リビング・ウィル(事前指示)が、まさか、こんな使われ方をするとは……。
Kerrie Wooltortonさん26歳は
子どもができないことに悩んでウツ状態となり、
これまでに9回も自殺未遂を繰り返してきた。
(人格障害があったとする記事も)
子どもができないことに悩んでウツ状態となり、
これまでに9回も自殺未遂を繰り返してきた。
(人格障害があったとする記事も)
9月に、今回は、自宅で毒物を飲み、救急車を呼んだが、
病院に着いた時にも意識はあって、医師の顔を見るや手紙を渡した。
病院に着いた時にも意識はあって、医師の顔を見るや手紙を渡した。
それは彼女のリビング・ウィルで、
安楽ケア以外、命を救うための治療は拒否するとの意思が表示されていた。
安楽ケア以外、命を救うための治療は拒否するとの意思が表示されていた。
救急車を呼んだのは、一人で苦しみながら死にたくなかったから。
本人の意思が明確であり、治療を拒否する能力があると思われる以上、
この事前指示に従わずに治療すればassault(暴行?)の罪に問われる、として
医師らは治療せずに、Wooltortonさんを死なせた。
この事前指示に従わずに治療すればassault(暴行?)の罪に問われる、として
医師らは治療せずに、Wooltortonさんを死なせた。
しかし、Wooltortonさんがウツ状態だったことから、
両親や他の専門家から、意思決定能力を認めたことに対する疑問の声も上がっている。
両親や他の専門家から、意思決定能力を認めたことに対する疑問の声も上がっている。
両親は、医師は救命するべきだったとして、病院を訴えることを検討中。
リビング・ウィル(事前指示)は2005年のMental Capacity Act(MCA)後に導入された制度で
医事委員会GMCは事前指示に従わない医師は除名処分にするとの方針を出しており、
医事委員会GMCは事前指示に従わない医師は除名処分にするとの方針を出しており、
MCA以前であれば、Wooltortonさんのようなケースは救命されていた、という専門家もいるが、
もちろん、リビング・ウィルがこのような使われ方をしたのは初めてと思われ、
もちろん、リビング・ウィルがこのような使われ方をしたのは初めてと思われ、
Andy Burnham保健相も
リビング・ウィルも事前指示もこのような目的のものではないので、
法律の変更が必要だと警告している。
リビング・ウィルも事前指示もこのような目的のものではないので、
法律の変更が必要だと警告している。
ある医師は「このままだとリビング・ウィルが”裏口・自殺補助”に使われてしまう」と。
Suicide woman allowed to die because doctors feared saving her would be assault
The Telegraph, September 30, 2009
The Telegraph, September 30, 2009
自殺幇助問題では、そろそろ新しい死に方も
もう出尽くしただろうとばかり思っていましたが
もう出尽くしただろうとばかり思っていましたが
いや、びっくりしました。
社会のありとあらゆる仕組みは、
人の命は尊重されるべきであり、人は勝手に死んではならないという
前提にのっかって機能している。
人の命は尊重されるべきであり、人は勝手に死んではならないという
前提にのっかって機能している。
そこに、
人は一定の条件を満たせば自分で死にたい時に死にたい方法で死んでもいいという
「死の自己決定権」という全く想定外の概念がどこからともなく出てきたことで、
思いがけない問題がこうして次々に起こってくる。
人は一定の条件を満たせば自分で死にたい時に死にたい方法で死んでもいいという
「死の自己決定権」という全く想定外の概念がどこからともなく出てきたことで、
思いがけない問題がこうして次々に起こってくる。
その概念がたった1つ出てきただけで、
誰も想定しなかった死に方をする人が次々に出てきて、
法律や制度のほうが追いついていくことが出来ないまま既成事実化していく。
誰も想定しなかった死に方をする人が次々に出てきて、
法律や制度のほうが追いついていくことが出来ないまま既成事実化していく。
まるで、最先端の科学とテクノが新しい薬や技術を生み出すと、
それまで誰も想定しなかったような倫理問題が発生するのだけど、
それでも法も制度も追いつくことが出来ないために
人の命や身体の尊厳が踏みにじられていくのをとめることが出来ないで
既成事実化していくのと同じように……。
それまで誰も想定しなかったような倫理問題が発生するのだけど、
それでも法も制度も追いつくことが出来ないために
人の命や身体の尊厳が踏みにじられていくのをとめることが出来ないで
既成事実化していくのと同じように……。
それにしても、このすべり坂、
いったい、どこまで行くのでしょう?
