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前のエントリーをアップした直後に目に付いたので、取り急ぎ。

米国小児科学会が
肥満でコレステロールが高い子どもは将来的に心臓病になりやすいし、
スクリーニングをして既に高血圧や糖尿病の兆候を示している8歳以上の子どもには
現在世界中でコレステロールの高い大人の治療に処方されているスタチンを使おう、と。



英国では家族性高コレステロール血症の遺伝子を持った子どもにのみ
スタチンの使用が認められており、

子どもでは長期的な安全性が確認されていない、
スタチンを食事療法や運動の代わりにするのは感心しない
などの懸念の声も。
2008.07.09 / Top↑
急増する肥満は世界中で医療費を押し上げる原因となって、
その対策がいずれの国でも急務となっているようですが、

英国で、肥満の治療として
生活改善してもダメで、これまでに認可された2つのヤセ薬でも薬効が見られない人に、
新らたにRimonabantという薬がNHSで使えるようになった、と。

ただ、この薬には、ウツや自殺念慮まで含めて、
気分を不安定にする副作用の可能性があるため、
処方は慎重に対象を絞って、そして
処方したら注意深くモニターしましょうね、と。

ちょっと意外だったのは、
Rimonabantが米国では安全懸念から認可されていないこと。
使っているのは主に英国、ドイツ、フランス。

Weight Loss Drug To Be Offered On NHS
Medical News Today, June 29, 2008


もう1つ関連した記事もあり、

こういうふうに新たにヤセ薬が認可されるのも、
肥満はいまや糖尿病や心臓病に繋がる危険な慢性疾患で、
医師に治療してもらうべき病気なのだ、と。



でも肥満治療のヤセ薬でウツから自殺してしまったら、
そもそも何のためのヤセる努力か分からないような……。

医療費削減の大目標に向けて「健康にならなきゃ」とヤセ薬を飲まされて、
それが原因でウツになったら
「じゃあ、ヤセ薬を飲みながら抗ウツ剤も飲みましょう」という話になるのでは、
そんなに薬を飲むことそのものが身体にいいはずもないような……。

何でこんなに急に肥満の人が増えたのかというのは
いろんな要因が絡み合ってのことなのでしょうが、
その1つに、こんなに便利な世の中とはつまり
いろんな形で人間が化学物質を体内に取り込むようになった時代だということも
影響していないはずはないと私は個人的に思うので、

そんなふうに増加した肥満をまた薬物で“治療”しようというのは
「子どもに安定剤を飲ませたらウツや自殺が増えたから、それなら
安定剤に加えて、そのウツを抑える薬も追加しよう」
という発想のような……。

この科学とテクノロジーによる簡単解決のグルグル連鎖、
どこかで立ち止まった方がよいのでは――?
2008.07.09 / Top↑
私は自閉症に特別な関心があるわけではないのですが、
このところ、自閉症関係の気がかりな記事が目に付いて、またその書き方には
密かに自閉症に対するネガティブ・キャンペーンでも進行しているだろうかと、
勘ぐってみたくなるほどの違和感のあるものもあって……。

前のエントリーで紹介した「自閉症の父親であるということ」も
「なんだか、なぁ……」と違和感を覚えながら読んでいたのですが、
思わず「あっ」と声を上げたのは、Hotez博士の肩書きが並べられている箇所。

The Sabin Vaccince Instituteの所長で
George Washington大学マイクロバイオロジー・免疫学・熱帯医学学部長
そして、
”放置されている病気と闘うワクチンを開発しているゲイツ財団のコンサルタント”でもある。

そういえば、Hotez氏は妻に向かって、
メディアは根拠のない不安を垂れ流すくせに、
世界中の貧しい人たちの病気が放置されていることについては注意を払わない」と
激しく批判を繰り広げ、いくつかの統計を並べてみせています。

広く世界中の人の命を救えるワクチンが既にあるし、これからも開発できるというのに
立証されてもいない自閉症と水銀の相関関係などでメディアが不安を煽って、
ワクチンを拒否する親が増えていることに対する苛立ちが
そのように数値を並べるHotez氏の口調には伺えます。

ちなみに、以前やはり気になる記事として紹介した
親は自閉症の隠れた犠牲者」記事を書いたのは
シアトルの大手地元紙で、いわばゲイツ財団の御用新聞のような(と私には思える)ところ。

また、その中で
障害の中で自閉症が一番大変だという得体の知れない研究結果の出所とされていたのはワシントン大学でした。
ゲイツ財団の巨額資金により4月にIHMEを新設した、あのUWです。

マラリアがGDPに与える損失を計算して、
ワクチン普及によりマラリアを撲滅する運動は意義があると判断する
ゲイツ財団の価値基準はIHMEの理念にも通じていると思われます。

そして、「ワクチンと自閉症」のエントリーで触れたように、
ワシントン大学医学部と多くのスタッフが役職を兼務しているシアトル子ども病院は
2005年に始めた生命倫理カンファレンスの第2回目に
「子どもへのワクチン接種における倫理問題」というテーマを掲げていました。

自閉症に対するネガティブなメディアの動きを追ってみると、情報が
なんだかAshley事件で事実関係を調べていた頃のデジャ・ヴのような繋がり方をしていく……。

気のせいか――?

