メディケアは腎臓移植には一回ごとに10万ドル以上を出してくれるけど、拒絶反応を抑える薬は3年間しか給付対象になっていないんだとか。その後は、月に1000ドルから3000ドルもかかる薬代が自腹になるため、飲めなくなる人がいる。するとせっかく移植した腎臓も機能しなくなって、それは、つまり次の移植を受けなさい、ということになる……。今回の医療改革でそこを変えようという話もあるらしいのだけど。:ひぇ、やっぱ移植医療ってコストが大きいんだ……。でも、誰も医療費への負担は言わない。
http://www.nytimes.com/2009/09/14/health/policy/14kidney.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/09/14/health/policy/14kidney.html?th&emc=th
こういうのも出るだろうとは思っていたけど、精神障害はグローバルな問題で、医療制度への「負担」だと。:この頃、次々に burden だと名指しされるものが増えていく。“科学とテクノの簡単解決万歳”で、いろんな人に飲ませる薬のリストがどんどん長くなる一方で、「医療制度の負担」リストもどんどん長くなる。そこに“グローバル”と、たいてい、くっついている。IHMEがLancetと一緒にやっているプロジェクトだかキャンペーンだかの名称は、たしかGlobal Burden of Diseaseだった。だから病気は全部だよ。最終的には。100%健康な人以外は「グローバルな問題で、医療制度への負担」。あ、最先端医療の対象となる病気だけは除外ね。研究に貢献できる利益があるからコストと相殺されるからね。あ、もちろん患者への利益じゃなくて、国の科学とテクノにおける国際競争力への利益。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/163822.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/163822.php
米国の刑務所の受刑者は国民の中でも最も健康度が低いグループ。特にHIVとかC型肝炎の感染率が高いのは、刑務所内での医療があまりにもお粗末だから。:医療は、無言のうちに、社会が有益だと認める人だけのものとなりつつある、ということかも?
http://www.nytimes.com/2009/09/15/opinion/15tue2.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/09/15/opinion/15tue2.html?th&emc=th
自殺するといって酔っ払って騒いでいるウツ病の妻と口論の挙句、「じゃぁ、これで死んでみろよ」と銃を妻のベッドの上に放ったら、本当に妻がその拳銃で自殺してしまった。夫はパニックして、その場で救急通報。妻の死亡が確認されて、それが自殺だということも確認されて、夫は「自殺幇助」で逮捕され、現在保釈中だと。:これも自殺幇助、あれも自殺幇助。FENやDignitasがやっていることを思えば、この夫の方がむしろ罪が軽いと思うんだけど。
http://www.myfoxorlando.com/dpp/news/brevard_news/091409_assisted_suicide_charge
http://www.myfoxorlando.com/dpp/news/brevard_news/091409_assisted_suicide_charge
英国人は自殺幇助の合法化の賛否、ほぼ半数ずつに割れている、との世論調査。近く法案が提出されるスコットランドでは反対が微妙に上回っている。:こういうの、質問の文言に問題があることが多いのに。
http://news.scotsman.com/politics/Half-of-Britons-want-assisted.5646125.jp
http://news.scotsman.com/politics/Half-of-Britons-want-assisted.5646125.jp
言語障害のある人の生活を助けるIT機器の購入費をメディケアも民間保険も給付しないという問題の指摘。高いPCはともかく、安いiPhoneもダメなんだとか。
