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インターネットを通じて1000人に質問形式の調査をおこなったところ、
アメリカ人の成人の8割以上が死ぬ権利は自己決定であり、
政府や教会その他第三者に決められるものではないと考えているとの結果が出た。

ただし60歳以上でリビング・ウイルを持っているのは50%のみで
60歳未満では25%以下。

また、質問を受けた1000人のうちほぼ66%が
医師による自殺幇助が自分の住む州で合法化されることを望むと答えた。

ほぼ半数が
将来自分が高齢の家族や有人の介護を担うことになる可能性がある、と答えた。

さらに90%以上が、
自分が植物状態になったとしたら人工的生命維持装置は外してほしい、と答えた。

80%以上が、苦痛があれば眠らせて欲しい、と答えた。

Americans want choice to end life:poll
Reuters UK, May 15, 2008

元データはこちらの高齢者向け雑誌ELDRのサイトに。

ELDR誌の編集長はリビング・ウイルを書いている人の少なさに、
「現実を受け入れていないけど、予期しない出来事はある日突然起こるのに」
……てな趣旨の発言をしており、

そもそも何の目的でやったかということまでスケスケの、なんとも誘導的な調査では?

いつ何が起きるか分かりませんよ、
意識があったら苦しいですよ、
植物状態になったら生命維持装置につながれますよ、イヤじゃないですか
将来だれかの介護をするのは大変ですよ、覚悟はありますか、
あなたも愛する人にそんな迷惑をかけるのはイヤじゃないですか……と

人を脅かして、世論を尊厳死や自殺幇助の合法化に向けて煽る――。
調査という名目で、やっているのは実は世論誘導ではないか。
日本でも、そのうち、こういう調査がでてくるかもしれませんね。

ところで、この記事の中に私は非常に気になる記述があって、

アメリカで医師による自殺幇助が法律で認められているのは現在オレゴン州のみですが、
オレゴンに次いで合法化を検討しているのがワシントン州だというのです。

どうしても、連想が繋がってしまいます。

ワシントン州……シアトル……第2のシリコンバレー……ゲイツ財団(慈善資本主義)……ワシントン大学……
IHME……グローバルな病気負担プロジェクト……

この連想の先に医師による自殺幇助の合法化を(いずれ「無益な治療法」も)加えてみると、
ほとんど出来過ぎといってもいいほどカンペキな功利主義モデルが出来上がるのでは?
2008.05.18 / Top↑
もともとモノを知らない私にとっては、
最相葉月の「いのち 生命科学に言葉はあるか」では眼から落ちたウロコが多かったので、
自分のメモとして、落ちたウロコを以下に拾っておこう……というエントリーです。

・クローン羊のドリーは2003年に進行性の肺炎にかかり安楽死させられた。

・日本では脳死議論は長期に渡って深められたが、その一方、妊娠中絶が頻繁に行われているのに生命の誕生がどこからかという肝心の議論は起こっていない。これは検証しなければならない。(島薗―最相)

・遺伝子組み換え技術は家畜の品種改良に使われている。脂肪の少ない豚、妊娠せずに乳を出し続ける牛、病気にかかりにくい家畜など。(山内―最相)

☆スーパーで大豆では表示を見るけど、肉に遺伝子組み換え技術が使ってあるかどうかの表示を見た記憶はないような……。飲まないから知らないけど牛乳は? 家畜が食べる飼料に遺伝子組み換えがされていても家畜自体で行われていなければ「遺伝子組み換えは行われていない」ということになるとしたら??

