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4日のエントリーで取り上げた英では2009年以降、少なくとも44件の自殺幇助事件が不起訴にのニュースと、そこでの公訴局長のコメントに対して、自殺幇助合法化に反対してきたCristina Odone氏がTelegraphで反論。論旨は、上記エントリーでの当ブログの批判と同じで「実際、黙認しとるやないか。要するに、アンタらは暗黙のうちに合法化したんやんけ」というもの。
http://blogs.telegraph.co.uk/news/cristinaodone/100103167/britain-has-legalised-assisted-suicide-when-no-one-was-looking/

そういう批判を受けて公訴局長Starmer氏が反論。というか弁明。「公訴局が自殺幇助を起訴しないとの包括方針を出したかのような批判は当たらない。それぞれの事件はそれぞれの事件や特徴を慎重に検討している。一件ごとに検事が状況によって公益ファクターの重要性を見極めて、全体としてのアセスメントを行っている。自殺幇助は今なお犯罪でああり、疑いのある事件については常に十分な捜査が必要である」:だから、検死官や警察が勝手に黙認してスル―しているという報道があったやないけ……とspitzibaraは言っているんだっての。Odoneさんも。その指摘に対して、Starmer氏の発言はぜんぜん弁明になっていない。
http://www.google.com/hostednews/ukpress/article/ALeqM5iN_fqEpb6eE-ILrniALw9EgoT-Pg?docId=N0213081315284850926A

【Odoneさん関連エントリー】
英国のシンクタンクが「自殺幇助合法化は弱者に危険」と報告書(2011/10/20)


日本の科研費事業で「もはやヒポクラテスではいられない」21世紀 新医師宣言プロジェクト。主旨の中に、さらには、「依頼されても人を殺す薬を与えない」ことは、生命尊重の観点からも大切な態度ではありますが、現代の医療は延命治療や安楽死の是非などについても正面から考えていかなければならないことがあります、と書いてある。ネットで意見を募りつつ、宣言文を作っていくらしいのだけど、こういうことを考える人は、実はコスト論でしかない化けの皮が既に剥げている英語圏の“無益な治療”論や“死の自己決定権”議論の周辺の「ポスト・ヒポクラテス医療」で何が起こっているか、ちゃんと知った上で考えてほしい、と思う。
http://www.ishisengen.net/purpose.html

日本語記事。鄭州で人身売買業者が暗躍、サボリ学生ら勧誘、奴隷労働へ―中国
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0905&f=national_0905_243.shtml

【関連エントリー】
死体の闇売買のため障害者を狙って殺害(中国)(2008/9/11)
世界の「奴隷労働」を、拾った記事から概観してみる(2011/1/20)


日本。「子ども精神薬漬け」自閉症悪化――副作用否定し薬物療法続ける医者たち
http://www.j-cast.com/tv/2011/09/06106365.html?p=2

薬局は10代の子ども達に薬のリスクと利益について、もっとちゃんと情報を提供する必要がある。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/233875.php

9月13―16日、世界薬物安全会議ヨーロッパ2011開催。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/233881.php

米国で脳卒中で治療を受ける若者が増えている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/233862.php

ウォールマートがIT業界に乗り出し、インターネット上でこれまで誰も体験したことのない新たなショッピング体験を、と。:そういえばビル・ゲイツはウォール・マートの株主さん。
http://www.washingtonpost.com/blogs/innovations/post/wal-marts-cosmic-voodoo/2010/12/20/gIQA8ajupJ_blog.html
2011.09.08 / Top↑
英国の介護者週間については何度かエントリーで取り上げていますが、
7月にも以下のエントリーで今年のケアラーズ・ウィークについて紹介しました。

ケアラーの本当の顔:英国ケアラーズ・ウィーク2011(2011/7/5)

その、ちょっと不思議な今年のテーマ「ケアラーの本当の顔」について
「“身勝手な豚”の介護ガイド」という本の著者で
ハンチントン病の妻を介護しているHugh Mariiot氏が
ケアラーズ・ウィーク2011のサイトに書いた文章を
「介護保険情報」誌8月号で仮訳してみました。

その全文を以下に。

ケアラーたちの本当の顔

え、ケアラーたちの本当の顔? それがケアラーズ・ウィークのテーマなの……って?
 
うん。まぁ、聞かない方がいいかもね。知らない方がいいと思うよ。ケアラーの本当の顔がどういうものか、ちょっとでも知ったらビビっちゃうから。とはいっても、きっと分かんないとは思うけどね。だってケアラーって、目に見えないんだもの。

あ、ボクが言ってるのは、給料をもらっている介護者のことじゃないんだ。制服を着て働いているような人たちなら、ちゃんと目に見えるからね。ボクが言っているのは、自分でも思いがけない時に、気が付いたら、いつのまにかケアラーになっちゃってた……っていう人たちのこと。 

ボクたちケアラーは制服なんか着ないし、休憩時間もオフの日もない。選択の自由も研修も給料もない。見た目は他のみんなと全く同じさ。実際、ボクたちはみんなと同じ人間なんだけどね。だから、誰も気づかない。ボクたちがもう前とは別の存在になってしまったってことに。

もう1つヘンなのは、ボクたち自身にも自分が見えないってこと。どういうことかというとね。誰かのケアをするのは、なにしろずっと全力投球だから、そういうのを長く続けていると、いつのまにか自分がどういう人間なのか、前はどういう人として生きていたかってことを忘れ始めるんだよ。自分がこの先どういう生き方をしたいかという夢だって、もちろん頭から消えてしまう。そんなふうに自分自身を見失っていくってわけ。

透明な存在――。それがボクたち。まぁ、それでいいのかもね。だってボクたちの本当の顔をみんなが見ることができたら、頭の中で何を考えているかまでバレてしまう。そんなのは知って愉快なものじゃない。

