そのNY 市のガイドラインを含め、
「誰を死なせるか」「それを誰が決めるか」
秘密裏に進む各病院でのルール作りをNY Timesが取り上げています。
Worst Case: Choosing Who Survives in a Flu Epidemic
The NY Times, October 24, 2009
「誰を死なせるか」「それを誰が決めるか」
秘密裏に進む各病院でのルール作りをNY Timesが取り上げています。
Worst Case: Choosing Who Survives in a Flu Epidemic
The NY Times, October 24, 2009
5月には
政府、医療機関、米軍関係者などの専門家が集まって作ったタスクフォースの
「豚インフル・パンデミックが起きた際に治療をしない患者のリスト」について
APが報じていたようです。
政府、医療機関、米軍関係者などの専門家が集まって作ったタスクフォースの
「豚インフル・パンデミックが起きた際に治療をしない患者のリスト」について
APが報じていたようです。
いつもお世話になっているBauerさんのブログによると、
そのタスクフォースの「豚インフルのパンデミックの際に治療してもらえない人」リストとは
そのタスクフォースの「豚インフルのパンデミックの際に治療してもらえない人」リストとは
・85歳以上の高齢者
・“重症の知的損傷”のある人
・進行した心臓病、糖尿病による肺疾患を含む重症の慢性病
・重症の外傷のある人
・“重症の知的損傷”のある人
・進行した心臓病、糖尿病による肺疾患を含む重症の慢性病
・重症の外傷のある人
……という話を拾って
ここまででエントリーを立てようかと思っていたら、
今度は「ワクチン足りないなら女に男と同じ量やることはない」と言い出した輩がいる。
ここまででエントリーを立てようかと思っていたら、
今度は「ワクチン足りないなら女に男と同じ量やることはない」と言い出した輩がいる。
そこらへんのオッサンじゃないですよ。
れっきとしたジョンズ・ホプキンスの分子マイクロバイオロジーと免疫学の助教授と、
Society for Women’s Health Researchの会長がNY Times で。
Society for Women’s Health Researchの会長がNY Times で。
製造が追いつかなくて豚インフルのワクチンが足りないというなら、
女性は男性よりも少ないワクチンの量でいいことにして、
それだけ接種できる人を増やそう、と提案している。
女性は男性よりも少ないワクチンの量でいいことにして、
それだけ接種できる人を増やそう、と提案している。
もちろん、女性に接種を受けるなというわけじゃない、
特に妊婦がかかると重症化することが明らかになっているのだから、
妊婦は守られなければならない。
特に妊婦がかかると重症化することが明らかになっているのだから、
妊婦は守られなければならない。
しかし、いくつかの研究によって
女性の方が男性よりも抗体反応が強いとされているのだから、
この生物学上の性差を考慮すれば、女性には男性よりも少量でいいのではないか。
女性の方が男性よりも抗体反応が強いとされているのだから、
この生物学上の性差を考慮すれば、女性には男性よりも少量でいいのではないか。
このワクチンの副作用は男性よりも女性に出やすいとされているので、
量が少ない方が女性をワクチンの軽微な副作用から守ってあげることにもなるし、と。
量が少ない方が女性をワクチンの軽微な副作用から守ってあげることにもなるし、と。
しかし、解せないのは、この2人、文中で以下のようにはっきり書いているのです。
Whether vaccines work differently in males than in females is not known. Clearly, more research on sex-dependent immune responses is needed.
ワクチンの効き方が男女間で違うかどうかは分かっていない。
免疫反応における性差については、明らかに、もっと研究が必要である。
ワクチンの効き方が男女間で違うかどうかは分かっていない。
免疫反応における性差については、明らかに、もっと研究が必要である。
それでどうして、こんなことを主張できるのかと思うのだけれど、
彼らはこれに続いて、
彼らはこれに続いて、
NIHは豚インフル・ワクチンの治験で年齢による効果の差だけを考慮して
ワクチンは一般に男性よりも女性で効き目があるとのエビデンスを考慮していない。
ワクチンは一般に男性よりも女性で効き目があるとのエビデンスを考慮していない。
当局は、最終的には米国人全員のワクチンが製造できるから大丈夫と自信を持っているが
もしもそうだとしても、女性に必要以上のワクチンを使わなければ
途上国の人たちに回してあげることだってできるのだから、
