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去年12月9日にエーザイとファイザーの主催で開かれた
アルツハイマー型認知症(AD)に関するプレスセミナーなるものが
「介護保険情報」2月号の「認知症情報ネット」というコーナーで紹介されている。

出たばかりの記事をここに引っ張るわけにはいかないのでネットで探してみたら
こちらのケアマネさん向けサイトでも報告されていました。

これが、私は、ものすごく気になる。

公益社団法人地域医療振興協会研究所・地域医療研修センターの副センター長の八森淳という人物が
ドネペジル塩酸塩をアルツハイマー型認知症の患者85人に投与して
QOLの変化を調査し、それを「治療効用値」なるものに換算したところ、
1組の患者と介護者で120万円もの治療効果があると考えられることになった、
という内容の発表を行っている。


タイトルにある「包括的健康関連QOL指標」が、そのセミナーでどのように説明されたか
「介護保険情報」の記事で見てみると、

死亡率や生存期間などの“生物医学的アウトカム”から
もう一歩踏み込んだ“患者立脚型アウトカム”

死亡率とか生存期間だけじゃなく……って、どこかで聞いたよね……。

ゲイツ財団の私設WHOと言われるWA大学のIHMEについて追いかけてきた私の中では
センサーがピピピーと反応……もしかして……と思ったら、

やっぱり……。

IHMEのMurray医師やWHOが推進しているDALYでこそないけれど、
障害のある状態をない状態よりも割り引くべきだとして、
その割引率を決めている点では大差ないと思われるQALYが登場する。

ちょっとややこしい話なので、まずは八森氏の説明の概要を以下にまとめてみると

・患者さんと介護者のQOLについて、
移動の程度・身の回りの管理・普段の活動・痛み/不快感・不安/ふさぎこみ、の
5項目について3段階の評価を行い、

・「効用値換算表」を用いて、その5項目の評価の組み合わせを「QOL効用値」に換算し、
「完全な健康状態を1、死亡をゼロとして分析」。

・「完全な健康な状態」を1年間維持する「効用値」が1QALYという単位とされる。

・(ここのところ、まったくもって、よく分からない話なのだけれど)
日本人が、その1QALYを達成するために「支払ってもよい」のは600万円だというのは、
八森氏によると「ある研究ですでに確認されている」のだそうな。
そして、これを「支払意志額」と呼ぶそうな。

・ドネペジル塩酸塩を使ったところ、14週間で
患者・介護者とも効用値はおよそ0.1あった。
1QALYを600万円とすると、患者で60万、介護者で60万との計算。
合計で120万円の治療価値がドネペジル塩酸塩にはあったことになる。


「効用値換算表」とは一体いかなるものなのか、とか
「完全な健康」を1とし「死亡」をゼロとして、その間とは? とか、
日本人が「支払ってもいい」のは、一体「誰が」支払ってもいいと言ったの? とか、
「ある研究」って? 「確認されている」って、どこでどんなふうに? とか
たった0.1%の話なのに「およそ」って? とか
そもそもQALYって? などなど、

おそらく要所要所で詳細な説明が省かれているところが
この話のミソなのでしょうが、

QALYとは、quality adjusted life yearsすなわち、
「完全に健康な状態」と「死亡」の間にある状態を
QOLの高さ、または低さに応じて(つまり障害状態に応じて)数値化しようというもの。

これまでの保健医療の施策の効果は生存年数でのみ云々されてきたけど、
同じように何年間か延命できたとしてもピンシャンと元に戻って生きたのと、
生きてはいてもQOLが低い状態で(つまり障害のある状態で)助かったというのとを
一緒にしてはいかんだろう、それはやっぱり低く見積もらないと……
という発想から出てきた医療経済学の新指標。

考え方の方向として、
ゲイツ財団やWHOが推進しているDALYと同じわけです。

だから、ここに何の説明もなく、さらっと持ち出される「効用値換算表」というのは、
そのQOLの低さに応じて(つまり障害の程度に応じて)どれだけ健康状態から割り引いて考えるべきか、
QALYの「割引率」の算定表なのです。おそらく。

その算定表によって「完全な健康状態」の1と、「死亡」のゼロの間に、
0.85とか、0.6 とか……の状態が算定されていくわけですね。

例えば、こちらのエントリーで、ちょろっとだけ齧った論文によると、
移動機能に障害があると0.85とするのがQALYの算定基準でした。


いよいよ日本でも、DALYやQALYのような切り捨て医療の指標が
のさばり始めようとしている……?

しかも、その本当の正体を隠したまま。
「QOLの視点を盛り込んだ治療効果の新しい指標」「患者立脚型」などといった
漠然とした、でも患者サイドに立っているかのごときイメージ操作によって。


ここが日本の一番怖いところだと私はいつも思うのだけど、

当ブログで拾っているニュースを単発で一見すると、
「日本ではありえないトンデモな話だ」としか思えないのは、
日本の文化ではそういうことは絶対に起こり得ないからでも、
日本の現状・現実が本当にそういうことと全く無縁だからでもなくて、

(ここまでグローバリズム、ネオリベラリズムが進んだ今の経済状況の中で
日本だけが文化が違うから、世界の他の地域で起こっていることと全く無縁でいられるというのは
まず考えられないのでは……と私は思う。特に科学とテクノの国際競争の激化を前にしては。)

欧米のメディアがジャーナリズムとして以前ほど機能しなくなったとはいえ、
まだしも正面からこうした問題を取り上げて伝え、
広く一般の議論するところとなるのに比べて、

日本では多くのことが一般には知らされず、
届けられるのは中身のない(そして誰かにとって都合のいい)空疎なイメージだけだから……
……なんじゃないのだろうか。


国際水準の移植医療で起こっている恐ろしい諸々を一切知らさないまま
去年の脳死・臓器移植法改正議論でのA案推進者がしきりに
「国際水準の移植医療が日本でも実現するように」と説いたように、

「障害児・者も高齢者も死なせろ、殺せ」が日ごとに露骨になっていく
欧米の「無益な治療」論も「自殺幇助合法化」議論も、つゆ知らされることなく、
あたかも、日本だけが「死の自己決定権」の空隙にいるかのように装いつつ、
「尊厳のある死を自ら選んでおくこと」ことの大切さだけが抽象的に説かれ
「日本ではリビング・ウィルの普及率が低い」ことが言われるように、

ここでもまた、
DALYやQALYが何かということも
医療経済学がそれら指標で何を狙っているかということも、
一番大事なことは一切知らさずに、その問題を位置付ける「大きな絵」は誰も描いて見せることなく、

「欧米では患者・介護者のQOLの視点も取り入れて治療効果を検証している」とだけ言い、
「日本は遅れているのだから、こういう視点を取り入れて追いつかなければ」という方向に
我々をノセていこうとしている人たちがいる……のではないでしょうか。




2010.02.12 / Top↑
例によって、まず自殺幇助関連を


米国のプロ・ライフの草の根運動の会長さんが、英国のGilderdale事件とInglis事件と、その周辺の議論を巡って長い論考を書いている。:いつも思うのだけど、一旦広く議論になってしまうと、みんな頭の中の抽象概念としての「障害」であったり、「悲惨な寝たきり状態」であったりで話を進める。もっと事実関係をしっかり押さえた上で、個々の事例の事実にちゃんと即して、もっと事実に基づいた議論をするべきじゃないのかな。Ashley事件で、こういう意味で一番お粗末だったのは「とりあえず誰よりも早く論文にして“業績”を作りたい」学者さんたちだったような気がするんだけど。
http://www.renewamerica.com/columns/brown/100209

豪Brisbaneで自殺幇助事件が起こっている。獣医用のバルビツール系毒物が他国から持ち込まれるケースが多いような印象。いつかテキサス州でも、そういう事件があった。
http://www.abc.net.au/news/stories/2010/02/09/2814431.htm?site=brisbane


この後、いつもの補遺

去年のクリスマス頃にBrown首相が選挙対策で打ち出した「高齢者のケアホームと、ニーズの高い人の介護を無料にする」という施策には、財源の裏付けが乏しく、空約束で高齢者の期待だけを高めている、と議員らから批判。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/politics/article7021299.ece?&EMC-Bltn=9ALCR2F

昨日、英国の議員さんたちから出てきていたBrown首相の高齢者介護施策への批判(上のリンク)で、今日になって労働党の議員さんたちが圧力を受けてメディアに出した手紙から名前を取り下げた、とか。政治的駆け引きで、いったいどうなるのか。そもそも英国はNCS創設に向けてパブコメ募集していたはずなのだけど、この動きとどうつながっているのか、さっぱり分からなくなって私は混乱中。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/politics/article7022706.ece?&EMC-Bltn=DAPBS2F

2013年に改定される the diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersでは、正常とそうでない線引きが大幅に変わって、双極性障害の診断数はぐっと減ることになるだろう、と。:時間があったら、ちゃんと読みたいけど、とりあえず双極性障害の診断が大幅に減るという記述に関しては、やっぱりBiedermanスキャンダルの影響を考えた。でも、「これまでの基準は製薬会社からのゼニに影響された誤りでした」とは誰も認めないまま、診断基準だけは改定されていくんだろうか……。現場の医師の方々にとって、それは納得できることなんだろうか。
http://www.nytimes.com/2010/02/10/health/10psych.html?th&emc=th

上記の改定での大きな変更の一つが自閉症をアスペルガーとか広汎性発達障害とかでなく、スペクトラムとして捉えることのようで、それに関する記事。
http://www.nytimes.com/2010/02/10/opinion/10grinker.html?th&emc=th

