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8年前に妻と3人の子どもを殺して死刑を宣告された37歳の男性が
毎日せまっ苦しい独房に閉じ込められて過ごしたって何の償いにもならないけど、
死刑になった後で使える臓器をみんな提供すれば多くの人を救って
少しでも罪を償うことができる、と許可を求めたところ、

「公益のためにも死刑囚のためにも申請は却下する」と
刑務所から拒絶されてしまった。

米国には死刑囚の臓器提供を禁じる法律はないが、
現在、それを認めている刑務所はない。

主な理由は4つで、それぞれにLongo氏の反論をくっつけてみると、

① Oregonその他で死刑に使われる複数の薬物のカクテルが臓器を痛める可能性。
しかしOhioとWashingtonでは一種類なので臓器は痛まない。

② 死刑囚の臓器には、HIVや肝炎に感染しているリスクがある。
しかし、事故でいきなり運び込まれてきた脳死者の臓器よりも
健康チェックを受けている死刑囚の臓器の状況の方が確実にチェックできる。

③ 臓器提供のために身柄を移すなどすれば逃亡に使われる恐れがある。
しかし死刑そのものが刑務所内で行われるなら、その場で摘出もできる。

④ 米国では1963年から1973年にかけて、オレゴン州の囚人を
睾丸へのレントゲン照射実験への有償“ボランティア”にした恥ずべき歴史がある。
  しかし、まったくの自発意思による臓器提供なら認められて然りだろう。

つい先頃のミズリー州の
双子の一人がもう一人に腎臓提供する条件で終身刑を免除され釈放された事件を思い出し、
臓器提供で何らかの特典を狙っているのだろうと思われるかもしれないが、
そんなことは全く考えていない。

Oregonには現在35人の死刑囚がおり、
自分はそのほとんど全員と話をしたが、約半数が
上訴がかなわなかったら臓器提供したいとの希望を持っている。

もし自分が今日、体中の臓器を提供することができれば、
OR州の臓器移植待ちリストの1%を解消することができる。

このまま、ただ死刑になれば、それらの臓器はただ無駄になってしまう。

自分の死後に自分の体をどうしたいかを自分で決める権利を
奪わないでほしい。

Giving Life After Death Row
Christian Longo,
NYT, March 5, 2011


私はこの記事を読み始めた時、
英語圏のジャーナリストが記事を書く際によくやるように
誰かの視点から物語ることで皮肉や風刺を際立たせる修辞法なのだろうと考え、

どこかで話に、くいっと、ひねりが起こって、
行き過ぎた臓器不足解消の動きがここまで行ったらどうするよ~?
とのメッセージが送られるのだろうと予測しながら読んだのですが、

話はそのまま、「まんま」のメッセージでした。

しかし、いくら読んでも、
死刑囚の「罪を償いたい」という切実な思いはちっとも伝わってこず、
「死刑囚が臓器を提供すれば臓器不足が解消される」と
まるで功利主義の学者が、この主張を正当化するために論文でも書いているかのような
奇妙なほど理路整然と、極めて合理的な文章なのだけれども。


ちなみに、これを書いたLongo氏は
g.a.v.e. offering life from an unexpected placeという
どうやら「死刑囚をはじめ、人間みんな臓器を提供しましょう」活動団体を
立ち上げたという人物。

(私はサイトをちゃんと覗いてみるところまでできていません)


で、この記事を読んだ私の最大の疑問は

死刑囚のLongo氏が、どうやったら
オレゴン州のその他34名の死刑囚のほとんど全員と話ができるのか。

次に、
このLongo氏という人物のバックグラウンドは――?
(こういう理路整然と学者のような論文を書ける人物なのか?)
(囚人の中には、誘導されやすかったり迎合的な傾向の人が多いのでは?)

それから、
最近、米国では死刑に使われる毒物の不足がニュースになっており、
そのため、自殺幇助で使われる薬物に切り替えていく州が出始めているのだけれども、
もしかして、死刑囚からの臓器提供への条件づくりという側面は――?

ついでに、
自殺幇助合法化で先頭を切り、今ではすっかりC&Cが浸透しきっているOR州で
こういう声が上がったということの意味は――?


【7日追記】
Wesley Smithがすぐさま反応。
「死刑囚に提供させてはいけない」とエントリーを書いている。

http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2011/03/06/condemned-prisoners-should-not-be-able-to-donate-organs-after-execution/
2011.03.08 / Top↑
なにもテキサス州のように
一方的な「無益な治療」の停止を法的に認めなくても、
家族の意思決定が病院側の気に入らなければ、
家族から代理決定権をはく奪しプロの切り捨て請負人ガーディアンを任命……。
そんな手口もアリなようです。

また「無益な治療」概念は、本来、
「救命可能性が低いにもかかわらず、本人に苦痛を強いているから
そうした治療は本人の利益にならず無益である」という判断だったはずで、
07年のGonzales事件が大きく報道され論争になった際にも
病院側は「お金を問題にしてはいない」と釈明していたのですが、
ここ最近、「お金」が問題にされた「無益な治療」論が
公然と語られるようになってきた空気の変化も感じられて
非常に懸念されます。


メリーランド州の「無益な治療」事件。

ルワンダからの合法移民のRachel Nyrahabiyambereさん58歳は
昨年4月に脳卒中で永続的植物状態に。

居住年数が5年に満たないためにメディケイドの対象にならず、
保険もないため、Georgetown University Medical Centerは息子たちに
ナーシング・ホームに入れる、家に連れ帰る、ルワンダに送り返す、の
いずれかを選択するよう迫った。

栄養と水分の停止を試みては6人の息子たちの反対にあってかなわず、
病院と家族の関係は悪化。

病院は11月に、法定代理人を立てるよう裁判所に申し立てた。
この家族が意思決定者として法的に妥当なのかという疑問があったためだと
病院は、家族がいるのに代理人を申請した理由を説明している。

12月28日の短時間のヒアリングで
息子たちはMyirahabiyambereさんに独立の弁護士をつけてくれと求めたが
認められなかった。

(これについては、事情の複雑さを考えると付くべきだったと
Virginia Guardianship Associationのメンバーがコメントしている)

息子たちは家族が母親の代理決定者であり続けられるよう求めたが、
判事は弁護士であり看護師でもあるAndera J. Sloan氏を代理人に任命。
その人選は、病院から報酬をもらっている弁護士によるもの。
判事は息子たちが「医療的に適切な退院手続きを怠ってきた」と。

代理人になったSloan氏はすぐにナーシング・ホームへの入所手続きを行う。
これまでホームの経費の支払いを申し出たことなどなかった病院が、
今度は支払うという。

ホームに移ると、今度はSloan氏は
Rachelさんをホスピス・ケアの患者としてしまう。

この点について、Sloan氏からNYTへのメールの返事は

Hospitals cannot afford to allow families the time to work through their grieving process by allowing the relatives to remain hospitalized until the family reaches the acceptance stage, if that ever happens.

