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昨日のエントリーで紹介した英国障害者のデモ(挨拶した人によると「生まれて以来記憶にある限り最大規模」)関連の記事とビデオ。8000人が集まったとか。一番上のGuardianのビデオでプラカードの一つがキャメロン首相の「大きな社会」構想に触れて「大きな社会なら我々も含めろ」と。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/11/disabled-marchers-thousands-benefits-protest?CMP=EMCGT_120511&
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2011/may/11/disabled-people-marches-london?intcmp=239

http://www.channel4.com/news/disabled-people-protest-against-cuts
http://www.channel4.com/news/minister-for-disabled-missing-from-protest-march

上記デモのスライド・ショー。
http://www.guardian.co.uk/uk/joepublic/gallery/2011/may/11/public-sector-cuts-disability?intcmp=239

英国の社会保障費カットに障害者らから訴訟や抗議デモが続いている中、Guardianaの公共サービス編集長が英国600万の家族介護者らの働きを年額1190億ポンドと試算、「年間のHNS予算と同額の貢献をしている介護者らをサービスや手当の削減で裏切るのか」と。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/12/carers-save-uk-119bn-a-year

北アイルランドでも試算が行われて、20万7000人の介護者の働きは440億ポンドに相当。:英国では介護者支援チャリティが、毎年のように非公式介護者の働きをサービス費用に換算しては金額を出してくる。それに、最初はすごく新鮮な驚きがあった。英国ではNHSの受診時無料原則や無料の大学教育とか、福祉国家としての歴史を誇る国民の感覚なのだなぁ……と感じ入る。「介護の社会化」を謳ってスタートした介護保険に、ほんの10年やそこらで「家族に代わってお世話する制度じゃない」などと高いところから説教を垂れる人が出始めていることを考えると、ケアラー連盟が一度くらい同じような試算を出してみたらいいのに、と思ったりする。
http://www.belfasttelegraph.co.uk/news/local-national/northern-ireland/unpaid-carers-worth-44bn-a-year-15154648.html

DNAを調べると、教育レベルの低い人は総じてテロメアが短くて、早く老化することがわかったそうだ。それは社会要因が遺伝子に影響していくということ?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/224884.php

寒い家は命にかかわる、とBMJの論説。:英国では「燃料貧困」が社会問題化しており、対策を求められている。リヴァプールでは「ヘルシーホームズ事業」というのをやっていて「介護保険情報」の連載で3月に書いたのだけど、今回のカットでどうなったのか気になる。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/224796.php

去年7月にDignitasで自殺した英国人Douglas Sinclair氏(76)を支援した疑いで逮捕された40代の男女、無罪放免に。英国では自殺幇助がどんどんなし崩し的に合法化されていく。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-tyne-13368451

Scopeが行った障害者の自殺幇助に関する意見の調査について、W・Smithがブログに。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/?p=16368&preview=true

ビル・ゲイツがエネルギー政策について発言を続けている。Gates財団としてはエネルギーと温暖化の分野には「エネルギー慈善」は考えていない。エネルギー市場と投資は慈善にはデカすぎるから。ただ、原子力発言の技術開発には食指が動いている模様。もちろん投資として、大きくなって財団に戻ってくると見込んで。
http://www.grist.org/climate-energy/2011-05-11-bill-gates-energy-philanthropy-rd-funding-u.s.-outcompete-china

で、「みんなでエネルギーに投資して地球を救おう、米国がグローバルなエネルギー施策のリーダーとなろう」というビル・ゲイツのメッセージに、さすがSeattleの地元紙の称賛は熱い。:ちなみにGates氏はいわゆるグリーン・エネルギーみたいな「かわいらしい cute」ものではエネルギー問題は解決できないとする原発支持の立場。
http://www.seattlepi.com/local/connelly/article/Connelly-Bill-Gates-says-invest-in-energy-save-1374059.php

退役軍人省の治療を受けた最近の退役軍人の半数以上が精神障害に苦しんでいる。
http://www.propublica.org/article/more-than-half-of-recent-war-vets-struggling-with-mental-health-problems

米国のネオ・ナチ男性が10歳の息子に殺された。
http://guardianmail.co.uk/go.asp?/bGUA005/xIDBRJ3/qD5XZI3

親のネグレクトやコントロールが子どものメンタルヘルスに悪影響を及ぼす。:世の中がどんどん操作的な手法を好むようになっている背景に、この問題があると私はこのところずっと考えている。親子の間で起こっていることが、そのまま世の中の強いものと弱い者との間で行われている、というか。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/224903.php

米国の大洪水に続き、スペインで過去50年で最大の地震。:地球がもたなくなるのと、世界のあらゆるシステムが行き詰って人心が荒廃し人間社会が崩壊していくのと、どっちが速い……? 最近そんなことを思う。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/12/spain-earthquake-lorca?CMP=EMCGT_120511&

日本の障害者の性に関する介助を専門に行うNPOがあった。ホワイトハンズ。
http://www.whitehands.jp/menu.html

               -----

今まで知らなかったけど、2009年に日本に「ワールド・ブロガ―協会」という組織が出来ていた。

国際的な組織の支部なのかと思ったら、そうではなく米国の野球の「ワールドシリーズ」と同じみたい。「ホーム」で詳述されているワクチンについての「ワクチン自体の是非をいうのではない、情報の不均衡が問題」という姿勢や、現在の日本のマスコミ操作への懸念は全く共感するのだけど、かすかな違和感が無きにしも非ず。なんでだろう――?

ブロガ―が群れたり組織化されることに違和感があるのかもしれない。第1回「取材会」で世話人の誰かが、植草事件の裁判長と「個人的に知り合いで、一緒に酒を飲んだ時」のエピソードを持ちだして、権力に逆らうとやられるし自分もそれに逆らうことはできない事情があることを「示唆しておりました」と平然と口にするのは、HPの「ごあいさつ」にある「その情報の精度が低いケースや、一部のネットモラルにかける表現」に当たらない? それにこの人の別の挨拶を聞いても、自分が大物政治家といかに個人的なつながりがあるかとか、自分が東大を出たこととかをさりげなく言いたがっていて、この人の感覚そのものが主旨からズレてない?

……てなふうに、一人一人が自分の勝手な「意地悪ばあさん」的な述懐を開陳している方が、「連帯」より無名で無用の人々であるブロガ―には似合っている気もするんだけど。

もちろん、だからといって、無名のブロガ―のブログから勝手に情報やコンテンツを横取りしていっていいことにはならない。有名・無名を問わず、ブログであれ学術論文であれ、そこにある情報やコンテンツはその人がそれなりにエネルギーと時間を費やしてやった「仕事」である以上、それはその人がやった「仕事」として正当に扱われるべきだと思う。

http://www.worldblogger.net/index4.htm
2011.05.12 / Top↑
昨日のエントリー
英国の障害者らが介護サービス削減に抗議して訴訟、大規模デモを書いた際に

英国の老舗介護者支援チャリティから出ている「介護者の10の心得」を
エントリーとして紹介したいな、と考えたもので――。


英国でも米国でも介護者向けに様々なアドバイスや「心得」が出ており、
いくつかは「介護保険情報」の連載でこれまでにも紹介し
その中のいくつかはこのブログでもエントリーにしていますが、
今回のものは特にお金に関するアドバイスが中心。

それだけに英国の介護者支援の実情が少しばかり伺えるものとなっています。

私は中でも特に介護で離職する人のための年金受給資格保護は
非常に大事な施策で、これから日本でも考えられるべきではなかろうか、と思います。


介護者の10の心得  by the Princess Royal Trust for Carers

 1. 自分を大切に! 介護は肉体的にも精神的にも介護者の健康に影響しがちです。でも、あなたのことだって大事。安全な介護の方法を学び、適切な食事をとり、よく眠り、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。

 2. レスパイトを。負担とストレスの大きな介護から、時には離れて息をつくことが大切です。自治体やチャリティに相談して、自分に替って介護してくれる人や場所を探しましょう。レスパイトのための資金援助を受けられる可能性もあります。

 3. あなたは一人ではありません。あなたと同じような経験をしている介護者が英国には約600万人います。地元の介護者センターや自治体を通じて支援グループに参加すると、他の介護者と出会うことができます。

 4. 家庭医に相談を。介護している人の健康に気を取られ、介護者は自分の健康を顧みる余裕をなくしがちです。介護をしていることをGP(家庭医)にちゃんと話しておきましょう。健康管理に気を配ってもらえるだけでなく、介護に役立つ機関にも紹介してもらえます。

 5. 介護者アセスメントを。あなたには自治体の介護者アセスメントを受ける法的権利があります。政府のウェブ・サイトや最寄りの介護者センターに問い合わせ、手続きをしましょう。

 6. もらえる経済支援をチェック。介護者が受けられる支援には以下のものがあります。該当していないか再確認しましょう。

 ・介護者手当 16歳以上で週35時間以上の介護をしている人が対象。他にも条件はありますが、働いていなかったり学生なら該当する可能性があります。現在、週53.90ポンド。

 ・所得支援 60歳未満で低所得、貯蓄総額が16000ポンド以下の人が対象となります。問い合わせを。

 ・介護者プレミアム 介護者手当の受給資格を満たし、さらに所得支援または年金の受給者であれば、週27.15ポンドを上限に追加支援が受けられます。

 ・減税措置 大半の世帯はなんらかの減税措置の対象となります。調べてみましょう。

 ・障害者手当 障害のある人を対象にした手当があります。チェックしましょう。

 ・住宅手当 福祉手当を受けている人や低所得で家賃や自治体税を払えない人は住宅手当の対象になる可能性があります。調べてみましょう。

 ・年金受給資格保護 週20時間以上の介護をしている人が介護者手当も所得支援も受けていない場合、年金の受給資格を保護する制度から漏れている可能性 があります。介護のために仕事を辞めたり減らした人には、新たな救済制度も出来ました。政府の「介護と年金」ウェブサイトを読むか、介護者手当の担当部署 に電話をしてみましょう。

 7. 助成金をもらいましょう。短期のレスパイトや送迎、器具や機器の購入には自治体や介護者センターから助成金が出る場合があります。

 8. 自分でサービスを選べます。自治体の介護者アセスメントを受け、介護者支援を受けられることになった場合、ダイレクト・ペイメントを選択することができます。現金支給によって、自分で好きなようにサービスをアレンジすることが可能になります。

 9. ジョブセンター・プラス(公共職業安定所)の利用を。介護を担うからといって仕事をやめなければならないというものではありません。もう一度働き たい人が研修や面接を受ける場合には、その間の代替え介護の費用がジョブセンター・プラスから支給される可能性があります。政府の「介護と雇用」ウェブ・ サイトを参照してください。

 10.助けを求めましょう。全国に144の介護者センターを持つThe Princess Royal Trust for Carersをはじめ、多くの組織が介護者に情報提供を行い、支援を提供しています。上記以外に自治体独自のサービスやボランティア組織もあります。若年 介護者も遠慮せず、相談してください。



 ・全文翻訳ではなく、各項目の主旨を取りまとめたものです。
 ・スコットランドに関する情報は省略しました。
 ・多くの項目に当該サイトへのリンクや担当部局の電話番号がありますが、省略しました。

「世界の介護と医療の情報を読む」53
月刊「介護保険情報」2010年11月号 p.74



特に4と5の項目については
英国の介護者支援には介護者法(Carer Act)や全国介護者戦略という法的、政治的な根拠があり
その中で介護者の発見や支援などGPにも一定の役割が課せられていたり、
要介護者とは切り離して介護者自身のニーズのアセスメントが保障されている
という日本とはかなり異なった事情があります。

英国の「介護者アセスメント」についてはこちらのエントリーに。

なお、このリンクを皮切りに「介護者支援シリーズ」として
「介護保険情報」誌に書いてきた介護者支援に関する文章を6本まとめています。


【その他、関連エントリー】
「介護者の権利章典」役を改訂しました(2008/12/12)
「大切な人が脳卒中を起こしたら介護者として心得ておきたい15の知恵」(2009/6/22)
2011.05.12 / Top↑
英国連立政権が打ち出した社会保障費大幅カットで
自治体が介護サービスを縮小し、障害者、高齢者に大きな影響が出ている。

Frank Baileyさん(80)は長年72歳の妻Faithさんの介護をしてきた。
Faithさんには心臓病、当女房、喘息、肺疾患、骨粗鬆症などがあり、
自力歩行ができないほか、夜間に呼吸が止まってしまうことがあるために
介護者はロクに眠ることができない。

それで、これまでは夜間の介護者が週に3回派遣されていた。

週末には孫が交代で手伝いに来てくれるので
高齢で自身も関節炎など身体の不調を抱えるFrankさんは
一日おきにぐっすり眠れることだけを救いにして
なんとか厳しい介護を続けてきたのだけれど、

この度の予算削減によって
これからは週2晩しか派遣できないと言い渡されてしまった。

Briminghamでは、要介護者のアセスメントの見直しが行われており、
介護ニーズが「最重要(critical)」でなくて「重要 (substantial)」とされた人は
これまでの介護プラン(ケア・パッケージ)を全面停止される恐れがある。
その数、ざっと4100人。