本当のことを言うと、人によって早い遅いの違いはあるけど、ケアラーをやっていると、たいていの人はどこかでプッツンくるんだよ。みんな、外には見せないけどね。外から見れば、介護に疲れているとか、まったりしているとか、もう諦めきってるみたいに見えるかもしれない。ま、概してボクたちって、愛する人を介護する心優しい人っていうイメージだよね。だから全然だいじょうぶ、てな感じに見えたりもして。で、ある日突然、プツンといっちゃう。そうなると、もうダメ。でも、そういう時でも、たぶんボクたちは家の中でこっそりプツンいってて、そんな自分を外に見せたりはしない。

だから外の世界の人には分からないみたいだけど、ボクたちは最初からケアラーだったわけじゃないんだよ。ボクたちだって外の世界の人と全く同じ人間で、生まれつき介護に向いているからケアラーをやっているというわけじゃない。他に選択肢がないから、やっていくしかないだけで。

ここんところがケアラーの弱みだよね。やるしかないことだから、ボクたちはそれなりに立派にこなしていく。だから、ほら、ケアしている相手を殺しちゃうケアラーなんて、滅多にいない。辛いのは、ボクたちがあれもこれも黙々とこなしながら、そんな生活に満足しているように見えてしまうこと。もちろん、そういう人もいるよ。でも、そうじゃない人だって沢山いる。

だからケアラーズ・ウィークがあって、そのテーマが「ケアラーの本当の顔」ってわけ。

もし君がケアラーだったら、こんなことは言われなくても分かってるだろうけど、もしも君がケアラーじゃなかったら、ちょっと考えてみて。君だって、いつかケアラーになる日がくるかもしれない。その確率は案外に高い。だから、これだけは知っておいて。ケアラーだからって聖人じゃないんだよ。ケアラーは君なんだ。


原文は以下のサイトに。
http://carersweek.org/news-and-media/latest-news/item/56-the-true-face-of-carers-hugh-marriott


【Marriotさんの著書に関するエントリー】
「“身勝手な豚”の介護ガイド」1: セックスもウンコも“殺してやりたい”も(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」2: あなた自身をもう一人の“子豚”に(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3: “専門家の世界”に心が折れないために(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3のオマケ: だって、Spitibaraも黙っていられない(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」4: 「階段から突き落としてしまいたい」で止まるために(2011/7/23)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」5: ウンコよりキタナイものがある(2011/7/23)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」6: セックスを語ると“子豚”への愛が見えてくる“ケアラー哲学”(2011/7/24)
2011.09.08 / Top↑
LA Timesに、治癒が見込めないガン患者が家族と過ごす時間を持てるよう延命治療を行うことの可否の判断は、保険会社ではなく医師にゆだねられるべきだ、との論考。てことは現在は保険会社が判断し、給付を拒否している、ということ。:“無益な治療”議論や“死の自己決定権”議論において、もともとは「死が差し迫っていて救命の可能性がない」ことと「延命だけの効果しかない治療が患者に苦痛を与えている」の2つが揃っている患者が対象になっていたはずなのに、いつのまにか、その2つのどちらかで良いみたいな話となり、さらに「救命可能性がない」はいつのまにか「どうせ治らないなら」にすり替えられていくので、また、いつのまにか、そこにコスト論が紛れ込まされているので、いずれ「治療さえすれば相当な期間を一定のQOLを保って生きることができる」患者であっても、その治療が高価であれば、こういう話になっていくのだろうとは思っていたけど。
http://www.latimes.com/business/la-fi-lazarus-20110902,0,4094272,full.column

「どうせ治らない人への治療はみんな過剰な延命」という妙な論理の飛躍は、既に日本でも信じられないほどの無自覚(?)さ安易さで横行している。例えば、人工透析、胃ろう、人工呼吸器の一切を「延命治療」と呼ばわるかのようなNHKの番組はこちら。

【関連エントリー】
日本の尊厳死合法化議論を巡る4つの疑問(2010/10/28)


フランスで2003年に起きた母親による重症障害を負った青年の自殺幇助(慈悲殺?)事件。その青年の書いた本の翻訳「僕に死ぬ権利をください」についてFreezing Pointさんのブログ記事。
http://d.hatena.ne.jp/ueyamakzk/20110711

英国医師会のトップが、現在のNHS改革の方向性で行くと、富裕層の外国人を優先的に診てあげましょう、ということになる、と警告。:これは日本の医療ツーリズムでも、確か神戸の特区について地元医師会から同じような懸念が出ていたような記憶がある。たぶん補遺のどこかに拾った。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/sep/01/nhs-plans-put-wealthy-first?CMP=EMCGT_020911&

米国の民間介護保険で給付を受ける人の受給理由のトップはアルツハイマー病と脳卒中。
http://www.infozine.com/news/stories/op/storiesView/sid/48838/

NYT. やっぱり米国の教育改革はデジタル化の方向で決まり?
In Classroom of Future, Stagnant Scores: Schools are embracing digital learning, but evidence is scarce that the expensive technology is improving educational outcome.

宇宙ゴミが増えて、ヤバいところまできたぞ、NASAはどうにかしろ、と調査報告書。:地球上ではITの有害ゴミや原発の使用済み燃料、宇宙には宇宙ゴミ。Guardianの記事の方がタイトルで exponentially という表現を使っている。これ、TH二ストのカーツワイルが21世紀後半に起こる新興テクノの進歩のすごさを表現するのに使っている単語。「指数関数的な速さで」と訳されている。まだ21世紀初頭なんだけど既に宇宙ゴミも地球上の有害ゴミも、そういう速度で増えているということに対しては、TH二ストさんたちはどういう解決策を考えているんだろう?
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/reports-says-space-debris-past-tipping-point-nasa-needs-to-step-up-action/2011/08/31/gIQAo6WTuJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads
http://www.guardian.co.uk/science/2011/sep/01/space-junk-rising-exponentially-earth?CMP=EMCGT_020911&

長女殺害事件、「同情の余地大きい」と父親に猶予判決/横浜地裁。39歳の統合失調症の長女を父親が殺した事件。「心情には同情する」、援助を求めなかったことに関しても「被告の性格などを考えると強く責められず」
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1109020038/

