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医師による自殺幇助(PAS)を合法化している米国オレゴン州で
抗がん剤はダメだけど幇助自殺はOKとメディケアというケースが出てきていることを
08年10月に取り上げましたが、

この件に関してオレゴンのがん専門医が09年に書いた論文が
15日、インターネット上にアップされています。

ただ、誰でも論文をアップできるサイトのようで
いずれかのジャーナルに掲載されたものというわけではなさそうです。
(私が情報を見落としているだけかもしれませんが)

Oregon Rationing Cancer Treatment but Offering Assisted Suicide to Cancer Patients Paying to Die but not to Live
Kenneth R. Stevens, Jr., M.D., March 26, 2009


08年に話題になった当時メディアが取り上げた2つのケースについて
この論文が当時のメディアの報道からまとめているところでは

Barbara Wagnerさん(64)
2年前に肺がんと診断され、化学療法と放射線治療で寛解したが
08年5月のCT検査で再発が確認され、Tarcevaという抗がん剤が処方された。
1日1錠の服用で肺がん患者に30%の延命効果があるとされる薬で
治験でも疑似薬を飲んだグループよりも救命率が45%上がった。
しかしメディケイドの患者であるBarbaraさんのもとに届いた通知は
Tarcevaはメディケアで給付にならないとするもので、ただし
「もしも本人が望むならば医師による自殺幇助(PAS)も含め、
緩和ケアまたは安楽、ケアは給付対象とする」と。

(原文で安楽とケアの間にカンマがあるのですが、
これは何らかのミスで、「安楽ケア」なのでは?)

で、この論文が指摘しているのは、
オレゴンの尊厳死法によるPASはターミナルな患者にのみ認められているはずなのに、
ターミナルではないBarbaraさんにメディケアが提案していること。

Barbaraさんの主治医は州には期待できないと踏んで、
Tarcevaの製造元Genentech社と直接交渉し、
とりあえず1年間だけは出してもらえることになった。
(製薬会社が費用をもつcoverということで?)

もう一つのケースは
Randy Stroupさん(53)。
がん専門医10年選手の主治医が「大きいわけではないが目に見える程度の効果」はあり、
延命効果はせいぜい数カ月程度であるにせよ最後の数カ月の苦痛を取り除く効果はある、と考えて
前立腺がんの化学療法の第一選択薬としているmitoxantroneが
メディケイドで給付されないことを知り、

たとえ、わずか6カ月の延命だとしても
自分にとってはその6カ月とその間のQOLが大事なのだと怒っていることが報じられた。

これらのケースの背景にあるのは
オレゴン州保健省のメディケアの優先順リスト。

94年に同州のメディケア・プラン Oregon Health Planができた時から
5年生存率が5%未満の患者には手術、放射線治療、抗がん剤治療は給付しない
とのガイドラインが存在している。

こうした患者に給付が認められているのが安楽・緩和ケアで、そこには
「医師による往診、確認、メンタル・ヘルスア評価、カウンセリング、処方薬までを含み、」
しかし、それらだけに限定されない」「尊厳死法のもとでのサービス」が含まれる。

ガイドライン本文へのリンクが上記論文内にあるのですが、
試みたところ開けませんでした。

私は読む余裕がないのでそれ以上試みていませんが
タイトルで検索すればヒットするんじゃないでしょうか。

つまり、尊厳死法を作って医師による自殺幇助が合法化されることと
メディケアやメディケイドなど公的医療保険制度における医療の配給制度が併存する限り
PASは合法的な医療とみなされるので、どこであれ事実上
「無益とみなされる病気治療はダメだけど
PASは給付OKですよ~]ということになる、ということでは?

そして、そういう文脈ではPASは緩和ケアの一環と分類されるわけですね……。
ここのところ、でも理念とか原理の飛躍って、ないのかなぁ……ちょっと引っかかる。

ところで、
NY州の生命と法に関する作業チームが自殺幇助を研究した際の結論で
この論文は締めくくられており、その結論とは、

どんなに慎重にガイドラインの枠組みを作ったとしても、自殺幇助は
医療を含む、我々の社会のあらゆるサービスの分配を特徴づける
社会的不平等と偏見を通して実施されるものとなろう。




成長抑制でも、移植医療でも、生殖補助医療でも
これと同じことが言えるような気がする。
2011.01.17 / Top↑
映画、パチーノ共に去年既にエミー賞を受賞していますが、
(詳細は文末のリンクに)

Dr. DeathことJack Kevorkian医師の半生を描いたHBO映画
“You Don’t Know Jack”でKevorkian 医師役を演じたAl Pacinoが
第68回ゴールデン・グローブ賞のミニシリーズまたはテレビ映画部門で最優秀男優賞を受賞。

Al Pacino Wins Golden Globe for ‘You Don’t Know Jack’
Politically Illustrated, January 16, 2011



【関連エントリー】
アル・パチーノ主演でKevorkian医師の伝記映画作成か(2009/5/27)
Dr. Deathをヒーローに祭り上げ、シャイボさんをヘイトスピーチで笑い物にするハリウッド(2010/3/25)
FENが「Kevorkian医師の半生記映画見て“死ぬ権利”考えよう」(2010/4/22)
Kevorkian医師「PASは医療の問題。政治も法律も関係ない」(2010/4/26)
CNN、Kevorkian医師にインタビュー(2010/6/16)
Kevorkian医師の半生記映画、主演のパチーノ共、エミー賞を受賞(2010/8/30)
2011.01.17 / Top↑
The American Journal of Public Healthに発表された新たな研究で、

製薬会社からカネをもらって、マーケティングに一役買っているのは
著名医師や研究者ばかりではないことが明らかに。

米国糖尿病協会や、
精神障害のアドボカシー団体 National Alliance on Mental Illness(NAMI)など
保健・医療アドボカシー団体(HAO)も製薬会社からグラント(助成金)をもらい、
そのすべてをディスクローズしていない。

2007年前半にビッグ・ファーマのイーライ・リリー社から
グラントをもらった160以上のHAOを調査したところ、

自分の団体のウェブ・サイトで同社からの資金提供を明らかにしているのは25%。
07年の年次報告でリリー社からの資金を明らかにしているのは18%。
企業スポンサーのページでリリー社の名前を挙げているのは1%。

リリー社のグラント一覧には出ているにもかかわらず、
HAOの方でグラントのスポンサーがリリー社であることを認めているのは10%。

これらHAOは特定の疾患や障害に関する情報源として信頼されており、
啓発活動だけでなく研究や新薬の認可を求めて声を上げたりもするだけに、
もっと詳細なディスクロージャーが必要なのでは?

もっとも、この問題が指摘されたのは今回が初めてというわけではなく、

09年にGrassley上院議員が大規模な調査を行った際にも
NAMIが06年から08年にかけて製薬会社から230万ドル近い寄付をもらっており、
その金額は寄付金全額の4分の3にも上っていることが判明。

それを受けてGrassley議員は33のHAOに
製薬会社と医療機器会社との金銭関係の詳細を明らかにするよう求める書簡を送った。
その返事は公開されていない。

しかし、この度の研究でも
HAOが実際にリリー社の売上向上に寄与する活動を行っていることが指摘されている。

例えば
リリー社はNAMIの「アメリカの心キャンペーン」に45万ドルを提供しているが、
NAMIは精神障害者への処方の際にコストは度外視すべきだと主張し、
官僚主義によって最新のブレークスルーを医師が生かせない事態を批判しつつ
最新の非定形向精神薬、抗ウツ薬へのアクセスを求めてきた。

リリー社のマーケットはそれにつれて拡大していった。

医師への金銭支払いについては2013年までに
詳細なディスクロージャーを義務付ける法整備が行われることが決まっているが、
そこにはHAOへの規制は含まれていない。

Health Advocacy Groups Take Drug Company Cash – Often Without Full Disclosures, Report Says
ProPublica, January 13, 2011


元論文はこちら ↓

Health Advocacy Organizations and the Pharmaceutical Industry: An Analysis of Disclosure Practices
Sheila M. Rothman, PhD, et. al., Health Policy and Ethics


【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)

【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)

【その他、09年の製薬会社のマーケティングやスキャンダル関連エントリー】
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
インターネットの医薬品情報、その陰にいるのは?(2009/2/14)
Harvardの医学生が医療倫理改革を起こそうとしている(2009/3/4)
FDAと製薬会社の訴訟つぶしに待った(2009/3/5)
ICなしの外傷患者臨床実験、死亡者増で中止に(2009/3/30)
HPVワクチン普及目的で保健当局が学校に女児の個人情報を要求(NZ)(2009/4/3)
マラリアやエイズ撲滅キャンペーンの影で子どもの死因第1位の肺炎が無視されてきた不思議(2009/5/10)
抗ウツ薬の自殺リスクを警告したら、処方だけじゃなくて診断そのものが激減?(2009/6/4)
FDA委員会を前に精神障害当事者らから声明(2009/6/9)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
英米の医療スタッフから豚インフル・ワクチン接種に抵抗が出ている(2009/10/13)
中流の子なら行動療法、メディケアの子は抗精神病薬・・・・・・?(2009/12/13)