ただ、微妙なのは、先月Birmingham裁判所が出した暫定的な判断。

4人の障害者の家族が起こした訴訟で、高等裁判所のWalker判事は、
障害者差別(禁止)法のもとで当局には、
たとえそれが他の人よりも優遇することになろうとも、
障害者に社会参加を促し、そのニーズに応える義務がある、との見解を示した。

来週予定されているWalker判事の最終判断までは
アセスメント作業も中断されたままだ。


CarersUK、アルツハイマー病協会、Macmillan Cancer SupportとScopeが共同で行った調査によると、
ニーズに変化がないにも拘らず5人に一人がサービスをカットされており、
半数以上が健康状態の悪化や自立生活の危機を訴えた。
また半数が自己負担分の増加で食費や光熱費も足りない、と答えた。

財政悪化に苦しむ自治体側は
介護サービスをカットされた人をボランティア部門のサービスに繋げていく方針だというが、

実際には自治体はボランティア部門への助成金も相次いでカットしており、
活動が続けられないサポートグループが続出している。

Social care cuts: ‘The people concerned are invixible’
The Guardian, May 10, 2011


この記事で触れられているBirmingamの裁判に関する記事がこちら ↓
Disabled people take anti-cuts protest to the courts
The Guardian, May 10, 2011

今日水曜日、ウエストミンスターで5000人から1万人規模のデモ行進が予定されている。
The Hardest Hitマーチ。予算削減の影響で最もひどい目に会う人たちの行進 ↓
Disabled people to march in London against cuts to benefits and services


それにしても、前から「ひどい、ひどい」と聞く割には
それでもベースラインは日本よりもずっと高いのでは……と思ってはいたけど、
冒頭のBaileyさんたち高齢夫婦のケースを読むと、やっぱりそうだったか……。

Brown政権末期に将来の介護保険制度創設に向けた青写真が描かれていたけど、
あれは結局は選挙に向けた起死回生のパフォーマンスだったみたいだし、
英国には介護保険は今だに存在しない。

日本にはれっきとした介護保険制度が存在する。
「世界に冠たる我が国の介護保険」と胸を張る人が
日本の介護業界には何人もいる。(もちろん現場の人じゃない)

それでも家で家族の介護をしている80歳の高齢介護者の中で
週に3晩とか2晩はおろか1晩だって「介護サービスが入ってくれるから、
その晩だけは熟睡させてもらえます。だからこそ、なんとか介護を続けていられます」
と言える人が、日本の国のどこに……?

英国の障害者や高齢者には申し訳ないけど、
私には、この記事、この発見が何よりもショックだった……。


なお、去年「介護保険情報」11月号に
「貧困とウツ状態にあえぐ英国の介護者たち」という一文を書きました。
この段階で、既に「障害者手当20%カット」が打ち出されており、
この連載で取り上げたチャリティの調査も、それに対して
現状を訴えて異を唱える試みのようでした。


【英国のベースラインについて具体的な情報を含んでいるエントリー】
レスパイト増を断れた重症児の母の嘆きの書き込みがネット世論動かす(英)(2011/1/21)

【米国のベースラインについて具体的な情報を含んでいるエントリー】
Ashleyケース、やはり支援不足とは無関係かも(2008/12/8)
米国IDEAが保障する重症重複障害児の教育、ベースラインはこんなに高い(2010/6/22)
2011.05.12 / Top↑
英国の社会保障費カットで障害者らが訴訟へ。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/10/disabled-people-cuts-protest-courts?CMP=EMCGT_100511&
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/10/social-care-cuts-disabled-people

片や、英国の大学は「上乗せした学費まで払えるお金持ちの学生さんにだけ入学枠を広げます」と。
http://www.guardian.co.uk/education/2011/may/09/universities-extra-places-richest-students?CMP=EMCGT_100511&

英国の今年の介護者週間は6月13日から19日。
http://isleofman.isle-news.com/archives/crossroads-caring-for-carers-celebrate-carers-week-2011/10362/

Oregon州で「自殺キット」を売ってた女性がいた件で、自殺キットの販売は違法とする方向。
http://www.examiner.com/health-care-in-national/oregon-moves-to-make-sale-of-suicide-kits-illegal

ProPublica、今度はナーシングホームの過剰投与問題を取り上げている。ここはほんと、骨がある。
http://www.propublica.org/blog/item/citing-drug-industry-influence-watchdog-says-overmedication-of-nursing-home

【関連エントリー】
ナーシングホーム入所者に症状もICもなく精神病薬投与(2009/10/31)
不適切な抗精神病薬のと投与、15万人の認知症患者に(英)(2009/11/15)
1人でTX州の総量をはるかに超える統合失調症治療薬を処方する精神科医が野放し……の不思議(2009/11/30)


VA州もチオペンタールの不足で死刑に使用する毒物リストにPASで使用されるペントバルビタールを追加。
http://www.newsleader.com/article/20110510/NEWS01/105100318/Va-adds-new-drug-lethal-injection

インクジェットのプリンターみたいな仕掛けで細胞を何層にも塗り重ねていく装置で、将来的に人の臓器が作れるんじゃないか、という3Dバイオ・プリンティング技術。:これって、福岡氏が言っていた機械論的な部分のロジックそのものという気がするんだけど。
http://www.washingtonpost.com/national/science/3_d_printers_may_someday_allow_labs_to_create_replacment_human_organs/2011/04/21/AFJM0WbG_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

米国初のフル・フェイス移植を受けた男性が顔を公開。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/09/america-full-face-transplant-patient?CMP=EMCGT_100511&

MYT. FDAが人工股関節の製造会社に、もっとデータとって研究しろ、と。
Hip Makers Told to Study More Data: the Food and Drug Administration ordered all producers of a popular category of artificial hip to study the implants, which have been linked to severe health effects in some patients.

ジュリアン・アサンジ氏にオーストラリアのシドニー平和財団から賞が贈られた。「人々の知る権利のために力を尽くしている」と。:これも「みんなの勢い」で原理原則も手続きもなし崩し……の1例のような気がするんだけど……。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/11/julian-assange-australian-peace-prize-wikileaks?CMP=EMCGT_110511&

NYT。平和維持部隊のボランティア複数が性的虐待を受けた、と名乗り出て、議会で公聴会。:こういう話、国連でもあった。
Peace Corps Volunteers Speak Out on Rape: Former volunteers are going public about being sexually assaulted while serving, prompting a Congress hearing on Wednesday.
2011.05.12 / Top↑
この回、前のエントリーの続きです。


この記事の4日後に、ProPublicaは
不整脈会場で取材した参加者らの反応や、上記記事へのブログでの医師らの反応を調べ、
取りまとめた記事を掲載している。

一番典型的なのは以下のような反応で

「いつも腹立たしく感じるのは、医師でもない人たちに
ワイロや癒着に影響されてるんだろうと考われることですね。
製品に関する知識の多くは、それを売っている人から得るのが当然。
どこかで身につけなければならない知識なんだから」

「バスの腹に企業名があったからといって、
それで目の前の患者に入れる機器が決まるなんてことはない」

多くの医師は彼のように
金銭関係が自分の医師としての決定や学会の意思決定を左右することはないと答える。

一方、全く影響しないとも言えないのでは、と考える医師もいる。

不整脈学会への関連企業からの寄付金が歳入に占める割合は
2006年の37.5%から去年はほとんど半分に増えている。

ある医師は、これを、企業がそれなりに調査した上で投資している結果だろう、と見る。
もしも全く医師らに影響しないなら、企業がわざわざ学会に出張ってくるわけも
広告に莫大なカネを投じるわけもないだろう、と。

また、学会が企業のプロモ合戦の場となってしまっているために
カネをつぎ込んで存在を主張しておかないと医師に弱体化した印象を与える、との懸念が
企業の側にあるからではないか、と読む医師もいる。

医師と企業の共同研究の重要性や、知識を得る場としての学会の意義を強調する医師もいる。

医療の経済事情が苦しくなってきたために、
医療界や企業との間のカネの動きに向けられる目が厳しくなってきたのだ
と指摘する医師もある。

今回の学会で開かれた役員会では、企業との関係に関する方針が話し合われた。
このままでは誇り高い若い医師や科学者が企業との共同研究から腰が引けてしまう、
学会は患者のケアが向上するような企業との協働重視の姿勢を示さねば、と
次期会長。

役員が企業との関係をより細かくディスクロ―ズすることを含め、
いくつかの新たな方針を打ち出した。

Heart Docs Reject Claims Of Bias From Industry Money
ProPublica, May 9, 2011


前の記事へのコメントにもProPublicaの報道は偏っていると
批判に対して感情的に反発する医師の声は相変わらず多いけど、なんか、もう
個々の医師の倫理感とか、個々の医師の判断への影響とかいった次元の問題では済まないような……。


医療費高騰の原因としてあげつらわれているのは
主として人口の高齢化と医療の高度化ですが、

(でもって、なぜか前者ばかりが
「こぉんなにかかっている!」と具体的な試算の的にされては
あたかも極悪非道な単独犯のように言われ続けているわけですが)

私はそこに、さらに3つ目の要因として
熾烈な科学とテクノ研究国際競争が本当は加わっているんだけど、ただそこでは
各種助成金とか経済産業施策とかロビー活動を迂回してカネが回っているために
直接的な医療費の増大要因として見えにくくなっているだけなんじゃないかなぁ……と
「医師でもない人々」のゲスの勘ぐりをしている。

HPVワクチン一つとってみても、
もちろん開発研究にだってお金はかかるだろうけど、
顰蹙もので逆効果になってしまったメルク社の露骨なロビー活動にだって
一体どれだけの資金が注ぎ込まれたことか。

CDCセンター長に天下ってもらうのだって
決してカネを惜しんでできることじゃないでしょう。

そして、それらの資金は最終的には
メルク社のワクチンや薬の値段に振り分けられて回収されるわけですよね。

それは、たぶん、不整脈学会に、コーヒーカップやルームキーの広告権料として
製薬会社や医療機器会社が支払ったカネにも言えることだろうし、

開発競争とマーケティング競争に湯水のようにカネを注ぎこまないと
もう誰も生き残れない業界のサイクルが出来上がってしまって、
誰もそこから抜けられないまま競争だけが加速していくから、
本当はとっくに製品の価格に振り分けるくらいではとうてい追いつかなくなって、
だから余計に、相手の命がどうなろうと弱みに付け込む卑劣な手口だろうと
手段を選ばず、ひたすら次々に売りまくる以外になくなった自転車操業の狂騒状態――。

医療費を高騰させているのは
本当に「人口の高齢化」と「医療の高度化」と「熾烈な国際競争」の3つだけなのかなぁ……と、

こういう記事とか、去年11月に同じくProPublicaが書いた以下の記事に出ている
プロモ医師軍団に回った金額のバカでかさを見ると、どうしたって考えてしまう。

ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)


それに、その自転車操業の狂騒状態の背景で暴利をむさぼりつつ煽っているのは
もちろんグローバルなネオリベの金融資本主義であり、
最近とみに露骨になってきた慈善資本(帝国?)主義……。
2011.05.11 / Top↑

無料飲料水ボトル: 1万ドル
無料給水ステーション: 1万2000~2万ドル
コーヒー・カップにかぶせる紙製取っ手(スリーブ): 1万~4万5000ドル。
ホテル客室のキーカード: 4万5000~7万ドル。
展示ホールのカーペット: 2000ドル
パンフ用ビニール袋: 1万5000ドル
シャトル・バス: 5万ドル
シャトル・バスの座席ヘッドレスト・カバー: 1万2500ドル



さて、このリスト、いったい何の価格表でしょう?