「ゲーセン」いまや常連はお年寄り シニアサービス充実:これはずっと前からミュウを連れていくたび、感じていた。
http://www.asahi.com/national/update/0903/TKY201109030128.html
2011.09.04 / Top↑
2009年以降、警察が英国検察局に
証拠が確かだとして送った自殺幇助事件は44件。

多くはターミナルな患者が近親者の幇助を受けて自殺したケースと
近親者に付き添われてDignitas平気自殺したケースと見られるが、

しかし、44件以外にも、警察が捜査を見送ったり上へ報告しなかったケースがある。

2010年2月の公訴局の自殺幇助起訴ガイドライン以降、
英国で自殺幇助で起訴された者はいない。

公訴局長のKeir Starmer氏は
「大きく増えているというほどではないが、以前に比べれば増えている」と語り、

その要因としてガイドラインが出来て、基準が明確化されたことによって
自分がやったことを公にしても大丈夫だと感じる人が増えたからではないか、と。

記事はそういう書き方をしていないけど、
これは、つまり、事件そのものは前からあって
水面下にとどまっていたのが表に出ているだけで、
ガイドラインができたからといって自殺幇助事件が増えているわけではない、と言いたい?

44 assisted suicide cases since CPS guidelines published
The Telegraph, September 2, 2011


ふ~ん……。

このところ、相次いで以下のようなニュースが出てきているんですけど、
Starmer氏には全く気にならないのでしょうか?

警察が「捜査しない」と判断する、英国「自殺幇助起訴ガイドライン」の“すべり坂”(2011/7/15)
検死官が近親者による自殺幇助は見て見ぬフリ(英)(2011/8/25)


それに、以下のように、Dignitasで幇助自殺している英国人は
以下のリンクに見られるように、必ずしもターミナルな病状の人ばかりではなく、

【英国人のDignitasでの自殺事件エントリー】
スイスDignitasで幇助自殺とげた英国人100人に(2008/10/3)
息子をDignitasで自殺させた両親、不問に(英)(2008/12/10)
「病気の夫と一緒に死にたい」健康な妻の自殺をDignitasが検討中(2009/4/2)
Dignitasに登録の英国人800人(2009/6/1)
これまでにDignitasで自殺した英国人114人の病名リスト(2009/6/22)
英国の著名指揮者夫妻がDignitasで揃って自殺(2009/7/14)
またしても著名英国人音楽家がDignitasで自殺(2009/9/20)
Dignitasの内部をGuardianが独占取材(2009/11/19)
国別・Dignitasの幇助自殺者、登録会員数一覧(2010/3/1)
また英国の著名人がDignitasで自殺:Purdyさんと同じ多発性硬化症(2010/4/1)
リッチな英女性のDignitas死に財産がらみの不審か、警察が捜査に(2010/4/14)


ついこの4月にも、以下のような事件があったのですが、

Dignitasで英国人がまた自殺、今度は「老いて衰えるのが怖いから」(2011/4/3)

それもまた、Starmer氏には気にならないのでしょうか……。



【ガイドライン関連エントリー】
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 1(2010/3/8)
DPPの自殺幇助に関する起訴判断のガイドラインを読む 2(2010/3/8)
英国の自殺幇助ガイドライン後、初の判断は不起訴(2010/3/26)
英国DPP、家族による自殺幇助すでに20件も不起訴に(2010/12/15)
警察が「捜査しない」と判断する英国の「自殺幇助ガイドライン」の“すべり坂”(2011/7/15)

2011.09.04 / Top↑
8月31日の朝日新聞朝刊に、
三井住友フィナンシャルグループの「ワクチン債」の大きなカラー広告が出ていた。

キャッチは 「投資で始める、あなたの支援」。

「ワクチン債とは」に続く説明は
「70カ国以上の発展途上国の子どもたちに」
ワクチン接種の機会を提供するために発行される債券です。」

もっとも、この説明は、ごく小さく書かれていて、それより何よりも広告の中で目立つのは、
くっきり黄色の背景に緑で大きく書かれた「利率 年 6.00%」の部分。
発行体は「予防接種のための国際金融ファシリティ IFFlm」

ワクチン債については
以下のエントリーのコメント欄にまとめたように
当ブログでも何度か話題にし、首をかしげてきた。

やっと出た、ワクチンのため世界中からかき集められる資金に疑問の声(2011/6/16)

ずっと感じている基本的な疑問の第一は、上記の「6.00%」に見られるように、
一体どうして途上国の子どもにワクチンを届けるための人道支援が投資になりうるのか
一体どういうカラクリで、そこに利益が生まれてくるというのか、という点。

でも、この広告を前に、しばし座り込み、
デカデカとした「6.00%」という文字を眺めていたら、
もう1つ、第2の疑問も頭に浮かんできた。

上記6月16日のエントリーとその翌日のこちらのエントリーで書いたように、
6月13日にロンドンで開かれた国際ワクチン会議で、
今後10年間に途上国の子どもたちにワクチンを届けるための資金は調達済みなのです。

だからこそ、13日の会議ではビル・ゲイツが
「これで世界中の子どもたちにワクチンを打てる」と感謝のスピーチをしていたはず。
それなのに、なぜ、まるでまだ資金が足りないかのようなフリして「ワクチン債」?