自閉症のワクチン原因説を世の中に流したWakefield論文を先ごろLancetが削除したが、それを受けて、なのかどうか、自閉症児には消化器に問題がある子どもが多い、とその関連性が注目されてきている、とか。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/09/AR2010020901789.html

米国でここ10年の間に急増している慢性病患者を対象にした病院で、ケアの質がひどい。監査の目が及んでいない。:これは、あとで読む。しかし、長い……。ただ、冒頭のところで、不穏になった患者さんに「シッタ―が配置された」というのは、ほぉ……と思った。http://www.nytimes.com/2010/02/10/health/policy/10care.html?th&emc=th

政府のセーフティネットが機能せず、米国で飢えている人が増えている。
http://www.nytimes.com/2010/02/10/opinion/10wed4.html?th&emc=th

ファースト・レディが米国の子どもたちの肥満対策に乗り出した。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/09/AR2010020900791.htm

米国のCIAのテロ容疑者への拷問疑惑と同じ問題が英国M15に起こっているらしい。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/feb/10/binyam-mohamed-torture-mi5

ギャンブル狂いの女性が架空の子どもをでっちあげて税金の控除などの特典を利用していた。豪:子どもが、どんどん「手段」になっていくような気がする。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/woman-invented-child-for-benefits/1746791.aspx?src=enews
2010.02.11 / Top↑
Yahoo!のトップニュースに以下のようなニュースがあったのですが、


実はこれと同じ研究結果は去年の夏にも
元米軍兵士を対象にした調査で報じられているので、
2009年7月17日のエントリーを以下に再掲。

The European Heart Journal に掲載された調査結果で
4000人のアメリカ人の元兵士を調べたところ、
IQが平均よりも低い人では心臓病で死ぬ確立が高いとの結果に。

社会経済上のファクターが影響することは知られているが、
今回は、それらファクターを除外しても、IQだけで20%もの差があった。

知能が低い人は健康に関する情報を取り込みにくく健康に留意しにくいのでは、と分析し、
研究者らは病気予防情報を簡略にするなどの工夫が必要、と。

Lower IQ ‘a heart disease risk’
The BBC, July 14, 2009


病気予防の情報に工夫が必要だとの提言をしてはいるけれど、
IQだとか人種だとかが直接的に病気リスクなのだといわんばかりの研究が
どうも最近、目に見えて増加しているような気がしてならない。

今のように医療コストの削減の必要が声高に喧伝されている中で、
病気リスクであると名指しされることは「コストがかかる」レッテルを張られることに等しいわけで、

そもそも研究デザインの前段階で、
IQや人種と病気リスクとには直接的な相関があるはずだと誰かが仮説したからこそ
こういう研究が行われるのだということを考えると
いかに病気予防の情報に工夫を提言されたとしても、
論文の結論や提言とはまた無関係に
データだけが一人歩きするのではないか、と気にかかる。


それにしても、この研究で実は一番コワイのは
調査対象に選ばれたのが米軍の元兵士だったという事実のほうかも。

これは、つまり
平均よりもIQが低い人が一定数固まっている集団を探したら
それは米軍だった……ということであり、

その事実、
海兵隊リクルーターがノルマ達成のため、発達障害者を狙っているという話を裏付けているのでは……?


なお、このエントリーには児童精神科医のAFCPさんから
元米兵を対象にしたのは単に調べやすいからだとのご指摘があり、
そこから、ちょっと面白いコメントのやり取りがありました。

その時に考えたことは、まだエントリーとして実を結んでいませんが、
興味のある方は、こちらの元エントリーを覗いてみてください。


私自身は、やはり、こういうニュースは、それ単独として捉えて考えるのと、
世界で起こっていることの大きな絵の中に位置づけて眺めるのとでは
全く違う見え方をしてくるような気がします。

去年の夏以降、さまざまな世界各国からのニュースを経て、特に最近の
「無益な治療」論の広がりや障害児抹殺論の高まりという大きな絵の中に置いたうえで、
(それぞれ詳細は「無益な治療」、「新優生思想」の書庫に)

この研究結果そのものの意味よりも、今こうした研究が続いて出てくることの意味の方を
考えることの必要性も忘れないでいたほうがいいと思う。

あ、それから、もう1つ、
こういうニュースはYahoo!のトップニュースにでかでかと登場するけれど、
例えば去年の大みそかに米国モンタナ州が自殺幇助を合法化したというショッキングなニュースは
日本ではちっとも報道されないのは何故なんだろう……と考えてみることの必要性も、ね。


また、2007年にJames Watson博士の人種差別発言に端を発した
人種間のIQ差を巡る論争に関連して考えたことが、
ここでもまた頭に浮かんだので、ついでに。


これもまた、「ない」報道は、それが「ない」ことそのものが見えないし、したがって、
なぜ「その報道はないのか」ということに誰も気づくことができない日本の不思議にも重なる……。
2010.02.11 / Top↑
70歳以上の高齢者に自殺幇助を認めよというオランダのニュースで、
1月に目にしつつ、ひるんでしまって読まないままになっている英国作家のぶっ飛び提言を思い出したので。

その提言とは、
来るべき”高齢者の津波”に備えるためには
「街角に高齢者がいつでも死ねるよう“安楽死ブース”の設置を」というもの。

現在の人口動態では
将来的に急激な人口の高齢化が避けられず、
このままでは”高齢者の津波”が押し寄せてきて
彼らを支えきれない若年層との間で内戦が起こるので、

それを避けるためには、
特に急増の激しい超高齢層に死んでもらうしかない……というわけです。

それで、街角ごとに“安楽死ブース”を設置して、そこへやってきた高齢者には、
まずマティニを飲んでもらってメダルも上げよう、それから死んでもらおう、と。

何らかの手段を講じれば、
意思決定ができる人が自分で決めたことだという確認だって可能なはず、とも。

もともと物議を醸す言動で知られた作家らくし、
どこまで具体案として本気なのかは不明ですが、

安楽死アドボケイトのDignity in DyingのDevina Hehir氏は
Amis氏の提案が身近な人々の不幸な死に方に由来していることを重視し、

「この問題への回答は2層になっています。
まず良質の終末期ケアが受けられて、そこに十分な予算が投資されること。

次にターミナルな病状で精神的にも意思決定可能な大人が望む場合には
自殺幇助が認められること」と。


そう。
Hehir氏が言うように、
終末期ケアの経費をかけないでいいように元気なうちからどんどん死んでもらおうというのでは、
どこが「自己決定」なんだ、話をグズグズにするのも、いいかげんにしてください、と言いたい。

なにやら、いよいよ「死の自己決定権」も化けの皮が剥げて正体が見えてきた感じですが、

こんなふうに「死の自己決定権」を盾にとった「死なせろ、殺せ」の声こそ
去年からうねりまくって、いよいよ今年に入ったかのように水門を脅かしている、
そして、もうじきその水門を決壊させて、世界中に荒れ狂おうとしている「殺せ!津波」じゃないか。
2010.02.10 / Top↑
オランダと言えば1994年に世界で初めて自殺幇助を合法化した国。
さすがは“尊厳死先進国”と言うべきか――。

オランダの学者・政治家らのグループから
「不治の病で耐え難い苦痛がある人が十分な説明を受けた上での自己決定で」という
現行法の要件を緩和し、

「生きるのが嫌になったから死にたい」と自己決定することなら
70歳以上の高齢者にも自殺幇助を権利として認めよう、と主張する声が上がっている。

4万人以上の賛同署名を集めて議会での議論を求めようと活動を開始したとのこと。

「自殺幇助は専門の研修を受けた医療の専門家が慎重なプロセスを経て行うのだから
それが高齢者虐待につながることはない」

「今の法律を作る際にも濫用が起きると言われたが、
実際には起きていないじゃないか」と。



グループの中にフェミニストの方が含まれていて
自己決定権の重要さを説いていることに、個人的には目を引かれました。

ものすごく広い意味では自分もフェミニストの一人だと考えているので、
本来あってしかるべき権利を与えられていないという不当な状況に抗い、
自己決定権をもぎ取るために壮絶な戦いを強いられてきたフェミニストにとって
自己決定権に他の立場からは想像できないほどの重みがあることは理解できるのですが、

女性に未だ十分に認められていない権利は自己決定権以外にも沢山あって、
医療や介護において男性と同等のサービスを受けることができていないという
調査結果もある。

男性を「ケアされる者」とし女性を「ケアする者」と無意識に位置付ける
社会の姿勢だって、別に日本だけの話じゃない。

そういうことをそのままにしておいて「死の自己決定権」だけを求めるのでは、
逆にすべての不十分や不平等が是認されてしまうことになるのではないのか、と思う。



【15日追記】
この人たち、議会に審議を求めるため必要な4万人以上の署名を集めたとのことです。


【3月9日追記】
なんと、人口1600万人の国で、現在112500人が署名とのこと。
ただ、医師でない人に研修をさせて幇助させようという提案で、
医師の関与がなくなることから医師会は反対。

2010.02.10 / Top↑
早産の原因となると思われる遺伝子の変異まで見つけたんだそうな。:それでどうしようというのだろう? 何でも遺伝子で決まるみたいに言うのも、そろそろ限界だという声、もっと出てきてもいいと思う。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8498712.stm

アフリカのマラリア患者はグレードの低い薬しか与えられていない、とのWHOの調査結果。:あらま。いったい、どうしたんですか、ゲイツ財団さん。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/8504137.stm

