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3月1日に連合会長 Juan Mendoza-Vega氏の名前で出されたもの。

the World Federation of Right-to Die Society の理事会は
FENの幹部4人の逮捕を強く懸念している。
その一人FEN副会長のTed Goodwinを我々の多くは何年も知っており、
彼のことは非常に思いやりのある人間だと考えてきた。

Tedの逮捕の理由に関して強調しておきたいのは
絶望的にターミナルな状態にある人や不治の慢性病で非常に苦しんでいる人は
その苦しみが耐えられる範囲を超えた時には
静かな死を求めることが多いという事実である。
これは合衆国ではOregonとWashington州で、
欧州ではベルギー、スイスで合法的に可能であり、
まもなくルクセンブルクでも可能となる。
合理的な法律がないために、FENのような組織が時として
選択権を推奨する者が考えるギリギリまで法律に迫ろうとして、
ラインに近づいてしまうことがある。

死ぬ権利協会世界連盟の理事会は
終末期の病気の人または不治の慢性病で非常に苦しんでいる人が
合法的に尊厳のある人間的な死を獲得することができるよう法律改正を支持する。

FENに関する声明と題されてはいますが、
内容としてはFENが今回摘発された非合法の自殺幇助の可能性について
世界連合の理事会としてのスタンスが明確にされているわけではなく、

どちらかというと、
FENがこういう行為を選択するのも
自殺幇助が合法化されていないことが原因なのだから、
ターミナルな人と不治の慢性病で苦しんでいる人については
自殺幇助を合法化せよ、というメッセージ。


ちなみに、この連合には日本の尊厳死協会も加盟しています。
(リンクの記事では世界連盟と訳していますが、
 さきほど日本尊厳死協会のサイトを確認したら「連合」となっていました。)

ということは、
日本尊厳死協会もこの声明にも賛同しているのでしょうか。

協会サイトでは尊厳死の対象者は傷病で「不治かつ末期」となった人とされていますが、
不治の慢性病に非常に苦しんでいる人にも「死ぬ権利」を認めよう……と?

確かに日本尊厳死協会のリビング・ウィルには
「不治であルカ脳性はあっても末期ではない」植物状態での延命治療を拒む項目が含まれていますが。



Statement Regarding Final Exit Network
The World Federation of Right to Die Societies, March 1, 2009


2009.03.10 / Top↑
以前から一度英国の介護者支援について書きたいと思っていたので、
昨日のエントリー「イギリスではなぜ散歩が楽しいのか」という本からを機に、

以下は「介護保険情報」2007年6月号の
「世界の介護と医療の情報を読む」という連載で書いた文章の一部です。


充分に眠れていますか? ストレス、不安、落ち込みは? あなた自身の健康状態は? 一週間のうち介護に使う時間は? 緊急時に頼れる人は? もう続けられないと感じていますか? 仕事と介護の両立は大変ですか? 朝から晩まで自分の好きなように過ごせた日は、いつが最後でした? 

日々自分のことは後回しにして家族を介護している人の心に沁みる、こんな問いが並んでいるのは、英国の介護者支援団体Carers UK -the voice of carers のHPである。英国では2000年のCarers Actにより、各地方自治体に対して、介護者の希望があれば、介護者自身のニーズ評価アセスメントを行うことが義務付けられた。先の質問は、Carers UKの情報提供ページで、アセスメントを受ける介護者が予め整理しておくとよいと勧められるポイントの一部。

Carers UKの解説によると、介護者が16歳以上であれば、介護される人がソーシャルサービスの利用を望んでいなくても介護者アセスメントを受けることができる。患者の退院に備えた「介護するつもり」でも可。ソーシャルサービスに直接電話で申し込むか、GP(かかりつけ医)または保健師に連絡を依頼する。目的は、介護と自分自身の生活のバランスをとり、介護者自身のニーズに対して支援を受けられるようにすること。例えば掃除や洗濯の手伝いがあれば、または通院や通勤にタクシーが使えれば、または安心のための携帯電話があれば介護が続けられるのであれば、それらも介護者サービスの具体例だ。アセスメントを行う人は介護者が介護役割を望んでいるとか、続けたがっているとの予見に立って話を聞いてはならない。地方自治体には介護者サービス提供の認否基準を明らかにすることが求められており、ソーシャルサービスは財源や資源の不足のみを理由に介護者サービス提供を拒むことはできない。

日本の介護者からすると夢のような話だが、これはあくまで制度の理念を介護者の立場でCarers UKが解説したもの。現実には「アセスメントの質にもばらつきがある」。また「悲しいことに介護者がアセスメントを受ける権利は専門家の間でも周知されていない」ので、実際にアセスメントを受けた介護者は3分の1程度。こうした現状を受けて、04年に改定されたCarers Actでは、介護者アセスメントに関する情報の周知が地方自治体に義務付けられた。

