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障害者への虐待を研究しているカナダ Alberta大学のSobsey教授のブログ icad の
1月29日のエントリーによると、

インドのKerala州で
知的障害のある10代の息子3人の医療費で生活が立ち行かないとして、
父親が地方自治体の長に対して3人への慈悲殺の許可を求めた、と
Times of India が報じたとのこと。

Kerala州では
法律改正委員会の報告書が慈悲殺を認めるべきだとの勧告を出したばかりで

Sobsey氏は
この父親の行動もこのような動向と無関係ではあるまい、と。

自治体では
3人が必要な治療を受けられるように全力を尽くす、
そのために様々なNGOと協議を始めた、と。

Father seeks “mercy” killing
icad, January 29, 2009


しかし、これは、どう考えても
息子たちへの”慈悲”ではなく親への”慈悲”という文脈であって、

ただ、インドの貧困層のただ事でない貧困ぶりは親の責任とも言えないかもしれず、

そういう国でこれから慈悲殺が認められていくのだとすれば、
それは地方自治体や国家のための”慈悲”殺……ということになるのでは?
2009.02.16 / Top↑
米国では昨年夏に高等教育機会法が議会を通過し
(the Higher Education Opportunity Act)
12月には百万ドル単位の連邦政府からの助成金が決まったことにより、

知的障害者の大学教育へのアクセスを支援するプログラムが全米で急増中で
現在150のプログラムが存在するとのこと。

College Is Possible for Students With Intellectual Disabilities
New support programs and federal funds can help students with intellectual disabilities
The U.S. News, February 13, 2009


マサチューセッツ大学ボストン校 Institute for Community Inclusion では
この助成金を使って全国初の知的障害者の高等教育推進に向けたセンターを設立し
同時に研究協議会を作る予定とのこと。

上記リンクから同大学のICIのサイトを覗いてみたところ、
今年の1月に以下の研究結果がまとめられており、


高校卒業後の高等教育に参加した知的障害者の方が
そうでない場合に比べて職業訓練後の就労に繋がる確率が26%高い、
週の収入では73%も高いことなどが明らかに。

      ―――――

MNDの記事の中でモデルケースとして紹介されている
Massachusetts Bay Community College
The Inclusive Concurrent Enrollment Program では、

知的障害のある学生は1セメスターに1ないし2の授業を取り、
週に2,3日大学に通う。

授業は完全なインクルーシブで、知的障害のある学生には個別の支援が提供される。

背景として、米国のIDEA(障害児・者教育法)では
21歳または22歳までの個別プランによる教育に資金が提供されることも。

      ―――――

高校卒業後の高等教育を望む知的障害者に情報提供を行っているサイト、ThinkCollege. Netはこちら

      ―――――


日本でも、各種取り組みが始まりつつあるようです。

障害者問題研究 第35巻第1号(通巻129号)
特集 大学における特別な教育ニーズへの対応
2007年5月25日発行
2009.02.16 / Top↑
Wake Forest University Baptist Medical Centerの研究者が
2001年の障害児・病児のニーズ全国調査のデータを分析したところ、

障害児・病児の介護者の24%で必要なレスパイトのニーズが満たされていないこと、
民間の医療保険の人では公的な医療保険の人ほどレスパイトが得られていないこと、
特に機能が大きく低下している子どもの介護者でその傾向が顕著であること
などが分かった。

(ここで「障害児・病児」と訳している部分は
原語では「複雑な健康ニーズのある子どもたち」とされているものです)

米国小児科学会も
障害児・病児の介護者のための支援システムが整備される必要があると推奨しているが、
この結果からすると、全米で20万世帯が
十分なレスパイトケアを受けることが出来ないでいる。

その理由としては、
「利用できるサービスがない・利用のための移動が難しい」が26%
「レスパイトケアが高価すぎる」が22%
「医療上の問題」が13%

その他に、主任研究者は
介護者自身がレスパイトケアのニーズを表現しないことに注目している。
そうした支援を求めることは子どもを「棄てる」ことだと感じていたり、
レスパイトケアを支援サービスと認識していなかったりするため。

あまり注目されることのない問題だが、今後は、
障害児・病児のケアを巡る医療費・社会福祉のコスト削減に
レスパイトケアの提供がどういう影響を及ぼすか調査する必要があるだろう、と。

Caregivers Not Receiving The Help They Need
The Medical News Today, February 13, 2009


日本でも、障害児の親をただ「親」とのみ捉えるのではなく、
きちんと「介護者」と位置づけて、”親の愛情”神話から脱却し
レスパイトケアついても十分な調査・整備をしてもらいたいものです。

特に親が自分のためのサービスを利用することに関しては
社会の側が特に母親に対して心理的な規制をかけている面が大きいので、

その規制を解いていく努力が
社会の側に向けても、また介護者である親に向けても、
行われてほしいと強く願いつつ、

当ブログではいくつかのエントリーを書いてきました。




限界を迎えていながらも、なかなか家庭の外に支援を求めにくい親の複雑な気持ちを
少しでも分かってもらいたいと書いたものが以下のエントリーです。




そうした親の立場から望みたい支援のあり方を考えてみたものが以下のエントリー。




また、仕事で出会った海外の介護者支援の考え方を紹介したエントリーがこちら。

2009.02.16 / Top↑