英国の大学が資金カットのため教師陣の首切り、キャンパスの閉鎖など、大量の失業者を出すことに。:大学院生が教授の代わりを務めると、サブタイトルにはあるんだけど……。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/feb/07/job-losses-universities-cuts

そういうのに関連して、この前びっくりした、森岡正博先生のブログのこの記事。大阪市立大学で文系学部の閉鎖が決まった、とのこと。:国際競争力のためには理系学問を重視したいのかもしれないけど、文系学問を大事にしないと人類のためにならないと思う。
http://d.hatena.ne.jp/kanjinai/20091211/1260489823

2008年1月の名高きステロイド・ディベイトはNorman FostとJulian Savulescuが出ているとあって、当ブログでも取り上げていますが、今頃になって面白いものを見つけました。そのディベイトの進行と同時に行われたと思われるネット投票。ステロイド解禁派の明々白々な敗北をみて、ほっとした。(最近、ある人に教えてもらったところでは、SavulescuってPeter Singerの1番弟子だそうな。ほぇ~。じゃぁ、案外にSinger とFost は、実はお友達だったりしてね。いや、冗談ではなく、これまでの言動からすれば十分ありうる……これ、Ashley事件においては非常に重大な可能性……。)
http://intelligencesquaredus.org/index.php/past-debates/we-should-accept-performance-enhancing-drugs-in-competitive-sports/

ギャンブルでお金をすりたくないという不安を起こしている脳の部位が判明したそうな。:こういう研究もあるんですねぇ……。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8504605.stm

自殺念慮があって、うつ病がひどいティーンには地域での従来型の治療よりも家族カウンセリングが即効性があって有効。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/178418.php
2010.02.09 / Top↑
ロシアのジャーナリスト Aleksandr Nikonov氏が
殺そう。苦しまないように」というタイトルの記事を書き、
“出生後中絶”は慈悲の行為だと主張。

障害児の誕生は多くの家族にとって耐えがたい悲劇であり「地獄」である、
「新生児を殺すのは実際のところ中絶と同じ」、
自立することのない障害児を殺すのは「真のヒューマニズムである」と述べて、
高齢者が安楽死で殺されているのと同じように、
新生児を安楽死させる権利を親に与えよう、と主張した。

また、ロシアでは非常に非礼であるとされる debil という言葉を
発達障害のある子どもたちに使用しており、

障害のある子どもの母親2人がNikonov氏を相手取った訴訟を起こした。

同氏を罰するというよりも、社会が障害児に対して冷たくなりつつあることへの懸念から。
障害児をケアすることについて問題提起をしたいから、とも。

その一人 Svetlana Shtarkovaさんは
「このような意見は決してNikonov氏に限ったものではなく、
統計でもロシア人の4人に1人が同様の意見を持っているとされています。

通りすがりの人から障害児がいるのは自業自得だといわれたこともあるし、
障害が重いと医師もソーシャルワーカーもちゃんと対応してくれない」と。

彼女らの弁護士がヒットラーに例えたことを受け、
Nikonov氏はRadio Free Europeのインタビューで

自己紹介しましょう。私はアドルフ・ヒットラーです。
どうも、そうふうに言われているらしいんでね。

しかし、本当にひどいのはそう言っている連中の方です。
私に向かって『人が苦しむのはいいことで、フェアなことだ、
人間らしさという机上の概念さえ影響されない限り
苦しむ人はそのまま放置しておけばいい』といっているわけだから。

そんな連中はくそくらえだ。

人を苦しませるべきじゃない。私はそう思う。
黙らせようったって私は黙らないよ。


当然ながら記事は最後にPeter Singerを引き合いに出しています。

そして、Singer や Nikonovの言っていることが、ただの思想でとどまらず
実際に社会もそのように考え始めていることを懸念しています。

Peter Singerの価値観の勝利という
2008年7月のWesley Smithの記事を引用して、
オランダで新生児の死亡例の8%は医師が殺したケースで
そういうケースが年間90例もある、

さらにオランダの医師会までが、それを支持している、と。



どうして障害児・者切り捨て論を説く人というのは
こんなふうに揃いも揃って、上から目線で
押しつけがましく攻撃的な物言いになるんだろう?

なぜ、冷静に誠実に議論をしようという姿勢でないのだろう。

Peter Singer も Norman Fost も この人もそうなんだけれども、
揃いも揃って2チャンネル的なものの言い方をする。

そういう姿勢に、
私はそれこそ知性の欠落を感じてしまうのだけど……?


2010.02.09 / Top↑
スコットランドの議会に提出されている自殺幇助合法化法案が
ターミナルな状態の人だけでなく身障者も対象としていることは
こちらのエントリーで紹介しましたが、

06年に元GPだった母親をスイスのDignitasに連れて行って死なせた経験から
死の自己決定権アドボケイト Dignity in Dyingの活動をしているEdward Turner氏が
スコットランドの自殺幇助合法化法案が身障者を対象に含めていることについて、

道徳的に曖昧で、
障害者の生の価値が過小に評価されることにつながる恐れがあり、
障害について経験もなく無知な健常者中心の社会が
障害問題の解決策は自殺幇助だと短絡してしまうのではないかと
障害者らが不安を感じるのも当然だと批判。

また、
申請までに18ヶ月間スコットランドのGPに登録していることという条件についても
お金やコネのある人や、準備期間をおける人なら、回避可能だ、とも。

一方、法案提出者でパーキンソン病のMacDonald議員は
事故で全身マヒになってDignitasで自殺した23歳の元ラグビー選手Dan Jamesさんや
先日来話題になっているMEのLynn Gilderdaleさんの母親による自殺幇助事件から
むしろ、必要だと考えると述べ、

生きることが耐えがたいなら
そういう人たちにも死ぬ権利を与えようとしているのです。
彼らには自己決定権があるのだから、意思を尊重してもらえて然りです



Dan Jamesさんというのは、
ラグビーの練習時の事故で首から下が麻痺してしまった23歳の青年で、
「下級市民(second class citizen)」として生きていくのは耐え難いから
スイスに行って死にたいと主張し、両親がDignitasに連れて行って自殺させたケース。

どちらかということ、これまでの自殺幇助合法化議論では
「すべり坂」の象徴のように取り上げられてきた事件ですが、

両親の行動について、英国の公訴局は取り調べは行ったものの
「起訴することは公共の利益にはならない」という
訳のわからない理由で不起訴としたために、この事件を機に、
「近親者の自殺幇助行為は不起訴」「これまで罪に問われた人はいない」と
広く言われることになり、

やがてDebby Purdyさんが「明確化せよ」と裁判を起こす素地を作りました。
(詳細は文末にリンク)

Purdyさんの要求を下級裁判所は突っぱね続けたものの、
最高裁が公訴局長に「はっきりせよ」と命じたために
出てきたのが9月の公訴局長の法解釈のガイドライン暫定案。

そこへ先月、Inglis事件、Gilderdale事件(文末にリンク)の判決から
近親者の自殺幇助合法化議論は、にわかに慈悲殺擁護論にまで拡大して
今や「あのガイドラインでは不十分」という空気。

そこまで来ると、
最初に一線を越えたと見られたDan Jamesさんの事件も、もはや「すべり坂」の象徴ではなく、
「ほら重症障害は死ぬよりも耐え難いのだから」という証拠にまで使われる……。

世の中には、一度はJamesさんと同じところに陥りながらも、
周りの人々の支援によって、そこから這い出てきて
「生きていてよかった」と思えるようになった人だって沢山いるのに、

慢性疲労症候群(ME)の女性が17年間も寝たきりでいるなら、
その人と母親に必要なのは、自殺させてあげることでも幇助や慈悲殺を認めてあげることでもなく、
2人それぞれに対する支援の介入だったろうに。

支えることの必要になど誰も触れないまま
「生きることが耐えがたいなら死なせてあげましょうよ」という社会は、
無言のうちに「だって、どう考えたって、障害を抱えて生きているなんて
誰にとっても耐え難いことに決まっているでしょ、ね、ね」と信号を送っている――。





2010.02.09 / Top↑
Kathleen(Kay) Carter さん(89歳)は2人の娘を伴ってスイスに行き、
1月15日にDignitasで自殺。

Dignitasで自殺した15人目のカナダ人となった。
(公表されたのはCarterさんが初めて。)

前日に「私は明日、尊厳をもって死ぬことを選びました」というメモを
口述筆記で家族と友人宛に残した。

近親者らが自殺幇助で罪に問われないよう、Kayさんがあらかじめ指示していたように
その手紙のコピー120通が、娘たちによってスイスから発送された。

Choosing to die with dignity
Ottawa Citizen, February 8, 2010


なんだかなぁ……ここでも、まったく解せないのは Kay Carterさんの病名。


このリンクの説明を読む限り、症状は要するに、腰痛とか身体のしびれのようなのですが
記事では「脊柱管狭窄症というターミナルなconditionだった」と書かれている。

(ちなみに英語で condition という場合、「状態」というよりも
「病気と障害」を一括して称する場合によく使われているように思います)

一体、どうして脊柱管狭窄症がターミナルな病気または障害なのか。

この病気そのものが命にかかわるようなものだとは思えない上に、
よほど重症化したからといって、それだけでターミナルになるということすら
私にはあり得ないことのように思えるのですが、
もし違っていたら、どなたかご教示ください。

しかも、この記事は脊柱管狭窄症の追加説明として、
以下のようにも書いているのです。

「脊柱管狭窄症、これがどういうものかというと、
Kayさんが“もう、まったくどうすることもできなくなる”と表現したようなcondition」。

Kay さんが実際に使っているのは totally collapsing。

collapse というのは建物などが崩壊するイメージで、
ここでは、人の肉体・精神の状態を、そのように完全に崩壊させていくような、という意味でしょう。

つまり全身がどうにもいうことをきかなくなる(精神的にも?)といった感じを言っているのでしょう。

しかし、これは、あくまでも本人の主観的な感じ方であって、
この記事のような文脈で「脊柱管狭窄症というのは、これほど酷い病気なのです」と言わんばかりに
その主観的な言葉でもって病気がどういうものかの”解説”に変えてしまうのは、

例えば風邪で熱を出している人が
「体中の関節が痛くて、だるくて、とても起きる気にならない」という言葉尻を捉えて、
「風邪というのは全身の関節がやられて、その痛みとだるさで寝たきりになってしまう病気」と
解説してしまうに等しいのでは……?