Generically speaking, what gives any one family or person the right to control so many scarce health care resources in a situation where the prognosis is poor, and to the detriment of others who may actually benefit from them?

もしも家族が時間をかければ受容できる段階に至るのだとしても、
家族が悲しみのプロセスを時間をかけてくぐりぬける間ずっと
家族のために患者を入院させておくような経済的なゆとりは病院にはありません。

それに一般論として、
予後の悪い患者のために少ない医療資源を好きなようにするなんて、
そんな権利が、どうして一家族や一個人にあるんですか?

そんなの、その資源があれば現に利益を得るかもしれない患者を
犠牲にすることなんですよ。



家族はSloan氏が計画した話し合いにも出てこなかったという。
電話とメールでの話し合いで、「入院拒否」と「蘇生拒否」には同意したものの、
栄養と水分の停止によって死なすことはルワンダの文化では受け入れられないと抵抗。

それに対して、Sloan氏は、
「ルワンダの文化を理解してくれと言うけど、私は理解してあげようとしていますよ。
だってルワンダの文化には、経管栄養そのものがないでしょ?」

そして、
本人が「栄養チューブを付け、オムツをして、誰ともコミュニケーションが取れないまま
ナーシング・ホームで」生き続けたいと本人が望んでいると立証できないなら、
栄養チューブは外す、と宣言。

2月19日に栄養と水分のチューブが取り外された。

米国国民である2人を含む6人の息子たちは
もはや傍観者として母親が死なされるのを見ていることしかできなかった。

Sloan氏は、
「植物状態の人の延命治療の決断は、保険があったとしても
緩和ケアの方が妥当だという問題なので、
本質的には国籍とか財源とは無関係」と。

しかし、ペンシルバニア大学の倫理学者 Arthur Caplanは
「終末期医療の決断は細心に行うべきで、
家族を決定プロセスのすべてに関与させ、また家族を尊重して行うべき。
治療中止がお金の問題とちょっとでも繋がってしまうと、
それは大きな倫理問題。それこそ死の委員会になってしまう」

(死の委員会とは、
Obama政権の医療制度改革案が出てきた時に、
終末期医療に関するカウンセリングの項目が「死の委員会」だと
ティーパーティなど保守層から攻撃のターゲットになったことを指すものと思われます)

取り外しから2週間後の3月3日現在、Rachelさんはまだ生きている――。

Immigrant’s Health Crisis Leaves Her Family on Sideline
NYT, March 3, 2011


この事件、メディアも世間も05年のShiavo事件のように騒いでいない。
それほど「無益な治療」概念が米国には浸透してしまったということなのでしょうか。

記事には、一家がルワンダの1994年の内乱を生き延びて難民キャンプに辿り着き、
一家離散を経て米国に渡り、その後、息子たちがそれぞれに働きながら大学へ行って
国籍を取得し両親を支えてきたことなども書かれており、
そういう苦労と重ねて生きてきた人たちが、やっとたどり着いた米国で
今度はこういう仕打ちを受けるのかと思うと胸が苦しくなりますが、

もう1つ、私がこの記事でものすごく気にかかるのは、
栄養チューブを外される日のRachelさんの様子を記述した冒頭個所。

息子の1人が部屋に入って、
Rachelさんの持っていたルワンダの音楽をかけ、
額を軽く叩くと、Rachelさんは一瞬、目を開けたといいます。

ルワンダの言葉で「調子はどう?」と声をかけると、
身動きもした、と。

このブログで読んできた、既に数え切れないほどの関連記事から
実際の意識の有無には、もはや英語圏の医療現場が興味を失っているだけなのでは……?

私には、そんな気がしてなりません。

仮に意識があったとしても、
寝たきりで普通の方法でコミュニケーションが取れず、何もできないなら
そのQOLの低さは意識がないに等しいと、暗黙のうちに了解されてしまっているような……。

だから、そういう状態の人は
一切合財ひっくるめて便宜上「永続的植物状態」にしてしまったところで、
大した違いなどありはしない……とでもいうような……。


2月にもミネソタ州で妻が夫の医療に関する代理決定権を奪われていましたが、

そういう場合に法定代理人候補として控えている
Sloan氏のようなプロの「切り捨て請負・法的代理人」、既に沢山いるのでは?
2011.03.08 / Top↑
NYで38歳の脳性マヒの男性が一緒に暮らしていた母親に胸をナイフで刺されて殺された。息子に頼まれたので殺人ではなく自殺幇助だと母親は主張しているが、近所の女性によると、息子はそんなことを頼めるほどコミュニケーションが取れないし、自殺することを考えつけるほど知的レベルが高くないはずだ、と。警察は口論の後で母親が殺した殺人事件だと見ているとのこと。:男性が電動車いすを使っていたことを考えると、近所の人の証言は単なるステレオタイプで根拠がないとは思える。そういうやりとりがあった可能性はあるけれども、殺人行為は殺人だろう、と私は思う。何より、以下の自己啓発講師の殺人事件でもそうであるように、殺人の弁護に「いや自殺幇助だ」という論法がやたら出てくることが気になる。それと、母親が長年介護してきた事実だけで、Gilderdale事件が無罪になった英国では「献身的な母の愛」で免罪されてしまうのだろうな、と思われることも。
http://www.nytimes.com/2011/03/04/nyregion/04stab.html