――で、今度こそ、検索してみた。

まず、ワクチン債を売っている人たちは
だいたい、みんな上記の三井住友フィナンシャルグループと同じことを言っている。

マネックス証券のワクチン債サイトのキャッチは「幼い命を救う投資があります」

説明には
「世界には、貧しさゆえに予防接種を受けられず、
幼く尊い命が失われている現実があります。
私たちが自身にもリターンを得られる投資をしながら、
そうした幼い命を救う『人道的な貢献』を行うことが出来ます。
IFFlm発行のワクチン債投資によって調達された資金は、
世界約70カ国以上の予防接種プログラムに活用されます」

大和証券のワクチン債のキャッチは
「世界の子供たちを救う国際活動 ~ワクチン債が支える予防接種~」。

で、ワクチンのカラクリを詳しく説明してある証券用語辞典のワクチン債とはによると、

ワクチン債とは、開発途上国の子供たちにワクチンを提供することを目的として、2009年6月24日からHSBC証券会社、予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFIm)、GAVIアライアンス、世界銀行の4者によって発行される債券。同6月1日から販売の勧誘が開始された。
ワクチン債によって調達された資金は、世界の70カ国以上で子供たちの予防接種や保健サービスのための財源とされる。
販売会社は19社。格付けはS&PでAAA、ムーディーズでAaaなど。40億米ドルを調達して、5億人の子供たちへのワクチン接種を目指す。
なお、IFFImは、欧州と南アフリカ共和国の計7カ国と、2006年から2026年までのワクチン提供費用の寄付金協定を締結しており、寄付金を償還原資とした債券を発行している。




実際には、2009年以前から売られていた事実は上記コメント欄で指摘したし、
その他、検索で出てきた情報でも裏付けられているのだけれど、それよりも何よりも、

ビル・ゲイツや英国首相やボノなんかが世界各国政府や金持ちに向けて
マネックス証券とそっくり同じことを言っては拠出を迫ってきた目標金額が
その「40億米ドル」だったし、

その「40億米ドル」こそが
上記6月13日の会議で「めでたく確保された」金額なんだけど……?

ゲイツ財団の”慈善”が世界各国から吐き出させて既にめでたく確約させた金額と同じだけを、
今なお世界中の証券会社が一般人からワクチン債に吐きださせようとしているわけで、

前者の寄付金が後者の償還原資とされていることを思えば一致しているのも「なるほど」にせよ、
それでは利息分が不足するはずなんだけど……?

それに、その仕組みそのものが、基本的にヘンじゃないです?

日本も13日の会議でGAVIに8億3000万円を約束しているのだけど、
それは「途上国のワクチン支援」の資金として拠出したのであって、
世界中で売られているワクチン債の償還原資として拠出したわけではないはず。

なに、それ――?

まさか、日本政府もその他各国政府も、ぜ~んぶ承知でやっていることだ……とでも?


そこで個人投資家の方々のブログでの考察を覗いてみると、

ワクチン債って…(一流証券マンへの道 2008/2/3)
ワクチン債 vaccine bond は現時点では押し込み型(雄牛と熊と慾豚と 2008/1/30)
(もう1つリンクしたいのだけど、アドレスとブロブ名だけなのに
何故か「登録できない文字列」になってしまって含められず、リンクできませんでした)

指摘されているのは、だいたい以下の2点で、
① 個人にせよ各国政府にせよ、ワクチン債よりもワクチン購入に直接寄付した方が貢献できる。
② 機関投資家向けに売り出そうとして失敗したので小口化して個人投資家をターゲットとし、
人道貢献をウリにすることで条件の悪さを糊塗しているのでは?

非常に分かりやすく面白かったのは
Q:お役にも立てる「ワクチン債」は買いでしょうか?(マネデリカ 2009/5/3)に回答した人の以下の分析で、

一般債券のお金の流れは、「投資家→発行体→投資家」という形で利払い・償還されますが、ワクチン債の場合は「投資家→発行体(IFFIm)→ワクチン購入」までで、利払いや償還の場合は「IFFIm設立各国(イギリスなど)の寄付金→発行体→投資家」という別の流れになります。

この図式では、「IFFIm」は単に「他人のふんどしで相撲を取る」だけです。ただ、もともとワクチン購入は世界各国の寄付金等によってなされているという事実から考えれば、投資家のお金でワクチンを買っても、各国政府の寄付金で投資家にお金を返すのなら、結果的には「各国政府のお金で買った」ことになり、「投資家に利息を払うならその分でワクチンを買えよ」と言われれば「ごもっとも」ということになります。

ひねくれ者の私などは、資金調達と満期償還の間の時間的なズレのなかで、なにか「美味しい儲け話」があるんだろうなあ、と思ってしまいます。

裏の事情はともかく、この債券で確実に言えることは、
① 債券を買った投資家は「社会貢献したような満足感」を得られる。
② 一番得をするのは、販売手数料がもらえる証券会社(D証券)。
(ゴチックはspitzibara)



各国政府の拠出金も
ワクチン債を買った投資家のカネも、
こんな回りくどい仕組みを経ることなくダイレクトにワクチン資金に提供されるのが
途上国の子どもたちにとって一番の利益になることは明明白白だし、

さらに、途上国のワクチン事業に必要な40億ドルは
既に各国政府からGAVIに約束されて集まっているのだから
この上「ワクチン債」を売って集める必要なんか全然ない。

だから、そこは、つまりは、単に、カネが余計なルートを経回って動くことが
誰かの利益を生む経済のカラクリ作りに過ぎないということなのでは?

そして、そのカラクリに関してマネデリカの回答者が言う「美味しい儲け話」とは、
例のグローバルな「ワクチンの10年」祭りやゲイツ財団がビッグファーマの株主であることと
ちゃんと繋がっていたりするんじゃないのだろうか?

それにしても、これらの情報を考え併せると、
上記の用語辞典にあるように、そもそもワクチン債を仕組んだのがGAVIや世界銀行とくるのだから、
GAVIの事実上の親組織であるゲイツ財団や、その親分のビル・ゲイツが
そのカラクリ作りに乗っかっていないわけはないし、

まさか、こうした「ワクチン債」のカラクリを各国政府が知らずに
GAVIに多額の拠出金を出しているとも、ちょっと考えられないこと、ないですか?

それなら世界中の人々が善意を信じて疑わない
「途上国の子どもたちにワクチンを」「貧しい子どもの命を救うために」というキャッチは
いろんなところからカネを出させてカネを回すための、単なるニセ看板に過ぎないのでは?

