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英国ロンドン大学が、GP、病院勤務医、緩和ケアと集中治療の専門医に
自分が担当して亡くなった直近の患者への医療について匿名でアンケートをとったところ、

患者の死を早めると分かっている決定を行ったが
死を早めることを目的としたものではなかった、と答えた医師は全体の29%。

はっきりと、または部分的にでも、
死を早める意図を持って、その決定を行ったとする医師は全体の7%。

ところが自殺幇助合法化を支持している医師では
その割合が18%にあがる。

宗教上の信条を持たない医師では11%。

また、そのような決定が行われる場所として
最も確率が高いのは病院で、その中でも集中治療室。
医師が患者を治療している場所がケアホームやホスピスだと
病院や集中治療室ほど、そうした決定は行われにくい。

宗教上の信条がある医師は死を早める意図での決定を行う確率が低く
同様に、自殺幇助合法化に反対の医師もこうした措置をとる確率が低い。

死を早める決定を最も行いがちなのは
緩和ケアの専門医ではない病院勤務の男性医師または
宗教的には中立である男性医師。

もっとも、患者又は家族の同意を得た上でのことであり
それ以上の治療がもはや無益な場合のこと。

調査の対象となった医師のうち、
自殺幇助合法化に強く反対と、どちらかといえば反対を合わせると3分の2で、
一般の人では85%が賛成しているといわれていることとの間には開きがある。

(ここですごく引っかかるのだけど、一般人が支持している自殺幇助の条件が
「もしも重病になったり、重い障害を負ったり、耐え難い苦痛がある時には」となっている)

The National Council for Palliative CareのSimon Chapman氏は
現在のところ、ろくに緩和ケアの研修も受けたことがない医師が
終末期の医療を担当していることが問題で、
緩和ケアのトレーニングを全ての医師の養成・研究に組み入れる必要がある、と。

今回の調査では
医師の個人的な信条によって終末期ケアが異なることが明らかになったものの、
特に弱者である人たちがその他の人たちと違う扱いを受けてはいないことが
明らかになったのは良いことだ、とも。



いや、でも、
高齢者や障害者への医師らの差別的な姿勢だって「個人的な信条」のうちに含まれるとしても、
この調査では、そこのところは区別されていないのだから、

この調査結果は
高齢者や障害者がみんなと同じ扱いを受けているというエビデンスにはならない。
2009.10.27 / Top↑
若者のギャング化が社会問題になっているロンドンで、
そのギャングの一員になりたいがためにメンバーとセックスを引き受け、
そのまま複数のメンバーにレイプされる少女が増えている。

一人の幹部とセックスすれば守ってもらえると思って承知するが、
実際に行ってみたら複数のメンバーが待ち構えている。

しかし、児童保護の担当者らがショックを受けるのは、
ギャングに加えてもらうために、そんなことは当たり前だと少女らが受け止めていること。

また、女性はギャングの中で武器の運び屋として使われて、
時には殺人目的の銃を直接届け、犯行後に銃の始末をやらされることも。

今年、暴行、薬、武器携帯で逮捕された女性は去年よりも急増して25人で、
年齢は14歳から39歳。

事態の深刻化を受けて内務省、首都圏の警察、チャリティなどが連携することを決め、
ギャングと接触のありそうな若い女性への家庭訪問などが検討されている。

若者の支援チャリティの専門家は

These girls are very much second-class citizens within the gangs but they see it as normal. That’s the bit that is most disturbing.

ギャングの中でこういう少女たちは一段低い身分として扱われているのに、
本人たちがそれを当たり前のことだと受け止めているのです。

一番気がかりなのは、そこのところですね。



これ読んで、堀田氏の論文を思い出した。

Glannon & Ross の親から子への生体間臓器提供を巡る議論で
ドナーが女性代名詞で受けられて、いつのまにか母親からの提供が当然視されていた。

それに続いて、もうずっと前にトランスヒューマニストの奇妙な文法について書いた
以下のエントリーも思い出された。


Ashley事件で擁護にしゃしゃり出てきたTHニストのJames Hughesが
その著書“Citizen Cyborg”で、人間を he で受け、チンパンジーを she で受けていたこと。

彼は著書の中で
TH型超人類未来社会での生き物のヒエラルキーを提示しており、
チンパンジーは障害者と同じカテゴリーに入れられています。

もう1つ、このエントリーで拾った話題として、
「進化に不適合な遺伝子を減らした功績で」馬鹿げた死に方をした人に贈られる、という
由々しき理念を標榜するダーウィン賞なるものが世の中には実在しているらしいのですが、

この賞の解説文の中でも、受賞者一般を受ける代名詞は、なぜか she。

科学とテクノでイケイケ文化の中には(ダーウィン賞の理念は優生思想そのものです)
女性を second-class citizenと位置づけて、同時にそれを逆に転じて、
second-class citizen と見下す対象には女性代名詞を当てはめるという慣行が
どうやら既に出来上がっているのではないでしょうか。


そういうことのあれこれや、
このブログを始めてからニュースを通じて見聞きしている、
世界中のあちこちで、ものすごい勢いで広がっていくレイプや、

大人から子どもへの虐待、ネグレクト、搾取の広がり
障害者へのあからさまな空気の冷え込みなどを考え合わせると、

世界中が、ものすごい勢いで、ありとあらゆる差別を強化しているように思えてなりません。


そういえば去年、事故で全身麻痺になった23歳の元ラグビー選手
「障害を負って second-class existence として生きていくなんて耐えられない」といって
スイスのDignitasへ行って自殺した事件もありました。

あの事件では両親がスイスへ付き添っていきましたが、
その行為は英国では違法であるにもかかわらず「起訴しても公共のためにもならない」として
検察は、捜査はしたものの起訴を見送りました。


ありとあらゆる差別の激化と、それを容認する空気の広がりは、
弱肉強食のグローバリズムやネオリベラリズム、能力至上の科学とテクノ価値観、
生命倫理によるその合理化と決して無縁ではない……という気がする。
2009.10.27 / Top↑