ずっと補遺で追いかけてきたNYの自己啓発講師の殺人事件で、本人が保険金狙いでお金を払って依頼したのだから自殺幇助だという弁護を否定し、殺人で有罪に。:縛ってナイフで刺し殺したんだから、自殺幇助だという弁護が出てくることや、それがメディアで論争になることそのものがおかしい。しごく当たり前の判決。
http://www.nytimes.com/2011/03/04/nyregion/04speaker.html?_r=1

Maraachli君の無益な治療訴訟ケース(これまでMaraachiとしてきたのですが、 Maraachliの間違いでした)で、両親は国境越えしてとにかく米国に逃げ込もうと検討しているとか。詳細読めていませんが、ムチャすぎる。デトロイトの病院は受け入れを断っているのだから。ただ、それほどまでに翻弄され精神的に追い詰められていく両親の胸のうちを思うと、いったい何のため誰のための「無益な治療」停止判断なのか、と、やりきれない。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1362330/Parents-terminally-ill-baby-consider-mercy-dash-U-S-bid-extend-life.html

米国の死刑で使われてきた薬物が不足し、自殺幇助や動物の安楽死で使われている薬物に変更が検討されていた件を補遺で追いかけていますが、オハイオでその第1例となる死刑が執行されることに。:Wesley Smithなどが死にきれなかったケースを含むオレゴンの報告などにも触れ、死刑囚だから少々苦しめてもいいというなら、医師による自殺幇助では「安らかな死」が得られるというのも幻想に過ぎない、と、この件からのPAS批判を展開している。
http://www.google.com/hostednews/canadianpress/article/ALeqM5gPxESmO1p1cysM95F8k2Dy_i87Iw?docId=6146508

去年の選挙で知事が自殺幇助合法化を約束していたVermont州で、合法化ロビーが活動を開始したらしい。
http://www.necn.com/03/02/11/Death-with-dignity-allies-hit-road-in-Ve/landing_politics.html?&blockID=3&apID=62eebbe45c1e45e6a8609aa1c47acccd

最初のところをざっと読んだだけなのでイマイチ理解した自信がないのだけど、現在英国議会で審議されているNHSの改革法案では、GPのコンソーテイアムがNHSの予算分配権を握るらしいのだけど、GPに株式会社を運営することも可能にする???
http://www.guardian.co.uk/society/2011/mar/02/nhs-reform-surgeries-stock-market?CMP=EMCGT_020311&

英国では21年には未診断の認知症患者が50万人以上の上る見込み。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217780.php

英国、途上国への支援金を削減。
http://www.guardian.co.uk/global-development/2011/mar/01/uk-cuts-aid-poorest-countries?CMP=EMCGT_020311&

日本のADHD学会について、Kebichan55さんのブログがエントリーを書いている。この中で言及されている「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」の毛利子来、山田真といった先生方は、確かワクチンについても情報の不均衡に疑問を呈しておられたような気がするので、非常に興味深いと感じつつ読んだ。ワクチンの背後を云々すると「陰謀説だ」という包括否定がすぐ出てくるのと同じく、「毛利一派」という括りでの一括否定があるらしいことも、あれこれと重なって興味深い。
http://blogs.yahoo.co.jp/kebichan55/51952977.html

これも日本語のブログ記事。イレッサの副作用死訴訟で、厚労省の官僚が製薬会社とつるんで日本医学会に「和解に応じないよう声明を出すよう」働きかけていた、という、とんでもないスキャンダルが出てきているのに、これがまた大きく報道されないのは、いかに?
http://blogs.yahoo.co.jp/e999jp/61636062.html

Bill Gatesが全米の知事会その他でこのところ、米国の教育制度について大胆な改革を提唱する発言を続けて、珍しく批判されている。「コンピュータ方式の計算をするな」「わたしたちの子どもは、ウィジェットではない」という声も。実際、その改革案の1つというのは、優秀な教師には給料を増額して沢山の生徒を教えてもらう、デキの悪い教師には小さいクラスを担当させよう、というもの。詳しくは読んでいませんが、当然、生徒の能力も数値化して、上位の子どもたちを優秀な先生に、下位の子どもたちをその小さなクラスに振っていくんでしょうね。この感覚、あの腎臓の分配方式と全く同じだと思いませんか?
http://blogs.edweek.org/edweek/teacherbeat/2011/03/governors_take_the_measures_of.html
http://www.thenewamerican.com/index.php/opinion/sam-blumenfeld/6496-why-bill-gatess-billions-will-not-improve-education
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704728004576176802077647470.html?mod=googlenews_wsj
http://www.businesswire.com/news/home/20110304005910/en/NCTR-Bill-Gates%E2%80%99-Views-Teacher-Pensions-%E2%80%9CDo
http://wallstreetpit.com/65063-gates-rants-ponzi-science
http://www.nytimes.com/2011/03/03/education/03teacher.html?nl=todaysheadlines&emc=tha23
http://www.oregonlive.com/opinion/index.ssf/2011/03/education_reform_our_children.html

中東の政情不安で、70年代のオイルショック再来。
http://www.guardian.co.uk/environment/2011/mar/03/chris-huhne-oil-prices-green-economy?CMP=EMCGT_040311&

前から多いと言われている英国で、さらに監視カメラが増加中。
http://www.guardian.co.uk/uk/2011/mar/02/cctv-cameras-watching-surveillance?CMP=EMCGT_030311&
2011.03.05 / Top↑
「米国で認知され始めた『介護の力』」

「チョコレートは確かに薬じゃありません。でもソラナックス(抗不安薬)より効きますよ」

2010年の大みそか、ニューヨーク・タイムズの記事で、こんな印象的な言葉と出会った。新年が明けても電子版で「最も読まれた記事」ランキング上位にしばらく留まった、その記事のタイトルは「アルツハイマー病の患者本人の思いのままに、チョコだってあげちゃいます(Giving Alzheimer’s Patients Their Way, Even Chocolate)」。

問題行動が激しく他の施設を断られたり追い出された認知症の高齢者を受け入れ、落ち着きを取り戻すことに成功してきた、アリゾナ州のキリスト教系ナーシング・ホーム、ビーティテューズ・キャンパスは、その優れた認知症ケアで数々の賞を受賞している。研修プログラムには全米から多くの医療関係者が集まってくる。98年開設の認知症ユニットは46床で、認定看護助手(CNA。日本の介護職にあたる)が1:8、看護職が1:22の職員配置。