「ワクチンで子どもたちの命を救おう」には、
やっぱり子ども達の命の問題よりも世界経済の問題の匂い、
グローバル強欲ひとでなし金融・慈善資本主義の匂いがプンプンしている……という気がする。


【ゲイツ財団と「ワクチンの10年」について】
新興国でのワクチン開発・製造に、巨大製薬会社がマーケット・チャンスと乗り出している(2009/11/8)
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
2011.09.04 / Top↑
当ブログは、2007年初頭にアシュリー事件と出会い、
その不可思議を追いかけるという作業に問答無用で引きずり込まれたことから始まり、
事件との出会いから既に5年近く、事件を検証すると同時に、
事件を通じて見えてきた英語圏の医療倫理の話題を追いかけ、
素人の徒手空拳であれこれと考えてきましたが、

このたび、これまでの作業を1冊の本にまとめ、
出版させていただけることになりました。

「アシュリー事件
メディカル・コントロールと新・優生思想の時代」といいます。

生活書院から9月22日刊行予定です。
各章の詳細などはこちらに。


この本の原稿を仕上げながら、
”Ashley療法”論争はこのまま尻すぼみで終わって
もう水面下に潜っていくのだろうかと、
ぼんやりとした空しさを感じていたのですが、

「アシュリー事件」という本を書いたことを
こうしてご報告できる段階までたどりついた今日、

私には同志のようにも感じられる
PeaceやRoyというお馴染みの人たちがまだまだ諦めずに闘い続けてくれていることを知り、
本当に嬉しく、新たに希望をもらう思いです。

私がAshley事件と出会うよりもはるかに前から
こうした闘い、もっと過酷な闘いを続けてきた人たちが世の中には沢山あることを、
私はこの事件との出会いによって学びました。

そうした闘いを必要とする世の中の現実についても
この事件との出会いによって初めて目を開かせられました。

英語圏の論争に直接参加するだけの力はありませんが、
遠い日本にいる、そしてその日本で我が子らが同じ時代の脅威に晒されようとしていることを恐れる
無力な一母親のささやかな闘いとして、私はこの本を書くことにしました。

アシュリー事件の検証と考察の他にも、
この事件を追いかける過程で見えてきた“無益な治療”論や
“死の自己決定権”、それらが“移植臓器不足”の問題と繋がっていく懸念など、
事件の周辺に見られる英語圏の医療倫理の問題についても
一つの章を割いて簡単にまとめました。

また最後の章「アシュリー事件を考える」では、
以下のエントリーなどで書かせてもらったことを
もうちょっと広げて(同時に深められているといいのですが)書いてみました。

成長抑制を巡って障害学や障害者運動の人たちに問うてみたいこと(2009/1/28)
親の立場から、障害学や障害者運動の人たちにお願いしてみたいこと(2010/3/12)

どうぞ、一人でも多くの方にお手に取っていただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。


これまで当ブログにお付き合いくださった方々、
私には手に入れにくい論文や情報をゲットしてくださった方々、
私の知識不足をサポートしてくださった方々に。

みなさんに支えていただき、助けていただいたおかげで
これまでの作業をこうして形にすることが出来ました。

心からお礼申し上げます。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
2011.09.04 / Top↑
イエ~イ!! 
やってくれました!!

2007年から「アシュリーは私だ」と言い続けている障害当事者のBill Peaceと
一貫してブログで成長抑制療法を批判し続けてきた重症児の母Claire Roy、
Armand H. Matheny Antommaria, Chris Feudtner, Anna Stubblefieldの6人が、

去年のHCR11―12月号掲載の成長抑制WGの論文
“Navigating Growth Attenuation in Children with Profound Disabilities”に反論する書簡を書き、
HCRの最新号に掲載されている模様。

シアトルこども病院のWilfond医師の返信つき。

Growth Attenuation: Health Outcomes and Social Services
Letters, The Hastings Center Report 41, no.5(2011): 4-8
With a replay from Benjamin S. Wilfond


Feudtnerは確か批判論文だったか、どこかに拾っているはずなのですが、
エントリーも書庫も増えすぎて、ざっとした検索では見つけられませんでした。

Ashley療法論争には、上記の論文以降、目立った動きがなく、
このまま尻すぼみに終わってしまうのだろうかと懸念していただけに、

本当に嬉しい。

まだまだ“Ashley療法”論争は終わっていません。
また、終わらせてはならない、と思います。


去年の成長抑制WGの論文については、以下の4本のエントリーに ↓
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/62625973.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/62626031.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/62636670.html
http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/62650044.html
2011.09.04 / Top↑
本人が知らない内にDNR(蘇生無用)指定にされていた英国のJanet Traceyさんの事件で、当該NHSの違法行為として遺族が提訴。
http://www.leighday.co.uk/News/2011/August-2011/Leigh-Day-serve-judicial-review-and-human-rights-c

世界で一番金持ちのゲイツ財団から、世界で一番金持ちの大学、ハーバードに対して、50万ドルのグラント。それは一体なんのため? とWPのブログ。
http://www.washingtonpost.com/blogs/answer-sheet/post/imagine-a-500000-gates-foundation-grant-to-harvard/2011/08/29/gIQAREysqJ_blog.html

そうかと思うと、ビル・ゲイツの親友でもあり慈善資本主義による世界支配のパートナーでもあるウォーレン・バフェットは、Bank of Americaの株を50億ドル購入。:どうも、この人たちは、あらゆる分野の強き者たちをインナー・サークル的に繋げていこうとする企みが蠢いているのでは……?
http://www.propublica.org/thetrade/item/bank-of-america-gets-buffetted/

カナダ、ケベック州のALS患者の女性Ginette Leblancさん(47)の死ぬ権利を求める法廷闘争。
http://www.propublica.org/thetrade/item/bank-of-america-gets-buffetted/

NY Timesに、8月28日のエントリーで取り上げたpill mill(“処方薬の自動販売機”クリニック)に関する記事があり、フロリダ州がオピオイド系鎮痛剤Oxycodoneの違法な流通経路を遮断しようと法改正。:このpill mill問題、大きな社会問題となりそうな気配。
Florida Shutting ‘Pill Mill’ Clinics: Officials have implemented tougher laws in an effort to disrupt an illegal pipeline for prescription for drug Oxycodone.

