USA Todayに、米国の自殺幇助議論をおおまかに振り返る記事。ターミナルな患者は今でも希望すればモルヒネの大量投与によって、事実上の自殺幇助をしてもらっている、「現実と常識によって世論はOregonの前例の方向へと向かっている」。米国最高裁も支持しており(具体的には?)このたびObama大統領によって最高裁判事に指名されたSotomayor氏も、前例に従う、と述べている、と。
http://blogs.usatoday.com/oped/2009/07/our-view-on-death-with-dignity-physicianassisted-suicide-quietly-gains-ground.html
http://blogs.usatoday.com/oped/2009/07/our-view-on-death-with-dignity-physicianassisted-suicide-quietly-gains-ground.html
英国法曹界の大物らしきCarwyn Jones氏が個人ブログでターミナルな人と苦痛のある人に限って、自殺幇助の合法化を支持。
http://www.walesonline.co.uk/news/wales-news/2009/07/20/carwyn-jones-in-favour-of-assisted-suicide-91466-24191836/
http://www.walesonline.co.uk/news/wales-news/2009/07/20/carwyn-jones-in-favour-of-assisted-suicide-91466-24191836/
豚インフルの患者が急増している英国で、飛行機に乗る前に疑いのある乗客は医師の診断書を出すことを求める、感染していないとの証明が無ければ搭乗を拒否する、と航空会社。
http://timesonline-emails.co.uk/go.asp?/bTNL001/mLJXF2B/q3AOX2B/uM9ZZ6/x20DP2B
http://timesonline-emails.co.uk/go.asp?/bTNL001/mLJXF2B/q3AOX2B/uM9ZZ6/x20DP2B
英国がここ数ヶ月間にブラジルに遺棄した有害ごみ1400トンを、環境省の資金提供で回収して自国に持ち帰ることに。http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/28273337.html象牙海岸の悲劇はやはり繰り返されていたのだろうな……。でも、先進国がこうして回収に動くのなら、朗報。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/environment/article6719508.ece?&EMC-Bltn=LJXF2B
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/environment/article6719508.ece?&EMC-Bltn=LJXF2B
英国のEquality and Human Rights Commission に使途不明金のスキャンダル。この週末、2人の幹部が辞任。明日にもNational Audit Office から詳細が報告される。:Katy Thorpe事件の際や、その他、障害児・者の人権が絡んだ問題に、果敢に批判を繰り出してくれる機関だけに気がかり。
http://www.guardian.co.uk/uk/2009/jul/19/equalities-human-rights-commission-criticism
http://www.guardian.co.uk/uk/2009/jul/19/equalities-human-rights-commission-criticism
生まれつき両足が無い男性が、どうして初対面の人からイチイチ障害を話題にされなければならないのか、など世間の障害者に対する反応振りについてGuardianにエッセイを書いている。
http://www.guardian.co.uk/society/2009/jul/20/disability-attitudes
http://www.guardian.co.uk/society/2009/jul/20/disability-attitudes
子どものIQが低いのは、妊娠中に大気汚染に晒されたせい?
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/20/AR2009072000068.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/20/AR2009072000068.html
2009.07.20 / Top↑
米国で最初に医師による自殺幇助を合法化したOregon州での事件。
John Lyle Roberts(53)は2008年2月に就寝中の妻(51)の頭を銃で撃って殺した。
妻はALSで、こんな状態で生きたくないと自殺を望んでいた、と主張していたが、
2週間の裁判で陪審員は、ターミナルな病気の妻への慈悲殺ではなく、
いなくなって欲しかっただけだと結論、殺人罪で有罪とした。
妻はALSで、こんな状態で生きたくないと自殺を望んでいた、と主張していたが、
2週間の裁判で陪審員は、ターミナルな病気の妻への慈悲殺ではなく、
いなくなって欲しかっただけだと結論、殺人罪で有罪とした。
ギャンブルで多額の借金を作っていたこと、
殺す何ヶ月も前から遺書を準備していたことなども指摘され、
計画的な殺人とされた。
殺す何ヶ月も前から遺書を準備していたことなども指摘され、
計画的な殺人とされた。
解せないのは、陪審員の判断の箇所で
「ターミナルな病気に苦しむ妻を哀れんで殺したのではなく」とあること。
「ターミナルな病気に苦しむ妻を哀れんで殺したのではなく」とあること。
記事では carpal tunnel 症候群で片手が萎えていたと書かれているだけなのですが
ALSであれば、自動的にターミナルなの?
ALSであれば、自動的にターミナルなの?
また、仮にターミナルだったとして
病気に苦しむ妻を哀れんで殺したのであれば、
慈悲殺として話が別になるの?
病気に苦しむ妻を哀れんで殺したのであれば、
慈悲殺として話が別になるの?
オレゴン州には確かに医師による自殺幇助を合法とする尊厳死法がありますが、
それは一定の条件を満たした患者が一定の手続きを経て
医師に処方された毒物を自分で飲んで自殺することを法律で認めたものであり、
それは一定の条件を満たした患者が一定の手続きを経て
医師に処方された毒物を自分で飲んで自殺することを法律で認めたものであり、
死にたい人がいれば勝手に殺してもいいと認めているわけでない以上
この法律はこの事件とは無関係。
この法律はこの事件とは無関係。
まして本人が寝ている間に銃で頭を撃っておいて自殺幇助だったなどと、
弁護士までが、なんで、そんなことをヌケヌケと主張できるのか。
弁護士までが、なんで、そんなことをヌケヌケと主張できるのか。
他に慈悲殺を容認する法律があるわけでもないのに、
陪審員まで「慈悲殺だったのか殺人だったのか」を検討する。
陪審員まで「慈悲殺だったのか殺人だったのか」を検討する。
じゃぁ、これから介護殺人は、みんな慈悲殺や自殺幇助に摩り替わってしまうのでしょうか。
自殺幇助合法化を求める議論が出てくるだけで、
既に、これほどのすべり坂が起こっている――。
既に、これほどのすべり坂が起こっている――。
そして、もう1つ、この事件で妙なのは
息子が父親を訴えていること。
息子が父親を訴えていること。
その訴訟、wrongful death訴訟。
別の州に住む息子は27歳なのだけど、結婚していて学校にも行っており、
母親から月々400~700ドルを学費と生活費の足しに送ってもらっていたというのです。
母親から月々400~700ドルを学費と生活費の足しに送ってもらっていたというのです。
父親が母親を殺してしまったことで、そのお金が得られなくなった。
そこで、死ぬはずの無かった人が死んでしまったために損害をこうむったとして
ロングフル・デス訴訟……。
そこで、死ぬはずの無かった人が死んでしまったために損害をこうむったとして
ロングフル・デス訴訟……。
病んでるよ、アメリカ──。
2009.07.20 / Top↑
エントリーにまとめるエネルギーが足りないのが残念。英国の指揮者夫妻の幇助心中で、Vincent Nicholsというウエストミンスターの枢機卿が、とても良いエッセイを書いている。“野放図な自己決定権ドクトリン”によって、我々の社会は弱者をいたわる心を失い、人間性を失っていく。コメントが現時点で133。気力が充実していないので、覗くのが怖くて見ていない。
http://www.telegraph.co.uk/comment/personal-view/5845658/The-notion-of-a-right-to-a-good-death-undermines-society.html
http://www.telegraph.co.uk/comment/personal-view/5845658/The-notion-of-a-right-to-a-good-death-undermines-society.html
同じく指揮者夫妻の幇助心中賛美に対する反論。タイトルがいい。「真のヒーローとは、人生を生きるに値するものにする人々のこと」。賛成。その生が生きるに値するかをQOLを持ち出して云々する風潮は、リベラルな生命倫理が道を作った論法が社会に浸透している証拠のような気がする。一定の条件に満たない状態にある人はQOLが低すぎて尊厳が無いと、一体いつから社会の共通認識になったというのか。この夫妻の幇助心中を巡る議論を詳細に追うと面白いとは思うのだけど、ちょっと無理。せめて、目に付いたものの、いくつかを拾っておく。
http://www.sundayherald.com/oped/opinion/display.var.2520716.0.the_real_heroes_are_the_people_who_make_life_worth_living.php
http://www.sundayherald.com/oped/opinion/display.var.2520716.0.the_real_heroes_are_the_people_who_make_life_worth_living.php
大阪市立大学の白澤政和先生のブログに「ストレングス・モデル」というのがある。初めて知った。ちょっと見、エンパワメントに似ているのだけど、エンパワメントは外からの働きかけであるのに対して、ストレングスは当人の中にあるな……というくらいは、すぐに考え付くけど、知識が無いから、そこまで。これもまた医学モデルに対して出てきたモデルとのこと。危機について触れられている部分、河合隼雄さんがカウンセリングについて語る中で危機について言っていたことを思い出した。
http://blog.goo.ne.jp/sirasawamasakazu/e/aeec0904cb032ee8f939680875e2cb0b
http://blog.goo.ne.jp/sirasawamasakazu/e/aeec0904cb032ee8f939680875e2cb0b
カナダ・ケベック州医師会が自殺幇助合法化を提言したことに、批判の記事。
http://www.ctv.ca/servlet/ArticleNews/story/CTVNews/20090717/euthanasia_law_090717/20090717?hub=TopStories
http://www.ctv.ca/servlet/ArticleNews/story/CTVNews/20090717/euthanasia_law_090717/20090717?hub=TopStories
同じくケベック医師会の提言に、The Gazetteから鋭い批判。「尊厳」についても、なるほど、と思うところ、あり。読み込んだら手ごたえありそうな記事。
http://www2.canada.com/montrealgazette/features/viewpoints/story.html?id=a5f0c10a-f79c-4b42-a48e-211b32d6e35a
http://www2.canada.com/montrealgazette/features/viewpoints/story.html?id=a5f0c10a-f79c-4b42-a48e-211b32d6e35a
2009.07.19 / Top↑
ロンドンのローカル紙と思われる新聞電子版の小さな記事で
事実関係も、ほとんど分からないのですが、
事実関係も、ほとんど分からないのですが、
2007年の2月に
28年間連れ添ったパートナーRaymond Cutkelvin(58歳)に付き添ってスイスへ行き、
Dignitasで彼が死ぬのを見ていたとして、
57歳の Alan Cutkelvin Rees (57歳)が
自宅から警察に連行されて、尋問を受けた。
28年間連れ添ったパートナーRaymond Cutkelvin(58歳)に付き添ってスイスへ行き、
Dignitasで彼が死ぬのを見ていたとして、
57歳の Alan Cutkelvin Rees (57歳)が
自宅から警察に連行されて、尋問を受けた。
Raymondさんは癌だった。
本人は
「今まで何もせず、いきなりやってきた警察には腹が立ったけど、
でも、最終的には(こうなって?)嬉しい」
「今まで何もせず、いきなりやってきた警察には腹が立ったけど、
でも、最終的には(こうなって?)嬉しい」
最初から逮捕覚悟でやったことだったから、こうなって嬉しいのか、
ちょっと「嬉しい」の意味は、よく分かりません。
ちょっと「嬉しい」の意味は、よく分かりません。
また、
記事タイトルは「逮捕される」となっているのだけど本文には「逮捕された」という記述は無く、
質問を受けただけのようにも受け取れる点も、ちょっと引っかかります。
記事タイトルは「逮捕される」となっているのだけど本文には「逮捕された」という記述は無く、
質問を受けただけのようにも受け取れる点も、ちょっと引っかかります。
逮捕されたのだとしたら、この本人のコメントはいつ、どうやって取ったのか、という点も。
先週の指揮者夫妻の前段階で115人といわれていた英国人のDignitasでの自殺で
付き添っていった人が罪に問われたケースは無いというのだけれど、
付き添っていった人が罪に問われたケースは無いというのだけれど、
ちょっと、そういうニュアンスの記事ではないような気もするし、
なんで2007年のケースを今更……という気も。
なんで2007年のケースを今更……という気も。
ただ、この記事を読んで、ふと頭に浮かんだのは、
この人たちのようにホモセクシュアルの夫婦だったとしたら、
果たして世論は今のように賛美・擁護したのだろうか……?