個別ケアで明るい気分を引き出す
同ホームのケア方針の柱は徹底した個別ケアだ。個別プランは、「私は」と本人視点の一人称で書く。何時に寝ようと何時に起きようと、入浴や食事の時間もまったく自由。そのため、活動プログラムも全職員による24時間体制となっている。集団活動は行わず、あくまでも個別プログラムに沿った1対1対応。時刻とは関わりなく、感覚を刺激する活動と感覚を鎮める活動とのバランスをとって、その人のリズムに合わせる。

食堂は、個々の入所者の栄養管理情報を備え、いつでも個別対応が可能な24時間営業のレストランだ。寝酒もOKだし、夜中の2時に食べたいものを食べたっていい。医師お墨付きの減塩・低脂肪食こそが、実は食欲減退の犯人だったりもする。みんなで一斉に食べる環境では気が散るために、後で空腹から不穏になる人もある。食べたいものがベーコンやチョコだってかまわない。楽しい・嬉しい気持ちになることが問題行動の軽減につながる。

しかし今でこそ同施設のケアの力を高く評価する州当局も、かつてはカルテにチョコレートの記述を見つけて、不適格施設に指定しようとしたことがあったそうだ。
冒頭は、そのエピソードを語った認知症ケア・プログラム担当者の言葉である。彼女のエプロンのポケットには誰もが好きなチョコが常に入っている。入所者それぞれの好物も頭に入っている。不穏になりそうな時、まずは好物をちょっと口に入れてあげる。その風味に、ふっと表情が和らぐ。それは確かに、私たち誰もが知っている、日常のささやかな安らぎだ。

介護アプローチの力を科学的に実証
未だに決定的な治療法が見つからない認知症の高齢者に対する、こうした介護アプローチのポテンシャルが、米国で評価され始めている。これまで、主観的だとか偶発的な結果に過ぎないといわれては軽視されてきた介護アプローチの有効性が、退役軍人省や国立老化研究所など政府機関によって研究され、科学的に検証されようとしている。

例えば、周辺環境の工夫によって気分や行動の変容を図るものとしては、米国医学会誌に08年に発表された実験がある。日中の施設内の照明を明るくすることによって体内時計のリズムがよくなり、入所者のウツ状態や認知機能ばかりか認知以外の機能の低下も改善された。「とりあえず何か一つをと思うなら、まず照明を明るく」と勧める専門家もいる。

ビーティテューズの認知症ユニット(4階)のエレベーターの前には、真黒な四角いマットが敷いてある。認知症が進んだ高齢者の目には穴に見えるようだ。マットの端に沿って歩く人はいても、踏み越えていく人はいない。逆に、乗ってもらいたい時には白いタオルでマットを隠す。エレベーターのドアが開く時は、スタッフがさりげなく正面に立ち、思い切り大きな笑顔で「こんにちは」と声をかける。目の前の人にニコニコ顔で挨拶されると、人の注意はつい笑顔に向かうものらしい。

ドイツではいくつかの施設が、建物正面に本物そっくりなバス停を作って徘徊防止に成功している。長期記憶の残っている高齢者は、施設を出たところに昔から見慣れた緑と黄色のバス停を見つけると、そこでバスを待ち始めるそうだ。頃合いを見てスタッフが「バスが来るまで時間があるから、お茶でも飲んで待ちませんか」と中に誘う。

09年に発表されたアイオワ大学とハーバード大学の研究では、海馬の損傷で記憶障害のある患者に、悲しい気持ちになる映画を見てもらった。6分後には映画を見た記憶は失われたが、映画によって引き起こされた感情そのものは30分後もまだ続いていた。楽しい気持ちになる映画でも結果は同じだった。一見「不穏」と思われる行動の背景には、記憶の消失のために原因となった出来事を説明できないだけで、何かに誘発された気持ちが持続している事情があるのでは、と研究者は推測する。

介護者支援の効力
その人の生活歴から明るい気持ちを引き出すアクティビティを見いだし、在宅ケアの介護者に手ほどきをする作業療法の個別活動プログラム(TAP)も注目されている。TAPでは、認知症患者本人の残存能力、発症前の役割、習慣や興味などのアセスメントに基づいて、本人に明るい気持ちをもたらし家族も導入しやすいアクティビティを見つけ出していく。

介護者との8回のセッションを通じてアセスメントを繰り返しながら、4ヶ月間に渡って展開した実験で、効果が認められたことが、オックスフォード大学の老年学雑誌に報告されている。発症前に釣り好きだった男性は、釣りの用具箱をセッティングする能力が残っていたので、毎日用具箱を渡してやってもらったところ、4カ月後には以前よりも明るく活動的になり、同じ質問の繰り返しや介護者への付きまといなどの問題行動が減少した。本人が変わり問題行動が減ると、介護者にも精神的なゆとりが生まれ、介護に自信ができる。

介護者支援によって施設入所を遅らせることができるとのエビデンスも出始めている。ニューヨーク大学が1987年から2005年まで、認知症の配偶者を介護している約400人を対象に行った実験では、6回の個別カウンセリングを受けてもらい、その後も必要に応じて電話相談を受け付けたグループでは、何もなかったグループよりも、患者の施設入所を1年半遅らせることができた。

また保健省と退役軍人省とが6ヶ月間行った認知症の介護者支援研究では、介護者をランダムに分けたグループの一方には個別カウンセリング(自宅で9回と電話で3回)と、ディスプレイ付き電話による支援グループ活動への参加を5回提供した。もう一方のグループには啓発資料と簡単な電話での聞き取りを2回提供したところ、ウツ状態を訴えた介護者の割合は前者で12.6%、後者で22.7%だった。また前者では患者本人の通院回数も減った。病状に変化はなくとも、介護者が変わると患者本人にも良い影響がもたらされることがわかる。「介護者支援への投資は患者の在宅期間を延ばし、コスト削減につながる」と退役軍人省の関係者は言う。