【2010年の関連エントリー】
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
2011.01.15 / Top↑
しばらく見かけなかった例のA事件の怪現象。1月13日付。例によって07年のAP通信記事のコピペ。:また近々何か起こるのかなぁ……。イヤだなぁ……。
http://www.drugrehabilitationspa.com/how-will-this-effect-ashleys-gender-development

昨日の補遺で拾ったコネチカット州のBrodigan判事の自殺幇助事件で、幇助した息子を起訴。
http://westhartford.patch.com/articles/son-arraigned-in-death-of-father-with-alzheimers

テネシー州でも妻の殺人及び自殺幇助容疑で夫を逮捕。夫が渡した薬のオーバードースが妻の死因。:でも、この夫、その後、妻の遺体を林に捨てている。それでも自殺幇助というのが理解できにくい。
http://www.murfreesboropost.com/husband-indicted-for-assisted-suicide-of-wife-cms-25687

子どもを徹底的に管理して英才児教育にまい進する中国の母親を取り上げ、ウォールストリートジャーナルが、こういう子育ての方が優秀児を育てるのに有効なのかどうか、と記事にしている。:写真の母親の得意そうな顔。最近、「これをやると将来子どもの成績が高くなる」など成績の良い子どもをどのように育てたらよいかを研究テーマにした科学研究が多いことと繋がっているのだろうと思う。WSJだというところが、また、なんとも。親が子どもを過剰にコントロールするのは虐待なのだと、早く気付こうよ。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704111504576059713528698754.html

英国連立政権の障害者手当のカットでケアホームに閉じ込められる障害者が出る、と関係者らが必死の訴え。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/jan/12/disability-living-allowance-cuts-charities?CMP=EMCGT_130111&

中国が認知症対策に力を入れ始めている。都市部に新しくナーシング・ホーム建設も。
http://www.nytimes.com/2011/01/13/world/asia/13shanghai.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha22

オーストラリア政府も医療ツーリズムに食指を動かしている。
http://www.canberratimes.com.au/news/national/national/general/feds-eye-medical-tourism/2047290.aspx?src=enews

2度に分けて飲む中絶薬の2度目を米国では自宅で女性が飲むことを認めているのに、英国では入院を求めていることについて、女性の福祉を脅かしているとthe British Pregnancy Advisory Serviceが保健省を提訴。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/13/medical-abortion-pregnancy-advice-service?CMP=EMCGT_130111&

医療ピエロの訪問で、IVFの着床率が上がったんだとか。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/jan/13/pregnancy-ivf-comedy-laughter-clown?CMP=EMCGT_140111&

タリバンが女児への教育を認める方向に転換。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/13/taliban-lift-ban-girls-schools?CMP=EMCGT_140111&

米政府が1880年に統計を取り始めて以来、2010年は最も降水量の多かった年となった。また最も暑かった年として、これまでの最高だった2005年と並んだ。
http://www.nytimes.com/2011/01/13/science/earth/13climate.html?nl=todaysheadlines&emc=tha22

NYTが社説で、このたびのBMJの論文によるWakefield論文(自閉症のワクチン犯人説を説いた)叩きを取り上げている。前に補遺でこの話題を拾った際には気づかなかったけど、このBMJ論文の著者Brian Deerって、医療職ではなくジャーナリストなんだそうだ。Wakefield医師はDeerをバッシングのヒットマンだと言っているらしい。:Wakefield論文はLancetから削除された。医師資格をはく奪された。それでもまだ親の間で迷信が消えないから、こういう論文でさらなるバッシングが必要だと考えられるのか。それにしても執拗な感じがする。米国の親のワクチンへの不信は、すでにビッグ・ファーマへの不信と重なっているのではないかと私は思うのだけど。
http://www.nytimes.com/2011/01/13/opinion/13thu2.html?nl=todaysheadlines&emc=tha211

NYTのコラムニストが、ツーソンの乱射事件を機に、せめて玩具なみには銃を取り締まろうよ、と。
http://www.nytimes.com/2011/01/13/opinion/13kristof.html?nl=todaysheadlines&emc=tha212

米国、定年65歳を10月で取りやめ。
http://www.guardian.co.uk/money/2011/jan/13/default-retirement-age-scrapped?CMP=EMCGT_130111&
2011.01.15 / Top↑
こういうデータには滅多に出くわさなくて、
実情を知る機会があまりないので、資料として――。


MetLifeの最近の調査で
米国の介護費用は一般のインフレよりもはるかに速い速度で上昇しているとのことで、

2010年の平均で、
ナーシング・ホームの個室料金は1日229ドル。年額で83,500ドル以上。
09年には1日219ドルだったので、4.6%の上昇。

セミ・プライベート(2人部屋のこと?)では
去年1日205ドルで、09年の198ドルから3.5%の上昇。

アシスティッド・リビング(自立度の高い人向け)では
月額の平均が3,293ドルで09年から5.2%の上昇。

唯一、上がっていないのは在宅ヘルス・ケア(医療も含む?)で、1時間21ドル。

州別では、ナーシング・ホームが最も高いのがアラスカの1日687ドル。
最も低いのはルイジアナ州で1日138ドル。

アシスティッド・リビングでは最も高いのがワシントンD.C.の月額5,251ドルで
最も低いのがアーカンソーの2,073ドル。

在宅ケアが最も高いのはミネソタの1時間31ドル。
最も低いのはルイジアナで1時間14ドル。


The rising cost of long term care
Managing Your Money, January 11, 2011
2011.01.15 / Top↑
コネチカット州で去年、アルツハイマー病患者で、地元では有名な判事George Brodigan(82)の自殺を幇助した息子が逮捕され、起訴されるかどうかが焦点になっている。
http://www.courant.com/community/west-hartford/hc-green-suicide0111-20110110,0,6276477.column

米国のナーシング・ホームに高齢者を入所させている家族が、施設に内緒でライブ・カメラを設置するケースが増えているらしい。
http://swo.ctv.ca/servlet/an/local/CTVNews/20110112/long-term-care-homes-cameras-110112/20110112/?hub=SWOHome

日本語記事。ノースダコタ州下院で Personhood of Children Actが可決。今後、上院も通過して知事が署名すれば、妊娠中絶が非合法に。:米国社会が極端な保守に急傾斜していく一端? 
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2573171/3824735

イタリアで不法移民を入国させていた一味を摘発。ドイツ、フランスでも更に逮捕者が出る見込み。入国させていた移民の多くがアフガンの子どもたちだとのこと。人身売買、奴隷労働、ここにも。一味が国際テロと関与しているとの話も。
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-12178074

上記の記事の最後に、国際テロとの関係が言及されていることで、小山エミさんの以下の記事を思い出した。米国内での人身売買のことだけど。
http://macska.org/article/327

鎮痛剤に入っているイブプロフェンに長期服用で脳卒中リスク。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/jan/12/high-doses-painkillers-stroke-risk?CMP=EMCGT_120111&

オーストラリア、クイーンズランド州の大洪水、ピークに。
http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-pacific-12173846

ブラジル、リオデジャネイロ州でも大洪水。
http://www.bbc.co.uk/news/world-latin-america-12171710

アリゾナ州トゥーソンの銃乱射事件からティーパーティの戦略に批判が出ていることから、政府への批判をかわすための政治利用でティーパーティも乱射事件の被害者だ、と創設者のひとり。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/11/arizona-shootings-tea-party?CMP=EMCGT_120111&

マイケル・ジャクソンのお抱え医師、過失致死(?)で裁判に。
http://www.guardian.co.uk/music/2011/jan/12/michael-jacksons-doctor-trial?CMP=EMCGT_120111&

BBCのキャスターを53歳という年齢を理由に降板させられ、年齢差別だと提訴していたMiriam O’Reillyさん、勝訴。:男性なら50代でも全然問題にならないのだから、年齢差別以前に女性差別だと思う。
http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/11/miriam-oreilly-bbc-ageism-victory?CMP=EMCGT_120111&

ジュリアン・アサンジ氏の弁護士は、米国に身柄送還された場合には死刑またはグアンタナモ・ベイに送られる可能性がある、と。:そのうち”事故”で死ぬのかも? でも、時代の申し子だとすれば、同じことをやる人はまた出てくる。国家という装置が機能しなくなっている一つの顕れのような気もするし。
http://www.guardian.co.uk/media/2011/jan/11/julian-assange-wikileaks-execution-gantanamo?CMP=EMCGT_120111&
2011.01.15 / Top↑
2008年から死の自己決定権論議が続いているフランスで
上院議会に2つの合法化法案が提出され、25日にも審議の予定とのこと。