Inglis事件、Gilderdale事件を巡る世論の喧騒に
殺された人が実際にどういう状態だったかにはもはや誰も興味すら持たないかのようだ……
という感想を私はずっと抱いてきたのですが、

慢性疲労症候群が
「母親が慈悲で殺したって許される」どころか「よくぞ殺してあげた」と言わんばかりに
称賛されるほどの悲惨な病気としてイメージ操作されることと、

脊柱管狭窄症があたかも、それだけでターミナルとなる病気であるかのように
Kay Carterさん自殺の報道がイメージ操作されていることとの間には、

なにか、非常に巧妙でイヤらしいものが通じている――。
2010.02.09 / Top↑
米国政府が乳がんと子宮がんと関係しているとされる遺伝子BRCA1とBRCA2の特許権を
Myriad Genetics 社に認めたことについて、

米国遺伝学会、分子病理学協会など20の原告を代理する
American Civil Liberties Union(ACLU)が違法だとして訴えた訴訟で
審問が行われた。

訴訟の争点は、企業には「自然の産物」と「自然の法則」に対して
特許を持つ権利があるかどうか。

双方とも、
研究者が特許を持てるのは
新薬、新治療、新装置、またDNA配列を掴む個別の方法についてであり、
自然現象や自然の法則など自然において起こることに特許は持てない点では一致しているが、

被告側はBRCA遺伝子をそのほかDNAから分離した(isolrate)ことによって
BRCAは特許の対象となった、と主張しているのに対して、

原告側は
「遺伝子は発明されるのではなく、同定されるもの」として
他から分離する過程がどのように精密なものであれ、
DNAそのものの構造を変えるものではなく
BRCAは本質的には「自然の産物」のままである、と反論。

このほかにもアインシュタインの e=mc2 やら
合衆国憲法の修正第1条やらも関係している議論のようなのですが、
このあたり、私にはついていけないので、パスして、

判決は数ヵ月後に予定されており、

もしもACLU側が勝訴ということになれば、
日々、遺伝子に特許を取る競争が激化している研究業界に
大きな変革が起こることになるだろう、と。



私は、遺伝子に特許というのは、
ずうううううぅっと前のチャクラバティ裁判とか、そういう時代に
もう米国の裁判所が勝手に認めてしまったことだとばかり思い込んで、


まだ、こうして訴訟を起こして問題提起しようという人たちもいるんだと知ると、
ちょっと希望とか勇気という言葉を思い出す感じ。


【3月30日追記】
地方裁判所の判事は、遺伝子への特許を認めない判決をくだしました。
http://www.nytimes.com/2010/03/30/business/30gene.html?th&emc=th
2010.02.08 / Top↑
米国の Counsyl社が開発し、
既に米国のいくつかのクリニックで提供されてきた遺伝子検査が
Central Londonのthe Bridge生殖医療クリニックで数ヵ月後にも
子どもを産もうとする英国のカップル一般に向けて提供されることになった。

簡単な唾液の検査で、
嚢胞性線維症、脊髄性筋委縮症、鎌状赤血球症など109もの遺伝病について、
そのカップルの子どもがかかる可能性を調べることができる、という謳い文句。

これら遺伝病全体では280人の新生児の一人に影響するため、
広くこの検査が採用されるようになれば、
これらの遺伝病を激減させることができる、とも。

値段は1カップルにつき400から700ポンドの予定。

Bridgeクリニックによれば、
1つ1つは非常にまれな病気ではあるが、
109すべての病気を合わせて考えれば、
3人に1人がいずれかの遺伝子変異を持っているのだという。

米国で検査したカップルの結果からは
165組に1組で、カップル双方が同じ遺伝子変異を持っていたそうだ。

そういうことがあらかじめ分かっていれば、
体外受精を使って胚の遺伝子をスクリーニングし、
健康な胚を子宮に入れるよう予防策をとることができるし、
または遺伝子変異があれば中絶することを念頭に妊娠中に胎児の遺伝子を調べることも、
精子提供を受けたり養子をもらう選択も可能になる、とも。

Counsyl社のテクノロジー部門の責任者は
ユダヤ人社会がテイ・サック病のスクリーニングを行い、
キャリア同士は結婚しないよう勧めることで絶滅させた事例から思いついたといい、

「すべての大人が子どもをもつ前に検討すべき検査です。
妊娠中にはアルコールを飲まないし煙草を吸わないのと同じように
遺伝病のスクリーニングも知っておくべきこと。

自分たちがどういう変異のキャリアなのかを知る権利がカップルにはあるし、
傍からあれこれ口を出されることなく、
それに基づいて生殖に関する決定を行う権利もあります」

Bridgeクリニックの科学ディレクターは
「これらは稀だとはいえ、恐ろしい(horrible)病気ですよ。
この検査によって、リーズナブルな費用でリスクを下げることができるのです。

我々はカウンセリングも検査と一緒に行いますから
仮に結果が陽性だったとしても、適切な情報を提供し、
どのような選択肢があるか、そのカップルにはちゃんと理解してもらえますし」

しかし、Counsylは今後、消費者直結のインターネット販売で
自宅使用向けに売り出すことを予定している。

医療上の監督がおよぶのかどうか疑問視する声が上がっているほか、
検査が普及すれば胎児スクリーニングや中絶の需要も増えるだろうとも言われ、
倫理問題が指摘されている。

政府のヒト遺伝コミッションのメンバー Frances Flinter遺伝専門医は
この検査には「優生思想の匂い」がする、と語り、
「人々の不安を無用にもてあそぶものだ」と。



一方、Medical News Todayには、
脊髄性筋委縮症のスクリーニングはコスト効率が悪い、との学会報告の記事が。




2010.02.08 / Top↑
“名誉”殺人 honor killings……というのだそうだ。

一族の名誉を傷つけたとして誰か(多くの場合は子どもや女性でしょう)を殺す行為が
トルコで急増しており、現在、同国の死者の半数がその犠牲者だという。

去年の12月、通報を受けた警察がAdiyaman地方のKahtaで
自宅の鶏小屋の下に掘られた2メートルの深さの穴に埋められていた
16歳の少女MMの遺体を発見した。

少女は両手を縛られ、座った姿勢だった。
死後の解剖では、肺にも胃にも大量の砂があったとのこと。
生き埋めにされていたのだ。

通報者によれば、この少女は男の子たちと話をしたことを責められ、
家族会議にかけられた後、埋められたのだという。

父親と祖父が逮捕された。
父親は親族に男の友達がいるのが気に入らないと話していた、
祖父は異性と性行為を行ったことで少女を殴ったと言っていたとのこと。

母親も逮捕されたが、その後、解放された。
2人が起訴されたかどうかは不明。



自身が生きづらくなってきたストレスを
子どもへの虐待に振り向けている大人が増えているんじゃないんだろうか。

それとも経済の弱肉強食の原理が、
人間の社会そのものを弱肉強食の原理に落とし込んでいっているのか。

その2つが実は重なっているということなのか。

世界中でヘイトクライムが急増していることとも、きっと繋がっている――。





10人に1人の子どもが虐待を受けている(2008/12/5)
2009年5月12日の補遺(英国70年代の児童養護施設での児童虐待事件)
(これは続報もいろいろあったのですが、補遺が見つけられません。たしかアイルランドでカトリック系の施設での性的虐待も表に出てきていたけど、教会も警察も知っていて、もみ消していた、という話も。)
2010.02.06 / Top↑
まず、前半は自殺幇助関連

いただきものの日本語情報で、ベルギーの安楽死法関連
http://cellbank.nibio.go.jp/information/ethics/refhoshino/hoshino0079.htm


ここから英語情報でここ数日の自殺幇助議論関連
Assisted suicide in Guernsey ‘depends on UK’
BBC, February 3, 2010

Galloway warns against legalizing assisted suicide
East London Advertiser 24, February 5, 2010




ここから、いつもの補遺

長年の女性兵士らの訴えを受け、ペンタゴンは世界中の米軍の医療施設で緊急避妊薬(morning-after pill)を販売することを決定。:もとはレイプ被害者などに向けた緊急時の避妊薬だったのに、いつのまにか「72時間以内にこれさえ飲めばOK」という日常の避妊薬になったと? これも相当強いホルモン剤らしいのですが。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/02/04/AR2010020404050.html

血漿を凍結してろ過することによって拒絶反応を防ぎ、非適合の姉(妹?)からの腎臓移植に成功。英国。世界初。
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article7015508.ece?&EMC-Bltn=HBPBO2F

