WHOの「早産の負担」研究。毎年、世界中で生まれる新生児の10人に1人は早産で、生後1ヶ月以内に死亡するケースの4分の1が早産に関連した原因によるもの。:早産撲滅はなんといってもゲイツ財団とシアトル子ども病院の最重要課題の1つですから。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/10/04/AR2009100401880.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/10/04/AR2009100401880.html
財政破綻の緊急事態を宣言したカリフォルニア州で、福祉予算がカットされ、低所得の高齢者50万人が影響を受ける。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/166064.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/166064.php
米国退職者協会AARPが医療改革を巡って、メディケア対象の65歳以上と以下で真っ二つに割れている。:前にこちらの補遺で拾ったけど、AARPがObama政権の医療改革がんを支持したことで、既に6万人の会員が退会している。
http://www.nytimes.com/2009/10/04/health/policy/04aarp.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/10/04/health/policy/04aarp.html?th&emc=th
英国NHSの実験で、痩せた人に現金又はクーポン券のご褒美を出したら、食事療法の2倍の効果があった。
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article6861154.ece?&EMC-Bltn=EBK9JB
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article6861154.ece?&EMC-Bltn=EBK9JB
インドのスラムでは年間200万人の子どもたちが死んでいく。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/oct/04/india-slums-children-death-rate
http://www.guardian.co.uk/world/2009/oct/04/india-slums-children-death-rate
Save the Childrenによると、世界中で毎年5歳以下の子どもが900万人も死んでいる。各国が考えているよりもはるかに少ない400億ドルあれば、たくさんの子どもが救えるのに、と。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/in_depth/8289950.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/in_depth/8289950.stm
2009.10.05 / Top↑
親の貧困によって満足に教育を受けられないどころか
将来の生活のメドさえ覚束ない子どもたちが増えて、
セーフティネットが十分でないために親の貧困が子ども世代で再生産されていく。
将来の生活のメドさえ覚束ない子どもたちが増えて、
セーフティネットが十分でないために親の貧困が子ども世代で再生産されていく。
このままでは社会の活力そのものが失われてしまうので、
「子どもを育てる責任は親ではなく社会にある」
「子育て支援、家庭支援は社会の“負担”ではなく将来への“投資”である」という
ヨーロッパの姿勢に学び、
「子どもを育てる責任は親ではなく社会にある」
「子育て支援、家庭支援は社会の“負担”ではなく将来への“投資”である」という
ヨーロッパの姿勢に学び、
人生のスタート時の教育の機会均等を支えるセーフティネットの必要と
そのために相応の支出をする覚悟を日本国民のコンセンサスとしていかなければならない
……という番組のメッセージそのものには大いに賛同するのだけれど、
そのために相応の支出をする覚悟を日本国民のコンセンサスとしていかなければならない
……という番組のメッセージそのものには大いに賛同するのだけれど、
そのコンセンサスを得るための議論の中に、
なんだかなぁ……と、強い抵抗を覚えた部分があって、
なんだかなぁ……と、強い抵抗を覚えた部分があって、
「教育を社会の負担ではなく未来への投資と考える」という話の流れで
「国民全体の能力が上がれば国としての生産力が向上するのだから」
という話が出てきたこと。
「国民全体の能力が上がれば国としての生産力が向上するのだから」
という話が出てきたこと。
これ、本当に、そうなんだろうか──。
実は、これと全く同じことをトランスヒューマニストたちが言っていて、
それをAshley事件の直後に読んで以来、私はずっと疑問を引きずっている。
それをAshley事件の直後に読んで以来、私はずっと疑問を引きずっている。
