今朝がたTBしてくださった方があって、
このニュースはAFPで日本語でも報じられているようですが、
生殖補助医療で子どもを産もうとするカップルに
医師は「奇形のリスクがありますよ」とちゃんと警告するように……と
フランスの科学者たちが。
33の生殖補助医療クリニックで生まれた15000人の記録を調べたところ、
以前の小規模な調査で出た11%という確率よりは低かったものの、
全体の4%の子どもに何らかの大きな先天的奇形があることが分かった。
一般には、その確率は2―3%だから
生殖補助医療で生まれた子どもでは明らかに高く、
心臓病と生殖器・泌尿器の形成異常がパーセントを押し上げている。
これらは女児よりも男児で多い。
また血管腫、皮膚表面に近い小さな血管でできた良性の腫瘍などでは
発生率は通常の5倍に上り、こちらは女児の方が男児の2倍の高率。
もちろん複数の要因が関与していると思われ、
それぞれがどのように関係しているかについては更なる研究が必要だが、
「すべての医師と政治家が、これについて知らされることが重要。
生殖医療技術によって生まれた子ども全員をフォローして
どの治療がこの問題に関与しているかを突き止めるべく、
もっと力を尽くさなければならない」と
The European Society of Human GeneticsのDr. Viot。
Doctors should warn of IVF defect risk, says report
The Guardian, June 13, 2010
すごく、気になるのは
その4%の子どもたちは、一体どうなったんだろう……ということ。
フランスではどうかわからないけど、
英国では、例えば口蓋裂とか内反足程度の“奇形”でも
出産途上まで中絶が可能だったりもするわけで……。
……あ、でも、記事によると「生殖医療の後に生まれた子ども」を調べたと書いてあるので、
それは、最終的に生まれてきた子どもたちのうちの4%ということなんですよね。
……だとすると、生殖補助医療による先天異常の発生率は
実際には、もっと高いという可能性はないのかな?????
それから、もう1つ疑問に思うのは、
これまでの生殖補助医療の歴史の長さを考えたら、
そういう調査や研究が、なぜ今まで十分にされないままになっていたんですか……?
ちなみに、
これまでの当ブログの生殖補助医療に関するエントリーを
以下にざっと抜いてみると、
「試験管ベビーは先天異常の時限爆弾か?」とDaily Mail(2009/5/6)
生殖補助医療で先天異常が増加?(2009/11/26)
精子250ドル、卵子1000ドルで、どう?(2008/5/26)
「凍結胚から生まれた子どもの方が健康」だって(2008/11/16)
生殖補助医療の“卵子不足”解消のため「ドナーに金銭支払いを」と英HFEA(2009/7/27)
「炭鉱で働こうと代理母をやろうと自分の身体なんだから勝手」とFost(2009/12/8)
インドの70歳女性、体外受精で初産(2008/12/9)
66歳で世界最高齢出産の女性、3歳の双子を残し、癌で死去(2009/7/16)
59歳がIVFで妊娠希望、医師ら年齢制限には反対(英)(2010/1/19)
8つ子の母は障害児手当を受給、子ども3人にも障害児手当、生活保護も(2009/2/11)
「死んだ息子の子どもがほしい」母に裁判所が遺体からの精子採取を認める(TX州)(2009/4/17)
タイトルだけを眺めてみても、
英・米・豪の生殖補助医療業界は、これまで
技術の安全性にも、代理母を含めた母体のリスクにも、生まれてくる子どもの福祉にも、
実は大して関心はなくて、
いかに生殖子を確保して症例件数を増やすか、
いかに高齢出産記録を超えてみせるか、
いかに無事に生ませる多胎児の数の記録を超えてみせるか、
などなど、単なる競争に血道を上げているだけ……
……という実態が髣髴としてくるような……。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jun/13/abby-sunderland-lone-sailor-rescued
地球上の生物の種類が減ってきていることについて、生物の多様性とエコシステムに関して科学研究と政治行動の溝を埋めるべく国際会議が立ち上げられることに。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science_and_environment/10307761.stm
日本語でどういうのか知らないけど、synthetic biology、つまりCraig Venterがずっとやっている人工的に生命体を創り出そうという(バイオ燃料とかワクチンとかに役立つのだとか)学問。それは規制すべきだと多くの人が考えている、という英国の世論調査。:DNAでの特許合戦の轍を踏まないでほしい。もう遅いのだろうとは思うけど。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science_and_environment/10297561.stm
米国の実験室で、ちゃんと機能する肝臓のグラフトを作ることに成功。将来的に移植に使えるのでは、と。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/10293842.stm
Merely Human? That’s So Yesterday
The NY Times, June 11, 2010
グーグルの幹部やトランスヒューマニストらが出資して2008年に
the Singularity Universityなるものが立ち上げられている。
大学の公式サイトはこちら。
現在はまだ、
米国政府が官民セクターの出会いの場と位置付けているシリコン・バレーのNASA Ames内に
拠点を置いて短期の講座を開催しているだけだけど、
いずれはキャンパスを構えるのだとか。
その理念は、その名の通りsingularity。すなわち「特異点」。
特異点とは、
各種新興テクノの進歩がある段階に達したところで
それらの総合的な影響力が一気に爆発的な効果をもたらし、
俄かに人間の能力を超人的な次元へと引き上げる……その地点のこと。
実際には、50年代にJohn von Neumannという数学者が語ったり、
93年にもSF作家のVernor Vingeが使った用語で、
この記事の中で、Ashley事件でお馴染みTH二ストのJames Hughesが言っているように
「KurtzweilはSingularityという用語をハイジャックしたのだと言う人は多い」のだけれど、
なにしろ彼の著書“Singularity is Near(邦題:ポスト・ヒューマン誕生)”が
今後数十年以内に特異点が訪れて、そうしたら人類は生物学的な限界をすべて超え、
不老不死を手に入れて、貧困、飢餓、気候変動、エネルギーなどの諸問題を解決することができ、
みんながハッピーになる……と説いて大ウケしたわけだから、
そのために人材を育成し、研究者や企業のグローバル・ネットワークを……という
建学の(と言うと、なぜかそぐわない気がするのだけど)精神(これもしっくりこないけど)の
この“大学”でも、Ray Kurtzweilが教祖……もとい広告塔……もとい表看板。
シリコン・バレーには、彼と同じようにテクノ・ユートピアを信じる
チョ―頭が良くて、ゼニがじゃぶじゃぶ有り余っている人たちが、わんさといて、
この“大学”に出資している。
Googleはもともと人類の思考能力を超えた巨大頭脳をつくり出そうと
日々シリコン・バレーで精進していることで知られていて、
Nasa Amesとも、もともと宇宙開発で提携関係にある。
(もともと米国政府がトランスヒューマニストと同じ方向を向いているのは
2002年のNBICレポートの段階で明らかだったりもする。
このレポートの内容の概要は「米政府NBICレポート」の書庫に)
で、このNYTimes記事は、
カーツワイルの半生をあらまし追いかけながら
彼の特異点説やテクノ・ユートピアに対する賛否両論を併記しつつ、
でも、実は、一番強く響いてくるメッセージとしては、
GoogleがKurtzweilを表看板に
Singularity大学でやっていることも、やろうとしていることも
結局は「特異点ビジネス」じゃないの……?