果たして世論は今のように賛美・擁護したのだろうか……?
これも、また、Ashley事件の時に考えた疑問と同じ。
【20日の続報】
以下の記事を見つけました。
Cutkelvin Ree氏は確かに逮捕されて、保釈された模様。
Cutkelvin Ree氏は確かに逮捕されて、保釈された模様。
記事から彼の発言を拾うと、
逮捕は衝撃でしたが、どこかで、こうなると予期しているところはありました。
私を逮捕したければできる。でも、その法律は変わらなければならない。
私が腹が立つのは、Reymondが外国に行って死ななければならなかったこと。
この国の姿勢は無意味に厳格すぎる。死ぬのはRaymond自身の選択だったのに。
スイスへ行くのは、ものすごく大変でしたが、Reymondが望んだのが
尊厳のある穏やかな死に方をしたいということだったから。
いつ、どのような死に方をするかは個人の判断に任されるべきだ。
私を逮捕したければできる。でも、その法律は変わらなければならない。
私が腹が立つのは、Reymondが外国に行って死ななければならなかったこと。
この国の姿勢は無意味に厳格すぎる。死ぬのはRaymond自身の選択だったのに。
スイスへ行くのは、ものすごく大変でしたが、Reymondが望んだのが
尊厳のある穏やかな死に方をしたいということだったから。
いつ、どのような死に方をするかは個人の判断に任されるべきだ。
2009.07.19 / Top↑
Peter Singerが主張している功利主義による配給医療やそれによる障害者の切捨てについては
Obama大統領の医療改革への疑問として、これまでにも指摘されているので、
これまで当ブログが拾ったものを、以下に。
Obama大統領の医療改革への疑問として、これまでにも指摘されているので、
これまで当ブログが拾ったものを、以下に。
Obama大統領の障害者施策方針
早くも米国で胚性幹細胞による脊髄損傷治療実験にGO
Obama大統領の医療改革は功利主義?
Obama 政権の障害者施策担当はUWの障害学教授
Obama政権の医療改革に疑問の声
Obamaは初の“安楽死推進派”大統領か?
Obama大統領の医療改革が目指すものはIHMEと同じ?
早くも米国で胚性幹細胞による脊髄損傷治療実験にGO
Obama大統領の医療改革は功利主義?
Obama 政権の障害者施策担当はUWの障害学教授
Obama政権の医療改革に疑問の声
Obamaは初の“安楽死推進派”大統領か?
Obama大統領の医療改革が目指すものはIHMEと同じ?
また、こうした動きを受けて障害学で有名なSyracuse大学から
「障害のある人の延命ケアと治療に関する一般原則」が提言されています。
「障害のある人の延命ケアと治療に関する一般原則」が提言されています。
Syracuse大学から「障害のある人の延命ケアと治療に関する一般原則」(2009/5/20)
2009.07.18 / Top↑
AP通信は、どういう意図でこの記事を書いたのか知らないけど、
なにしろ「Dignitasのサービス」、「クライアントは……」という表現、
なんだか読み方によっては、スイスへの自殺ツーリズムの解説書とも受け取れるような……。
なにしろ「Dignitasのサービス」、「クライアントは……」という表現、
なんだか読み方によっては、スイスへの自殺ツーリズムの解説書とも受け取れるような……。
不治の病にかかった自国民に医師による自殺幇助を認めている国もあるが
スイスでは、それに加えて外国人にも自殺幇助を認めている。
毎年、自殺幇助が禁じられている様々な国から
100人以上のターミナルな状態の人がスイスにやってくる。
その典型的なステップとは、
・外国人に自殺幇助を提供している団体、たいていはチューリッヒ近くのDignitasに連絡を取る。
・Dignitasのサービス代金は1万フラン(9200ドル)で、そこには法律上の手続きや、致死量のバルビツレートを処方してくれる医師との相談料が含まれる。前払い。
・手続きが完了すると、クライアントはDignitasが用意した部屋に入り、ベッドに横になってバルビツレートを飲む。5分後に眠りが訪れ、約30分後に死が訪れる。
・遺体を片付ける。Dignitasは火葬を勧めている。遺灰だと問題なく国外に持ち帰ることができるから。
・世論調査によると、スイスの国民への自殺幇助を国民の多くが支持しているが、外国人が来て「自殺ツーリズム」と批判される事態が起こっていることには懸念する人も多い。
スイスでは、それに加えて外国人にも自殺幇助を認めている。
毎年、自殺幇助が禁じられている様々な国から
100人以上のターミナルな状態の人がスイスにやってくる。
その典型的なステップとは、
・外国人に自殺幇助を提供している団体、たいていはチューリッヒ近くのDignitasに連絡を取る。
・Dignitasのサービス代金は1万フラン(9200ドル)で、そこには法律上の手続きや、致死量のバルビツレートを処方してくれる医師との相談料が含まれる。前払い。
・手続きが完了すると、クライアントはDignitasが用意した部屋に入り、ベッドに横になってバルビツレートを飲む。5分後に眠りが訪れ、約30分後に死が訪れる。
・遺体を片付ける。Dignitasは火葬を勧めている。遺灰だと問題なく国外に持ち帰ることができるから。
・世論調査によると、スイスの国民への自殺幇助を国民の多くが支持しているが、外国人が来て「自殺ツーリズム」と批判される事態が起こっていることには懸念する人も多い。
しかし、この記事は正確ではありません。
毎年、海外からスイスにやってきてDignitasで自殺しているのは
決してターミナルな病状の人ばかりではありません。
決してターミナルな病状の人ばかりではありません。
日本でもそうだけれど、
なぜ、こういう問題でメディアは正確な報道ができないのか。
なぜ、こういう問題でメディアは正確な報道ができないのか。
腹立たしくてならない。
2009.07.18 / Top↑
NY Times MagazineでPeter Singerが配給医療制を導入せよ、と提言しています。
冒頭に書いている腎臓癌の例えが論旨を要約していると思うので、ざっと大まかに訳してみると、
冒頭に書いている腎臓癌の例えが論旨を要約していると思うので、ざっと大まかに訳してみると、
腎臓癌の患者がいる。おそらく2,3年後には死ぬ。
Sutentという薬を使えば進行を遅らせて6ヶ月程度の延命が可能だが、54000ドルもコストがかかる。
たった数ヶ月の延命がそれだけの費用に値するだろうか?
たとえ、その6ヶ月のQOLがよくは無いとしても
支払い能力のある人が金を払い、薬を飲んで延命するのは、その人の勝手だ。
しかし、その患者のコストをあなたの健康保険でカバーしてやるとしたら、どうだろう?
保険会社がこの患者にsutentの使用を認めたために、あなたの保険料が高くなるのだとしたら?
たった6ヶ月の延命にそれだけの価値があると考えるだろうか?
もし、その治療が5万ドルではなく、100万ドル、1000万ドルだったとしたら、どうだろう?
他人の命を6ヶ月延ばすだけのための治療を保険会社に認めよと考えるだろうか?
いや、どこかで上限を決めてもらわないと、と考えるなら
あなたも私と同じく配給医療を導入せよと考えているのである。
Sutentという薬を使えば進行を遅らせて6ヶ月程度の延命が可能だが、54000ドルもコストがかかる。
たった数ヶ月の延命がそれだけの費用に値するだろうか?
たとえ、その6ヶ月のQOLがよくは無いとしても
支払い能力のある人が金を払い、薬を飲んで延命するのは、その人の勝手だ。
しかし、その患者のコストをあなたの健康保険でカバーしてやるとしたら、どうだろう?
保険会社がこの患者にsutentの使用を認めたために、あなたの保険料が高くなるのだとしたら?
たった6ヶ月の延命にそれだけの価値があると考えるだろうか?
もし、その治療が5万ドルではなく、100万ドル、1000万ドルだったとしたら、どうだろう?
他人の命を6ヶ月延ばすだけのための治療を保険会社に認めよと考えるだろうか?
いや、どこかで上限を決めてもらわないと、と考えるなら
あなたも私と同じく配給医療を導入せよと考えているのである。
長文なので、かいつまんで、以下に。
人の命を救うための銭金を云々するのは道徳的でないという考えは、もはや維持できない。
医療資源は限られて、メディケアの財源はあと8年で底をつくといわれている。
医療資源は限られて、メディケアの財源はあと8年で底をつくといわれている。
Obama大統領も米国の医療制度が破綻していることは認めている。
このまま国の財布から莫大な医療費を支出し続けて
どうやって国全体として国際競争力を維持していけるのか。
このまま国の財布から莫大な医療費を支出し続けて
どうやって国全体として国際競争力を維持していけるのか。
英国では昨年、NICEが一年間の延命に認められる費用の上限を3万から4万9000ポンドと定めた。
6ヶ月の延命効果しかないSutant にかかる費用は、それを上回るのだが
メディアの叩きと特定の患者の姿をクローズアップするセンチメンタリズムによって
NICEは今年に入って、腎臓癌の患者数が少ないことと終末期への配慮を理由に
Sutantの使用を認めると決めてしまった。
米国では製薬会社が薬の値段を吊り上げているので、英国の決めた上限など簡単にオーバーしてしまう。
メディケア、メディケイドの対象患者でも薬代を支払えないという人が少なくない。
医療が民間の医療保険に依存している以上、米国の医療は支払い能力のある人しか受けることができない。
患者を拒むことができないERでも公的医療保険の患者は支払い能力のある患者ほどの治療を受けられない。
つまり米国の医療は、既に実質的には支払い能力による配給制になっているのであり、
いまさら、一人の命も100万人の命も人間みんなの命も同じだと主張してみたところで
現実問題として非倫理的である。
6ヶ月の延命効果しかないSutant にかかる費用は、それを上回るのだが
メディアの叩きと特定の患者の姿をクローズアップするセンチメンタリズムによって
NICEは今年に入って、腎臓癌の患者数が少ないことと終末期への配慮を理由に
Sutantの使用を認めると決めてしまった。
米国では製薬会社が薬の値段を吊り上げているので、英国の決めた上限など簡単にオーバーしてしまう。
メディケア、メディケイドの対象患者でも薬代を支払えないという人が少なくない。
医療が民間の医療保険に依存している以上、米国の医療は支払い能力のある人しか受けることができない。
患者を拒むことができないERでも公的医療保険の患者は支払い能力のある患者ほどの治療を受けられない。
つまり米国の医療は、既に実質的には支払い能力による配給制になっているのであり、
いまさら、一人の命も100万人の命も人間みんなの命も同じだと主張してみたところで
現実問題として非倫理的である。
それぞれの治療の効果と副作用を比較検討すればコスト効率に沿って配給基準を設定することは難しくない。
ただし、その際に延命期間だけを検討するのは間違っている。
85歳の人間の命を救っても、その後に生きるのはせいぜい5年。
すると、10代の人間1人の命を救うことは85歳の人間14人の救命に等しいことになるし、
四肢麻痺の状態で10年生きることと障害のない状態で4年生きることを比べれば
たいていの人は後者の4年を選ぶはずだから、そういう等価換算をすればよい。
85歳の人間の命を救っても、その後に生きるのはせいぜい5年。
すると、10代の人間1人の命を救うことは85歳の人間14人の救命に等しいことになるし、
四肢麻痺の状態で10年生きることと障害のない状態で4年生きることを比べれば
たいていの人は後者の4年を選ぶはずだから、そういう等価換算をすればよい。
このように医療経済スタンダードQALY(quality-adjusted life-year) によって
配給基準を設定することは可能である。
配給基準を設定することは可能である。
障害当事者からの批判を予測して書いている部分が以下。
Some will object that this discriminates against people with disabilities. If we return to the hypothetical assumption that a year with quadriplegia is valued at only half as much as a year without it, then a treatment that extends the lives of people without disabilities will be seen as providing twice the value of one that extends, for a similar period, the lives of quadriplegics. That clashes with the idea that all human lives are of equal value. The problem, however, does not lie with the concept of the quality-adjusted life-year, but with the judgment that, if faced with 10 years as a quadriplegic, one would prefer a shorter lifespan without a disability. Disability advocates might argue that such judgments, made by people without disabilities, merely reflect the ignorance and prejudice of people without disabilities when they think about people with disabilities. We should, they will very reasonably say, ask quadriplegics themselves to evaluate life with quadriplegia. If we do that, and we find that quadriplegics would not give up even one year of life as a quadriplegic in order to have their disability cured, then the QALY method does not justify giving preference to procedures that extend the lives of people without disabilities over procedures that extend the lives of people with disabilities.