ちょっとだけ、ヒントです。

無料飲料水ボトル1万ドル也の宣伝文句は
「無料飲料水は毎日、展示ホールで休憩時間に配られます」

キーカード4万5000~7万ドル也の宣伝文句は
「あなたのマーケッティング成功のカギはこれ! 」
ルーム・キーは4日間7000人以上の参加者と行動を共にするのです」

バスのヘッド・レストのカバー1万2500ドル也の宣伝文句は
「閉鎖空間でくつろぐ出席者に製品広告のまたとないチャンス」

もう、お分かりですね。
はい。これらの品物に広告をのっける権利のお値段でした。

で、こうして広告の権利を”販売”したのは、なんと米国不整脈学会。
セールスのマーケティング対象はもちろん製薬会社と医療機器会社。

先週4日間に渡って開催された米国不整脈学会の年次大会の期間中、
会場となったサンフランシスコは空港から街角からホテル客室ベッドサイドまで
それらの広告で埋め尽くされたわけですが、

こんなマネまではやらなかった去年の学会でも
展示ブース使用権と共催イベント費用を含めて
米国不整脈学会には関連企業から500万ドル以上が入ったとか。

除細動機業界に君臨する Medtronic が今年、ブース使用に支払う金額は54万3000ドル。
その他、カンファレンス会場のあちこちの広告とグラントを出すのと合わせて
Medtronicは総額160万ドルを学会に支払った。それ以外にも
学会18人の理事の内8人に講演料や顧問料を支払っている。

同学会が去年、外部から集めた1600万ドルの約半分の出所は
製薬会社とカテーテルや除細動機など医療機器会社だった。

もっとも、不整脈学会はこうして歳入の内訳をウェブで公開しているだけ良心的で
そんなことは一切やっていない学会の方がはるかに多い。

それに、もっとえげつないことをやっている学会もある。

先月開催された米国心臓学会では、
参加者に配られたIDバッジにトレーサーが仕込まれていた。
どんな肩書のどういう医師がどのブースを覗き、どれだけの時間そこにいたかが
リアルタイムで各展示ブースに知らされていた、というわけ。

(まるで自分のところの会員を、学会が企業に売ったみたいだ……と
誰かが記事の中でコメントしていたと思ったんだけど、見つからないので
私が読みながら自分自身の声を幻の活字で見たのかもしれない。)

高血圧治療薬を4種類作っている第一三共は米国血圧学会と仲良しで、
09年には330万ドルを同学会に提供。これは同学会の企業からの寄付総額の7割を占める額だという。

2年前に、米国血圧学会は第一三共とタグを組んで、
製薬会社のセールス担当者を対象とした研修プログラムを作った。
参加費は一人1990ドルで、第一の社員1200人が受講、終了した。
プログラム修了者は名刺に学会公認終了証を入れることができる。

元の学会長の一人は
「いやらしいと思いますね。診療に影響しますよ。患者に向かって
『私は第一三共のセールス・マンですけど、アドバイスさせていただきますね。
大丈夫、米国高血圧学会のお墨付きですから』と言っているようなものでしょう」

この人は2006年に企業からの影響問題で対立して学会長を辞めたという。
現会長は、研修プログラムは科学的に作られているし特定の薬を取り上げるわけでもない、
それにセールスするには知識が必要だ、と言っている。

なお20009年度に第一が同学会に寄付した額は330万ドルで
同学会が企業から得た寄付総額の7割を占める。

もっとも、これは自発的に公開された情報ではなく、
Biedermanスキャンダルを暴いた、例のGrassley議員の調査で出てきたもの。

Grassley議員の調査から出てきたものについては
当ブログでもいくらか追いかけてきていますが、
議員の調査で医療界と企業との金銭関係が社会問題化するにつれ、
大学や研究機関では情報公開や規制強化の動きが進んできたものの
各種学会の対応は遅れている。

しかし、治療ガイドラインを作り、議会へのロビー活動や一般への啓発を担う学会が
関連企業の働きかけのターゲットになるのは当たり前で、

例えば不整脈学会のウェブでの情報公開では、
理事18人の内12人が関連企業から講演料または顧問料を受け取っており、一人は株を所有。

高血圧学会がGrassley議員の求めによって提出した情報では
同学会理事14人の内12人に企業との金銭関係がある。

そういう金銭関係はプロとしての医師の判断に影響しないと関係者は口をそろえるが
Grassley議員は「信じがたい。近親相姦的な関係が多々見られ、気に食わない」

心臓機器メーカー間の競争はとみに激化しているらしく、
製品の使用とマーケティングは本当に適正なのかという疑惑も出ている。

1月に米国医学会誌に発表された調査では
5人に1人以上の患者が科学的な基準にそぐわない心臓除細動装置をつけられていた。

不整脈学会に多くの資金を提供してきた3つの企業には、
自社製品の使用に対して不当なキックバックを医師に払っていた疑いが浮上したり、
患者にメディケアを請求させ会社から返金していた疑いでも法務省の調査が行われている。

Financial Ties Bind Medical Societies to Drug and Device Makers
ProPublica, May 5, 2011


ProPublicaはこの4日後に続編記事を書いています。
次のエントリーに。


【Grassley議員の調査など関連エントリー】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)

【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)
2011.05.11 / Top↑
吉村昭「関東大震災」(文春文庫 2004年新装第1刷)を読んだ。

関東大震災の直接の被害者は22万人。

前半の地震と火災の被害について証言や資料から再現して書いてある部分は
さすがに吉村昭の緻密な検証作業と冷徹かつ圧倒的な筆力とで
まるで直接自分が目撃したような、ちょっと異様な読後感だった。

ここでは後半の、朝鮮人虐殺についてのみ、メモ的に。

朝鮮人に関する事実無根の流言飛語が起こり、
それが虐殺に繋がった社会背景について、
吉村昭は次のように分析している。

日本の為政者も軍部もそして一般庶民も、日韓議定書の締結以来その併合までの経過が朝鮮国民の意思を完全に無視したものであることを十分に知っていた。また統監府の過酷な経済政策によって生活の資を得られず日本内地へ流れ込んできていた朝鮮人労働者が、平穏な表情を保ちながらもその内部に激し憤りと憎しみを秘めていることにも気づいていた。そして、そのことに同情しながらも、それは被圧迫民族の宿命として見過ごそうとする傾向があった。
 つまり、日本人の内部には朝鮮人に対して一種の罪の意識がひそんでいたと言っていい。
(p.162)



大地震の起こった大正12年(1923年)9月1日の夜7時ごろ、
横浜市本牧町付近でおこった「朝鮮人放火す」の流言についても

その流言がだれの口からもれたのかは、むろんあきらかではない。ただ日本人の朝鮮人に対する後暗さが、そのような流言となってあらわれたことはまちがいなかった。
(p.164)



この流言はほんの1時間ほどで北方町、根岸町、中村町、南吉田長に広がり、
さらに横浜港外に碇泊する船舶等にまで達する。

翌9月2日の夜明けまでに「朝鮮人放火す」から
「朝鮮人強盗す」「朝鮮人強姦す」に変わり、殺人を犯したり、
井戸その他の飲水に劇薬を投じていると内容が変わって
正午には鶴見、川崎方面に達する。

さらに日没近くには、横浜市西戸部町藤棚付近から
「保土ヶ谷の朝鮮人土木関係労働者三百名が襲ってくる」
「戸塚の朝鮮人土木関係労働者二、三百名が現場のダイナマイトを携帯して来襲してくる」
といった具体性を帯びた流言も起きる。

作品中、何度も念を押すように書かれているのだけれども、
これらの風説は全く根拠のないもので、そのような事実は全くなかった。

流言は、通常些細な事実が不当にふくれ上がって口から口に伝わるものだが、関東大震災での朝鮮人来襲説は全くなんの事実もなかったという特異な性格を持つ。このことは、当時の官憲の調査によっても確認されているが、大災害によって人々の大半が精神異常をきたしていた結果としか考えられない。そして、その異常心理から、各町村で朝鮮人来襲に備える自警団という組織が自然発生的に生まれたのだ。
(p.178)



そして、これら自警団が武器を持ち、
時に警察ですら手をつけられないほど凶暴な暴徒と化していく。

この時、流言を信じた(または暴行・殺害の口実に利用した?)自警団員らによって
殺害された朝鮮人の数を、後に政府は231名と発表。

法学者吉野作造はそれに疑問を抱き、調査によって2613名としたが、
この論文は内務省によって発禁となる。

在日朝鮮同胞慰問会の調査では、難に遭った朝鮮人の実数は6000人以上。

また、政府発表によると、
朝鮮人に間違えられて殺害された日本人が57名、負傷した日本人49名。
中国人も4名が殺害された。
(p.199-299)

様々な虐殺事件の実態が記されており、
いずれも心がふさがる陰惨な事件ばかりだけれど、
恐怖や不安心理といった負のエネルギーが蓄積され圧縮されると、
それをぶつけるためのターゲットを探して相互に煽りあっていき、
ある所からは前のめりのエネルギーが後戻り不能となる群集心理の恐ろしさ、という意味で、
以下の埼玉の事件が強烈な残像を残した。

秋田出身の労働者が
茨城から東京に向かう途中で疲れて一夜の宿を乞うたところ、
訛りのために朝鮮人だと決めつけられ村の自警団から暴行を受けた。

なんとか派出所に連れて行ってもらった男性は
必死の説明で秋田県人であるとわかってもらう。
巡査部長は騒ぎを収めるために机の上に立ち、
派出所を取り囲んだ数百名の群衆に向かって、
男性が秋田県人であることを宣言。

それを聞いて男性は安堵し、思わず「バンザイ」と口走った。

それが殺気立っていた群衆を刺激、
「バンザイとは何事だ。生意気だ。殺してしまえ」と
引きずり出されて殺されてしまった。

(p.226-228の事件の内容を要約)




この本を読みながら、
特に最初に引用した吉村氏の分析には岸田秀の日本人神経症説が頭に浮かんで、

過剰な自己防衛、自己防衛としての事実の否定、
その否定を維持するための事実の歪曲とご都合主義の解釈、
責任転嫁と問題のすり替え、おためごかし、
それらを口実にした操作、巧妙なコントロール、
弱さを隠すための高圧的な態度、逆上……

このブログをやりながら最近感じている
「科学とテクノの簡単解決文化」とその背景に潜む利権構造が
急速に「世界を虐待的な親のような場所に変えていく……」という感触に
どこかで重ね合わせつつ、日本人に限らない今の世の中のあり方として、

政治と経済の不安定、右傾化に画一化、集団的思考停止、強権的・排外的傾向……
関東大震災の起きた時代って、なんか今と似通っている……? と
漠然と考えながら読んだ。

すると、
今朝の新聞に出ていた月刊文春の広告で、
看板記事のタイトルが「関東大震災と東日本大震災 歴史の暗合」

サブタイトルに
「一年で交代する総理、大不況、挙国一致内閣への期待、テロの時代……似すぎる世相」。

ほえぇ……。で、だから、どうだって書いてあるんだろう?
ちょっと興味ある……かな。


ついでに、その朝刊の国際面に
ビン・ラディン殺害に関して「拘束すべきだった」との批判に応える
オバマ大統領の言葉があった。

(批判を)気にしたことはまったくない。正義は行われた。

大量殺人の加害者が今回の仕打ちに値しないと言うなら、
頭の検査を受けた方がいい。




原理原則も手続きも「みんなの勢い」でなし崩し……ということが
最近、世の中にどんどん増えてきているような気がするのだけど、

「みんなの勢い」で原理原則も手続きもすっ飛ばした「正義」って、
そんなもの、あるんだろうか……?



ちなみに、同じく今朝の朝日新聞によると、
吉村氏の「三陸海岸大津波」と「関東大震災」が読まれていて、
新たに増刷になった分の印税を、妻の津村節子さんが被災地に寄付しているとのこと。
2011.05.10 / Top↑
英国の脳性まひ者のアドボケイト団体Scopeの依頼による調査で
障害者の7割が自殺幇助合法化に反対、とのこと。

18歳から24歳の障害者の77%、
25歳から34歳の障害者の71%が

「自殺幇助に関する法改正が行われると」
「障害者にはまだ死なずにいられる時から死ぬようプレッシャーがかかる」と懸念。


この記事によると、1月にBMJにまたも
自殺幇助合法化議論で障害者を非難する記事が掲載されたらしい。

検索してみたら、その論文はどうやらこちら
(全文が読めます)

この人、もしかして、あの人……? と思ったら、やっぱり
09年に「生きたい障害者が死にたい病人のジャマするな」と書いた、あのBMJ副編だったよ。

09年のあの「考察」のあまりの品性の無さを考えると
今回のはどうにも読む気にならなくて私は読んでいませんが

今回の論文にはさっそく、ある医師からこちらの反論コメントが入っていて、
「この論文こそ、最近の自殺幇助議論でのBMJの偏向を証明するものだ」と。

その通りだっ! 