なにせ、この大学には目下、2つの講座があるのだけど、
その1つが10週間の「大学院コース」で25000ドルなり。
去年の講座には40人定員に1600人が応募し、
今年も定員80人のところに1200人が応募したそうな。
もう1つが、さらに上を行く 「幹部コース」で
こちらは9日間、夜明けから夜遅くまで、びっちりプログラムが組まれている。
お値段は15000ドルなり。
内容はともかく、
次なるベンチャー・ビジネスの動向を読み、投資判断の材料をゲットすることができるし、
ちょっと他ではありえないクラスメイトとの出会いと、
ネットワーク作りの場として大人気。
(受講生のほぼ全員が男性……と記事がわざわざ断っているのが興味深い。
THニズムてな基本的には白人・男性・知的エリートの価値意識じゃないかと私も前に書いたことがあったけど。)
特異点を信じる彼らは、
自分たちの力だけでそれを成し遂げられると信じていて、
また、そうするつもりなので外部から介入されることを嫌う、
特に政治的な妥協をしたり、路線の違う人たちを説得するなんて彼らには論外なのだ、とも。
(このあたり、いかにも個体の能力と機能しか見ず
人と人との関係性というところが見えないTH二ストらしい、と思う)
つまり徹底したリバタリアンで
だから、2008年の大統領選ではGoogleもMicrosoftも
アメリカ・リバタリアン党のロン・ポールにせっせと献金した、とか。
ここでGoogleと並んでMicrosoftが登場しているのは興味深くて、
そういえば記事の最後のあたりには、
カーツワイルはBill Gatesとも仲良しで、
カーツワイル本にはゲイツ氏が頻繁に言及されていて、
日本の本につけられる帯に当たるものをゲイツが書いていることも書かれている。
ゲイツ財団がIHMEを作り、グローバル・ヘルスでやろうとしていることを
グーグルはこういう形でやろうとしているということだろうし、
その価値観と理想と独善性とを共通項に、
その2つの動きは実はやっぱり1つなのだろうし、
これって、あの「ビルダーバーグ会議」の
科学とテクノ・オタク版なのでは……?
でも、例えば、このNYTの記事は相当な皮肉をきかせているし、決して賛同してなどいないのだけど、
SUの学長さんは「ボクタチの目的をNYTが紹介してくれて、とっても嬉しい」と喜んじゃってるみたいだし、
ビルダーバーグに比べて、こちらは、
たまたま、お金をたんまり握ってしまった頭のいいオコチャマたちの、
はた迷惑な児戯に思えて仕方がないのは、なぜ――?
それにしても、
この記事やSingularity Univ.のサイトで写真を見てつくづく思ったのは、
カーツワイルさん、しばらく見ない間に、歳とったね~。
1日150錠ものサプリなんてやめて、
ちゃんとしたご飯をしっかり食べた方が良くないっすか?
【カーツワイル関連エントリー】
カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」(2007/9/29)
多数のため少数の犠牲は受け入れよ、とカーツワイル(2007/10/1)
Kurtzweil「今より10億倍もベターな世の中に(2008/4/15)
【James Hughesの“Citizen Cyborg”関連エントリー】
Hughesの「サイボーグ市民」
he とshe の新たな文法?
サイボーグ社会の“市民権”
以下の記事前半の大まかな内容は、
自殺リスクが高いとしてブラックボックス警告がつけられているにもかかわらず、
GlaxoSmithKlineは自殺リスクが最も高い年齢層である7歳から17歳をターゲットに
Paxilの治験を行っていると批判するものなのですが、
ふ~ん……という感じで斜め読みしていたら、
その臨床実験、なんと日本で行われているというのです。
Glaxo Testing Paxil on 7-Year-Olds Despite Suicide Risks
GoodConsumer.org, June 12, 2010
あらかじめ断わっておくと、
この記事は、かなり偏った立場で書かれています。
そのため、記事全体の内容とトーンについては私自身も判断を保留して、
正直、後半はろくに読んでいません。
しかし、この記事には
以下の米国NIHの臨床実験サイトにある当該実験の詳細がリンクされており、
Paxil Japanese Post Marketing Paediatric Study in Depression(Double-blind, Placebo controlled Study)
「日本で7歳から17歳を対象にパキシルの臨床実験の参加者がリクルートされている」のは
事実のようです。
私は特に事情に詳しいわけではなく、
これまで当ブログで拾ってきた以上の知識はありませんが、
当ブログでこれまで拾ってきた情報では、
GSK社は90年代に
「史上、最も悪名高き小児科臨床実験」とされるPaxil研究329で
データを隠蔽したことがスキャンダルになっていますが、
隠ぺいされたのは「パキシルは小児には効かない」というデータ。
また治験段階で自殺念慮が起こる副作用を把握していながら
GSK社が隠ぺいしたために、警告なしに販売された間に自殺者が相次いで、
13歳の子どもを含む自殺者の遺族から訴訟が起きている、とも。
また、今回、日本語で検索して出てきたパキシルの副作用に関するサイトには、
「警告」として、以下のように書かれています。
海外で実施した7~18歳の大うつ病性障害患者を対象としたプラセボ対照試験において有効性が確認できなかったとの報告、また、自殺に関するリスクが増加するとの報告もあるので、本剤を18歳未満の大うつ病性障害患者に投与する際には適応を慎重に検討すること。
また、「禁忌」として
18歳未満の患者(大うつ病性障害患者)を削除
「効能・効果に関連する使用上の注意」として
抗うつ剤の投与により、18歳未満の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、抗うつ剤の投与にあたっては、リスクとベネフィットを考慮すること。
でも、上記NIHの詳細にざっと目を通した限りでは、
この日本での臨床実験に“リクルート”されているのは
その「7歳から17歳の大うつ病性障害患者」のように思えるのですが……。
一体どういうことなのでしょうか。
New Jersey州ElizabethのBetancourt事件。
今月中にも上級裁判所の判断が出るらしい。
去年、
1年以上呼吸器をつけた状態で会話が出来なくなっていたRuben Betancourt氏について
永続的植物状態であり、この上の延命は死の苦しみを長引かせるだけで無用であり
非倫理的であるとしてとして呼吸器を外そうとするTrinitas Regional Medical Centerと
Betancourt氏は家族のことを認識しており、
家族の同意なしに呼吸器を外す権利は病院にはないと主張する
娘のJacquelineさんとが対立して訴訟となった。
下級裁判所は病院に対して延命治療の続行を命じ、病院が上訴。
去年5月にBetancourt氏は死去。
一年後の今年5月、上訴裁判所の審理が始まった。
全米で「無益な治療」判断をめぐる訴訟が増えている中、
裁判所の倫理的判断が注目される。
N.J.Court Examines End-Of-Life Decisions
The MNT, June 8, 2010
この事件については、
Not Dead Yetを始め障害者団体や、W.Smithなど保守派の論客も
ずいぶん取り上げて批判しており、そちらには、もっと詳細な情報もあるのですが、
それらは、また折を見て、とりまとめるとして、
当ブログでは、これまで一度もエントリーにしていないので、
今回の記事を機に、ここで、とりあえず、概要のみ。
【関連エントリー】
「無益な治療」事件一覧(209/10/20)
臓器提供は安楽死の次には“無益な治療”論と繋がる・・・・・・?(2010/5/9)
http://mail.elsevier-alerts.com/go.asp?/bELA001/mHGLBH1F/qVZUBH1F/uMJ51KS1/xC45LH1F/cutf-8
米国の子どものメンタル・ヘルスにもっと力を入れねば、というLancetの記事。なんでも米国の子どもの21%には何らかのメンタルな問題があるのに、対応できていない、とか。:そうえいば去年、小児科学会が子どもたち全員にウツ病のスクリーニングをしようとか言っていた。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2960943-9/fulltext?elsca1=TL-110610&elsca2=email&elsca3=segment
今年5月にWHOが出した報告書では、患者に処方される薬の50%は適切な使い方ではない、というLancetの論文。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2960944-0/fulltext?elsca1=TL-110610&elsca2=email&elsca3=segment
Guardian、本日のBilderberg 2010 記事。さすがコメディ作家。おもしろい。Skelton氏と、ビルダーバーグジャーナリスト、 Estulin氏のライバル意識? 今日、図書館にEstulinの「ビルダーバーグ倶楽部」をリクエストしてきた。
http://www.guardian.co.uk/world/blog/2010/jun/10/bilderberg-2010-out-of-darkness
米国で介護に関する研究2本。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/191388.php
エル・サルバドルの子どもたちが、ギャングを形成してお互いの間で殺戮ゲームを繰り広げている。殺した人の多さが単純に誇りになるという世界。
El Salvador children are the killers in ruthless ‘game’ with guns
The Times, June 11, 2010
米国ワシントンDCのアーリントン墓地、実は多くの兵士たちの墓碑が間違っている、と。
Soldiers buried in wrong graves in Arlington cemetaery ‘shambles’
The Times, June 11, 2010
英国の新政府、子ども手当ての縮小を検討。13歳で、700万世帯以上の子ども手当てが切られるか。
Millions may lose out in reform of child benefits
The Times, June 11, 2010
Massachusetts General Hospital Centerが新たなタイプのヒト多脳性幹細胞を作った。これまでのものよりも扱いやすいとのこと。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/191362.php
単独太平洋横断航海途上でインド洋で消息を絶ったCAの16歳少女 Abby Sunderland。:オーストラリアの15歳が無事に航海達成した際には、それでよかったのだとみんな思ったかもしれないけど、果たして何歳から自己決定を認めるか、また議論になる? オーストラリアでは去年、州が親権を親から剥奪する騒ぎもあった。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jun/10/abby-sunderland-sailor-yachtswoman-teen-sea-search
http://www.medicalnewstoday.com/articles/191308.php
こちらのゲイツ財団関連エントリーで取り上げたWomen Deliver Conferenceでの避妊の問題に関して、コメントしているブログ記事など。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/191300.php
遠隔医療(telemedeicine)が広がって、Iowa州では、医師がPCのビデオカメラで患者にICを行って、緊急避妊薬を処方するボタンをクリックすると、ずっと離れたところにある、看護師がやってるクリニックにいる患者の目の前の引きだしたポンと開いて、緊急避妊薬が出てくるんだそうな。:いいんかい、そんなの……と思いつつ最初の方を読んでいたら、なんと、Iowa州でも唯一、Planned Parenthoodのクリニックだけがやっているのだとか。Planned Parenthoodってな、昨日、ゲイツ財団がらみでチェックしたばかりですがな。Bill Gatesさんが最近大好きみたいな「家族計画」の大元締め。「望まない妊娠はしないように」という善意。だから「望まない妊娠をした人にも、簡単な堕胎をお手軽な遠隔医療で」って? で、その「望まない妊娠はしないように」という善意と愛を知的障害者に当てはめると……それって、Ashley事件やAngela事件に行きつかない……?
