこそ人権擁護の立場から「保護や親の愛に名をかりた権利侵害だ」という批判が出ている。

それに対して、
イリノイのK.E.J.判決や、米国小児科学会の方針、産婦人科学会の方針、
A事件の論争でいえばWPASの見解やQuellette論文その他が検証しているように、
障害児・者の子宮摘出や同様に侵襲撃度の高い医療については親や後見人の決定権の例外として、
意思決定に至る然るべきプロセスの、緩やかながら一定のスタンダードのようなものが英語圏にはあり、

それは、ポジションペーパーに見られる理念に、
少なくともDiekemaらのスタンスよりは、はるかに近い。

一方、人権条約もポジションペーパーも、
本人の最善の利益を重視しているスタンスにおいて、
どこかにA療法の論理に道を開く隙間があるのでは……という不気味さも
私には何となく感じられていて、

こういう理念や仕組みと
パーソン論で障害のある新生児や重症障害児・者には道徳的地位を否定するSingerの議論や
Fostらの「無益な治療」の切り捨て論が許容されていきつつある英語圏の生命倫理の実情、
一部の終末期医療において本人の明示的な意思表示なしに安楽死が行われ始めていること
米国小児科学会が水分と栄養の停止に関する指針で児童虐待防止法を否定していること、などとは
一体どういう関係にあるのか、ということも何やら気がかりでもあって、

それやこれやを念頭に、もう一度ペーパーを読んでみようと思う。


財産管理とか生活運営などと、医療における意思決定とは同じ路線で考えられているのか、
それとも別個のものとして考えられているのか、別としたら、その距離はどうなのか
……といったことが、私の頭の中では、イマイチ整理されていないことも、
あれやこれやを考えてみるのに、しっくりしない原因なんだろうと思うのだけど、
知らないことが多すぎて、どうにもならない。

(日本では成年後見人に医療行為への同意権はなく、
法的裏付けもないまま家族同意で行われているという話もある)

医療介入については、以下などでもずいぶん言及されていると前に人から教えてもらったのだけど、
まだ、ちゃんと読み切れていない。

拷問等禁止条約(拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する条約
(外務省)

上記、取り扱いまたは刑罰に関する08年人権理事会特別報道官報告
国連第63回総会に報告されたもの。
長野英子さんのHPに翻訳紹介された、障害者関連の第三章。


多くの人の長い時間をかけた運動の積み重ねの先に、このような理念があり、そのおかげで
米国小児科学会や産婦人科学会の、侵襲度の高い医療に関する慎重な態度といった一定のスタンダードが
これまで培われてきたのだろうと思う。

問題は、やっぱり、たぶん、
科学とテクノロジーの進歩と、それに伴う社会構造や人々の意識の変化の中から、
そういう人権意識が多くの人の努力によって培われてきた歴史性のようなものを
一気に突き崩そうとする動きが出てきていること――。



【関連エントリー】
「一身専属事項の臓器提供に成年後見人は権限なし」から疑問あれこれ(2009/9/2)
意思決定ができにくい患者の意思決定について、もうちょっと(2009/9/3)

後者のエントリーで、認知症医療に詳しい三宅貴夫氏が
法的裏付けのない家族同意よりは成年後見人の権限を広げるよう提言していて、
私も、そうだなぁ……と、去年それを読んだ時には思ったのだけど、

やっぱり誰の権限で代理決定するというよりも、
プロセスがどれだけ本人主体になっているかという問題のような気がする。

「本人の最善の利益」という、どうにでもなるアリバイみたいなものではなくて、

その最善の利益を見つけるに至るまでに、
どういう立場の人たちが、どういう姿勢とプロセスで
その人の人となりと人生の一回性を尊重し、意思決定に至ったか、ということ――。

でも、それを制度化することが、難しいのだろうなぁ……。
2010.09.02 / Top↑
これからの仕事は、高度教育を必要とする高収入の仕事と、低収入の単純作業とに2極化が進む。
http://www.nytimes.com/2010/09/01/us/01jobs.html?_r=1&th&emc=th