British Survey: Disabled Opposes Legalizing Assisted Suicide
LifeNews.com, May 9, 2011


なお、英国の障害当事者で障害学の著名な学者でもあるTom Shakespeareは
文末に関連エントリーをリンクしたように、自殺幇助合法化支持の立場を明らかにしており、

09年に議会が法案を否決した際にも
Baroness ChambellとNDYのStephen Drakeと論争を行っています。

私は彼の論理については、
フェミニズムと同じ轍を踏んでいるんじゃないか(詳細は以下の最後のリンクに)というのと
自分のような身体障害のみの「障害者」にしか想像が及んでいないのでは、という2つを思う。

最近、日本の臓器提供関連で
「知的障害者を対象から外すのは逆差別だ」という議論が出てきているらしいのだけど、
そういうことにも通じていく危うさが、そこには潜んでいるような気がする。


Tom Shakespeareが「自殺幇助合法化せよ」(2009/3/15)
Campbell/Shakespeare・Drake:障害当事者による自殺幇助論争 1(2009/7/9)
Campbell/Shakespeare・Drake:障害当事者による自殺幇助論争 2(2009/7/9)
ダウン症スクリーニングでShakespeare「技術開発と同じ資金を情報提供に」(2009/11/10)
「ケアの絆」とShakespeareの「障害者にも“死の自己決定権”を(2010/1/19)
2011.05.10 / Top↑
2010年11月2日の補遺
2010年11月16日の補遺
2011年3月5日の補遺
などで追いかけてきたように、

米国Vermont州では先の中間選挙で
自殺幇助合法化を公約していたPeter Shumlin知事が誕生し、
3月にはいよいよ法案も出てきて、懸念されていましたが、

以下のWesley Smithのブログによると、
「法案通過はならず」とのこと。

詳細は不明ですが、
まずは、よかった、よかった、ということで速報エントリーを。

それだけでなく、Vermont州は
公費による皆保険制度の創設を決めたとのこと。

財源に不安が残るらしいけど
とりあえずグッド・ニュース。

Vermont Doesn’t Pass Assisted Suicide, Creates Publicly Funded Universal Health Care System
Secondhand Smoke, May 9, 2011
2011.05.10 / Top↑
Not Dead YetのKevin FitzpatrickがBMJに自殺幇助合法化に反対する論考を書いている。Baroness Campbellが入院した際に医師にそれほど重い障害があったらいざという時にも蘇生も呼吸器も望まないだろうと勝手に思い込まれたために、コワくて2昼夜も寝られなかった体験を引いて、ただでさえ医療に対する高齢者と障害者の信頼度はそれほど高くないのに、医師による自殺幇助が合法化されたりすれば信頼などできなくなる、と。また下院でMcColl議員が証言したオランダの実情を引いて、あまりにも医師がお気楽に安楽死をするので、オランダの高齢者はいざという時に病院やナーシング・ホームに入ることになっても「安楽死は希望しません」というカードを携帯している、とも。:そういえば、米国の黒人は脳卒中を起こした時に911に電話して救急車を呼ぶのではなく友人・知人に電話して助けを求める、という調査結果が先週どこかで出ていた。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/8466996/Fearful-elderly-people-carry-anti-euthanasia-cards.html

上記、FitzpatricのMBJ論文はこちら ↓
http://www.bmj.com/content/342/bmj.d1883

Telegraphに、自殺幇助合法化支持の立場で本を書いた Max Pemberton氏の寄稿。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthadvice/8497894/Finger-on-the-pulse-Max-Pemberton.html

同じくTelegraphの社会保障担当記者が、合法化すれば障害者に早く死ねということになる、と。:いずれにしても英国の合法化議論、少しずつ山場に近づいてゆく気配。
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/8501306/Allowing-assisted-suicide-would-pressurise-disabled-to-kill-themselves.html

英国の社会保障費カットで、職業安定所に「障害者手当などを求める人が『自殺してやる』と脅しをかけてきた場合の対応方法」6点からなるガイドラインが配布された。本気でやる人とそうでない人の区別は難しいので、どの人にも真面目に対応するように。:でも具体的な支援の方法を奪われているのだから、このガイドラインは現場職員に責任を背負わせるだけなのでは?
http://www.guardian.co.uk/society/2011/may/08/jobcentre-staff-guidelines-suicide-threats?CMP=EMCGT_090511&
2011.05.09 / Top↑
外国人の自殺幇助をもっぱら受け入れているDignitasと違い
スイス国内に在住の人だけを対象にしているExitが7日、
「高齢者が自殺幇助によりアクセスしやすいように」規定を緩和。

その目的は「健全な精神状態で死にたいと望む高齢者に、無用な障害を取り除く」こと。

ちょうどチューリッヒ郡では1週間後に
自殺幇助を禁じる提案で住民投票が予定されているところだ。

Exitには現在70000人の会員がおり、
去年だけで4000人も増加したが、
それは自殺幇助への規制強化が議論されている影響だろうとExit。

去年257人の自殺を幇助し、平均年齢は76歳で
2009年の74歳から2歳上がった。

Aged “should have easier assisted suicide access”
Swissinfo.ch, May 8, 2011


【スイスでの規制関連エントリー】
スイス議会が自殺幇助規制に向けて審議(2009/6/18)
Dignitas あちこち断られた末にお引越し(2009/6/28)
スイスで精神障害者の自殺幇助に「計画的殺人」との判断(2009/6/30)
スイス自殺幇助グループExit、当局と合意(2009/7/12)
APが「スイスは合法的自殺幇助を提供している」(2009/7/18)
チューリッヒ市が自殺幇助に“規制強化”とはいうものの……(2009/7/21)
スイス当局が自殺幇助規制でパブコメ募集(2009/10/29)
スイス連邦裁判所が「チューリッヒ市とExitの合意は無効」(2010/6/18)
スイス政府、“自殺ツーリズム”全面禁止せず、規制強化で対応の方針(2010/9/18)

【最近の気がかりな議論】
スイスで精神障害者への自殺幇助容認議論(2011/3/1)
スイスの地方自治体が高齢者施設での自殺幇助合法化巡り住民投票(2011/4/15)
2011.05.09 / Top↑
Lancet最新号のラインナップをなんとなしに眺めていたら、
HIV、HPVワクチン、stillbirth(死産)、グローバルヘルス……て、
なに、これ、ほとんどBill Gatesの関心事ばっかりじゃん????

Lancet, Vol 377 NO.9777 May 07, 2011

① HIVについては論文が2本。。詳細は省略。

② 死産撲滅キャンペーン

ゲイツ財団がシアトルこども病院などと一緒にGAPPSという組織を作り
グローバル・ヘルスにおける死産・早産撲滅に大々的に乗り出したのは
以下のエントリーで紹介したように2007年、“A療法”論争が起こった年のこと。

早産・死産撲滅に、シアトルこども病院がゲイツ財団、ユニセフ、WHOと乗り出す(2009/5/14)

それを知って、ふと気づいてみれば、
米国小児科雑誌の2009年6月号は、すでに、まるで世界中で
未熟児を産ませず、生まれても救命しないための科学的エビデンス作りが進んでいるかのようなコンテンツ。
もちろん、それは、その雑誌のその号に限ったことじゃない。

GAPPSの動きについては
もともと遺伝子診断による障害予防に熱心なメンバーの集まりだから、
死産・早産撲滅キャンペーンが「命を救おう」と言いながら
実は優生思想を復活させていきつつあるのでは、と私は個人的に疑っているし、

実際、以下のような動きも拾っている ↓
「途上国の女性に安価な薬で簡単中絶“革命”を」の陰には、やっぱりゲイツ財団(2010/8/3)

そんな中、今回のLancetの動きというのは、4月14日に立ち上げられた「死産シリーズ」。
Lancetの死産シリーズのサマリーはこちら。

いつのまにか「撲滅2点セット」から早産が消えて死産だけになっているのも、
ちょっと、あざとい感じがなきにしもあらずだし、
Stillbirths: missing from the family and from family healthというコメンタリーの
アブストラクト部分を読むと、死産が女性を差別の的にすることを重要視しており、
こういう話の進め方は、彼らが狙っている早産撲滅という名の障害予防にそのまま
地滑りさせることができそうだなぁ……とも。

シリーズの目玉らしい「死産:2020年への展望」という文書の著者を見てみると、
やっぱりゲイツ財団と上記の GAPPS が入っている。さらに、非常に興味深いことに、
ここにもオーストラリアのクイーンズランド大学が絡んできている。

なぁ~るほど~。

③ HPV(ヒト・パピローマ子宮頸がんウイルス)ワクチンについては論説3本の内の1本。

Financing HPV vaccination in developing countries
The Lancet

その概要は、ざっと

HPVワクチンが市場に出回って5年。2010年段階で33カ国が全国レベルの接種プログラムを持っている。

途上国、特にアフリカ諸国はこのような普及に至っていない中、ルワンダがアフリカで最初の子宮がん予防プログラムに乗り出したのはグッド・ニュースだ。12歳から15歳の女児へのHPVワクチン接種と35歳から45歳の女性のHPV感染検査の2本立て。それぞれMerck社とQiagen社が3年間で200万人分のGardasilと25万回分の検査を提供したことで可能となった。その後もMerck社はルワンダに格安価格でHPVワクチンを提供すると約束しているが、それをルワンダ政府が支払うには外部からの資金援助が必要となるだろう。

ルワンダのワクチン接種率が上がれば、それはサブ・サハラ地域各国へのモデルとなりうるが、いずれにせよ問題はそのための資金確保である。製薬会社との値引き交渉もありうる。GAVIを始めとする多くの国際組織が女性の貴重な命を救うために尽力している。HPVワクチンの登場は子宮頸がん予防の新たな時代の幕開けだったが、資金的なメカニズムがなくては資源の乏しい国々がせっかくのHPVワクチンの恩恵も実現することができない。(ゴチックはspitzibara)



読んで、まず頭に浮かんだ感想は

・緊急度が高いとも思えないし対象者の人口に占める割合が高いわけでもないワクチンが
市場に出てたった5年で世界中にこれだけ広まる、その速度と強引さは、やっぱり異様なのでは?

・ルワンダって、民族紛争から悲惨な大虐殺のあと大統領選挙がつい最近まですったもんだしていた国。
そういう政情不安状態の国への支援として、HPVワクチンの普及が何故それほど急務なのか?

・それから、上記Lancetの論説の主張を、当ブログの4月16日のエントリーの
「慈善てな、いろんな衣をまとってやってくるんだよ」という記事の指摘と合わせ読むと興味深い ↓

ゲイツ財団が作らせ支援しているthe Advance Market Commitment(AMC)なる組織が買い上げ、慈善と称して様々な国に届けているワクチンはグラクソとかファイザーなどビッグ・ファーマの製品で、しかも欧米市場で売れまくって既にコストが回収できたワクチンなのだという。慈善の名目で、インドなどの政府は自己負担分を体よく吐きださせられているだけ



そういえばMerckのHPVワクチン、Gardasilは
先進国ではライバルGlaxoSmithKlineのCervarixに負けたんだった。

先進国では思うように売れない商品を3年分無償提供して、
その後は割引するとはいえ、途上国に押しつけて買わせるわけですね。
もちろん、その国に十分な支払い能力がないのは分かっているから
「ワクチンで途上国の子どもたちの命を救おう」を掛け声に世界中から資金を集めて
そのカネで買わせる。そしてMerckはGlaxoに負けた分を回収できる。
株価も上がる。Bill Gatesを含め株主さんたちも儲かる。

でもって、そういうふうに考えた時に、背筋がぞお~っとするほどコワいのは、こちらの1本↓

④「臨床実験:そろそろ分別あるグローバルなガイドラインを」

Clinical research: time for sensible global guidelines

アブストラクトでは
「融通のきかない官僚主義が臨床実験のスピードを遅らせ、コストを上げる一方なので、
その悪影響が貧乏な途上国に波及しつつある。そこで……」

ここでも途上国に新薬開発の恩恵が届くためには、との「おためごかし」路線で
臨床実験の条件緩和が説かれているのだろうことは容易に想像される。

しかし、先進国のビッグ・ファーマが、外からは何が起こっているか分かりにくい途上国で
医療アクセスの乏しさと教育レベルの低さに付け込み非人道的な臨床実験を行っていることも事実。

詳細はこちらのエントリーで紹介したThe Body Huntersという本に書かれている。
現在どこかが版権を抑えて翻訳作業進行中とのことだから近く日本語でも読めるようになるはず。

「ナイロビの蜂」という映画もあったし、
当ブログが独自に拾った、こんなニュースもある ↓

ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)

ゲイツ財団の資金で開発期待されるマラリア・ワクチンの治験も
現在、鋭意アフリカ各地で行われているわけですね。HIVワクチンの治験もね。

今だって、アフリカの子どもたちが治験で副作用被害を受けても、
先進国の親たちのように訴訟が起こせるわけではないだろうに……。
2011.05.09 / Top↑
吉村昭「関東大震災」を読んでいる。:これほど甚大な被害だったとは知らなかった。いつもながら吉村昭の緻密な実証作業には脱帽。感情を排しているだけに惨状が生々しく伝わる筆力に感嘆しつつ、まるで直接目撃してしまったかのようで、ちょっと3・11直後の異様な精神状態にも。これだけの震災を体験した国が、なぜ無防備な原発推進にまい進したのだろう、という疑問と、首都圏のこれほどの被害からも復興は可能だったのだということに見いだす希望と。後者で、今この小説が読まれているのかもしれない、という気がしつつ、これから後半。関東大震災の際の朝鮮人虐殺についてはそういう事実があったことを「知っている」という程度なので、これを機にちゃんとその事実の内容を学んでおきたい。

2日の補遺で拾った、Floundersさん夫妻のDignitasでの自殺前のメッセージビデオをExit International が実際にYouTubeに流したとのこと。ときどき覗かせてもらっているBioEdgeブログが「こんなの倫理的に許されるのか?」ととりあげている。:検索すれば見つかると思うけど、敢えて見たくないので探さないことにした。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9520/