障害新生児を殺してもかまわないと主張する時にもSingerはこの論法を使っていたような気がしますが、
この後で、故クリストファー・リーブの例を引いて、
障害のある状態が障害のない状態よりも望ましくないわけでないなら
治療を模索することも無意味になってしまう、と主張。
障害のある状態が障害のない状態よりも望ましくないわけでないなら
治療を模索することも無意味になってしまう、と主張。
障害者は研究費をかけてもらって障害をなくして欲しいのか、
それとも障害があるのは望ましくない状態だと認めるか、どちらかを選べ、と言っています。
それとも障害があるのは望ましくない状態だと認めるか、どちらかを選べ、と言っています。
これからは「障害を加味した生存年数」が「QOLを加味した生存年数」に言い換えられ
もちろん、それによって切り捨て対象が拡大するわけですね……。
もちろん、それによって切り捨て対象が拡大するわけですね……。
片方で、このように「もう重病人と障害者には十分な医療は受けさせませんよ」という声を大きくしながら
その一方で、それとまったく無関係であるかのように「死の自己決定権」が喧伝されることの方が
自殺ツーリズムに付き添う人を取り締まりきらないことの”偽善”よりも、はるかに悪質な”偽善”だと思う。
―――――
その一方で、それとまったく無関係であるかのように「死の自己決定権」が喧伝されることの方が
自殺ツーリズムに付き添う人を取り締まりきらないことの”偽善”よりも、はるかに悪質な”偽善”だと思う。
―――――
日本でも2006年に官僚からは抗がん剤を保険の対象からはずすという提案が出ていたようです。
日本では、この問題に限らず、表立って議論が行われず、広く報道されることもなく、
水面下に潜行して、なし崩しに進行していくことが、とても怖いような気がする……。
水面下に潜行して、なし崩しに進行していくことが、とても怖いような気がする……。
【当ブログのSinger関連エントリー】
P.Singerの「知的障害者」、中身は?(2007/9/3)
Singerの“アシュリー療法”論評1(2007/9/4)
Singerの“アシュリー療法”論評2(2007/9/5)
Singerへのある母親の反論(2007/9/13)
Singer、Golubchukケースに論評(2008/3/24)
認知障害カンファレンス巡り論評シリーズがスタート:初回はSinger批判(2008/12/17)
知的障害者における「尊厳」と「最善の利益」の違い議論(2008/12/18)
What Sorts のSinger 批判第2弾(2008/12/22)
「障害児については親に決定権を」とSinger講演(2008/12/26)
Singerが障害当事者の活動家に追悼エッセイ(2008/12/29)
Sobsey氏、「知的障害者に道徳的地位ない」Singer説を批判(2009/1/3)
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2009.07.18 / Top↑
環境ホルモン・ユビキタス。つまり、もはや、あまねく存在して避けがたい環境ホルモンの害、“フタル酸症候群”についてNY TimesのOp-Edコラムニストが警告している。女児の思春期早発症、男児の女性化:ユビキタスなんだから、もう因果関係を証明することなど不可能なだけで、いろいろあるはずだと実はみんな思っているのだけど、この科学とテクノの時代、「証明できない」は「正しくない」に等しいらしい。そして「何を証明するか」を決めるのは、もちろん科学とテクノ。
http://www.nytimes.com/2009/07/16/opinion/16kristof.html?_r=1&th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/07/16/opinion/16kristof.html?_r=1&th&emc=th
アルツハイマー病にかかりやすい遺伝子を受け継いでいると分かっても、落ち込むのは直後だけで、遺伝カウンセラーの関与で、たいていの人はそこから立ち直る、という調査結果:アルツハイマー病には今のところ有効な治療法が無いから、遺伝子診断でかかりやすいと知っても気持ちが落ち込む害があるだけでメリットが無いとの批判があるので、要するに、この研究は、それに対抗するためのエビデンス作りですね。結論が可笑しくて、「どの病気の診断を受けていいとかいけないとか判断を押し付けるのはパターナリズム。受けるか受けないかは、あくまでも個々の自己選択」。「何歳までしか生殖補助医療を受けられないと傍から決めるのはパターナリズム。産む・産まないは女性の自己選択」と、70歳に出産させた医師も言うのかな。まさか「誰は自殺してもいいけど、誰はいけないと傍から決めるのはパターナリズム。死は自己決定権」と誰かがそのうち言い出す……なんて?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/157700.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/157700.php
邪悪なビッグ・ファーマが医師に金を掴ませて、あなたの子どもを薬漬けにする……:久々にBiederman医師の名前を見たけど、新情報ではなく、去年のあの一連の疑惑のみ。もう、ほとんど癒着構造の象徴のような名前。
http://www.alternet.org/healthwellness/141369/big_pharma_bribes_doctors_to_hook_your_kids_on_drugs/
http://www.alternet.org/healthwellness/141369/big_pharma_bribes_doctors_to_hook_your_kids_on_drugs/
あのアポロ11号の月面着陸は、40年前の7月20日だったんだそうな:私は中学生だった。視聴覚教室に集められて、何がどうなっているんだか、よく分からないテレビのライブ映像を見た。あれで同時通訳が一躍脚光を浴びるようになった。まだ帰国子女なんて言葉も無かった時代。で、40年後の現在、NASAは岐路に立たされているんだとか。これから、どっちに向かっていくのか。それとも宇宙開発そのものを、いっそ辞めてしまうのか。宇宙開発をやめて、国民皆保険の実現に投じるって……ないですね。やっぱり。
http://www.usatoday.com/tech/science/space/2009-07-16-nasamoon_N.htm?csp=DailyBriefing
http://www.usatoday.com/tech/science/space/2009-07-16-nasamoon_N.htm?csp=DailyBriefing
米・民主党の国民皆保険に向けた医療改革案の骨子。国民全員に健康保険への加入を義務付け。違反者には罰金。極小企業を覗き、企業には従業員の健康保険購入またはそれなりの負担援助を義務付け。メディケイドの対象を拡大。中流家庭が健康保険を購入しやすいように新たなexchange(?)を創設。政府の大きな負担なしに、ほぼ皆保険が実現できるとされるが、共和党と経済界は反発。
http://www.nytimes.com/2009/07/16/opinion/16thu1.html?_r=1&th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/07/16/opinion/16thu1.html?_r=1&th&emc=th
2009.07.17 / Top↑
先週、英国の著名指揮者夫婦が夫の方は健康であるにも関わらず
「妻を失っては生きていけない」という理由でDignitasでそろって自殺してから
メディアでも個人ブログでも賛否両論、多数の記事が相次いでいる。
「妻を失っては生きていけない」という理由でDignitasでそろって自殺してから
メディアでも個人ブログでも賛否両論、多数の記事が相次いでいる。
それは知っているのだけど、
月曜日の臓器移植法改正A案の成立から、気持ちのどこかがメゲたままなので
この夫婦の“幇助心中”を賛美・擁護する記事を読んでケチをつける元気がわかない。
月曜日の臓器移植法改正A案の成立から、気持ちのどこかがメゲたままなので
この夫婦の“幇助心中”を賛美・擁護する記事を読んでケチをつける元気がわかない。
それで、目には付いても、みんなスルーしていたのだけど、
この記事のタイトル「もう終わりにしようと決める勇気」には
「げっ。何が勇気だよっ」と腹が立って、つい目を通してしまった。
「げっ。何が勇気だよっ」と腹が立って、つい目を通してしまった。
まぁ、だいたい予想通りの展開と文意。
特に最後の辺りの
「中には夫妻の決断を批判する人もいるかもしれないけど、
でも、2人の勇気と、互いへの愛は尊重しなければならない。
その愛で2人は54年間も幸福に暮らしたのだから」
「中には夫妻の決断を批判する人もいるかもしれないけど、
でも、2人の勇気と、互いへの愛は尊重しなければならない。
その愛で2人は54年間も幸福に暮らしたのだから」
美しい夫婦愛──。
それが全てを許容する──。
この美しい愛に、他者は指差したり石を投げてはならない──。
当事者の苦悩を知らない他者には、何も言う資格はない──。
54年も愛し合い、連れ添った夫婦なのだから――。
それが全てを許容する──。
この美しい愛に、他者は指差したり石を投げてはならない──。
当事者の苦悩を知らない他者には、何も言う資格はない──。
54年も愛し合い、連れ添った夫婦なのだから――。
“Ashley療法”論争で聞いた声と、まったく同じだ。
美しい親の愛──。
それが全てを許容する──。
これほどに子を愛する親の気持ちに、他者は一切の批判を控えるべきである──。
これほどの親の苦しみを知らない人間には、何を言う資格もない──。
こんなに手のかかる子どもを何年も愛し介護してきた親なのだから――。
それが全てを許容する──。
これほどに子を愛する親の気持ちに、他者は一切の批判を控えるべきである──。
これほどの親の苦しみを知らない人間には、何を言う資格もない──。
こんなに手のかかる子どもを何年も愛し介護してきた親なのだから――。
もしも、この先、
障害のある子どもを残して逝くに忍びない重病の親が“幇助心中”を求めてDignitasを頼ったら、
世論は、これと同じトーン、同じ言葉で美化し、許容するのだろうか……。
障害のある子どもを残して逝くに忍びない重病の親が“幇助心中”を求めてDignitasを頼ったら、
世論は、これと同じトーン、同じ言葉で美化し、許容するのだろうか……。
親亡き後に施設に入れられるくらいなら、
こんなにも自分を愛してくれる親と一緒に死ぬ方が本人の幸せじゃないか、と言って……?
こんなにも自分を愛してくれる親と一緒に死ぬ方が本人の幸せじゃないか、と言って……?