http://www.nytimes.com/2010/06/09/health/policy/09video.html?th&emc=th
早産の子どもは将来、自閉症を始め、障害児教育が必要になる可能性が高い。:シアトルこども病院とゲイツ財団とが早産死産撲滅キャンペーンを始めた前後から、こういう研究がゴロゴロでてくるようになった。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/191396.php
認知症の人に個別活動プログラム(TAP)を導入して介護負担の軽減につながれば、自腹ででも、という介護者がいるか、という研究。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/191313.php
Sheffield Hallam 大学のスポーツ工学の専門家 David James氏がTimesに、Oscar Pistoriusのようなブレード式の人造の脚は、人間の通常の能力をはるかに超えた潜在能力を持っており、オリンピックから禁止すべきだ、と。
Prosthetics use in Olympics should be forbidden, says sports engineer
The Times, June 10, 2010
先日のRMCによるWakefield 医師の除名にも関わらず、世論のワクチン不信がぬぐえないことについて、英国のMedical Research Councilの幹部、Leszek Borysiewicz卿が、これから次々に新しいワクチンが開発され、安全性が確立されていくのに備えて、個人レベルで人々の不安に対処すべく医療職がちゃんと意識を持つよう教育しなければならん、そもそも医療職でちゃんと季節性インフルエンザの予防接種を受けているのが7人に1人以下とは何事か、と。
Leading scientist accuses doctors of increasing fear of vaccines
The Times, June 10, 2010
このところ、何度か補遺で追いかけてきたMalawiのゲイの夫婦。逮捕されて懲役14年を宣告され、その後、国連事務総長などの尽力で大統領による恩赦となったのだけど、釈放されて一週間後に、別れたんだとか。しかも、一人は女性と付き合い始めたとも。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jun/08/malawi-steven-monjeza-tiwonge-chimbalanga
スコットランドで乳児の息子が泣きやまないと、おしゃぶりでヘロイン代用薬methadoneを吸わせた女性(29)が懲役3年に。:「科学とテクノの簡単解決万歳」文化が浸透するにつれて、こういう人は増えてくるのが必然でしょう……と思う。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/191259.php
英国で「大学生は納税者の負担だ」という声が閣僚から。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/jun/09/david-willetts-students-tuition-fees
世界中で蛇が減っているそうだ。原因不明。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8727863.stm
背の低い人は背が高い人よりも心臓病になりやすいんだとか。:BBCを見ていると、ほんと、世の中にはいろんな研究があるもんだと感心する。……というか、呆れる。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/10256868.stm
自閉症の遺伝子研究でブレイクスルー。早期診断が可能に。
http://www.guardian.co.uk/science/2010/jun/09/autism-study-genetic-causes
私は一昨日の晩にたまたまGates財団の動きをトラックしていた時に知ったばかりで、
そしたら、たまたま今年の会議が先週末に開かれたばかりだったという
ラッキーなタイミングだったので、
全くの偶然ながら、
私が会議のことを知るのと同時に、
今年の会議についてネットに情報が流れ出てくれるオイシイ状況となりました。
中でもGuardianは、Charlie Skeltonというコメディ・ライターを送りこんだようで、
車の床に伏せたり、鞄で顔を隠したりして会場に向かう出席者の様子をチャカしたり、
彼のレポートを中心に、何本もの記事を打っています。
http://www.guardian.co.uk/world/blog/2010/jun/02/charlie-skelton-bilderberg-spain
http://www.guardian.co.uk/world/blog/2010/jun/03/bilderberg-spain-charlie-skelton
http://www.guardian.co.uk/world/blog/2010/jun/04/bilderberg-charlie-skelton-protesters
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jun/05/bilderberg-2010-charlie-skelton
その他、「Biderberg ページ」から、いろいろ入れます。
それから、Guardianが苦労して撮った
出席者らの写真12枚のギャラリーがこちら。
誰とは書いてなくて、
「さぁ、あなたは何人わかるかなぁ?」式クイズになっていますが、
出席者リストはこちらにありますので、
クイズのご参考に、どうぞ。
私は無知なので、写真もリストも、全くアウト。
また、こちらのYahoo! ブログの方が
英国メディアの記事リンクを沢山はってくださっていました。
インターネット時代でもあり、
メディアにもここまで明かされてしまったら、
もう秘密裏に開催できないと諦めたのでしょうか、
驚いたことに、Bilderberg Meetingsの公式サイトなるものがちゃんと出来ていて、
去年の会議から出席者名簿が明かされています。
こちらから、どうぞ。
今年のプレスリリースはこちら。
Myuさんのコメントにもありましたが、
確かに、最後に「参加者は個人の資格で出席します」と書かれています。
じゃぁ、なんで、一国の警察を動員して、税金使って物々しい警備態勢を敷くの――?
委員長にペンシルバニア大学学長Amy Gutmann氏を任命。
一問一答がWPに。
Q&A with Gutmann of Presidential Commission for Study of Bioethical Issues
The WP, June 9, 2010
非常に曖昧な答えに終始していますが、
目を引くところでは、
クリントン大統領の委員会は、立ち上げ直後にクローン牛のドリーが誕生し、
クローニングについて答申するよう求められたが、それと同じように
今回、オバマ大統領の委員会でも、立ち上げられたかというように、
Craig Venterが人造生命体を創り出した、
我々も6カ月以内にこの問題で答申するよう大統領に求められている、と。
その辺りについて、もうちょっと具体的に語ってくれと言われて
答えているのが以下。
The president has asked us to investigate the field of synthetic biology. Not just the recent discovery but the field and related science and technology with an eye toward its benefits and risks and what ethical boundaries we would recommend as the field develops.
Ultimately, we've been asked to develop recommendations about actions that the federal government should take to maximize the benefit, minimize the risk and identify appropriate ethical boundaries.
ゴチックはspitzibara。
つまり、この人たちの仕事とは、
その分野の研究の利益とリスクを見極めて、
リスクを最小に抑えて利益が最大になるところに線引きをすること、
その線引きを政府がどのように実施すべきかを考えること……という認識と思われ、
私は、この人のことは何も知らないけど、
この部分からだけで、ちょっと知ったかぶりに言わせてもらえば、
ものすごく、いわゆるバイオエシックス(英語圏の生命倫理)的……な印象。
「利益vsリスク」というお馴染みのツールが、また使いまわされるんだろうなぁ……。
でも、
「倫理的である」ということは、
「リスクを最小にして、利益を最大にする」ことと本当にイクオールなのか。
それは、倫理的検討じゃなくて功利的検討に過ぎなくて、
「利益vsリスク」論そのものが、実際には
本当の意味での倫理検討をすっ飛ばすところから問題設定しているんじゃないのか、
……と、Ashley事件の初めから、ずっと、いつも思うことを、また考えた。
なお、The Presidential Commission for the Study of Bioethical Issuesの公式サイトはこちら。
そのトップページにあるObama大統領の言葉は以下。
As our nation invests in science and innovation and pursues advances in biomedical research and health care, it’s imperative that we do so in a responsible manner.
