医療スタッフはどんどん減る。高齢者は増える。必然的に出てくるのは、アルツハイマー病の高齢者に家で過ごしてもらうためのコンピューターシステム。この線の話、実はまだ大したことができるわけでもないのに、ここ数年しょっちゅう出てくる。本人の安全のためだという名目で、ガチガチの管理・監視システム。でも、この記事の冒頭部分を読みながら、もうこの時代の流れは変えようがないんだろうな……と思うと、むなしくて力が抜けた。時々、ふっと思う。こんな世の中、生きていたくないという気分にもなるよね。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/153827.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/153827.php
米:医療改革に不可欠なのは、医師が過剰な治療を正すこと。……この場合、治療と強化とは区別してもらえるんでしょうかね。医療技術を強化に使いまくって、社会的な目的にも使いまくっておいて、病気の人への治療を抑制されたのでは、たまったもんじゃないんだけど。
http://www.nytimes.com/2009/06/14/opinion/14sun1.html?_r=1&th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/06/14/opinion/14sun1.html?_r=1&th&emc=th
2009.06.14 / Top↑
Sandra Ewing さん(48)は敗血症で2年前に両足を切断。
その後MRSAとも闘い、現在週に3回腎臓透析を行っている。
その後MRSAとも闘い、現在週に3回腎臓透析を行っている。
が、その透析を6月いっぱいでやめることにしている。
自分の人生はもはや「生きるに値しない」と思うから。
透析をやめたら、こん睡に陥ると聞いているので、
その時には鎮痛剤を使ってもらう、
その時には鎮痛剤を使ってもらう、
そうやって意識不明になってしまえば
何も分からないまま静かに死んでいけるから、と。
何も分からないまま静かに死んでいけるから、と。
それまでに孫と会って最後のお別れをして、
その後で親しい人たちともお別れパーティをする予定。
その後で親しい人たちともお別れパーティをする予定。
Fifa woman makes her case for assisted suicide
Sandra Ewing, who has lost both her legs and battled MRSA, has ordered doctors to stop her life-saving kidney dialysis treatment.
STV, June 12, 2009
Sandra Ewing, who has lost both her legs and battled MRSA, has ordered doctors to stop her life-saving kidney dialysis treatment.
STV, June 12, 2009
記事の副題に、
「……女性が医師に腎臓透析をやめるよう命じた」と書かれています。
「……女性が医師に腎臓透析をやめるよう命じた」と書かれています。
命じた、と。
死は自己決定権の行使による決断であり、
本人だけが決める権利がある、医師が口を出す問題ではない、という
STVの主張が、その副題からだけでも見て取れます。
本人だけが決める権利がある、医師が口を出す問題ではない、という
STVの主張が、その副題からだけでも見て取れます。
上記記事にEwingさんのビデオがあります。
ぜひ、ビデオを見て、多くの人に考えてもらいたいと思う。
自殺幇助合法化推進派の人たちがモデルとして持ち出す
OregonやWashington州の尊厳死法の対象である
「余命6ヶ月以内で耐えがたい苦痛がある人」と、
OregonやWashington州の尊厳死法の対象である
「余命6ヶ月以内で耐えがたい苦痛がある人」と、
この人との距離の大きさを。
その距離が、まるで存在しないかのように何もかもひっくるめて
「死の自己決定権」や「自殺幇助合法化」が論じられるしまうことの危うさを。
「死の自己決定権」や「自殺幇助合法化」が論じられるしまうことの危うさを。
【スコットランドの自殺幇助合法化議論関連】
スコットランドでも自殺幇助合法化法案か(2009/2/20)
スコットランドでも「死の自己決定権」アドボケイトの医師が高齢障害者の餓死を幇助(2009/3/11)