しかし、それぞれ共産党議員と社会党議員から出された法案は
いずれも文言が曖昧なもの。

前者は、
重症または不治の病気などが進行したりターミナル期の成熟した人(一部の未成年も含む意?)に
和らげることのできない心身の苦痛があったり、
本人が耐え難いと判断するなら、医師による幇助を認めようというもの。

後者は
重症で不治とされる病気が進行したりターミナル期にある人または
依存状態にあって、それを尊厳がないと感じる人なら誰でも
自殺幇助を認めようというもの。

現在のフランスの法律では
患者に緩和ケアを受ける権利を認め、
それ以上の治療を拒否することを認めているが
安楽死や自殺幇助は違法。

08年にフランス政府が行った調査で
終末期医療に関するLeonetti法が誤って解釈・実施されているので
安楽死の合法化は適当ではないとの報告書が出たのを受けて、
the End of Life Medical Practices Observatoryが創設され、
病院に緩和ケア病棟が整備されていった経緯がある。

大学病院の緩和ケア医は
「ここに至って安楽死を合法化するなんて逆行もいいところ。
根拠もなく合法化するなら、それは民主主義においては危険なことだ」と

France prepares to debate legalization of assisted suicide
LifeSiteNews.com, January 12, 2011


【関連エントリー】
フランスの自殺幇助事情(2009/9/26)
2011.01.15 / Top↑
(ネタばれ、あります)

ブログを始めるよりも前にPBで購入はしていて、
何度も手に取ってみては、どうしても冒頭で躓くことを繰り返して
読むのに何年もかかってしまった、私には「因縁の本」――。

このブログのコメント欄でも、
これまでに2人の研究者の方から勧められ、
その際に思い切って図書館で翻訳を借りてみたりしても
やっぱり数ページから進むことができなかったのだけど、

年末に、こちらのエントリーへのコメントでモランさんから勧められたのを機に、
もう一度翻訳を借り出してきた。

ちょうど半日ほど現実逃避していたい精神的ニーズもあったので、
今度こそ読み切る覚悟で臨み、その覚悟で物語に入りこむまでの冒頭部分の抵抗感を超えると、
後はなんてことなく、一気に最後まで読んだ。

そういう精神状態と、
それが非力な存在としての娘に関わっていることの影響もあったのだろうけど、
あらかじめ内容の予測がついていたこと、その静謐な語り口なども手伝って、
読んでいる間中、ずっと悲しかった。

知っているのに知らない、知らないのに知っている子どもたちの姿と
最初から親も家族も持たない子どもたちの存在の寄る辺なさ、
そうした子どもたちが大人の都合でテクニカルに創り出されている世界がすべからく悲しくて
終始、どこか痛みに耐え続けるように、その悲しみをこらえて読み進んだ。

タイトルになっているのは
ジュディ・ブリッジウォーターの「夜に聞く歌」というアルバムの中の
「わたしを離さないで(Never Let Me Go)」という歌。

物語の語り手であるキャシーが10代の頃に、
宝物にしていたのがこのアルバムのテープ。

この歌のリフレインから、
親を持たず、自分も子どもを産むことのできない身体として生まれてきたキャシーが連想するのは

……ある女の人がいて、赤ちゃんを産めない身体と言われていました。でも、奇跡が起こって、赤ちゃんを授かります。それで、その人は嬉しくて、赤ちゃんをしっかりと抱きしめます。でも、恐れもあります。何かが起こって、この赤ちゃんから引き離されるのではないか。それで、ベイビー、ベイビー、わたしを離さないで……と歌うのです。
(p.325)



そんなふうに連想しながら、赤ちゃんに見立てた枕を抱いてキャシーが寮の部屋で踊っているところを
廊下から目撃した謎の女性マダムは、その場に立ちつくして涙を流す。

後年、成人したキャシーからその時のことを問われた際の
マダムの答えにこの作品の主題があるのだろうと思う。

あの日、あなたが踊っているのを見たとき、わたしには別のものが見えたのですよ。新しい世界が足早にやってくる。科学が発達して、効率もいい。古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。でも、無慈悲で、残酷な世界でもある。そこにこの少女がいた。目を固く閉じて、胸に古い世界をしっかり抱きかかえている。心の中では消えつつある世界だと分かっているのに、それを抱きしめて、離さないで、離さないでと懇願している。私はそれを見たのです。
(p.326)




このテープは、物語の展開を通じて、
主人公の3人の関係性を象徴していく役割も担っている。

その3人の関係性とは、
外の世界に住む人間とは別の存在として作られ
その宿命に対して無力でしかない彼らが、それでも
当たり前に人を愛し、人を憎み、人として当たり前の生を生きていることを語るものだし、

物語の中に出てくる子どもたちの絵や音楽や詩などの芸術作品は
そういうものを全く期待されていない彼らの持つ「創造性」を可視化することによって
彼らが人としての「感性」、「魂」の持主であることを「証明」する試みだった。

トランスヒューマニストらが芸術、とくに文学を一切語らないこと
ずいぶん前から目についているのだけど、

この物語の一節で(見失ったので引用できない)
子どもたちのこうした作品が彼らの「魂」から生まれてきたものだという表現を読み、
魂とか、恐らくは心というものの存在や意義すら認めないのであろう彼らが
芸術や文学を認めないことが、とても納得できる気がした。

それは、主人公の一人トミーが大人になってから描く動物の絵にも象徴されている。

……実物を見て、その一体一体が実に細かく、実に丁寧に書きこまれていることに驚きました。まず、動物であるとわかるまでに、多少の時間がかかりました。わたしの受けた第一印象はラジオです。裏板をはずして、中を覗き込んだところ、とでも言いましょうか。細い管、うねるリード線、極小のねじと歯車が、これでもかという精密さで描かれていました。でも、紙から顔を遠ざけると、それは確かにアルマジロに似た動物であったり、鳥であったりします。
(p.226)



もう1つ、作中で最も印象的だったのは
3人の関係性が大きく変わり始めるきっかけになるシーンの一つが
「宗教墓地」での出来事であること。

ここに死と結びついた「宗教」が出てきていること。
(宗教も文学と並んで、トランスヒューマニストが触れないものの一つ)

それから「墓地」の存在――。

彼らは「使命を終えて」死んだ後には、どうなるのだろう……?

「普通の人」とは違う存在であり、「外の世界」には属さない彼らは、
「外の世界」では人として存在しないのだから、
「普通の人」のように墓地に埋葬されることもないのでは……?

トミーの描いた動物のように、臓器庫である彼らの肉体は
部品の集合体として解体、利用価値のあるものは有効利用されるのでは……?

この部分は、小説が全く触れていないところで、それだけに
「宗教墓地」を場面として置くことで、それを示唆する手腕に唸った。


【関連エントリー】
持ち味と芸、そして「かけがえのなさ」(2007/11/17)
2011.01.13 / Top↑
Missoulian紙の1月2日の社説が
電子版の読者欄への投稿から去年一年間の話題を振り返った中で
一昨年おおみそかのBaxter判決と医師による自殺幇助(PAS)合法化議論が
大きく取り上げられ、

モンタナ州は既に自殺率が高いこともあり高齢者など弱者への影響が多大だとして
PASを禁じようとThe Montana Patient Protection Act(モンタナ患者保護法)案を
州議会に提出したGreg Hinkle上院議員の言葉が引用されている。

365 DAYS OF DEBATE: Issues that defined year, from assisted suicide to wolves
Missoulian, January 2, 2011


それを受け、オレゴン州の医師から
Oregon州での統計も出そうとの投稿が7日に掲載され、

Assisted suicide has led to higher suicide rate in Oregon
Missoulian, January 7, 2011


それぞれ出典をリンクしながら以下の3点を指摘している。

① 昨年9月にオレゴン州保健当局が出した統計で、
同州の、PASを覗く自殺率は全国平均よりも35%も高く、
「2000年以降、大幅に増加している」という。

http://www.oregon.gov/DHS/news/2010news/2010-0909a.pdf


② 尊厳死法のもとでPASによって自殺する人の数も着実に増加している。

http://www.oregon.gov/DHS/ph/pas/docs/year12.pdf


③ 介護施設(アシスティッド・リヴィング)で暮らす高齢者や障害者の
アドボカシーを行ったり、虐待を調査し苦情を解決する有償のオンブズマンが
08の調査でOregon州は全米で最下位だったことが最近明らかになった。

http://www.oregonlive.com/health/index.ssf/2010/12/oregon_ranks_last_in_number_of.html




【当ブログの関連エントリー】

WA州とOR州の2009年尊厳死法データ(2010/3/5)
OR州の「尊厳死」:97%にC&Cが関与、たった20人の医師がせっせと処方(2010/3/11)
オレゴン州の尊厳死法、セーフガードは機能せず(2010/8/17)

モンタナのBaxter判決については、こちらにとりまとめました。
2011.01.13 / Top↑
日本語記事で「エイズ・ビジネス」。:これは要するに、以下のエントリー等で拾って来たように、ゲイツ財団などが仕掛けているワクチンによるグローバル・ヘルスのイニシアチブ及び、それによるグローバル規模でのワクチン・ビジネス創出の、エイズ版のことですね。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110110-00000001-gendaibiz-bus_all

リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
CDCの前ディレクターはHPV売ってるMerck社のワクチン部門トップに天下り(2010/3/9)
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)

上記の元記事は、こちら。
http://www.independent.co.uk/news/business/analysis-and-features/big-pharma-and-the-business-of-hivaids-2147987.html

NY州がメディケイドの立て直しのため、特にメンタル・ヘルスと薬物依存のリハビリをターゲットに予算削減策を検討している。
http://www.nytimes.com/roomfordebate/2011/01/09/medicaid-and-mental-health-how-can-fraud-be-contained?nl=todaysheadlines&emc=thab1

英国の18歳以上の女性2000人にアンケートしたところ、抗ウツ剤を飲んだ経験がある人が3分の2にも。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/jan/11/mental-health-women-crisis?CMP=EMCGT_110111&

英国の歯科医療が機能不全を起こしているという社会問題は数年前からメディアをにぎわしているけど、乳歯の治療が不十分なために感染症が顔に広がったり、敗血症を起こすに至るなど、特に子どもたちの歯科医療のお粗末は国辱の域だ、と。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/jan/09/children-tooth-decay-dentist-monty-duggal?CMP=EMCGT_100111&

1月3日に就任したばかりのカリフォルニア州のブラウン新知事(70年代に知事だった人が返り咲いたらしい)が、州サービス全般の削減と今後5年間に渡る増税を発表。:イリノイ州は所得税を75%アップという話もあった。どこの国も「行政機能は縮小、しかも増税」という、同じ方向に向かっているような気がする。それでもOECDの経済指標は上向きって、どういうこと? ぜんぜん再配分されない富が、それらを手にしているごく一部の人間のために世界経済だけは拡大させていくってこと?
http://news.yahoo.com/s/ap/20110110/ap_on_re_us/us_california_budget

土曜日のアリゾナ州ツーソンの銃乱射事件で、Mental Health Americaから声明。精神障害者がその他の人以上に危険だというわけではないこと、精神保健・医療が十分でないこと、など。
http://www.mentalhealthamerica.net/go/news/statement-of-mental-health-america-on-the-tragedy-in-arizona

メキシコとの国境を有するテキサス州が人身売買のハブと化している。06年に米国で人身売買の被害者と認定された人の4割がテキサス州にいる。07年に人身売買関連の通報の3割がテキサスから発信されたものだった。学校帰りに連れ去られてレイプされ、そのまま売春をさせられていた13歳の少女が10日にも救出され、親元に帰ったが、多くの被害者は救出後に長期ケアを受けるシェルターもなく、放置されている状態。
http://www.examiner.com/human-rights-in-national/texans-prepares-to-fight-against-human-trafficking-during-super-bowl

第一子の後1年以内に生まれた第二子では、2~3年あけて生まれた第二子よりも自閉症の確率が高い。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/213245.php
2011.01.13 / Top↑
昨年10月18日、スペイン、バルセロナの80歳の男性 Jordiさんが
スイスでDignitasの関係者と2人の娘に見守られながら
幇助自殺を遂げた、とのこと。

結核で片肺を失った後、重症の呼吸障害があり、
妻の死後、呼吸困難を起こすことが増えていた。

スペインの官憲に自殺幇助合法化への圧力をかけるために
公表することを決断したという娘さんはスペインの死の自己決定権アドボケイトから
法律上のアドバイスを受けており、スイスでは合法である以上、
スイスでの自殺幇助をスペイン国民が自国で罪に問われることはない、と
確認したうえでの行為だった。

スペインでの自殺幇助は2~5年の刑になる違法行為。

Barcelona man commits “assisted suicide” in Switzerland
The Reader. es, January 10, 2011


去年3月にGuardianに出ていた国別・Dignitasの幇助自殺者、登録会員数一覧によると、
09年までにDignitasで自殺したスペイン人は13人。


スペインでは08年にチンパンジーに法的権利が認められており、
それを考えると、案外に自殺幇助合法化への文化風土は熟しているのかもしれない
……という気もする。

その2つが、どう繋がっていくのか、という点については
このブログでずっと拾ってきた情報、書いてきたことを総合的に見れば、
……という以外に、今のところ簡単に説明する方法はないのだけど。

キーワードとしては、
科学とテクノの簡単解決バンザイ文化、トランスヒューマニズム、能力至上主義
パーソン論、種差別、功利主義、優生思想、無益な治療論、死の自己決定権

それから、たぶん、これも忘れちゃいけない
グローバル社会の慈善資本主義、ビッグファーマ……これで”科学とテクノ”の振り出しに戻る。

……やっぱ、ぐるりと繋がってるなぁ……。
2011.01.13 / Top↑
“Ashley療法”および成長抑制療法の一般化について
Ashley父やDiekemaやFostらは「親の愛」vs「政治利用のため邪魔立てする障害者運動」という
対立の構図で議論を単純化し、世論を誘導しようとしているけれど、実際には
重症児の親がすべて「愛情から成長抑制をやりたい」といっているわけではなく、
多くの重症児の親がブログで批判を展開している。

中でも、当ブログでも何度か紹介したClair Royさんが去年、
もともとのブログの他に成長抑制反対に焦点化して立ち上げたブログ
No More Ashley X’s:Say NO to Growth Attenuationは
批判的な立場に立つ重症児の親たちが集う場となっている。

そのClairさんのずっと前からのブログ友Erikaさんが、この度、
自身のブログで初めて長い成長抑制批判のエントリーを書いた。

A long post in which I don’t discuss mucus but talk about Izzy and growth attenuation
The flight of our Hummingbird, January 5, 2011


特に印象的だった後半の一部を、以下に。

Ashleyの両親が娘の体にこんなに思い切った決断をするに至った
懸念や不安は理解できる。けれど、気持ちはわかるにしても、
自分が我が娘に同じ決断をすることなんて想像もできない。考えただけでゾッとする。

Izzyの背がどこまで伸びるのかを考えると、ちょっと不安にはなるけれど、
同時に大人として芽吹いていく彼女の美しさを目のあたりにすることは、
私を誇りと喜びで満たしてもくれる。

細長い身体や、桃色がかった乳白色の肌や、きらきらとした青い目を見ると、
ああ、父親のPhilそのものだ、と私は思う。
Izzyを見ると、娘が父親の一部を受け継ぎ、母親の一部を受け継ぎつつ、
彼女はIzzyという一人の人なのだと思う。

私の娘だけれど、私の所有物ではない。

私は恐らく生きている限り、
娘に代わって意思決定をし続けるだろうけれど、
私の意思決定はいつも娘を尊重し、
自分の身体に対する娘の権利を尊重するものであり続けるだろう。

成長抑制に対する私の反対は、
基本的な人権の侵害に対する知的レベルの反対であると同時に、
もっと深く本能的なレベルで間違っていると感じてもいる。

私が決して娘に成長抑制をやらないのは、
経管栄養に完全依存している娘は使うことがないからといって、
歯を抜いてしまわないのと同じだし、
絶対に娘の子宮を摘出しないのは、
歩けるようにはならないからといって脚を切ってしまわないのと同じ。

娘の髪を短く刈り込んだほうが私自身の毎日が楽になるからといって、
その愛らしくカールした髪を切り落そうとは思わないように、
娘の乳房を摘出することも決してない。

成長抑制が
介護に付き物の汚物(エントリーの前半で触れられている)をなくしてくれるわけでも、
娘のけいれん発作や身体機能を改善してくれるわけでもない。、
いったい娘にとってどういう利益になるというのだろう。

重症障害のある女児の性的成熟を阻害することが
直接的にQOLの向上に結び付くとは私には思えない。

本人のQOLのためというよりも、むしろ
身体的にも知的にも遅れのある人に第二次性徴が起こることを
不釣り合いだと感じる人たちの不快感を軽減するもの。

Ashleyの両親の決断にも、この不快感が関係したのでは?
重症障害のある子どもの親としての役割は喜んで引き受けたけれども、
障害のある成人の親にはなりたくなかったのでは? 