テキサス州知事の中絶法改正法案で、中絶を望む女性に胎児の超音波映像を見せ心音を聞かせることを義務付ける条項を問題視して、裁判所が却下。:どうして、中絶に関してのみ、こんな原理的なプロ・ライフがまかり通るのかが、ずっと不思議。遺伝子診断やデザイナー・ベビーはOKされる一方で?
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/31/abortion-rick-perry?CMP=EMCGT_010911&

日本。いまいち分からないのだけど、成年後見人制度に「支援信託」なるものが提案されているらしい。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110830-00000020-kyt-l26

英国のスーパー、Tescoが8年頑張ったけどコンビニと自販機の文化には勝てなかったと日本から撤退。
http://www.guardian.co.uk/business/2011/aug/31/tesco-japan-pull-out-philip-clarke?CMP=EMCGT_010911&
2011.09.01 / Top↑
8月8日に
メトロやバスに乗れない障害者には個別シャトルで平等なアクセスを保障(ワシントンD.C.)
エントリーで紹介したパラ・トランジットの、ちょっと気になる続報。

運転手らが13時間ものシフトを強いられて
利用者、運転手、双方の安全が脅かされていると訴え、
約800人のパラ・トランジットの運転手の労働組合が
Metroからパラ・トランジット事業を請け負っているMV Transportationオフィス前でデモ。

米国での商業交通機関の運転手の勤務時間の規制は、
乗り物の重さや座席数によって決まっているため、
MVはミニバスなどから座席を外すことで規制を逃れ
長時間勤務を強いている、と組合側は主張。

MV側は、座席を外したのは大きな車いすの利用者を乗せるためだ、と主張。

MV TransportationはMetroと5億4000万ドル相当の7年半契約を結んでおり、
10社の下請けを使ってパラ・トランジットを運行、
ワシントン地区で一日7000人以上の利用者にサービスを提供している。

Drivers for disabled protest over work shifts
WP, August 30, 2011


この規制逃れのための座席外し問題は組合側は6月から問題にしており、
その際にWashington Examiner紙が取り上げた記事はこちら。

8日の記事を某MLに投稿した際に、
いろいろ教えてくださった方の情報の中に、
パラ・トランジットの運転手の中に性犯罪者が紛れ込んでいて
利用者が被害に遭ったケースが出て問題視され、
その後、問題解決の対応が行われたことが含まれていたのだけれど、

(ワシントンD.C.の“ドアからドアへ”型パラ・トランジット利用条件の中に、
「車から建物の入り口までの経路を遮るものがなく、ずっと見通せること」
「運転手は個人の住まいの中には足を踏み入れない」などがあった。
車から建物の入り口までの経路に植え込みなどがあり視界が遮られるような場合には
“ドアからドア”サービスは利用できず、最寄りの町角まで出て
“コーナーからコーナーまで”サービスを利用することになるらしい)

なにかしら、ここにも「孫請けのまた孫請け」とか中間搾取とか、
食い詰めそうな層をターゲットに過酷な労働条件を無理強いするような仕組みとか
そんな酷薄な社会の階層化のようなものが見え隠れしているような……?

もちろん、平等なアクセスを人権として保障する感覚と
「可能な限り」でよかろうとする感覚との違いは
7年半で5億4000万ドルもの費用をかけていることに
くっきりと際立っていることとは、また別の問題として。
2011.09.01 / Top↑
PAS合法化論者が「すべり坂」懸念を否定する際に根拠にしてきた2007年のMargaret Battinの論文(the Journal of Medical Ethics)というものがあるそうな。オランダと米国オレゴン州でのデータを調査し、「すべり坂」が起きているエビデンスはないと結論し、PASは安全だと主張するもの。それに対して、Euthanasia Prevention CoalitionのAlexander Schadenbergが、当ブログでも拾っている去年の新たなデータを取り上げてBattin論文を否定している。以下は、それを転載した National Right to Lifeのサイト。
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2011/08/margaret-battin-research-article-was-false-when-published-in-2007-and-remains-false-today/

【関連エントリー】
ベルギーにおける安楽死、自殺幇助の実態調査(2010/5/19)
英国の医療教育機関が自殺幇助合法化反対を確認(2010/7/7):ベルギーの実態調査情報あり
オランダで安楽死が増加し保健省が調査。緩和ケアの崩壊も(2010/6/21)
幇助自殺者が毎年1割ずつ増えるオランダで「安楽死クリニック」求める声(2010/8/12)
オレゴン州の尊厳死法、セーフガードは機能せず(2010/8/17)
「抗がん剤も放射線もダメだけど自殺幇助はOK」というOR州メディケアのガイドライン(2011/1/17)
WA州の尊厳死法、殺人の可能性あっても「問わず語らず」で(2010/9/16)
WA尊厳死法の「すべり坂」、エビデンスがまた1つ(2010/11/2)
「セーフガード崩れる尊厳死法の実態が明らかに」
「介護保険情報」2010年10月号 「世界の介護と医療の情報を読む」


MA州でC&Cが自殺幇助合法化に向けた住民投票の実現を目指してキャンペーンを始めたことを受け、CNNが秋にも医療キャスターのSanjay Guptaの特集を予定しているらしい。それに先だって長文記事を掲載し、OR州の尊厳死法を実現させた男性の同法による死などについて書いている。特記すべきこととして、2011年のギャラップ調査で米国人の45%がPASは道徳的に許容できると考えており、48%が道徳的に間違っていると考えている、との結果。
http://edition.cnn.com/2011/HEALTH/08/30/assisted.suicide.oregon/

NYT社説が、包括的なワクチンの安全性が確認されたとする先日の科学アカデミーの報告を受け、親は安心して子どもにワクチンを受けさせるべきである、と。:こういう社説が出てくること自体が、なんだか胡散臭い。
http://www.nytimes.com/2011/08/31/opinion/safety-report-on-vaccines.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha211

英国で、不況と福祉カットでホームレスに転落する中流層が急増。
http://www.guardian.co.uk/society/2011/aug/30/homelessness-middle-class-crisis-study?CMP=EMCGT_310811&

米国の新生児死亡率は低い順で41位。1990年の29位から転落。世界全体では下がっているのだけど。:もしかして治療を“無益”として「死なせている」新生児が増えているから、とか……?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/233575.php