自動的に血糖値を計測するセンサーと、その計測結果を受けてインシュリンを出すポンプ装置を連結したシステム「人工すい臓」の治験が17人の1型糖尿病の子供たちに行われて、結果が良好とのこと。LancetにCambridgeの研究者ら。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8498993.stm

スウェーデンのテレビ報道によると、ロシア軍は90年代にバルト海に放射能廃棄物を捨てていた、とのこと。象牙海岸の事件を思い出す。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8499762.stm
2010.02.06 / Top↑
9月にイングランド、ウェールズ、スコットランドを訪問する予定の法王ベネディクト16世が
スコットランドに行った際には聖職者と議員に対して
自殺幇助合法化法案に反対するよう求める、と。

スコットランドではMargo MacDonald議員の合法化法案提以降、
プロ・ライフの活動家からヨーロッパ人権条約違反だとの批判や、
合法化反対ロビーThe Care Not KillingからMacDonald議員の越権行為だとの批判が出たり、

また保健相のNicola Sturgeon氏が高齢者と障害者の虐待につながるとして反対の意を表明。
英国医師会も同様のスタンスをとっている。

法王は自殺幇助について
スコットランドで人々が宗教から離れている証だとして、
カトリックの聖職者に反対の声を上げるよう呼び掛けた。




2010.02.06 / Top↑
重症の仮死状態で生まれたカナダのIsaiah君の無益な治療訴訟については
以下のエントリーで追いかけてきました。



Wesley Smithと一緒に安楽死合法化の動きに真っ向から反対運動を繰り広げている
Euthanasia Prevention CoalitionのAlex Schadernberg氏がこの事件を取り上げ、
May夫妻と直接のコンタクトをとって支援していることを明かしています。

まず、最初に送ったサポートの手紙では、
もしも、ここでIsaiah君から呼吸器が取り外されて、
その結果、彼が死んだとしたら、それは安楽死ではなく自然死だと
書いたとのこと。

それで、どうしてMay夫妻の訴えを支持するのかというと、
おおむね彼の書いていることは以下の通り。

ここ10年程の間に医療現場に生命倫理が導入してきた「無益な治療」論は
当初の「効果がなく患者に苦痛を強いる」という治療の無益から
「無益とみなされた患者からの効果的な治療の引き上げ」の正当化へと
変質してきている。

呼吸器は効果的に酸素を供給して、患者は成長を続けているのだから、
Isaiah君の人工呼吸器それ自体は無益ではない。
病院や医師が取り外しを望んでいるのは、
呼吸器をという資源が無益な患者に
無駄遣いされていると考えるからである。

もしもMay夫妻がこの訴訟で敗れたら、いったいどういうことになるか。
次は認知症の患者、重症障害者、さらに対象は広がっていくだろう。

こんな前例ができてしまったら、
カナダで安楽死が合法化された暁には、
一体どのように利用されることか。

Baby Isaiah Case – Euthanasia or not?
Euthanasia Prevention Coalition, February 2, 2010


無益な治療論が当初の「治療の無益」から「患者の無益」への変質してきていることは
当ブログでも何度も指摘している通りだし、
ここで書かれていることには大筋もちろん同意なのですが、

私として、最近とても引っかかっているのは、
例えば、Schaderberg氏が書いている以下のような箇所。

母親のRebecca Mayさんと話したところ、
Isaiah君を家に連れて帰ってケアしたいという希望をはっきり語った。
Isaiah君があまり長くは生きないだろうことも、生きたとしても
重い障害を負うだろうことも彼女は理解している。しかし
それでもなお、どういうことになろうと彼をケアし、愛したいと
彼女は望んでいるのだ。

May一家を支えなければならない。2人が望んでいるのは家に連れて帰って
愛しケアしてやることができるところまで回復してくれるかどうか
確かめるために呼吸器を装着したまま90日間の猶予がほしいということだけだ。
その、どこがいけないというのだろう。

安楽死や「無益な治療」論に対して抵抗運動を続けている活動家ですら、
「何が起きようと、家族がケアを引き受けると言っているんだから」という。

カナダでは、支援する側でさえもが無意識のうちに
「何があっても家族がケアを引き受ける決意」を
“無益な治療”停止に抗うための妥当な交換条件として是認している。

これでは、支援する側も病院と一緒になって
「救命してほしければ、それによって社会的コストが発生しないように
後のことは何があっても家庭で引き受けることが引き換え条件」と言っているようなもの。

「障害のある子どもの命を助けてほしければ、それも家族の自己選択。
あとはすべて家族が自己責任でやるんだろうな」。

うかつにも「無益な治療」論への抵抗の論理までもが
そんな恫喝を内在させてしまっているのでは?

もしも、この先もそんな論理で「無益な治療」論に抵抗していくならば
命の選択を盾にとって介護負担を家族に背負わせていくことになるのでは?

その先にあるのは、医療サービスも介護支援も奪われていく社会――。
2010.02.05 / Top↑
いいかげん、こういう声が出ないといけないと
私も待っていました。

保守党のMann Winrterton議員ら超党派の議員が連名で
自殺幇助関連でのBBCの報道姿勢に偏向がある、と批判。

Kay Gilderdaleを出演させたPanoramaでの特集番組に加えて、同じ日に
作家のTerry Pratchettに「自殺幇助委員会」の提言スピーチをさせるなど
合法化の推進に偏向した報道を繰り返している、

(Kay Gilderdaleへの直接取材を含んだPanoramaの一部はこちらから見られます。)

また、報道姿勢にも
お涙ちょうだいのセンチメンタリズムでの誘導が見られ
反対派の意見を捻じ曲げて伝えるなど、

「英国の多くの障害者団体が自殺幇助と尊厳死の合法化には反対しているというのに
いつものようにBBCはまたも障害者の権利を無視している」と批判し、

こういう姿勢を改めなければBBCの公的資金を削除するというくらいの姿勢で
政府は指導すべきだ、と。



私は、ここ3年ばかり、適当にニュースを拾い読みしてきただけですが、
それでもBBCって、ものすごく科学とテクノ寄りだなぁ……と
強く感じるようになっていたので、

あぁ、やっぱり、もともとそういう偏向した姿勢が露骨だったのだな、と。

そういえば、自殺幇助の合法化ついて尋ねた世論調査の結果を
「世論は慈悲殺を支持」と事実と違うタイトルで報道したのもBBCでした。
2010.02.05 / Top↑
アルツハイマーは癌以上に社会コストがかかっているのに、癌よりも研究に回ってくるお金がはるかに少ない。:いかにも医学研究の資金分捕り合戦の論理なのだろうけれど、こんな物の言い方が横行すればするほど、アルツハイマー病の人たちが社会の厄介者にされていくと思うし。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/177996.php

WA州でナーシングホームのメディケア患者を地域の adult family home なるものに移していこうという動き。:adult family homeというのは初耳。近く読みたい注目記事。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/178023.php

スペイン国務省の肝いりでスペインの科学者らが、ハイチで地震後に子どもがいなくなったと届け出た大人からDNAサンプルを採っている。誘拐や人身売買の被害にあった子どもたちを見つけ出し親元に帰す際のトラッキングのため。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/178063.php

米国の精神医学会誌に報告された研究で、ADHDの女児を大人になるまで追跡調査したところ、男児で言われていたように女児でもADHDのある子どもでは将来うつ病や不安障害、摂食障害を発症するリスクが他の子どもたちよりも大きいことが分かった、と。これに対して、「だからといって先回りして、そういう子どもたちに薬を飲ませておこうということにはならないので、短絡しないように」と、製薬会社との利益関係を排除した医学雑誌を創刊した医師が警告している。でもって、この研究を率いた人は、かのBiederman医師。:この人、当面研究活動は自粛すると言っていたような気がしたのだけど、このリンクを振り返ってみたら、ちゃんと実験と政府資金の調査は続行すると但し書きがありました。その中の1つだったんでしょうか。
http://www.reuters.com/article/idUSTRE61240Y20100203

自分の乳児の息子を使って児童ポルノを作っていた40歳、公務員の父親。豪。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/father-used-baby-in-porn-court-told/1742143.aspx?src=enews

日本語情報。ミャンマーで女性を誘拐して一人っ子政策で嫁不足の中国の農村部に売り飛ばす商売が横行している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100204-00000061-san-int
2010.02.04 / Top↑
Cambridge大学の脳科学ユニットのAdrian Owen医師ら
英国とベルギーの研究者らによる調査で、

03年に交通事故で脳を損傷し、永続的植物状態に陥った29歳の男性に
脳スキャンで調査を行ったところ、彼が言われていることを理解しており、
質問にYes-Noで応えることも意思決定を行うことも可能であると分かった。

植物状態と診断されて外見からは意識があるとは見えない患者の
5人に1人は語りかけられる内容を理解しており、
脳スキャンを使えば簡単な質問にYes,―Noで意思疎通ができる可能性がある、と。

当ブログでも「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)で紹介していますが、
Cowen教授らのチームはこれまでにもこうした研究を続けてきており、
この5年間で初めて、コミュニケーションに成功した。

この成果は、今後、哲学的、倫理的な問題を投げかけるだろう、と。




私は、このチームの研究については何度か記事を読むたびに、
「分かっていると証明できないこと」は「分かっていないと証明された」のと同じではないとの
自分の持論を思い、

「どうせ分かっていないのだから死なせてもいい」という論理に歯止めをかけてくれる、
こうした方向の研究がもっと盛んに行われてほしい……と、
そちらの方向でばかり眺め、期待を寄せていたのですが、
もしかしたら、これ、まったく私の勘違いだったかも……。

というのが、ですね。
上記のTelegraph記事(私が読んだのはこれのみ)は、

「英国にはいつの日か意識を取り戻すかもしれぬと
医師によって生かされている(kept alive)永続的植物状態の患者が約1000人いる。
なかには、Hillsborough 事件の被害者 Tony Blandのように
家族が治療を中止して死なせる権利を勝ち取ったケースもある」
と述べて、

しかし、
医師らはこの技術は患者に苦痛があるかどうかを知るためには使えるが、
だからといって『じゃぁ患者本人に生きるか死ぬかを決めさせましょう』という話には
距離がありすぎると言っている……と書いているのです。

これは、そうした質問をしたうえで、それに対する答えの部分を引用しているものでしょう。

Dr. Cowenらの意図は、もう少しまっとうなように思うのですが、
どうもメディアを始め、社会がこの技術に抱いている期待は、
もしかしたら「意思疎通ができたら自己決定で死んでもらえる」という方にあるとか……?