5月5日の補遺で拾った、アイルランドの女性のDignitas行き中止の件で、案の定、Exit International Irelandが動いている。:それにしても、自殺幇助合法化を「プロ・チョイス」とは?
http://www.examiner.ie/breakingnews/ireland/pro-choice-group-shocked-as-irish-women-forced-to-cancel-assisted-suicide-trip-503792.html

「執行後に全身の臓器すべて提供させて」と、OR州の死刑囚(2011/3/6)でとりあげた訴えについて、4月21日にArt CaplanがMSNBCに「そんなことをさせてはいけない」とコメンタリーを寄せていた。
http://www.msnbc.msn.com/id/42669327/ns/health-health_care/

米国で現在15年服役しており、今後も服役が続くレイプ犯 Kenneth Pikeが心臓移植待機患者リストのトップであることが判明し、批判が殺到、本人が移植希望を取り下げたという。功利主義的な配給医療で行けば、これ以外にもややこしいことが沢山起きてくると思う。すべての人を「社会にどの程度有用な人物か」という尺度で序列化し、移植待機リストの順番を含めてあらゆる医療を受ける資格の有無が判定されることになるだろうから。でも「社会にどの程度有用か」って、どうやって計るんだ? そんなことをマジに言うような人こそ有害であっても有用ではないという見方もあると思うけど。
http://bioethicsbulletin.org/archive/crime-and-transplants/#utm_source=rss&utm_medium=rss&utm_campaign=crime-and-transplants

卵子ドナーになって健康を害した女性の体験談。
http://www.ruthblog.org/2011/04/20/egg-donor-interview-linda-in-los-angeles/?tr=y&auid=8218223

Bill GatesとWarren BuffetがGiving Pledgeなるキャンペーンでちょっと前から世界中の大富豪に資産の半分を慈善に差し出せ、と呼びかけているのは知っていたけど、その呼びかけに応えようかという人たち69人ほどがアリゾナ州に結集したとのこと。非公開で。:「世界のスーパーリッチ・クラブ」の初会合ね。とはいっても、Gatesは去年の6月にもBuffetや何故かOpra Winfreyなど6人と完全非公開で集まって、世界人口抑制などを話しあっている。あれはこれの予行演習だったのか? いよいよ慈善帝国主義が本腰を入れて世界を席巻していく準備を始めている……。
http://lezgetreal.com/2011/05/buffett%E2%80%99s-billionaire-philanthropy-club-meets/
http://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5gVXN_8nZYKE0TwRPMa9w6pNHrM9A?docId=45130f0fc84547c890fcd16ffb557b5f

ProPublica「ゼニの繋がりが医療界を製薬会社・医療機器会社と結んでいる」。:まだ読めていないけど、これは必読。
http://www.propublica.org/article/medical-societies-and-financial-ties-to-drug-and-device-makers-industry

母の日に、NC州の州知事が女性は長生きで、要介護状態になったり独居高齢者になる確率が高いので、それぞれ自分で号炉のことを考えておくように、と。:たしか米国の非公式の介護者は7割が女性だったと思うし、女性は離婚した元夫の介護まで引き受けているという記事もあったけど、それはみんな社会保障制度の不備を女性の労力が補っているということでもあるはずなのだけど、その挙句に女性自身が老いて要介護状態になった時には、こういう言われようをするわけか。
http://www.theapexherald.com/view/full_story/13131535/article--Governor-Perdue-urges-women-to-plan-for-their-future-?instance=home_news_lead

母の日の今日から米国ナーシング・ホーム週間。
http://www.acorn-online.com/joomla15/thebridgeportnews/community/93187-northbridge-celebrates-national-nursing-home-week-.html
http://www.emmetsburgnews.com/page/content.detail/id/508820/Celebrate-National-Nursing-Home-Week.html?nav=5001

認知症患者の経管栄養導入には十分な情報提供もインフォームドコンセントも行われていない?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/224456.php

アルツハイマー病の血液検査が近々売りだされる。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/224538.php

脳内セロトニンの動きを規制する遺伝子が見つかり、「幸福遺伝子」と名付けられたんだと。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/224536.php

双極性障害の治療薬 Abilifyの長期服用の安全性に疑問。もともと統合失調症の治療薬だったものを2005年にFDAが双極性障害の治療にも認可。
http://www.thirdage.com/news/bipolar-treatment-abilify-questioned-for-long-term-use_05-05-2011

オーストラリアで飲酒運転ならぬドラッグ運転のネズミ捕り。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/roadside-drug-tests-start-soon/2156124.aspx?src=enews

NYTなのでタイトルとリードのみで、Op-Ed「悪い奴を殺したからといって我々が悪い奴になるわけではない」:そっかなぁ??? 西側先進国がこぞって憎んでいるからといって、どうして裁判もなしに殺すことが正当化されるのか、その法的根拠というのが良く分からないんですけど。
Killing Evil Doesn’t Make Us Evil:It wasn’t bad for college kids to feel good about their country.

同じくNYT のOp-Edで「医師よ、自らを癒せ ― 医師が看護師その他の病院職員イジメをやめなければならないわけ」。
Physician, Heel Thyself: Why doctors need to stop bullying nurses and other hospital personnel.
2011.05.08 / Top↑
この回、前のエントリーの続きです。


2冊の中で
動的平衡に対する人為的かつ操作的な干渉として言及されているのは、

たとえば、
ES細胞(新書②第4章)
臓器移植と遺伝子組み換え(新書①第3章)
SSRI(上記第3章内、p.108-111)
子どもに増えてきたアレルギー(新書① p.121-122)
コンビニのサンドイッチの添加剤、ソルビン酸(新書②第3章)など。

私には特に、臓器移植について
動的平衡には取り込んだ情報の解体と再構築の繰り返しが不可欠だとの指摘と
その指摘を中心に展開される「臓器移植という蛮行」批判と、

「動的な平衡系に対して、単純な因果関係のモデルや安易な予測に基づいて
操作や干渉を行うと、意図したものと反対の結果をもたらすことがある」例として
SSRIの副作用のメカニズムが推理されている点が
非常に興味深かった。

これら科学とテクノロジー応用の問題点はそれぞれに具体的に詳述されていて
もともとそうした操作的な介入に懐疑的な立場で読むからか非常に説得力がある。

いずれの問題にも共通した要点は、どうやら以下のようなあたりか。

環境に対する人為的な組み換え操作は、一見、その部分だけをとるとロジックが完結し、人間にとって便利になったように見える。たとえば牛に高たんぱく食を与えれば効率的に肥育できる、あるいは、大豆に農薬体制のある遺伝子を導入すれば、強力な除草剤を散布しても大豆だけは生き残るようになる。しかし、動的な平衡系には部分のロジックは通用しない。すべてのことは繋がっているのである。

 操作の本質、それは多くの場合、効率を求めた加速である。早い肥育、大きな収穫。加速には必ず余分なエネルギーの投入があり、そこには平衡の不均衡が生じる。不均衡の帰趨はすぐには現れることがないし、現れるとしてもその部分に出現するとは限らない。乱された平衡は、回復を求めて、新たなバランスを求めて、ゆっくりとリベンジを開始する。どこかに溜められた不均衡は地下にもぐって目に見えない通路を分岐しながら思わぬところに噴出してくるのだ。

……(中略)……

 だから動的平衡系では、情報も分子もすべてが繋がっており、互いに関係を持って流れている。地球環境はおよそ四五億年前に出発して以来、様々な変化を受け入れつつ、途方もなく長い時間をかけて微調整を繰り返しながら、その平衡を維持してきたことになる。……(中略)……

 ここで、長い時間をかけて平衡に達する、ということは極めて重要なポイントである。複雑なサブシステムを内包する動的な平衡系が、揺らぎながらあるバランスに到達するためには長い時間の試練を経る必要があるのだ。
(新書① p.235-237)



クローン牛の安全性論議の際に、科学者の方々から
クローン技術など細胞レベルでの操作は時間の流れを無視しているという批判があったのは、
つまりはこういうことだったのですね。(詳細は文末リンクのクローン牛関連エントリーを)

それゆえ、クローン牛の安全性を言う際にさんざんあげつらわれた、あの「実質的同等性」を
著者は、遺伝子組み換え作物の安全性の根拠として使われる例をとって、否定する。

ES細胞についても明確に以下のように書く。

……今なお、私たちはガン細胞を十分コントロールすることができない。それと全く同程度にしか、私たちはES細胞をコントロールしえないであろう。
(新書② p.104)



機械論的な部分のロジックは通用しない、とか
細胞レベルでの操作は時間の流れを無視している、などの批判は、
クローン肉批判や、ES細胞研究にも通じていくし、
たぶん、さらに、ここには書かれていない生殖補助医療にも
また“Ashley療法”のあまりにも単純な正当化論、
そこに通底している安易なエンハンスメントの論理にも
通じていく、これは、すなわち、

当ブログが“科学とテクノの簡単解決バンザイ”と称してきた文化への
批判そのものではないか、と大いに共感しつつ読んだ。

例えば
Ashley事件で出た「自然に反する」という批判を
Diekemaらは「抗生剤だって自然に反する。それを言えば医療そのものが成り立たない」と
切って捨てたけれども、こうした大きな生命観に立てば、
「重症児にはどうせ無用な臓器だから取ってしまってもよい」という姿勢は
やはり「自然に反する」と言えるのではないだろうか。

それから例えば、ワクチンさえ次々にどんどん開発していけば
病気はいくらでも予防も撲滅もできるという考え方も、
やはり「間違いだ」とまで言えないにしても「限界がある」とは言えるのではなかろうか。

新書①から新書②で深められている考察から生じてくる
際立って鮮やかな指摘として「おおっ!」と思わず膝を打ったのは、

「死んだと定義した身体から、まだ生きている細胞の塊をとりだしたい」ために
「脳死」という人為的かつ操作的な概念の導入によって
「人が決める人の死は、生物学的な死から離れてどんどん前倒しされている」 P.144)一方で、
再生医療などの名目で利用するために受精卵および胚を
単なる細胞の塊に過ぎないとみなす「私たちが信奉する最先端科学技術は」
私たちの寿命を延ばしてくれているのでは決してない。
私たちの生命の時間をその両側から切断して、縮めているのである」
(①  P.144-145)

私は、最先端科学が可能にした生命の操作が及ぼすすべり坂の社会心理的影響として
生命がそのスタートと終点とで縮められていくことは考えていたけれど、
最先端科学技術そのものが生命の時間を両端から縮めているというのは目からウロコだった。

で、②の結論として著者が提言するのは、
すべてのものは繋がり流れているという認識に立ち、以下の努力をすること。

1.環境を人間と対峙する操作対象と捉えることをやめる。
2.出来る限り生命の動的な平衡を乱さない。

特に興味深かったのは、鴨長明を引用して、
著者がシェーンハイマーの動的平衡という生命の捉え方を
日本の死生観やチベット医療の生命観になぞらえていること。

分子科学者が、その専門性を追求していき、ふと突き抜けたところで
一見、科学の対極にあると思える哲学や宗教の近辺に行きついているということ。

これは科学者だけに限らないと思うのだけど、
非常に優れた専門性を持った人は、むしろ「らしさ」から離れていく傾向って、
あるんじゃないのかなぁ……ということを、ずっと前から考えている。

逆に、実際にはまだまだ半人前であったり未熟であったりする人たちが
必要以上に「らしく」ふるまい「らしい」物言いをしたがる……そんな
ある種の逆説って、あるんじゃないのかなぁ……みたいなこと。

例えば、なりたての新米教師はいかにも「学校の先生」然とふるまいたがるし、
彼らはいかにも「叱っています」然と叱ることしかできないのだけれど、
本当に実力のあるベテラン教師は一見ぜんぜん「叱っている」と見えないのに
ちゃんと叱ることが出来ていたりするんじゃないのか、ということとか

生半可な学者さんは難しい単語や横文字をこれ見よがしに並べて
大した内容でもないことを黒々と固くこわばった難解な文章にしてしまうけど、
本当は難しいことを柔らかい普通の日本語で表現する方が難度がはるかに高くて
よほど中身を自分のものにしていなければ、そんな芸当はできないのだ、というようなこととか、

実際には科学者ではないトランスヒューマニストが
自分が誰よりも科学的な発想をし、科学的なものの言い方をしていると
信じて疑っていないらしいこと、とか。

キメラ胚作製に山中教授の方が立花隆より慎重だったり、
なだいなだ先生の説く「こころ医者」論とか、
「医師の姿勢で薬の効き方違う」と非科学的なことを言う緩和ケアの徳永医師とか、

専門性というものは、案外に極めていけばいくほど
一般に思われている意味での専門性から遠いところへとその人を運んでいくものなのかも、

または、専門性というものをいよいよ極めた先に、
本当にすごい人は、どこかでふっと「突き抜ける」のかも、
そうしたら、その人の専門性はその人ならではの融通無碍なものとなり、
その時、その人の専門性は専門性一般ではもはやなくて、
その人ならではの独自の専門性に至っているのかも、

そして、それは「成熟」ということに、ある種、通じていくのかも……
……などということを、この2冊を読んでいる間ずっとグルグルと考えていた。

例えば福岡氏は「ヒューマン・ボディ・ショップ」を翻訳したことに関連して
こんなことを書いている。


不思議なことに私が親和性を感じるものは、すべて自分自身の方法への懐疑と再考を喚起するようなものばかりだった。
(p.56)



このことと「成熟」ということとが
なにかとても関連している気がしてモヤモヤしているのだけど、

例えば、
自分や自分のやっていることに懐疑や再考を向けることができる能力と、
また人としてのホーリスティックな「成熟」との関係。

あるいは専門性の「成熟」度と「頭がいいだけのバカ」と
「科学とテクノで簡単解決バンザイ」文化の関係性
……みたいなこと……?