薬局の処方薬に十分な警告情報が盛り込まれていないため、多くの米国人は自分が飲んでいる薬の効果や副作用リスクについて正しく理解していない、との消費者団体の調査。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/consumer-reports-pharmacies-dont-always-provide-required-drug-warnings/2011/07/18/gIQAdIminJ_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

朝日新聞電子版に「長寿世界一の日本に警鐘 英医学誌、喫煙・自殺増加懸念」。ランセットが日本の保健医療に関する特集を組む。その中で、渋谷健司東大教授、武見敬三日本国際交流センターシニアフェローらが調査報告。
http://www.asahi.com/science/update/0831/TKY201108310198.html

上記論文に関するGuardianの記事。「なぜ日本人は長生きなのか?」。簡単に言えば、格差のない社会だったことがたぶん一番大きな要因? でも、格差は広がっているから警鐘?
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/30/japan-life-expectancy-factors?CMP=EMCGT_310811&
2011.09.01 / Top↑
2006年の記事が、なぜか今、
Guardianのサイトで最も読まれている記事の1つに挙げられている。

記事タイトルは「再生」。

世界中で、事故や脳卒中で永続的植物状態と診断された人たちが
ごく一般的な睡眠薬の成分であるzolpidemを服用することで
俄かに目覚め、2時間ちょっとの間、意識が清明になる……という現象が報告されている。

これまで不可逆的に損傷され「死んだ」とされてきた脳細胞が
実際には機能を眠らせていただけである可能性、回復の可能性を示唆し、
永続的植物状態と診断される人の安楽死議論に大きな疑問を投げかける内容であり、

この記事が今なぜ多くの人に読まれているのかについても
おおいに興味をそそられるところです。


もともとは、南アフリカで
交通事故から植物状態になったLouis Viljoenさん(24)が
時々手で苦しそうにシーツを掴む動きをするのを見た看護師が
不快感があるのではないかと考え、睡眠薬の処方を医師に提案したのが発端。
母親が飲ませたところ、25分後に「ン――」という声を出し始めた、という。

そして母親の方を向き、名前を呼ぶとYesと答えた。
「ハローって言って」と呼びかけると「ハロー、ママ」と。

1994年のことだった。
以来、Louisさんは7年間、毎日zolpidemを飲んでいる。

鎮静効果があることから(ここのところ私にはよく分かりません)
2時間15分程度の効果が切れるたびに飲むわけにはいかないが、
長く眠りこんでいたLouisさんの脳の回路が生き返り、機能は改善し続けている、という。

この記事の著者は実際にLouisさんを訪ねて取材している。

Louisさんがzolpidemを飲む場面では、
薬を飲む前は意識がなく、顔の半分もだらんと弛緩し、片腕がピクついていた。
薬を飲ませた9分後、顔に急激に赤みがさして微笑み、笑い声を上げ、10分後には質問し始めていた。
2分後、腕のピクつきが弱まり、顔のマヒも収まる。
15分後には母親に腕を伸ばしてハグし、冗談を交わす。

記者の質問に、薬を飲む前と後とで自分の意識状態は全く変わっていない、とも答えた。

この偶然の発見をした主治医は GP の Wally Nel 医師。
Louisさんの後、Nel医師は150人にzolpidemを使い、
約60%の患者で改善がみられたという。

そのメカニズムはまだ説明も解明もできないが、
Nel医師と研究をしている放射線医療の専門家、Ralf Clauss医師は
これまでは死んで回復不能と考えられていた脳細胞が
実際は眠っていただけだったのでは、と推測。

また、長期に機能が眠っていたことで
Gabaという物質に反応する脳細胞のレセプターが何らかの変容を起こし
通常とは反対方向に、過敏に反応するようになったのでは、との仮説を立てている。

特に運動機能、視覚、言語と聴覚をつかさどる左脳で
即座の回復が見られる、とのこと。同医師は今後、
スキャンなどを通じて科学的に解明していきたい、と。

2人はNeuroRehabilitation 誌と the New England Journal of Medicineとに
(記事掲載の06年9月より)数ヶ月前に論文を掲載したばかり。

この論文をきっかけに家族が Nel医師にコンタクトを取り、意識を回復したのが
南アフリカ、KimberleyのRiaan Boltonさん(23)。

著者はBoltonさんの予薬の場面も取材している。
Louisさんの時と同じく、顔にさっと赤みがさして
目に輝きが宿り、数分の内に目の焦点が合ってきたという。
依然として脳障害は残っているが、
指示に従うことができ、頭の動きでyes-noを表現し、
ストローで飲み物を飲み、笑い、時にはハローと言う。

薬を飲む前のBoltonさんの意識状態は
グラスゴー・スケールで6だったという。
それが薬を飲んで10分後には9まで改善する。

ReGen Therapeuticsという英国の企業が
南アフリカでの治験に資金を提供しているが、
そのトップ Percy Lomaxは、Nel医師の患者のうち、
特に脳損傷が軽度の患者で回復が目覚ましいと言い、

zolpidemの脳損傷患者への適用には43億ドル規模のマーケットが見込まれることから、
より副作用の少ない有効処方量を掴み、さらに新世代の
よりターゲットを絞った新薬の開発を考えている。

著者は上記の2人以外にも
低酸素脳症による脳障害から重い身体障害を負い
立つこともしゃべることもできなくなっていたMiss Xも取材。
Nel医師が処方した薬で10分後には顔のマヒが改善し、
更に数分後には立ちあがって背を伸ばし、手を組むことが出来た。

文字板を使って著者の質問にも答え、
やがてNel医師の名前を大声で呼ぶと、同医師をハグした。

その他、Wynand Claasenさん(22)や Heidi Grevenさん(21)
Paul Rasさん(69)、Theo van Rensburgさん(43)、
それからスイスで事故に遭ったJanli de Kochさん(22)など。