2009.07.17 / Top↑
Quebec州の医師会が
激しい苦痛のあるターミナルな状態の人には
一定の状況下での医師による安楽死を認めるよう
刑法を改正するよう提案することを決定。
激しい苦痛のあるターミナルな状態の人には
一定の状況下での医師による安楽死を認めるよう
刑法を改正するよう提案することを決定。
記事では、
英国の著名指揮者夫妻のDignitasでの自殺が
世界中に与えた衝撃の中、ケベックの医師会の提案が報じられた、
カナダでは忙しい秋になりそうだ、と。
英国の著名指揮者夫妻のDignitasでの自殺が
世界中に与えた衝撃の中、ケベックの医師会の提案が報じられた、
カナダでは忙しい秋になりそうだ、と。
報道の常で、
医師会の提案の側からの発言と、
それに反対する立場の発言が引用されており、
医師会の提案の側からの発言と、
それに反対する立場の発言が引用されており、
医師会側は今現在でも事実上は行われているのだから
法改正は現状の「偽善」を正すだけのことだ、と。
法改正は現状の「偽善」を正すだけのことだ、と。
緩和ケアの専門医は
延命治療の停止と、命を縮めることになる鎮痛剤の使用が可能なのだから
安楽死を希望する人が求めているものは既に認められている、
この上、自殺幇助が合法化されれば、患者は不当な理由で死を選ぶことになる、と。
延命治療の停止と、命を縮めることになる鎮痛剤の使用が可能なのだから
安楽死を希望する人が求めているものは既に認められている、
この上、自殺幇助が合法化されれば、患者は不当な理由で死を選ぶことになる、と。
また、この人の印象的な発言として、
「生と死がどういうものなのか自分でちゃんと分かったと思えないのに
それをコントロールしたいなんて思わない」とも。
それをコントロールしたいなんて思わない」とも。
2009.07.17 / Top↑
The European Heart Journal に掲載された調査結果で
4000人のアメリカ人の元兵士を調べたところ、
IQが平均よりも低い人では心臓病で死ぬ確立が高いとの結果に。
4000人のアメリカ人の元兵士を調べたところ、
IQが平均よりも低い人では心臓病で死ぬ確立が高いとの結果に。
社会経済上のファクターが影響することは知られているが、
今回は、それらファクターを除外しても、IQだけで20%もの差があった。
今回は、それらファクターを除外しても、IQだけで20%もの差があった。
知能が低い人は健康に関する情報を取り込みにくく健康に留意しにくいのでは、と分析し、
研究者らは病気予防情報を簡略にするなどの工夫が必要、と。
研究者らは病気予防情報を簡略にするなどの工夫が必要、と。
今のように医療コストの削減の必要が声高に喧伝されている中で、
病気リスクであると名指しされることは「コストがかかる」レッテルを張られることに等しいわけで、
病気リスクであると名指しされることは「コストがかかる」レッテルを張られることに等しいわけで、
そもそも研究デザインの前段階で、
IQや人種と病気リスクとには直接的な相関があるはずだと誰かが仮説したからこそ
こういう研究が行われるのだということを考えると
いかに病気予防の情報に工夫を提言されたとしても、
論文の結論や提言とはまた無関係に
データだけが一人歩きするのではないか、と気にかかる。
IQや人種と病気リスクとには直接的な相関があるはずだと誰かが仮説したからこそ
こういう研究が行われるのだということを考えると
いかに病気予防の情報に工夫を提言されたとしても、
論文の結論や提言とはまた無関係に
データだけが一人歩きするのではないか、と気にかかる。
それにしても、この研究で実は一番コワイのは
調査対象に選ばれたのが米軍の元兵士だったという事実のほうかも。
調査対象に選ばれたのが米軍の元兵士だったという事実のほうかも。
これは、つまり
平均よりもIQが低い人が一定数固まっている集団を探したら
それは米軍だった……ということであり、
平均よりもIQが低い人が一定数固まっている集団を探したら
それは米軍だった……ということであり、
2009.07.17 / Top↑
英国人の著名指揮者夫婦のDignitasでの自殺に関する日本語の共同通信報道。英国で自殺幇助合法化議論が広がっていることについて何の言及も無い。Dignitasは「スイスの専門病院」だそうな。あ、でも、報道するだけはマシなのか……。日本の報道はゼッタイおかしい。
http://mediajam.info/topic/971976
http://mediajam.info/topic/971976
上記指揮者夫妻の自殺についてGuardianコラムニストのエッセイ。ロマンチックだけど自殺幇助は支持しない、と。冒頭の辺りを読むと、日本で江藤淳氏の自殺の時の様々な人たちの反応と同じ匂いがする。著名な文化人の自殺は、なぜか「自殺」ではなく「自死」と呼ばれ、一般人の自殺よりも高尚なもののように称揚され、美化される。個人的に思い入れのある人が、そう感じることはあるだろうと思う。けれどメディアがこぞって、そういう思い入れをして「自死」と書き、誰も「自殺」という言葉を使わないことに、ものすごい違和感があった。あの時の匂い。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/jul/16/assisted-suicide-edward-downes
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/jul/16/assisted-suicide-edward-downes
カナダの尊厳死法案、議会での「最初のステップを通過」。具体的にどういうステップか、ちょっとよく分からないのだけど、来月かその翌月くらいに下院での審議の可能性。もっとも、ここでも「選挙が無ければ」との条件付きで。
http://www.vancouversun.com/news/Euthanasia+bill+passes+first+step/1672857/story.html
http://www.vancouversun.com/news/Euthanasia+bill+passes+first+step/1672857/story.html
英国で豚インフルエンザの患者が1週間で6倍に急増。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jul/15/swine-flu-cases-sixfold-increase
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jul/15/swine-flu-cases-sixfold-increase
介護者との親密な関係がアルツハイマー病の進行を遅らせる。こういう研究をもっとして欲しい。科学とテクノの簡単解決ばかりじゃなくて。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/157521.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/157521.php
2009.07.16 / Top↑
当時は英語ニュースをチェックし始めて間もなくで
まだ何もかもが目新しかった頃のニュースだったのと、
とてもきれいな人だったので、
まだブログを始める前だったけど、
この人のニュースはくっきりと記憶にある。
まだ何もかもが目新しかった頃のニュースだったのと、
とてもきれいな人だったので、
まだブログを始める前だったけど、
この人のニュースはくっきりと記憶にある。
2006年に66歳で双子を産んで、当時世界で最高齢の出産としてニュースになった。
もちろん精子も卵子も匿名ドナーによるもの。
もちろん精子も卵子も匿名ドナーによるもの。
シングル・マザーだった。
家を売って、米国で生殖補助医療を受ける資金を作り、
医師に55歳だと年齢を偽ってまで子どもを産んだ。
医師に55歳だと年齢を偽ってまで子どもを産んだ。
その Maria Carmen del Bousada de Laraさんが癌で亡くなった。69歳。
以下の記事によると、2006年に双子を産む前に
腫瘍があることは分かっていたとのこと。
腫瘍があることは分かっていたとのこと。
孤児となった2人の養育は、彼らの従兄弟(現在30~40代)などに託される見込みで、
養育費についてはマスコミとの高額な契約があるらしい。
養育費についてはマスコミとの高額な契約があるらしい。
スペインでは、現在、生殖補助医療には年齢制限がないが
必要だとの声が上がっている。
必要だとの声が上がっている。
この人に生殖補助医療で子どもを産ませたカリフォルニアの医師は
本当の年齢を知らなかった、知っていたらやらなかった、と言っていますが、
本当の年齢を知らなかった、知っていたらやらなかった、と言っていますが、
Maria Carmenさんの世界最高齢出産の記録は
確か、そのすぐ後に破られたという記憶があります。
確か、そのすぐ後に破られたという記憶があります。
また、それとは別に、
去年の暮れ、インドで70歳の女性が出産したニュースがありました。
去年の暮れ、インドで70歳の女性が出産したニュースがありました。
インドの70歳女性、体外受精で初産(2008/12/9)
「科学とテクノの閉じた世界の論理」という表現を
ここしばらく、このブログで使っているのですが、
これも、その1例ではないでしょうか?
ここしばらく、このブログで使っているのですが、
これも、その1例ではないでしょうか?
世界のどこかで66歳の出産に成功した医師がいるとなれば、
よし、じゃぁ、次は自分の手で、70歳の出産を成し遂げてみせよう……と。
よし、じゃぁ、次は自分の手で、70歳の出産を成し遂げてみせよう……と。
そして、どこかで自分のクリニックよりも先に70歳の出産が行われたと聞けば、
70歳をはるかに超えて産みたい患者がどこかにいないか……と心待ちにするような……。
70歳をはるかに超えて産みたい患者がどこかにいないか……と心待ちにするような……。
出産が無事に行われれば、それでいいのであって、
母体にどんな無理を強いようと、それは患者の自己選択だし
その後の子どもたちがどうなろうと、親の自己責任だし
そんなことは自分の業績には関係ないわけだし、
母体にどんな無理を強いようと、それは患者の自己選択だし
その後の子どもたちがどうなろうと、親の自己責任だし
そんなことは自分の業績には関係ないわけだし、
例えば、
ドナーの家族がその後どういう葛藤を抱えているかとか、
生体肝・腎移植のドナーのその後の体調がどうかということは
移植医としての自分の業績には無関係だから、さほど興味も無く、
だから調査研究する必要など感じない移植医のように。
ドナーの家族がその後どういう葛藤を抱えているかとか、
生体肝・腎移植のドナーのその後の体調がどうかということは
移植医としての自分の業績には無関係だから、さほど興味も無く、
だから調査研究する必要など感じない移植医のように。
そして例えば、Johns Hopkins大学病院が2005年から
4方向、5方向、6方向の同時生体間腎臓移植に相次いでチャレンジし成功させ
ついにこのたび、いくつもの病院を巻き込んで8方向に成功してみせたように。
4方向、5方向、6方向の同時生体間腎臓移植に相次いでチャレンジし成功させ
ついにこのたび、いくつもの病院を巻き込んで8方向に成功してみせたように。
科学とテクノの専門分野の中の人だけに共有されている論理──。
前に、前に、先へ、とにかく先へ──。
今の地平よりも更なる高みに──。
チャレンジ。そして記録――。
誰よりも早く──。
前に、前に、先へ、とにかく先へ──。
今の地平よりも更なる高みに──。
チャレンジ。そして記録――。
誰よりも早く──。
だからこそ、そういう閉じた世界の論理に対して
「でも、生まれてくる子どもの福祉は? 権利は?
それは本当に倫理にもとることではないの?
それが社会全体に直接、間接に及ぼす影響は?」と
それは本当に倫理にもとることではないの?