まさか、そういう方向に話をもっていかれるなんて、
まったくもって想像の外でした……。

なんだか知らないけど、もう、すべてが
「適当にうまいこと辻褄を合せて、死んでもらいましょう」という方向に
向かっていくのか……そんな気がしてきた……。

              ――――――

ちなみにTony Blandさんとは、こちらのWikipediaの記事によると
1989年4月15日のLiverpool 対 Nottingham Forestのサッカーの試合で
サポーターが入口のトンネルに殺到してクラッシュを起こした事件(Hillsborough事件)で
負傷し、植物状態となった男性。

両親の同意を受けた病院が「尊厳のある死」をと裁判所に訴え(1993年)、
英国で生命維持装置を取り外して死なされた最初の患者となった。
2010.02.04 / Top↑
Ashley事件のDiekema医師って写真が趣味で、なかなかの腕前。以前から自分が撮った写真を講演のパワーポイントの背景に使ったり、あちこちの趣味人のサイトに投稿したりもしているのですが、2月2日にこの写真をまた投稿している。この人、あれだけ論文を書きまくって、倫理学者としてあちこち引っ張りだこで、なおかつ、趣味の写真まで……余裕があるのね……。いまや“わが世の春”なのかしら……。
http://connect.sierraclub.org/post/TrailGroups/Trails_Monthly__Photo_Contest_/photos/copper_ridge_view.html?cons_id=&ts=1265197601&signature=954343ebb5f202311a504b81c62f4651

10人のアメリカ人がドミニカ共和国に連れ出そうとしていたハイチの子供たちのうちの何人かは、当初言われていたように地震で親を失った子供ではなく、親が生きていることが判明。取材を受けた1人の子どもの母親は、金銭と引き換えに子どもを引き渡したことを否定。5人の聴取が行われて、彼らは養子縁組を予定していた、というのだけれど。
http://www.nytimes.com/2010/02/03/world/americas/03orphans.html?th&emc=th

ICUに入った患者の家族介護者は、アルツハイマー病の人の家族介護者以上のストレスにさらされ、うつ状態になる確率が高い、という調査結果。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/177899.php

Obama大統領の医療制度改革の中に含まれている家族介護者へのレスパイト事業に、批判の記事。これまでの施策の間違いの典型例が繰り返されているというのだけど、ざっと読んで、何がいけないと批判しているのかイマイチ分からないような……。
http://www.kaiserhealthnews.org/Columns/2010/February/020110Gleckman.aspx

どこかの補遺くらいで拾っていると思うのだけど、去年、作家のMichael Jenningsさん(91)が睡眠薬で自殺した件で、最後の4日間付き添った2人の娘が手を出していないことを検察が認め、本人だけの「独立した自殺」だったとして娘2人は自殺幇助については不起訴に。:ややこしい事態だ。「独立した自殺」と「幇助された自殺」の区別は検察がしっかり調べるのなら、Gilderdale事件で「最初のモルヒネは本人が注入した」という事実は誰がどうやって実証したのだろう????? これ、Gilderdale事件に関する個人的な疑問の1つ。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article7012870.ece

温暖化問題で科学者がデータを操作した疑いがもたれている件で、科学者らのメールから科学論文の査読のいいかげんが浮き彫りに。:医学論文の査察が機能していないのではないか、という疑いは、私は06年のGunther&Diekema論文以来のAshley論文を読むたびに新たにしている。だって、論理性の欠落があんなにはなはだしいものがどうして査読を通過するのか理解できないし、擁護論文の大半は「各論は懸念と批判の指摘だけど、総論としては賛成」といういい加減なものばかりなのだから。
http://www.guardian.co.uk/environment/2010/feb/02/hacked-climate-emails-flaws-peer-review

オーストラリアで2番目の医療生協がクリニックをオープン。:え? じゃぁ、日本って、案外ものすごく進んでいる?
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/medical-coop-owned-by-patients/1740773.aspx?src=enews
2010.02.03 / Top↑
アルツハイマー病を患う作家のTerry Pratchett氏の
「自殺幇助の希望を個々に審査・承認する委員会の設置を」という提言については
こちらのエントリーで紹介しましたが、

それに対して英国アルツハイマー病協会がコメントを出しました。

英国には認知症を抱えて生きている人が70万人もいて、
その中には終末期の選択肢についていろいろ考える人もいるだろうことは
十分に理解できます。

アルツハイマー病協会としては、死の幇助についても安楽死についても
現在のところ法律改正を支持していません。

認知症の人に必要なのは、本人の選択が可能な、もっと良い終末期ケア、
当たり前の安楽と尊厳が提供されることです。

残念ながら、それどころではないお粗末なケアを受けているという報告ばかりを
本協会は聞いております。

終末期の選択肢について議論したいと望むのはTerry卿に限った事ではありませんが、
Terry卿の見解はきわめて個人的なものです。

終末期の意思決定については認知症患者と介護者が声を上げられることが不可欠です。

この重要な問題に関して会員の意見を反映していけるよう、我々は会員の意見を聞いていきます。



たいへん慎重なもの言いながら、要は、
死んでもいいと認める前に、まず生きるための支援をちゃんとしなさいよ、ということですね。

同感です。


2010.02.03 / Top↑
GuardianにDr. Crippenというシリーズがあるようです。
Dr. Crippen とは英国で長年GPをやってきた人の通称。
したがって、英国GPが匿名で意見を投稿する欄ということでしょうか。

そこに、Gilderdale事件の被害者が慢性疲労症候群であることに目を向ける記事が
やっと登場してくれました。

A caring mother who kills her severely brain-damaged son is found guilty of murder and sentenced to life imprisonment. A caring mother who kills her daughter who is suffering from "myalgic encephalomyelitis", a condition that many doctors only recognise as an inappropriately named psychiatric illness, is found not guilty of murder. It is incomprehensible that she was found not guilty. Where is the logic? The law is clear, but juries are not prepared to enforce it. The law must therefore be changed.

重症の脳障害の息子を殺した愛に満ちた母親が殺人罪で有罪となり終身刑を言い渡された。一方、多くの医師が不適切にも精神疾患だとしか捉えられない慢性疲労症候群の娘を、愛に満ちた母親が殺し、有罪にならなかった。片方が有罪にならなかったこととの間に整合性がない(というが、)どこに論理というものがあるのだろう?法律は明確である。しかし、陪審員がそれを施行したがらない。だから法を変えなければならない、というのは。


殺すことのおぞましさから目をそらせるために
不都合な動物を殺すのは「眠らせる」になり、
人生に嫌気がさした人を殺すのは「安楽死」になる言い換えの欺瞞を突く著者は

自殺幇助合法化に、いったい、どんなセーフガードが可能だというのだ、と
疑問を投げかけ、

中絶が合法になった時にも、
当時の医師は同意書にサインするのに苦しみ抜いたのだが、
その後、医師に説明責任が問われることなどないまま、
いつのまにか求めれば誰にでも行われることになってしまったではないか、と。




英国では去年、
慢性疲労症候群(ME)がどういう病気かを巡って論争が起きていたようです。
当時のGuardian の記事がこちら。


それなのに、どうして今回のGilderdale判決論争では
被害者がそのMEだったことが一向に問題視されないのだろう?????


