英国議会での自殺幇助合法化法案、来月投票だと。他の記事で、党議拘束はずす、と。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1184536/Lords-vote-legalising-euthanasia.html
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1184536/Lords-vote-legalising-euthanasia.html
新しいMRSAが広がっている脅威。感染すると死亡率5割以上。(新型インフルエンザでも思うのだけど、人間社会が遺伝子に手を出したことが遺伝子の変異をすごく速くしている……なんてことはないのかな。こんなふうにウイルスと強くなる速度競争をやらかしてしまったら、本当に超人類を作る以外に手がなくなって、障害者への切り捨てインセンティブがさらに働きそうだけど、そんな競争にそもそも勝ち目なんか、あるのか? こんな競争自体が人類滅亡のシナリオに思えるんだけど)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/8058841.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/8058841.stm
Googleマップがプライバシー法に触れる、とドイツで変更を迫られている。
http://www.nytimes.com/2009/05/20/technology/companies/20google.html?_r=1&th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/05/20/technology/companies/20google.html?_r=1&th&emc=th
2009.05.20 / Top↑
米国の事例に関連した検索をしていたら
厚労省の終末期医療のあり方に関する懇談会資料がひっかかってきて、
軽い気持ちで覗いてみて、ものすごくびっくりした。
厚労省の終末期医療のあり方に関する懇談会資料がひっかかってきて、
軽い気持ちで覗いてみて、ものすごくびっくりした。
植物状態の人から栄養と水分の供給を停止して餓死させるというのは
日本でも行われていた──。
日本でも行われていた──。
この資料が挙げている92年の脳外科71施設では
11%強の施設で栄養と水分の供給停止を経験している。
11%強の施設で栄養と水分の供給停止を経験している。
米国を始め、一部の国々のラディカルな医療倫理によって
起こっていることだとばかり思っていたので、
既に日本でも行われていたのだと知ると、
ちょっと呆然となるくらいのショックを受けた。
起こっていることだとばかり思っていたので、
既に日本でも行われていたのだと知ると、
ちょっと呆然となるくらいのショックを受けた。
そして、ものすごく素朴な疑問が浮かぶのだけど、
人工呼吸器をはずして窒息死させたら殺人行為になるのに
栄養と水分の供給を停止して餓死させるのは殺人にならないのは、どうして──?
人工呼吸器をはずして窒息死させたら殺人行為になるのに
栄養と水分の供給を停止して餓死させるのは殺人にならないのは、どうして──?
前にも書いた疑問も芋づる式によみがえってきた。
もっとも、この資料では「米国における延命治療中止裁判」として
75年の Karen Ann Quinlan事件と
90年の Terri Schiavo事件の2件しか挙げられていないけれど、
でも米国における延命治療の現状となれば、
当ブログで読んできたニュースの感触では
きっと中止・差し控えがもう慣行化していて
病院側と家族とがよほど対立しなければ裁判にもならないし
表に出てくることもないのだろうな……と。
当ブログで読んできたニュースの感触では
きっと中止・差し控えがもう慣行化していて
病院側と家族とがよほど対立しなければ裁判にもならないし
表に出てくることもないのだろうな……と。
それよりも、今の米国での最先端議論の焦点は、おそらく、
そんなあたりにシフトしてしまっているんじゃないかと思われることこそ
本当はものすごく怖いのに……と思う。
本当はものすごく怖いのに……と思う。
米国での議論を参照して
日本の終末期医療の問題を議論するのなら、
もっと広く英米の医療で起こっていることを見据えた上で考えてもらいたいと思う。
日本の終末期医療の問題を議論するのなら、