それが社会全体に直接、間接に及ぼす影響は?」と
もっと広い世界の常識・見識・知恵でもって慎重を求めブレーキをかけるのが
倫理規範であり、法だろうと思うのに……。
倫理規範であり、法だろうと思うのに……。
2009.07.16 / Top↑
生命倫理会議
参議院A案可決・成立に対する緊急声明
2009年7月13日
生命倫理会議 代表 東京海洋大学教授 小松美彦
生命倫理会議は、生命倫理の教育・研究に携わっている大学教員の集まりです。去る5月12日に71名(68名+追加3名)の連名を以て「臓器移植法改定に関する緊急声明」を公表し、厚生労働記者クラブにおいて記者会見を行いました。またその後も、「臓器移植法改定に関する徹底審議の要望」(連名者71名)を公表し、ほぼ全ての衆議院議員および参議院議員に送付いたしました。このようにしてこの間、私たちは生命倫理に関わる専門家の立場から、臓器移植法改定に関して討究されるべき諸問題を指摘し、審議の徹底を求めてまいりました(詳細は http://seimeirinrikaigi.blogspot.com/ )。
しかるに衆議院では、現行法制定時にも及ばない短時間の議論が行われただけで、主に国会議員諸氏の死生観なるものに委ねるという形で採決がなされ、しかもA案という最も危険な法案が可決されました。私たちはこれに対して、同日6月18日に「緊急声明」(連名者71名)を公表するとともに再び記者会見を行い、参議院では徹底審議がなされることを要望いたしました。しかしながら本日、その最も危険なA案が参議院においても可決され、同案は成立を見ました。そのうえ、参議院は「良識の府」と言われるにもかかわらず、審議時間は衆議院と同じくわずか8時間にすぎず、仮にも徹底審議がなされたとは言い難い有様で、法改定に関して討究されるべき諸問題は依然として放置されたままでした。
私たち「生命倫理会議」は臓器移植法改定を、脳死患者を初めとした人の生死に関わる問題として、また日本の文化・社会の未来を大きく左右する問題として考えてまいりました。そこでA案成立に対して、満腔の憤怒と抗議の意を込めて、以下の見解を表明いたします。
1)厳密な脳死判定後にも長期脳死の実例がある、という事実が直視されなかった。
参議院の参考人質疑で森岡正博参考人が指摘したように、無呼吸テストを厳密に実施して脳死と判定された子供のうち、3割以上が長期脳死になっていること、2割は100日以上も心臓が動いていることが、ほかならぬ旧厚生省研究班の論文に明記されている。にもかかわらず、A案提出者はこの事実を長らく無視し、長期脳死は「法的脳死」ではないと主張してきた。これは脳死に関わる事実の重大な歪曲である。その後、参議院厚労委においてはA案提案者もこの事実を認めざるをえなくなったが、その修正が参議院本会議において徹底されないままA案が可決された。このことは国民を欺くものであると言わざるをえない。
2)ドナーとなる子供への虐待の有無を判別する難しさが認識されなかった。
近年の日本では、子供の虐待が深刻な問題になっている。A案では、子供の脳死判定と臓器提供が親の代諾だけで認められる以上、それらは虐待の証拠隠滅になる可能性があり、子供の人権がさらに侵害される可能性がある。しかも日本小児科学会の調査によれば、大半の小児科医は虐待の判別に関して肯定的な見解を示していない。子供の脳死判定自体が困難であるうえに、虐待の有無を判別することが困難であるにもかかわらず、国会はA案を成立させた。それゆえ今後、実際に重大な人権侵害が起こる危険性が高いと考えられるが、その時には今日を振り返って、法改定の責任が問われるだろう。
3)「脳死=人の死」であるとは科学的に立証できていない、という最も重大な事実が省みられなかった。
近年では移植大国のアメリカにおいてすら、有機的統合性を核とする「脳死=人の死」という論理は破綻したと認めざるをえなくなってきている。この点で、体温を保ち、脈を打ち、滑らかな動き(ラザロ徴候)を見せ、成長し続ける脳死者を「死人」とすることに、少なからぬ人々が違和感を覚えるのは、単なる感情の問題ではなく、非科学的なことでもない。このように科学的にも「人の死」とできない状態を、A案は政治と法によって「人の死」としてしまった。日本社会で今後、「命の尊さ」といった言葉はもはや説得力を失ってしまうだろう。
4) WHOの新指針の内容を十分に確認せずに、事実に基づいた議論がなされなかった。
巷間で喧伝されてきたのとは異なり、WHOの新指針には「海外渡航移植の制限」や「移植臓器の自給自足」の方針は謳われていない。それどころかA案は、WHOが求めている「未成年の保護」や「法的に無能力な人の保護」に反する恐れがある。加えて、WHOがA案を推奨しているという事実も存在しない。A案可決・成立は、こうした事実の誤認や歪曲に基づいていた疑いがある。国会の議論に対する国民の信頼は、大きく損なわれざるをえないだろう。
5)ドナーを増やすことが国民全体への責務に反することにはならないか、熟慮されなかった。
「臓器不足」とは「脳死者不足」にほかならない。しかも交通事故が減り、救急医療体制が再建・整備されれば、「脳死者」もまた減ることが予想される。国民が安全に、安心して暮らせる社会を実現することは、政府および国会が果たすべき本来の務めであるはずだが、それは「脳死者=ドナー」を増やすこととは両立し難い。その意味で、「臓器不足の解消」のために法改定したことは、国民全体の安全・安心は二の次であると宣言したことに等しいのではないか。
6)移植に代わる医療の存在が患者・国民に周知され、また国によって援助されるべきである。
現在、心臓移植に限っても、移植適応とされる患者への心臓弁形成術・ペースメーカー治療・バチスタ手術などの成功例が出ている。移植をしなくても助かる道が開かれつつある以上、第一により多くの患者・国民がその恩恵に与れるような施策が講じられるべきであるし、それは移植適応とされる患者の治療と、国民全体の安全・安心とを両立させうる方法でもあるだろう。その可能性をさらに広げることこそが政府・国会の責務のはずである。「臓器不足の解消」という目標自体が再考され、新たな取り組みが模索されるべきである。この点は、法改定が確定した現在でも全く変わることはない。
7)現行「臓器移植法」に定められた法改定条件が遵守されなかった。
現行の「臓器移植法」では、「法律の施行状況を勘案し、その全般について検討が加えられ」ることが法改定の大前提である(附則第二条、下線部引用者)。しかも、これまでの81人の脳死判定と臓器摘出には、法律・ガイドラインなどに対する違反のあった疑いが残る。ところが衆議院でも参議院でも、この点を精査・検討しないままに採決が行われた。さらにA案は、臓器提供の際の「本人同意」さえ不要としている点で現行法の基本理念まで改廃するものであるうえに、日本の法制史上初めて「人の死」を規定したものであると見なされうる。その意味でA案は、「見直し」の名の下に「新法制定」を行った蓋然性が高く、国民に対して著しく誠実さを欠いた行為と言わざるをえない。
そもそも人の生死の問題は、多数決に委ねたり、法律問題にすり替えたりするべきものではありません。しかるに、今回のA案の可決・成立は、上に述べたように、倫理的にはもとより法的・政治的にも、社会的にも、深刻な諸問題を招くことが危惧されてなりません。特に一点だけ述べるなら、A案提案者は、「法的脳死判定によって脳死が確定しても、臓器提供の意思を撤回すれば脳死者への保険治療を継続する」旨を国会で明言されました。対して「現行法・附則十一条」には、保険適用の期間をめぐって「当分の間」なる言葉が挿入されていますが、A案提案者と国会はかかる言明を「当分の間」に終わらせることなく、永続墨守されることを強く要望いたします。なぜなら、保険適用がはずされ、人工呼吸器がはずされるときこそが、脳死者の息の根を止め、家族との絆を引き裂くときに他ならないからです。
「生命倫理会議緊急声明」連名者(71名)
旭 洋一郎(長野大学教授・障害者福祉論)
天田城介(立命館大学大学院准教授・社会学)
綾部広則(早稲田大学准教授・科学技術論)
安藤泰至(鳥取大学准教授・宗教学)
伊古田 理(千葉工業大学准教授・哲学)
石田秀実(元九州国際大学教授・哲学)
石塚正英(東京電機大学教授・史的情報社会論)
市野川容孝(東京大学大学院教授・社会学)
宇城輝人(福井県立大学准教授・社会学)
大澤真幸(京都大学大学院教授・社会学)
大庭 健(専修大学教授・倫理学)
大林雅之(東洋英和女学院大学教授・バイオエシックス)
冲永隆子(帝京大学専任講師・生命倫理学)
荻野美穂(同志社大学大学院教授・歴史学)
重田園江(明治大学准教授・現代思想)
香川知晶(山梨大学大学院教授・哲学)
柿原 泰(東京海洋大学准教授・科学技術史)
加藤茂生(早稲田大学専任講師・科学史科学論)
加藤秀一(明治学院大学教授・社会学)
金森 修(東京大学大学院教授・フランス哲学)
川本隆史(東京大学大学院教授・倫理学)
鬼頭秀一(東京大学大学院教授・科学技術社会論)
木名瀬高嗣(東京理科大学専任講師・文化人類学)
木原英逸(国士舘大学教授・科学技術論)
木村 敏(京都大学名誉教授・精神医学)
空閑厚樹(立教大学准教授・生命倫理学)
蔵田伸雄(北海道大学大学院教授・応用倫理学)
倉持 武(松本歯科大学教授・哲学)
栗原 彬(立命館大学特別招聘教授・政治社会学)
小泉義之(立命館大学教授・哲学)
小松奈美子(武蔵野大学教授・生命倫理学)
小松真理子(帝京大学准教授・科学史科学論)
小松美彦(東京海洋大学教授・科学史科学論)
小柳正弘(琉球大学教授・社会哲学)
最首 悟(和光大学名誉教授・〈いのち〉学)
齋藤純一(早稲田大学学術院教授・政治理論)
斎藤 光(京都精華大学教授・性科学史)
佐藤憲一(千葉工業大学准教授・基礎法学)
篠田真理子(恵泉女学園大学准教授・環境思想史)
篠原睦治(和光大学名誉教授・臨床心理学)
清水哲郎(東京大学大学院特任教授・死生学)
愼 蒼健(東京理科大学准教授・科学史科学論)
鈴木晃仁(慶應義塾大学教授・医学史)
高草木光一(慶應義塾大学経済学部教授・社会思想史)
高田文英(龍谷大学専任講師・真宗学)
竹内章郎(岐阜大学教授・社会哲学)
竹内整一(東京大学大学院教授・倫理学)
武田 徹(恵泉女学園大学教授・メディア論)
高橋文彦(明治学院大学教授・法哲学)
田中智彦(東京医科歯科大学准教授・政治思想)
田村公江(龍谷大学教授・倫理学)
塚原東吾(神戸大学大学院教授・テクノ文明論)
柘植あづみ(明治学院大学教授・医療人類学)
土屋貴志(大阪市立大学大学院准教授・倫理学)
爪田一壽(武蔵野大学専任講師・仏教学)
土井健司(関西学院大学教授・キリスト教神学)
堂前雅史(和光大学教授・科学技術社会論)
徳永哲也(長野大学教授・哲学)
戸田 清(長崎大学教授・環境社会学)
直江清隆(東北大学大学院准教授・哲学)
永澤 哲(京都文教大学准教授・宗教学)
中島隆博(東京大学大学院准教授・中国哲学)
林 真理(工学院大学教授・科学史科学論)
原 塑(東北大学大学院准教授・科学哲学)
廣野喜幸(東京大学大学院准教授・科学史科学論)
細見和之(大阪府立大学教授・ドイツ思想)
森 幸也(山梨学院大学准教授・科学史)
村岡 潔(佛教大学教授・医学概論)
坂野 徹(日本大学准教授・科学史科学論)
森岡正博(大阪府立大学教授・生命倫理学)
吉本秀之(東京外国語大学教授・科学思想史)
参議院A案可決・成立に対する緊急声明
2009年7月13日
生命倫理会議 代表 東京海洋大学教授 小松美彦
生命倫理会議は、生命倫理の教育・研究に携わっている大学教員の集まりです。去る5月12日に71名(68名+追加3名)の連名を以て「臓器移植法改定に関する緊急声明」を公表し、厚生労働記者クラブにおいて記者会見を行いました。またその後も、「臓器移植法改定に関する徹底審議の要望」(連名者71名)を公表し、ほぼ全ての衆議院議員および参議院議員に送付いたしました。このようにしてこの間、私たちは生命倫理に関わる専門家の立場から、臓器移植法改定に関して討究されるべき諸問題を指摘し、審議の徹底を求めてまいりました(詳細は http://seimeirinrikaigi.blogspot.com/ )。
しかるに衆議院では、現行法制定時にも及ばない短時間の議論が行われただけで、主に国会議員諸氏の死生観なるものに委ねるという形で採決がなされ、しかもA案という最も危険な法案が可決されました。私たちはこれに対して、同日6月18日に「緊急声明」(連名者71名)を公表するとともに再び記者会見を行い、参議院では徹底審議がなされることを要望いたしました。しかしながら本日、その最も危険なA案が参議院においても可決され、同案は成立を見ました。そのうえ、参議院は「良識の府」と言われるにもかかわらず、審議時間は衆議院と同じくわずか8時間にすぎず、仮にも徹底審議がなされたとは言い難い有様で、法改定に関して討究されるべき諸問題は依然として放置されたままでした。
私たち「生命倫理会議」は臓器移植法改定を、脳死患者を初めとした人の生死に関わる問題として、また日本の文化・社会の未来を大きく左右する問題として考えてまいりました。そこでA案成立に対して、満腔の憤怒と抗議の意を込めて、以下の見解を表明いたします。