以前から補遺でフォローしてきた、イランで投石処刑の宣告を受けた女性の件で、土曜日に、日曜の夜明けに絞首刑にすると女性に伝えられたが、結局、その処刑は行われなかった。女性が覚悟を決めて刑場に赴こうとしたところで中止が告げられたという。なお、家族は土曜日に女性が会いたがらないことを理由に面会を拒否され、女性の方は誰も面会に来ていないと告げられていたとのこと。女性の息子は、当局が国際世論からの批判への怒りを自分の母親にしっぺ返ししている、と批判。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/aug/31/sakineh-mohammadi-ashtiani-mock-execution-stoning?CMP=EMCGT_010910&CMP=EMCNEWEML961

ケント大学の研究で、小学校の先生には「女の子は男の子よりも真面目によく勉強するから勉強が良くできる」という性別ステレオタイプがあり、それが子どもたちの成績実態に影響している、と。:じゃぁ、そのステレオタイプと、その男女の意識やパフォーマンスへの影響が、どこからどのように逆転していくのかを、誰かつぶさに調査してくれないかな。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/sep/01/girls-boys-schools-gender-gap?CMP=EMCGT_010910&CMP=EMCNEWEML961

米国の女児に婦人科の診察が必要な事例が増えてきているので、いきなり婦人科へ行かせるよりも、内診も含め小児科で対応するようにしては、と米国小児科学会。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/199445.php

薬局で買える風邪薬とか頭痛薬などを親が安易に規定量以上に飲ませて、子どもが救急に運び込まれるなどの事例が起こっている。オーストラリア。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/199354.php
2010.09.01 / Top↑
MSNの健康>妊娠カテゴリーの掲示板に
昨日、Pillow Angelというタイトルのスレッドを立てた人があり、
今日現在も書き込みが続いています。

http://boards.msn.com/Healthboards/thread.aspx?threadid=1799093&boardsparam=Page%3d1

まるで07年の、事実誤認と感情論に満ちた“論争”のデジャ・ヴ。

まず事実誤認がハンパじゃないことが07年の論争そのものなのだけど
ここでみんなが、ぬちゃくちゃと無責任に言い合っていることをまとめると、
おおむね以下のような感じ。

親が本人の利益を考え、愛情からやったことだからOK.

介護しているのは親なのだし、その身になってみないと分からないことなのだから外野が批判する資格はない。

アシュリーのように「常時、植物状態にある」ような子どものことは、介護している人が決めればいい。

他の子どもならともかく、これほど重症な子どもなのだから、許される。

こんな決断をしなければならない親が気の毒。それに引き換え、私はそういう子どもがいなくて、つくづく良かった。




障害児への侵襲度の高い医療行為については親の決定権の例外とされていることや、
そうした医療行為の妥当性を検討する場合の然るべきプロセスについて
この3年半、多くの学者が論文を書き、議論を戦わせてきたことにも

また事件の詳細をきちんと知って議論することの必要性にも

この人たちはまったく無関心で、3年半前と変わらず
自分の中にあるステレオタイプに基づいて自分が見たいものを勝手に見ては、
3年半前と全く変わらない、単なる感情論と何の根拠もない感想を述べ合っているのが、
何とも言えず、空しい。

それでも、こういう声に「世論」と名付けて
何らかの根拠に使おうとする人たちもいるのだろうと思うと、心底ゲンナリする。

今さら、なんだって、わざわざこんなスレッドを立てるヒマ人が……と考えると、
もしかしたら、これもまた例の怪現象の新しいパターンなのかも……。

アシュリーの年齢を間違っていたり、
子宮ばかりか卵巣まで摘出されたかのような事実誤認も、
“いかにも”な演出と考えられなくもないし……って、疑心暗鬼かなぁ……。

07年のAP通信記事ばかりがコピペで
あちこちのブログ(たいていは科学とテクノ系)にアップされる怪現象
最近とみに頻度を増していることを考えると、

どこかで
「みんな、“Ashley療法”のことを忘れるなよぉ。
もっと議論して、盛り上がり続けておくれよ。せっかくの名案なんだから」と
ジリジリしている人が、いるんだろうな……という気がしてならないものだから。
2010.09.01 / Top↑