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1970年代の半ばまで強制的不妊手術が行われていたことを知ったのは何年か前のことで
自分の思春期というのは、まだそんな時代だったのだ……と衝撃を受けた。

でも、「ついこの前」としか思えない1990年代にも
強制的不妊手術が行われていたなんて、先月まで知らなかった。

たまたま別件の検索で引っかかってきたサイトで知った時には、本当に驚愕した。

行われていたのはフジモリ政権下のペルー。
貧困対策の家族計画プロジェクトとして、先住民30万人以上が強制された。
不妊手術そのものが人権侵害なのだから、そのやり方も当然、人権を無視したもので
そのために死者もたくさん出ている。

驚くことに、このフジモリ政権の不妊手術キャンペーンは
米国から技術的、財政的支援を受けて行われたもので、
国連人口基金(UNFPA)にも支持されていた。
日本財団も約200万ドルを出資したという。

一度まとめておきたいと思っていた、この件を
今朝の新聞でペルーのフジモリ元大統領が
特殊部隊の民間人殺害で有罪判決を受けたニュースを機に。

ペルー先住民が強制された不妊手術の実態
フランソワーズ・バルテルミー特派員、Le Mond 2004年5月号
森亮子、斎藤かぐみ訳

フランスのLe Monde誌2004年5月号の記事の日本語訳。

この記事の冒頭、Le Mondeの編集部は
フジモリ政権下の最大のスキャンダルは特殊部隊による民間人殺害よりも、
優生施策による30万人以上の女性への強制不妊手術だと書いている。

UNFPAが支持していたことについては、こちらに。

Peru: UNFPA Supported Fujimori’s Forced Sterilization Campaigns
Population Research Institute, July 22, 2002


そういえば、最近こんな記事もあった。
英国で毎年500人もの女児に未だに女性器切除が行われているというのに
ただの1件も告発されていない、と。

Thousands of girls mutilated in Britain
The NHS is offering to reverse female circumcision amid concerns that there are 500 victims a year with no prosecutions
The Times, March 16, 2009


女性への差別、人種差別、障害者への差別により、
世の中の強いものたちの都合により
今でも弱い者の体は無理やりに侵襲されている──。


フジモリ政権下で抵抗運動を行ったフアン・マヌエル・ギジェン氏の言を
上記 Le Mondeの記事の日本語訳から以下に。

私の見解では、国際通貨基金(IMF)と世界銀行がペルーに押し付けた新自由主義政策と、フジモリが企てた家族計画プログラムの間には、密接な関係がある。

IMFは新たな融資と既存の債務の再交渉と引き換えに、保健衛生部門まで含めた民営化、外国資本への市場開放、それに人口増加の抑制を求めてきた。主眼は貧しい人々、そして非常に貧しい人々、つまり潜在的に『危険』な階層にある。こうして個人の権利、家族の権利、さらに広くは、社会の基本となる倫理的な原則が侵されるようになった。

これは、たった今、世界規模で進行していることなのでは──?
(詳細は「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫を)




その他、ペルーの強制不妊手術関連リンクをいくつか。



フジモリ政権下の不妊手術キャンペーン
古屋哲、アムネスティ・ニュースレター 2001年7月号

2009.04.09 / Top↑
Ivory Jacksonさん(77歳)は去年5月30日にナーシングホームのベッドで亡くなった。
アルツハイマー病を患っていたが、しかし彼の死因はその病気ではない。

Jacksonさんは居室のベッドで就寝中に、
50歳のルームメイトSolomon Owasanoyeにラジオで顔面を殴られたのだ。

通報を受けて警察が駆けつけた時、
犯人はナースステーションの横で手も服も靴も血だらけで座っていたという。
居室は天井まで血が飛び散っていた。

意識不明となったJacksonさんは
1ヶ月もたたないうちに収容先の病院で亡くなった。

何が暴行の引き金になったかは不明。
Jacksonさんのルームメイトには精神疾患があった──。




なぜ、そんなことが? と唖然とする話なのだけれど、
この記事によると、

過去数年間、ナーシングホームは若・中年の精神病患者の捨て場所と化している、とのこと。

その結果、虚弱な高齢者たちが
統合失調症やウツ病、双極性障害のある若くて体力のある入所者と生活をともにし、
時によってはその激しい怒り感情の捌け口にされる事件が起こっている、と。

The National Citizens’ Coalition for Nursing Home Reform の公共政策の責任者は
連邦政府と州政府のいずれもが
精神病患者に適切な医療と住居を提供する責任も
高齢者に安全な環境を提供する責任も果たしていない、
いま起こっている悲劇はその結果、と指摘する。