もっと広く英米の医療で起こっていることを見据えた上で考えてもらいたいと思う。
植物状態の人や終末期の高齢者への治療の差し控えや中止を法整備した後に
今度は議論がどこへ向かって行くのか、
今度は議論がどこへ向かって行くのか、
終末期医療の議論が、自殺幇助合法化にまで飛躍している――。
自殺幇助合法化の議論が行われれば行われるだけ「死の自己決定権」という概念が広まっていく――。
「抗がん剤はダメだけど自殺幇助ならOK」という話まで飛び出す――。
終末期でなくても障害者の医療は差し控えられる――。
自殺幇助合法化の議論が行われれば行われるだけ「死の自己決定権」という概念が広まっていく――。
「抗がん剤はダメだけど自殺幇助ならOK」という話まで飛び出す――。
終末期でなくても障害者の医療は差し控えられる――。
今の英米で起こっている諸々を参照すると、日本国民の多くは
終末期医療を考えるのに、もう少し慎重になろうと思うのではないだろうか。
終末期医療を考えるのに、もう少し慎重になろうと思うのではないだろうか。
2009.05.20 / Top↑
Syracuse 大学の障害学関連機関から出された
障害者の延命ケアと治療に関する声明。
障害者の延命ケアと治療に関する声明。
あまり吟味せずに仮訳してみたものですが、とりいそぎ以下に。
障害のある人の延命ケアと治療に関する一般原則声明
以下の理由により
・全ての人に基本的人権、市民権、憲法上の権利がある。
・これら基本的人権の中には、延命ケアを受ける権利、および自己決定と自律の権利が含まれている。
・認知、精神、情緒、発達、知的、感覚、身体のいずれかの障害があることを理由に、これらの権利がおろそかにされてはならない。
・自己決定と自律を行使する能力が不足している人の代理として行動する人は、彼らの基本的人権を決しておろそかにしてはならない。またつねに本人の権利と最善の利益によって行動しなければならない。
さらに、以下の理由によって
・障害は人間の自然な状態である。
・歴史において、障害のある人々は偏見と差別を受けてきた。
・障害は人々の基本的人権を剥奪する正当化に使われてきた。
・特に重い障害のある児・者は基本的人権の侵害を受けやすい。その中にはルーティンの治療、栄養分と水分といった延命ケアと治療の剥奪も含まれる。
・障害のある人の中には、状況が変われば自己決定と自律の権利を行使できる人もいる。
・仮に自分が障害を負った場合に何を望むかを、障害のない人があらかじめ予測できるわけではない。
・延命ケアと治療に関して意思決定の能力がある人の、十分な説明を受けた上での決定は尊重されなければならない。
・ 延命ケアと治療について自己決定と自律の権利を行使する能力が十分でない人については、家族、友人、法的に認められた代理人が、本人の命を脅かさない限りにおいて、こうした事柄について十分な説明を受けた上での意思決定を支援することができる。
以下を帰結する:
基本的人権をまっとうし、社会において障害のある人々が歴史的に受けてきた扱いを認識すれば、
・障害のある人々には延命ケアと治療、および自己決定と自律の権利を行使する資格がある。
・死が間違いなく差し迫っており、延命ケアまたは治療が客観的に無益であって、ただ死のプロセスを長引かせるだけである場合を除き、障害のある人が延命ケアまたは治療を拒否したいと望んでいるとの明白で説得力のあるエビデンスなしに、そうしたケアまたは治療が差し控えられたり中止されてはならない。
・生涯に渡って認知障害を負っている人や、延命ケアと治療に関して自己決定を行う能力を一度も持ったことのない人であっても、死が間違いなく差し迫っており、ケアまたは治療が客観的に無益であって、ただ死のプロセスを長引かせるだけである場合以外には、そのようなケアと治療が差し控えられたり中止されてはならない。
・延命ケアと治療を提供すべきかどうかについて疑いがある場合の推論は常に、そうしたケアと治療を提供する方向寄りに行われなければならない。
以下の理由により
・全ての人に基本的人権、市民権、憲法上の権利がある。
・これら基本的人権の中には、延命ケアを受ける権利、および自己決定と自律の権利が含まれている。
・認知、精神、情緒、発達、知的、感覚、身体のいずれかの障害があることを理由に、これらの権利がおろそかにされてはならない。
・自己決定と自律を行使する能力が不足している人の代理として行動する人は、彼らの基本的人権を決しておろそかにしてはならない。またつねに本人の権利と最善の利益によって行動しなければならない。