記憶力がよくて頭の回転が速い人は高収入を得ることができ、社会全体の生産性向上にも寄与すると考えられる。人間の学習思考能力や、対人関係能力を増進させるようなテクニックとは、私たちの問題解決能力や科学的な大発見をする力を高め、よい成果が得られるようにしてくれるものだ。早く知識を身につけられる科学者は、専門分野の最先端に立てる。医師や看護師が長時間疲れることなく働ければ、患者を扱う上でエラーを犯すこともほとんどなくなる。頭のよいエンジニアはよりよい製品を生み出して、生活を豊かにしてくれる。頭のよいプログラマーは、よりよいソフトウエアをつくる。頭のよい建築家はよい建物を設計する。頭のよい生物学者は新しい薬剤を開発する。こうして社会全体が豊かになっていくのではないだろうか。
「超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会」(p.67,68)
「超人類へ! バイオとサイボーグ技術がひらく衝撃の近未来社会」(p.67,68)
トランスヒューマニストの目指すユートピアはつまるところ「天才だらけの世の中」ということで、
厳密には「不老不死の天才」なのだけど、
彼らは天才だらけになれば、それだけ早く不老不死が実現できると信じているので、
とりあえず、まずは「天才だらけの世の中」。
彼らは天才だらけになれば、それだけ早く不老不死が実現できると信じているので、
とりあえず、まずは「天才だらけの世の中」。
だから、みんなで”科学とテクノ”で頭が良い不老不死の超人類となって、ハッピーになりましょう、
というのがTHの主張するところ。
というのがTHの主張するところ。
昨日の番組で出てきた「能力」も
「産業構造を重厚長大の製造業から知識産業へと転換する必要がある」という文脈だったから
基本的には「知能」だったのでしょう。
「産業構造を重厚長大の製造業から知識産業へと転換する必要がある」という文脈だったから
基本的には「知能」だったのでしょう。
でも、私には、
「国民みんなの頭がよくなれば国としての生産力が上がる」という直線的な帰納には
「予防医学でどんどん病気を予防して不老不死を追及すれば
医療費は削減できる」という直線的な思考に似た落とし穴があるような気がする。
つまり、直線でしかない、という意味の。
「国民みんなの頭がよくなれば国としての生産力が上がる」という直線的な帰納には
「予防医学でどんどん病気を予防して不老不死を追及すれば
医療費は削減できる」という直線的な思考に似た落とし穴があるような気がする。
つまり、直線でしかない、という意味の。
予防医学が直線的に医療費削減に繋がるという考えが、
誰もがいつかは病気になって、いつかは死ぬという事実をカウントしていないように、
誰もがいつかは病気になって、いつかは死ぬという事実をカウントしていないように、
みんなが頭さえ良くなれば生産性が向上して社会が豊かになりハッピーになれるという考えは
人間の能力の多様さや、人間社会の複雑さを度外視していると思うし、
そもそも天才だけの世の中なんて、そんなものは社会として機能できないと思う。
人間の能力の多様さや、人間社会の複雑さを度外視していると思うし、
そもそも天才だけの世の中なんて、そんなものは社会として機能できないと思う。
しかも、ただ現実には、たぶん、そうはならないというだけで終わらないから困るのは、
予防医学でイケイケの価値誘導によって
老化が自己責任で予防すべき病気にされていくのと同じ弊害が
「国民みんなの頭がよくなれば国としての生産力が上がる」という価値誘導には
生じるはずじゃないのか、ということ。
老化が自己責任で予防すべき病気にされていくのと同じ弊害が
「国民みんなの頭がよくなれば国としての生産力が上がる」という価値誘導には
生じるはずじゃないのか、ということ。
実際、トランスヒューマニストたちには知能が低いことへの嫌悪感が強く、
それが知的障害者への蔑視、誤解、偏見、切捨ての理論化に繋がっているし、
それが知的障害者への蔑視、誤解、偏見、切捨ての理論化に繋がっているし、
いまや野火のように世界中に広がっていく
「一定の能力を失ったら、生きていることは尊厳がない」とする「死の自己決定権」文化の根っこも、
そういう能力至上の価値観に繋がっているような気がするし……
「一定の能力を失ったら、生きていることは尊厳がない」とする「死の自己決定権」文化の根っこも、
そういう能力至上の価値観に繋がっているような気がするし……
……ということを考えていたら、
番組で「国民の能力が上がれば生産力が向上する」と発言した人は
それに続けて「能力の高い人が雇われないわけがないんだから」と言った。
番組で「国民の能力が上がれば生産力が向上する」と発言した人は
それに続けて「能力の高い人が雇われないわけがないんだから」と言った。
これもまた、Naamが言っているのと同じことなのだけど、本当に、そうなのか──?
能力さえ高ければ、失業もしないし、高収入を約束されるのか──?
能力さえ高ければ、失業もしないし、高収入を約束されるのか──?
じゃぁ、今、失業している人たちは
規制緩和で雇用形態が変わって非正規労働者が増えたという施策上の問題や
暴走型のマネーゲーム資本主義がとうとう崩壊して
未曾有の世界的経済危機を引き起こしたこととは無関係に、
能力が低いから雇われていないだけで、個人の問題なのか──?