ピロウ・エンジェルたちには乳房も生理もない。

我が子の障害を心から受け入れることはたやすくはないけれど、
私は娘の体に手を加えるよりは、私自身の頭や心を変容させていくことを選ぶ。
(ゴチックはspitzibara)




女性へと芽吹いていく時の我が娘の美しさについては、
09年にClairさんが書いた優れたエントリーがあり、
不思議な透明感のあったその時期のミュウの美しさについて
私自身の体験も一緒に、以下のエントリーに書いています。

「一筆ずつ描かれていく絵のように子は成長する」成長抑制批判(2009/7/23)

また、Erikaさんが指摘している
障害児の二次性徴に対して周囲が感じる不快感の軽減なのでは、という点については
Ashleyの父親の発言のみならず、FostやDvorsky、Hugesらの発言についても、
以下の2つのエントリーで07年に指摘しており、
私もErikaさんにまったく同感。

「グロテスク」論は成り立たないが……(2007/8/15)
巨乳がイヤだっただけ?(2007/10/3)

「じゃぁ、歩けるようにならないからと言って脚を切断するのか」という批判に対して
Diekemaらは去年のAJOBの論文で、脚を切断するのは誰から見てもグロテスクだから
そんなことは論外だと突っぱねており、歯を抜くことや髪を刈り込むことについても
彼らは同じ論法で反論するのだろうと思われますが、

上記07年8月のエントリーで指摘したように
「中身と外見のギャップがグロテスクだから」という理由で成長抑制した結果、
外見は年齢相応に老いていくのに身長だけは人為的に低いままに留められた人では
今度は年齢相応の外見と身長の新たなギャップが生じて
彼らが言うところの「中身とのギャップ」は解消されないばかりか
むしろ大きくしてしまうことの矛盾がそこにはあるように思います。

結局のところ、こういうショービニスティックなオッサン感覚を背景に
こねくり回される「本人の最善の利益」論は、
一見もっともらしい「理性的な反応」であるかのような体裁の陰で
実のところコテコテ・無反省の「感覚的な反応」に過ぎないのではないか、
というのが私自身の考えです。


ちなみに、
重症障害のある人だけが人為的にそうしたギャップを作られることで
重症障害のスティグマが新たに作られ、道徳上の害が生じる、との批判は
Quellette論文他から出ています。
2011.01.11 / Top↑
Task Force on Euthanasia and Assisted Suicideが、2011年1月をもって名称変更。新しい名称は、Patients Rights Council。安楽死とPASだけにとどまらず、栄養と水分の停止、無益な治療論や代理決定など、終末期全般を関心事とし運動してきたことを踏まえて。
http://www.internationaltaskforce.org/

モンタナ州で、高齢患者への家族からの虐待ケースをいっぱい見てきた内科医が、金銭動機の虐待が非常に多いので、自殺幇助が合法化されたら金目当ての家族に自殺希望へと追い込まれる高齢者が出ることは間違いないと、Greg Hinkle議員の自殺幇助禁止法案を支持。
http://billingsgazette.com/news/opinion/mailbag/article_be1090f3-3ce5-507b-85af-04868715a927.html

緊縮財政で社会保障を軒並みカットしている英国の連立政権は、DFID(the Department for International Development)の予算だけは、特にマラリアと母子保健へのイニシアチブを中心に、これまでの年額78億ポンドから115億ポンドに増額するそうな。Lancetに。:マラリアと母子保健とくれば、ゲイツ財団のグローバル・ヘルスにおける最重要テーマ。Lancet誌は同財団の仲良しパートナー。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2811%2960002-0/fulltext?elsca1=TL-070110&elsca2=email&elsca3=segment

イリノイ州、財政立て直しのため所得税を75%アップ。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/01/07/AR2011010705834.html?wpisrc=nl_cuzhead

ガン患者の介護者の4割がウツ病に。:日本では、介護者の権利章典が介護の領域よりもガン医療の領域の方で早く広まったみたいだった。
http://www.nursingtimes.net/nursing-practice/clinical-specialisms/mental-health/cancer-patient-carer-depression-risk/5023719.article

アリゾナ州Tucsonの22歳男性による銃乱射事件で、ターゲットはGabrielle Giffords議員だったのでは、と。18人が死傷。死亡はアリゾナ州の連邦裁判所の主任判事。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/01/08/AR2011010802422.html?wpisrc=nl_cuzhead
http://www.nytimes.com/2011/01/09/us/09judge.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha23

豪のGillard総理大臣の選挙公約の一つは高齢者ケア改革。2011が、その改革の年になるか?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/213062.php
2011.01.11 / Top↑
Ashley事件の議論でもイリノイのK.E.J.裁判でも出てきたし、Angela事件では言語道断なことに生理が始まった直後に9歳のAngelaちゃんが入れられたのがこれだったのだけど、埋め込み型避妊薬のインプラノンの効果が、実は言われている3年ももたない、入れたのに妊娠した女性がごっそりいる、とか。:これ、ちゃんと読まないと。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/contraceptive-fails-hundreds-of-women/2041462.aspx?src=enews

15日、UCLAでDr. Deathことキボキアン医師が講演する。
http://pressitt.com/smnr/An-Evening-with-Dr.-Jack-Kevorkian-at-UCLA-Saturday-January-15-2011/3082/

米国の黒人は白人ほどリビング・ウィルを書いていない。:臓器提供も黒人は少ないと言われている。米国の医療が黒人にしてきたことを思えば、不信感があるのも無理もないと思うけど。でも、このギャップを貧困だとか教育レベルとかで解釈してみせることだって可能なんだろうし……。
http://www.usatoday.com/yourlife/health/medical/2011-01-06-livingwills06_ST_N.htm

過去20年間にインドで180万人もの女児が死んでいる原因は、母親への夫からの暴力。:母子保健で命を救おうとせっせと製薬会社とタグを組んでいる人たちはいるけど、こういう問題に取り組もうと呼び掛ける人は少ない。儲からないから? 男の問題だから?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212955.php

我が子がてんかんを診断された直後の2年間にウツ状態になる母親は30~40%もいて、母親がウツになると子どもには悪影響がある。:そりゃ、悪影響はあるでしょうよ。だから、てんかんに限らず、子どもの大きな病気や障害を告知するには細心の配慮がほしい、知ったばかりの親の支援が必要だというのは、何十年も前から親たちが言いつづけていることなんだけど。うちの場合、「うわ、脳波ぐちゃぐちゃ。この子は脳なんか、ないようなもんじゃ」「アンタは詳しいことは知らん方が身のためよ」でした。他にも、いろいろ、心ない告知でズタズタにされた母親は(父親も)多数です。あれから20年以上経って、まだ、「子どもに悪影響がある」という、この研究の言葉のトーンには、母親を病気の子どもの(医療から見て)適切な養育機能を果たすべき存在としか捉えていない感じがある。この医療の文化の根強さは悲しい……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212881.php

水ぼうそうのワクチンは、2倍量で行くのが効果的ですよ。:これ、かなり前にも見た記憶がある。この研究者のディスクロージャーは? ……と、すぐに考えざるを得ない事態の責任は、少なくとも親にはないと思う。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212821.php

昨日だか一昨日だかに出てきて、最初は「噂」で、やっと「政府が認めた」になって、今日はもう英国の季節性インフルエンザ・ワクチンの不足がチョー深刻なんだそうな。死者が50人に達し、GPらに09年の豚インフル騒ぎの際に余ったままストックされているワクチンを使え、と。:これはいずれ日本でも起こる問題と思っておいた方がいい? まぁ、昨日のニュースでは、ワクチンのあとから食糧不足が追いかけてきているみたいだけども。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/jan/06/gps-swine-flu-vaccine-flu-death?CMP=EMCGT_070111&

前に、米国で死刑に使う致死薬が不足しているというニュースがあったけど、それを英国の製薬会社から調達していたらしい。いや、不足する前から、なのかもしれない。リードしか読んでいない。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/06/london-firm-supplied-drugs-us-executions?CMP=EMCGT_070111&

アルツハイマー病が分かる新たな血液検査が出てきたとか。:まぁ、いつもの「分かるようになるかも」。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212982.php

アルツハイマー病予防には、緑茶がいいですよ。:たしか、コーヒーがいいという説もあった。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212925.php

緊縮財政で、9・11以降、初めて、米国が軍備縮小へ?
http://www.nytimes.com/2011/01/07/us/07military.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha2

隠しているけど、中国が防衛力をはるかに超える驚異的な軍備を備えている、とオーストラリアの諜報から。
http://www.canberratimes.com.au/news/national/national/general/chinese-hiding-military-buildup/2041346.aspx?src=enews

WikiLeaks。反捕鯨活動家への対応で協力してやるから、殺す鯨の数を減らせと、米国が日本に持ちかけていた、と。
http://www.guardian.co.uk/environment/2011/jan/06/wikileaks-secret-whaling-deal?CMP=EMCGT_070111&

英国の保育所の20歳の保父Paul Wilsonが、2人の園児にオーラル・セックスをさせレイプ容疑で逮捕。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/jan/06/man-charged-child-rape-birmingham-nursery?CMP=EMCGT_070111&

101歳の高齢者から金をだまし取ったヘルパー。英国。
http://www.chroniclelive.co.uk/north-east-news/evening-chronicle-news/2011/01/06/cruel-carer-stole-money-from-101-year-old-72703-27941102/

去年のBP社の悲惨な原油流出の背景は、むちゃくちゃなコストカットだったとホワイトハウスの調査委員会。
http://uk.news.yahoo.com/4/20110106/tuk-cost-cutting-decisions-led-to-bp-dis-dba1618.html