1969年に神経科医 Oliver Sacksが L-Dopaで原因不明の眠り病から患者をよみがえらせた実話は
1990年に映画化(「レナードの朝」)されたが、

zolpidemはSacksの事例と異なって
元に戻ってしまうことなく効果を持続させられるのでは、と期待されている。

再生は米国でも起こっており、
1998年にテキサスで事故で水に落ちて低酸素脳症となった
George Melendezさん(31)は医師から「医学的には死んでいる」と言われ、
数週間後にさらに脳卒中を起こした時には、「3週間で死ぬだろうし、
2度と意識が戻ることはない」と言われた。

しかし生き延びた息子が通院時のホテルでうめき声を上げ続けるので
母親が睡眠薬を飲ませたところ、目を覚ましてキョロキョロした、という。

名前を呼ぶと、What? と返事をし、
2時間に渡って両親の質問のすべてに答えた。

Reborn
The Guardian, September 12, 2006

          ------

zolpidemのWikipediaはこちら

最後のResearchの項目に以下のように書かれている。

Zolpidem may provide short-lasting but effective improvement in symptoms of aphasia present in some survivors of stroke. The mechanism for improvement in these cases remains unexplained and is the focus of current research by several groups, to explain how a drug which acts as a hypnotic-sedative in people with normal brain function, can paradoxically increase speech ability in people recovering from severe brain injury. Use of zolpidem for this application remains experimental at this time, and is not officially approved by medical regulatory agencies.




ReGen社のzolpidemプロジェクトに関するサイトはこちら

このサイトによると、その後Clauss医師は英国に渡り、
ReGenの医師とタグを組むと同時に、Nel医師と共に
Sciencom Ltd. を立ち上げてzalpidemの新たな用法での国際特許を申請。

南アフリカでは承認されたものの、
その他の国ではまだ認められていない。

2007年、2009年と、研究成果を発表。

低量処方で脳卒中の後遺症患者にグローバルなマーケットのポテンシャルがあると説いて
研究のパートナー企業を募っている。


これまで、脳死・植物状態からの回復事例として
当ブログが拾っているニュースを以下に ↓

【米国:リリーさん】
植物状態から回復した女性(2007年の事件)

【米国:ダンラップさん】
脳死判定後に臓器摘出準備段階で意識を回復した米人男性のニュース(再掲)(2009/7/30)

【ベルギー:ホウベン?Houbenさん】
23年間“植物状態”とされた男性が「叫んでいたのに」(ベルギー)(2009/11/24)
「なぜロックトイン症候群が植物状態と誤診されてしまうのか」を語るリハ医(2009/11/25)

【日本:加藤さん】
「植物状態にもなれない」から生還した医師の症例は報告されるか?(2011/1/19)

【米国:ゴッシオウ? Gossiauxさん】
事故で視力を失った聴覚障害者が「指示に反応しない」からリハビリの対象外……というアセスメントの不思議(2011/2/6)

【オーストラリア:Cruzさん】
またも“脳死”からの回復事例(豪)(2011/5/13)

【その他、関連エントリー】
「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)
「脳死」概念は医学的には誤りだとNorman Fost(2009/6/8)
2011.09.01 / Top↑
1998年、日本でのドクター・キリコ事件。インターネットでの自殺幇助。「安楽死狂会」。
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/knight9/doctor.htm

Bill Gatesは米国の教育のデジタル化を狙っているけれど、世論調査では、オンライン授業が従来の授業形態と効果が変わらないと考える人は29%に過ぎない。
http://vator.tv/news/2011-08-29-pew-public-still-skeptical-about-online-learning

【関連エントリー】
ゲイツ財団の米国公教育コントロール 1(2011/5/2)
ゲイツ財団の米国公教育コントロール 2(2011/5/2)
2011年5月23日の補遺
2011年8月9日の補遺
2011年8月10日の補遺


NYT社説。人工妊娠中絶を保険の対象外とする、いくつかの州の動きに、女性の健康と権利を危うくするものだ、との指摘。Targeting Women:State efforts to end insurance coverage for abortions endanger women’s health and rights.

英国でも人工中絶を考えている女性にはチャリティによるカウンセリングを義務付けようとする政府の動きに、時代が25年巻き戻される、との指摘。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/29/abortion-counselling-rules-shakeup-gps?CMP=EMCGT_300811&

「ガン研究の黄金時代」で、大腸ガンと子宮がんでとりわけ侵襲度の高い治療が多く使われ始めていることについて、効果のエビデンスを疑問視するOp-Ed。ガン治療の外科手術はやればやるほどいいとは言えない、と。
http://www.nytimes.com/2011/08/30/opinion/the-annals-of-extreme-surgery.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha212

米国のバフェット氏、フランスの富裕層に続いて、ドイツでも富裕層にもっと税金を、との声。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/29/tax-us-more-say-wealthy-europeans?CMP=EMCGT_300811&

中国の有名な芸術家が雑誌で中国政府は国民の基本的な権利を尊重していない、と発言。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/29/ai-weiwei-attacks-injustices-china?CMP=EMCGT_300811&

ネットのSNSと携帯での友達づきあいに何時間も費やし「ケイタイを手放すくらいなら、腎臓を手放す方がマシ」という若者たち。:そこに比喩として、こんなにも安易に腎臓提供が持ち出されることに、ぎくりとする。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2010/jul/16/teenagers-mobiles-facebook-social-networking?CMP=EMCGT_300811&

いい年して戦闘ゲームにハマり、妻子から大学の英語の教授の仕事から何もかも失ってしまった男性の体験談。
http://www.guardian.co.uk/technology/2011/aug/29/world-of-warcraft-video-game-addict?CMP=EMCGT_300811&

米国小児科学会がボクシングは子どもにやらせるスポーツとしては望ましくない、と。:Wiiスポーツをもうずいぶん長いこと楽しんでいるけれど、サンドバッグを殴るトレーニングはともかく、キャラクター相手に殴り合うボクシング・ゲームだけはどうしてもやる気になれない。
http://www.guardian.co.uk/world/2011/aug/29/tax-us-more-say-wealthy-europeans?CMP=EMCGT_300811
2011.09.01 / Top↑