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BBCの障害者問題サイトOuch! に
Disability Bitchというペンネームの障害女性が書いている辛口コラムがあって、5月1日の記事で
最新テクノロジーが「障害を治す(cure)」と喧伝される現状に鋭いツッコミを入れています。

まず彼女が冒頭で言い放つのは
「あたしはそもそもcuresという奴が大嫌い。
 別に健常な身体になりたいと思わないということもあるけど、
第一、curesなんて役に立たないからさ」

Disability Bitch vs. Cures
Ouch! BBC, May 1, 2008

特に取り上げられているのは2本の「視覚障害が治る!」的テクノロジーのニュースで
その1つは「人造の眼は‘全盲が治る希望’」。

英国で人造の眼が作られ、
50代の全盲男性2人に臨床実験として入れられたという話なのですが、
Disability Bitchが指摘するのは、よくよく本文を読むと、
「誰かが人造の眼を作った、でも人に使い物になるかどうかまだ一切分からない」
という話に過ぎないじゃないか、
じゃぁ、使い物になると確かめてから発表すりゃいいじゃない、と。

仮にこの人造の眼が機能して成功を見たとしても
それはせいぜい明るいところと暗いところを区別する程度の視力だというなら
タイトルの‘全盲が直る希望’というのは誇大広告でしょ、
やっている医者が「楽観的」だって言ってるんだから、ま、いいんだけど。
それにしても「楽観的な医者」だってさ。どうよ、それ。

もう1つは、遺伝子治療によって視力が回復したというニュース。

進行性の遺伝病で視力を失っていった少年に遺伝子治療を行い、
暗い部屋や夜の街でも1人で歩けるようになった、という話で、

当人のためにはよかったねと思うけど、
この研究に参加した他の2人の患者には副作用もなかった代わりに改善もなかったんだよ。
アメリカの同じような研究では3人の患者の視力が回復したけど、
1人は角膜に穴が開いちゃったというし。
角膜に穴なんて、その人は脳に穴を開けられるのと同じくらい嬉しかったんじゃない?

だからさ、みんな、こんなニュースに喜んで
早まって障害者手当てを断ったりしない方がいいよ。

……ざっと、大筋はこんな感じでしょうか。
本文のbitchyさが今ひとつ訳出できていないような気もしますが。

このコラムでDisability Bitchが書いていることの中から
特に面白いと思った部分を以下に。

・長いこと障害と付き合っている人はたいてい上手にありのままの自分をやってるもんだよ。(… very good at being themselves)

・医学の発展が常に悪だと言っているんじゃない。常に善だとは限らないといっているだけ。奇跡なんて起こらないんだよ、みんな。それに仮に奇跡が起こるとしても、起こしてくれるのは医療者じゃなくて神とかじゃなかった? 

・私たちには障害があるんだから、それをそのまま良しとしようよ。……今度誰か楽観的な医者がドアをノックしたらさ、ま、座ってもらって、深呼吸して頭を冷やして、一緒にドーナツでも食べたら?

ドーナツはDisability Bitchさんの好物らしくて、
障害があっても日々の暮らしの中にちゃんとある、ささやかな喜びや楽しみの象徴みたいです。

ちなみにDisability Bitchさんのコラムは毎週木曜日に更新。あ、今日だ。
2008.05.15 / Top↑