http://www.nytimes.com/2009/09/15/technology/15speech.html?_r=1&th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/09/15/technology/15speech.html?_r=1&th&emc=th
Obamaケアでの批判にも関わらず、Oregon州の医療制度に終末期医療条項を残そうとがんばっている議員さんがいるそうだ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/163793.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/163793.php
Guardianが日本のイルカ漁を非難している。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/sep/14/dolphin-slaughter-hunting-japan-taiji
http://www.guardian.co.uk/world/2009/sep/14/dolphin-slaughter-hunting-japan-taiji
これ、制度が出来た時にニュースを読んだ記憶がある。米国のスーパーの一角にある、スーパー経営の「ウォーク・イン・クリニック」(たしか、簡単な処方なら出来るナースプラクティショナーがいるんだった)が、そこらへんの医師と変わらない医療内容で、安上がりで、結構いいよ、という話。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/09/14/AR2009091402162.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/09/14/AR2009091402162.html
2009.09.15 / Top↑
このエントリーは、
Ashley事件に、よほどマニアックな興味関心をお持ちの方以外には意味不明かもしれません。
Ashley事件に、よほどマニアックな興味関心をお持ちの方以外には意味不明かもしれません。
Benjamin Wilfond医師は2006年に子ども病院に
Trueman Katz Bioethics Centerのディレクターとして着任しています。
Trueman Katz Bioethics Centerのディレクターとして着任しています。
つまり、彼は2004年のAshleyケースの検討や手術の際には、いなかったのです。
このセンターの創設(2005)の準備を率いたのはDiekema医師で
設立時から暫定的なディレクターに就任していましたが、
Wilfond医師のディレクター着任で、
Diekema医師は教育ディレクターに正式に就任。
設立時から暫定的なディレクターに就任していましたが、
Wilfond医師のディレクター着任で、
Diekema医師は教育ディレクターに正式に就任。
論争当時、Wilfond医師はDiekema医師の上司であるはずなのに、
どこか弱腰で、それがずっと不可解だったのですが、これで氷解。
どこか弱腰で、それがずっと不可解だったのですが、これで氷解。
2007年初頭からずっとリアルタイムで情報を追いかけてきた中で
Wilfond医師について特に印象的だったのは、
Wilfond医師について特に印象的だったのは、
彼は基本的に非常に慎重なスタンスの医師で、
“Ashley療法”論争にも身内でありながら立場を保留にしている気配があったし、
例えば2007年夏の生命倫理カンファでは、
恩師であるNorman Fost医師に批判的なニュアンスの発言もあったのに、
“Ashley療法”論争にも身内でありながら立場を保留にしている気配があったし、
例えば2007年夏の生命倫理カンファでは、
恩師であるNorman Fost医師に批判的なニュアンスの発言もあったのに、
Ashley事件については、ある段階から、その保留を全面解除して
病院の隠蔽工作に積極的に加担するようになった、ということ。
病院の隠蔽工作に積極的に加担するようになった、ということ。
その「ある段階」というのは、
こちらのエントリーで仮説を立ててみたように、
2007年5月にいったん違法性を認め、
今後は裁判所の命令なしには、これらの過激な療法を封印すると約束した病院が、
いつのまにかDiekema医師に押し切られたかのように、
(つまり彼の背後にいるFost医師やAshley父に押し切られて)