私が見るわずかな範囲でのことかもしれないけど、野田聖子さんのニュースはあちこちで大々的に取り上げられている一方で、臓器移植詐欺事件の方はテレビのニュースを見ないような気がするんだけど、気のせい?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110106-00000014-maip-soci(野田さん)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110106-00000041-mai-soci(臓器移植詐欺
2011.01.08 / Top↑
自殺幇助と消極的安楽死が認められている一方で、積極的安楽死は違法とされるスイスで、足の動きだけで本人意思を確認してターミナルな癌患者に安楽死を実施した医師が、先月、無罪となったのをきっかけに、スイスに新たな安楽死論議。
http://www.swissinfo.ch/eng/politics/internal_affairs/Case_puts_assisted_suicide_at_a_crossroads.html?cid=29157532

2002年に2人の自殺を幇助したとしてカナダで初めての自殺幇助事件の被告となり、04年に無罪放免されたEvelyn Martensさんが79歳で病死。Martensさんは死の自己決定権論者で、02年の1月と6月、2人の女性が自殺した日に、女性のもとを訪れたことが分かっていた。6月の事件では、ヘリウムのタンクと頭にかぶる袋を届けたことも裁判で明らかになった。しかし、無罪となったことで、Martensさんの裁判は、カナダで、その場にいたとしても直接的に手を下していなければ自殺幇助罪は成立しないとの画期的な判決となった。
http://www.nationalpost.com/news/woman+acquitted+assisted+suicides+died/4060331/story.html

豪Gillard政府から女性の健康・医療ニーズを考慮した the National Women’s Health Policy 2010。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212822.php

元旦に施行したばかりのメディケアの「事前医療計画」新制度すなわち終末期医療に関する事前指示相談料制度を、Obama政権が撤回へ。
http://www.nytimes.com/2011/01/05/health/policy/05health.html?nl=todaysheadlines&emc=tha23

英国の地方自治体が在宅介護サービスをカットしたことで、高齢者の社会的入院が増え、病院のベッドが長期にふさがる現象がまたぞろ起きている。:日本ではどっちもカットされていくけど。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/jan/04/bed-blocking-care-cuts?CMP=EMCGT_050111&

将来ウツ病になりやすいかどうかを分けるのは、やっぱり遺伝子?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212645.php

世界の食料品価格が、国連が90年に統計を取り始めてから初めての「危険水域」高水準に。:じわっ、みしっ……と、あちこちから多極的な崩壊の足音……。
http://www.guardian.co.uk/business/2011/jan/05/world-food-prices-danger-record-high-un?CMP=EMCGT_060111&

アーカンソーに続いてルイジアナ州でも、鳥の大量死。新年の花火原因説も。でも本当のところ、謎みたい。
http://www.guardian.co.uk/environment/2011/jan/04/apocalypse-mystery-bird-deaths-louisiana?CMP=EMCGT_060111&

ヨーロッパで最も使われているブラウザ、Fire FoxがマイクロソフトのIEを初めて抜いて一位に。
http://www.guardian.co.uk/technology/blog/2011/jan/04/internet-explorer-falls-behind-firefox-europe?CMP=EMCGT_050111&

米国のクリスマスからお正月にかけてのホリディ・シーズン後、ついに電子書籍の売り上げが紙の書籍を上回った。
http://www.usatoday.com/life/books/news/2011-01-05-1Aebooksales05_ST_N.htm?csp=Dailybriefing

英国で、季節性インフルエンザワクチンの不足が噂されている。拾わなかったけど、Guardianの方は噂じゃなくて、EU内でかき集めろという話として出ていたような。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212750.php

MMRワクチンの自閉症犯人説でLancetから削除されたことで有名なWakefield論文が、BMJの論文で「手の込んだマヤカシ」だと、まだ叩かれている。:手の込んだマヤカシ……06年のJAMAのGunther&Diekema論文だって、まったく、そうなんだけど。あ、それを言えば、去年のAngela事件の最高裁判決文だってね。というか、Ashley事件そのものが、そうなんだけど、それについては誰も触れない。Ashley 事件の真相には、いかなる国のメディアであれ、ゼッタイに手を触れさせない……という力があると仮定して、またワクチンに傷をつけた者は徹底的に叩きのめす……という動きがあると、こちらも仮定して、その両者を隣り合わせに置いてみると……言葉を失う。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212899.php
2011.01.07 / Top↑
毎年1月5日には周年記事を書いてきました。
Ashley事件4周年を迎えた今年は、07年の思い出話をひとつ――。


成長抑制の一般化が狙われる……と私が直感したのは07年5月16日。
シアトルこども病院とワシントン大学での成長抑制シンポを
Webcastを通じてリアルタイムで聴いていた真夜中のことでした。

倫理委のメンバー数を巡るAlice Dregerさんの発言の際の医師らの反応に
当時すでに頭にあった「仮説」が、半信半疑からほぼ確信に変わった瞬間、
ノートパソコンの前で戦慄と共に凍りつきました。

Ashleyの個別ケースにはなるべく触れず、触れさせず、
話を成長抑制という療法に向けて一般化して論じようとする医師らの姿勢に、
この人たちにとって最も有効な隠ぺい手段は、急いで第2例目、第3例目を作り
成長抑制療法を一般化してしまうことなのだ……と直感し、
凍りついたままモニターを凝視し続けたのを覚えています。

シンポが休憩に入るや、
当時この事件をブログで追いかけてくださっていて、
このシンポをアナウンスしてくださった筑波大学の名川勝先生に
メールを入れないではいられませんでした。

先生は真夜中にもかかわらず大学でお仕事中で、
同時進行でシンポを聞いておられ、すぐにお返事いただいたことなど、
このエントリーを書きながら、懐かしく思い出されます。

先生のブログのこちらのエントリーのコメント欄にその時の記述があり、
ここで名川先生が私の「推論」と書いておられるのが現在のspitzibara仮説のこと。

事件があの時の切迫した危機感と懸念の通りに展開しているだけに、
いま先生のコメントで当時のやりとりを読むと、奇妙な生々しさを覚えます。

シンポが終わった後、間違った理由で重大なことが起ころうとしているのに、
事件のウラに気付いているのが、もしかしたら自分だけなのだとしたら……と考えると
その事態が恐ろしくてならず、かといって私には発言するすべもなく、
唯一自分にできることとして始めたのが、このブログでした。

そして08年1月のDiekema講演で、
いよいよ彼らは一般化に本気なのだと確信しました。

Ashleyの父親とDiekemaらは、それぞれ別の理由から
一般化を推進したい点では利益が見事に一致している――。

前者は、自分が考案したAshley療法を世に広めるために、
後者はAshleyケースの裏に潜む特殊な事情を隠蔽するために――。

そう勝手に確信すると、
またしても居ても立っても居られない気分になり、その危機感に追い詰められるように、
私にはどう考えても分不相応な英語ブログまで、とうとう始めることになりました。

そうして私が懸念してきた通り、
去年、2010年は、成長抑制療法の一般化への動きが一気に加速してしまいました。

07年当初は、いかにも利益関係のない部外者を装い、
その後の数年も、事件の動きに加わりつつ目立たないところに隠れていたFostが
俄かに表舞台に浮上し、今やDiekemaすら押しのける勢いで
成長抑制の提唱者として活躍しています。

このNorman Fostこそ、Ashley事件の陰の立役者だと
ずっと前から当ブログが睨んでいた人物――。

極めてラディカルな功利主義的倫理学者です。
彼の主張で目立っているのは障害児への「無益な治療」論と
医療決定を巡る司法介入への嫌悪。

特に後者では
病院内倫理委員会をもって司法介入に代用させるのが彼の狙いであり、

去年11月にHCRに発表された
成長抑制WGの「妥協点」もFostの意向に沿って
病院内倫理委の検討で認めることを可とするものとなっています。

もしかしたら、
対象者の少ない、医学的にもさほど画期的な療法とも思えない成長抑制の一般化に、
小児科医療界の大物医師であるFostがここまで執拗にこだわり続けるのには、
権力者につながるAshley父の歓心を買うこととか
Ashleyの個別ケースの真実の隠ぺいだけではなく、
もっと重大な狙いがある――?

それは、Fostの狙う、
倫理委員会を隠れ蓑に司法を排除した重症障害児への「無益な治療」論適用への
地ならしとしての、成長抑制一般化であり、
それによる「重症児は話が別」という線引きなのでは――?

そして、去年のHCRの論文を巡るメディアの扱いを見ても、
7年当初、すべてのメディアが2つの事実から一斉に目をそむけたように、
また米国のすべてのメディアが英国のKatie事件を丸無視したように、
メディアがある1つの意思に操作されているとしか思えない節がある。

それが示唆しているのは、
Ashley父が強大な権力につながる人であるというだけにとどまらない、
それ以上に恐ろしい事態なのか……?