我が国が科学とイノヴェーションに投資し、
生命医学研究と医学の進歩を追い求める以上、
責任のあるやり方をすることが不可欠である。
【関連エントリー】
「利益vsリスク」論は前提がおかしい(2008/3/6)
「尊厳は定義なしに使っても無益な概念」をぐるぐる考えてみる(2009/6/29)
大統領生命倫理評議会の「人間の尊厳と生命倫理」と「おくりびと」(2009/6/30)
生命倫理が「治外法権的な聖域なき議論の土俵」に思えてきた(2009/07/7)
「いのちの選択」から「どうせ」を考える(2010/5/21)
あと、もしかしたら、これなんかも?
Obama政権の功利主義医療改革を懸念する記事エントリー一覧(2009/7/18)
なんだか、とんでもないバケモノ情報に行き当たってしまったのですが、
Bill Gatesが去年米国で作った the Good Club (これが前のエントリーの内容)とは別に、
1950年代の早くから、世界政府とでもいうべき機能をもった秘密結社が存在していたということ、
みなさん、ご存知でした?
その名も、「ビルダーバーグ会議」というんだとか。
ウィキペディアはこちら。
2003年6月22日の産経新聞の記事がこちら。
去年のギリシアでの会議を報じたTimesの記事がこちら。
欧米の大物130人程度がメンバーで、
1954年から年に一回集まって会議を行っている。
もちろん、世界は欧米によって支配されて当たり前との前提によるもの。
出席者リストと議題は公表されて、欧米のジャーナリストも招待されるが、
内容は非公開で記事にはならない。
毎年、この会議の決定に従って
各国政府、財界への工作、メディアを通じた世論操作が発動されるとも。
これ、陰謀“説”ではなく、歴とした現実だよね……と
ほとんど目をこするようにしてネットで見つかる情報を拾い読みしていたら、
おや? ……なぜか、Bill Gatesの名前が出てこない……不思議だぁ……
……と、なんと、
Bill Gates To Attend 2010 Bilderberg Conference
The National Expositor, June 4, 2010
the Bilderberg Group is Real
Slog, June 8, 2010
今年のビルダーバーグ会議はスペインで、この週末に行われたばかりだった。
そして、ゲイツ氏は、2010年の今年やっと、ご招待を受け
めでたくビルダーバーグ会議にデビューされたのだとか。
よほど嬉しかったのでしょう。
秘密会議なのに、
スペインのメディアに突っ込まれて
「出席者の一人だよ」とか「スピーチでは退屈させないよ」とか
ぺらぺらと語ってしまったために、バレバレ。
まさか新参者のビル・ゲイツがはしゃいで、しゃべりまくったからでもないでしょうが、
今年のビルダーバーグ会議、
こちらの記事でのジャーナリストJim Tucker氏の証言によると、
近年メディアが同会議を取り上げるようになったものだから
秘密裏に出席することが困難となった常連たちの欠席が多く、
今年は失敗に終わった、と。
ちょっと気になるのは、
ペンタゴンからイラン攻撃を匂わせて「当面は音なしの構えで」というお達しが出たとか。
ここまで来ると、いきなり思いもかけない話の連続放射を浴びて
頭の中がしっちゃかめっちゃかですが、
もう1つ、気になることとして、
ゲイツ氏のビルダーバーグ会議出席については
上記リンクの記事があちこちにコピペされていて
「優生思想家ビル・ゲイツ、ビルダーバーグ会議に出席」というタイトルが目立つこと。
上記リンクの記事の最後にも1つありますが、
このところ、ゲイツ氏が人口抑制の必要を説く際に
新しいワクチンと、医療と、生殖医療の3つをしっかりやれば
世界人口の増加を10%抑制できる、と力説しているビデオが
YouTubeなどで多数流れてもいます。
ゲイツ財団は貧困国と障害者に強制不妊手術の導入を狙っているのではないか……と
懸念しているのは、どうやら私一人ではなかったようです。
しかし、その中に、
Ashley事件やAngela事件とのつながりの可能性にまで
考えが及んでいる人がどれだけいるだろう……?
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ついでに、このエントリーを書く前の検索あれこれで拾った情報をいくつか。
(情報源がどれだったか、すぐには分からなくなっていますが、
いずれもブクマの中にある記事で、追跡可能なものです)
・Bill Gatesの父親は、かつて米国家族計画連盟(Planned Parenthood Federation)の会長だった。
・ゲイツ財団は2002年に米国家族計画連盟に多額のグラントを出している。
(たぶん他の年も。たまたま財団のページ情報が出てきたのが2002年の170万ドル)
・Bill Gatesは、トランスヒューマニストの Ray Kertzweilのファンで、
これまでに少なくとも2回、ディナーに招待している。
2人の日ごろの言動から、
貧困層と障害者への強制不妊を進め、
エリート人類だけが残っていくように人口抑制策を進めて、
知力・体力に優れた超人類を目指そうとしているのでは、との憶測が流れている。
ネット上をごそごそしていたら、
こんなTimesの記事に行き当たった。
Billionaire club in bid to curb overpopulation
The Times, May 24, 2009
去年5月5日に、Bill Gatesの呼びかけで
米国の億万長者・慈善家が一堂に会して完全非公開の会議を行ったそうな。
出席したのは
David Rockefeller Jr.
Warren Buffet
George Soros,
Michael Bloomberg,
Ted Turner
Oprah Winfrey
前代未聞のこの会議、
出席者らは the Good Club と呼ぶそうな。
ディナーをとりながら、それぞれ15分間、
自分の興味関心のある問題について語った後、
ゲイツ氏のリードで、人口抑制が最重要課題であるとの合意に至った。
Gates氏は08年2月にも、
カリフォルニアでのイベントのスピーチで同様の発言をしており、
現在66億人の世界人口は、やがて93億に達すると言われているが
よりよい生殖保健医療などに慈善キャンペーンを行うことによって
83億人にとどめることができる、と語っている。
出席者の一人によると、投票が行われたわけではないが、
今後の環境、社会、産業への脅威と捉えて人口増加に対処していく方針が決まった、とのこと。
この人物は以下のようにも言っている。
This is something so nightmarish that everyone in this group agreed it needs big-brain answers.
They need to be independent of government agencies, which are unable to head off the disaster we all see looming
(Why all the secrecy?) They wanted to speak rich to rich without worrying anything they said would end up in the newspapers, painting them as an alternative world government.
各国の政府に任せていたのでは、
こんな地球的な危機を乗り切ることなどできっこないから、
ここは、そんな機関をすっ飛ばして、その頭越しに、
ワケの分かった我々が頭脳を結集してコトに当たる必要がある、
しかし、世界政府を作るつもりかと新聞に書かれたのではやりづらいので
カネ持ち同士でこっそり極秘の会談を……
出席者全員がそう合意したということについて
「まるで悪い夢でも見ているみたい」だと、この人物はコメントしているわけだけど、
確かに「各国政府では役に立たないから、自分が直接、出張って行って……」という
発想とヤリクチは、いかにもビル・ゲイツ。
ゲイツ財団は中国でも、それからインドでも
そういう独善的な姿勢で保健事業を地元政府から肩代わりしている。
(ゼニがついてくるからか、誰も「内政干渉だ」とは非難しないらしい)
また、その「いい人クラブ」のメンバーは、
今後数カ月の間に何度か会いましょう、とも決めたのだとか。
初回会議が去年の5月なのだから、
すでに、彼らは何度も極秘会議を重ねたのでしょう。
……ってことは、ゲイツ財団の周辺で去年あたりから慌ただしくなっている
早産・死産撲滅キャンペーン
母子保健キャンペーン
ワクチンの10年キャンペーン
なんかも、
もしかして、彼らの会議で合意された上での動き――?