記者会見の約束を反故にして、強引な成長抑制療法の一般化へと舵を切った時期。
こちらのエントリーで仮説を立ててみたように、
2007年5月にいったん違法性を認め、
今後は裁判所の命令なしには、これらの過激な療法を封印すると約束した病院が、
いつのまにかDiekema医師に押し切られたかのように、
(つまり彼の背後にいるFost医師やAshley父に押し切られて)
記者会見の約束を反故にして、強引な成長抑制療法の一般化へと舵を切った時期。
病院が成長抑制の一般化で押し切るという戦術に切り替えた以上、
ついていくしかない人がWilfond以外にも、あの成長抑制ワーキング・グループの中にいたはず。
(当初反対していたAshleyの主治医Cowen医師とかWPASのCalson弁護士とか)
ついていくしかない人がWilfond以外にも、あの成長抑制ワーキング・グループの中にいたはず。
(当初反対していたAshleyの主治医Cowen医師とかWPASのCalson弁護士とか)
今にして振り返ってみると
その時期は、ちょうど、シアトル子ども病院がゲイツ財団とのパートナーシップを
最終的に固めていく時期と合致していた……と言えないこともない。
その時期は、ちょうど、シアトル子ども病院がゲイツ財団とのパートナーシップを
最終的に固めていく時期と合致していた……と言えないこともない。
もちろん、何度も書いているように、私は
ゲイツ財団やゲイツ夫妻がAshley事件に直接関与したとは考えていません。
ゲイツ財団やゲイツ夫妻がAshley事件に直接関与したとは考えていません。
なんら直接的に関係していなくても、
もともと密接な関係が既にあり、これだけ大きなお金の動きがあれば、
病院が自ら政治的な配慮をしても不思議はないと私は考えるだけです。
もともと密接な関係が既にあり、これだけ大きなお金の動きがあれば、
病院が自ら政治的な配慮をしても不思議はないと私は考えるだけです。
また、そう考えれば矛盾だらけの事件の事実関係に説明が付くということは
このブログで検証してきた通り。
このブログで検証してきた通り。
まもなくワシントン大学にゲイツ財団の私設研究機関IHMEがオープンし、
子ども病院の理事会にこんなメンバーが居並ぶほど、
加速度的にゲイツ財団との関係が深まっていく時期に当たっていたとしたら、
子ども病院の理事会にこんなメンバーが居並ぶほど、
加速度的にゲイツ財団との関係が深まっていく時期に当たっていたとしたら、
いかに一旦は記者会見まで開いて謝罪し、
成長抑制も今後は勝手にやりませんと約束していたとしても、
Diekema医師を通じて成長抑制を一般化しろと圧力をかけてくるAshleyの父親に
そりゃ、病院も、逆らいにくいというものではないでしょうか。
成長抑制も今後は勝手にやりませんと約束していたとしても、
Diekema医師を通じて成長抑制を一般化しろと圧力をかけてくるAshleyの父親に
そりゃ、病院も、逆らいにくいというものではないでしょうか。
もしもAshleyの父親がマイクロソフトの役員だとしたら。
それにしても、これだけ権威ある子ども病院に、
記者会見までして発表した公式見解を自ら反故にさせるとは……
記者会見までして発表した公式見解を自ら反故にさせるとは……
恐るべし、ゲイツ慈善ネオリベ王国の無言の脅威──。
2009.09.15 / Top↑
昨日、2008年1月のDiekema講演の資料をリンク集としてまとめる作業をした際に、
たまたまシアトル子ども病院の現在の理事会(board of trustees)メンバー一覧に行き当たった。
たまたまシアトル子ども病院の現在の理事会(board of trustees)メンバー一覧に行き当たった。
面白半分に一人ひとりネット検索で当たってみたところ、
すぐに面白半分ではすまなくなって、ヒーヒーいいながら結局、全員を検索してしまった。
すぐに面白半分ではすまなくなって、ヒーヒーいいながら結局、全員を検索してしまった。
右に肩書きが入っているのは病院職員。たぶん。
最後の2人は理事会の副会長と会長。
最後の2人は理事会の副会長と会長。
そのほか21人の理事のうち、
明らかにGates財団・Microsoftの関係者と分かる理事が3人いて、
明らかにGates財団・Microsoftの関係者と分かる理事が3人いて、
まず、Libby Armintrout という人は、
びっくりしたぁ……。なんとBill Gates氏 の妹御。