ビーティテューズでは、新しい患者が入所すると、それまでの施設で出されていた抗精神病薬をやめて、投薬を痛みのケアに焦点化する。拘束せず、時間をかけて経管栄養から経口食に移行。おむつも極力はずしてトイレに誘導する。やってみれば案外にできる人が多いし、このやり方の方が結局はケア・コストも低いという。

発症前に愛用していた香水をつけてあげると落ち着いた女性もいる。また別の女性は、赤ちゃん人形を肌身離さず持ち歩き、若い頃の育児の通りに世話をすることで会話や食べる意欲を取り戻した。母親としての自分に誇りを持っている人だったのだろう。

「その人の持つ力に気付くことが私たちの仕事」と、同ホームのスタッフは語る。どのような人生を過ごしてきたか、一人一人の生活歴をしっかり知ることから個別ケアは始まる。「気づいてもらえるほど、誰かが自分のことを大切に思ってくれている……そう感じられることが大事なんです」。

「誰かが自分のことを大切に思って」というところで、この人が使った動詞はCare――。

この記事を読み、何年も前に取材先で聞いた言葉を思い出した。

「体調を崩し、食べられなくなったからといって、なぜ、すぐに点滴だ、チューブだという話になるのか。なぜ、卵焼きを焼いて食べさせてみようという発想ができないのか」

日本でいち早く拘束やチューブ・オムツ外しに取り組んできた福岡の医療法人笠松会、有吉病院の有吉道泰院長の言葉だ。食を単なるカロリーと栄養の問題に貶めず、チョコや卵焼きが象徴する人として当たり前の生活へ、さらに尊厳ある生を支えるケアへと繋いでいくもの――。それが、食にとどまらず、すべてに通じいく「Careの心」であり、すなわち「Careの力」ではないだろうか。

こうした介護アプローチの底力は、実は日本の介護現場にだって、たくさん蓄積されている。それこそが、世界に冠たる日本の介護保険の、何よりの財産なのではないか――。初春に、そんなことを考えた。
その財産がしっかり生かされるような展望が、介護保険に大きく開ける年でありますように。



「介護保険情報」2011年2月号
連載:世界の介護と医療の情報を読む
2011.03.05 / Top↑
前のエントリーのWilkinson論文を見つけた時に、
ずらずらっ……と金魚のウンチ的に出てきた
子どもの治療と、栄養と水分の停止または差し控えに関する論文を以下に。


① 2004年にカナダの法学者が、
医師が勝手に患者をDNR(蘇生拒否)にすることは法的に許されるかなどの問題を検討し、
「一方的な治療の停止や差し控えは、カナダ最高裁によって法解釈されている
社会が尊厳を守る強い責任(strong social commitment to dignity)の侵害である」と
結論する論文を書いている。

ということは、
04年に既にカナダでは医師が勝手な判断で患者をDNRにしていたということ。

DNRって「私に蘇生を行わないで」という一人称なんであって、
そこに自己決定の精神が屹立していたんではないのか?
他人が勝手にカルテにちゃっちゃと書きこんでいる、その図こそ、
「無益な治療」論の本質を象徴している。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15511032

②未来を予測する認知能力を欠いた新生児に
未来は無価値だとするSingerとMcMahanへの反論。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17929196

③「栄養と水分停止で死なせるのは子どもの最善の利益ではない」というから、
期待して読んだら、なんと、「栄養と水分の停止でじわじわと死ぬに任せるのは苦しいから
本人の利益ではない。殺すのが本人の利益」だと。これ1986年の論文。
こんなに早くから、こういうことを言う人はいたのね~。
医療人道生命倫理ジャーナルっての、これ? げに恐ろしい学問があったり……。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10280413

④アブストラクトは読んだんだけど、忘れた。ていうか、もう、いい。考えたくない……。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17444823
2011.03.02 / Top↑
去年、この人がSavulescuと書いた「臓器提供安楽死」論文については、↓

「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)
Savulescuの「臓器提供安楽死」を読んでみた(2010/7/5)
「腎臓ペア交換」と「臓器提供安楽死」について書きました(2010/10/19)
臓器提供は安楽死の次には”無益な治療”論と繋がる……?(2010/5/9)


この人が先月、Savulescuと一緒に発表した「ICUでの無益な治療は一方的に停止」論文については、↓

Savulescuらが、今度はICUにおける一方的な「無益な治療」停止の正当化(2011/2/9)


この人とは、
Savu と同じくオックスフォード大学ウエヒロ実践倫理センター所属の Dominic Wilkinson。

彼は先月、単独でもAmerican Journal of Bioethics誌に
トンデモな論文を発表していました。

障害のある新生児の場合は
「無益な治療」でなくても、将来のQOLがさほど低くなくて、たとえ「生きるに値する命」だとしても、
医師と親とで死なせる決断をしても許される場合がある、と主張。

アブストラクトは

When is it permissible to allow a newborn infant to die on the basis of their future quality of life? The prevailing official view is that treatment may be withdrawn only if the burdens in an infant's future life outweigh the benefits. In this paper I outline and defend an alternative view. On the Threshold View, treatment may be withdrawn from infants if their future well-being is below a threshold that is close to, but above the zero-point of well-being. I present four arguments in favor of the Threshold View, and identify and respond to several counterarguments. I conclude that it is justifiable in some circumstances for parents and doctors to decide to allow an infant to die even though the infant's life would be worth living. The Threshold View provides a justification for treatment decisions that is more consistent, more robust, and potentially more practical than the standard view.


彼が提唱しているのは、the Threshold View という理論で、
threshold というのは「出入り口付近」のこと。

ここを超えたら治療の差し控えと中止を認めましょうというラインがあるとして、
Wilkinsonは、そのラインだけじゃなくて、その「ラインのあたり」というふうに
対象児を「その“辺り”になんとなく広げていきましょう」と言っているわけですね。

アブストラクトには書かれていませんが、
タイトルに A life worth giving?  (与えるに値する命?)という文言があるので、

去年から Wilkinson が Savu と連発している論文の流れから考えても、
「正当化できる場合がある」とは「臓器を与えるなら、それは与えるに値する命」ということでは?

もしかしたら、「死なせて”与えるに値する命”にしてあげよう」なのかも?