2008.07.08 / Top↑
前のエントリーで紹介した自閉症関連重要事項年表は
実はこちらの長い記事のオマケとしてくっついていたものでした。

Fathering Autism
A Scientist Wrestles With the Realities of His Daughter’s Illness
The Washington Post, July 1, 2008

タイトルは「自閉症の父親であるということ
副題は「科学者、娘の病気の現実と格闘する

「ワクチンに含まれていた水銀が自閉症を引き起こしたのは事実なのに
製薬会社と癒着していたり接種率が下がると困るなどの事情で
医師も政府も隠している」といった故のない非難が世の中に隠然と尾を引いており、

自閉症児である娘のRachel(15)の存在ゆえに
米国有数のワクチン博士であるPeter Hotez氏が
そのことに対して抱く葛藤が
まず記事のテーマの1つ。

これについては、Rachelの幼少期に妻の不安に応えるために
自分で文献を詳細に調べたHotez博士は日本の水俣病の資料を発見します。
そして水俣の被害者の病態との比較から
自閉症は毒物によって引き起こされたものではなく、
神経発達全体に及ぶ遺伝的なものだと結論付けた、といいます。

しかし、この記事が訴えようとしていることはワクチンの安全性よりも
自閉症児を育てること、自閉症児と暮らすことの過酷さであり、
それが2つ目の、恐らくは1つ目よりも大きなテーマのようです。

そして、私が気になるのは、この記事にもまた、
以前紹介した「親は自閉症の隠れた犠牲者」に通じる
妙にネガティブなトーンが感じられること。

そもそも記事のタイトルが引っかかる。
自閉症という病気の父親になる人などいないのだから
「自閉症の父親であること」なんてバカな話はない。
「自閉症の子どもの父親であること」とするべきでしょう。
しかし、娘がそのまま自閉症という病気と同一視されているタイトルが
実に象徴的だと思える内容なのでもあり……。

「……隠れた犠牲者」では親自身に被害者意識があったかどうかは明らかでなく、
書いた記者がそうしたトーンを紛れ込ませていたという印象の記事でしたが、
こちらの記事では記者だけでなくHotez氏の言葉の端々に
娘を病気と同一視しているかのような妙に酷薄なニュアンスが浮かんでいます。

Hotez氏が娘や娘との暮らしについて語る言葉。

It is an ever-increasing snowball of horror – one disappointment after another. You recognize the gravity now as she has become a difficult and impossible teenager.
Rachelを育てるのは、恐怖の雪だるまがどんどん膨らんでいくようなものですよ。がっかりすることばかりが次々と起きて。しかも今では扱いにくくて手に負えないティーンエジャーですから、それが如何におおごとか。

Rachel was more work than all the other kids combined. ……We didn’t go out to dinner for a decade.
他の子どもたち全員の分を合わせても、まだRachelの方が手がかかりましたよ。……私たちは10年もの間、食事のための外出すらしませんでした。

We all wish things were different. We hoped there would be a day when the girl comes out of Rachel.
私たち家族みんな、我が家の状況がこうじゃなければよいのに、と思っています。かつてはRachelの中から(この難しい自閉症の)少女が出てきてくれる日が来るのでは、と夢見たこともありましたがね。

最後の発言は、もしかしたら逆に
自分たちの娘である(障害のない)少女が
自閉症でやっかいなRachelの中から逃げ出してくる、という
イメージなのかもしれませんが、いずれにせよ、
ここには、記事タイトルに見られるように
現在目の前にいる娘を受容せず、
むしろ娘が自閉症そのものであるかのように捉え忌避する感覚が
色濃く滲んでいるように感じます。

さらに私には大変気になることとして、
Hotez一家は取材に訪れた記者に対してRachel本人に会うことを
最後まで許可しないのです。

「研究者・医師としてのHotez氏は自閉症と淡々と向かい合うことが出来るけれど、
父親としてのHotez氏は客にRachelを見られることに耐えられない」のだとか。
「Rachelは最近攻撃行動が続いて3歳児相当のメンタルレベルにまで落ちてしまったから。」

Rachelは学校にも通っているし、言語能力は高いと書かれているのですが、
これではまるで一昔前に日本にもあった、
障害のある家族を恥じて座敷牢に閉じ込めたという話のようでは?

記者の手による地の文から気になる表現を以下に。

she seems more connected to the tube’s ghostly embrace than to her own father, mother, brothers and sister.
彼女は自身の父、母、兄弟と心を通わせるよりも、テレビの世界にうす気味悪いほど一心にのめりこみ、心を奪われているように見える。

Having a child like Rachel ……is debilitating, dispiriting, demoralizing.
Rachelのような子どもを持つとは、ほとほと参って元気をなくし意気を阻喪するものなのである。

the devastation autism can cause a family.
自閉症が一家に引き起こすことのある悲惨
(自閉症は一家をめちゃくちゃにしてしまう)

Rachel was placing an extraordinary strain on everyone.
Rachelは家族みんなに大変なストレスを課していた。

Dealing with Rachel was like having to tread water all day: It was exhausting.
Rachelの世話をすることは一日中水車を踏むことを強いられるようなものだった。疲れ果てるのだ。

この最後の引用部分で、Hotez氏も
政府がレスパイト・サービスを拡充することと教育現場での細やかな対応の必要を訴えてはいますが、
記事全体からすれば「ほんの申し訳程度」という観をぬぐえず、