去年、重い精神病のある若・中年患者、約125000人が
米国のナーシングホームで暮らしていたという。

ナーシングホーム入所者に精神病患者が占める割合でいうと
2002年には入所者のうち6%だったものが
去年は9%に増加している。

本来、連邦法では、ナーシングホームが精神病の患者を受け入れることができるのは
ナーシングホームが提供するレベルの高いケアが必要だと州が認定した患者のみ。
スクリーニングの責任は州にある。

もちろんナーシングホームの入所者は
身体的な虐待を受けない権利を連邦法で保障されている。

しかし、60年代から劣悪な処遇や人権問題の指摘で精神病院の閉鎖が相次ぎ、
病院の精神科のベッドも不足したまま、
州によってはナーシングホームが受け皿になっているのが現実。

ナーシングホーム側にも、
最近の高齢者には健康で自立生活を送る人が増えたことに加えて
なるべく地域で暮らすように政府も施策誘導しているために
空きがちなベッドを埋めたい事情がある。

ナーシングホームが高齢者と精神病患者を両方受け入れてくれる方が
州にとっても経済効率がよいのがホンネ。

しかし、高齢者ケアの訓練しか受けていない職員には
精神病患者の問題行動への対応が難しく、離職の要因にもなっている。

ナーシングホームにできるのは唯一
911通報をして警察を呼ぶことだけ、ということも多い。

高齢者は終の棲家でおびえながら暮らすことを余儀なくされ、
精神病患者は手に負えなくなったら別施設にたらい回しにされたり、
時には追い出されたり。

精神病患者のアドボケイトは、
適切な治療と住居の提供があれば
アパートで暮らすことができるのに、と。

政府機関はいずれも統計を取っていないが、
Jacksonさんのような被害は既に一定数発生している。

2003年。
Connecticutで23歳の女性が
自分の住むナーシングホームに放火し16人が犠牲となった。
犯人は多発性硬化症、認知症とウツ病を患っていた。

2006年。
77歳の男性がルームメイトの69歳の男性に
風呂場のタオルかけのパイプで殴り殺された。
犯人は裁判を受ける能力を欠いていると判断された。

今年1月。
Chicago近くのElginのナーシングホームで
攻撃性を伴う双極性障害の21歳の男性が
同じナーシングホームに入所していた69歳の女性をレイプ。
犯人は凶暴な行動が記録されていたにもかかわらずナーシングホームに入所させられ、
性的欲求不満の状態だとスタッフが聞かされていたにも関わらず
きちんと監督されていなかった。

Jacksonさんの事件でナーシングホーム(営利)には
事件が防止できなかったとして$32500の罰金刑。

犯人は現在、州立の精神病院にいる。

          -------

もろもろの事情があるにせよ、なんで同室にしてしまえるのかが
何よりもこの話では理解を超えているし、

日本ですぐに同じことが起こるとも思えないのだけれど、

ただ、

障害者自立支援法でも平等とかサービス一元化など表向きだけきれいな理念で
実際はそれぞれの障害特性に応じた、きめ細かいサービスは
失われていく一方のような気がしている。

重症重複障害のある人も受け入れますと標榜する施設は多いけれど
実際に頼もうとすると体よく断られたり
親のほうも見学に行ってみると、環境からも職員のノウハウからも
とてもじゃないけど危なくて頼めないという話はよく耳にする。

入所はさせてはもらったけれど、
軽度な人の多い施設で他の人の迷惑になるからと、
ほとんど一日中部屋に閉じ込められている……という話もある。

今回の改正で「成人の施設で」と”児者一貫”方針を転換された重症重複障害者は
基本的には、これまで身障や知的障害のある人を専門にケアしてきた施設に行くことになるし
(これまでのケアの継続が保証されるよう付記はされているとしても)

同じように今回の改正で行き場が狭まる可能性のある「動く重症児」
どこに受け皿が作られていくのか不透明なままだ。

病院や施設から地域へと誘導する理念先行のスローガンの下で、
病院や施設から強引に追い出しておきながら
その受け皿となる地域支援サービスは十分に整備されない。

それは障害者だけでなく高齢者ケアでも同じことだ。

受け皿が不足しているのを承知で先に追い出してしまおうというのだから、
介護難民が発生するのは当たり前で、

療養病床を廃止し、施設から地域へと
表面上は(というかゼニのかかるところでは)入所者を減らして制度を緊縮する一方で、
渋川市の無届の施設の火災で明らかになったのは
施設でケアする以外にない人たちを行政がそうした施設に押し込んでいた実態。

その姿勢は
米国の「とりあえず手っ取り早く安上がりなところに捨てちゃえ」というのと
本質的には違わないんじゃないだろうか。
2009.04.09 / Top↑