送って下さった方があって、
Bad Clipple さんが2月4日のブログエントリーで紹介していた
Hastings Center ReportのAshley事件関連論文は以前から手元にあり、
読んでもいたのですが、なかなか頭の整理が出来ずにいました。
Bad Clipple さんが2月4日のブログエントリーで紹介していた
Hastings Center ReportのAshley事件関連論文は以前から手元にあり、
読んでもいたのですが、なかなか頭の整理が出来ずにいました。
でも、そろそろ、まずは3本のうちの1本から。
2年ほど前というので“Ashley療法”論争の直後のことだと思われますが、
ある生命倫理カンファレンスでAshleyケースに関わった医師が講演した際に
聴衆の中から「この介入は自然に逆らうものである。したがって間違っている」との反論が出て
ある生命倫理カンファレンスでAshleyケースに関わった医師が講演した際に
聴衆の中から「この介入は自然に逆らうものである。したがって間違っている」との反論が出て
Diekema医師と思われるその講演者が
「そうは思わない」と切って捨てる場面があったとのこと。
「そうは思わない」と切って捨てる場面があったとのこと。
著者のKaebnickはこの「自然に反するから間違っている」という発言を
冒頭から“バカな反論”と形容しており、
冒頭から“バカな反論”と形容しており、
「自然」という概念の複雑さや曖昧さが理解されていない、
また自然であるかどうかが医療行為が道徳的に正しいかどうかと重なるわけではない、と
「自然に反するから成長抑制他の介入は間違っている」という批判を否定するのですが、
また自然であるかどうかが医療行為が道徳的に正しいかどうかと重なるわけではない、と
「自然に反するから成長抑制他の介入は間違っている」という批判を否定するのですが、
で、自分自身はどう思うかという話に進んで
後半にこの人が書いていることは
後半にこの人が書いていることは
トランスヒューマニストたちが主張しているほど
なんでもかんでも自己選択で身体に手を加えていいとは思わない。
例えば、わざわざ愛とか社会性を排除した子どもを作ろうとすることは
人であることの本質に反する、つまり人間性に反することだからしてはならない。
しかし、それら基本的な人間性に大きく影響しない範囲で
人間の知能や記憶を強化したり長生きを目指すことはアリなのでは?
認知能力のある子どもなら
やがて自分自身の自然観、人間観を持つのだから
それまで待ってやるべきだけれども
認知能力がなく道徳的な価値観を持ち得ない子どもなら
親が決めればいいことだろう。
自分がAshleyの親の立場だったとしても
成長抑制をするとは思えないが
現実にその立場にないし
その大変さは想像もつかないから
自分にはどうしろと口を出せない。
少なくとも、当の親がやったことを批判はしない。
なんでもかんでも自己選択で身体に手を加えていいとは思わない。
例えば、わざわざ愛とか社会性を排除した子どもを作ろうとすることは
人であることの本質に反する、つまり人間性に反することだからしてはならない。
しかし、それら基本的な人間性に大きく影響しない範囲で
人間の知能や記憶を強化したり長生きを目指すことはアリなのでは?
認知能力のある子どもなら
やがて自分自身の自然観、人間観を持つのだから
それまで待ってやるべきだけれども
認知能力がなく道徳的な価値観を持ち得ない子どもなら
親が決めればいいことだろう。
自分がAshleyの親の立場だったとしても
成長抑制をするとは思えないが
現実にその立場にないし
その大変さは想像もつかないから
自分にはどうしろと口を出せない。
少なくとも、当の親がやったことを批判はしない。
最後の部分は
なにもHastings Center Reportのおエラい編者でなくても
論争当時インターネットに連日書き込まれた多くの人々の感想とまったく同じであって
なにもHastings Center Reportのおエラい編者でなくても
論争当時インターネットに連日書き込まれた多くの人々の感想とまったく同じであって
それが言えるのだったら
「障害のある子どもを殺す親にだって、同じことが言えるぞ」と私は思う。
「障害のある子どもを殺す親にだって、同じことが言えるぞ」と私は思う。
それから、この人が
人間の身体に科学とテクノで手を加えるのが許される範囲を考える際に
基準にしている「人間性」とか「基本的な人間の特性」といった概念にだって
この人が前半で「自然」について言ったことはそのまま当てはまるんじゃないのか、とも。
人間の身体に科学とテクノで手を加えるのが許される範囲を考える際に
基準にしている「人間性」とか「基本的な人間の特性」といった概念にだって
この人が前半で「自然」について言ったことはそのまま当てはまるんじゃないのか、とも。
もっとも、Diekemaみたいな詭弁の達人を相手に、
倫理カンファレンスで発言しようかというほどの人が
反論するなら、もうちょっと丁寧に突っ込まないと……とは思うから
それって単なる作戦ミスの問題に過ぎないような……。
倫理カンファレンスで発言しようかというほどの人が
反論するなら、もうちょっと丁寧に突っ込まないと……とは思うから
それって単なる作戦ミスの問題に過ぎないような……。
「自然に反する」という批判に対しては
そんなことを言っていたら最初から医療なんてなかったし、
病気の人間はそのまま死ぬことになっていたんだぞ、
医療そのものが自然に逆らう試みじゃないか、と
Ashley父はブログで反論していますし、
医師らの反論も大体そんな線です。
そんなことを言っていたら最初から医療なんてなかったし、
病気の人間はそのまま死ぬことになっていたんだぞ、
医療そのものが自然に逆らう試みじゃないか、と
Ashley父はブログで反論していますし、