いったい、この記事は何を意図して書かれたものなのか、
Hotez氏はいったい何を言いたくてこんなところに出てきたのか……。

不思議。

 
2008.07.08 / Top↑
6日(日)の朝日新聞にあった「アメリカの毒を食らう人たち」の書評に、
自閉症の原因はワクチンだと断定している箇所があり、
「え? それって、実証されていないんでは……?」と、びっくりして
思わず眉にツバをつけた。

このところ書こう、書きたいと思いながら、
またも、なんとも微妙なトーンの記事なので、
この1週間ずっと机の上に置いては眺め暮らしている
2本立ての自閉症関連の記事があって、
それが実はワクチンがらみの内容。

その2本のうち、いわば“オマケ”の方の記事が
「自閉症の歴史 重要事項年表」という簡単な年表になっていて、
その中にワクチンとの関連も触れられているので、
まず先にこちらの方を。

Some Key Dates in Autism History
The Washington Post, July 1, 2008


この年表によると、1943年に自閉症が特定されて以来、
統合失調症の1種だと考えられたり(1967)
冷たい母親が原因だとされたり(1971)を経て
DSM-Ⅲで統合失調症とは異なる発達障害として分類され(1980)
アスペルガー症候群が進行性の発達障害としてDSM-Ⅳに公式に追加される(1994)中、

問題のワクチンについては

2000年
政府の懸念を受けてワクチンのメーカーが
子どものワクチンから水銀を含んだ防腐剤thimerosalを除去。
この防腐剤が自閉症と関連しているとの不安が一般に広まった。

2001年
自閉症の子どもはNIHの発表で250人に1人。

2004年
米国医学院がthimerosalと自閉症との関連には、なんら確かなエビデンスはないと発表。

2007年
CDCの報告で自閉症の子どもは150人に1人。
病気そのものが増えているのではなく、
発見率の向上、診断基準の拡大、一般に周知されてきたことによる
というのが専門家の見解。

         ―――――


ところで2006年のシアトル子ども病院生命倫理カンファレンスのテーマは
Ethical Issues Related to Vaccination of Children
子どもへのワクチン接種に関する倫理問題

Johns Hopkins病院ワクチン安全研究所のNeal A. Halsey医師が
Thimerosol and Vaccine Risks(thimerosolとワクチンのリスク)
と題する講演を行っています。

Halsey講演の資料はこちら

またこのカンファの5ヵ月後にAshley事件で一躍有名になるDiekema医師の講演は
The Case of Vaccine Refusal:Parent Conviction, Child Best-interests, and Community Good
(ワクチン拒否ケース:親の信念、子どもの最善の利益、そしてコミュニティの益)

Diekema講演の資料はこちら

その他2006年カンファレンスの詳細はこちら


このカンファレンスに関するSeattle Timesの記事として、
More parents resisting vaccines for kids
The Seattle Times, July 16, 2006

thimerosalと自閉症の関連が立証されておらず
実際のワクチンから既に除去されているにもかかわらず、
やはり自閉症との関連を懸念する親がいることが
子どものワクチン接種を拒否する親が増えている理由の1つとして触れられており、
いまだに大きな影響が残っていることが伺われます。


-------

このエントリーのテーマには直接関係ありませんが、

2005年から始まったシアトル子ども病院生命倫理カンファレンスが
第2回目の2006年にワクチンの問題をテーマに取り上げて
アフリカをはじめとする発展途上国でのワクチン問題まで論じているわけです。

普通に考えたら、ワクチンの問題というのは
第2回目という若い回に急いで取り上げるべき大きな生命倫理上の問題だとは思えませんが、

ゲイツ財団が世界にワクチンを広めていく運動に力を入れていること、
ゲイツ財団とワシントン大学・シアトル子ども病院との近しい関係を考えると
これもまた大変興味深い事実ではあります。

(ゲイツ財団とワシントン大学との関係については
「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫を参照してください。)
2008.07.08 / Top↑
今年に入ってから
発達障害のある成人の入所施設を運営していた3事業所が相次いで撤退し、
ワシントンDCの1207人の利用者のうち5%に当たる61人が
7月半ばまでに新しい施設に移されることになった。

本人の新しい環境への適応や、
新しい施設での医療職への引継ぎなどが懸念されている。

撤退の理由は市からの提供資金が不十分だから。


Disabled Services Shrink in D.C.
The Washington Post, June 29, 2008


日本の福祉制度も
国から地方への責任転嫁と市場原理導入で、
アメリカ型のシステムにせっせと向かっているように見えるのだけど、
大丈夫なのかな。

日本の場合、入所施設から事業所が撤退したら
入所している人たちは行き場そのものがなくなってしまうんじゃないのか──?
2008.07.07 / Top↑
Meals on Wheels などと配食サービスや移動援助、在宅介護など、
公共の介護関連サービス、ボランティア活動いずれも
サービス利用希望者の待機リストが長いにもかかわらず
ガソリンの高騰で活動の縮小を余儀なくされているとのこと。

特に、影響が大きいのは
ガソリンを自腹でまかなっている田舎のボランティア活動。

地方行政の住民サービスが全体に縮小を迫られている中、
自力で家から出ることのできない高齢者の苦境が大きい。

ナーシングホームと違い、在宅ケアを担う介護職は
日本と同様に低賃金など労働条件の悪さで不足している中、
ガソリン高騰が新たな打撃となっている。



原油が足りないというのならともかく、
自分さえ儲かればいい、とにかくゼニ、もっとゼニを、と投機に狂騒するスーパーリッチのために、
真っ先に命さえ危うくされているのが高齢者や障害者なんだと思うと腹立たしい。
2008.07.07 / Top↑
かつてはKohl 、Schroder両首相のアドバイザーも勤めたドイツの大物政治家で
最近は自殺幇助合法化の熱心な提唱者であり、
そのためにキリスト教民主党から離れて独自に政党Homeland Hamburgを立ち上げた
Roger Kusch氏が