セーフガードについても、全く同感。
90年代の日本の臓器移植議論でも売買が起こるという懸念が指摘された。
きちんとしたセーフガードさえあれば大丈夫だという反論が
それに対して行われたと記憶しているのだけど、

いま、現に、臓器売買も、臓器目的の人身売買も起こっている。
(日本の子どもが被害にあっていなければいいという問題ではないと思うし)

「セーフガードさえあれば大丈夫」と倫理問題を退けてきた人たちには
セーフガードが実際にどのくらい機能してきたかを検証する責任があるんじゃないかと
考えてみたのが、以下のエントリー。

2010.02.03 / Top↑
去年の2月に
“A療法”批判が出るとネット上で起こることというエントリーで指摘した怪現象が、
この度も、また繰り返されました。

おりしも、AJOB1月号にコメンタリーとともに掲載のDiekema&Fost論文
“Ashley療法”批判の大きなうねりを招いている時期です。

Fost vs Lantos のディベイト
いくつかのサイトで取り上げられているようです。



今度はMedicalという医療関連の掲示板サイト。

タイトルの hender は hinder という単語のタイプミスと思われ、
こういうことがどうしてAshleyの正常な発達を阻害するだろうか」。

長い記事の大半は、例によって2007年1月4日のAP通信記事のコピーです。

文末に、記事を書いた人(またはそれを装った人)の文章が数行あって、
どこかから拾ってきて継ぎ接ぎしたようなギクシャクした文章で
一応この人が批判的な立場であるかのように書かれています。

しかし記事タイトルは明らかに、批判に対する反論メッセージ。

この記事に寄せられたコメントが1つあるのですが、
こちらも摩訶不思議な代物で、

一応は批判的な立場で誰かがコメントしたように装われているものの、
記事最後の著者の数行と、ほとんど同じ言葉づかいとギクシャク文体で、
どう読んでも同一人物であることが一目瞭然です。

つまり、そういう「表向きを取り繕ってある部分」は
取り繕っている体裁だけだから、どうだっていいのでしょう。
この記事を再掲することが目的のようだから。

それにしても、
なぜ、いつも、Lindsey Tannerによる、このAP記事なのか――。

たぶん、親の目的をQOLの維持向上として説明していて、
多くのメディア記事や医師の論文のように「在宅でずっと介護するため」と
親が言ってもいない理由と取り違えて(すり替えて)いないことなど、
親がブログで説明している内容を比較的、正確に書いているからではないか……というのが
今のところ私の推理。

もう1つは、記事の内容は本当のところは大して意味はなく、
なんども07年の記事を再掲するのは、第1段落の最後にある
この問題を議論しよう。家族のブログを読もう」というメッセージを
送りたいからではないか、

つまり、相変わらず
医師の書いていることからだけでは本当のところは分からないのに、
ちゃんと親の書いていることを読んでくれれば理解してもらえるのに……と
ジリついている人がいるんだろうな……というのも、私の推理。

しかし、そういう人がいるとして、
こんなふうに、いつも前とは違うサイトに同じ記事を再掲させることができるというのは、
いったい、どういう背景や影響力なんだろう。

しかも医療系のサイトばっかり――。
2010.02.03 / Top↑
現在、英国の自殺幇助合法化関連の報道がとても多いので、
その他のニュースと分けて、とりあえず目に付いた中から拾っておくことにしました。

【英国の自殺幇助議論関連】


Assisted dying law are ‘great injustice’
BBC Radio 4, January 26, 2010
(労働党のJoffe議員へのインタビュー。愛と思いやりから行う「慈悲殺」と悪意を持って行う「殺人」とが今の法で同じ扱いになっているのはおかしい、と主張)



Assisted suicide – for and against
The BBC, February 1, 2010

York州の枢機卿が、まともな議論もなく、ただ著名人を引っ張り出して煽る自殺幇助合法化キャンペーンを非難。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/7133126/Assisted-suicide-Archbishop-of-York-attacks-celebrity-campaign-to-change-law.html

ついでに。南アフリカで「自殺幇助」事件。車の運転席に座ったBrett Kebbieさんが頭を後ろから銃で撃たれて死んだ。Glen Agliotti被告は殺人を否定、自殺幇助だと主張している。家族は本人に自殺意思があったことは認めるが、銃で撃たれたかったとは思わない、と。他にも関与した男性が2人いるらしいのだけど、直接引き金を引いていないためか逮捕されていない。
http://www.thestar.co.za/index.php?fArticleId=5335388


【その他のニュース】

男性が胸に乳房のようについた脂肪を摘出する整形手術を受けるケースが英国で急増している。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8487526.stm

Obama政権が、従業員50人以上の企業の被用者医療保険に適用される新ルールで、精神障害の給付範囲を拡大。
http://www.cbsnews.com/stories/2010/01/29/health/main6154995.shtml

統合失調症などの精神障害のリスクが高い人が魚の脂のサプリを3カ月飲み続けたら、発症の確立を4分の1に減らすことができる、という研究結果。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8490937.stm

日本語情報。ハイチの子供たちが臓器目的の人身売買の被害にあっている。:「臓器さえあれば助かる命が、臓器不足のために失われている」というキャンペーンを行う人たちは、この子たちの命については……?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100131-00000504-san-int
2010.02.02 / Top↑
お詫び【2月3日追記】

昨日、アップした以下のエントリーで取り上げたBBCの記事は、
あくまでも風刺として書かれたパロディ記事であることに、今朝気づきました。

発言の人物が特定されていないことに、ちょっと引っかかりは覚えたのですが、
記事のジャンルまでは確かめずに読んでしまったために、現実の記事と混同して書いてしまいました。
お詫びします。

でも、いると思う。起こると思う。
だからこその風刺なんだとも思う。

以下、昨日アップしたままのエントリーを、敢えて未定性のままに。

         -------


祖父はものすごく大きな家を持っています。
大きな家を持っている人は本人が望む時に死んでもいいことにするべきですよ。
自尊心をもってね。それも、とにかく早く、そうしてもらいたいですね。

ターミナルな病気のある金持ちが、尊厳をもって、
その家を私たちにくれることができるようにしてくれないと。

死ぬのを何カ月も延々と引き伸ばされたんではね。
私たちだってチャラにしないといけないクレジットカードの請求書ってものがあるんですから。

反対している人たちだって
金脈の上に座っている親せきが苦しんでいるのに終わりにできないという日が来たら、
それが、どんな気分か分かりますよ。

自分にはどうにもできない腹立たしさって、ないですよ。

自殺幇助を合法化すれば、政府だって相続税という形で、
そういう人たちの財産の分け前をもらえるんだと指摘した人がいたけど、
確かに、そういうことでさ、さっさとやってもらえるといいんだけど。

……てなことをいって(上記は、記事にあった引用の逐語訳です)

年取って病気をしているお金持ちの親族たちから
できれば、今年のクリスマスまでに合法化してほしい、と切望する声が出ているんだそうで。

反対派は
「いったい、どこで線引きするんですか?
おじいちゃんはちょうど風邪をひいてるし、ベントレー持っているから
ちょっとハンマーで頭なぐっちゃおうよ……とでも?」と。




どへぇぇぇぇぇ……。
しばし、言葉を失いました。

ただ、しばしの後に立ち直ってみれば、
ここまで、ひどいことを平然と言える神経には、確かにびっくり仰天するものの、
でも、Gilderdale判決の時にこちらのエントリーでちょっと書いてみたように、
家族って、合法化ロビーや英国メディアがこぞって描きたがっているような
「愛と献身」で麗しいばかりの存在じゃないですよね。実際――。

今まで世界のどこの国も合法化していない近親者による自殺幇助
英国が世界に先駆けて合法化するならば、きっと、こういう殺人や
強要され幇助される自殺が、わんさと起こってくるに違いない。

「でも、どうせ死ぬ人たちだし、世の中の役には立たないんだから、それでも、まぁ、いいじゃん」と
実は考えている人たちが、合法化ロビーの中には一定の割合で交じっているような気がする。
2010.02.02 / Top↑
ベストセラーのSF作家であるPratchette氏は61歳で
アルツハイマー病の患者。

これまでにも自殺幇助は合法化すべきだとの発言をしてきましたが

この度、自殺幇助委員会を作って自殺幇助を望む人の理由やその正当性を判断する仕組みを提言。






2010.02.02 / Top↑
英国では名の知れたテレビのトークショーのホスト
Michael Parkinsonさんが政府の「尊厳大使」に任命されてから1年。

この度、認知症の母親を介護した体験を中心に、
尊厳ある介護の重要性を訴える報告書を刊行した。

英国政府が2月25日を the Dignity Action Day と定め、
尊厳ある介護のための革新的なプロジェクトに対して
5万ポンドの Bright Ideas Grant を出すと発表したことに連動した動き。



尊厳アクション・デイ のサイトはこちら

このサイトから、尊厳アクション・デイの理念を説明してある文章を以下に。
Dignity Action Day gives everyone the opportunity to contribute to upholding people's rights to dignity and provide a truly memorable day for people receiving care. Dignity Action Day aims to ensure people in care are treated as individuals, are given choice, control and a sense of purpose in their daily lives and provide stimulating activities. Dignity Action day asks everybody - members of the public and Health and Social Care staff to give the gift of time. We can all make a difference!