人類は2040年に滅亡、でもグローバル福祉国家は通産相兼務の厚労相がご活躍だから大丈夫?と
私はこの3月に考えてみたりしていたのだけど、
通産相兼務の厚労相は、既に去年、自ら首相役を買って出て
米国の長者を閣僚とする世界政府を樹立していたということ――?
でも、いったい誰が、そんなの信任したんだ――?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/190911.php
英国財務相が財政赤字削減のための今後3年間の緊縮予算で、どの予算をカットするか、国民に直接意見を聞く、と。:障害者福祉カットに多数が賛成したらどうなる?
Osborne asks the public to say which services should be axed
The Times, June 8, 2010
このところチラチラ目にする話題で、ブッシュ政権時代にCIAのテロリストの尋問・拷問に手を貸した医師、心理学者らの責任問題。
http://www.nytimes.com/2010/06/08/opinion/08tue1.html?th&emc=th
数学と科学の分野での女性の活躍を後押しする法案が米国下院を通過。
http://www.nytimes.com/2010/06/08/science/08tier.html?th&emc=th
Melinda Gatesさんが感動的なスピーチを行って
世界中の国々に母と子の命を救おうと呼び掛け、
グローバルヘルスの母子保健対策にゲイツ財団が
今後5年間で新たに150億ドルを提供すると約束。
Melindaさんは、これまでバラバラに行われてきた妊産婦の保健医療と新生児医療とが
最近やっと母子保健として統合されてきたことをよしとしながら
これからは出産のみでなく適切な栄養、予防接種、避妊への対策とも
さらに統合されていく必要があると説き、
Gatas財団が新たに約束する150億ドルは
途上国の「家族計画、母子保健、それから栄養プログラム」を支援する、と。
これまで決まって年間50万人と言われてきた妊産婦死亡数は
つい先日、IHMEによって343000人に引き下げられたばかり。
また、今月末のG8では、
主催国のカナダが新たな母子保健のイニシアティブをスタートさせる。
ここで行動を起こせば、妊産婦の死亡は減らせる、と
ゲイツ夫妻は強調した。
Melinda Gates tells the world that women matter
Sarah Roseley’s Global Health Blog,
The Guardian, June 7, 2010
どうも、最近、
ゲイツ財団のゼニが出回る先々に「家族計画」がチラついているのが気になる……。
【関連エントリー】
知的障害・貧困を理由にした強制的不妊手術は過去の話ではない(2010/3/23):G8での避妊・家族計画論争
ゲイツ財団資金で超音波による男性の避妊法を開発、途上国向け?(2010/5/12)
ゲイツ財団がインドのビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書(2010/5/17)
2010年5月29日の補遺:G8での途上国の母子保健関連記事。ここでも「家族計画」に言及
自殺幇助を違法とする州法の規定から医師による自殺幇助を除外するよう求めて
コネチカット州の2人の医師とC&Cが起こしていた訴訟で、
地方裁判所は彼らの訴えを却下。
その理由は、
① 州法の文言もこれまでの判例からも、自殺幇助は明らかに犯罪とされており、
それは、たとえ人道的な目的によるものであっても変らない。
すなわち、この点に関しては論争は存在しない。
② 自殺幇助禁止規定を変更すると以下の深刻な問題が生じる。
社会の最も弱い立場の人たちが脅かされるのではないか。
関心が心身の健康のために患者を治療することから逸れて
医師と保険者が死のアドボケイトに変わってしまうのではないか。
それによって、医師―患者間の関係が損なわれるのではないか。
③ これらの重要な問題を検討する最適な機関は立法府であり、
裁判所が立法府に先んじてこれらの判断を行うことは、
立法府からこれらの問題を議論する正当な機会と義務とを不当に奪うこととなる。
もっとも、2人の医師とC&Cは上訴するだろうと見られています。
Connecticut Trial Court Rejects Attempt to Overturn Ban on Assisted Suicide
LifeNews.com, June 7, 2010
この記事によると、
C&Cら死のアドボケイトの最近の傾向として
「自殺幇助」を「死の援助」(aid in dying)と言い換えて
あたかも、それが自殺幇助とは別物であるかのように主張するという戦術を
この裁判でも使ったようですが、
Smith判事は、aid in dying は自殺幇助と同じではなく、
それもまた、法律で認められているわけではない、と。
ちなみに、assisted dying という表現は
英国の自殺幇助合法化議論でも目につくようになっていて、
例えば障害学の学者であるTom Shakespeareも使っていたりします。
【コネチカット州自殺幇助議論関連エントリー】
Connecticut州議会、自殺幇助法案を棚上げ(2009/3/18)
2010年3月9日の補遺(医師2人とC&Cによる訴訟の公判開始)
CT州の障害者権利擁護局が「自殺幇助合法化訴訟に障害者の視点を」と動議(2010/4/15)
会員登録した人が記事を開くにも、その都度ログインを求められるようになったため
リンクが張れず(張っても意味がないので)、タイトルのみになります。
Girl, 13, among seven arrested over murder of ‘gentle giant’
The Times, June 7, 2010
知的障害のあるShaun Rossingtonさん(21)は
先週水曜日の夜、両親が寝室に引き上げる際には一人でテレビを見ていた。
ところが翌日の朝4時に、
同じ地域のスーパーマーケットの近くで、遺体で見つかった。
死因は頭部に受けた傷。
最後に両親が目撃して以降のRossingtonさんの行動など
詳細は未だに不明。
しかし、Rossingtonさんの殺人容疑で土曜日に警察が逮捕したのは
20歳と25歳の男性、16歳の少年3人、
それから16歳と13歳の少女。
Rossingtonさんは両親に「優しい巨人」とあだ名されており、
背が高く、がっしりした体格ではあるものの、性格は穏やかで、
地元のサッカーチームに所属し、友人も多かった。
【関連エントリー】
想像力と寛容をなくしていく社会(2008/5/20)
“社会浄化”同性愛者、知的障害者の殺人を検察が黙認(コロンビア)(2009/9/7)
若者ギャングの10年に及ぶ軟禁・嫌がらせで母が障害のある娘と無理心中(2009/9/18)
英国内務省から「ヘイト・クライム政府横断行動計画」(2009/10/9)
車いす男性に10代の子ども2人が鉄バイプで殴る蹴る(豪)(2010/3/15)
http://www.nrlc.org/News_and_Views/May10/nv052610part3.html
米、最高裁判事の候補Kagan判事が90年代にオレゴンの尊厳死法の議論で、自殺幇助を禁じる法律を作るなんて terrible idea だと発言していたことが明らかとなり、メディアが一斉に取り上げている。
http://www.cbsnews.com/stories/2010/06/04/ap/supremecourt/main6548731.shtml
http://edition.cnn.com/2010/US/06/04/scotus.kagan.assisted.suicide/index.html?section=cnn_latest
IHMEが5月に出した母子死亡数の調査結果を巡り、IIHMEとWHOの間に亀裂が生じている。:IHMEがゲイツ財団の私設WHOと言われていることを考えれば、パートナー関係が維持できる方がおかしい。でも、大勢としてIHMEの方が優勢に推移していくみたいに思えるのも、考えてみたら妙な話。
http://www.c-fam.org/publications/id.1641/pub_detail.asp
脳性まひをES細胞治療で治そうと世界中の研究機関を渡り歩く親たち。:その行為、子どもに「今のままのあなたでは親の私たちには受け入れられない」というメッセージを送る、ということは?
