英国上院でのヒト受精・胚法案が
着床前診断による障害児の排除を謳っていることが懸念されています。
その問題に関連して、
着床前診断による障害児の排除を謳っていることが懸念されています。
その問題に関連して、
10日にBBCのラジオ番組the Todayにおいて、
聾者のアーティストTomato Lichy氏が
生殖補助医療技術によって聾の子どもを持ちたいと語り、
大きな論争を巻き起こしています。
聾者のアーティストTomato Lichy氏が
生殖補助医療技術によって聾の子どもを持ちたいと語り、
大きな論争を巻き起こしています。
(現在のヒト受精・胚法案が成立すると聾の胚を選ぶことは違法行為となります。)
パートナーも聾者のアーティストで
2人の間には3歳の聾の娘があります。
パートナーが40代になったので
着床前診断で聾の胚を選んで2人目の子どもを持ちたいとLichy氏は語り、
2人の間には3歳の聾の娘があります。
パートナーが40代になったので
着床前診断で聾の胚を選んで2人目の子どもを持ちたいとLichy氏は語り、
番組ホストのJohn Humphrys氏と
耳が聞こえないことが不利益になるか否かを巡って激論となったとのこと。
耳が聞こえないことが不利益になるか否かを巡って激論となったとのこと。
(たとえばベートーベンの音楽が聴けないことをどう考えるかなど。)
直後からリアクションが相次いでいる模様。
――――――
なお、
議員から上記法案のClause14を巡って出た
「例えば聴覚障害がある胚をわざわざ選ぶようなことは避けられる」との発言について、
12月に上記エントリーで紹介した際に
なぜ聴覚障害だけをこのように取り上げたのかがわからず、
ずっと疑問に思っていたのですが、
以下のIndependentの記事の中に背景が説明されていました。
議員から上記法案のClause14を巡って出た
「例えば聴覚障害がある胚をわざわざ選ぶようなことは避けられる」との発言について、
12月に上記エントリーで紹介した際に
なぜ聴覚障害だけをこのように取り上げたのかがわからず、
ずっと疑問に思っていたのですが、
以下のIndependentの記事の中に背景が説明されていました。
6年前に共に聾者であるレズビアンの夫婦が
聾の家系であるという理由で精子のドナーを選び、
国内で大問題となったとのこと。
聾の家系であるという理由で精子のドナーを選び、
国内で大問題となったとのこと。
その際にLancet誌に掲載されたEメール・インタビューで2人は
聾を言語文化の一つと肯定的に捉える聾文化について語り、
「我々は耳が聞こえないことを
目が見えないことや知的障害があることと同一線上で捉えません。
ユダヤ人であることや黒人であることと並んで捉えます」
と述べています。
聾を言語文化の一つと肯定的に捉える聾文化について語り、
「我々は耳が聞こえないことを
目が見えないことや知的障害があることと同一線上で捉えません。
ユダヤ人であることや黒人であることと並んで捉えます」
と述べています。
上記BBCでのホストとゲストの論争においても、
問題になったのはこの点のように思われますが、
聾文化については全く知識が欠落しているのでコメントする能力もなく、
以下に関連記事をいくつか。
問題になったのはこの点のように思われますが、
聾文化については全く知識が欠落しているのでコメントする能力もなく、
以下に関連記事をいくつか。
日本で今話題になっている「聾学校」の名称の存続問題も
よく分からないままに新聞などで読んでいたのですが、
なるほど、こういうところと通底しているのですね。
よく分からないままに新聞などで読んでいたのですが、
なるほど、こういうところと通底しているのですね。
[http://www.telegraph.co.uk/opinion/main.jhtml?xml=/opinion/2008/03/11/do1103.xml
Some ‘gifts’ one is better off without]
The Telegraph, March 11, 20082008.03.12 / Top↑
前のエントリーで触れたスイスの記事を読んでみました。
スイスでは既にターミナルな病人に対しては一定の条件下で
医師による自殺幇助が認められており、
医師による自殺幇助が認められており、
過去4年間にチューリッヒのDignitas Clinicには
自殺幇助を求めて54人の英国人が訪れたとのこと。
自殺幇助を求めて54人の英国人が訪れたとのこと。
このような動向を加速する危険な判決だと批判の声が出ているのは
致死量のペントバルビタールを医師の処方なしで手に入れたいと訴えた
53歳の重い躁うつ病患者のケースで
スイスの最高裁は男性の訴えを却下し、
医師による病状のアセスメントがきちんと行われるよう求めたというものなのですが、
53歳の重い躁うつ病患者のケースで
スイスの最高裁は男性の訴えを却下し、
医師による病状のアセスメントがきちんと行われるよう求めたというものなのですが、
その裁決の中で以下のように書かれている、と。
It must be recognized that an incurable, permanent, serious mental disorder can cause similar suffering as a physical [disorder], making life appear unbearable to the patient in the long term.