モヤモヤをうまく言葉で捕まえることができたら、
いつか、また書いてみたい。


【関連エントリー】
「ない」研究は「ない」ことが見えないだけという科学のカラクリ?(2008/11/7)
まずは「クローン肉たべろ」という人に3世代食べ続けてもらおう(2009/1/6)
「飛騨牛の父」クローンで、ぐるぐる(2009/1/8)
大統領生命倫理評議会の「人間の尊厳と生命倫理」と「おくりびと」(2009/6/30)
「インドで考えたこと」で考えたこと(2009/11/21)
「現代思想2月号 特集 うつ病新論」を読む 3:社会と医療の変容と「バイオ化」(2011/2/23)

cf.
「洗車機とUFキャッチャーでおむつ交換ロボットできる」と言う工学者の無知(2010/4/5)
2011.05.08 / Top↑
4月18日の補遺で書いたように、
映画「わたしを離さないで」のプロモでNHKが作った番組「カズオ・イシグロをさがして」で
以下のように語った分子生物学者の福岡伸一氏の生命観が印象に残った。

人間の細胞は繰り返し滅亡と再生を繰り返して、
自分という存在は物質としては常に移り変わっていることを思うと、
個体 というよりも液体のような存在ではないか。

さらに長いスパンで個体の変遷を考えると、
むしろ気体、ガスでしかないのかもしれない。

では、そういう存在でし かない自分が、
それでも間違いなく自分だと言える根拠はどこにあるのか。
それを考えた時に、それが記憶なのではないかと思う。



福岡氏の著書は前に「生物と無生物の間」を読んだきりだったので、
新書①「もう牛を食べても安心か」と
新書②「世界は分けてもわからない」の
2冊を読んでみた。

後者によると
私と福岡氏との出会いは「生物と無生物」以前に既にあったみたいで、
それは今でも忘れ難い「ヒューマン・ボディ・ショップ」という翻訳書。
たぶん私は95年か96年に読んで、目から大きなウロコがはげた。

それは新書②の福岡氏自身の解説によると氏の初めての翻訳で
「臓器、組織、細胞、遺伝子など人体部品の」
商品化と生命操作の危うさを描いたもの」(p.56)。

私が2006年に英語ニュースを読んで介護雑誌にコラムを書き始めた時に
葬儀屋のボディ・パーツ横流しスキャンダルに目を引かれたのも
この本を読んでいたからだったと思う。それくらい
私にとって「ヒューマン・ボディ・ショップ」の衝撃は大きかった。

で、今回この2冊の新書を読んで、新たに学んだのは、
上記の福岡氏の生命観の背景にある生命の「動的平衡」という考え方。

「動的平衡」そのものは福岡氏のオリジナルな考えではなく
1941年に自殺したユダヤ人科学者ルドルフ・シェーンハイマーの説。

シェーンハイマーは放射性同位体による分子の追跡技術を編み出し、
それによって、生命体は安定した「内燃機関」ではなく
それ自体が自らの内部においても、また外部環境との関係においても
つねに変化する流れの中にあることを発見。
その流れによって生命体内外に動的平衡が保たれている、
その流れこそが生命である、というホーリスティックな生命観を打ち出した。

新書①に引用されたシェーンハイマーの解説によると

生物が生きているかぎり、栄養学的要求とは無関係に、生体高分子も低分子も代謝物質もともに変化して止まない。生命とは代謝機会の持続的変化であり、この変化こそが生命の真の姿である
(p.62)



これを同じく①で福岡氏が噛み砕いてくれる表現によると

肉体というものについて、感覚としては、外界と隔てられた個物としての実体があるように私たちは感じているが、分子のレベルでは、たまたまそこに密度が高まっている、分子のゆるい「淀み」でしかない。しかも、それは高速で入れ替わっている。この回転自体が「生きている」ということであり……
(p.60)

この地球上に存在するそれぞれの元素の総量はおおむね一定である。それがほかの元素とあるときは結び、別の時には離れながら、様々な分子を形作り、大きな循環の中にある。循環は、環境とその構成要因である生命体との間を往還し、全体として動的なバランスを保っている。
(P.233)




95年に「ヒューマン・ボディ・ショップ」を翻訳した福岡氏が
その後も数々の自身の著書で書き続けていることは、このような大きな生命観に基づいた、
二元論や還元論や機械論の否定であり、たぶん次のような警告なのだろうと思う。

……現在、私たちが悩まされているほとんどの問題はすべて、人為的な操作に対して環境がその平衡を回復するために揺り戻しをかけている、その揺らぎそのものであるといってよい。
(p.238)




新書①は狂牛病をその揺らぎの1例として
草食の乳牛に生産性向上のために共食いを強い
動物たんぱくを与えるという植物連鎖への人為的な操作に端を発する
狂牛病の発生と感染のメカニズムを詳細に推理しつつ、

関連企業からの圧力や輸出入を巡る国家間の力関係のはざまで
政治的な思惑に左右され操作される科学の危うさを徹底批判したもの。

新書②は、その後、文学的な文章の名手として腕を上げた氏が
それと同じことを、ミステリー仕立てで、より広く、
より美しく面白く描いてみせたもの、と言えるかもしれない。

ただ分けてみる以外に分かろうとするすべがないから分けてみているだけで、
分けたからといって世界は分かるような単純明快なものではないのだと繰り返し説く
科学者の謙虚さが好もしい。

それは簡単にわかったフリをして見せる科学者たちへの批判でもある。

次のエントリーに続く。
2011.05.08 / Top↑
様々な形態の発電に投資しているBill Gatesが、福島原発事故を受けて世界中で広がる原発懐疑の声を「過剰反応」。太陽光や風力など環境に優しいとされるグリーン発電のような「かわいらしい cute」方法では地球上のエネルギー不足は乗り切れない、と原発を支持。もちろんBuffettも同調。:ただとんでもない金持ちだというだけのことが何故、地球上のありとあらゆる問題に発言権と影響力を持てる資格と同意なんだろうといつも不思議なのだけれど、それは当たり前のことながら、彼らのゼニの行方が世界の経済のトレンドを左右していて、すなわち世界中の小金持ちたちが自分の投資行動を決めるために注目しているからに他ならない。つまり、それだけのことに過ぎない。ちがう?
http://www.theatlantic.com/technology/archive/2011/05/bill-gates-puts-his-money-and-mouth-behind-nuclear-power/238300/
http://venturebeat.com/2011/05/03/bill-gates-nuclear-power/
http://www.pcmag.com/article2/0,2817,2384820,00.asp

MS末期のアイルランド人女性のDignitasへの自殺ツーリズムに付き添う予定にしていた友人が、チケットをとりに行った先で自殺幇助はスイスでは合法でもアイルランドでは違法なので帰国後に起訴されることもありうると知り、2人は計画を取りやめ。:こういう報道が出てくるなら、次は英国のDebbie Purdy裁判のようなことがアイルランドでも起こるのでしょう。
http://www.breakingnews.ie/ireland/women-prevented-from-travelling-to-switzerland-for-assisted-suicide-503786.html

英国の自殺幇助合法化議論で、抵抗勢力として頑張っているBaroness FinlayとLord Carlileとが、去年立ち上げたLiving and Dying Wellの調査報告書で、「合法化されれば薬局やナースから致死薬を入手することが可能になってしまう。結局は行政機関が死なせてもよい人を選別していくことに繋がる」。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1383704/Suicide-drugs-sale-chemist-euthanasia-legalised-claim-experts.html?ito=feeds-newsxml

何度か補遺で追いかけた事件の続報。カナダと英国の若者2人をネットでそそのかして自殺させたとして米国の看護師William Melchert Dinkelに1年間の実刑判決。320日服役した後、毎年犠牲者の命日に2日ずつ10年間服役するというもの。
http://www.globalsaskatoon.com/Former+nurse+gets+year+jail+aiding+suicide+Brampton+woman/4726510/story.html

Journal of Bioethical Inquiry Vol.6, NO. 3に、Two Decades of Research on Euthanasia from the Netherlands. What Have We Learnt and What Questions Remain? オランダの安楽死2年間に渡る調査からの教訓と疑問。
http://www.springerlink.com/content/r8j54p674n4lw860/

同じく The Suicide Tourist Trap: Compromise Across Boundaries 。こちらはスイスの「自殺ツーリズム」の問題点を3点考察。
http://www.springerlink.com/content/t2206018626q8745/

同じく、Savulescuの新優生思想に対する批判。”Unfit for Life”: A Case Study of Protector-Protected Analogies in Recent Advocacy of Eugenics and Coercive Genetic Discrimination.
http://www.springerlink.com/content/l87j7k8j0vrg0140/

同じく、無益な治療の差し控えや中止において、年齢を考慮することに倫理的な妥当性があるか、と問う論文。:とても興味深いのはシアトルこども病院トルーマン・カッツ生命倫理センターを経由して提出されている論文だということ。そういえばDiekemaが率いて、この論文と同じ2009年に米国小児科学会倫理委員会が出した子どもの栄養と水分停止のガイドラインの中でも、子どもに成人と別の扱いをすることは年齢差別だという見解を示されていたな。
http://www.springerlink.com/content/v021181533188445/

同じく、無益な治療論関連で以下7本あるらしい。
Same Coin-Different Sides? Futility and Patient Refusal of Treatment
Eleanor Milligan

Futility Determination as a Process: Problems with Medical Sovereignty, Legal Issues and the Strengths and Weakness of the Procedural Approach
Cameron Stewart

No Chance, No Value, or No Way: Reassessing the Place of Futility in Health Care and Bioethics
Sarah Winch and Ian Kerridge

Defining Medical Futility and Improving Medical Care
Lawrence J. Schneiderman

The Futility of Futility: Death Causation is the ‘Elephant in the Room’ in Discussions about Limitation of Medical Treatment
Michael A. Ashby

Minimally Conscious States, Deep Brain Stimulation, and What is Worse than Futility
Grant Gillett

Medical Futility and the Death of a Child
Nancy S. Jecker


英国で13歳から16歳の女児のみを対象に、セックスの誘いにNOを言えるよう指導する性教育を義務付ける法案が保守党議員Nadine Dorris氏から提出された。:なぜ、それは女子側だけの責任なのか? 
http://www.guardian.co.uk/politics/2011/may/04/nadine-dorries-teenage-girls?CMP=EMCGT_050511&

過去1世紀に渡って広汎に児童書のジェンダー・バイアスを調査。主人公はたいてい男。動物が主人公でも、やっぱり男。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/224154.php
2011.05.08 / Top↑
重力が脳を酸欠状態にして多幸感の内に死ねる「安楽死コースター」を設計したアーティストがいる。Wesley Smithのブログに3分間のビデオ。「人口削減策として、また自分の人生が長すぎると感じる人にも」と語っている。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2011/04/30/newest-death-machine-euthanasia-roller-coaster/

カナダの自殺幇助合法化訴訟で、「セーフガードあれば濫用は防げる」とVancouver Sunに論考。
http://www.vancouversun.com/news/Safeguards+prevent+abuse+system+assisted+suicide/4715793/story.html

カリフォルニア州の91歳の女性が、頭にかぶるフードとヘリウム、Derek Hunphryの自殺指南書“Exhit”などをセットにした自殺キットを60ドルで売る通販の会社 the Gladd Group を作り、年間98000ドルを売り上げている。
http://news.gather.com/viewArticle.action?articleId=281474979273007

「警官による自殺幇助」、米国では少なくないそうな。:09年に初めて「警察による自殺幇助」という表現を見た時には比喩だとしか思えなかったものだけど、“まんま”現実だと知って、ほんとショックだった。その時のエントリーを以下ににリンク。
http://www.romeobserver.com/articles/2011/05/02/opinion/doc4dbf3c0f27a56400225317.txt

銃持ち「皆殺し」叫ぶ双極性障害者を射殺し「警察による自殺幇助」という新たな“すべり坂”(2009/8/21)


5月は米国高齢者月間。高齢期は特に女性に厳しい。
http://www.prnewswire.com/news-releases/may-is-older-americans-month-121076444.html