1)厳密な脳死判定後にも長期脳死の実例がある、という事実が直視されなかった。
参議院の参考人質疑で森岡正博参考人が指摘したように、無呼吸テストを厳密に実施して脳死と判定された子供のうち、3割以上が長期脳死になっていること、2割は100日以上も心臓が動いていることが、ほかならぬ旧厚生省研究班の論文に明記されている。にもかかわらず、A案提出者はこの事実を長らく無視し、長期脳死は「法的脳死」ではないと主張してきた。これは脳死に関わる事実の重大な歪曲である。その後、参議院厚労委においてはA案提案者もこの事実を認めざるをえなくなったが、その修正が参議院本会議において徹底されないままA案が可決された。このことは国民を欺くものであると言わざるをえない。
2)ドナーとなる子供への虐待の有無を判別する難しさが認識されなかった。
近年の日本では、子供の虐待が深刻な問題になっている。A案では、子供の脳死判定と臓器提供が親の代諾だけで認められる以上、それらは虐待の証拠隠滅になる可能性があり、子供の人権がさらに侵害される可能性がある。しかも日本小児科学会の調査によれば、大半の小児科医は虐待の判別に関して肯定的な見解を示していない。子供の脳死判定自体が困難であるうえに、虐待の有無を判別することが困難であるにもかかわらず、国会はA案を成立させた。それゆえ今後、実際に重大な人権侵害が起こる危険性が高いと考えられるが、その時には今日を振り返って、法改定の責任が問われるだろう。
3)「脳死=人の死」であるとは科学的に立証できていない、という最も重大な事実が省みられなかった。
近年では移植大国のアメリカにおいてすら、有機的統合性を核とする「脳死=人の死」という論理は破綻したと認めざるをえなくなってきている。この点で、体温を保ち、脈を打ち、滑らかな動き(ラザロ徴候)を見せ、成長し続ける脳死者を「死人」とすることに、少なからぬ人々が違和感を覚えるのは、単なる感情の問題ではなく、非科学的なことでもない。このように科学的にも「人の死」とできない状態を、A案は政治と法によって「人の死」としてしまった。日本社会で今後、「命の尊さ」といった言葉はもはや説得力を失ってしまうだろう。
4) WHOの新指針の内容を十分に確認せずに、事実に基づいた議論がなされなかった。
巷間で喧伝されてきたのとは異なり、WHOの新指針には「海外渡航移植の制限」や「移植臓器の自給自足」の方針は謳われていない。それどころかA案は、WHOが求めている「未成年の保護」や「法的に無能力な人の保護」に反する恐れがある。加えて、WHOがA案を推奨しているという事実も存在しない。A案可決・成立は、こうした事実の誤認や歪曲に基づいていた疑いがある。国会の議論に対する国民の信頼は、大きく損なわれざるをえないだろう。
5)ドナーを増やすことが国民全体への責務に反することにはならないか、熟慮されなかった。
「臓器不足」とは「脳死者不足」にほかならない。しかも交通事故が減り、救急医療体制が再建・整備されれば、「脳死者」もまた減ることが予想される。国民が安全に、安心して暮らせる社会を実現することは、政府および国会が果たすべき本来の務めであるはずだが、それは「脳死者=ドナー」を増やすこととは両立し難い。その意味で、「臓器不足の解消」のために法改定したことは、国民全体の安全・安心は二の次であると宣言したことに等しいのではないか。
6)移植に代わる医療の存在が患者・国民に周知され、また国によって援助されるべきである。
現在、心臓移植に限っても、移植適応とされる患者への心臓弁形成術・ペースメーカー治療・バチスタ手術などの成功例が出ている。移植をしなくても助かる道が開かれつつある以上、第一により多くの患者・国民がその恩恵に与れるような施策が講じられるべきであるし、それは移植適応とされる患者の治療と、国民全体の安全・安心とを両立させうる方法でもあるだろう。その可能性をさらに広げることこそが政府・国会の責務のはずである。「臓器不足の解消」という目標自体が再考され、新たな取り組みが模索されるべきである。この点は、法改定が確定した現在でも全く変わることはない。
7)現行「臓器移植法」に定められた法改定条件が遵守されなかった。
現行の「臓器移植法」では、「法律の施行状況を勘案し、その全般について検討が加えられ」ることが法改定の大前提である(附則第二条、下線部引用者)。しかも、これまでの81人の脳死判定と臓器摘出には、法律・ガイドラインなどに対する違反のあった疑いが残る。ところが衆議院でも参議院でも、この点を精査・検討しないままに採決が行われた。さらにA案は、臓器提供の際の「本人同意」さえ不要としている点で現行法の基本理念まで改廃するものであるうえに、日本の法制史上初めて「人の死」を規定したものであると見なされうる。その意味でA案は、「見直し」の名の下に「新法制定」を行った蓋然性が高く、国民に対して著しく誠実さを欠いた行為と言わざるをえない。
そもそも人の生死の問題は、多数決に委ねたり、法律問題にすり替えたりするべきものではありません。しかるに、今回のA案の可決・成立は、上に述べたように、倫理的にはもとより法的・政治的にも、社会的にも、深刻な諸問題を招くことが危惧されてなりません。特に一点だけ述べるなら、A案提案者は、「法的脳死判定によって脳死が確定しても、臓器提供の意思を撤回すれば脳死者への保険治療を継続する」旨を国会で明言されました。対して「現行法・附則十一条」には、保険適用の期間をめぐって「当分の間」なる言葉が挿入されていますが、A案提案者と国会はかかる言明を「当分の間」に終わらせることなく、永続墨守されることを強く要望いたします。なぜなら、保険適用がはずされ、人工呼吸器がはずされるときこそが、脳死者の息の根を止め、家族との絆を引き裂くときに他ならないからです。
「生命倫理会議緊急声明」連名者(71名)
旭 洋一郎(長野大学教授・障害者福祉論)
天田城介(立命館大学大学院准教授・社会学)
綾部広則(早稲田大学准教授・科学技術論)
安藤泰至(鳥取大学准教授・宗教学)
伊古田 理(千葉工業大学准教授・哲学)
石田秀実(元九州国際大学教授・哲学)
石塚正英(東京電機大学教授・史的情報社会論)
市野川容孝(東京大学大学院教授・社会学)
宇城輝人(福井県立大学准教授・社会学)
大澤真幸(京都大学大学院教授・社会学)
大庭 健(専修大学教授・倫理学)
大林雅之(東洋英和女学院大学教授・バイオエシックス)
冲永隆子(帝京大学専任講師・生命倫理学)
荻野美穂(同志社大学大学院教授・歴史学)
重田園江(明治大学准教授・現代思想)
香川知晶(山梨大学大学院教授・哲学)
柿原 泰(東京海洋大学准教授・科学技術史)
加藤茂生(早稲田大学専任講師・科学史科学論)
加藤秀一(明治学院大学教授・社会学)
金森 修(東京大学大学院教授・フランス哲学)
川本隆史(東京大学大学院教授・倫理学)
鬼頭秀一(東京大学大学院教授・科学技術社会論)
木名瀬高嗣(東京理科大学専任講師・文化人類学)
木原英逸(国士舘大学教授・科学技術論)
木村 敏(京都大学名誉教授・精神医学)
空閑厚樹(立教大学准教授・生命倫理学)
蔵田伸雄(北海道大学大学院教授・応用倫理学)
倉持 武(松本歯科大学教授・哲学)
栗原 彬(立命館大学特別招聘教授・政治社会学)
小泉義之(立命館大学教授・哲学)
小松奈美子(武蔵野大学教授・生命倫理学)
小松真理子(帝京大学准教授・科学史科学論)
小松美彦(東京海洋大学教授・科学史科学論)
小柳正弘(琉球大学教授・社会哲学)
最首 悟(和光大学名誉教授・〈いのち〉学)
齋藤純一(早稲田大学学術院教授・政治理論)
斎藤 光(京都精華大学教授・性科学史)
佐藤憲一(千葉工業大学准教授・基礎法学)
篠田真理子(恵泉女学園大学准教授・環境思想史)
篠原睦治(和光大学名誉教授・臨床心理学)
清水哲郎(東京大学大学院特任教授・死生学)
愼 蒼健(東京理科大学准教授・科学史科学論)
鈴木晃仁(慶應義塾大学教授・医学史)
高草木光一(慶應義塾大学経済学部教授・社会思想史)
高田文英(龍谷大学専任講師・真宗学)
竹内章郎(岐阜大学教授・社会哲学)
竹内整一(東京大学大学院教授・倫理学)
武田 徹(恵泉女学園大学教授・メディア論)
高橋文彦(明治学院大学教授・法哲学)
田中智彦(東京医科歯科大学准教授・政治思想)
田村公江(龍谷大学教授・倫理学)
塚原東吾(神戸大学大学院教授・テクノ文明論)
柘植あづみ(明治学院大学教授・医療人類学)
土屋貴志(大阪市立大学大学院准教授・倫理学)
爪田一壽(武蔵野大学専任講師・仏教学)
土井健司(関西学院大学教授・キリスト教神学)
堂前雅史(和光大学教授・科学技術社会論)
徳永哲也(長野大学教授・哲学)
戸田 清(長崎大学教授・環境社会学)
直江清隆(東北大学大学院准教授・哲学)
永澤 哲(京都文教大学准教授・宗教学)
中島隆博(東京大学大学院准教授・中国哲学)
林 真理(工学院大学教授・科学史科学論)
原 塑(東北大学大学院准教授・科学哲学)
廣野喜幸(東京大学大学院准教授・科学史科学論)
細見和之(大阪府立大学教授・ドイツ思想)
森 幸也(山梨学院大学准教授・科学史)
村岡 潔(佛教大学教授・医学概論)
坂野 徹(日本大学准教授・科学史科学論)
森岡正博(大阪府立大学教授・生命倫理学)
吉本秀之(東京外国語大学教授・科学思想史)
「命の尊さ」といった言葉は、もはや説得力を失ってしまうだろう。
満腔の憤怒――。
2009.07.16 / Top↑
“Ashley療法”論争の当初から一貫して批判を続けている
障害当事者Bad CrippleことWilliam Peace氏が
このたびのDiekema医師らの成長抑制論文を読み、
長いエントリーをアップしています。
障害当事者Bad CrippleことWilliam Peace氏が
このたびのDiekema医師らの成長抑制論文を読み、
長いエントリーをアップしています。
重症児の親を助けてあげようとの医師らの善意を疑うものではないが、
しかし、社会が障害者の権利を認めてこなかった文化の問題は
欠陥を修正するためにあらゆる手段を尽くそうとする医学の論理では解決できない
と主張しています。
しかし、社会が障害者の権利を認めてこなかった文化の問題は
欠陥を修正するためにあらゆる手段を尽くそうとする医学の論理では解決できない
と主張しています。
主な批判のポイントは以下の6点で、
1.曖昧な定義で重症の認知障害のある人とそうでない人を区別し、
前者の欠陥を“修正する”ためにあらゆる手段を尽くそうとするものであり、
社会が障害者の市民権を認めてこなかったという問題に対して、医学で解決を図ろうとしている。
前者の欠陥を“修正する”ためにあらゆる手段を尽くそうとするものであり、
社会が障害者の市民権を認めてこなかったという問題に対して、医学で解決を図ろうとしている。
2.重症の認知障害が永続するとの誤診の可能性。
3.論文は別問題としているが、対象児の選別プロセスそのものが問題の本質。
(論文の「重症の認知障害」の定義は単なるアリバイでありマジックであるとの
私の英語ブログの一節が引用されています)
(論文の「重症の認知障害」の定義は単なるアリバイでありマジックであるとの
私の英語ブログの一節が引用されています)
4.何もしないことは最良の結果を生まないと論文は主張するが、
何もしないことは害もなさない。害をなさないことこそ医師がすべきことのはず。
何もしないことは害もなさない。害をなさないことこそ医師がすべきことのはず。
5.これまでの成長抑制は女児に限られており、その歴史と安全性には批判もある。
6.セーフガードは十分にあるとの主張は、優生手術に見られるように、
これまでの障害者の身体に対する侵襲の歴史を省みれば、事実ではない。
このような歴史を無視することそのものが危険な前例となる。
これまでの障害者の身体に対する侵襲の歴史を省みれば、事実ではない。
このような歴史を無視することそのものが危険な前例となる。
私は、ここしばらく尊厳の問題、法と科学とテクノの問題にこだわっているので、
特に以下の部分が印象的だった。
特に以下の部分が印象的だった。
I cannot help but conclude a specific population or type of child is being selected and considered for growth attenuation while all others are automatically dismissed. This leads me to ask why is it ethically acceptable to attenuate the growth of children with a cognitive disability but no other human beings? What does this mean culturally? To me, this is a strong indication that in spite of what the law may state people with disabilities are not valued.