また、同じくCarers UKのHPによると、昨年のthe Work and Families Act では、柔軟な働き方を求める権利が介護者に認められた。今年4月から施行。雇用者側にも拒む権利があるが、2年前から認められていた6歳までの子どもと18歳までの障害児の親での実績によると、要求の8割が認められているという。

なお、英国政府は2007年2月に
「介護者のためのニュー・ディール」政策を発表しています。

主な内容は

①介護者が危機に陥った際のレスパイトと緊急時対応のための短期在宅ケアに、地方自治体ごとに2500万ポンド。
②介護者のための全国的な相談電話整備に300万ポンド。
③1999年の全国介護者戦略の広範な見直し。
④介護者支援・教育プログラムの開発支援に500万ポンド。

これに対してCarers UKでは、
「介護者の抱える問題に対処する好機。
仕事と介護の両立、
必要なサービスにたどり着くための支援、
介護者の健康と福祉といった難しい問題に対処するには、
次の10年に向けて目に見える戦略が必要」とコメントしています。

ちなみに、この年の英国の「介護者週間」では
バーバラ・キーリー下院議員が特に介護者支援の呼びかけに力を入れていたのですが、
そのキーリー議員は
「ケア制度の一部をなしている介護者を
目に見える存在に変える必要がある。
介護者の労力を当たり前にしてはならない」と。

なかなか果たせずにいますが、
英国を中心に介護者支援についてはもう少し調べてみたいと思っています。
2009.03.10 / Top↑
NewsweekのMy Turn「私にも言わせて」コラムで
自閉症の男の子と優秀児(gifted child)の女の子がいる母親が
先にたいした見込みのない障害児にかけているお金を
娘のような能力の優れた子どもに能力に応じた教育を施すための資金に回してもらった方が
有効なお金の使い方だ、といった主張を展開しています。

IDEAによって保障された個別教育計画によって
弟の方には学校で手厚く人員配置をしてもらっているが
そんなにお金をかけてもらったところで
この子が身につけられるのはせいぜい最低レベルの学力であり、
将来的にも自分で入浴できるようになって何らかの仕事につけるとかの話、
どうせ完全な自立すらおぼつかない。

自閉症児の弟の方は能力を伸ばすためのありとあらゆる機会を与えてもらっている一方で、
娘の方は全国統一学力テストで上位5%に入る優秀児(gifted child)で、
12歳であれもできる、これもできると、高い能力に恵まれているというのに
週に3時間のgifted children向けの教室ですら個別指導を受けることができていない。

娘にこそ一対一の個別指導をしてもらえたら、
社会に大いに貢献できる能力と可能性があるのだから
障害児教育の予算は優秀児の個別指導に回してもらいたい、と。

Autism and Education
Who should we focus on – my disabled son or my gifted girl?
The Newsweek, February 28, 2009


冒頭から、
この人が息子のことを語るトーンの冷たさと
娘の能力を手放しで自慢する親バカ意識ゆるゆるとの落差に
まず衝撃を受けるのですが、

(弟ときたら、言葉は3歳児レベルだし、
いま読んだことを言ってごらんと聞いたって答えられない、
大好きなのは幼児番組で、トイレだってまだ完全に自立してない……
それに比べてお姉ちゃんの方はまだ12歳だというのに複雑な情報も論理も
またたくまに分解・再構築、独自の考えを生み出す素晴らしさで、
日曜には小説を1冊読みあげるし、新聞のスドクだってお手の物、
学校の劇の台本なんて他の子のセリフまで覚えていたんですから)

こういうものが書かれて、
それがNewsweekのようなメインストリームのメディアに掲載されるという事実にも衝撃を受ける。

能力の差し引き計算でしか人を捉えられない意識というのは
米国社会で、もうここまできてしまったのかぁ……。

改めて考えてみれば、
科学とテクノを信仰するトランスニューマニストらの能力至上主義
医療の現場でジワジワ広がっている「無益な治療」論の功利主義や
はたまたIHMEやGates財団が主張している医療資源のコスト効率基準による分配原理などを
教育現場にそっくりそのまま持ってくれば、
確かにこういう理屈になるわけで、

そういう意味では、これはここでは1人の母親の声だとしても、
これから米国社会の声がこの人の声に重なってくるということかも……。

それにしても、この文章を読んでいると、
なんか、この母親がどういう態度と物言いで子どもたちと接しているが見えるようで、
この人に育てられる子どもたちが、自閉症児のほうも優秀児のほうも、かわいそうだ。

この子たちがどちらもあまり幸せとは思えないように、
こんな能力至上主義価値観を親から植え付けられて育った頭がいいだけのエリートたちが
世の中をより良くしようと頑張ってくれるのでは、
その世の中では誰も幸せになれない……という気がするのだけどな。
2009.03.10 / Top↑