女性には男性よりも少ない量でよいことにしよう、と書く。
もしもそうだとしても、女性に必要以上のワクチンを使わなければ
途上国の人たちに回してあげることだってできるのだから、
女性には男性よりも少ない量でよいことにしよう、と書く。
いつのまにか、
現在のガイドラインの「男性と同じ量」は「女性には必要以上の量」だと決め付けられている。
現在のガイドラインの「男性と同じ量」は「女性には必要以上の量」だと決め付けられている。
そこのところは「分かっていない」「もっと研究が必要」だと、あんたら自身が書いてんでしょーが。
子どもならともかく、いい年をした大人が、しかも曲がりなりにも科学者としてショーバイ張ってる人が、
どうして、ここまで論理性のない非科学的な文章を恥ずかしげもなく書けるのか、さっぱり……。
どうして、ここまで論理性のない非科学的な文章を恥ずかしげもなく書けるのか、さっぱり……。
これでもワクチンが足りないとなったら、次は
「黒人は白人よりも少ない量で効果がある」という調査結果でも、どこからか引っ張り出してくるんでしょうか。
「黒人は白人よりも少ない量で効果がある」という調査結果でも、どこからか引っ張り出してくるんでしょうか。
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この記事の2人の医師があまりにも論理性を欠いたまま強引に自分たちの主張を進めていくヤリクチは
2006年のGunther & Diekema 論文にそっくりだ。
ホルモン大量投与による成長抑制療法は novel and untested だと彼らは自分たちで書いたし、
「この年齢の子どもでは症例がないので、効果も副作用も想像するしかない」とも書いた。
「この年齢の子どもでは症例がないので、効果も副作用も想像するしかない」とも書いた。
そう書きながら、いつのまにか「利益の方が害よりも大きい」と決め付けられて、
成長抑制は親が望む限りにおいて倫理的に認められるとの結論が導かれた。
成長抑制は親が望む限りにおいて倫理的に認められるとの結論が導かれた。
そして、あの論文の論理性の欠落は多くの人によって見過ごされた。
それは、ひとえに「効果も副作用も未知数だけど、いいじゃん、どうせ重症児なんだから」という
著者らの差別意識を読者の多くも共有していたからだと私は考えている。
著者らの差別意識を読者の多くも共有していたからだと私は考えている。
上記2人の医師の論理性のなさ、その主張の非科学性も
NYTの多くの読者には見過ごされてしまうのかな。
NYTの多くの読者には見過ごされてしまうのかな。
2009.10.28 / Top↑
Melinda Gates氏が議会関連のブログ・インタビューで
PEPFAR(the United States President’s Emergency Plan for AIDS Relief)を策定したとして
Bush前大統領の功績を讃え、
PEPFAR(the United States President’s Emergency Plan for AIDS Relief)を策定したとして
Bush前大統領の功績を讃え、
Obama大統領についても、グローバル・ヘルスへの関与だけでなく、
政権が交代したからといって、(ゲイツ財団が?)一から方針見直しをする必要はないと
いってくれている心の広さとを高く評価した。
政権が交代したからといって、(ゲイツ財団が?)一から方針見直しをする必要はないと
いってくれている心の広さとを高く評価した。
また、議会も政府もグローバル・ヘルスには多くの資金を割くべきである。
2001年には15億ドルだったものが去年は80億ドルにも増加したが
妊産婦と子どもの死亡率を下げる努力はまだ不足している、と。
2001年には15億ドルだったものが去年は80億ドルにも増加したが
妊産婦と子どもの死亡率を下げる努力はまだ不足している、と。
来週ゲイツ夫妻はワシントンDCを訪れて、
グローバル・ヘルス向上への米国の努力の効果を示すキャンペーンに参加する。
グローバル・ヘルスにおける米国の努力は実を結んでいる、とゲイツ夫人。
グローバル・ヘルス向上への米国の努力の効果を示すキャンペーンに参加する。
グローバル・ヘルスにおける米国の努力は実を結んでいる、とゲイツ夫人。
いかに善意と愛に満ち、
いかに人格的にも優れた人であったとしても、
いかに人格的にも優れた人であったとしても、
一組の夫婦が、
これほどの発言権と影響力を持つことに
疑問を抱く人が、どうしてこんなに少ないのだろう。
これほどの発言権と影響力を持つことに
疑問を抱く人が、どうしてこんなに少ないのだろう。
こういうニュースに触れると、
私はいつでも「ハリー・ポッター」を思う。
私はいつでも「ハリー・ポッター」を思う。
だって、この夫婦って「善意のヴォルデモート」さんじゃない……?