7月1日に記者会見を行い、
自殺幇助合法化キャンペーンの一貫として独居老女の自殺を幇助したことを明かし
非難の声が上がっています。



女性は79歳のGettina S さん。

糖尿病とリウマチがあるものの概ね健康だが、
1人暮らしなのでケアホームに入らなければならなくなるのが不安だった。

今年、Kusch氏が押しボタン式の自殺装置を考案して発表したのを見て
BettinaさんがKusch氏に相談し、
2人の出会いから数週間後にBettinaさんが自殺。

Kusch氏は自分が法を逸脱する行為はしていないことを証明するために
Bettinaさんの自殺に至る数週間の過程を9時間に及ぶビデオに撮影しており、
1日の記者会見ではそのビデオを公開。

ドイツの法律では自殺者が意識を失っているのに医師を呼ばなければ
緊急行動を怠ったとして違法行為と見なされるので
Kusch氏はBettinaさんが自殺する直前に部屋を出ています。
ただし、具体的な自殺方法については記事には明記されていません。

2人には彼女の自殺を合法的自殺幇助のモデルケースにしようとの合意があったといい、
Bettinaさん自身、ビデオの中で次のように発言。

「私の死の直前まで一緒にいてくださることで
あなたが政治家の方々に法律を変える必要を訴える説得力になるのであれば、
私の死は他の人たちのお役に立てることになります」

去年1年間でスイスのDignitas Clinicで自殺した141人のうち半数がドイツ人で、
自殺幇助を合法化しようとキャンペーンを張るKusch氏には
自殺したい人たちをスイスからドイツに誘導したいという狙いもあるとのこと。

以下はBavarian州の法務大臣Beate Merk氏の批判。

理をわきまえた人なら誰だって、この人の不安を受け止めて支援を行うはず。社会は慈悲殺の方向に向かうのではなく、むしろパリアティブ医療と1人暮らしの人のケアの改善に向かうべきである。



2008.07.07 / Top↑
英国の介護者支援施策は高齢者だけではなく、
広く障害児・者・病人の介護している人も対象にしています。
(この論旨には関係しませんが、家族の介護を担う子どもへの対策も講じられつつあります。)

私には英国の介護者支援について関連記事を読むたびに
自分や周囲の障害のある子どもの介護を巡って考えることがあって、

障害をもつ子どもを育てるのは「介護」ではなく「育児」でしかないのか――。

障害のない子どもの子育てに比べてどれほど負担が大きくても、
それは「育児」だから、あれもこれもすべてひっくるめて
「あなたがお母さんなんだから」、
「親ががんばらなくては」という話になるのかなぁ……と。

社会の潜在意識の中に「子どものために献身する美しい母の姿」「無私の愛」に対する憧れが根強くて、
また親、特に母親自身も、そうした社会の母性信仰、「献身する母親」モデルを内在化しているために、
「もうこれ以上できない」、「助けて欲しい」と感じることがあったとしても、
内在化された母性信仰によって「こんなことを思う自分は、なんて酷い母親なんだろう」と
逆に自分を責める心理が働いて却って負担やストレスを抱え込み、
外に助けを求めようとする声を自ら封印してしまう。

それは、本来の「育児」期間が終わっても続いていて、
子どもに障害があったら、その子が30や40になっても、場合によっては高齢になっても、
親がその子をケアするのは「介護」というより「育児の延長」と捉えるような
いつまでも「親子の愛し愛される、世話し世話される関係」の中で「介護」を眺めるような
そんな意識が、どこか漠然と文化の潜在意識のようなものとして、
ありはしないでしょうか。

最近、障害のある子どもたちに向ける社会の空気が冷え込んで、
親の大きな介護負担と、それを担う親の愛情によって
Ashleyに行われた過激な医療や Katie Thorpeの子宮摘出希望が正当化されたり、

また例えば「親は自閉症の隠れた犠牲者」の記事のように
情緒的で過剰にネガティブな親の介護負担の強調がそのまま
障害そのものへのネガティブな視線へとずらされていくような事例が
非常に気になるのですが、

Ashley事件で賛美された「大変な介護をものともしない親の愛」と
「親の介護負担はこんなに大きく、親は犠牲者」との間には
とてつもなく大きな距離がある。

その2つの間にこそ、できること、やるべきことが沢山あるのでは──?