特定の障害像の子どもだけが選り分けられて成長抑制の対象となり、その他の子どもたちは無条件に対象外となるものと結論せざるを得ない。では、認知障害のある子どもだけが成長抑制の対象となり、その他の人が対象とならないことがどうして倫理的に許容されるのかを問いたい。文化という点から考えて、これはいったいどういうことなのだろう? 私にとっては、これこそ法の規定にもかかわらず、障害者が尊重されていないことの証である。
特定の障害像の子どもだけが選り分けられて成長抑制の対象となり、その他の子どもたちは無条件に対象外となるものと結論せざるを得ない。では、認知障害のある子どもだけが成長抑制の対象となり、その他の人が対象とならないことがどうして倫理的に許容されるのかを問いたい。文化という点から考えて、これはいったいどういうことなのだろう? 私にとっては、これこそ法の規定にもかかわらず、障害者が尊重されていないことの証である。
法の規定の部分で、what the law may state と、
なぜ may が入っているのか、そのあたりのニュアンスが分からないのだけど、
なぜ may が入っているのか、そのあたりのニュアンスが分からないのだけど、
障害の有無を問わず、全ての人間の基本的人権が法によって保障されているとしたら、
なぜ医療がそこに勝手な線を引くことが許されるのか、という点は
私もAshley事件に感じる大きな疑問の1つ。
なぜ医療がそこに勝手な線を引くことが許されるのか、という点は
私もAshley事件に感じる大きな疑問の1つ。
生命倫理で持ち出されてくる「最善の利益」だとか「利益 vsコストまたは害」の検討とは
あくまで科学とテクノの適用を前提にするから、そこから話が始まるのであって、
実はその前提以前の議論がご都合主義的に省略されてしまっているのではないか、ということは
この事件の当初からずっと考えてきたのですが、
あくまで科学とテクノの適用を前提にするから、そこから話が始まるのであって、
実はその前提以前の議論がご都合主義的に省略されてしまっているのではないか、ということは
この事件の当初からずっと考えてきたのですが、
「尊厳」は実は、その省略されている段階の議論にこそ関わっているんじゃないか、ということ。
でも、あまりにも科学とテクノ万能の幻想にたぶらかされ、操られて、
一般の我々までが科学やテクノの分野の人たちと同じようなものの見方を
無意識のうちに共有させられてしまっているので
そのことに気づけないのではないか、ということ。
一般の我々までが科学やテクノの分野の人たちと同じようなものの見方を
無意識のうちに共有させられてしまっているので
そのことに気づけないのではないか、ということ。
そのために、人間の「尊厳」までをも
まず科学とテクノの適用を前提に据えた上で、
そこから議論をスタートすることに抵抗も疑問も抱かなくなっているのではないか。
まず科学とテクノの適用を前提に据えた上で、
そこから議論をスタートすることに抵抗も疑問も抱かなくなっているのではないか。
臓器移植という技術がまず存在し、それは推進するべきものとの前提があり、
そこから人の死を決めなければならない事態と議論が発生するために、
その議論が本来あるべき尊厳や人権という観点から始まるのではなく
移植件数を増やすことを目的とした小手先の議論に限局されてしまうことに
違和感を抱く人がこんなにも少なくなってしまったように。
そこから人の死を決めなければならない事態と議論が発生するために、
その議論が本来あるべき尊厳や人権という観点から始まるのではなく
移植件数を増やすことを目的とした小手先の議論に限局されてしまうことに
違和感を抱く人がこんなにも少なくなってしまったように。
しかし、科学とテクノロジーはそれ自体の論理によって
本来、自己増殖的に前に前にと進む性格のものだということは
Peace氏がいうように歴史が証明している。
本来、自己増殖的に前に前にと進む性格のものだということは
Peace氏がいうように歴史が証明している。
それだけに、科学とテクノが自らの閉じた世界の論理だけで独善的な暴走をしないように
社会はもっと広い視野から規制をかけてきたはず。
社会はもっと広い視野から規制をかけてきたはず。
そのことに、一般の我々はそろそろ目覚めなければならないんじゃないのか……
科学とテクノの万能幻想の催眠術から逃れるために……
科学とテクノの万能幻想の催眠術から逃れるために……
ということを今、ぐるぐると考えている。
【Diekemaらの6月の成長抑制論文に関するエントリー】
DiekemaとFostが成長抑制療法で新たな論文(2009/6/6)
成長抑制WGの作業のウラで論文が書かれていたことの怪(2009/6/6)
成長抑制論文にWhat Sorts ブログが反応(2009/6/7)
Diekema&Fostの成長抑制論文を読んでみた(2009/6/14)
Diekema&Fost論文の「重症の認知障害」が実は身体障害であることの怪(2009/6/15)
病院の公式合意を一医師が論文で否定できることの怪(2009/6/15)
DiekemaとFostが成長抑制療法で新たな論文(2009/6/6)
成長抑制WGの作業のウラで論文が書かれていたことの怪(2009/6/6)
成長抑制論文にWhat Sorts ブログが反応(2009/6/7)
Diekema&Fostの成長抑制論文を読んでみた(2009/6/14)
Diekema&Fost論文の「重症の認知障害」が実は身体障害であることの怪(2009/6/15)
病院の公式合意を一医師が論文で否定できることの怪(2009/6/15)
【上記論文から考えている尊厳、法、科学とテクノについてのエントリー】
「尊厳は定義なしに使っても無益な概念」をぐるぐる考えてみる(2009/6/29)
大統領生命倫理評議会の「人間の尊厳と生命倫理」と「おくりびと」(2009/6/30)
生命倫理が「治外法権的な聖域なき議論の土俵」に思えてきた(2009/07/7)
「尊厳は定義なしに使っても無益な概念」をぐるぐる考えてみる(2009/6/29)
大統領生命倫理評議会の「人間の尊厳と生命倫理」と「おくりびと」(2009/6/30)
生命倫理が「治外法権的な聖域なき議論の土俵」に思えてきた(2009/07/7)
2009.07.16 / Top↑
英国、ソーシャルケア緑書で、地域格差の大きい現在の制度の改革案として3つのモデルを提示。一般税で全額まかなうと勤労世代への負担が大きすぎるとして、政府がコストの3分の1を負担、政府が3分の1を負担する任意の保険制度、加入を義務付ける保険制度の3つ。いずれにせよ高齢者は介護に2万ポンド程度の支出が必要となる模様。
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article6709498.ece?&EMC-Bltn=BBPB1B
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article6709498.ece?&EMC-Bltn=BBPB1B
Obama政権の医療改革は富裕層への増税で。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/14/AR2009071403709.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/14/AR2009071403709.html
日本語。改正臓器移植法成立 柳田邦夫さんに聞く(東京新聞) 「ものすごいエゴイズムだ」と。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009071402000078.html
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009071402000078.html
日本語。改正臓器移植法成立/ 家族同意、提供どう変わる(東奥日報) :「『初の小児からの臓器提供は自分が出す』と明言する救急医がいる」。重症患者の治療を打ち切れば脳死になる場合もあるといい「恣意的に脳死がつくられる恐れぬぐえない」、とも。
http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/danmen/danmen2009/0713.html
http://www.toonippo.co.jp/tokushuu/danmen/danmen2009/0713.html
ヘミングウェイは40年代にKGBと接触して情報を売ろうとして、失敗していた?
http://www.guardian.co.uk/books/2009/jul/09/hemingway-failed-kgb-spy
http://www.guardian.co.uk/books/2009/jul/09/hemingway-failed-kgb-spy
米ロの各兵器削減合意を機に、三宅一生氏がNY Timesで7歳の時の原爆体験を語っている。
http://www.nytimes.com/2009/07/14/opinion/14miyake.html?_r=2&th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/07/14/opinion/14miyake.html?_r=2&th&emc=th
自分の心臓にプラスしてドナーの心臓を移植し、自分の心臓を休ませることで病気を克服した少女。移植した心臓を後になって取り除いた始めてのケース。10年半の間“2つの心臓を持った少女”。“心臓を借りた”少女。16歳。英国。
http://www.guardian.co.uk/society/2009/jul/14/heart-organ-donor-piggybacking
http://www.guardian.co.uk/society/2009/jul/14/heart-organ-donor-piggybacking
ナーシング・ホームを5星で映画のようにランキング評価・比較するサイトをめぐる、利用者の評価。そのサイトはこちら。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/13/AR2009071302498.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/13/AR2009071302498.html
2009.07.15 / Top↑
2009年7月13日
抗議声明
-臓器移植法改正A案参議院可決成立に対して-
優生思想に基づく「産科医療補償制度」に
抗議する障害当事者全国連合
2009年7月13日(月)、私たちが生存をかけて反対し続けてきた臓器移植法「改正A案」は、予想外の差をもって参議院本会議で可決成立してしまった。この改正法は一年後に施行される。
この改正法A案の大きな問題点は、脳死を一律に人の死と法的に定義してしまうこと、そしてそれに加えて、家族の同意さえあれば脳死からの移植手術を可能とさせてしまうことである。
私たちの仲間には遷延性意識障害で人工呼吸器を付けて生活している人も多くいる。アメリカの一部では、臓器が足りず、脳死という定義をさらに変更し、脳不全の段階で臓器移植を可能とさせようとする動きがある。
今後日本においても、脳死を人の死としたことによって、脳死段階での尊厳死を法制化させようとする動きがますます強まることが予想される。この動きの背景には、医療費抑制という、「弱者」切り捨ての発想があることは言うまでもない。合理主義が「いのち」のレベルにまで貫かれようとしている。
私たちは移植医療を否定する立場ではない。このような合理主義的な動きに対して強い危機感を持つのである。
今後法の施行において、知的障害や精神障害などによる意思表明困難な人たちの権利が守られるように、きちんと監視をし続けていく。
改めて改正A案の参議院での可決成立に対して抗議の意思を表明するとともに、今後も優生思想との闘いをさらに強めていく決意である。
抗議声明
-臓器移植法改正A案参議院可決成立に対して-
優生思想に基づく「産科医療補償制度」に
抗議する障害当事者全国連合
2009年7月13日(月)、私たちが生存をかけて反対し続けてきた臓器移植法「改正A案」は、予想外の差をもって参議院本会議で可決成立してしまった。この改正法は一年後に施行される。
この改正法A案の大きな問題点は、脳死を一律に人の死と法的に定義してしまうこと、そしてそれに加えて、家族の同意さえあれば脳死からの移植手術を可能とさせてしまうことである。
私たちの仲間には遷延性意識障害で人工呼吸器を付けて生活している人も多くいる。アメリカの一部では、臓器が足りず、脳死という定義をさらに変更し、脳不全の段階で臓器移植を可能とさせようとする動きがある。
今後日本においても、脳死を人の死としたことによって、脳死段階での尊厳死を法制化させようとする動きがますます強まることが予想される。この動きの背景には、医療費抑制という、「弱者」切り捨ての発想があることは言うまでもない。合理主義が「いのち」のレベルにまで貫かれようとしている。
私たちは移植医療を否定する立場ではない。このような合理主義的な動きに対して強い危機感を持つのである。
今後法の施行において、知的障害や精神障害などによる意思表明困難な人たちの権利が守られるように、きちんと監視をし続けていく。
改めて改正A案の参議院での可決成立に対して抗議の意思を表明するとともに、今後も優生思想との闘いをさらに強めていく決意である。
7日の参議院・厚生労働委員会の参考人質疑の一場面で、
「死の定義について論じるにあたって、
では生については、どの時点で始まるとお考えか
それぞれの参考人に聞きたい」との質問があった。
「死の定義について論じるにあたって、
では生については、どの時点で始まるとお考えか
それぞれの参考人に聞きたい」との質問があった。
その質問を「では、生の条件とは何か」と聞き誤ったA案支持の2人の参考人が答えたのは、
1人は「自力呼吸」。
もう1人は「脳が正常に機能していること」だった。
もう1人は「脳が正常に機能していること」だった。
後者は移植医による発言。
これは、想定外の質問に誘発されて、うっかり吐いた移植医のホンネなのでは?
