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NY Times が母の日を期して
5人のコラムニストの「途上国の母たちをもっと幸福にするための提言」を掲載。

そのうちの1つのタイトルが A Dose of Care。
a doseとは薬の一服なので「一服のケア」。
「必要なのは、ちょっとしたケア」というニュアンス?

ただし、ここの care とは、
いわゆる医療や介護のケアではなくて、いわゆる「お世話」でもなくて、
カウンセリングのことなので、多分、心のケアであり
「心にかける」「気にかかる」「気遣い」……などの
ニュアンスではないかと思うのですが。

で、コラムの内容としては、

米国は発展途上国に莫大な食糧支援をしていて、

支援経済学者たちも、
途上国の子どもたちの栄養不良の問題には
食料を届ければ対処できると考えているが、

実際には政情不安や貧困でトラウマを抱えた母親が
精神的に子どもとのアタッチメントを作れないことに問題があるので、

母親の心のケアをして
抱いてあやしたり、食事の世話をするなどの基本的な育児のテクニックを教えなければ
子どもの栄養不良の問題は解決しない。

ユニセフもWHOも最近では
食糧支援においてカウンセリングを重要視している。

途上国の栄養不良の子どもたちには、
ただ食料と医薬品があればいいのではない。

彼らに必要なのは愛情。

彼らを育むためには、
彼らの命を担う母親を育む必要がある。

A Dose of Care
The NY Times, May 9, 2009

ちなみに、5本のコラムはこちらから。


もちろん、ここで必要だと訴えられているカウンセリングとは
ただ「こうやって抱くんですよ」とか「こうやってミルクをやって」と
テクニックを指導し教え教育することだけではなく、

自分自身、傷つき、トラウマや多くの問題を抱えて
子どもどころではないところに追い詰められている母親の
心のケアをすることなんだろうな……と考えていたら、

これはきっと育児一般や障害児・者、高齢者の介護にも通じる、
ものすごく本質的で鋭い指摘なんじゃないのか……と思えてきた。

これは私が娘の療育を通じて
日本の専門家の「支援」にずっと感じてきた不満なのですが、

「教育」して「正しい知識と技術」を教えれば、
できるはずだと思われているところがあって、
だから「正しい知識と技術」を「指導」し「教育」することが
すなわち「支援」なのだと
どこかで思い込まれているみたいで、

だから「支援」というと、やたら「教室」や「講座」や「相談」が並ぶ。

でも育児や介護の困難や問題は
ただ単純に知識や技術がないために起こっているわけではなく、

(そういう問題もないわけではないけれど、
ちょっと教えてもらったら知識や技術で解決する程度の問題は
もともと大した問題のうちに入らないような気もするし)

むしろ、もっとずっと本質的なところにある問題が
いくら知識や技術を指導・教育してもらっても
とてもじゃないけど使いこなすどころじゃない……といった状況を作っているのだとしたら、

ここでもまた、案外に盲点になっているのが
実は心のケアという「支援」なんじゃないのかな、と。

ここのところを上手く説明するのが難しいので、いつも悶々としているのだけど、

たとえば、
ここで書いてみたようなこととか、
ここで書いてみたようなこと、とか。
2009.05.10 / Top↑
世界中の子どもたちの死因の第1位は肺炎。
(第2位は下痢。)

毎年、世界中で200万人以上の子どもたちが肺炎で死んでいる。
これは、エイズ、マラリア、はしかで死ぬ子どもの数を合わせたよりも多い。

エイズやマラリアは撲滅運動が活発に行われ
活動家らから欧米先進国の政府にプレッシャーがかかって資金も集まるが、
肺炎で死ぬ子どもを減らそうという声はなかなか上がってこなかった。

アフリカやアジアの貧困国で
1人の子どもの肺炎を治療するのに必要な抗生物質には
たった27セントしかかからないというのに。

しかし、先月やっと Save the Children他のアドボケイトが動き、
11月2日を世界肺炎デイとすることに決まった、とのこと。

また Hedge Funds vs. Malaria というアドボカシー団体が
名称を Hedge Funds vs. Malaria and Pneumonia に変更。

エイズやマラリアの子どもたちには既にアドボケイトがいる。
肺炎の子どもたちにも、やっとここにきてアドボケイトができたのだとすれば、
肺炎で死ぬ子どもたちが大幅に減るのでは、と、

コラムニストの Nicholas D KristofのOp-Ed。

The Killer No One Suspects
The NY Times, May 9, 2009


何年か前に医療ツーリズムを調べてみた時のことを思い出した。

欧米の富裕層をターゲットにしたインドの大都会の超豪華病院コングロマリットが
大当たり・大繁盛している一方で

インドの農村部の貧困層は簡単に治せるはずの下痢でばたばたと死んでいて、

さらに医療ツーリズムに力を入れて予算を投入しようとする政府に対して、
それよりも自国民の基本的な健康を守るほうが先だろう、と
一部の医師らから批判の声が上がっていたっけ……。
2009.05.10 / Top↑