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前にも介護がらみの問題を取り上げていたのを見た記憶があるのですが、
BBCテレビにPanoramaという面白いドキュメンタリー番組があって、

レポーターが身分を隠して様々な現場に実際に就職し、
「なりきり」潜入ルポを敢行したり
隠しカメラを設置したりして、
様々な問題の裏側を暴く……てなことをやってしまう。

そのPanoramaが今回4月9日の夜に放送された特番で取り上げたのが
英国政府が「金のかかる施設ではなく在宅で」と力を入れてきて
150億ポンドを超える予算が組まれているはずの
在宅介護サービスのお粗末な実態。

番組タイトルも Britain's Homecare Scandal。

そのケアのあまりのひどさとは、

例えば89歳のJanet Finnさんは、
まるまる24時間ヘルパーが来ずに放置され、
その間、飲食が一切できず、薬も飲めず、
息子さんが発見した時には自分の排泄物の中に座っていた、と。

78歳で自力歩行ができないAndy Wilsonさんは
クリスマスの日に介護者が訪問介護を短く切り上げるため、
夕方6時半にベッドに入れられ、翌日までの14時間を
サンドイッチとスナックだけで過ごさせられた。

Wilsonさんは6ヶ月もシャワーも浴びず風呂にも入っていなかった。
清拭を行うヘルパーは携帯電話で話をしながらWilsonさんの体を拭いていた。

英国では医療と同じく介護も一定の条件を満たした場合は基本的に無料で
サービス提供者は地方自治体と契約することになっているので、
これらはすべて地方自治体と契約している業者の担当ケースで起こったことなのです。

番組では、
自治体によっては電子入札で自動的に最低価格の業者と契約をしている、

こうした行政の姿勢によって在宅支援サービスでは
時給10ポンド程度の低賃金が通り相場となり、

業者は未経験者をろくに研修も受けさせずに使っている、と指摘。

現に番組レポーターは事業所に採用された後、
その会社が経営する施設で14回のシフトをこなしただけで
犯罪記録局の認可をクリアした、と。

──以上は、だいたい、番組放送当日のTimesの記事から。
(一部、BBCの関連サイトを参照した部分も)



問題のBBCの番組関連サイトはいろいろあって、
読み始めると切りがないので目下のところ手付かずですが、
メモとして、とりあえず以下に。


番組ビデオ(1時間。アクセスが集中しているのか、今のところ視聴できません)
http://www.bbc.co.uk/programmes/b00jnknl
The BBC, Panorama

ニュース記事
http://news.bbc.co.uk/panorama/hi/front_page/newsid_7990000/7990929.stm
The BBC, Panorama, April 9, 2009


潜入レポーター Arifa Farooqさんの体験報告
http://news.bbc.co.uk/panorama/hi/front_page/newsid_7986000/7986482.stm

番組で取り上げられた会社3社の反応
http://news.bbc.co.uk/panorama/hi/front_page/newsid_7990000/7990245.stm
the BBC, Panorama, April 9, 2009
2009.04.11 / Top↑
去年の6月にフレックス勤務を求める権利という子育て支援(英)で書いた問題の続報。

上記記事の段階でBrown政権が打ち出していた方向性がいよいよ現実となり、

これまで雇用主に対してフレックス勤務を要求する権利が
6歳までの子どもの親に対して認められてきましたが、
このたび子どもの年齢の上限が16歳に引き上げられることになった。

(障害のある子どもの場合はもともと18歳まで)

この法律改正で対象となる親は450万人と見込まれている。

また医師または助産師の検診を望む妊娠中の女性すべてに
収入と関わりなく、一律190ポンドが支払われる。非課税。

More parents to get flexible work
The BBC, April 6, 2009


去年の6月のエントリーでも触れましたが、
この背景には最近よく耳にするワークライフバランスの問題意識もある一方で、

去年9月にロンドンの若者が荒れているのエントリーでまとめたように
ここ数年の英国の若者たちの荒み方が尋常でないという事情もありそうな気がします。

詳しくエントリーを立てるだけの余裕がないのですが、つい数日前にも
福祉施設で暮らす10歳と11歳の兄弟が
最初から暴行目的で9歳と11歳の男の子を拉致し

ナイフで切り刻み、レンガで頭や全身を殴り、タバコの火を押し付けるなどしたうえで
瀕死の状態で放置するという事件が起き、英国社会に大きな衝撃を与えています。

ここ数年、英国の若者たちの犯罪についてはニュースが相次いでいますが
凶悪化、低年齢化している、という感じがします。



また、この事件が起きたDoncasterについては、以下のように
児童保護の部局が機能しておらず早急に改善が必要との調査報告が出たばかりで、
2004年から相次いでいる7人の子どもの死についても詳細な調査が命じられたところ。

去年のBaby P事件以来とりざたされている
各自治体の児童保護行政の機能不全の問題がまた再燃しそうなニュースでもあります。

2009.04.11 / Top↑