スコットランドの自殺幇助合法化法案に倫理団体から批判(2009/4/22)
スコットランド議会での自殺幇助合法化案、提出されることに(2009/4/25)
スコットランドでも自殺幇助合法化法案か(2009/2/20)
スコットランドでも「死の自己決定権」アドボケイトの医師が高齢障害者の餓死を幇助(2009/3/11)
スコットランドの自殺幇助合法化法案に倫理団体から批判(2009/4/22)
スコットランド議会での自殺幇助合法化案、提出されることに(2009/4/25)
2009.06.14 / Top↑
Diekema&Fostの成長抑制論文のフルテキストを読んでみました。
まだ、しっかり読み込んだわけではありませんが、
あっちもこっちも指摘したいことだらけ。
あっちもこっちも指摘したいことだらけ。
取り急ぎ、「あんまりだろ、それは」と仰天した5点について。
1.2007年の論争以来、重症児の家族や小児科医らから
一般化して欲しいから議論してガイドラインを出せとの要望が相次いでおり、
それを受けて成長抑制の実施について検討するもの、と論文が位置づけられている。
一般化して欲しいから議論してガイドラインを出せとの要望が相次いでおり、
それを受けて成長抑制の実施について検討するもの、と論文が位置づけられている。
2.2007年の論争で批判を受けたのは子宮摘出と乳房芽の切除であり、
成長抑制療法についてはそれほどの批判はなかったし、
成長抑制に子宮摘出と乳房芽切除を伴う必要はないから、
この論文では成長抑制だけを取り上げる、と。
成長抑制療法についてはそれほどの批判はなかったし、
成長抑制に子宮摘出と乳房芽切除を伴う必要はないから、
この論文では成長抑制だけを取り上げる、と。
冗談じゃない。
批判を受けたのは、
それら3つの医療介入をセットで承認した倫理委員会の“判断”であり、
その倫理委の判断の倫理性が問われたのだから、
批判を受けたのは、
それら3つの医療介入をセットで承認した倫理委員会の“判断”であり、
その倫理委の判断の倫理性が問われたのだから、
彼らが本来すべきなのは
「それぞれの介入の倫理性を承認した病院の判断の倫理性」についての釈明であり
そこをすっ飛ばして1つ1つの介入について論じることは本末転倒。
「それぞれの介入の倫理性を承認した病院の判断の倫理性」についての釈明であり
そこをすっ飛ばして1つ1つの介入について論じることは本末転倒。
(もちろん、その本末転倒を敢えて強引に続けることで世論をたぶらかして
Ashley事件の幕引きを狙っている……というのが真相だろうと私は思いますが)
Ashley事件の幕引きを狙っている……というのが真相だろうと私は思いますが)
それに2006年の論文で
子宮摘出はホルモン療法の副作用防止の必要悪として扱われている以上、
成長抑制には子宮摘出を伴う可能性があるといわなければならない。
子宮摘出はホルモン療法の副作用防止の必要悪として扱われている以上、
成長抑制には子宮摘出を伴う可能性があるといわなければならない。
私に言わせれば、
2006年の論文からして、主目的が成長抑制であるかのように書き、
その後の2度のシンポでも成長抑制にフォーカスしてきたのは
正面から倫理性を問われた時に、詭弁を弄してなんとか誤魔化せるのが成長抑制だけだということを
彼らが最初から知っていたからに他ならない。
2006年の論文からして、主目的が成長抑制であるかのように書き、
その後の2度のシンポでも成長抑制にフォーカスしてきたのは
正面から倫理性を問われた時に、詭弁を弄してなんとか誤魔化せるのが成長抑制だけだということを
彼らが最初から知っていたからに他ならない。
3.成長抑制を、かつて行われた女児への身長抑制や現在も行われている男児への成長促進といった
ホルモン療法の、いわば「革新的な」応用であり、薬でいえば「適用外処方」であると位置づけて、
むしろ治験としてデータを積み重ねるべきだ、と主張している。
ホルモン療法の、いわば「革新的な」応用であり、薬でいえば「適用外処方」であると位置づけて、
むしろ治験としてデータを積み重ねるべきだ、と主張している。
これはAshleyの父親がブログに書いている計画とぴったりと重なります。
4.WPASと病院との合意を、まったく否定している。
これは最も重大な部分。
In the Ashley case, a disability rights group persuaded the Seattle Children’s Hospital to agree that they would never begin such treatment without review by a court.