A life worth giving? The threshold for permissible withdrawal of life support from disabled newborn infants
Dominic J. Wilkinson
Am J Bioeth. 2011 Feb;11(2):20-32


この論文にヒットした時に、
「無益な治療」関連で気になる論文をいくつか見つけたので、
次のエントリーにメモとしてリンクまとめてみました。
2011.03.02 / Top↑
これまで、終末期医療に関する代理決定については
代理決定者がどのように決定や決定の支援を行うかという研究は
いくつかあるものの、

その代理決定が代理決定者におよぼす心理的な影響についての研究はなかった。

Annals of Internal Medicineに発表された研究が
2832人の代理決定者(半分以上が家族)のデータを含む刊行済み論文40本を検証し、
自己決定できない成人に代わって決定を行うことが代理決定者に及ぼす影響を調べたところ、

少なくとも3分の1にネガティブな心理的な影響があること、
その影響はしばしば大きなもので、通常、何か月、何年と続くことがわかった。

具体的には、意思決定を行う際のストレス、
実際に決めたことに対する罪悪感、
その決断は正しかったのだろうかという疑念など。

例えば本人のリヴィング・ウィルがあるなど、
本人の意思を代理決定者が承知していた場合には
事前支持なしに代理決定を行う場合に比べてストレスが少なかった。

When Many Surrogates HaveTo Make Treatment Decisions They Experience A Negative Emotional Effect
MNT, February 28, 2011


元論文のアブストラクトはこちら.。


タイトルを見て思いだしたのは、
「いのちの選択 -今、考えたい脳死・臓器移植」で
脳死臓器提供に同意した家族が語っていた、あの深い苦悩――。

そこから、
こういう研究は脳死臓器移植の家族同意やドナーになる意思決定などでも
もっとされたらいい……というのが、読み始めながら頭に浮かんだことなのだけど、

記事の最後のところまで読み、
次いでアブストラクトに行って結論を読んでみると、

こういう研究結果も、情報としての使い道は
結局、時代によって決まっていくのかなぁ……、

いや、もしかしたら、その時代の要請が使い道を見いだすからこそ、
こういう研究がこういうところでだけは、ある……ということなのかなぁ……

そしたら、やっぱり脳死臓器提供の家族同意で
こういう研究が行われるということは、考えにくいのかなぁ……と。

やっぱり「ない」研究は、
その研究が「ない」という事実そのものが見えなくされてしまうのだけれど、
実は、どの研究があって、どの研究がないか、ということから見えてくるものが
大事な真実を語っていたりもするんじゃないのかなぁ……とも。
2011.03.02 / Top↑
米国小児科学会の雑誌に
例のシアトルこども病院が組織したWGのHCR論文に関するコメンタリーが出ている。

無料で読める最初の20%だけからは、著者のスタンスは不明。

In 2006, Ashley, a 6-year-old child with severe developmental disabilities, received treatment at Seattle Children’s Hospital (SCH) with high-dose estrogen and surgical removal of the child’s uterus and breast buds, in order to attenuate her growth to facilitate parental care-giving and to improve her future quality of life. Subsequently, a 20-member working group comprised of ethicists, legal experts, and community representatives was assembled at SCH to discuss ethical and legal aspects of growth attenuation in children like Ashley. In this report the working group’s deliberations are summarized. The group could not establish a consensus, but the majority reached this position of moral compromise: growth attenuation in the nonambulatory profoundly developmentally delayed child is ethically acceptable because the benefits and risks are similar to those . . .


多様な人で構成された20人のWGが
「シアトルこども病院に集まって」協議した、という書き方が気になる。

シアトルこども病院は単に協議の場所だったのではなく、
いまだ多くのことが解明も説明も正当化もされていない第1例の当事者であり、
そのシアトルこども病院が自ら組織したWGだということが問題だというのに。

Growth Attenuation in Children in Profound Disabilities
By Felipe E. Vizcarrondo, MD, MA, FAAP
AAP Grand Rounds 25:36 (2011)


著者については、こちら。

このコメンタリーそのものがどういうものかは分かりませんが、

私は論争の初期からDiekemaやFostは
成長抑制を小児科学会に承認させようと働きかけているだろうと考えており、

あのHCRの論文をはじめ、
彼らがこれまでやってきたシンポや論文は、
そのための布石として周到に準備されてきたことなのかも……と

これを見て、チラっと頭によぎりました。


【関連エントリー】
米小児科学会に“A療法”承認の動き?(2008/3/13)
次は米小児科学会が成長抑制を承認するかも?(2009/2/1)
2011.03.02 / Top↑
意思決定できなくなった家族などに代わって終末期医療について代理決定を行うことが、代理決定者に及ぼす心理的な影響の調査結果。3分の1にネガティブな影響があった。:これ、重要な記事。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217706.php

24日にエントリーしたカナダのMaraachi君の無益な治療訴訟で続報。両親が上訴を決めるや、病院側が譲歩。ただし気管切開は「延命されて苦痛が伸びるだけだから、こういう状態の子どもにはしない。」と拒否したままで、家に連れて帰ったところで病院スタッフが呼吸器を外して死なせる、と。:家に連れ帰ってベッドに下ろしたら、その場で呼吸器外しの準備でも始めそうな強硬な感じ。情ってもんのカケラくらいはないのかね。
http://www.thestar.com/news/ontario/article/945700--parents-of-baby-joseph-to-appeal-ruling-to-take-child-off-life-support?bn=1
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1361593/Canadian-hospital-caves-refusal-send-terminally-ill-baby-Joseph-Maraachli-home.html?ito=feeds-newsxml

2月1日に生まれたBryson Cook君めぐり、カナダで新たな「無益な治療」事件。母親は医療職のアドバイスなど要らないと言っているが病院は倫理委員会を招集する予定。母親は「ずっと呼吸器をつけてくれと言われるのを病院は恐れているんだと思うけど、そんなこと言わない。ただ準備した子ども部屋に連れて帰って、彼を愛する人に会わせてから死なせてやりたい」
http://www.cbc.ca/news/canada/nova-scotia/story/2011/02/28/ns-baby-coma-ventilator.html

ニューハンプシャーの下院法務委員会が今日、自己決定能力の合うターミナルな患者の自殺幇助についてヒアリングを行う。
http://www.wcax.com/Global/story.asp?S=14152788