一部の人が批判しているように
“Ashley療法”が実験的な医療だというだけではなく、まさかAshley事件そのものが
世論を操作するために仕組まれた実験だった……なんてことは……?

それを思うと、
EP誌の批判声明が07年当初に書いていた
「意識的な試み conscious attempt」という言葉が不気味にリフレインする。

Ashley事件4周年の当ブログのもの思いは、なにやら底なしに恐ろしい――。


【これまでの周年記事】
個人的“Ashley事件”一周年(2008/1/5)
個人的“Ashley事件”2周年 Part 1(2009/1/5)
個人的“Ashley事件”2周年 Part  2(2009/1/5)
個人的“Ashley事件”2周年 Part 3(2009/1/5)
個人的“Ashley事件”3周年(2010/1/25)
2011.01.07 / Top↑
逐次エントリーに取りまとめてきたように、去年、2010年は
成長抑制療法の一般化に向けてDiekemaやFostらが周到に張り巡らせてきた仕掛けが
一気に表面化した1年間となりました。

それらの動きを追いかけながら、
07年の論争当時に読んだ時にはさほど印象に残らなかった、ある批判声明が
改めて妙に生々しく思い出されてきました。

障害児の親向けの雑誌Exceptional Parent誌の批判声明です。
Ashley事件4周年を機に、この声明を再読してみました。

Exceptional Parent(EP) Magazine Makes Position Statement – when the Slippery Slope Becomes a Mudslide


日付はありませんが、07年の論争当初(たぶん2月?)に出されたもの。

EP誌は36年の歴史の中で、わずかな例外を除き、ジャーナリズムの精神にのっとって
論争のどちらかの側に立つことを極力控えてきたといいます。

しかし、“Ashley療法”は人間の命のまさに本質と尊厳を脅かすものであり、
我々の良心が命じるところによって、批判の立場を明らかにする、と冒頭で宣言。

そして、その後に書かれていることは今にして振り返ると、まさしく慧眼で、
当時の批判言説の多くが欠いていた視点が、このEPのステートメントにはあるのです。

それは「なぜ2年も前に行われた医療介入の話が
今になって突然こんな形で表に出てくるのか」という疑問。

というか、むしろ、
「その背景には、なんらかの意図が働いているのではないか」との疑惑。

EP誌は、Ashley事件を、
このニュースがブレイクする前後にあった
2つの出来事の間に位置づけてみることによって、その疑惑をあぶり出しています。

Ashley療法のニュースの1年と3カ月前には
オランダで重症の障害を持って生まれた新生児を安楽死させる5つの条件、
グローニンゲン・プロトコルが作られています。

Ashley療法のニュースがメディアで報じられた3週間後の出来事とは、
スイスの最高裁がターミナルでなくとも重症の精神障害者に自殺幇助を認めたこと。

グローニンゲン・プロトコルを作った医師らは、
プロトコルを発表した時点で既に4人の乳児を安楽死させたことを認めている。
(その中の1人はダウン症児)

Ashleyに行われたことも、実施から2年以上も経ってから明かされた。

グローニンゲン・プロトコルもスイス最高裁の判断も米国でもその他の国々でも
大きく報道されることはなく、大きな批判の声も起こらず、誰もが黙している一方で、
なぜ2年以上の前のAshleyの症例が、今この時に、わざわざ大々的に報じられるのか、と。


These dramatic news stories do not represent isolated instances of hard choices in hard times. Each story represents a conscious attempt to expand the number of life-ending or life-altering procedures available to physicians and parents who would choose to use them and, in so doing, rob the child of her of his human dignity. The creators of these procedures want them to be adopted and used by physicians and families throughout the world. The utilitarianism they promote in the name of compassion is nothing other than new language and new ideas designed to encourage the systematic denigration of those with disabilities, stripping them of the basic human right to life and dignity. Over sixty years ago, millions died to rid the world of people who perpetrated these same shameful acts in the name of bogus science. Have we now ignored that sacrifice and the lessons they taught us?

これらドラマチックなニュースは、
困難な状況で困難な選択が行われた個別のケースの話ではなく、
それぞれのニュースの背景にあるのは、
生命を断ったり生命に手を加える手段を増やそうとする意識的な試みである。

医師と親とが使うことのできる選択肢を増やし、
子どもから人としての尊厳を奪おうとするのだ。

これらの手段を創り出す人たちは、
それらが世界中の医師や家族に使われるようになることを望んでいる。

彼らが思いやりという名のものに推進する功利主義とは、
障害のある人々を組織的に貶め、障害のある人たちから
命と尊厳を保障する人権をはぎ取ってしまうために作られた
新たな言語と新たな思想である。

60年以上の前の何百万人もの人々の犠牲の上に立ち、
エセ科学の名のもとにこうした恥ずべき行為を行った人間は
世の中から駆逐されてきたというのに、

彼らの犠牲と、そこから学んだ教訓を
我々はここにきて無にしてしまったというのだろうか。




It is a shame and an affront to the human dignity of every one of us to permit these procedures on even one child. We need to make it right and make sure it never happens again.

こうした手段が例え一人の子どもにでも行われることを許すのは
我々一人ひとりの人間としての尊厳に対する恥辱であり侮蔑である。

我々はその誤りを正し、
二度と同じことを繰り返さぬようにしなければならない。




We see “Ashley Treatment,” the “Groningen Protocol,” and the Swiss assisted suicide decision as thinly veiled attempts to objectify and desensitize the value of human dignity.

“Ashley療法“、”グローニンゲン・プロトコル“
そしてスイスの精神障害による自殺幇助に関する決定は、
表面だけをわずかに取り繕ってあるものの、
人間の尊厳の価値を対象化し貶めようとの企みだと
我々は考える。




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ちなみに、EP誌は、実は私は個人的にずいぶんお世話になった雑誌です。
娘が生まれてすぐにその存在を知り、何年も定期購読しました。

日本の障害児の親向けの雑誌もいくつかは読んだけれど、
いずれも医師ら専門家が高いところから親を指導するというスタンスのもので
EP誌の、親と専門家とが「共に」考えるという姿勢がとても新鮮だった。

米国の障害児の親たちは子どもの障害名についてもその詳細についても
きちんと専門用語で知らされ、把握・理解しているばかりでなく
知識をしっかり身につけていることにもびっくりしました。

専門家の導きにただ“お任せ”して“ついて行く”のではなく、
主体的に情報を集め、学び、考えていこうとする米国の親たちの姿勢にも、
子どもの医療に関する判断の主体として専門職と向かい合うスタンスにも

障害のある子どもを、ただ守ってやるべき存在としてではなく、
また「できないこと」にだけではなく「できる」ことにも目を向けて
まず一人の子どもとして捉える眼差しにも、大いに目を開かされました。

20年以上前の当時、米国ではすでに障害児の親が疑似患者となって
医学部学生への教育に参加する試みが行われていることを教えてくれたのもEP誌でした。

娘が生まれてから最初の1年間に私のバイブルだった
Leo Buscagliaのthe Disabled and Their Familiesと共に
私はEP誌から、当時の日本の専門家が誰も教えてくれなかった多くのことを学びました。

私がBuscagliaやEP誌から学んだ大切なことを
子どもの障害を知ったばかりの若い親たちに教えてくれることのできる専門家が
20年以上たった今、日本にも沢山増えていますように……。
2011.01.07 / Top↑
カナダ、ケベック州で去年9月から11か所の予定で進行中のthe Select Committee on Dying with Dignityによる尊厳ある死と安楽死に関するヒアリングが、12月の休止を経て再開される。尊厳ある死とは即、医師による自殺幇助のことだと思い込んでいる人がいるが、カナダ人なら誰でも治療を拒否する権利を認められている現在、尊厳ある死に関するヒアリングとは、死期が来る前に医師に患者を殺しても良いと認める話ではなく、いよいよ最期を迎えた時に苦しまずに愛するものに囲まれて死ぬことについての意見聴取であることを、きちんと区別しよう、と the Quebec Life Coalitionの長。
http://montreal.ctv.ca/servlet/an/local/CTVNews/20110103/assisted-suicide-dying-dignity-110103/20110103/?hub=MontrealHome

米国共和党がオバマ大統領の医療制度改革法の廃止に向け、圧力を強めている。
http://www.nytimes.com/2011/01/03/us/politics/03repubs.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha2

メディケアに終末期医療に関する事前指示への相談料を新たに盛り込むことについて、提案者でC&Cなどとも近い安楽死合法化論者の Blumenauer議員が、共和党がまた「死の委員会」だと騒いで政治利用するから、この「勝利」を確実なものにするために、なるべく伏せておくように、と支持者らにメールで指示していたことが明らかに。「この規則の存在に気付かれない期間が延びれば延びるだけ、新制度導入の可能性が上がる」と。
http://www.lifenews.com/2010/12/31/democrat-who-started-latest-death-panels-row-regrets-email/