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/06/05/AR2010060502014.html?wpisrc=nl_cuzhead
老化に関与している遺伝子が、ES細胞が分化していく過程に関与していることが分かった。:なにか、とても示唆的な感じがする。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/190959.php
尿で自閉症診断が可能になる?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/190928.php
肥満した妊婦の増加が母子医療に大きなコスト負担となっている。
http://www.nytimes.com/2010/06/06/health/06obese.html?th&emc=th
以下は補遺向けにメモった内容に過ぎないのですが、
かなり重要なニュースかと思うので、とり急ぎ
今日の補遺はこの一点ということで。
豚インフルのパンデミックに備えてワクチンの備蓄を推奨する
WHOのガイドラインを書いた3人の科学者には、
タミフル製造元のロッシュ、リレンザ製造元のGSKと金銭関係があったことが判明。
それぞれの科学者はその繋がりを隠していたわけではないものの、
WHOは豚インフルに関する一連の意思決定過程で3人の利益の衝突を報告していない。
今日のヨーロッパ・カウンシルに出席した英国労働党のPaul Flynn議員は、
「製薬会社の影響力がタコの足のように
意思決定のプロセスのあらゆる段階に及んでいる」
http://www.guardian.co.uk/business/2010/jun/04/swine-flu-experts-big-pharmaceutical?&
このニュース、さて、日本でどういう扱いになるのか。
2006年に英国でも Not Dead Yet UK が立ち上げられていました。
リーダーは自殺幇助合法化に抵抗し続けている Baroness Jane Campbellさん。
去年、議会が合法化法案を否決したのは
直前の彼女のスピーチが功を奏したからだという声もあります。
Not Dead Yet UK の公式サイトはこちら。
そのNot Dead Yet UK が
英国内で自殺幇助合法化を求める動きに対して、
6月2日、レジスタンス・キャンペーンを始めました。
英国の議員たちに向け、
以下のレジスタンス憲章に署名するよう呼びかけています。
“レジスタンス”憲章2010
1. 障害者とターミナルな病気の人は他の皆さんと同じ法的保護を受けるに値し、また、受ける資格があります。
2. 私は障害者とターミナルな病気の人たちすべての生命と、彼らの社会に対する貢献を価値あるものと考えます。
3. 私は私の選挙区の障害者とターミナルな病気の人たちが尊厳のある生を生きるために必要な医療、社会ケアその他のサービスを受けられるよう保障する機会を作るよう努めます。
4. 私は、命を断つために支援を希望している障害者とターミナルな病気の人たちには、自殺念慮のある他の人たちと同じ支援をして、生きるように励ますべきだと信じます。
5. 私は自分の選挙区で、緩和ケアと自立生活サービスを支援し、それらのサービスが必要な人に確実に届くよう尽力している人たちと協働します。
6. 私は自分の選挙区で自殺幇助に関する法改正に不安を感じる障害者とターミナルな病気の人たちと会い、彼らの意見を考慮します。
7. 私は自殺幇助を違法と定めた現行法による法的保護が維持されるよう努めます。
また、Campbellさんは、このキャンペーン立ち上げに際し、
「障害者に必要なのは死ぬ手伝いではなく、生きる手伝い」と題する一文を
Guardianに寄稿し、その趣旨を説明しています。
Disabled people need help to live, not die
The Guardian, June 3, 2010
ごく、大まかにまとめてみると、
これまで、障害者はずっと運動してきました。
その運動が訴えてきたものは人々に受け入れられ、
我々の運動は障害者差別法など多くの勝利を挙げてきました。
そして、社会は変わり、誰もが平等を大切だと考えるようになりました。
これまで社会を変えようと運動してきた自分たち障害者が
今、変えまいと闘っています。
障害者もターミナルな病気の人たちは
不安だけでなく、偏見や差別にもさらされてきました。
「ああなるくらいなら死んだ方がマシ」と言われ価値なきものとみなされ、
最近では自殺幇助を合法化しようとの声が上がっています。
そういう人たちは不安、不安と、そればかりを言います。
苦しむことへの不安、尊厳を失うことへの不安、誰かの重荷になることへの不安。
そして、そう、本当は、
愛する人がそんな不安に苦しむ姿を目の当たりにしなければならないことへの不安も。
だから、障害と病気への不安への解決策として、自殺はどうかというのです。
しかし、障害も病気もない人の自殺は思いとどまらせようとするのに、
自分で死ねる人は自殺してはいけないという一方で、
人の手を借りなければ死ねない人の自殺は認められるなら
そこに平等はありません。
それでも多くの人が、
そう考えるのが思いやりというもので、
その考えは反駁の余地がないほど論理的だというのです。
一旦、合法化されてしまったら、基準は広げられていきます。
そして、家族や医療職を始め社会の人々の考え方にも作用して、
障害者に対する見方、扱いやケアまで根底から変えてしまいます。
社会を変えるために運動することと違って、
変えないための運動は、運動することも説明することも難しいけれど
これは私たちの安全を守るための運動です。
合法化へ向かう動きを、声を上げずに黙って見ていることはできません。
我々にはNothing about us, without us というスローガンがあります。
ここに抵抗の声を上げましょう。
この度立ち上げたキャンペーンの名前は、レジスタンス――。
これまでの実践に裏付けられた自信を背景に、凛と澄んだ上品な声が、
理路整然と批判し、堂々と訴え、高らかに呼びかける――。
本当に、すばらしい文章。胸打たれます。
なお、同日のBBCの記事はこちら。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8718581.stm
http://www.telegraph.co.uk/news/uknews/law-and-order/7798414/Disability-campaigner-Baroness-Campbell-urges-MPs-not-to-relax-assisted-suicide-law.html
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8718581.stm
仕事の関係での調べ物で行き当たった、日本の聴覚障害者向け電話通訳サービス。
http://www.murayama-cb.com/modules/jirei1/index.php?id=19
もうひとつ、日本で、電話リレーサービスも。
http://blogs.yahoo.co.jp/hide461124/14210035.html
こちらは外国語の電話通訳企業。(日本語サイト)
http://www.nspeak.jp/
こちら米国の聴覚障害者用電話サービス。ビデオ・リレー・サービス(VRS)。日本語サイト。
http://wiredvision.jp/archives/200302/2003020606.html
こちら英国の聴覚障害者向け電話サービス。80年代に聴覚障害者団体がスタートしていたというのがすごい。英語サイト。
http://www.textrelay.org/
http://www.rnid.org.uk/howwehelp/our_services/textrelay
http://www.barnsley.gov.uk/bguk/applicationsandpayments/Type%20Talk
http://www.textrelay.org/about_us.php
売りに出されているNewsweek誌に、共和党系の雑誌が食指。
http://www.guardian.co.uk/media/2010/jun/03/newsmax-bid-for-newsweek-magazine
遺伝子分析により個々に合わせたガン治療をNHSが導入へ。
http://www.thetimes.co.uk/tto/science/genetics/article2538739.ece
英国で史上最悪の銃乱射事件。12人死亡。3人が重体。犯人は52歳のタクシードライバー。
http://www.guardian.co.uk/uk/2010/jun/02/cumbria-shootings-slaughter-countryside-derrick-bird
切り抜きを引っ張り出してきた。
今年3月18日の朝日新聞の地方版で、
鳥取県の「野の花診療所」の徳永進医師の
在宅ホスピスの取り組みを取材した記事。
最後まで家でなるべく快適に過ごせるかどうかは
痛みのコントロールがうまくいくかどうかにかかっている、
痛みがあると心も落ち込みやすいが、
「痛みが消えれば谷底からはい上がろうという希望が生まれる」と語り、
