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……と、まぁ、表題どおりの内容のニュースで
WPのタイトルがうまいこと言っていて
「8つ子の母、倫理論争まで産む」

6人の子どもの中には双子もいるというので
もしかしたら、以前にも生殖補助医療で生んでいる可能性もあるということでしょうか。

同居している母親は

「性格が悪いわけじゃないんですけど、
娘には子どもへの執着があって(obsessed)。
子どもが大好きで、扱いも上手いんですよ。
今度ばかりはやりすぎましたけど」

どうしても「もう1人女の子がほしかった」ので
子宮に戻す胚の数を増やしてもらったのだとか。

先日にぎにぎしく記者会見したカイザー・パーマネンテ病院では
産ませただけで妊娠の過程には関っていない、と逃げ腰。

母親自身はそのあたりのことを語っていないものの、

米国生殖補助医療学会からは
8つ子を妊娠させたのも産ませたのも
ガイドライン違反だとの批判がでている。

Octuplet Mother Also Gives Girth to Ethical Debate
The Washington Post, February 4, 2009


この女性に必要なのは、生殖補助医療ではなく精神科医によるケアだったのでは――?
2009.02.04 / Top↑
米国の障害者アドボケイト Arcのマサチューセッツ州支部が
知的・発達障害者をきちんと診てくれる医師がいないために
成人しても小児科にかからざるを得ない実態を調査し、
報告書にまとめている。

本来なら内科医にかかるべき疾患のある知的障害者が
内科医が障害者を診たがらないために
障害に関する知識と理解がある子どものころの主治医、
小児科医に引き続いて診てもらっている。

小児科医のほうも自分の患者を見捨てるわけにいかないため
患者が成人した後も診続けざるを得ない。

ざっと検索してみたところではヒットしないのですが、
報告書のタイトルは以下。

Left Out in the Cold: Health Care Experiences of Adults with Intellectual and Developmental Disabilities in Massachusetts

報告書は
医学教育の中に障害者への配慮が盛り込まれることや
障害者の診察には余分にかかる時間や手間に対して
医療保険が支払いを検討することを提言している。

Seeking grown-up care
MD’s unease found to leave many disabled adults with pediatricians
The Boston Globe, February 2, 2009

専門の小児科医(それから重心施設の看護師)でなければ
重症児医療のことは本当に何も分かっていない──。

これは私も、娘の腸ねん転手術時の総合病院での外科入院で痛感した点です。

外科医にも外科病棟の看護スタッフにも
重症児に対する医療知識も経験もなにもなかったために
抗けいれん薬の飲ませ方がデタラメだったり
手術後に、けいれんが続いて重積が危ぶまれる状態になっているというのに
何も対応してもらえなかったり、

その他、いちいちにおいて
本来なら慎重にすべき判断が粗雑に、
本来なら大胆にすべき判断が臆病に
……とすべての対応が逆に回って

娘はそのために、
本来なら受けなくても良いはずの苦痛や不快を与えられ
無用な命の危険に晒されたし、残存機能も大きく損なわれました。

その際、娘の医療について一番よく分かっている施設のドクターとナースは
病院との関係が悪化しかねないほどのギリギリまで
母親の私と一緒になって訴えてくれたのですが、

施設と病院との力関係と縄張り・垣根、
総合病院の中でも外科と小児科との力関係と縄張り・垣根は
事実上、患者の利益を平気で置き去りにしてしまいました。

その体験から振り返ると
確かにArcの主張するように
障害への理解と配慮を広く医学教育に盛り込んでもらうことは必要だけれど、

それぞれの患者の障害特性に応じた医療的判断というものは
様々に専門分化される一方の医師の個人レベルの「配慮」だけで可能になるような
そんな簡単なものではないのでは――?

障害児・者にかかわらず、恐らく高齢者の医療においても
もしかしたら慢性疾患のあるすべての患者のその疾患以外の医療においても

医療は医師のプライドや業績のためにあるものではなく
あくまでも患者のためにあるものだという基本を再認識してもらって、

その共通認識に立ち、
「自分にも知らないことがある。知っている人から教えてもらわねば判断できない」という謙虚さと
「この目の前の患者の目の前の病状に対して何が最善なのか」という視点を共有しつつ

医師らの専門領域ごとの垣根と(ヒエラルキーも)
病院間、病院と施設間の垣根を(ヒエラルキーも)
もう少し解消して、情報共有と協働の体制を考えてもらわないと、

いつかカナダの障害当事者であるジャーナリストHelen Hendersonが書いていたように
医療職の無知が障害者を殺しかねないのでは?

もう1つ、もうちょっと最近の関連エントリーでは
医療の無関心が助かるはずの知的障害者を死なせているという報告もあった。
2009.02.04 / Top↑
現在、米国でOTやSTなど自閉症の治療に関して
保険会社に支払いを義務付ける法律を整備しているのは27の州とワシントンDC。

ただし上限年齢は州によって様々で
Marylandでは19歳まで。
DCは21歳まで。

まだ法整備されていないVirginia州に住み
3人の子どものうち2人が自閉症だという一家の場合
その2人の治療費に2年間で5万ドルがかかったとのこと。

父親が業績のよいハイテク企業の社長さんだから出せるけれども、
それでも、子どもたちに必要なだけのセラピーは受けさせられていない、と。

米国精神衛生研究所のInsel 所長によると、
自閉症児1人に一生の間にかかる治療と介助のコストは300万ドル。

早期介入には年間6~8万ドル。
行動療法のセラピストのチャージは1時間180㌦に上る場合も。

で、Virginia州の自閉症児の親たちは
法整備を求めて議会に働きかけているのだけれど、

この経済危機の中、それでなくても保険会社は給付対象を狭めているというのに
政府からあれもこれも義務付けられることに反発しきりで
The National Federation of Independent Businessesでは
自閉症治療のコストを引き受けさせられたら廃業だと。

Seeking Help for Autistic Kids
The Washington Post, February 2, 2009


インターネットの新聞記事を開くと、
Googleが勝手に引っ張ってくる広告が片隅にずらっと並ぶのですが、

上記記事の場合、一番上に来ていたのは
キレーション治療薬のネット販売だった……。




        
2009.02.04 / Top↑