去年の10月6日の補遺で拾った、米国のES細胞研究への公的助成を巡る裁判の続報。上訴裁判所が、下級裁判所の判決までは現在の研究続行を認めたのだけれど、その下級裁判所はヒト胚を破壊する研究の違法性を問うて訴訟を起こした原告寄りらしく、NYTの論説が「世論は脊損やパーキンソンや糖尿病の治療に結び付く有望な研究を進めろと言っているのだから、考え直せ」と。
http://www.nytimes.com/2011/05/03/opinion/03tue2.html?nl=todaysheadlines&emc=tha211

カナダの総選挙でHarper首相の保守党が議会の単独過半数を確保。:世界中で保守勢力がイケイケに……。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/03/canadian-election-conservatives-win-majority-stephen-harper?CMP=EMCGT_030511&

米国のジャーナリストの数がここ数年で激減し、代わりに激増しているのは広告マン。:これ、例えば上の各国の保守化の動きなんかとも実は関係しているんじゃないのかなぁ……。あ、もちろん慈善帝国主義とも。あー、それから文科系の研究者の数もたぶん激減していて、そういうのにみんなみ~んな繋がっているような気がするし。
http://www.propublica.org/article/pr-industry-fills-vacuum-left-by-shrinking-newsrooms

シアトルこども病院自閉症センターが、自閉症の子どもの育児を応援するブログを立ち上げ。:シアトルこども病院って、ここ数年は障害児出生予防にひたすら熱心なんだけど……?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/223541.php

1歳の時の簡単チェック・リストで自閉症の早期発見を。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/223562.php

春生まれに拒食症が多い……んだそうな。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/223604.php

中年期に太っていると後で認知症になりやすい……って。
http://www.guardian.co.uk/science/2011/may/02/obese-more-likely-to-develop-alzheimers-disease?CMP=EMCGT_030511&

ニュージーランドでも竜巻で16人が死傷。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/may/03/deadly-tornado-hits-auckland?CMP=EMCGT_030511&
2011.05.04 / Top↑
2008年にオーストラリアで同様の事件がありましたが、↓
「ダウン症の息子が社会の重荷」とドイツ人医師に永住権を拒否

今度はカナダ政府が、子どもの障害を理由に2家族に永住権を拒否しています。


Immigrant family with disabled child to stay in Canada
Ottawa Citizen, April 20, 2011

David Barlagnesさん一家は2005年にフランスからカナダに移住。

今年7月、
8歳の娘の障害(脳性まひ)が社会保障への「過剰な負担」になるという理由で
「医学的に許容できない」としてカナダ移民局から永住権の申請を拒否され、
国外退去を言い渡されたが

その後、移民大臣Katheleen Wellの介入によって
連邦政府と地方自治体の移民担当部局の間で協議・合意が行われて
決定取り消しとなった。

永久権の拒否は
特別教育コストが年間5259ドルかかるため、
社会サービスへの「過剰な負担」となることが理由。

Barlagne氏はカナダに移住する際、パリのカナダ大使館からは
娘の障害を理由に永住できないということはないとの説明を受けたというが
大使館側は否定している。

またカナダ入国前後にRatchelさんの障害についての詳細情報の提出を求めたが
出さなかったと移民局は主張。この点も一家の主張と食い違っている。

一家は4月中旬に
人道的見地から居住を認めるように移民大臣に求めて記者会見を行い、
連邦政府、地方自治体の政治家らも支持。大臣が介入することに。

記者会見に同席したカナダ障害者会議(CCD)も
プレス・リリースを出している。

CCD Dismayed Family with a Disabled Child Ordered Deported


社会に貢献したカナダの脳性まひ者の名前を挙げて
脳性まひを理由に永住を拒否することの理不尽を問うと同時に、

カナダが2010年3月に国連障害者人権条約を批准したことに触れ、
今回の決定は明らかに条約の精神に違反している、と指摘。


Canada bars autistic teen from immigrating his father, stepmother also ruled inadmissible
The Ottawa Citizen, April 26, 2011

おそらくは上記の事件の報道を受けて、表面化したと思われる
こちらの事件はもっと不可思議。というか、露骨。

カナダのCornwall在住で、
ここ10年間Cornwallと英国を行ったり来たりして暮らしている英国人
Robert and Pauline Crowe夫妻は4年前に永住権を申請していたが、
2か月前に17歳の息子の自閉症を理由に拒否された。

といっても不可解なのは
息子のLewisはRobertさんの前の妻との間に生まれた子供で、
現在は姉とともに母親と英国に住んでおり、親権も前妻にある。
カナダに永住を希望しているのはCrowe夫妻のみだ。

Crowe夫妻が永住権の申請を行った際に、
22歳以下であることからLewisは自動的に夫妻の子どもとして
永住権申請の対象者とみなされたという。

そこでCrowe氏らには
万が一Lewesがカナダで暮らすことになった場合には
Cornwallでどういうサービスを利用することになるかの計画と、
それらのサービスを利用する費用の試算、
その額を自力で支払うことができるとの証明が求められた。

Crowe氏が試算したところ費用は年間2万ドルで、
支払いは可能だった。

それでも移民局からは
仮にLewisがカナダで暮らすことになっても彼の医療費については
カナダ政府に一切負担をかけないとの文書に署名を求められた。

去年Cornwallで仕事のオファーがあり、
永住権が取れると考えていたCrowe夫妻は家まで購入したのだが、
オファーは永住権が前提であったため、いつまでも取れずにいるうちに
取り下げられてしまった。

そして2か月前に、
Lewisの永住権は「医学的に許可できない」、
夫妻の永住権も認められないとの通知が届いた。

また、今後、
Lewisの姉と母親は自由にカナダのCrowe夫妻を訪問することができるが、
Lewisの入国には許可が必要となる。

Crowe氏はカナダ政府の決定が
「障害のみを理由に自閉症者の人権と自由を侵害している」と憤慨。

10年前にカナダ在住の姉を訪ねて初めて訪れて以来
カナダに魅せられ自分の国と考えてきたのに失望したといい、
家を売って英国に変えることを考えている。

こちらの件についても、CCDが
国連障害者人権条約違反だとコメントしている。
2011.05.03 / Top↑
Don Floundersさん(81)と妻のIrisさん(88)はオーストラリア、Victoriaの自宅で
先週の木曜日に自殺。翌日、遺体が発見された。

Donさんは不治の肺がんで、以前から
夫を失っては生きていけないと考えるIrisさんと一緒に死にたいと語っており、
08年に自殺用の薬を買うためにメキシコまで行って来た。

2人は共にロンドンで生まれ育った英国人。

夫婦の自殺には
Dr. Nitschkeが創設した自殺幇助団体 Exit Internationalが支援に入っており、

夫婦が幇助自殺によって死んだことを明らかにしたスポークスマンは
2人は死後にYouTubeで流してほしいと死ぬ前に録音したメッセージがあり、
火曜日に公開する、と。

この記事によると、
ガンの宣告を受けた時に自分の決めた時に決めた死に方をしたいと考えた、
しかしはるばる遠くまで行かなければ薬が手に入らないことが腹立たしかった、
近所の薬局で手に入れることが出来て、将来に備えて安全に保管しておきたかった、などと
Donさんが語り、

また妻のIrisさんは
3年前にメキシコへ薬を買いに行った時には
夫なしでは生きていけないという気持ちだったが、
3年経ってもその気持ちは変わっていない、と語っているとのこと。

Elderly couple record message to be played on YouTube after assisted suicide pact
The Telegraph, May 1, 2011


2人が自殺していたのはオーストラリアの自宅となっているのですが、
もともとは英国に住んでいた夫婦が Exit International の支援を得る目的で
オーストラリアに移住したものなのかどうか、
その点は記事では明らかにされていません。
2011.05.03 / Top↑
この10年ばかり米国の教育改革に資金を提供してきたBill Gates氏が
これまでの改革が効果を上げていないことから学校小規模化から方針を転換し、今度は
生徒の成績をPC管理して、その変動で教師を評価するシステムを提言していることを
前のエントリーで紹介しましたが、

Gates氏が教育改革に新たに資金提供している部門がもう一つあることは
4月28日の補遺でも拾った通り、
ビデオ・ゲームを活用した教材開発に2000万ドルを提供すると約束。

それについての詳しいニュースが2本ありました。

Opening Education’s Gates – The Gates Foundation Invests In Innovative Education
InventorSpot.com

2000万ドル投資の目的は、
ビデオ・ゲームとSNSシステムを使った学習システムと、
アセスメントを組み込んだデジタル・カリキュラムの開発。

具体的には例えば 
・SNS学習ネットワークの開発でDigital Youth Networkに260万ドル。
・ゲーム型の指導ツールの開発で Institute of Play に250万ドル。
・数学、国語、科学を教えるための3Dマルチ・ユーザーのビデオ・ゲーム開発で
Quest Atlantis に 260万ドル。
・応用テクノロジーを通じて大学教育に備え卒業まで導く学習補助手段開発で
Next Generation Learning Challenges に1000万ドル。

これらは、42州採用の国語と数学の新スタンダード
Common Core State Standards Initiativeに沿ったものになる予定とのこと。


Foundations Join to Offer Online Courses for Schools
The NY Times, April 27, 2011

こうしたゲイツ財団の動きについてはNYTも先月27日に報じており、
そちらでは同財団が巨大教科書・教育テクノロジー企業Pearsonと提携し
ビデオ・ゲームやSNSを駆使して
数学では幼稚園から高校1年向けに
国語では幼稚園から高校3年向けに
合わせて24の講座を準備する、と。

この提携により、現在でも教科書・教材市場で優位にあるPearsonは
新スタンダードに合わせて改訂競争に晒される競合企業を突き離し、
さらなる独走態勢を固めるだろう、との予測が出ている。

ゲイツ財団の教育部門の責任者が
「これで生徒と教師のやり取りは根本的に変わりますよ」と自画自賛するのは良いとして

ブッシュ政権で教育省の官僚だった教育行政の専門家までが
「これで新たなスタンダードCommon Coreを統一テストに連動させていくことが可能になる」と。


               ------

オンラインの教材で学習し、そこでの生徒のパフォーマンスはリアルタイムで自動登録・管理され、
またはオンラインで統一テストを行い、そのパフォーマンスも自動登録・管理され、
担当する生徒たちのパフォーマンスのCommon Core達成率と向上率がはじき出されて、
それがそのまま各教師のパフォーマンスということにされていく……んでしょうね。

まるで、チェーン展開している外食産業で各店舗の営業状況がPCで一括中央管理され、
毎月どころか毎日、毎時の成績がはじき出されて数値化され可視化され、
逐次それに対して誰かが責任を問われ、尻を叩かれ、首を切られるように、

きっとPCが逐次はじき出す数値がそれぞれの教師の能力と同意となり、
その数値に対して責任を問われ、数値を上げよと尻を叩かれ、
数値を上げることができなかったり、数値に踊らされることを拒めば
ただシンプルに「無能」の烙印を押されて首を切られていくのでしょう。

そして、全米でそうした教育・教師管理システムを構築、維持管理運営するのはマイクロソフト――。


ゲイツ財団の興味関心を実現していく研究開発にまい進して株主さんになってもらえたり
同財団から資金をもらったりパートナーシップを組んでもらえる企業だけが、
それぞれのマーケットで独占的に肥大化していくのも
科学とテクノの分野や教育の分野だけではなくなっていくのかもしれない。

そして、どの分野からも多様性というものが失われて、
きっと世界はとても平板で機械的な価値観で均されていくんだろうな……という、イヤ~な予感がする。

科学とテクノの研究からは既に多様性が失われていることは
こちらのエントリーの記事が指摘している。
2011.05.02 / Top↑
長引く経済不況で、米国の公教育は予算不足が続き、
そこでEli Broad, Casey Wasserman, Bill & Melinda Gates 財団など
民間からの資金に頼ることになっているらしい。

LA Times の調査によると、
LA地域の教育行政上級職20人の給与が税金からではなく
これら民間の慈善家によって支払われることになるのだとか。

その中の一人、
LA統合スクール・ディストリクトの教育長に就任したJohn Deasy氏は
なんとゲイツ財団の元幹部職員だとのこと。

もちろんDeasy氏本人は
資金提供者の意向に関わりなく
自分が意思決定を行うと言ってはいるけれど、
果たしてそういう具合に行くものか、
教育改革を慈善家のゼニにゆだねることにリスクはないのか、と
LA Timesの社説が問題提起している。

実際、教育に資金を提供する慈善家たちは小規模校がお好みで、
Bill Gates氏はかつて10億ドルを提供して
学校の500人規模への小規模校化を説いたことがあった。
そのため米国の都市部を中心に小規模校がトレンドとなり、
スクール・ディストリクトはこぞって小さな学校を作り、
学校の運営費用はかさんでいった。

しかしゲイツ財団がその後独自に調査を行ってみると
小規模化は生徒の成績向上に結び付いていないという結果が出てしまう。

するとゲイツ氏はとたんに小規模化プロジェクトに興味を失い、
それよりも教師の評価制度を変えようと言い始める。

その評価システムとは、
教室で授業を観察・評価するだけではなく、
生徒の成績をコンピューター管理して、それによって
教師ごとに担当生徒の成績がどれだけアップしたかを割り出して
それぞれの教師の評価に反映させるというもの。

しかし、そこには教師の評価そのものよりも
むしろ評価システムの導入に対して資金を出そうとの狙いもあるのでは?