通常の育児の範疇を超えて大変な介護負担を担っている親には
「子育て」として距離を置くのではなく、
「子育ても含めた介護」と捉えて、そこにしっかり支援をする。

療育を通じた子どもへの直接支援だけではなく、
介護者としての親への支援を行う。

「どんなに自分が辛くても明るく優しく子どもに献身する親の愛」という情緒を完全に廃して、
どんなに愛情があっても生身の親が1人で背負うことの出来る負担には限界があるという現実を認め、
親が支援を求めやすい文化的な土壌を作る、
そのうえで丁寧に現実的な支援を考えていく。

もう、愛情さえあれば何でも出来るかのように親を追い詰めるのはやめよう、

だけど、親を「犠牲者」や「被害者」にしてしまう視点に短絡する前に
するべきこと、できることは、まだまだ沢山あるはずだよ……と思う。

障害のある子どもの子育てや介護には、
負担感だけじゃなく、喜びも楽しみも幸せだって沢山ある。
余裕がなければ、それを感じにくい時だってあるかもしれないけど、
適切な支援が得られて親に心と体の余裕があれば、
嬉しいこと楽しいことが、そのまま嬉しいこと楽しいことと受け止められるようになる。

子どもとの時間にそんな心の弾みを感じられる余裕があれば、
きっと「犠牲者」や「被害者」にまでならなくて済むんじゃないだろうか。


         ―――――

“Ashley療法”論争の時に
Northwestern大学の医療倫理の教授 Alice Dreger氏が
Hastings CenterのブログBioethics Forumに発表した論考「Ashleyと無私な親という危険な神話」
Ashley and the Dangerous Myth of the Selfless Parent(January 18, 2007)は
障害児の親の介護負担を考える際のこうした陥穽を見事に指摘していました。

2008.07.04 / Top↑
6月10日に発表された英国の新しい介護者戦略については既に紹介しましたが、
介護サービス改革を巡る当事者チャリティの動きを2つ、メモ的に。

Right care Right deal
The right solution for social care

高齢者介護に関る以下の3つのチャリティが共同で立ち上げたもの。



②中でも介護者支援チャリティのCarers UKは
さらに独自にキャンペーンを立ち上げて介護サービス改善への提言を行っている。

その名も Back Me Up

これは発音する時には Back Me up と、Meを強調するんだろうな。
「介護者である私を支えて」ということなのだから。

日本の介護者も、もっと声を上げたいですね。
「介護者である私だって支援が必要なんです。私を支えて!」
2008.07.04 / Top↑
Brown首相が就任時にNHS改革担当として保健省副大臣に起用した
現役外科医のAra Darzi卿がとりまとめた
今後10年間のNHS改革案が6月30日に発表されました。

High quality care for all: NHS Next Stage Review final report

こちらからサマリー、全文ともダウンロードできます。
全文は84ページ。

事実上の統廃合による病院機能の集約化と成果主義導入……。
患者の満足度と治療のアウトカムによって病院にボーナスと罰金だとか。

現場が首を絞められるというのは、「改革」に付き物の「痛み」なのかしらん。

       ―――――

同時に初のNHS憲章の草案も発表されており、
NHSは10月までパブリックオピニオンを募集。

NHSの当該サイトはこちら


【追記 7月7日】

The Lancet 最近刊に
Darzi卿が発表した今後10年間のNHS改革案についてのコメントがありました。

「急速に変貌する今の世界における医師のprefessionalism」という視点から書かれたもののように思われ、
referrenceに面白そうで読んでみたい文献もあるのですが、
たぶん本文もこちらも読めないと思うので、一応のメモ。

The Darzi vision: quality, engagement, and professionalism
Richard Horton
The Lancet 2008, 372; 3-4
2008.07.04 / Top↑
一昨日(だったと思う)フジテレビの「スーパーニュース」で
米国の病院の待合室で倒れた患者(黒人女性)をスタッフが見て見ぬフリで放置し死なせたという
ニュースが報じられ、ショッキングな映像が流れましたが、

私の記憶では、
安藤キャスターが読んだニュースでは
“精神科の”ERの待合室だったという情報は端折られていたような気がするのですが、
さすがに米国のメディアが広く取り上げていて、
詳しいニュースが沢山ありました。
以下はその中のひとつ。

Hospital Video Shows Dying NYC Woman Neglected
Records Claim At 6:20 Patient ‘Sitting Quietly in Waiting Room,’ Though She Was Already Dead
CBS2, July 1, 2008

ここにビデオもありますが、
一昨日夕方の「スーパーニュース」で流れていた映像とは違い、
ドクターやナースが見に来たのに近寄りもせずに立ち去る場面や
ナースが足で蹴って意識の有無を確かめている場面はありません。
YouTubeを探せばあるのだろうと思いますが、
ちょっと気力がないのでパス。

それよりも、ここで触れておきたいのは
Mental Health America(旧National Mental Health Association)が
この問題で声明を出しており、

Statement on Death of Mental Health Patient in Psychiatric Emergency Room of Kings County Hospital
Statement by David Shern, Ph.D., President and CEO of Mental Health America
July 1, 2008


その中に次のような一節があること。

Mental Health America’s fear is that this incident reflects a broader public attitude that devalues individuals with severe mental health conditions who are served in public systems.