WI州をはじめ多くの州都でデモ騒ぎになっている公務員の団体交渉権や給与引き下げで、世論調査はマジョリティが公務員の交渉権と給与水準維持を支持。
http://www.nytimes.com/2011/03/01/us/01poll.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha2

抗議する人がひしめくWI州議事堂内のスライド・ショー。
http://www.nytimes.com/slideshow/2011/02/28/us/LAND-9.html

強引な予算削減案で騒ぎが起こっているのはWIのほか、インディアナ、とニュージャージー。
http://www.nytimes.com/2011/02/28/us/politics/28governors.html?nl=todaysheadlines&emc=tha23

コメント欄でmghさんに教えてもらったHPVワクチンに対する日本の反対・批判意見の傾向分析。:ものすごく面白い。分析も面白いけど、各情報の断片から透けて見えてくるものとか、断片相互のつながりとか。妄想がいろいろ広がる。
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/ae5bce73d04f4699ffd21277ecb28b19

新生児を中心に、技術の未熟な技師によるレントゲンの被害が急増しているらしい。
http://www.nytimes.com/2011/02/28/health/28radiation.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha23

英国で母乳アイスが売り出されている。:うげっ。悪趣味というよりも、なんか尊厳に手を触れているみたいな抵抗感を受けるのは、なぜかしら。そこのところに考えてみたら面白いものがあるような気がするのだけど、今ちょっと頭がガチャガチャしすぎて無理。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2011/feb/27/breast-milk-ice-cream-taste?CMP=EMCGT_280211&
2011.03.01 / Top↑
9万人もが待っているというのに移植用の腎臓が足りず
09年に死亡提供で得られた腎臓はたったの10400個程度だった。
レシピエントを特定した生体間移植でも6300個程度。

現在、死亡提供者からの腎臓は
ネットワークを通じて待っている期間が長い順に移植が行われている。

多くの患者が待っている間に亡くなっていくことを思えば
これはフェアなやり方とも思えるが、

その一方で
年寄りが元気な腎臓をもらって腎臓の寿命よりも先に死んでしまったりすると、
その腎臓が若い患者に移植されていた方が、腎臓がもたらす利益は大きかったことになる。

若い患者は長生きするので、
質の悪い腎臓を移植されて、その腎臓が機能しなくなると、
また移植が必要となり、そこで貴重な腎臓が余分に使われてしまうことになる。

これらを勘案すると、
患者の予測寿命と、腎臓の機能の予測寿命をそれぞれ評価し、
機能の予測寿命が最も長い20%を最も若く最も健康な患者に回し、
残りの80%の腎臓をドナーの年齢よりもプラスマイナス15歳以内の患者に回す、
という割り当て方式ではどうだろうか。

年寄りには腎臓がもらえなくなりそうなシステムのように聞こえるかもしれないが、
今だって既に腎臓は少ないし、これから人口の高齢化が進むにつれて病人も増え、
さらに少なくなるのだから、合理的な選択肢ではあるのだ。

Transplants and Rationing
NYT, February 27, 2011


功利主義って、だから、つまりは、こういうことなんですねー。

”お犬様”ならぬ、”臓器さま”の世界――。


           ―――――

合理的な選択肢――。

Ashley父にとっても、これが黄金律だった。
その黄金律としての輝きを彼自身はツユほども疑うことがなかったから
いかに合理的な選択肢であるか理を尽くして説明すれば
人は合点し、敬服し手を叩き、ほめそやしてくれるものだと
ひたすら思い込んで彼はあのブログを書いた。

自分のブログが多くの人から非難された時、
彼はびっくり仰天し、なぜそんな“誤解”をされるのかが分からなかった。
だから「自分が書いたブログをちゃんと読んでくれ」と未だに繰り返している。
こんなに合理的な話はないでしょ。読めば、それくらいわかるはずだよ、と、
彼は合理的であることだけが価値だと今なお信じて、そう言い続けている。

この人、いつになったら分かるんだろう。

合理的であること以外の価値もあるということ、
人は合理だけで計れるものではないのだということを。



【”臓器不足”について書いたエントリー】
Kaylee事件から日本の「心臓が足りないぞ」分数を考えた(2009/4/15)
2011.03.01 / Top↑
スイスで、精神障害者にだって自殺幇助を受ける権利があるんじゃないか、
という議論が起こっている。

ことの起こりは双極性障害のある男性の自殺幇助を追いかけた
テレビのドキュメンタリー、”Tod nach Plan (Death by Plan)”。

ほとんど同時に、死に至るような病気ではなかったフランス人作家の
チューリッヒでの自殺(Dignitasでは?)を取り上げたドキュメンタリーが
スイス―フランス・テレビでも放送されたとのこと。

スイスのドキュメンタリーでとりあげられたのは
56歳の身体的には健康な男性、Andre Rieder氏。
25年間双極性障害で20回の入退院を繰り返してきた。
時には閉鎖病棟に入れられたこともあったという。

Rieder氏は一週間分の薬を仕分けし、
友人と家族に別れを告げてから
チューリッヒの目立たない建物までタクシーで赴き、
そこで自殺した。

彼の自殺を支援したのは Exit の姉妹組織、スイス―ドイツExit。

(Exit はスイス国民の自殺幇助を、Dignitasは外国人の自殺幇助を、それぞれ行っています)

Exit はスイスに16000人の会員がおり、
昨年は91人の自殺を幇助した。
精神障害者はまだ珍しいという。

Exitの代表者はRieder氏の自殺について、
また入院して悪化させたくなかったから安定している時に決心したことで
本人が自分の生を生きるに値しないと決めた以上、
病気が治る可能性を云々して規制することは誰にもできない、
本人が死ぬと決めたなら、その人には生きる義務はないのだ、と。

精神科医らからは
双極性障害や統合失調症の患者には波があり、
長く苦しい時期が続いたり自殺念慮が起こることもあるが、
比較的普通に暮らせる時期があったりもする。

不治であるとか、治療が尽くされているかどうか、
医師だとて判断できるものではないし、
精神的・社会的なハンディキャップを抱えた人の判断を
誰がするのかは大きな問題。

