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英国政府は去る2月3日に「全国認知症戦略」を発表しています。

英国保健省の当該サイトはこちら

認知症の定義に始まり、
今後5年間に実行する17の目標と、
この戦略によって認知症患者と家族介護者(以下、介護者)にどのような影響があるか
アウトカム予測までを述べたもの。

戦略が立てられた背景には、
現在、英国には認知症患者が70万人いるが、
30年後には140万人に急増すると予想され、
それにつれて認知症患者にかかるコストも
現在の170億ポンドから500億ポンドに急増するとの試算。

「今、認知症の人々や介護者のQOLを改善するためにお金を使えば、
すべての関係者の状況を改善できるだけでなく将来のお金を節約することにもなる」
との判断から

「英国政府は認知症を全国的な優先事項と決定した」と戦略には書かれています。

戦略が
①認知症の正しい理解とスティグマの解消、②早期診断、③サービスの整備
という3つのステップによって実現を目指すのは
以下の17の目標。

1.認知症についての意識を高め、早めに支援を求めるよう促す。
2.質の高い早期診断、支援、治療が認知症の人にも介護者にも保障され、配慮ある説明が行われる。
3.認知症の人と介護者に質の高い情報が提供される。
4.診断後にケア、支援、アドバイスが容易に得られる。
5.ピア・サポートと学習のネットワークを組織的に整備する。
6.在宅患者のために地域での個別支援を改善する。
7.「介護者のためのニューディール」(介護者支援戦略)を改善する。
8.総合病院での認知症ケアの質を高める。
9.認知症の人に対する中間ケアを改善する。
10.認知症の人と介護者の支援のため、住宅支援、住宅関連サービス、テクノロジーとテレケアの可能性を模索する。
11.ケアホームにおける認知症ケアの質を高める。
12.認知症の人の終末期ケアを改善する。
13.認知症の人のため専門職の知識と技能を向上させる。
14.認知症戦略のため医療と介護が連携してニーズを把握し、それに応える。
15.認知症の人が可能な限り最善のケアを受けられるよう、医療・介護サービスの評価と規制を改善する。
16.認知症の原因と将来の治療の可能性について研究の進行状況を明らかにする。
17.この戦略の実行に向け、政府は地方自治体にアドバイスと支援を提供する。


英国の認知症戦略を読んでみたのを機に
日本の「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」の概要を読んでみた。

私は認知症についても関連医療や支援体制についても
たいした知識を持っているわけではないので、
エラソーなことを言える立場ではないのは承知しているのだけれど、

うわぁぁ、厚労省って、ここまで医療目線なのかぁ……。

真っ先に感じたのは
タイトルに謳われているほどには「生活」が視野に入っていないこと。

いかに「治療してやるか」という視点が柱にあって、
「そのためにはどういう施策が必要か」という話がほとんどを占め、

本人と家族支援については
「認知症ケアの標準化・高度化」と「相談・カウンセリング・紹介・交流会など」。

いつも思うことだけど「相談窓口」をいくら作ったって、
現実に支援サービスが存在しなければ何の役にも立たないのに
相変わらず「その先」が具体的に見えない「相談支援」。

特に介護者支援については、
本人へのケアを提供し改善することが
介護者への支援だとする従来の発想のままで、
介護者自身を支援しない限り介護殺人の防止はできないのに……と、いつも思う。

(英国では介護者には介護者自身のニーズにアセスメントが行われて、
介護者自身のための支援を受ける権利が認められています)

「認知症ケアの標準化・高度化」にしても、
いったい誰がケアを標準化・高度化する、または、できるというんだろう……。
(まさかロボット介護でケアを“高度化”したら“生活の質”が上がるなんて……?)

結局、日本のプロジェクトはやっぱり医療の「上から目線」のパターナリズムであり、
医療主体で書かれたものなのかなぁ……と感じてしまう。

慢性病や障害のある患者と家族にとっては、
その病気や障害と付き合いながら、
いかに日々を工夫して暮らしていくかということこそが大問題なんであって、
病気や障害を治すことを目標に掲げて日々を生きているわけじゃないんだけどなぁ……。

これは娘がお世話になってきた医療に感謝しつつ、同時に
その「上から目線」の不動の「分からなさ」「感度の鈍さ」に対して感じてきた不満で、

患者や家族自身こそが病気や障害と付き合いながら暮らしていく主体であり、
その主体が主体として力をつけて、自ら生活の中であれこれと工夫し
自分の病気や障害のエキスパートとして暮らしていくことが必要・重要なんだという
いわばエンパワメントの視点が医療には薄い。

それは同時に主体である患者と家族の権利に対する意識も薄いということで、
そこの違いが英国の目標2を始め全体の視点の違いに象徴されている。

日本のプロジェクトだって内容としてはほぼ同じことが盛り込まれているとしても、
「医療はこれだけのことをやるぞ」というのと
「患者と家族にはこれだけのものが保障されるべきである」というのとでは
視点がまるで違う。

その視点の違いから出てくるのが
「配慮ある説明」への意識の有無であり、
患者自身が自ら力をつけていくエンパワメントの発想の有無であり
患者と介護者の権利への視点の有無なんじゃないのかなぁ。

だから例えば英国でいえば15のような
「相手の権利によって自分たちの方が照らされる」などということには
意識が及びにくいんじゃないんだろうか。

ただの素人がエラソーなことを言って申し訳ないけど。
2009.04.05 / Top↑
「我々はみんな人間です。
私も人間です。
だから私もパーフェクトではありません。

特定のフライトで私が誰かを悲しい目に合わせたのだったら、
アイムソーリー。謝ります。

誰だって過ちを犯します。皆さんの首相だって同じです」

と、超特急の切り口上ながら、記者会見で謝罪。

事前の連絡がうまくいっていなかったらしくて
機内で自分が予め希望していたはずの食事を出せないと言われて腹を立て
23歳のキャビン・アテンダントを泣かせたんだとか。

去年の6月にも
あったかい食事を食べたいのにサンドイッチしかないことに
大いに機嫌を損ねたことがあったそうで。

Rudd sorry for air hostess blast
The Canberra Times, March 3, 2009

どーでもいいといえば、どーでもいいニュースで、
記事のリンクにある記者会見ビデオを見たら
冒頭の謝罪の言葉は、いっぱい言い訳をした後に、
いかにも開き直った「はい、もう、これでいいでしょ」的早口ではあるのだけど、

Biederman医師が製薬会社にブイブイいわしていたり
Ashlely父がシアトル子ども病院で
独善的ワガママで医師らの倫理観を強引にねじ伏せてたり……とまでいかなくても、

いわゆる“エラい人”が「自分はエラいのだ!」と自覚してしまうと
人を人とも思わない言動をとるというのは
たぶん、どこの分野でも誰の身近でもゴロゴロしている話なのに、

一国の首相のワガママがこうしてマスコミに漏れて、
こうして取り上げられて首相が謝る
(謝罪しなければならないところへ追い込まれる?)というのが

ちょっとチャーミングな話に思えたもので。
2009.04.05 / Top↑