さらに、以下の理由によって
・障害は人間の自然な状態である。
・歴史において、障害のある人々は偏見と差別を受けてきた。
・障害は人々の基本的人権を剥奪する正当化に使われてきた。
・特に重い障害のある児・者は基本的人権の侵害を受けやすい。その中にはルーティンの治療、栄養分と水分といった延命ケアと治療の剥奪も含まれる。
・障害のある人の中には、状況が変われば自己決定と自律の権利を行使できる人もいる。
・仮に自分が障害を負った場合に何を望むかを、障害のない人があらかじめ予測できるわけではない。
・延命ケアと治療に関して意思決定の能力がある人の、十分な説明を受けた上での決定は尊重されなければならない。
・ 延命ケアと治療について自己決定と自律の権利を行使する能力が十分でない人については、家族、友人、法的に認められた代理人が、本人の命を脅かさない限りにおいて、こうした事柄について十分な説明を受けた上での意思決定を支援することができる。
以下を帰結する:
基本的人権をまっとうし、社会において障害のある人々が歴史的に受けてきた扱いを認識すれば、
・障害のある人々には延命ケアと治療、および自己決定と自律の権利を行使する資格がある。
・死が間違いなく差し迫っており、延命ケアまたは治療が客観的に無益であって、ただ死のプロセスを長引かせるだけである場合を除き、障害のある人が延命ケアまたは治療を拒否したいと望んでいるとの明白で説得力のあるエビデンスなしに、そうしたケアまたは治療が差し控えられたり中止されてはならない。
・生涯に渡って認知障害を負っている人や、延命ケアと治療に関して自己決定を行う能力を一度も持ったことのない人であっても、死が間違いなく差し迫っており、ケアまたは治療が客観的に無益であって、ただ死のプロセスを長引かせるだけである場合以外には、そのようなケアと治療が差し控えられたり中止されてはならない。
・延命ケアと治療を提供すべきかどうかについて疑いがある場合の推論は常に、そうしたケアと治療を提供する方向寄りに行われなければならない。
【注】 原文中の life-sustaining は
必ずしも慢性的な終末期を前提としていないことを考えると
「延命」とすることには抵抗があり、
肺炎の治療差し控えが問題となっていた前のエントリーでは「命に関わる」と訳したのですが、
ここでは何度も出てきて、中には終末期を含む文脈もあるので
迷った末に、とりあえず通常訳されている通りに「延命」としました。
必ずしも慢性的な終末期を前提としていないことを考えると
「延命」とすることには抵抗があり、
肺炎の治療差し控えが問題となっていた前のエントリーでは「命に関わる」と訳したのですが、
ここでは何度も出てきて、中には終末期を含む文脈もあるので
迷った末に、とりあえず通常訳されている通りに「延命」としました。
原文は以下に。
(賛同署名も個人・組織別にできます。)
(賛同署名も個人・組織別にできます。)
A Statement of Common Principles On Life-Sustaining Care and Treatment of People With Disabilities
The Center on Human Policy
The Center on Human Policy
Syracuse 大学のthe Center on Human Policy, Law, and Disability Studiesのサイトはこちら。
2009.05.20 / Top↑
Not Dead Yet のブログによると、
障害のある人2人に対して命に関わる治療を差し控えて法を侵したとして
障害者の人権監視団体 Disability Rights Wisconsin(DRW)が
Wisconsin大学病院を訴えた、とのこと。
障害者の人権監視団体 Disability Rights Wisconsin(DRW)が
Wisconsin大学病院を訴えた、とのこと。
(”life-sustaining ”となっているので終末期であれば「延命治療」と訳されるところ、
この場合、仮に終末期だったとしても急性期の話なので「命に関わる治療」かな、と。
文脈からすると、いっそ「救命治療」だったような気がするし。)
この場合、仮に終末期だったとしても急性期の話なので「命に関わる治療」かな、と。
文脈からすると、いっそ「救命治療」だったような気がするし。)
DRWが訴訟で求めているのは
このような病院の慣行の変更と
これらのケースの調査に要した費用4700ドルと訴訟費用。