Mental Health Americaの懸念は、この出来事が、公的サービスを受けている重い精神障害のある個々人に対する、(この病院内だけに留まらず)広く世の中の人々の姿勢を反映したものだということである。

この懸念は私自身、日々のニュースの中で
精神障害だけではなく、知的障害、発達障害のある人、痴呆のある人に対する
アメリカの社会の、どこか異様なほど急速な空気の冷え込みとして強く感じているものなので。
2008.07.03 / Top↑

自閉症児の母親がブログで
いろいろな辛い体験を経て現在息子を連れて飛行機に乗る際に心がけることを
3点挙げています。

子どもが眠りやすいように深夜か早朝の便を選ぶこと

メラトニンの錠剤を必ず持っておくこと。

子どものお気に入りの安心グッズを必ず持っていくこと。
(大きくなっても特定の青いフリースの毛布が手放せないのだったら、
 その毛布をもっていくのが役に立つ。)

そして、その他に必要なものとして、周りの人の

patience (辛抱強く待つこと、我慢、すぐにイライラしないこと)と、
understanding(相手の身になって考えたり、分かってあげようとする協力的な姿勢)。



The Very Unfriendly Skies
Autism Vox, June 25, 2008
2008.07.03 / Top↑
昨日のエントリーで
英国はある段階まで支援した後は、すっぱり切るのかなぁ……みたいなことを書いたばかりですが、
こんなニュースが。

英国で
現在、肺炎で集中治療を受けているテイ・サックス病の6歳の少女Amber Hartlandを巡って、
Amberは末期状態にあり、この先の治療については裁判所の判断を仰ぐことになると
病院が両親に通告したとのこと。




Amberは肺炎にかかりやすく、これまでの4年間で5回集中治療が必要になったほど。
現在も肺炎で6月26日から小児科の集中治療室に入っています。
このたび、両親は医師から今後は集中治療での救命を見合わせたいと言われたとのこと。

テイ・サックス病のため、ほぼ全身が麻痺しており、
話すことが出来ないほか、重症のてんかんもあるものの、
音声と顔の表情で意思疎通はできると両親は言っています。

Amberの介護のために両親共に仕事を辞めて、
昼間は父親が、夜間は母親が介護に当たっているとのこと。
肺炎などの病気になることは多いけれど、
その合間には楽しく暮らしていて、スペインに旅行にいった事もある、とか。

(2人が仕事を辞めた時期や生活費はどうなっているのかについては不明。)

両親が言っていることは基本的に
「まだ本人が頑張っている。
ちゃんと気持ちを表現できているし、
まだ終わりだと思えない。
助けてやって欲しい」ということで

頻繁に病気はするけれども、
テイ・サックス病で末期状態にまでなっているとは両親は考えていないようです。

医師らが家庭での生活を考慮の外におき、
病院でのAmberの姿だけから子どもの命をジャッジしている、と
両親が批判していることから推測すれば、

集中治療で肺炎さえ治れば、まだ家庭でそれなりの生活ができる状態なのに
「普通なら2、3歳までしか生きられない病気の子がここまで生きたのだし、
どうせテイ・サックス病でこの先長くは生きられないのだから、
何度も救命治療で苦しめるのも……費用もかかるし……」などと考えて
医師らが「無益な治療」論を主張しているのか、

それとも
娘がついに末期だという現実を両親が受け入れられないでいるのか。

実際、病院がこの先は集中治療を見合わせたいとする理由が
記事からははっきりしないのです。

地元のNHSトラストのmedical directorの発言をTelegraphから引くと、

うちの献身的な医療チームは質の高い温かい医療をAmberに提供しており、
常に彼女のニーズを最優先しています。

Amberは現在小児専門ICUで積極的な治療を受けており、
これからも我々は彼女の最善の利益を最優先にしていくつもりです。

そのために、現在我々は今後のAmberの治療をどうするべきかについて
裁判所に判断を求めています。

これは明らかに非常に複雑でセンシティブな状況です。
我々はこのような困難な状況に直面される全てのご両親をお気の毒に思っています。

治療に関する決定についてはご家族にしっかり相談しながら軽々には行いませんし、
困難な決断を行わなければならない時が訪れた際には
できる限りのお手伝いと支援をいたします。


「治療差し控えが本人の最善の利益だ」と遠まわしに言っているのでしょうが、
何も説明していないに等しい政治的言辞では一体その根拠が何なのかが分からない。

ある病院スタッフから「治療が本人を苦しめている」という話も出ていると
記事にはあるのですが、
肺炎そのものは治療可能な病気なのだし、
木曜日に入院した理由だった肺炎は改善しつつあるとも母親は話していて、
これでは両親が「結局お金の問題なのよね」と反発するのも無理はないような……。


これもまた
去年のテキサスのEmilio Gonzalesのケース
カナダのGolubchukのケースを髣髴とさせる事例です。
これら2つのケースでは裁判所が取りあえずの治療続行を命じて
最終的な判断を下すのに時間がかかっている間に患者が亡くなりました。

Amberの場合は現在の肺炎治療ではなく
将来的に同じようなことが起きた場合の救命治療を巡る判断であることと
記事を読み、写真を見る限りEmilioよりも意思疎通ができている印象があるので、
上記の事件とは、その2つが大きく異なっていますが、
英国の裁判所がどのような判断を下すのか、見守っていきたいと思います。
2008.07.03 / Top↑
前のエントリー「自閉症児を教会から締め出し、裁判所も認める」関連です。 
       
英国のキリスト教系のサイトがこの問題を取り上げて、
法王が教会に対してガイドラインを出すよう自閉症のアドボケイトが求めている、
とする記事を掲載していますが、

なかなか冷静な内容になっています。

ここでは
診断技術の向上で自閉症児が増加していること、
それにともなって教会に所属する自閉症児も増えていること、
しかるべき支援と教育を得るためだけでも親は大変な思いをしていること、
4月に国連が新たに「自閉症理解の日」(World Autism Awareness Day)を作った際にも
障害のある子どもたちを支援する環境を整えることの大切さが説かれていたこと
などが触れられて、