(なぜそんなことを考えるのかという詳細については「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫に。)
2009.10.28 / Top↑
The British Medical Journalに発表された調査で、
イングランドとウェールズにおいて2008年に
胎児がダウン症と診断されたケースは1843例で
1990年の1075例に比べて48%も増加。
イングランドとウェールズにおいて2008年に
胎児がダウン症と診断されたケースは1843例で
1990年の1075例に比べて48%も増加。
そのまま生まれていれば出生数も48%増加しているはずのところ、
実際には752人から743人へと1%減少している。
実際には752人から743人へと1%減少している。
出生前診断でダウン症と知らされて中絶を選択する人の割合は、
これはずっと変わらず92%。
これはずっと変わらず92%。
過去20年間で出生前診断の使用頻度が上がってきたことが要因だろう、と。
実際にダウン症の確率が高いといわれて生むことを選択したBatha夫妻の
インタビューがあって、夫妻が言っていることの概要は、
インタビューがあって、夫妻が言っていることの概要は、
確率は170分の1といわれた。
ダウン症児が生まれるのは、起こりうる最悪の事態のように思い込まされてしまう。
でも、正しい知識を身につけてよく考えてみれば、
ダウン症の子どもは、みんなとちょっと違っているだけ、ちっとゆっくりなだけ。
妊娠中に検査があるから、余計にこういうことが起こると大変なことだと感じてしまう。
ちゃんとした情報もないけれど、そういう情報があれば役に立つし、
子どもがダウン症だという事実を受け入れて生きていこうとする人も増えるだろう。
ダウン症児が生まれるのは、起こりうる最悪の事態のように思い込まされてしまう。
でも、正しい知識を身につけてよく考えてみれば、
ダウン症の子どもは、みんなとちょっと違っているだけ、ちっとゆっくりなだけ。
妊娠中に検査があるから、余計にこういうことが起こると大変なことだと感じてしまう。
ちゃんとした情報もないけれど、そういう情報があれば役に立つし、
子どもがダウン症だという事実を受け入れて生きていこうとする人も増えるだろう。
ダウン症協会からも
親がダウン症についてきちんとした知識を持っていれば、
中絶を選ぶ人は減るだろうし、
親がダウン症についてきちんとした知識を持っていれば、
中絶を選ぶ人は減るだろうし、
これから検査の精度が上がって、より早期に発見されるようになることを考えると、
検査を受ける夫婦が、誘導のないカウンセリングを受ける機会があり、
ダウン症に関する正確で最先端の情報を身につける機会があることが、
より重要となってくる、と。
検査を受ける夫婦が、誘導のないカウンセリングを受ける機会があり、
ダウン症に関する正確で最先端の情報を身につける機会があることが、
より重要となってくる、と。
【関連エントリー】
選ばないことを選んだ夫婦の記録(2007/11/4)
「ダウン症だから選別的中絶」のコワさ(2007/11/12)
周産期に障害・病気情報提供を保障 法案にW・Smith賛同(2008/4/16)
障害胎児・新生児の親に情報提供を保障する法案(米)(2008/6/1)
障害胎児・新生児の親に情報提供保障する法案つぶれる(2008/7/29)
羊水穿刺より侵襲度の低いダウン小検査、数年以内に(2008/10/8)
出生前後の障害・病気診断に情報提供を義務付け(米)(2008/10/9)
出生前診断をショーバイで語るとこうなる(2008/11/21)
英国でダウン症児の出生数が増加傾向(2008/11/24)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)
出生前遺伝子診断で「あれもこれも調べたい」って?(2009/2/2)
ダウン症の安全確実な出生前検査まもなく米国で提供開始(2009/2/25)
非侵襲出生前診断の倫理問題をJAMA論文が指摘(2009/5/28)
ダウン症アドボケイトと医療職団体が出生前診断で“合意”(2009/7/1)
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2009.10.28 / Top↑
今度は米国でFBIが3日間に渡って1600人を投入して
全米の児童買春の一斉摘発に乗り出したところ、
逮捕者700人、保護した子ども52人。
中には10歳の子どもまで。
全米の児童買春の一斉摘発に乗り出したところ、
逮捕者700人、保護した子ども52人。
中には10歳の子どもまで。
米国では年間200万人の子どもたちが家出をしており、
そういう子どもたちが言葉巧みに売春組織に引き込まれる。
そういう子どもたちが言葉巧みに売春組織に引き込まれる。
子どもたちは完全に商品として扱われて、
児童買春ネットワークを通じて全米に配送されていたらしい。
児童買春ネットワークを通じて全米に配送されていたらしい。
FBIの担当者は「これは21世紀の奴隷制だ」と。
2009.10.28 / Top↑
2009年10月27日の補遺
こりもせず英国上院に出されたAlderdice卿らの自殺幇助合法化法案は否決されたらしい。メディアが全く騒がなかったから、最初から問題外だったみたいだけど。まぁ、よかった。
http://www.indcatholicnews.com/news.php?viewStory=15055
http://www.indcatholicnews.com/news.php?viewStory=15055
HPVワクチンを接種した女児はセックスに慎重になる、との調査結果。:そんなワクチンを打つのは、これで安全だとセックスを奨励するようなものだという批判が出ているからね。それには、即座にこういう調査が実施されて「科学的な反証」が出てくる。研究のゼニの出所は容易に想像もつく。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8326026.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8326026.stm
障害ネタでウケている脳性まひ・パレスチナ生まれの女性コメディアンが、West Bankの難民の障害児たちにコメディアンめざし指導。悲しい話って、あんがい可笑しいのよ、と視点の転換を。:という話だと思う。日本で言えば、ホーキンス(だった?)青山さんか。http://www.guardian.co.uk/stage/2009/oct/26/disabled-palestinian-standup-comedy-maysoon-zayid
ここから日本語情報
夏の脳死・臓器移植法改正議論の際に見つけて、見失っていた、WHOの指針の詳細説明サイト。A案支持者らが言っていたのやメディアの報道と、えらく中身が違うぞ、という話。
http://d.hatena.ne.jp/minajump/20090524/1243155469
http://d.hatena.ne.jp/minajump/20090524/1243155469
フランスで、死んだ夫の冷凍精子による人工授精、却下。
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2653912/4764069
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2653912/4764069
2009.10.28 / Top↑
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