支援によって状況が改善することはあるが、
障害のために社会から疎外され周辺化されてしまう問題もある。

そういう人たちへの自殺幇助を解禁して水門を開けると
それは精神障害者を片づけていくことに繋がるだろう、と。

Mental illness tests assisted suicide norms
Swissinfo.ch, February 28, 2011


記事の書き方からすると、ここ数年の自殺幇助に関する規制の議論の中で、
議論されているという感じもしますが、

スイスでは、以下のような判決が08年に出ているので、

精神障害者へ自殺幇助可能に(スイス)(2008/3/22)

法的議論というよりも道徳的、倫理的な議論ということかもしれません。
実際、Rieder氏の幇助について警察が動いたという言及は一切ありません。
2011.03.01 / Top↑
ウィスコンシンの共和党優位の州議会で金曜日、州職員から団体交渉権をはく奪する法案が通過。51対 17。ここしばらく、同州はものすごい騒ぎになっている。:中東の国々を「民主化する」と言っている国で、こういうことが起こり始めている。
http://www.nytimes.com/2011/02/26/us/26wisconsin.html?_r=1&nl=todaysheadlines&emc=tha23

同州のScott Walker知事が、この法案が施行されないなら、来週にも州職員12000人をリストラする、と。:やたら強権的な姿勢の首長が増えてきたのも、その他もろもろ世界中で起こっているヒューマにスティックな人間社会崩壊の兆しの1つ?
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/02/25/AR2011022507027.html?wpisrc=nl_cuzhead

連邦下院議会では、共和党議員らから女性の医療と自由を脅かす法案の提出される見込みとか。貧困層の女性の避妊やがん検診、新生児への栄養支援などが打ち切られる内容。:同上。
http://www.nytimes.com/2011/02/26/opinion/26sat1.html?nl=todaysheadlines&emc=tha211

子どもが母親のお腹にいる間は「プロ・ライフ」で、一旦生まれてきた後のことは知らぬ存ぜぬの共和党は、一体子どもの福祉についてどういう立場なんだ??? と問題提起するNYTのコラムニスト。:これは、ほんと、そう思う。女性と子どもを全然大事にせず、安心して子どもを産める社会の逆方向に向けて突っ走りながら、社会のツケをシングル・マザーに最も過酷に押しつけつつ、少子化が問題だ、女が子どもを産まなくなったのがいけない、と言い続ける日本政府もそうだけど。生殖補助医療に多額の助成をすれば少子化問題の解決になるというわけでもなかろうに。
http://www.nytimes.com/2011/02/26/opinion/26blow.html?nl=todaysheadlines&emc=tha212

ちゃんと読めていないのだけど、米国のどこかの州の最高裁でワクチン被害補償法を支持する判決が出て、米国小児科学会がその判決に「ワクチンは命を救うと、我々が主張してきたことが裁判所によって認められた」。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217279.php

この判決と、3週間前のCNNインタビューでのBill Gatesの「アンチ・ワクチン」の人たちは「子どもを殺している」発言に、“ワクチンの安全アドボケイト”らが抗議し、ゲイツ氏に謝罪を要求。
http://www.ageofautism.com/2011/02/vaccine-safety-advocates-demand-an-apology-from-bill-gates.html

Bill Gates、今度は温暖化対策に乗り出すらしい。:人類が抱えるすべての問題に個人的な熱い思いで対処してくれようとする、その愛と善意に拍手。そのゼニは、暴走金融資本主義で回収されて、また慈善に費やされては雪だるま式に増えながら、ぐるぐる回る。
http://www.bizjournals.com/seattle/print-edition/2011/02/25/gates-taking-larger-role-in-addressing.html

遺伝子組み換え技術(GM)が使われた食品は口にしたくないなんて思ったって、もうダメよ。あんた、とっくに食べてんだから。:米国では、という話ではないですよね、これ。化学物質や先端技術がすでに人間の健康に及ぼしている影響について、それぞれの因果関係なんて、正直、誰も調べられないところまできちゃっているんだろう、と、いつも思う。「調べられない」ことは「存在しない」ことになるのも、「科学的思考」の不思議なところ。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2011/02/25/AR2011022500643.html?wpisrc=nl_cuzhead

2010年9月24日の補遺 で拾ったMNTの記事に、「遺伝子組み換え作物にブレーキがかかると対コレラなど途上国に必要とされるワクチンの開発に差し支える、との声」が紹介されていた。

【関連エントリー】
今度は遺伝子組み換えサーモン:市場解禁を米国FDAが検討中(2010/9/21)
アルファルファは1月末に認可


世界中の農家が、生産性向上と農業の維持のために、バイオテクの農業利用による作物の多様化を支持している、んだとさ。 the International Service for the Acquisition of Agre-Bioeth Applications (ISAAA)からの調査結果。:良く分からないままに、TPPで日本の農業が死滅するっていう批判があるのは、TPPがこういう路線に乗っていくことだから……というふうに理解している。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217305.php

米のプロの介護職は介護現場で医療行為を行っているが、その3分の1は医療情報を十分に読みこなす知識を欠いている、との調査結果。:生活とか介護に関する情報の重要性を認識できず、十分に読みこなせない医療職も決して少なくはないけど。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217296.php

アルツハイマー病は誤診されがち、という調査結果。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217366.php

EU諸国でのアルツハイマー病研究には総じて資金が十分に流れていない。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217453.php

統合失調症に関与する遺伝子変異発見で、薬物療法の新たなターゲットが。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217442.php

また出てきた。ビタミンDのレベルが低い子どもはアレルギーを起こしやすいって。:米国小児科学会は08年に子どもにビタミンDのサプリを飲ませることを推奨した。ビタミンDを、バカ売れ”ブロックバスター”に仕立て上げたい人たちがいるのかもしれない。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217480.php

インターネットで薬に関する情報を検索すると、米国とカナダで内容が異なって出てくる。:日本と米国でも違うんじゃなかったっけか。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/217388.php

ちょっと古いけど、2008年に弁護士もワーキング・プアだと訴える集会があったみたい。日本で。
http://www.ne.jp/asahi/bar/internet/antigekizo/report418.htm
2011.03.01 / Top↑