このような病院の慣行の変更と
これらのケースの調査に要した費用4700ドルと訴訟費用。
DRWとは、Ashley事件で調査に入り報告書をまとめたWPAS(現DRWただしWはWashington)と同じ組織で、
連邦政府からの資金を受け、一定の調査権限を認められた監視団体。
連邦政府からの資金を受け、一定の調査権限を認められた監視団体。
2人の患者はともに明らかに肺炎と分かる症状だったとのこと。
1人は亡くなり、
もう片方は助かった。
もう片方は助かった。
亡くなった患者の治療については両親が差し控えを求めた、とDRWの訴状にある。
助かったほうの患者では
ガーディアンが最初は治療の差し控えに同意したものの、
後になって撤回した。
ガーディアンが最初は治療の差し控えに同意したものの、
後になって撤回した。
州法では、
自分で意思決定できない人に代わって親や代理人が
治療の差し控えに関する意思決定を行うことができるのは
本人が「永続的植物状態」にある場合のみであり、
この2人のケースには当たらない、とDRW。
自分で意思決定できない人に代わって親や代理人が
治療の差し控えに関する意思決定を行うことができるのは
本人が「永続的植物状態」にある場合のみであり、
この2人のケースには当たらない、とDRW。
一方、病院側は
いずれのケースでも患者の最善の利益で行動した、
また家族の意向を汲んだだけだと主張し、
いずれのケースでも患者の最善の利益で行動した、
また家族の意向を汲んだだけだと主張し、
病院スポークスマンは
「このケースは
患者の親と家族が患者の最善の利益に基づき個人的な医療決定を行う能力の問題」。
「このケースは
患者の親と家族が患者の最善の利益に基づき個人的な医療決定を行う能力の問題」。
ある倫理学者も、今回の訴訟によって
子どもや障害者など弱い立場にある患者に代わって
親やガーディアンが医療に関する決定を行うことが許される範囲が
州法において明確化されるのではないか、と。
子どもや障害者など弱い立場にある患者に代わって
親やガーディアンが医療に関する決定を行うことが許される範囲が
州法において明確化されるのではないか、と。
DRWの弁護士は
UW病院の医師の中には障害のある人の生命の質を低いとみなして
それによって通常よりも早く治療を中止することを提案している者がいるのでは、と述べ
UW病院の医師の中には障害のある人の生命の質を低いとみなして
それによって通常よりも早く治療を中止することを提案している者がいるのでは、と述べ
「WI大学病院はいい病院で、患者に素晴らしい医療を提供している。
死に瀕しているわけではない障害者にもそれと同じ素晴らしい医療を提供して欲しい。
我々が望んでいるのは、ただそれだけのこと」
死に瀕しているわけではない障害者にもそれと同じ素晴らしい医療を提供して欲しい。
我々が望んでいるのは、ただそれだけのこと」
Disability Rights Wisconsin Sues Over Allegedly Illegal Withholding of Treatment at UW Hospital
Not Dead Yet, May 18, 2009
Not Dead Yet, May 18, 2009
なお、NDYのStephan Drake氏はこの記事末尾で
こういう場合に法定ガーディアンが治療を拒否できる基準を
2月にPennsylvania州の裁判所が出しているので参照せよとしています。
こういう場合に法定ガーディアンが治療を拒否できる基準を
2月にPennsylvania州の裁判所が出しているので参照せよとしています。
その基準については当ブログでまとめたものがこちらに。
それにしても、Wisconsin大学病院側の言い草。
「治療さえすれば助かる命だけど、ここは見殺しにしようね」という判断が
どうして「プライベートな医療判断」なんだ??
どうして「プライベートな医療判断」なんだ??
「無益な治療」ですらないじゃないか、そんなの──。
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Wisconsin大学病院といえば……あのNorman Fostがいる。この論争にも、いずれ出てくるかもしれない。
また「重症障害児は昔から殺されてきたのだ」とも。
2009.05.20 / Top↑
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