医療麻薬を適切に使える医師を増やして行かなければならないと
徳永医師は、今後の課題を述べているのだけれど、
そこまでなら、緩和ケアの専門医があちこちで言っていること。
私がこの記事を切り抜いたのは、そこのところではなくて、
その後に、付け加えられた数行。
それと「痛みを引き受ける」というメッセージを、
患者さんにきちんと伝えること。
「自分は見放されていない」と分かってから渡される薬と、
ただポンと渡されて飲む薬とでは効き方が違う。
こころ医者、ですねぇ。徳永先生――。
90年代の脳死論争の直後に“転向”して以来、
誰よりも熱心な「科学とテクノ」信者だった立花隆氏が
自身がガンになって、世界中の治療研究の最先端を巡り歩き、
最後に徳永医師の診療所にたどり着いて、
「人間には、きっと、ちゃんと死んでいく力が備わっている」と言ったのは
ものすごく示唆に満ちた言葉だったと思う。
そういえば、
やはり緩和医療で有名な柏木哲夫先生の講演を聞いた時に、
末期がんで寝たきりになって、もう身体のどこも動かせなくなっていたおばあさんに、
最期のお別れをさせてあげようと、ずっと可愛がっていた犬を家族が家から連れてきて
胸の上においてあげたら、
ずっと動かせなくなっていたはずの腕が胸のところまで上がってきて、
犬を抱いた……と。
もう何年も前に聞いた話なのだけど、
今でも、その話を思い出したら涙が出そうになる。
人の思いの強さというものに――。
「人間には、科学では説明できないことが起こる」と
その時に柏木先生が言われたのも心に残った。
医者のくせに。
こんな非科学的なことを平気で言うのだから、
こころ医者ですねぇ。柏木先生も――。
ちなみに、去年、アメリカの医学雑誌上での、
認知症患者の終末期医療を巡る、こころ医者と、ただの医者の論争がこちら。
「認知症患者の緩和ケア向上させ、痛みと不快に対応を」と老年医学専門医(2009/10/18)
「認知症はターミナルな病気」と、NIH英米では資金の終末期認知症ケア研究(2009/10/18)
NYTもMitchell, Sachsの論文とり上げ認知症を「ターミナルな病気」(2009/10/21)
英国ではこんな実態も。
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2010/9/10)
図書館で文庫の背表紙を見た時には、そんな驚きを感じたくらい、
なんというか、私にとってカンペキ「過去の人」になっていた。
思春期にせっせと読んだ記憶があるのだけど、そのうち、すっかり忘れて、
忘れていることすら一度も意識することなく今に至った。
その間が、なにしろ30年以上なのだから、
失礼ながら「まさか、まだ生きておられたので……?」とつぶやきつつ、手に取ってみたら
なんと、本当にご健在で、「こころ医者講座」は2009年第一刷発行。
なんだか昔なつかしい恋人とひょっこり再会したかのようで、
猛烈に嬉しくなったものだから、ろくに中身も見ずに借りて帰った。
そしたら、滅法いい本だったのよ。これが。
ちょうど、
頭でだけ、合理によってだけ、人に関わる諸々を
利益だリスクだコストだと点検する議論にうつつを抜かしていると、
心で受け止め、心で向かい合う力を人間は鈍らせてしまうんじゃないかと
こちらのエントリーなどで考えていたところに、ぴたりと重なる内容でもあったので、
今の時代に、黙っていられなくなって、
こんなことを言ってくれる老精神科医の思いと言葉を
しみじみと温かくありがたく受け止めつつ読んだ。
ごく大まかに、例によって勝手な解釈と私自身の言葉で、
なだ先生がおっしゃっていることをまとめると、
日本で、うつ病が増えているそうな。
「病人が増えているのか、受診者が増えているのか分からない」が、
とにかく精神科医が診きれないほどの数に膨れ上がっているそうな。
それなら、患者本人も、患者の周りにいる人も、それからもちろん精神科医も、
みんなで「こころ医者」になったらどうか。
病気を治して問題を解決しようとするのが精神科医。
話を聞いて本人の「こころ」を成長させて自分自身で問題を解決させようとするのがこころ医者。
もちろん、こころ医者の方がステージが高い。
精神科医が医師としても人としても成長して初めてこころ医者になれる。
本来、精神科医はこの両者が出来なければならないはずだが
「今はそれができない状況になっている」。
(それは、先生、例えばこういう状況のことでしょうか……?)
正常か異常か、イエスかノーか、すぐに何でも白黒をつけたり、
その白黒を権威ある誰かによってつけてもらわなければ気が済まない人々や、
そうした世の中の風潮が人を追い詰めている。
患者さんがふと黙る、その沈黙の中にある濃密なこころの綾や、
イエスでもノーでもない「どっちつかず」で「中途半端」なアンビバレンツが
人のこころにとって非常に大切な機能を果たしていることなど、
こころに対する理解と洞察をしっかり深めて、
今すぐに結果を出そうとするのではなく人生という長い時間の中でものを考え、
個としての人の中だけではなく周りの人との関係性の中で問題を考えるなど、
柔軟かつ繊細に、人のこころの複雑さと向き合い、
その人が本来持っているはずの、人として成長していく力をサポートすること。
近代人は、封建制度から解放されることによって
自由と引き換えに不安を抱え込んでしまったので、
つい、その不安を消そうとしたり、そこから逃げようとしてしまうけれども、
その不安は不安として引き受けつつ生きていくしかないものなのだから、
そうする力を身につけるところまで、こころが成長すること以外にない。
周りはそれをサポートすることが大切。
大切なのは「正常」ではなく「成長」。
そういう視点で人をサポートする「こころ医者」には誰でもなれる。
そして、こころ医者になることを通じて、自分自身を見つめ、
自分自身もこころを成長させていける人が増えれば、
「正常」や「権威」で人を追い詰め病気にしてしまうような人も減って、
ウツ病の人がこんなに増えるような社会ではなくなる。
念のために断わっておくと、もちろん、
なだ先生は、薬を使うということを否定しているわけではありません。
実は、この直前に読んだ河合隼雄氏の「縦糸横糸」にも、
ほとんど同じことが沢山書かれていた。
例えば、
……根本には、人間である限り、その奥底に必ず持っている実存的な不安に対する自覚がなさすぎる、という事実がある。このような不安に対するものとしての人生観、世界観を持ってこそ、人間は安心して生きていくことができる。(p.26)
人の心や行動の複雑さは、
原因―結果という単純な図式で納得などできるはずもないのに、
「なぜ」と問えば必ず答えが返ってくるはずだ、というのは現代人のあさはかな思い込みである。(p.74)
または、
客観的な近代科学の分析の方法論を人間に当てはめようとしたことの間違いを指摘し、
そもそも人間が人間を厳密な意味で「対象」になどできないのだ。(p.152)
……などなど。
その2冊を読んで、思ったのは、
人の心は、脳にあるわけでもなく、
客観的に把握したり簡単に調査研究できるようなものでもなく、
案外に、その人の中のどこかにあるものですらなくて、
その人と誰かとの関係性の中で、
その人の心と、その誰かの心とが、
お互いに相手に向かって力を使い合う時に生じる、
心の力が交錯する磁場のような場所にあるものなのかもしれない……
……みたいな、こと。
それは、前に考えてみた、
「どろどろ」と「ぎりぎり」にこそ意味があるということでもあるのだけど。
何を選択するかじゃない。
人生の一回性の中で、いかにどろどろし、いかにぎりぎりのところで選択するか。
その選択までに、どれだけ、心を動かし、心のエネルギーを注いだか。
そこに関わる人たちが、どれだけ自分の心を動かし、使い、
心のエネルギーを、その人のために注いだか――。
人を変えたり、人を動かしたりできるものがあるとしたら、
心の磁場でのそういう絡まり合いから生まれてくるエネルギーみたいなものなんじゃないのかなぁ。
そして、Ashley事件からこちら、ずっと考えている「尊厳」も
そういう磁場のあたりに関わっているんじゃないかという気がする。
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頭で割り切ろうとするなよ。
そんなもん、最初から割り切れるものじゃないんだよ。
どこまでいったって割り切れないことも
どうしたって不確かなままでしかないものも、
心で受け止めるしかないものなんだよ。
人間なんだから。
そうやって頭ばっか使ってないで、
心をもっと、しっかり、使わんかい。こら。
その逆ばっかりやっとるから、
人間観のあまりに浅薄な、頭がいいだけのバカが
世の中にどんどん増えていくだろーが、おら。
……と、本当は、なだ先生は言いたいんじゃないだろうか。
いや、それは私の我田引水か……。あははっ。
http://blogs.yahoo.co.jp/e999jp/60723489.html
米ウィスコンシン州の矯正施設で、同房者の自殺を幇助したとして逮捕・起訴されていたJoshua Waltersが罪状を認めた。去年4月にこちらのエントリーで拾った事件。:これまで「自殺幇助」と呼んではいかんだろう……と当時つぶやいた事件。
http://www.signonsandiego.com/news/2010/jun/01/wis-inmate-pleads-guilty-in-assisted-suicide-case/