びっくりしたぁ……。なんとBill Gates氏 の妹御。
証拠資料はこちら。
https://www.fhcrc.org/donating/corp/thomas/gates.html
http://www.pomona.edu/Magazine/pcmsp06/DEtoday3.shtml
http://www.historylink.org/index.cfm?DisplayPage=output.cfm&File_Id=2296
https://www.fhcrc.org/donating/corp/thomas/gates.html
http://www.pomona.edu/Magazine/pcmsp06/DEtoday3.shtml
http://www.historylink.org/index.cfm?DisplayPage=output.cfm&File_Id=2296
次に、Laurie Oki さんはOki財団の理事長夫人。
夫はMicrosoftの草創期に国際戦略を担った立役者で、ITで億万長者になったから、
Bill Gatesと同じようにOki財団を作って慈善事業をおこなっている。
夫はMicrosoftの草創期に国際戦略を担った立役者で、ITで億万長者になったから、
Bill Gatesと同じようにOki財団を作って慈善事業をおこなっている。
3人目はMike Delmanさんで、この人は Microsoftの役員。
あと、この人も、関係筋から来ている人かも……と
可能性を考えたくなるのが、弁護士のPat Charさん。
なにしろ所属の法律事務所の名前は K&L/GATES という。
可能性を考えたくなるのが、弁護士のPat Charさん。
なにしろ所属の法律事務所の名前は K&L/GATES という。
他に目に付く大物では、Mona Locke・Washington州知事夫人。
それからGloria Northcroftという人は生命科学コンサルタント、遺伝子・薬学研究分野の人らしい。
それ以外のことは分からないけど、1月のObama大統領の就任式に
シアトルからGates夫妻らと共にDC入りした1人だというから、
それなりの大物なんじゃないかと想像される。
それ以外のことは分からないけど、1月のObama大統領の就任式に
シアトルからGates夫妻らと共にDC入りした1人だというから、
それなりの大物なんじゃないかと想像される。
そのほかは、ほぼ意味はないけど、せっかく調べたので分かった範囲を以下に。
Dean Allen 不動産とバイオ関係
Rhoda Altom ワシントン女性会議メンバー
Robb Bakemeier 弁護士
Joel Benoliel Costcoの法務管理部門の副社長
Jane Blair 不動産会社副社長
Julia Calhoun 小児癌の支援団体Laurel 財団の会長
Bob Flowers もと投資会社社長、妻は地元テレビ局KIRO-TV勤務
Linda Mattox 地域のボランティア
Resa Moor NPO活動、嚢胞性繊維症関係も
Rhoda Altom ワシントン女性会議メンバー
Robb Bakemeier 弁護士
Joel Benoliel Costcoの法務管理部門の副社長
Jane Blair 不動産会社副社長
Julia Calhoun 小児癌の支援団体Laurel 財団の会長
Bob Flowers もと投資会社社長、妻は地元テレビ局KIRO-TV勤務
Linda Mattox 地域のボランティア
Resa Moor NPO活動、嚢胞性繊維症関係も
科学とテクノロジーと慈善資本主義によるゲイツ王国の世界制覇に向けて
子ども病院は、もう、すっかり“善意のヴォルデモートさん”の右手……いや、左手。
子ども病院は、もう、すっかり“善意のヴォルデモートさん”の右手……いや、左手。
やっぱ右手はワシントン大学の方だよね――。
――――――――
Ashley事件に関していえば、
2004年の理事会メンバーは探しきれなかったものの、
2006-2007年度のメンバーを年次報告書で見ると
Okiさんは入っていますが、Gates氏の妹君もDelman氏も入っていません。
2004年の理事会メンバーは探しきれなかったものの、
2006-2007年度のメンバーを年次報告書で見ると
Okiさんは入っていますが、Gates氏の妹君もDelman氏も入っていません。
さらに、もちろん2008-2009年度の理事会メンバーに
