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当ブログで去年あらまし追いかけていたBiederman医師のスキャンダル続報。
(これまでのエントリーは文末にリンク)

著名児童精神科医Biederman医師には
製薬会社からの金銭授受を「利益の衝突」として適正に申告していなかった疑いと、
製薬会社の利益になるように研究データを操作した疑いと、
去年のGrassley上院議員の調査から2つのスキャンダルが持ち上がっており、
ご本人は当面研究活動から身を引いて、Harvard大学とNIHが現在調査を行っているところですが、

不適切なマーケティングでメディケイドの給付金を詐取したとして
州が製薬会社を訴えている一連の訴訟においても
Biederman医師は鍵となる証人でもあって、

そちらの裁判に同医師が提出した資料から
またも新たな疑惑が浮上。

かねて癒着が取りざたされてきたJohnson&Johnson社の役員に対して
B医師が行った臨床実験の予定に関するプレゼンにおいて、
それらの治験からはJ&J社の利益となる結果が出ることが予め明示されていた、というのです。

たとえば「2004年の主要プロジェクト」は、
J&J社のRisperdalの小児の双極性障害に対する効果を、競合する他の薬と比べる実験と説明され、
「Risperdalの優位を明確化する」と(実験前なのに)結果が予測されていた。

2005年にBiederman医師は実際に論文を書き、
RisperdalとEli Lilly 社のZyprexaを比べて
前者は被験者のうつ症状を改善したが後者は改善しなかったと報告。

またJ&J社のConcertaの青少年での研究である「2005年の主要プロジェクト」は
J&J社の幹部向けプレゼンで
「成人のADHD(NOS?)にConcertaが有効だというこれまでの研究結果が
この治験によって青少年にも当てはめられることになるだろう」と説明されており、

実際に翌2006年にBiederman医師を主著者とする論文は
Concertaを子どもに投与すると成長が止まるという懸念を打ち消して見せた。

また去年は
Risperdalが双極性障害のある子どものADHD症状を改善したと論文報告。

これらの提出資料は「封印してほしい」と裁判所に要望したようですが、
その前にNY Times の知るとこととなってしまったのだとか。

それから、ちょっとよく分からない話として、

上記の裁判での州側弁護士とのやり取りで
Harvardでの肩書きを聞かれ「full professor」だと答えた後に
「その後にくっつくの(肩書き)は?」と問われて
「神」
「“神”とおっしゃいましたか?」
「はい」
という問答があった模様。




この記事の中の NOS というのが分からなくて検索していたら
こんなものに行き当たったので、ついでに。

重篤副作用疾患別対応マニュアル
悪性症候群
平成20年4月 厚生労働省



2009.03.21 / Top↑
去年の8月に学習障害の権威に患者への性的虐待疑惑のエントリーで取り上げたニュースの続報。

もうここ数年診療は行っていないとのことですが、
患者多数から性的虐待をめぐる訴訟を起こされている学習障害の権威Melvin D. Levin医師が
North Carolina州の医療委員会との間で
同州ではもちろん、その他の場所でも今後一切医療を行わないと合意。

ただ、Levin医師は虐待の事実を一貫して否定しており、
同意書も理由が書かれていない非常に曖昧なものに留まっているとのこと。



上記リンクのエントリーでも書きましたが、
この問題で最も不快なのは権威に弱い医療界の迎合・隠蔽体質で、

Levin医師にこうした疑惑や噂が付きまとっていることを
病院も大学も何年も前から知らないわけではなかったのに、
権威ある(おそらく権力もある)大物医師だったために
知らぬフリで不問に付してきたこと。

そうした組織や医学界の政治的配慮や政治的判断が
子どもたちを犠牲にし続けてきたのです。

しかし、Ashley事件の背景を知れば知るほど
医療の世界の方々に心からお願いしたいと痛切に願うのだけれど、

組織や制度の中で働いていると、
時に問題がことの本質を離れ、政治的な事情によってものごとが動いてしまうことは
誰しもが体験していることですが、

少なくとも最低限のところで子どもを守る責任が
プロフェッショナルとしてのあなた方個々にあるのだということを

どうか忘れないでほしい。
2009.03.21 / Top↑
海外への自殺幇助ツーリズム容認方向への
前保健相の法改正動議と、自由投票をめぐって
にわかに議論が沸騰している英国議会。

労働党の70歳の議員 Ann Cryer氏が
重病や重い障害を負うことになったら自分は片道切符でスイスへ行く、と発言。

既に子どもたちにもその意思は伝えてある、と。

「認知症になったり、ひどい障害を負って100歳まで生きるなんて、したくない。
MSや運動神経の病気であまりにもたくさんの友人を亡くしてきたから
重い障害を抱えて何年も生きるようなことはしたくない。

もう子どもたちにも、自分でいったん決心したら
私をスイスへ連れて行ってほしいと伝えてあります。

私のはスイスへの片道切符。
決して勇気ある行いではないけど、
そういう状況では私にしても他の人にしても、そうするしかない。
この国の法律は変える必要があります。

法律を明確にしなければ。

今までのところ、自殺幇助で起訴された人はいないと思いますが
そのうち、何も間違ったことをしたわけでもないのに罪に問われる人が出ますよ。
だから法改正が必要です」

ただし、ここでも議員が言っている「自殺幇助」は
家族なり友人なりを意思による自殺幇助の目的で海外へ連れて行く行為のこと。

現在の英国の自殺法は1961年にできたもので、
具体的に何を自殺幇助とするかが曖昧なため、
今のように英国人が100人以上もが既にスイスのDignitasクリニックで自殺している中、
それに協力する家族や友人の行為が自殺幇助をみなされた場合には
最高で14年の禁固刑となる可能性があり、

去年からMS患者のDebbie Purdy さんが法の明確化を求めていた。

MP Ann ‘would go to suicide clinic’
The Telegraph & Argus, March 20, 2009


しかし、Cryer議員がここで言及しているのも、
「重い病気」であったり「恐ろしい障害」であったり「認知症」であったり

決してOregon州などの尊厳死法が対象としているターミナルな病気ではないことには
十分に注意すべきではないでしょうか。

私が目下、気になって仕方がないのはこの点で、

そこの線引きが十分でないまま自殺幇助が議論されればされるほど、
重い障害はターミナルな状態と同じくらい悲惨であり、
尊厳のない状態、または生きるに値しない状態だという認識が
社会に広がっていく危険があると思う。


こういう発言を受けて
その内容を不用意に「最悪の事態がおきた場合には」という文言でまとめる記者にも
もうちょっと慎重かつ厳密な表現を望みたい。
2009.03.21 / Top↑