有害ゴミを象牙海岸にぶちまけて多くの死傷者を出したTrafiguraスキャンダルで、アムステルダムでの裁判が始まったらしい。:初めて当ブログでニュースを拾ったのは2007年だった。うやむやにならなかったのは、とにかく良かった。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jun/01/trafigura-trial-toxic-waste-netherlands
J&J社の子どもの鎮痛剤に関する品質管理の問題で、去年2月にFDAが同社幹部に対して改善を勧告していたのにもかかわらず、4月末のリコールまで対応が遅れた、と議会の公聴会で。
http://www.latimes.com/news/nationworld/nation/la-na-tylenol-hearing-20100528,0,1137250.story
10代の子たちに集中力がないと大人が嘆くけれど、それは彼らが怠けているせいではなく、彼らの脳が未成熟で大人の脳とは違っているからだと脳科学から説明する科学者。:でも、それが「なぜ最近の子どもたちは昔の子どもたちほど集中できないのか」という問いの答えにはならないような気がするのだけど。
http://www.guardian.co.uk/science/2010/may/31/why-teenagers-cant-concentrate-brains
バイオテクノロジー産業の安全規制が時代遅れなため、研究者の感染被害が後を絶たない。
http://www.nytimes.com/2010/05/28/business/28hazard.html?src=busln
ガン細胞が形成される前の段階で発せられるシグナルを検知する検査を英国人科学者が研究中。
http://www.thetimes.co.uk/tto/health/news/article2535216.ece
本人の同意もなしに不妊手術を施されたNamibiaの女性3人が、
政府を相手取って損害賠償を求める訴訟を起こしている。
人権団体の調べでは2008年以降、同様の被害が15件確認されている。
The Legal Assistance Center(LAC)の関係者によると、
これらの手術では、女性は何をされているのか分かっておらず、
また既存の病気もまったく考慮されずに行われたケースもある、とのこと。
訴訟の開始に合わせて、300人が抗議デモ。
他にも、連帯を示すデモが南アフリカ、ザンビア、英、米で。
Namibia HIV women sue over forced sterilisation
BBC, June 1, 2010
これまで当ブログが拾ってきた強制不妊の情報は
ペルー、日本、タイ、米(Ashley)、オーストラリア(Angela)、ウズベキスタン。
それらの情報はこちらのエントリーにまとめました。
その精神状態について、わずか数行の説明でごまかした文書で、
チューリッヒの婦人科医に処方させ、
DIY自殺キットを手渡したとして、
スイスの医療当局がDignitasに調査を開始。
この記事に書かれているのは、その他2点で、
2005年には
ドイツの女性が自国で職場に提出すると偽ってGPに書かせた末期であるとの証明書で
Dignitasで自殺幇助を受けて問題となったことがある、とのこと。
(ただ、スイスの法律は、特にターミナルな人という条件を付けていないはず。
というか、もともと自殺幇助が違法でないという解釈の問題のようでもあり。
といってもスイスの当該法について詳細を知っているわけではなく、ニュースからの断片情報のみ)
もう1点は、当ブログにも何度か登場している看護師で
元Dignitas職員のSoraya Wernliさんのこと。
創設者のMinelliはこれまでいくつもの訴訟を起こされながら
違法な殺人で起訴されたことはないのだけれど、
Dignitasは倫理的な安楽死をやっているわけではなく金もうけの手段にしているだけだとして、
Wernliさんは次々に訴訟を起こしては告発を続けていて、
絶対に有罪に持ち込むと燃えている、という話。
辞職する前の8ヶ月間はWenrliさんは警察の潜入スパイとしてDignitasで働いていた、
ということも書かれていて、
それで、これまで警察がMinelli氏を逮捕できていないなら、
Wenrliさんの告発の信ぴょう性は……? とも、考えてしまった。
Swiss suicide clinic Dignitas probed after ‘patient suffering from paranoid schizophrenia was given suicide kit’
Daily Mail, May 31, 2010
DIY自殺キット……。
もう自殺幇助関連のニュースを追いかけて、かなり経ちますが、
この表現は初めて見ました。
医師が処方した致死薬のことを、DIY自殺キットと最初に呼んだのは
Dignitasなんだろうか。それともメディアの誰かなんだろうか。
その感覚そのものが、なんか、おぞましくない?
それにしても、自殺した人の骨壷を湖に投棄したり、
精神障害を隠して自殺用の薬を手に入れて渡したり、
Minelli氏はもう感覚がマヒしているとしか思えない。
(Dignitasは事実上Minelli氏一人がやっており、つまりDignitasとはMinelli氏なのです)
そういうのは、きっと、
個々の行為がスイスの法律にのっとって違法か合法かという問題ではなく、
たとえ個々の人の自殺幇助に法律上の問題がなくとも、
たとえ彼らの遺骨を湖に放り捨てる行為がさほどの重罪ではなかったとしても、
それの行為が一人の人間の中で繋がっているというところには
法律を超えた倫理の問題としてゼッタイに見過ごしてはいけないものがある、と思う。
定義もできないし、合理的な説明がつかないから、そんなものは無意味だと
英語圏の一部の生命倫理学者は「尊厳」という概念を切って捨てるのだけれど、
では、Dignitasで死んだ人の遺骨が無造作に湖に投げ捨てられていた事実に、
なぜ私たちはこんなにも心を逆なでされるのか。
もう死んでしまった人の遺骨がどこに置かれようと、そんなの、
その人にとっては利益も不利益もないと言ってしまえば、それまでだ。
チューリッヒ湖の底に眠り続けるのが「本人の最善の利益」だと
倫理学者がどこかから正当化の理屈を探してきてコネくり回すことだって可能だろう。
あの人たちはそういうことがショーバイなのだから。
そういえば、Diekema医師やFost医師は、
「Ashleyには自分の尊厳を感じることすらできない」と言った。
だから、彼女の身体を侵襲することは尊厳を侵害することにはならない、と。
その論理を転用すれば、
遺骨を湖に捨てられた死者には自分の尊厳を感じることなど、もうできないのだから
ほら、やっぱり、生命倫理学者のご高説によれば、「別に、捨てたって構わない」ことになってしまう。
でも、大半の人は、遺骨を湖に投げ捨てるという行為にショックを受け、心を痛める。
それが自分とは全く関わりのない赤の他人の遺骨であっても、「許せない」と感じる。
それは、その行為が尊厳を侵していることを
理屈抜きに感じるからではないのだろうか。
誰か特定の人の尊厳が侵されていると同時に、その行為は、
あなたも私も含めた、人というものの尊厳を踏みにじっていると
感じるからではないのだろうか。
一人の人の尊厳を侵すことは、
すべての人の尊厳を侵すことに通じていくからではないのだろうか。
尊厳なんて定義できないんだから無益な概念だと切り捨てて、
合理の世界だけのヘリクツをこねくり回しては、
人の生や死や身体を操作することを繰り返していると、
人の感覚は麻痺していく。きっと。Minelliのように。
自分が手を貸して人を死なせることにも、
その遺骨を手近な湖に投げ捨てることにも、
精神障害のある人が死にたいと言ってきて、それは症状かもしれないのだから、
もしかしたら症状さえ収まれば気持ちが変わるかもしれないと知っていたとしても
この人一人が死ぬこと1つが、どっちに転んだって、そんなの大した問題じゃないし……と、マヒしていく。
そして、そういう人は、だんだんに人として腐る。
尊厳って、やっぱり頭で理屈をこねて考えるものじゃなくて、
心で感じるものなんじゃないんだろうか。
「すべり坂」も、
死の自己決定権や、生命の操作や、重症児の身体の侵襲や、人の身体の資源化など
個々の問題において、セーフガードが効かなくて、その技術やルールが、
本来ターゲットになるべきでない人に濫用されてしまうというだけじゃなくて、
本当は、一番おそろしい「すべり坂」は
人の心が、いのちや、人の生死に対する畏怖や、身体に対しての敬意の感覚を鈍らせて、
人としての心の感度を失っていくことにこそ、あるのでは――?
そして、人間の社会全体が、
人の遺骨を無造作に湖に投げ捨てるような行為に対して、
「その、どこに問題があるのか」と頭で受け止めるようになり、
心を痛める、ということをしなくなっていくこと、
そんなふうに人が人として腐っていくことに――?
【尊厳について、考えてみたエントリー】
「尊厳は定義なしに使っても無益な概念」をぐるぐる考えてみる(2009/6/29)
大統領生命倫理評議会の「人間の尊厳と生命倫理」と「おくりびと」(2009/6/30)
「いのちの選択」から「どうせ」を考える(2010/5/21)