介護を受けている人々が個人として扱われ、
日々の暮らしの中で選択とコントロールと目的意識を与えられることを目的とし……

「いつ、どのように死ぬか」という「選択とコントロール」の話をするのなら、その前に
その人らしく日々の暮らしを最後まで生きるための「選択とコントロール」が
まず保障されるべきだと

Obseverの討論で障害当事者のMorrisさんが言っていたのを思い出した。
2010.02.02 / Top↑
また英国の自殺幇助議論にこの人が出てきた。アルツハイマー病を患う作家のTerry Pratchett氏。
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article7010209.ece?&EMC-Bltn=CFP9L2F

米Wisconsin州の刑務所内でのWaltersによる同房者の自殺幇助事件で、裁判が去年から何度も延期になっている。
http://wcco.com/wireapnewswi/Judge.delays.the.2.1460511.html

ゲイツ財団が今後の10年間で途上国向けのワクチン開発費用として100億ドルを提供する、と発表。:これだけを考えればすばらしいことだとは思うのだけど、その一方に、製薬会社の売れ筋トレンド・ビジネス戦略が精神科薬からワクチンに急転換してきている事実を置いてみると、もうちょっと事態は複雑なのではないか……。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/29/AR2010012903953.html

ファッション雑誌で引っ張りだこの皮膚科医が、認可前から先走って“しわとり注射薬”Dysportを宣伝したとして、FDAから警告を受けた。Obama政権になってから、製薬会社の広告のあり方など販促方法についてチェックが厳しくなっている、とのこと。
http://www.nytimes.com/2010/02/01/business/01wrinkle.html?th&emc=th

米国のナーシングホーム5つのうちの1つは、質が悪いとの評価結果。:こういう実態だから「施設は“絶対悪”で、身体改造して人権を侵害してでも家庭介護が“善”」という倒錯した論理になるのか。“Ashley療法”みたいに。その中間の解決策はまったく考慮の外で。人の境遇も事情も様々なのだから、施設で暮らす以外にない人や状況だってある。Ashleyの親だって不死身なわけじゃない。それなら人体改造よりも、施設ケアを改善すること、大型収容型施設から地域での共生型施設の設置を急げ、という声だって出てもいいはずなのに……と3年前からずっと考えている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/177560.php

これは、とてもいい話。児童虐待で親権をはく奪された親から施設に引き取られて成長する子どもでは、その後、親がどこに行ったか分からなくなって親族はその子どもがいることすら知らないままだったり、大人になっても誰ともつながりのないまま生きていかなければならなくなるケースが多いのだけれど、インターネットを駆使し、警察の聞き込みのような丁寧な調査をすれば、ほとんどの子どもで親せきを見つけてあげることは可能なのだそうだ。実際に、そうした努力を重ねている人たちの追跡記事。米国。:一方、こういう手間と時間と費用のかかる仕事がどんどん許されなくなる時代に向かっている……ということを考える。
http://www.nytimes.com/2010/01/31/us/31adopt.html?th&emc=th

カナダで障害の可能性を知りつつ子どもを産んだ女性が、GPに2度目の診察で、いきなり「もう病院に中絶の予約を取ってあるから行きなさい」と言われたり、他の病院でも、ぎりぎりまで障害の可能性があるなら流産予防はしないと治療拒否された、などの経験と思いをAlberta大学の公開討論で語っている。「障害児は産まないのが当たり前」の医療スタンダード。この討論のタイトルは「生きるに値するのは誰なのか」。
http://whatsortsofpeople.wordpress.com/2009/01/22/my-doctor-my-child/

オーストラリア首都特別区で裁判をこなしきれない事態が懸念されている。:これ、去年だったか、その前だったかにも、あって、医療の次に破たんしていくのは司法なのか、それは日本でも起こるんだろうか、と考えたことがあった。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/15month-wait-for-trials-to-be-heard/1738076.aspx?src=enews

コンゴの内戦による市民の被害は、ハイチの地震の被害の比ではないのに、地震でも起こらない限り国際社会は興味を持たないのか、とNYTの社説。:すみません。私もニュースタイトルは目にしていたのに、「世界中のいろんなところで無政府状態が出現して、女性と子どもが踏みつけられていっている」という漠然とした懸念以上の興味は持っていませんでした。
http://www.nytimes.com/2010/01/31/opinion/31kristof.html?th&emc=th

オーストラリアのRudd首相が、子どもたちの学力など学校のパフォーマンス情報を公開するサイトを作り、保護者が自分の子どもたちが通う学校の評価をして、そこに反映されるような仕組みを考えている。野党も賛成しているんだとか。:英国でも病院について同じ試みが言及されていたけれど、本当に、医療や教育の分野でそういう方向が正しいんだろうか。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/parents-to-rank-performance/1738708.aspx?src=enews

Obama大統領の一般教書演説で施策の重点が経済対策にシフトしたことを受けて、米国看護協会が、今、医療制度改革を後退させてはならない、と。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/177631.php

Bush前大統領の祖父に当たる人物の会社が企業利益を優先してナチの後押しをしていたという噂がずっとあったらしいのだけど、この度Guardianがそれを裏付ける資料を見つけた、とか。
http://www.guardian.co.uk/world/2004/sep/25/usa.secondworldwar

ハイチの子どもたちを連れだそうとして逮捕された米国の境界団体関係者のニュース。国内に親せきがいる子どもたちで、どこへ連れて行かれようとしているのか本人たちは知らなかった、と。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/us_and_americas/article7009970.ece?&EMC-Bltn=CFP9L2F

ゴールドマン・サックスの社長に1億ドルのボーナス、との噂。
http://timesonline-emails.co.uk/go.asp?/bTNL001/mCFP9L2F/qLOG9L2F/uM9ZZ6/x19D3L2F
2010.02.01 / Top↑
英国で影響力の大きな医療施策関連のチャリティKing’s Fundから
1月27日、終末期ケアの改善に関する報告書
Delivering better care at end of life: The next stepsが刊行されました。

報告書は10の提言をしているとのこと。

以下のMedical News Todayの記事によると、例えば

・終末期には「9時から5時」ではなく「1週間7日、1日24時間」のケアを保障すること。すべての患者が、支援を求めてから1時間以内にニーズに応えられる人へのアクセスを得られること。

・専門職に向けて、死について患者や介護者と話をするための研修を行い、専門職が自信を持って患者支援に当たれるよう、特にコミュニケーションの改善に向けた努力を行うこと。

・ケアの質とアウトカムについて監督すること。行政は、ただ安価なサービスを求めるのではなく、地元のサービス提供者と協働して質が高く革新的で柔軟な終末期ケアの在り方にフォーカスすること。

・エビデンスに基づいたケアを確立すること。自信を持って改革を行うには、コスト効率の全国規模のエビデンスと、新たなケア・モデルの評価が必要。

これだけを読むと、
コストカットの方向にずいぶんと傾斜した報告書のようにも読めるのですが、

報告書として主張しているところは、
「個々の患者や家族のニーズに応えつつ、
なおかつコスト効率のよいケアを構築せよ」ということのようで、

ここがミソだと思うのだけど、そのためには、
「今はコストカットすべき時ではない。
むしろ質を高め、コストを削減するために
賢明な投資をするべき時である」と。



出版された報告書(10ポンド)の購入ページはこちら


ちなみに英国保健省は2008年7月16日に
「終末期ケア戦略」を出していて、そのページはこちら

そのexecutive summary はこちら

上記サマリーをざっと読んでみたので、
目に付いた事実関係を一応記録しておくと、

英国政府は終末期ケア戦略のために予算を増額しており、
2009/2010 年の総額は8800万ポンド。
2010/2011 年の総額は1億9800万ポンド。

現在、年間の英国内の死者は約50万人で、
そのうちの3分の2が75歳以上の高齢者。

58%がNHSの病院での死で、
18%が自宅での死。
17%がケアホーム、
4%がホスピス。
その他が3%。
2010.02.01 / Top↑
なんでメディアはいつも、こんなふうにミスリーディングなタイトルを打つのか
私は腹立たしくてならないのですが、

記事タイトルは「世論調査『慈悲殺を支持』」。

でも、ですね。ちゃんと読んでみると、
BBCのドキュメンタリー番組でGilderdale事件を特集し、
その中で約1000人に調査を行ったところ、
ターミナルな状態の人の自殺幇助が友人・親族には認められるべきだと
いう意見の人が73%だったのだけれども、

Gilderdaleさんの娘Lynnさんのように
ターミナルではない病気の人への自殺幇助についても
友人・親族に認められるべきだと答えた人は48%。



もちろん48%はショッキングな高率です。
しかし、48%で、どうして「世論は支持」とタイトルを打てるのか。

また、調査では自殺幇助について聞いておいて、
どうして「慈悲殺を支持」とタイトルを打てるのか。

それに、いちいち確認するエネルギーも時間もないけど、
こういう「調査」で実際の質問を調べてみたら、
ものすごく大雑把で誘導的なものが多いのも事実。

ちなみにPAは、同じBBCの調査を取り上げた記事に
「自殺幇助に世論二分」と正確なタイトルを打っています。


【2月1日追記】
Daily Telegraph紙も世論調査を行っていて、こちらは
「5人に4人が近親者の自殺幇助は訴追するな、と」だそうです。


               ----

英国での報道を追いかけていると、
メディアが合法化に向けて世論誘導を行っているとしか思えなくて、
本当にハラハラ、イライラしてしまうのですが、

これと同じことは去年の脳死・臓器移植法改正議論の際に
日本でも行われていました。

今回の小沢氏の問題でも、妙な情報操作がやたらと目につきます。
(なんで小沢氏の後援会だけが「資金管理団体」なのか私はずっとわからなくて……)

だいたい、
「科学とテクノ」や「弱者切り捨て医療推進」にとって都合が悪い海外ニュースが
日本ではとんと報道されないこと自体、てんで、おかしい。

Ashley事件に見られるように、英米のニュース・メディアはもはや
権力の番犬として機能することができないで、しっぽを丸め、口を閉ざしている。
地方行政や障害者の人権擁護団体までが、本来の機能を放棄して
権力の側に取り込まれ、平然と「パートナー」をやっている。

第2のシリコンバレーと言われる米国Washington州シアトルで起こっていることは
世界中で起こっていることに当然つながっているのだから、
日本でも同じような事態が進行していないわけがない。
ただ、日本では私たちに見えにくくされているだけで。

メディア・リテラシーという言葉をどこかで見ましたが、
ニュースの行間や背景をちゃんと読み説くための読解力というものが
必要になってきている時代のような気がします。

そして、「ないニュース」は
「そのニュースがないこと」そのものが見えにくくなるのだからこそ、
「なぜ、そのニュースはないのか」ということの意味を
日本にいる我々は、もっと考えなければならないのでは……? と思う。




2010.02.01 / Top↑