ゲイツ財団・マイクロソフトの関係者が入っているからといって
だからAshley事件でどうだと言えるわけではありませんが、
ゲイツ財団・マイクロソフトの関係者が入っているからといって
だからAshley事件でどうだと言えるわけではありませんが、
当ブログが検証してきた
2006年のダウンタウンの建物取得とその後のリサーチセンター設立に向けた
Gates夫人の陣頭指揮による資金調達キャンペーン。
(Oki夫妻もリーダーとして、このキャンペーンに加わっています)
2006年のダウンタウンの建物取得とその後のリサーチセンター設立に向けた
Gates夫人の陣頭指揮による資金調達キャンペーン。
(Oki夫妻もリーダーとして、このキャンペーンに加わっています)
そして2008年のワシントン大学における
ゲイツ財団の私設医療経済学研究機関に等しいIHME創設。
(詳細は「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫に)
ゲイツ財団の私設医療経済学研究機関に等しいIHME創設。
(詳細は「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫に)
それら機関を通じての、グローバル・ヘルスにおける
ゲイツ財団・ワシントン大学・シアトル子ども病院のパートナーシップ……
ゲイツ財団・ワシントン大学・シアトル子ども病院のパートナーシップ……
……といった、大きな絵の中に、現在の、この理事会メンバーを置いて考えると、
両者の関係の深さが思われるというもの。
両者の関係の深さが思われるというもの。
こうしたパートナーシップが一朝一夕に出来るものではないことを思えば、
そして、当ブログが詳細に検証してきたAshley事件の数々の矛盾・不可解を思えば、
やはりAshley事件がシアトルで起こったということの大きな意味を考えざるを得ません。
そして、当ブログが詳細に検証してきたAshley事件の数々の矛盾・不可解を思えば、
やはりAshley事件がシアトルで起こったということの大きな意味を考えざるを得ません。
2009.09.15 / Top↑
メディアでも取り上げられているようで、
某MLで、以下の中国新聞の天風録を教えてもらいました。
某MLで、以下の中国新聞の天風録を教えてもらいました。
なんだかなぁ……。
やっぱり「身体の自由を奪っていく病気」に、家族が「支え合う」美しい話という
捉え方になるのかなぁ……。
やっぱり「身体の自由を奪っていく病気」に、家族が「支え合う」美しい話という
捉え方になるのかなぁ……。
それに、病気の子どもへの臓器提供を目的に
着床前遺伝子診断と体外受精によって
臓器のドナーとして適合する妹弟を生むことの倫理性には
この天風録がまったく触れていないというのは、どういうことだろう。
着床前遺伝子診断と体外受精によって
臓器のドナーとして適合する妹弟を生むことの倫理性には
この天風録がまったく触れていないというのは、どういうことだろう。
日本でのメディアの捉え方がとても気になってきた。
また、そのMLでのコメントを見ていると、
また、そのMLでのコメントを見ていると、
臓器目的で子どもを作るという行為が日本人の倫理観からあまりに遠いために、
この物語の内容は、日本では多くの人にとって「映画の上の空想」とか「映画ならではの誇張」とか
「未来の可能性のお話」としか考えられないのかもしれない……。
この物語の内容は、日本では多くの人にとって「映画の上の空想」とか「映画ならではの誇張」とか
「未来の可能性のお話」としか考えられないのかもしれない……。
初めて、そう気づいて、一人でジタバタするほど焦った。
「それは違うよ。これ、英米では現実に起こっていることなんだよぉぉぉぉぉ!!!」と
みんなに大きな声で触れ歩きたい気持ちになったので、
みんなに大きな声で触れ歩きたい気持ちになったので、
以下、この映画の主人公アナのように、
兄姉への臓器ドナーとして遺伝子診断で生まれる子どもたちを巡って
このブログで把握している範囲の事実関係を整理してみます。
兄姉への臓器ドナーとして遺伝子診断で生まれる子どもたちを巡って
このブログで把握している範囲の事実関係を整理してみます。
-------
親が病気の子どもを救うために臓器目的で遺伝子診断技術を用いて生む子どものことは
英語で savior sibling と称されています。
英語で savior sibling と称されています。