規制緩和で雇用形態が変わって非正規労働者が増えたという施策上の問題や
暴走型のマネーゲーム資本主義がとうとう崩壊して
未曾有の世界的経済危機を引き起こしたこととは無関係に、
能力が低いから雇われていないだけで、個人の問題なのか──?
自己責任論を否定するところから出発したはずの教育の機会均等と、
それを実現するためのセーフティネット充実の話が、
どうして、こんなふうに、ぐるっと一回転して、
いつのまにか自己責任論になってしまうのだろう。
それを実現するためのセーフティネット充実の話が、
どうして、こんなふうに、ぐるっと一回転して、
いつのまにか自己責任論になってしまうのだろう。
セーフティネットが機能していないために
子どもから教育の機会均等が奪われて貧困が再生産されているという話が
ひょいっと「社会的利益vs社会的コスト」や「自己責任」の話に摩り替わったようで、
子どもから教育の機会均等が奪われて貧困が再生産されているという話が
ひょいっと「社会的利益vs社会的コスト」や「自己責任」の話に摩り替わったようで、
どこかで、
セーフティネットに乗せてもらうためにも
乗せてもらうことによって社会に貢献できる可能性という一定の資格が
問われる議論に摩り替わっていきそうな危うさを感じたのと同時に、
(例えば、将来の医療費削減に結びつかないリハビリは、もはや認められないように)
セーフティネットに乗せてもらうためにも
乗せてもらうことによって社会に貢献できる可能性という一定の資格が
問われる議論に摩り替わっていきそうな危うさを感じたのと同時に、
(例えば、将来の医療費削減に結びつかないリハビリは、もはや認められないように)
でも、格差を広げてきたのも、弱者を見殺しにしてきたのも、
元凶は、そういう論理そのものじゃないのか……と考えて、ふいに気づいた。
元凶は、そういう論理そのものじゃないのか……と考えて、ふいに気づいた。
この人は「重厚長大の製造業から知識産業への産業構造の転換が必要」と言っていた。
そのためには国民の能力を上げる必要があるんだと。
そのためには国民の能力を上げる必要があるんだと。
その“知識産業”というのは、
やっぱり“科学とテクノ”のことなんじゃないでしょうか?
やっぱり“科学とテクノ”のことなんじゃないでしょうか?
科学とテクノの国際競争に打って出て生き残り、勝ち進むために
日本でも科学とテクノの国際競争力を身につけることが必要で、
そのための人材が必要なのだ、とこの人は言っている?
日本でも科学とテクノの国際競争力を身につけることが必要で、
そのための人材が必要なのだ、とこの人は言っている?
そんな利権構造の影で、
利益優先・人名軽視の人体実験まがいやデータの改ざん、
研究者や官僚と“科学とテクノ”企業の癒着を起こしているのも、
利益優先・人名軽視の人体実験まがいやデータの改ざん、
研究者や官僚と“科学とテクノ”企業の癒着を起こしているのも、
多くの国の純朴な国民を「もっと頭が良く、もっと健康に、もっと長生きに」と煽っては
科学とテクノの消費者に仕立て上げて食い物にしているのも、
科学とテクノの消費者に仕立て上げて食い物にしているのも、
その科学とテクノのグローバリゼーション・ネオリベに生き残るために
わが国でも国民の知能を上げる必要があるから
だから教育に投資しましょう、というのは
いったい、どれだけ倒錯したセーフティネットの話なのだろう。
わが国でも国民の知能を上げる必要があるから
だから教育に投資しましょう、というのは
いったい、どれだけ倒錯したセーフティネットの話なのだろう。
しかも、この人は同時に
「高齢者も含めて、物言えぬ人たちを守るためのセーフティネットが必要」だとも
主張していたものだから、こっちの頭は混乱してしまう。
「高齢者も含めて、物言えぬ人たちを守るためのセーフティネットが必要」だとも
主張していたものだから、こっちの頭は混乱してしまう。
もしかしたら、この人は経済上のセーフティネットと、
今の科学とテクノの利権構造の中で起こっていることとが繋がっていないんだろうか。
今の科学とテクノの利権構造の中で起こっていることとが繋がっていないんだろうか。
もしかしたら、今の時代、
経済的なセーフティネットが不十分なまま、
同時に科学とテクノのセーフティネットが2重に必要な事態となっているのだけど、
経済的なセーフティネットが不十分なまま、
同時に科学とテクノのセーフティネットが2重に必要な事態となっているのだけど、
まだ誰も、そちらのセーフティネットの不備には気づいていないだけだったりして……?
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