いったい、どこまで行くのでしょう?
2009.10.06 / Top↑
今月の始め(というのは、ここ数日のことになりますね)
53歳のデンマーク人男性Kaj Guldbechさんが
スイスのDignitasで医師の幇助を受けて自殺。
53歳のデンマーク人男性Kaj Guldbechさんが
スイスのDignitasで医師の幇助を受けて自殺。
その模様が録画され、日曜日にデンマークのテレビで放送されています。
デンマークでは自殺幇助は違法行為。
2000年からすい臓がんを患っていたGuldbeckさんは
番組の中で、自殺幇助を禁じた法律を動物福祉法に引き比べて、
「私が自分の所有する動物に人間と同じ扱いをしたら、虐待ということになる」と。
(これは「死の自己決定権」ロビーの定番の主張の1つです)
番組の中で、自殺幇助を禁じた法律を動物福祉法に引き比べて、
「私が自分の所有する動物に人間と同じ扱いをしたら、虐待ということになる」と。
(これは「死の自己決定権」ロビーの定番の主張の1つです)
番組での映像では、Guldbeckさんがスイスまで行く様子、
Dignitasで医師と話す様子、スタッフから鎮静剤をもらい、
最初の毒物をくださいというところ、その後、涙ながらに別れを告げて、
2度目最後の毒物を求めるシーンと続き、いったん映像が途切れたあとで、
Dignitasから棺が担ぎ出されるシーンまで。
Dignitasで医師と話す様子、スタッフから鎮静剤をもらい、
最初の毒物をくださいというところ、その後、涙ながらに別れを告げて、
2度目最後の毒物を求めるシーンと続き、いったん映像が途切れたあとで、
Dignitasから棺が担ぎ出されるシーンまで。
G氏の死の瞬間は映っていません。
同行したのは、Flemming Scholaart氏。
EVDというデンマークの死の自己決定権アドボケイト団体の会長です。
EVDというデンマークの死の自己決定権アドボケイト団体の会長です。
ターミナルな患者への医師による自殺幇助を求めて活動してきましたが、
政治的な批判圧力が大きくなって2年前に自殺幇助支持を取りやめたという経緯が。
政治的な批判圧力が大きくなって2年前に自殺幇助支持を取りやめたという経緯が。
しかし、ここに来て、Guldbeck氏に同行して、
(記事にはありませんが、おそらくテレビ放映の段取りをつけたのも彼でしょう)
(記事にはありませんが、おそらくテレビ放映の段取りをつけたのも彼でしょう)
Dignitasへ行くのに8万クローネもかけなければならなかった
なんてグロテスクな死に方なんだろうということをテレビ放映で見せたかった、
こんなことをしなくても自分の国で死ねるようにするべきだ、と。
なんてグロテスクな死に方なんだろうということをテレビ放映で見せたかった、
こんなことをしなくても自分の国で死ねるようにするべきだ、と。
デンマークの保健相と議会の大多数は
自殺幇助合法化はルーティーンとなって最後の手段ではなくなる、
消極的安楽死のみを認める現在の法律で十分に終末期と慢性的な痛みに対応できる、とする
倫理会議のガイドラインを支持している、とのこと。
自殺幇助合法化はルーティーンとなって最後の手段ではなくなる、
消極的安楽死のみを認める現在の法律で十分に終末期と慢性的な痛みに対応できる、とする
倫理会議のガイドラインを支持している、とのこと。
しかし、この国でも、
死の自己決定権ロビーが活発化しそうな気配――。
死の自己決定権ロビーが活発化しそうな気配――。
2009.10.06 / Top↑
| Home |