・日本の実験動物への保護はむしろ後退している。動物福祉という概念や意識そのものが日本には浸透していない。(山内―最相)

・動物や淡水魚で既に遺伝子汚染が起きている。人間が作るものと自然が作るものの違いは時間軸。近年の科学には時間軸というものが感じられない。(萩巣―最相)

・1948年から慶応義塾大学で医学部学生の精子を使うAID(非配偶者間人工授精)が行われ、既に3万人以上が生まれているが、そうして生まれた人の声が表に出てこない。2005年5月日本遺伝カウンセリング学会で初めて31歳の男性が実名で名乗り出た。(最相)

☆AIDで子どもを持った父親の苦悩に対して最相さんが温かい眼を向けているのが印象的だった。

・1個の細胞は長い「原因―結果」の繰り返しの歴史を経て今に至っており、合成DNAには歴史性がないので、遺伝子を合成して組み込んだからといって同じものにはならない。歴史性とは時間軸と、それから順番。DNAに1000個の変異を一度に入れるのと1000年かけて入れるのとでは答えが違う。ゲノムと形質の関係とはそういうもの。(古澤―最相)

・病気にも歴史性があって、特定の遺伝子だけが変異しているわけではない。その病気の遺伝子だけを入れて疾患モデル動物を作っても、本来の病気は体質など多くの要因が関わって起きているので本当のモデルにはならない。(古澤―最相)

・人間だってアリだって何億年もかけて今がある。だからかけがえのない命であり、生物学的にも奇跡。今ここにいるということが尊厳。(古澤―最相)

・日本では内閣府総合科学技術会議生命倫理専門調査会が2004年7月に「ヒト胚の取り扱いに関する基本的な考え方」をとりまとめたが、その議論の過程は極めてずさんなものだった。一部委員が問題点を指摘する意見書を発表。

(この問題については最相氏主催のLNETにも。ただし更新は既に終了。)

・日本では体細胞由来クローン牛「かが」、「のと」など425頭が生まれているが、死産31%、病死21%。病死のうち55%程度にはひどい形態形成異常が見られて殺処分された。(近畿大農学部・角田幸雄教授の文部科学省「特定胚およびヒトES細胞研究専門委員会・人クローン胚研究利用作業部会」での参考人発言)

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一番面白かったのは古澤氏との対談。
何億年という時間をかけて様々な出来事が、たまたまこのような順番で起こってきた、その結果として
今の遺伝子があり個の存在があるという話にいろんなことを考えさせられた。

もう1つ印象に残ったこととしては、
ジャーナリスト後藤正治氏の姿勢に、立花隆氏にちょっと似た匂いを感じたこと。
脳死批判から興味を持って調べるうちに先端医療の技術に魅入られて
結局は科学者・医師側に取り込まれてしまった立花隆と同じような匂い。

最相氏も古澤氏との対談の中で
「技術を知れば知るほど理解してしまう」ことの危惧を語っていて、

頭がいい人だからこそ知的欲求が高くて
常により高度な知識を追求し続けるのだろうし、
また知ることが純粋に愉悦でもあるのだろうと想像はするのだけれど、
そこには最先端の科学者と同レベルの知識を身につけられたことに対する優越意識も働いて
科学者側に自己同視してしまうということもあるんじゃないのかなぁ……などと夢想しつつ読む。

そういえば、DBS(脳深部刺激術)について立花隆氏と対談した際、
世界的権威である日大の片山容一教授のほうが
立花隆氏よりよほど患者の人権についての意識も高く、
技術の適用についても慎重だったのに驚いたことがあった。

医師でも科学者でもない人が技術についての知識を専門家並に身につけた場合、
専門家以上に技術の可能性に魅入られるのかもしれない。
対象者へのリスクや倫理的な問題をリアルに直接体験することがないままに
頭の中だけでリスクと利益とを描いてしまうからなのかなぁ……。

そういえば、自らトランスヒューマニストを名乗ってバラ色の未来を語る人たちって、
当ブログで言えばDvorsky、Hughes、Bostrum、Namm、Kurtzweilなど、
案外、自らは技術開発にも医療にも直接関っていない人が多いな……。

(上記トランスヒューマニストについては「トランスヒューマニズム」の書庫に)
2008.05.18 / Top↑