と書いているので、病院が合意した事実は認めているわけです。
WPASの捉え方はともかくとして。
WPASの捉え方はともかくとして。
ところが、この合意を彼らは such an extraordinary restriction だと主張し、否定するのです。
著者らの論理は、だいたい以下のような流れ。
ホルモンによる成長抑制には医学的なリスクが少なく、侵襲度が低い。
裁判所の判断が求められるのは、もっと危険度や侵襲度が高い医療介入の場合のみであり、
某障害者の権利団体が病院にさせた合意には法的根拠が乏しい。
そもそも成長抑制療法はAshleyケースにおいて
シアトル子ども病院の倫理委によって“全員一致で”支持されたものである。
もしも今後に向けて治験として広く試みてデータを集積するのであれば、
施設内倫理審査会の適応とはなるが
これほど危険度も侵襲度も低い成長抑制療法は
本来なら倫理委にかける必要すらないほど benign (穏当?)なものである。
ひとえにAshleyケースがあんな大きな騒ぎになったから、というだけの理由で
まぁ、病院内倫理委員会の検討くらいして念を入れれば十分だろう。
裁判所の判断が求められるのは、もっと危険度や侵襲度が高い医療介入の場合のみであり、
某障害者の権利団体が病院にさせた合意には法的根拠が乏しい。
そもそも成長抑制療法はAshleyケースにおいて
シアトル子ども病院の倫理委によって“全員一致で”支持されたものである。
もしも今後に向けて治験として広く試みてデータを集積するのであれば、
施設内倫理審査会の適応とはなるが
これほど危険度も侵襲度も低い成長抑制療法は
本来なら倫理委にかける必要すらないほど benign (穏当?)なものである。
ひとえにAshleyケースがあんな大きな騒ぎになったから、というだけの理由で
まぁ、病院内倫理委員会の検討くらいして念を入れれば十分だろう。
しかし、他大学の所属である3著者はともかく、
シアトル子ども病院の職員であるDiekema医師が
病院が記者会見まで行い、医療部長名でリリースまで出して公式に約束したことを
どうしてこんなに簡単に否定できるのか、理解に苦しみます。
シアトル子ども病院の職員であるDiekema医師が
病院が記者会見まで行い、医療部長名でリリースまで出して公式に約束したことを
どうしてこんなに簡単に否定できるのか、理解に苦しみます。
論文のこの箇所について
シアトル子ども病院とWPASから、それぞれの見解を聞きたいところです。
(特に成長抑制WGのメンバーに入っているWPASの弁護士Carson氏の見解を)
シアトル子ども病院とWPASから、それぞれの見解を聞きたいところです。
(特に成長抑制WGのメンバーに入っているWPASの弁護士Carson氏の見解を)
この辺りの背景については、当ブログで詳細を追いかけているので
また別にエントリーを立てたいと思います。
また別にエントリーを立てたいと思います。
もう1つ、この部分に関して指摘しておきたいこととして、
2004年の特別倫理委員会が全員一致で合意したのは
「少なくとも反対はしません」という点であり、
全会一致で倫理的な妥当性を認めたわけではありません。
2004年の特別倫理委員会が全員一致で合意したのは
「少なくとも反対はしません」という点であり、
全会一致で倫理的な妥当性を認めたわけではありません。
この点についての詳細は「倫理委を巡る不思議」の書庫に。
5.成長抑制するならカロリー制限で体重管理も同時に、と。
成長抑制療法を行う場合には、
スリムな体を維持させるためにカロリー制限を行い、体重管理を併用するよう提案されています。
スリムな体を維持させるためにカロリー制限を行い、体重管理を併用するよう提案されています。
2007年1月5日にScientific Americanのメール討論に
部外者を装って登場した 子ども病院のWilfond医師は
部外者を装って登場した 子ども病院のWilfond医師は
体重管理そのものは食べさせるものを制限することによって家庭で簡単に可能なのに、
Ashleyケースでは、それを医療技術によって行おうとするところが特徴的だ、
と指摘していましたが、
Ashleyケースでは、それを医療技術によって行おうとするところが特徴的だ、
と指摘していましたが、
この論文では、そこから一歩進んで、
両方を同時にやって「介護しやすいように痩せさせておこう」というわけです。
両方を同時にやって「介護しやすいように痩せさせておこう」というわけです。
それならば、医療介入の侵襲度の点で考えると、
まずは侵襲度の低い「カロリー制限」の方を先に提案するべきではないでしょうか。
まずは侵襲度の低い「カロリー制限」の方を先に提案するべきではないでしょうか。
それなのに
効果のほども確かではなく副作用のあるホルモンの大量投与をまずやりましょう、
その際には、ついでにカロリー制限もやった方が成長抑制の効果が大きくなります、というのは
これもまた本末転倒というものでしょう。
効果のほども確かではなく副作用のあるホルモンの大量投与をまずやりましょう、
その際には、ついでにカロリー制限もやった方が成長抑制の効果が大きくなります、というのは
これもまた本末転倒というものでしょう。
2009.06.14 / Top↑
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