If the death wish is based on an autonomous decision witch takes all circumstances into account, then a mentally ill person can be prescribed sodium-pentobarbital and thereby assisted in suicide.
If the death wish is based on an autonomous decision witch takes all circumstances into account, then a mentally ill person can be prescribed sodium-pentobarbital and thereby assisted in suicide.
要するに、
不治、永続的かつ重症の精神障害は身体障害と同様に
患者に「この先もずっと生きていくのは耐え難い」と感じさせる可能性があるので、
あらゆることを考慮したうえでの自己決定であれば
医師は精神障害者に致死量のペントバルビタールを処方し
自殺を幇助してもかまわない、ということですね。
不治、永続的かつ重症の精神障害は身体障害と同様に
患者に「この先もずっと生きていくのは耐え難い」と感じさせる可能性があるので、
あらゆることを考慮したうえでの自己決定であれば
医師は精神障害者に致死量のペントバルビタールを処方し
自殺を幇助してもかまわない、ということですね。
これに対してお馴染みArthur Caplanが以下のように批判しています。
・自殺幇助の権利と他者のQOLや苦痛が結びつくのは、法的にも倫理的にも大きな転換であり、危険。
・ひどい焼けどを負ったり体が変形した人、子どもやパートナーを失って悲嘆にくれる人、仕事で失敗した人など、耐え難い心の苦しみのある人なら誰でも自殺幇助を求めることができるようになり、「滑り坂」に結びつく。
・人を死なせることによって人間のとてつもない苦しみを取り除くというのは、いったい医師の任務なのか?
・ひどい焼けどを負ったり体が変形した人、子どもやパートナーを失って悲嘆にくれる人、仕事で失敗した人など、耐え難い心の苦しみのある人なら誰でも自殺幇助を求めることができるようになり、「滑り坂」に結びつく。
・人を死なせることによって人間のとてつもない苦しみを取り除くというのは、いったい医師の任務なのか?
安楽死反対運動の活動家は
ナチスの時代に逆戻りだと批判。
ナチスの時代に逆戻りだと批判。
この記事によるとオランダは2001年に、
ベルギーは2002年に安楽死を合法化。
イギリスとフランスでは
死ぬために治療を拒否することが終末期の患者に認められているとのこと。
ベルギーは2002年に安楽死を合法化。
イギリスとフランスでは
死ぬために治療を拒否することが終末期の患者に認められているとのこと。
【追記】
ドイツでネオナチに教われて障害を負った男性が
上記スイスの Dignitas Clinic で幇助を受けて自殺してやる
と言っているとの記事が昨年末ドイツの新聞にあったとのこと。
ドイツでネオナチに教われて障害を負った男性が
上記スイスの Dignitas Clinic で幇助を受けて自殺してやる
と言っているとの記事が昨年末ドイツの新聞にあったとのこと。
TBさせていただきました。
2008.03.12 / Top↑
American Association of People with Disabilities (AAPD)が
公式サイトのアーカイブに入れた
生命倫理問題に関する2007年のウェブ情報一覧。
公式サイトのアーカイブに入れた
生命倫理問題に関する2007年のウェブ情報一覧。
まだ読んでいませんが気になるところでは以下のように、
終末期患者には医師による自殺幇助を認めているスイスで
重症の精神障害者に対して医師による自殺幇助を認める判決があったとのニュースも。
終末期患者には医師による自殺幇助を認めているスイスで
重症の精神障害者に対して医師による自殺幇助を認める判決があったとのニュースも。
2008.03.12 / Top↑
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