以前の検索では「救済者兄弟」というのが一般的な日本語訳のようでしたが、
ほかの訳語もあるかもしれません。
ほかの訳語もあるかもしれません。
救済者兄弟は米国では無規制。
正式に認めた世界で初めての国は英国とのこと。
2001年とされている報道と2004年とされている報道があり、
私はそこは確認していません。
2001年とされている報道と2004年とされている報道があり、
私はそこは確認していません。
子どもに命に関わる重大な病気があって
救済者兄弟を生んで臓器移植を行う以外に救う手段がない場合のみ
ヒト受精・胚機構HFEAで認めていたということで、
実際に生まれた救済者兄弟はわずかだったらしいのですが、
救済者兄弟を生んで臓器移植を行う以外に救う手段がない場合のみ
ヒト受精・胚機構HFEAで認めていたということで、
実際に生まれた救済者兄弟はわずかだったらしいのですが、
去年、議会でのヒト受精・胚法改正議論の中で法的にも承認され、
今後は、もっと軽症の病気でも認められるようになる可能性があります。
(改正法の施行はまだこれから)
今後は、もっと軽症の病気でも認められるようになる可能性があります。
(改正法の施行はまだこれから)
なぜ救済者兄弟にされる子どもの人権侵害がもっと言われないのか、私はずっと疑問なのですが、
おおむね生命倫理お得意の「利益」対「害」の差し引き計算の論理で正当化されていて、
通常の生体間臓器提供では「ドナーの利益」が正当化の根拠とされてきたところ、
救済者兄弟の正当化には「家族全体の利益は子どもの利益でもある」との論理が持ち出されています。
おおむね生命倫理お得意の「利益」対「害」の差し引き計算の論理で正当化されていて、
通常の生体間臓器提供では「ドナーの利益」が正当化の根拠とされてきたところ、
救済者兄弟の正当化には「家族全体の利益は子どもの利益でもある」との論理が持ち出されています。
米国でも英国でも、
生まれてくる子どもが自分の生い立ちから心理的な害をこうむる可能性は指摘されており、
この点は小説「わたしのなかのあなた」でも描かれています。
生まれてくる子どもが自分の生い立ちから心理的な害をこうむる可能性は指摘されており、
この点は小説「わたしのなかのあなた」でも描かれています。
主人公アナは、自分は姉の臓器庫であると感じ、自己肯定感を持てずに苦しんでいます。
しかし、英国の去年のヒト受精・胚法改正議論の際に英国医師会から出てきた見解では、
救済者兄弟が兄や姉ほど愛されていないと感じる心理的な不全感を「仮想的な害」とし、
病気の兄弟が苦しんだり死ぬことを「リアルな害」として対置して
臓器目的での救済者兄弟を正当化していました。
救済者兄弟が兄や姉ほど愛されていないと感じる心理的な不全感を「仮想的な害」とし、
病気の兄弟が苦しんだり死ぬことを「リアルな害」として対置して
臓器目的での救済者兄弟を正当化していました。
また、米国のAshley事件の議論から見えてきたところでは、
子どもの医療に関する決定においては、よほど極端に子どもの利益に反しない限り
基本的には親の決定権がプライバシー権として尊重されていて、
その境界年齢が mature minor といわれる13歳前後。
子どもの医療に関する決定においては、よほど極端に子どもの利益に反しない限り
基本的には親の決定権がプライバシー権として尊重されていて、
その境界年齢が mature minor といわれる13歳前後。
その辺りの年齢から、本人の意思を重要視するべきだとされているようです。
「わたしのなかのあなた」の主人公アナが、
ちょうどこの、mature minor に設定されているところが興味深いところでもあり、
ちょうどこの、mature minor に設定されているところが興味深いところでもあり、
この作品が巧妙に問題の核心を避けてお茶を濁しているところでしょう。
ネタバレになるので明かせませんが、
「わたしのなかのあなた」の作品の落としどころを考えてみても、
臓器目的で子どもを作ることそのものの倫理性は作品の中で実は問われていません。
「わたしのなかのあなた」の作品の落としどころを考えてみても、
臓器目的で子どもを作ることそのものの倫理性は作品の中で実は問われていません。
救済者兄弟は微妙に肯定しつつ、それを前提に子どもの人権は……という
問題の収め方となっています。
問題の収め方となっています。
読めば、それなりの納得もするかもしれないものの、
そこで終わっていいのか……という感じがする作品ではありますが、