米国オハイオ州で10歳男児が、祖父にプレゼントされたライフルとショットガンで母親を殺害。3日に殺人罪で起訴。
http://www.usatoday.com/news/nation/2011-01-03-ohio-mother-shot_N.htm?csp=Dailybriefing

WikiLeaksが公開した在仏米大使館から本国への07年の公電で、米国の遺伝子組み換え作物に反対しているEU諸国に対して報復的な輸出入戦争を検討するよう勧告。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/03/wikileaks-us-eu-gm-crops?CMP=EMCGT_040111&

WikiLeaksが公開した文書で、オーストラリアが表向きには日本の捕鯨を国際法廷に問うと見せかけていた昨年2月、日本と妥協点を見いだして捕鯨継続に協働しようと動いていたことが明るみに。
http://www.canberratimes.com.au/news/national/national/general/australia-eyed-whaling-deal/2038724.aspx

2003年4月のバクダッドの広場でサダム・フセインの像が倒されたシーンは米国メディアが仕組んだものだった、とProPublicaとNYT。
http://www.propublica.org/article/the-toppling-saddam-statue-firdos-square-baghdad

オーストラリア、クイーンズランド州で大洪水。ハリケーン・カトリーナの後のニュー・オリンズを彷彿とさせる映像。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/jan/03/australia-floods-queensland-rockhampton?CMP=EMCGT_040111&

NYT元旦のオピニオン・ページでコラムニストのNicholas Kristofが米国で拡大する経済格差が人心の荒廃を招いていることに警鐘を鳴らし、平等こそが真のソウル・フードだ、と。冒頭、スタインベックの言葉が引用されている。a sad soul can kill you quicker, far quicker, than a germ. 悲しみを抱えた魂は細菌よりも早く人を死に至らしめる。:スタインベックの言葉を反転させれば、毎日アスピリンやビタミンDやカルシウムのサプリを飲ませられるよりも、誰もが希望と安心を持って生きていける世の中で暮らせることの方が、たぶん病気予防の効果が高いのだろうし、途上国にワクチンや新薬を届けること(そして先進国の製薬会社や、慈善家でもある、その株主たちが更に儲けること)よりも、もしかしたら途上国を貧困状態へと追い詰めている世界経済のあり方を見直すことの方が、病気予防のためには本当はより有効なのかもしれないし。
http://www.nytimes.com/2011/01/02/opinion/02kristof.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha212

同じくNYT元旦の社説による2011年の米国の経済見通し。米国の経済そのものは成長基調であるにも関わらず、失業率は下がらず住宅価格は上がらず、米国人の生活は改善されていない。政府の予算は苦しく、さらなるリストラ、サービス削減、増税は避けがたい見通し。2011年に経済成長が国民生活に反映されるためには、適切な経済刺激策と雇用創出、財政赤字削減に政策を誤るな、と。:日本でも全く同じことを誰もが語っているのだけど、これだけグローバル化し暴走する資本主義を前に、まるで各国の国内努力でどうにかなる問題であるかのように、みんなですっとぼけて、一体いつまで誤魔化し続けるのだろう……と、聞くたびに思う。目の前の政権の失策とか、特定の国の政権運営能力とか経済政策の正否とか、本当はもうそういう次元の問題ではなくて、国家という仕組みがもはや機能できない世界が作られてしまっているということなんじゃないんだろうか。
http://www.nytimes.com/2011/01/02/opinion/02sun1.html?nl=todaysheadlines&emc=tha211
2011.01.07 / Top↑
新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。


新年を祝う世界中の人々の表情。NYTから22枚のスライド・ショーで。
http://www.nytimes.com/slideshow/2010/12/31/world/20101231-newyears-global.html?nl=todaysheadlines&emc=thab1

英国人の海洋生物学者で10年前にMSを発症したAndrew Colganさん(42)が12月9日、スイスのDignitasで幇助自殺。
http://www.thisisstaffordshire.co.uk/news/MS-VICTIM-DIES-SWISS-CLINIC/article-3050285-detail/article.html

カナダのDebbie Purdyさんが出現。Nicole Gladuさん(65)はポリオの後遺症が悪化して、いずれ歩くことも話すことも出来なくなる日が来るのを恐れている。もしもケベック州が自殺幇助を合法化しないなら、スイスへ行って自殺する、でもなるべくなら自宅で死にたいので、合法化してほしい、と。
http://www.montrealgazette.com/news/home+Montrealer+pleads/4035211/story.html

ミシシッピ州で、強盗で終身刑2回という判決を受け収監されている黒人姉妹のうち、Jamie Scottさん(38)が糖尿病から人工透析が必要となっているので、釈放を求める運動が起きていたらしい。このたび、知事が姉妹の釈放に同意したのだけれど、妹のGladys(36)さんが腎臓を提供してJamieさんが移植手術を受けることがその条件。:詳細までは読んでいないけど、気になるニュース。NYTのコラムニストもこの話題を取り上げている。
http://www.nytimes.com/2010/12/31/us/31sisters.html?_r=2&nl=todaysheadlines&emc=tha23
http://www.nytimes.com/2011/01/01/opinion/01herbert.html?nl=todaysheadlines&emc=tha212

アルツハイマー病の患者本人の望むことをとことんやってもらうことで周辺症状の軽減に成功しているナーシング・ホームがある。例えば夜中の 2時に食事をしたければしてもらう。食べたいものを食べたいだけ食べてもらう。それがチョコレートのような体に悪いものであっても、本人が食べたいものであれば食べたいだけ無制限に食べてもらう。赤ちゃん人形を抱いていたければ、気が済むまで抱いていてもらう。:ちゃんと読んでみたい記事。
http://www.nytimes.com/2011/01/01/health/01care.html?nl=todaysheadlines&emc=tha23

最初の6ヶ月間、母乳で育てられた子どもは他の子どもに比べて1歳段階で学校の成績が高い。:今年も、こういう科学研究がわんさと発表されるんでしょうか・・・・・・? むかし神童いまは・・・・・・って英語では言わないのかな。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212076.php

親が調べたい子どもの遺伝子はメラノーマ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/212270.php

毎日アスピリンを飲むとガン予防になるという新たなエビデンス?がLancetに。:健康な人が毎日薬を飲むことで病気を予防しようという発想そのものが、どこか病んでいるような気が私にはずっと前からするんだけど。「アスピリンでがん予防を」という話は去年も拾った。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2962301-X/fulltext?elsca1=TL-311210&elsca2=email&elsca3=segment

北アイルランドで深刻な水不足。スコットランドから支援。
http://www.guardian.co.uk/uk/2010/dec/29/northern-ireland-water-crisis-health?CMP=EMCGT_30121
2011.01.03 / Top↑
米国MO州の自殺幇助合法化議論で、誰かの命を維持するために公費から医療費が「浪費」されているという話がさんざん出ていることについて、それは要するに「医療費的に見て、アンタはカネがかかる人だから、そういう人はペットみたいに“始末”させてもらわないと」と言っているに等しい。この問題を回避できる合法化法案というのはあり得ない、との反対論。
http://missoulian.com/news/opinion/mailbag/article_fa361bd2-1292-11e0-9f20-001cc4c03286.html

カナダ、ケベック州でも今年は自殺幇助合法化議論が情緒まみれで吹き荒れました、と。
http://www.canada.com/Year+Quebec+marked+emotional+debate+assisted+suicide+euthanasia/4032855/story.html

この1年間に当ブログが拾った関連主要ニュースは以下にまとめました。
2010年のまとめ:一般(A事件以外) 前半(2010/12/27)
2010年のまとめ:一般(A事件以外) 後半(2010/12/27)
2010年のまとめ:安楽死・自殺幇助関連のデータ・資料(2010/12/27)

オーストラリアの肉牛に、許容量をはるかに上回る成長ホルモンを検出。:このブログをやるようになってから、アメリカ産もオーストラリア産も、牛でも豚でも、どんなに見た目がきれいでも、どんなに安くても、手が出なくなった。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/hormone-level-in-livestock-too-high-survey/2035114.aspx?src=enews

でも、そのオーストラリアで、輸入原料が交じっているジュースでも「国産」表示を認めているとて食品表示法が「弱い」との批判が出ているというのだから、オーストラリアの人たちにとってはオーストラリア産がやっぱり安全だと思われているということみたい。確かに私たちだって「国産」が安全だという保証がどこにあるんだか、分かっているわけじゃないんだけど。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/labels-for-food-slated-as-weak/2035105.aspx?src=enews

上の2件は昨日のニュース。今日は、そのオーストラリアから、成長ホルモンが肉の味だけでなく柔らかさまで損なっている、と。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/beef-taste-tenderness-marred-by-hormones/2035613.aspx?src=enews

同じくオーストラリアで、ペットが受けたワクチンやノミ治療のスプレーでガンになったり突然死が起こったり……との苦情が去年1年間に2600件以上あったそうな。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/vaccines-sprays-linked-to-cancers-pet-deaths/2035620.aspx?src=enews
2011.01.01 / Top↑