医師らの反論も大体そんな線です。
でも、Ashleyに行われた過激な医療に関して
多くの人が「自然に反する」という言葉で表現しているのは
本当は「人の尊厳が侵されてしまっていることへの漠然とした警戒感」であって、
「人間には理屈抜きに超えてはならない一線というものがある、
あなたたちは、そこを超えてしまったのではないのか」という抵抗感を
そういう言葉で表しているんじゃないのか、と私には思える。
多くの人が「自然に反する」という言葉で表現しているのは
本当は「人の尊厳が侵されてしまっていることへの漠然とした警戒感」であって、
「人間には理屈抜きに超えてはならない一線というものがある、
あなたたちは、そこを超えてしまったのではないのか」という抵抗感を
そういう言葉で表しているんじゃないのか、と私には思える。
だから、言葉足らずであるにしても、
この著者が言うほど「バカな」発言ではないと思う。
この著者が言うほど「バカな」発言ではないと思う。
それに、仮にも論文で、
そういう感情的な表現でもって他者の意見を一刀両断にしてしまう2チャンネル的尊大さ、
権威ある生命倫理学の専門誌の編者として、いかがなものか。
そういう感情的な表現でもって他者の意見を一刀両断にしてしまう2チャンネル的尊大さ、
権威ある生命倫理学の専門誌の編者として、いかがなものか。
2009.02.11 / Top↑
つくづく、この人に体外受精で妊娠させた医師は、どうかしている、と思う。
あの8つ子の母親Nadya Sulemanさんには、すでに6人の子どもがいて、
すべて体外受精による妊娠だったことは既に報じられたとおりですが、
すべて体外受精による妊娠だったことは既に報じられたとおりですが、
今度は、
Sulemanさん自身がかつて技術職として勤めていた精神病院で
暴動が起きた際に腰を痛めて退職し、
これまでに16万8000ドルの障害者手当てを受給していることが判明。
Sulemanさん自身がかつて技術職として勤めていた精神病院で
暴動が起きた際に腰を痛めて退職し、
これまでに16万8000ドルの障害者手当てを受給していることが判明。
6人の子どもを産んだのは退職後だとのこと。
うつ病や自殺念慮を診断されたこともあるとか。
そこでメディアが
「働けないくらいの障害があるのに、
6人の子どもを産むのには障害にはならなかったのか」とか
「その障害者手当てを使ってIVFを何度もやったわけか」と突っ込んでいる模様。
「働けないくらいの障害があるのに、
6人の子どもを産むのには障害にはならなかったのか」とか
「その障害者手当てを使ってIVFを何度もやったわけか」と突っ込んでいる模様。
また8つ子以前に生まれていた6人のうち3人に障害があることも
新たに判明。
(どういう障害かは不明)
新たに判明。
(どういう障害かは不明)
8つ子の妊娠前から6人の子どもを養いきれずに
食糧支援フードスタンプの支給を受け、
連邦政府から生活資金の支援も受けている。
食糧支援フードスタンプの支給を受け、
連邦政府から生活資金の支援も受けている。
障害のある3人の子どもへの支援も別途受給。
(いくら問題ありとはいえ、
ここまでプライバシーを暴いていいのかなという疑問もありますが)
ここまでプライバシーを暴いていいのかなという疑問もありますが)
メディアははっきり書いていないけれど、
子どもへの福祉手当を狙って、もっと子どもを産みたかったのでは、との
憶測も出ているようなニュアンスも。
子どもへの福祉手当を狙って、もっと子どもを産みたかったのでは、との
憶測も出ているようなニュアンスも。
当人は病院から退院するとその足でテレビ番組に出演。
「お金なんてどうせただの紙切れ」と発言するなど、
受け取っているお金が福祉支給であることを認めず、
現在在籍している大学院でカウンセリングの修士号を取れれば
14人の子どもはちゃんと養っていけると豪語。
「お金なんてどうせただの紙切れ」と発言するなど、
受け取っているお金が福祉支給であることを認めず、
現在在籍している大学院でカウンセリングの修士号を取れれば
14人の子どもはちゃんと養っていけると豪語。
「私なりに、私の信じるところに従って、ベストを尽くします。
神さまがそれなりに助けてくださると心から信じていますから」
神さまがそれなりに助けてくださると心から信じていますから」
Beverly Hillsのクリニックだったようですが、
HPで「この世界の権威」を謳っている割りに
着床率が低くて、それだけ子宮に入れる受精卵の数が多いのだとか。
HPで「この世界の権威」を謳っている割りに
着床率が低くて、それだけ子宮に入れる受精卵の数が多いのだとか。
この人の場合は
無事に8つ子を産ませた病院が自分たちの手柄を自賛して
賑々しく記者会見したものだから表面化しましたが、
無事に8つ子を産ませた病院が自分たちの手柄を自賛して
賑々しく記者会見したものだから表面化しましたが、
こういう倫理的には疑わしい生殖補助医療も
案外あちこちのクリニックで行われているのかも……。
案外あちこちのクリニックで行われているのかも……。
「それもこれも患者様の自己選択でございますので」と揉み手をしつつね。
【追記】
NY times も、その後、社説でこの問題を取り上げています。
ガイドラインはあっても法的強制力がないことが問題。
保険が利かない場合が多い生殖補助医療では
なるべく妊娠の成功率を上げたい女性が沢山の受精卵を戻してもらいたいと希望する傾向があるが、
多胎児には障害を含めて健康上の問題が生じやすい。
なるべく妊娠の成功率を上げたい女性が沢山の受精卵を戻してもらいたいと希望する傾向があるが、
多胎児には障害を含めて健康上の問題が生じやすい。
2009.02.11 / Top↑
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