そこで終わっていいのか……という感じがする作品ではありますが、
それでも、やはり、ピコーの「わたしのなかのあなた」は
そうした行為が無規制で野放しになっている米国の実態に疑問を投げかけた作品で、
英米でこの映画を見る人たちには、こうした背景がある程度認識されているわけですが、
日本でこの映画を見る人たちは、まったくこういう背景を知らずに見るのだとすると、
それは全く見方を誤る可能性があり、ちょっと怖いなぁ……と思います。
そうした行為が無規制で野放しになっている米国の実態に疑問を投げかけた作品で、
英米でこの映画を見る人たちには、こうした背景がある程度認識されているわけですが、
日本でこの映画を見る人たちは、まったくこういう背景を知らずに見るのだとすると、
それは全く見方を誤る可能性があり、ちょっと怖いなぁ……と思います。
先の臓器移植法議論でも、
英米の移植医療で何が起こっているかという実情など全く知らされないまま
「国際水準の移植医療を」としきりに言われましたが、
英米の移植医療で何が起こっているかという実情など全く知らされないまま
「国際水準の移植医療を」としきりに言われましたが、
今回の映画も、こんなことが既に現実になっている英米の実態が知らされないまま、
映画の中だけの空想や未来の話だと受け取られて、
それを前提に日本のメディアに論じられ、
日本の世論がそれに誘導されるとしたら、
映画の中だけの空想や未来の話だと受け取られて、
それを前提に日本のメディアに論じられ、
日本の世論がそれに誘導されるとしたら、
そのことの怖さは、たかが映画であっても、やはり気になる。
拙ブログで把握している範囲では
スウェーデンでも2006年に救済者兄弟を認める法律ができ、
翌2007年から実際に適用されているとのこと。
スウェーデンでも2006年に救済者兄弟を認める法律ができ、
翌2007年から実際に適用されているとのこと。
また、今日そのMLで教えてもらったのですが、
2008年10月にスペインでも初の救済者兄弟としてJavior君が生まれたという報道がありました。
2008年10月にスペインでも初の救済者兄弟としてJavior君が生まれたという報道がありました。
このように、
「病気の子どもを救うために臓器ドナーとなるデザイナーベビーを作る」という行為は
決して映画的空想でも誇張でもなく、未来の話でもなくて、
今、世界中にじわじわと広がりつつある現実なのです。
「病気の子どもを救うために臓器ドナーとなるデザイナーベビーを作る」という行為は
決して映画的空想でも誇張でもなく、未来の話でもなくて、
今、世界中にじわじわと広がりつつある現実なのです。
世界で初めて救済者兄弟を認めた英国には、
日本からも問い合わせがあったという報道もあります。
日本からも問い合わせがあったという報道もあります。
一人でも多くの人が
科学とテクノロジーが世界中にどんな現実を作り出しているかを知った上で
この小説を読み、映画を見てくださるように祈ります。
科学とテクノロジーが世界中にどんな現実を作り出しているかを知った上で
この小説を読み、映画を見てくださるように祈ります。
【救済者兄弟 関連エントリー】
”救済者兄弟”
英国の”救済者兄弟”事情 追加情報
兄弟間の臓器移植 Pentz講演
臓器目的で子ども作って何が悪い、とFost
ヒト受精・胚法に関する英国医師会見解
英国議会ハイブリッド胚と救済者兄弟を認める
”救済者兄弟”
英国の”救済者兄弟”事情 追加情報
兄弟間の臓器移植 Pentz講演
臓器目的で子ども作って何が悪い、とFost
ヒト受精・胚法に関する英国医師会見解
英国議会ハイブリッド胚と救済者兄弟を認める
【その後の、この映画関連エントリー】
臓器移植ネットワークが映画「私の中のあなた」とタイアップすることの怪(2009/9/16)
沢木耕太郎氏の「私の中のあなた」レビュー(2009/9/19)
映画「私の中のあなた」を見る前に原作小説を再読(2009/10/8)
映画「私の中のあなた」を見てきました(2009/10/10)
臓器移植ネットワークが映画「私の中のあなた」とタイアップすることの怪(2009/9/16)
沢木耕太郎氏の「私の中のあなた」レビュー(2009/9/19)
映画「私の中のあなた」を見る前に原作小説を再読(2009/10/8)
映画「私の中のあなた」を見てきました(2009/10/10)
2009.09.15 / Top↑
| Home |