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Ashley事件を当初から追いかけてくださっていて
去年5月のWUのシンポにも行かれたOregon州在住の小山エミさんが
今回のシンポにも行かれ、去年と同様に会場から鋭い指摘をされたようです。

詳細な報告をブログにアップされています。

英語で相当な長文で、私もまだ読んだばかり。

すぐには頭がまとまりませんが、
取り急ぎ、紹介まで。

非常に重要な報告です。



Seattle 子ども病院が立ち上げたWorking Groupの議論は
要はAshleyケースの正当化に使われた論理をさらに強固に(強引に)練り固めただけといった印象ですが、

重要なのは、
Ashley以後、既に大きな病院が倫理委の1年間の検討を経て成長抑制を実施したケースが
いくつかある事実をDiekema医師が明言しているなど、

小山さんのエントリーのタイトルにあるように
ホルモン療法による重症児の成長抑制が通常の医療の選択肢となっていきつつあること。

しかも、成長抑制の対象となる「重症児」の基準は実に曖昧なまま。

Ashley事件の際に指摘された問題点は
表層的に検討・否定された形をとっただけで。

なんとなく「子どもの医療については親の選択権だから」みたいな雰囲気でなし崩し的に。

まさに当ブログが恐れていた通りの展開というほかなく、
ちょっと呆然としています。

小山さん自身、
Working Groupの議論から障害当事者が締め出されていることの問題を指摘しつつも、
この長い報告の最後を次のような言葉で締めくくっておられます。

しかし、こうした動きはもはや動かしようのないものと思われ、
我々には成長抑制の実施に待ったをかけるためにいったい何ができるのか……?

Any ideas?
2009.01.27 / Top↑
米国カリフォルニア州の8つ子の誕生については
夕方、日本のニュースでもやっていて、

私が見た「スーパーニュース」では
「3人は人工呼吸器が必要」「でも、みんな元気」だと言っていたけれど、
(「人工呼吸器が必要だけど、元気」というのにイマイチ引っかかったけど)

以下の記事によると
人工呼吸器をつけたのは2人で、
3人目は「酸素が必要」。
が、全員、「状態は安定している」。

排卵抑制剤の使用も含めて母親に関する詳細は明らかにされていません。

今回の出産には分娩室4室を使用。
病院スタッフは46名を動員。

最初の子どもが取り出された際に大きな産声をあげ脚を蹴っていたので
「最初の子どもが健康だったことで手術室の緊張が和らぎましたよ」と
担当医の1人Gupta医師。

今回の出産があったThe University of Southern Californiaの生殖医療プログラムの責任者で
今回の出産には関与していないRichard Paulson医師によると、
早産の8つ子には呼吸不全や神経障害など重大な健康リスクがあるほか
母体の出血リスクも高まる。

同医師は
「8人全部を産むのは危険な決断です。
 私なら、いかなる状況下でも勧めませんね。
しかし親の決断は尊重しますよ」

Woman gives birth to octuplets in SoCal hospital
The Washington Post (AP), January 27, 2009


8つ子でなくとも
似たような状況下で障害を負った子どもたちがいる。

彼らを含め世の中の障害児たちは、
「障害のある子どもが生まれると医療や教育で社会に多大なコストがかかる」と
しきりに指差されている。

「だから、生まれても殺そう」という声まで起こっている。

その一方で、
障害のある子どもが生まれるリスクを人為的に高めるに等しい行為について
誰も何も言わない分野もある──。

【追記】
その後、この女性には既に6人の子どもがいたことが判明し、病院は批判を受けています。
2009.01.27 / Top↑
NHSは知的障害者に適切な医療を提供しておらず、
英国の医療は知的障害者を差別しているとして、

2007年には知的障害者のアドボケイト団体Mencapが
障害があるために本来受けられるべき医療が受けられずに
落とさなくても済んだはずの命を落としてしまった知的障害者6人のケースを取り上げて
報告書 ”Death by Indifference(無関心による死)”を刊行。
(こちらからダウンロードできます)

また、去年7月にはJohathan Michae卿による独立の調査の結果が
報告書”Health Care for All” (万人のための医療)にまとめられ、
(こちらからダウンロードできます)

NHSでは知的障害のある人を保護する法律が守られていない実態が明らかになったことから、
英国保健省は知的障害者が医療において不当な死を迎えている実態の調査に乗り出すことに。

Vulnerable deaths inquiry set up
The BBC, January 19, 2009

なお、英国保健相は
Valuing People Nowと題した今後3年間の知的障害者の処遇改善施策に関するコンサルテーションを終え、
その結果を1月19日に発表したばかり。

"Death by Indifference"で報告された6人のケースのうち
Emmaの場合を簡単にまとめた Mencap のページがこちら

癌の痛みがあるにもかかわらず
知的障害のためにコミュニケーションがとれずパニックもあったため
治療に同意が出来ないとして病院が治療を拒否、
何度も母親が病院に連れて行ったにもかかわらず
病院は痛みを止める治療すらせずにEmmaを施設に帰し
そのうちに手遅れになったEmmaは25歳で亡くなった、とのこと。


私がネット上で英語ニュースをチェックするようになった2年半くらい前から
英国ではNHSの医療で知的障害者が平等な医療を受けることが出来ていないと訴える声が
頻繁に上がっていました。

それがやっとこういう調査に結びついたのだと思うと、とても嬉しいニュースです。

が、もちろん報告書に挙げられているのは氷山のごくごく一角のはず。
知的障害児・者に限らず、認知障害のある高齢者も含め、
こうした医療ネグレクト(そういう表現は使われていませんが)の被害者は
実は非常に多いのではないでしょうか。


日本での実態も気になります。

娘の腸ねん転の際、私たち親子も同じような体験をしました。
外科スタッフは、いくら訴えても娘の痛みに全く対応してくれなかったし、
「何が起こるか分からないから、なるべく手を出したくない」という姿勢や
「重症児だから、どうせ本人は何も分からないし」という思い込みがとても露骨でした。

重症児の命は障害のない子どもよりも軽んじられているとも感じました。

この時の体験については、
カナダの障害当事者コラムニスト Helen Hendersonさんが書いたコラムに併せて
こちらのエントリーに簡単にまとめています。
2009.01.27 / Top↑