英国の教会に自閉症の人々の複雑なニーズを理解するよう呼びかけています。

末尾では the Autism Awareness Campaign UK が英国の教会に対して
自閉症の人のために感覚ルームやタイムアウト用の静かな部屋を設ける、
聖職者、スタッフに自閉症に関する研修を行う、
PECs(Picture Exchange Communication system)などのコミュニケーションシステムなど
多様なリソースを使って工夫するよう提言していますが、

その中でも最も強調されているのは
宗教組織と親と介護者とが起こりうる問題に対して、
パートナーシップを組んで対応すること。



"Ashley療法”論争と、引き続いて起こったKatie Thorpeの子宮摘出問題を巡る論争と対応、
また、そうしたケース以降、諸々のニュースで追いかけてきた障害者・高齢者への対応からすれば、

英国の方が米国よりも冷静にしかるべき手続きを押さえて、
丁寧な現実対応をしているような……。

その反面、英国では
ある段階までは、少なくとも理念の上では権利擁護も支援もしっかり行い、
ある段階では、逆にすっぱりと切る……ということなのかなぁ……という感じもあるのですが。
2008.07.02 / Top↑
先日来中国、米国で自閉症児を巡る航空機での受け入れトラブルが続いていますが、
米国ミネソタ州ではカトリック教会が13歳の自閉症少年を締め出し。

裁判所も少年の行動を州法が規定する「繰り返されるハラスメント」に当たると判断、
この決定を支持しました。

子どもが6人いるPace一家は
1996年からミネソタ州BerthaのSt.Joseph教会に通い始めて以来、
重症の自閉症を患うAdamの存在から常に最後列に座ってきた。
それまで誰からも苦情を言われたことはないのに、
去年の6月に司祭のWalz師と教会幹部が家に来て、
「いきなり訴訟を起こすといわれた」というのが母親の言い分。

協会側は
「Adamがミサに参加できて他の信者も守れる方法をいくつか用意して話し合おうとしたが、
 母親がそれら選択肢を拒絶した」と。

Adam君は背丈180センチ、体重100キロを超える体躯。
挙げられている彼の問題行動は
ミサの最中に子どもを殴り、制止に抗った、
思春期の少女をひざの上に乗せた、
他人の車のエンジンを勝手にかけた、
他の信者にぶつかっていった、
排尿した、など。

教会は今年5月に裁判所から
両親に対して彼の教会立ち入りを禁じる暫定命令をとったものの
両親はこれを差別だとして無視し、
障害者支援団体にも訴えて自閉症児への差別だと批判していた模様。

母親の気になる発言として
「自閉症なんだから私が叱ったからってこの子は抑えられません。
(I can’t discipline him out of his autism)
そんなことは司祭さんも分かるはずです」

ミネソタの人権法では
障害のある人に公共の場への立ち入りを禁じることが認められるのは
他者の健康と安全が直接的に脅かされる場合のみ。

7月1日、裁判所は
Adamの行為が上記州法の規定する「繰り返されるハラスメント」に当たるとして
教会への立ち入りを禁じる命令を妥当だと最終的に判断。

大人と変わらない体躯の未成年が望ましくない迷惑行為を他人に繰り返すことを
両親には予測できない状態が続いてきた、
教会には教会と信者への大きな悪影響(現実の影響も可能性としても)を避ける権利がある、としています。

ただし、今回の裁判所の判断はハラスメントの定義を中心としたもので、
この事件が提起している問題には、犠牲、寛容、相互尊重、妥協とともに、
“現実を受け入れること”が求められる、と裁判官。

Adam君には、教会側が家族と話し合って自宅でミサを行い、
そこに参加するという方法が勧められているようです。


障害者のアドボケイト団体ARCのミネソタ支部幹部は
「多くの地域、多くの家族と教会で起こっている問題です。
たいていの場合は家族と教会が解決策を見つけていますが、
このケースでは不幸にもそれができなかった。」

その他、障害者アドボケイト団体から指摘されているのは、
その場にいる人たちに本人が意図的にやっているのではないことを説明し、
他の信者も含めて関係者全員で解決策を探る努力をすることの必要。
親にも周囲の人の安全に配慮する責任があるという自閉症児の親の声も。


Church bars severely autistic boy from mass
The Star Tribune, May 17, 2008


Judge: Boy can be kept out of church
Wadena Pioneer Journal, July 1, 2008
(読むためには無料登録が必要です)

5月17日の記事には本人の写真が出ており、
なんで本人の写真がこうして公開されてしまったのか不思議なのですが、
出ている以上は少なくとも親が認めたものと考えられ、それもまたちょっと不可解。

もっとも写真によって、
「180センチ、100キロを超える少年」がただの抽象的な言葉ではなく、
リアルに感じられるのは確かです。

この子がパニックを起こしたら……と考えたら
確かに現実問題として大変そうだとは思う。

でも、よく記事を読むと「パニックで暴れた」とは書いてなくて、
書かれているのはむしろ「迷惑行為」のような気もするし……。

リンク以外の記事も多少読んでみましたが、
Adam君の具体的な行為については
どの記事もはっきり書くのを避けている感じがあって
事実関係がイマイチはっきりしません。
2008.07.02 / Top↑
一つ一つのニュースや出来事はそれほど大それたことには思えないかもしれませんが、
IHMEやBBTIの創設をはじめとするUW周辺の動き、また
UWとゲイツ財団とのつながりと、そこに動いている巨額の資金を考えると、
私の頭がどうしても戻ってしまうのは、このレポートの存在。