慈善家たちは自分の出したカネが自分の思う目的に使われることを望むが、
教育官僚の仕事は彼らの意向に応えることではなく、納税者に応えることである。

教育改革のコントロールを
教育行政が安易に慈善家に渡してしまっていいのか……? と。

LAUSD: Public education and private money may prove a mixed bag
The LA Times, Editorial, May 1, 2011



この社説の疑念は、
当ブログが「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫でかねて提起してきたものと
まったく同じ方向のものだけど、

ここでは教育のことだけが語られているために
問題の真の大きさが捉えられていないと思う。

ゲイツ財団のカネがコントロールを及ぼしているのは
米国の公教育だけではなく、

世界中の科学とテクノロジー研究、
グローバル・ヘルスの資金分配、農業政策、外交施策、そしてメディア……。

そういえば、米国の国際開発支援を担当するUSAIDのトップも元ゲイツ財団の職員。
(詳細は上記「農業政策」リンクのエントリーに)

カネを出すだけではなく、
その出したカネの使い道の意思決定を握る機関に財団の職員まで送りこむのは
財団の常とう手段なのかもしれない。

でも、それが多くの人が考えているほど単純な「慈善」ではないことは、

例えば
ワクチン大好きなゲイツ氏が実はビッグ・ファーマの株主さんだったり、

彼が最近しきりに途上国に導入させようとしている5価ワクチンの
製造販売元のメルク社のワクチン部門の責任者には
前CDCのセンター長が天下りしているという構図が、
まるでUSAIDのトップが元ゲイツ財団の職員だという事実の陰画のように思えるように

また例えば、
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪 などを考えてみれば、
なにがしかの疑問が頭に浮かんでこないだろうか。

例えば、
「慈善」と「慈善資本主義」とは、
もしかしたら似て非なるものではないのではないか……とか

もしかしたら、それは実は「慈善帝国主義」なのではないか……などの疑問が――。


【追記】
以下、同じテーマのNewsweekの記事。
非常に長い記事なので最初のページしか読んでいませんが、

Newsweekが、Center for Public Integrityと共に行った調査で
ここ数年の億万長者たちの教育への投資がさほどの効果を上げていないとの
結果を出している様子。

記事冒頭、この10年間の教育改革に資金を提供したCEOたちについて
「教育政策に特に何らバックグラウンドを持たないままやってきた富裕なCEOたち」と
書かれていることがだいたいの記事のトーンをうかがわせている。

Back to School for the Billionaires
Newsweek, May 1, 2011


Center for Public Integrity という機関があるんですね。
Public Integrity……公共の統合性。

科学とテクノの発達で世界経済と金融の構造が変わったことで
ごくわずかな人に富がドラスティックに集中し、それと同時に
各国は過酷な国際競争に投資を迫られて経済的に疲弊する中、
公共サービスを守るためには行政機関が富裕な個人や民間財団の資金に頼らざるを得ない状況が
あちらでもこちらでも――各国規模でもグローバルな規模でも――発現している。

それは国家という装置が機能不全を起こして公共としての統合性を失い、
世界のスーパーリッチの資金と思惑とに
否応なく依存・奉仕させられていく……ということでは?
2011.05.02 / Top↑
なんでもJournal of Animal Ethics という新しい学術雑誌が誕生したそうな。

その最新号の論説がすごい。

英語には動物に対して侮蔑的、差別的な表現が多く、
それらは改められるべきである、と主張する。

例えば、飼っている犬や猫などの動物を「ペット」と呼ぶのは差別的なので
「コンパニオン動物」に変えるべきだし、

飼い主を「所有者」と称するのは法的には正しいが、
動物が道徳的な保護を必要としない機械やモノと同じように感じられてしまうので
飼い主のことも「人間ケアラー」と称するべき、

「野生動物」の「野生」も未開だとか野蛮といったイメージを伴うために
当該動物に対して侮蔑的であり、「自由に生きている」または
「自由に行動している」動物と称するべきである、と。

その他、「狐のようにずるがしこい」「豚のように食う」などの比喩表現も
動物に対してフェアでないので改めるべきだ、とも。

著者は英 Oxford Centre for Animal Ethics のディレクターAndrew Linzeyと
米Penn 州立大学のPriscilla Cohn。

Calling animals ‘pets’ is insulting, academics claim
The Telegraph, April 28, 2011


Oxfordといえば、
世界トランスヒューマニスト協会を創設したNick Bostrumがいるし
最近とみにご活躍のJulian SavulescuもDominic Wilkinsonも――。


Oxford Centre for Animal Ethicsのサイトに行ってみたら、
この件に関するニュース・リリースが出ていました。
内容は、概ね上記の記事の内容と同じ。

またこのサイトのAnimal Ethicsというページを覗いてみると、
以下のような記述が目を引きました。

Our concern is to establish an unashamedly elite school of academics able to make an effective ethical case for animals.

我々の関心事とは、
動物のための実効ある倫理問題を論じることのできる、
臆面のないエリートの学者集団を作ること。




この unashamedly のニュアンスが、
私にはちょっと掴み切れないところがあり、
「そうした仕事をすることにゆるぎない確信を持った」という意味だと理解する方が
より自然だとは感じるのだけど、ただ文法的にはeliteを修飾しているはずなので、
それならば「臆面もないほどエリートの集団」という意味になると思え、


もしも、そうだとしたら、そこには
最初から「挑戦者のチャレンジを受けて立つチャンピオンの椅子」に勝手に座りこんでいる
Peter Singerらの「大型類人猿の権利宣言」に感じた青臭い不遜と
同じ匂いがするような気がする。

「大型類人猿の権利宣言」を読んで書いた3つのエントリーはこちら ↓
Singerらの「大型類人猿の権利宣言」って、あんがい種差別的?
Peter Singerの”ちゃぶ台返し”
SingerやTH二ストにとっては、知的障害者も精神障害者も子どもも、み~んな「頭が悪い人たち」


そして、動物を差別することにこんなにも過剰に反応する人たちが
障害者を差別することには単に鈍感というのではなく、
むしろ何かに挑戦するかのように、敢えて露骨に
知的・精神障害者を差別してみせることの不思議――。
2011.05.02 / Top↑
オーストラリアで
2009年に重症の慢性病のパートナーEva Griffith(享年78歳)を窒息させて死なせたとして
David Scott Mathers(逮捕時64歳)に2年間の執行猶予付き判決。

判決は
本人が死にたがっていたこと、大きな苦痛があったことに何度も言及し、
「彼女に対する愛から生まれた無私の行為」だと。

Euthanasia pushes past pain barrier
The Sydney Morning Herald, May 1, 2011


Sydney Morning Herald の記事そのものは
自殺幇助を合法化している米国Oregon州やオランダで
実際には耐え難い苦痛だけを理由としない安楽死が行われている実態を報じるものですが、

この記事で「重症の慢性病に苦しむGriffithさん」と表現されている病気とは、
以下の事件当時の記事によると、なんと「骨粗鬆症と過酷な腰痛」。

殺害方法は顔にポリ袋をかぶせて窒息させるというもの。

しかし起訴当時から、
弁護士は慈悲殺だと主張する戦略をとり、

こちらの記事のタイトルでも「慈悲殺とおぼしき殺害」と。

Killing of Eva Griffith an alleged mercy act, David Mathers charged
The telegraph com. Au, July 9, 2007


あの英国公訴局長の自殺幇助起訴ガイドラインですら、
慈悲殺という概念も文言も法律上は存在しないと明言していますが……。
2011.05.02 / Top↑
カナダの“無益な治療”訴訟、Maraachli事件の続報。

Joseph君の呼吸器を「無益な治療」だとして外すと言い渡した病院と、
それに抵抗し、せめて死までの時間を自宅で過ごせるように気管切開を、と求める両親が
裁判で争った末に、カナダの裁判所は病院の訴えを認め、
気管切開はされないまま呼吸器が外されることが決まったが、

その後、プロ・ライフの活動家らの支援によって
セント・ルイスの病院に転院がかない、気管切開を受けることができた……
というところまでを当ブログで追いかけてきましたが、

Joseph君はその後、自宅に戻り、
人工呼吸器なしで自力で呼吸し、穏やかに過ごしているとのこと。

時どき眼を開けると、身体を動かしたり、
父親が指をさし出すと握ったりもする。

セント・ルイスの病院が明らかにしたところでは
Josephくんの病気はレイ病。

(07年のテキサスの「無益な治療」事件でGonzales君もレイ病でした)

父親は、息子がいつまで生きるか分からないが、
こうして穏やかな家族の時間が過ごせていることそのものが
もともとのカナダの病院の判断が間違っていた証拠であり、

勝ったと感じている、しかし、

なぜ気管切開をしてもらうために
わざわざセントルイスまで行かなければならなかったのか、
そのわけを知りたい、と。

‘I feel victorious,’ says Baby Joseph’s father
The Vancouver Sun, April 25, 2011


記事へのコメントの議論は
「わずかな延命のための資源の無駄遣いである」かどうか、が論点になっている様子。

中に「みんな見逃しているけど、この子は苦しんでいるという事実がある。
気管切開で、その苦しみを人工的に伸ばしているだけ」と書いている人がいる。

記事の写真を見てほしいのだけど、
眠っているJosephの顔は苦しんでいる子どものそれではないと思う。

「重い障害がある状態で生きているのは常時痛苦に耐えなければならないこと」と思い込むのは
以下のエントリーを始め「ステレオタイプという壁」の書庫で書いているように単なるステレオタイプ。

「重い障害」の“外見”が見せる「存在しない痛み」(2009/6/2)


【Maraachli事件関連エントリー】
1歳児の「無益な治療」で両親が敗訴(カナダ)(2011/2/24)
2011年3月1日の補遺(2011/3/1)
2011年3月5日の補遺(2011/3/5)
呼吸器外し命じられたカナダのJoseph君、セントルイスの病院へ(2011/3/15)
A事件繋がりのRebecca DresserがMaraachli事件で「コスト懸念で類似の訴訟はこれから増える」(2011/3/17)
Peter SingerがMaraachli事件で「同じゼニ出すなら、途上国の多数を救え」(2011/3/22)
2011.05.02 / Top↑
英国で Compassion in Dying というチャリティが「可能な限り患者の選択とコントロールを増やす」ことを目的にした無料の電話相談を計画中とのことで、ターミナルな患者や重病者を死に導くつもりか、と批判を浴びている。同チャリティは Dignity in Dying の下部組織。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1381321/Euthanasia-charity-launches-die-helpline.html

ビル・ゲイツがゲームタイプの学習プログラムの開発に、2000万ドルの支援を約束。
http://www.geekwire.com/2011/bill-gates-supports-gamebased-learning-20m-grants

……と同時に、ゲイツ財団は巨大教科書教材会社と提携し、オンラインで国語と数学を学べるシステムを作ると発表。ここ数カ月で相次いで40州が採用した新たな学校教育のスタンダードに沿ったもの。多彩なメデイァを使った授業を展開する。英語は幼稚園から高3まで。数学は幼稚園から高1まで。教材会社の間で新たなスタンダードに応じた改訂が急がれている中、Gates-Pearsonのパートナーが群を抜くことは間違いない、と。:なるほど~。ここしばらくゲイツ氏がしきりに米国の教育改革に口を出していたのは、こういうことだったのか……。
http://www.nytimes.com/2011/04/28/education/28gates.html?_r=1&partner=rss&emc=rss

Northwest特別教育学校で、キャンディを投げたり無断でカフェテリアを出たなどの些細な違反を理由にスタッフが生徒に抑制を行っていたとして、ライセンス停止処分を検討中とワシントンDCの当局が発表。
http://www.washingtonpost.com/local/education/district_moves_to_close_special_ed_school/2011/04/27/AFtcJ90E_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

1月に頭を銃で撃たれて重傷を負った米国アリゾナ州のGabrielle Giffords議員が、夫のシャトル打ち上げに立ち会うためにフロリダに。全米の人が死んだと思い、生きていると分かっても助からないだろうと考えた人が、少しずつ回復していることが米国中の人を驚かせている。:それが、米国で進む「無益な治療」論や安易な「終末期医療」・尊厳死の議論を振り返るきっかけになってくれれば。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/apr/27/gabrielle-giffords-shooting-brain-recovery?CMP=EMCGT_280411&

ヴァージニア工科大が、07年の銃乱射事件の対応がまずくて多数の死者を出したとして連邦政府から55000ドルの罰金を課せられ、頭にきて抵抗すべく声明を出した。
http://www.washingtonpost.com/local/education/va_tech_will_appeal_55000_fine_over_handling_of_2007_shooting_spree/2011/04/27/AFWyguyE_story.html?wpisrc=nl_cuzheads
2011.05.02 / Top↑