CONVERGING TECHNOLOGIES FOR IMPROVING HUMAN PERFORMANCE
The National Science Foundation
The Department of Commerce
June 2002

米国科学財団と商務省とによる
ナノテク、バイオ、IT、認知研究の4部門(NBIC)を統合して
人類の能力を強化しようとの研究レポートです。

米政府がトランスヒューマニストや例えばNorman Fostらのように
科学とテクノロジーによる人類改造を本気で考えていることを証明する
重要なレポートだと私は思うのですが、
そして、ここで謳われているテクノロジーの統合にITが不可欠な分野である以上、
そこにマイクロソフトが関与していないはずはないとも考えるので、
ずっと読みたい気持ちはあるのですが、
実はまだ手がついていません。
この夏の宿題に……。

今のところ、このレポート関連のエントリーは以下の2つです。



UWでIHMEやBBTIのような研究機関が作られていることや
UWが米軍のIT研究の先頭に立っていることや

もしかしたら
“Ashley療法”が行われたのがUWであることだって、

「親は自閉症の隠れた犠牲者」のような記事がUWの曖昧な“調査結果”を引き合いに、
ゲイツ財団やマイクロソフトの御用新聞のようなところで書かれることだって、

I-1000のような自殺幇助合法化への動きがWA州で急拡大していることなども

マイクロソフトとゲイツ財団の本拠地がシアトルであるという事実と
決して無縁ではないのでは……?

マイクロソフトの存在と影響力を通じて、
ワシントン州は科学とテクノロジーの合理主義文化の中心地となり、

(見失ってしまったのですが、今年初め頃に
シアトルは第2のシリコンバレーになっているとのニュースもありました。)

それゆえに米国のラディカルな生命倫理観も
他の州よりも浸透しやすい土壌ができつつある……ということは?
2008.07.01 / Top↑
IHMEがワシントン大学にできたことの他、
最近目に付いて気になるワシントン大学関連ニュースとして、

UW Bothell校にワシントン州当局との連携により
Biotechnology & Biomedical Technology Institute(BTTI)がオープン。

以下の一連の情報によると、BTTIの主たる目的はワシントン州における
バイオテクノロジー、バイオメディカルテクノロジーの産官学協働にあるのですが、
将来的に大学がこの分野でのリーダーであり続けることも
目的のひとつにちゃんと謳われています。

BTTIのプログラムにアフィリエイトとして参加する企業は
企業の規模に応じて年間1000ドルから1万ドル以上の寄付が必要。

こちらの企業向けページに書かれている最終目的は
ワシントン州における生命科学教育・研究の競争力を強化し、
 生命科学分野の経済的なポテンシャルについて
 公衆の意識を高め理解を広めること」。


UW Bothell starts up a biotech institute
Puget Sound Business Journal, April 14, 2008

BBTIの公式サイトはこちら

大学のプレスリリースは以下。
UW Bothell Announces Biotechnology and Biomedical Technology Institute(BBTI)
WU Press Release, April 14, 2008


②国防省から多額の助成金を得て7大学が米軍のために
 コンピューター・データ解析により
シャーロックホームズ並の推理システム作成プロジェクトに乗り出した、
それを率いるのはUW。

UW leads “Sherlock Holmes” military computing project
By Brier Dudley, Brier Dudley’s Blog
The Seattle Times, April 16, 2008

上記記事の冒頭ラインは「これでついにオサマ・ビン・ラディンが見つかるかも」。

兵士が身につけているセンサー、衛星地図、道路のモニター映像、
航空機の振動、偵察ミッションからの報告文書など、
現代の軍隊が手に入れることのできる多様な情報を駆使したリーズニング・システムを構築、
さまざまな判断や、敵の次の動きを予測することに役立てたい、との狙い。

      ----      ----

これまで「ゲイツ財団(IHME)」としてきた書庫名を
「ゲイツ財団とUW・IHME」に改めました。
2008.07.01 / Top↑
ワシントン大学はゲイツ財団から巨額の資金提供を受け、
4月に新たな研究機関IHME(the Institute for Health Metrics and Evaluation)を開設しましたが、

IHMEの目的は世界の保健医療のデータを新たな基準によって洗いなおして
その“科学的な”エビデンスによるデータ分析に基づいて
世界の医療資源を最も効果的に分配するための効率的な施策を提言することであり、
ひいてはIHMEのコストパフォーマンス分析をスタンダードとして、
世界の保健医療施策に反映させること。

(“科学的”とはこの場合、貧困など社会的ファクターを無視することのようですが。)

IHMEについては、気になることとして
科学誌LancetがIHMEとのコラボを表明しており、
これに対して「Lancet誌はゲイツ財団に買収されたのか」との批判が出ています。

そのLancet誌のサイトに、いよいよ
IHMEとのコラボによるthe Lancet Global Health Networkがお目見えしました。


冒頭の挨拶部分に書かれているネットワークの目的は
エビデンスを統合し
 新たな分析を行い、
 提言プログラムを立案し、
世界の保健医療と発展への行動に向けた提言を形作る

これはまさに IHME の目的そのもの。

なおIHMEとのコラボについては
上記LancetサイトのCurrent Calls for Evidenceのページ末尾に明記されています。
健康に対する天候の影響研究では英国のロンドン大学とコラボするようです。、


2008.07.01 / Top↑