彼の考える生の条件がホンネのところでは「脳が正常に機能していること」だとすれば、
彼の考える死は決して「脳死」に留まらない――。
彼の考える死は決して「脳死」に留まらない――。
「すべり坂」が始まる――。
2009.07.14 / Top↑
ついにDignitasは
ターミナルな病気の本人と、そうではない配偶者を一緒に自殺させる行為に手を染めました。
ターミナルな病気の本人と、そうではない配偶者を一緒に自殺させる行為に手を染めました。
国際的に活躍した指揮者で、91年にナイトの称号を与えられたEdward Downes卿(85歳)と、
舞踏家、振り付け師、プロデューサーとして卿を支えた妻Joanさん(74歳)が
10日金曜日に夫婦そろって Dignitas で自殺した、と家族が今日、発表。
舞踏家、振り付け師、プロデューサーとして卿を支えた妻Joanさん(74歳)が
10日金曜日に夫婦そろって Dignitas で自殺した、と家族が今日、発表。
以下の2本の記事によると、Joanさんは末期がんだった。
Downes卿の方は、目がほとんど見えなくなり、聴覚もどんどん衰えてはいたものの、
特に深刻な病気だったわけではなさそうで、
特に深刻な病気だったわけではなさそうで、
妻を失ったら生きていけないとの理由から
夫婦で一緒に死ぬことにした、とのこと。
夫婦で一緒に死ぬことにした、とのこと。
家族の発表では
「54年も幸福な結婚生活を送ってきた2人は
この先、深刻な病気と格闘し続けるよりも人生を終えることに決めた」
「54年も幸福な結婚生活を送ってきた2人は
この先、深刻な病気と格闘し続けるよりも人生を終えることに決めた」
「自分で選んだ状況で穏やかに」亡くなった、と。
Top BBC conductor and cancer-stricken wife die at assisted suicide clinic in Switzerland
The Daily Mail, July 14, 2009
The Daily Mail, July 14, 2009
家族が出した声明文はこちら
【15日追記】
今日のNY Times の記事によると、
Downes夫妻の子どもたちはロンドンからチューリッヒまで同行し、
Diginitasで夫妻が毒物を飲んで死ぬ際にも、その場にいたとのこと。
Downes夫妻の子どもたちはロンドンからチューリッヒまで同行し、
Diginitasで夫妻が毒物を飲んで死ぬ際にも、その場にいたとのこと。
41歳の息子が帰国後にインタビューで答えたもの。
「2人は互いに寄り添って死にたかったのです。
そういうふうに人生を終えるのは、とても civilized な死に方です。
なぜ、この国の法律がそれを許さないのか理解できない」
そういうふうに人生を終えるのは、とても civilized な死に方です。
なぜ、この国の法律がそれを許さないのか理解できない」
スコットランド・ヤードは状況を調べているところ。
Edward卿の友人でBBCフィルのジェネラル・マネジャーのRichard Wigleyは
「Tedは全くもって合理的な人だった。あれだけ合理的だったら、
“いい人生だった。これで一緒に終わりにしよう”と言ったとしても全然不思議じゃない」
「Tedは全くもって合理的な人だった。あれだけ合理的だったら、
“いい人生だった。これで一緒に終わりにしよう”と言ったとしても全然不思議じゃない」
Edward卿のマネージャーは夫妻の決断を
「いかにも2人らしく、brave and courageous (堂々として勇気がある)」と。
「いかにも2人らしく、brave and courageous (堂々として勇気がある)」と。
しかし、ターミナルな状態だったのは妻だけだったとあって、
2人の自殺は自殺幇助合法化支持者の間からも懸念の声が上がっている。
2人の自殺は自殺幇助合法化支持者の間からも懸念の声が上がっている。
ちなみに、この記事によると、
ターミナルな状態ではない配偶者が一緒に自殺したという同様のケースが
今回のDownes夫妻以外に、これまでに少なくとも3件あった、とのこと。
それらがDignitasによるものかどうかも含め、詳細は不明。
ターミナルな状態ではない配偶者が一緒に自殺したという同様のケースが
今回のDownes夫妻以外に、これまでに少なくとも3件あった、とのこと。
それらがDignitasによるものかどうかも含め、詳細は不明。
【その他、15日の記事】
Telegraph (事件のたびに衝撃が薄れていく)
http://blogs.telegraph.co.uk/news/richardpreston/100003233/with-each-death-were-a-little-less-shocked-by-assisted-suicide/
http://blogs.telegraph.co.uk/news/richardpreston/100003233/with-each-death-were-a-little-less-shocked-by-assisted-suicide/
Times(高齢者に自殺への圧力がかかるのでは、との懸念)
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article6711273.ece?&EMC-Bltn=BBPB1B
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article6711273.ece?&EMC-Bltn=BBPB1B
Yahoo! News(タイトルで hand in hand とは一体どういう神経なんだ?)
http://news.yahoo.com/s/ap/20090714/ap_on_re_eu/eu_britain_obit_downes
http://news.yahoo.com/s/ap/20090714/ap_on_re_eu/eu_britain_obit_downes
【16日の記事】
Guardian コラムニスト(ロマンチックだけど、賛成はしない)
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/jul/16/assisted-suicide-edward-downes
Guardian コラムニスト(ロマンチックだけど、賛成はしない)
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/jul/16/assisted-suicide-edward-downes
【7月20日追記】
2人とも30年以上にわたって精神的・身体的な病気を患っていたが
いずれもターミナルではなかった、とのこと。
いずれもターミナルではなかった、とのこと。
2009.07.14 / Top↑
以前どこかで読んだ記憶では
スイスで主に外国人に自殺幇助を行っているのがDignitasで
スイスの国民対象に自殺幇助を行っているのがExitだったような気がするのですが、
スイスで主に外国人に自殺幇助を行っているのがDignitasで
スイスの国民対象に自殺幇助を行っているのがExitだったような気がするのですが、
そのExit の方が、チューリッヒ市当局との合意文書に署名。
特にこれまでの活動を変えるというのではなく、
これまでの方針を公式なものとしただけ、とExitは受け止めている。
これまでの方針を公式なものとしただけ、とExitは受け止めている。
内容としては、
「尊厳のある死への権利」と「自己決定」を自殺幇助の基本理念の2つの柱とし、
病気、事故、または障害で苦しんでいる人以外には自殺幇助を行わないこと、
希望者には調査を行い、幇助の場には証人を同席させること、
すべてのプロセスを当局の監査が可能なように文書に残すこと、など。
「尊厳のある死への権利」と「自己決定」を自殺幇助の基本理念の2つの柱とし、
病気、事故、または障害で苦しんでいる人以外には自殺幇助を行わないこと、
希望者には調査を行い、幇助の場には証人を同席させること、
すべてのプロセスを当局の監査が可能なように文書に残すこと、など。
Dignitasは、そうした合意はしていない、とのこと。
またスイスの自殺幇助に関する法律については、
現在、禁止も含めた規制について検討されているところで
今年のうちに、いずれ議会に提案される見込み。
現在、禁止も含めた規制について検討されているところで
今年のうちに、いずれ議会に提案される見込み。
この件についてはほかにも記事があって、中には、
病気、事故、障害で苦しんでいる人以外に自殺幇助を行わないことを明記させた点に
特に焦点を当てているものもあり
病気、事故、障害で苦しんでいる人以外に自殺幇助を行わないことを明記させた点に
特に焦点を当てているものもあり
これまでに、それ以外の人に自殺幇助を行った事実がある、との含意。
……というか、
「病気、事故または障害で苦しんでいる人」という条件そのものが、十分“なんでもあり”では?
「病気、事故または障害で苦しんでいる人」という条件そのものが、十分“なんでもあり”では?
うつ病で死にたい人も自殺幇助の対象者として認められることになるのだろうし、
事故で愛する人を亡くして後追いしたい人もOKなのかもしれないし、
事故で指を失ったピアニストなんかもOKだろうし、
目が見えない人、歩けない人、しゃべれない人、
糖尿病で苦しんでいる人、もしかしたら痔に苦しんでいる人だって
みんなOKなのかもしれないし。
事故で愛する人を亡くして後追いしたい人もOKなのかもしれないし、
事故で指を失ったピアニストなんかもOKだろうし、
目が見えない人、歩けない人、しゃべれない人、
糖尿病で苦しんでいる人、もしかしたら痔に苦しんでいる人だって
みんなOKなのかもしれないし。
2009.07.12 / Top↑
でも、医学をはじめ科学とテクノの応用と、法の関係について
私はまったく知識がないから、これ以上、考えようがないなぁ……と思っていたら、
私はまったく知識がないから、これ以上、考えようがないなぁ……と思っていたら、
こういう時って、シンクロニシティっていうんだっけ、
例の「まるで仕組まれたかのような偶然」が起こってくれるもの。
例の「まるで仕組まれたかのような偶然」が起こってくれるもの。
非常勤で英語を教えている大学の図書館が
「教職員でも学生さんでもご自由に」と、古くなった雑誌をずらっと並べてくれていた中に、
ジュリストのNo.1339(2007・8・1-15)特集「医療と法」を発見。
「教職員でも学生さんでもご自由に」と、古くなった雑誌をずらっと並べてくれていた中に、
ジュリストのNo.1339(2007・8・1-15)特集「医療と法」を発見。
早速ありがたく頂戴して、めくってみたら
冒頭の「先端医学・生命科学研究と法」という京都大学の位田隆一教授の論文に
知りたかったことが、ちゃんと書かれていた。
冒頭の「先端医学・生命科学研究と法」という京都大学の位田隆一教授の論文に
知りたかったことが、ちゃんと書かれていた。
医学研究を規律する規範の形態として、
最上位にくるのが拘束性の高い法律。
国家権力によって、その規律の効果が担保される。
国家権力によって、その規律の効果が担保される。
その次のレベルにくるのが国の作る指針(ガイドライン)で
これには法律に基づくものと基づかないものとがあって、
前者は法律と同じ拘束力を持つ。
これには法律に基づくものと基づかないものとがあって、
前者は法律と同じ拘束力を持つ。
後者はどちらかといえば行政施策の円滑な運営のためのもので、
前者よりも拘束力は弱い。
前者よりも拘束力は弱い。
さらにその下位に、専門家集団による自主規制としての指針(ガイドライン)がある。
これら、後者の2つのように法的拘束力を持たない、
法と法でないものとの中間的な存在のものを総称して「ソフト・ロー」と呼ぶ。
ソフト・ローは1970年代後半から国際法分野から出てきた考え方。
法と法でないものとの中間的な存在のものを総称して「ソフト・ロー」と呼ぶ。
ソフト・ローは1970年代後半から国際法分野から出てきた考え方。
位田氏によれば「ソフト・ローの実効性は、それを遵守する側の意識に依存する」。
国家の権力的な介入の意思と、
「患者の治療という高い価値」、「科学研究の自由という基本的人権」の相克の中で、
専門家集団の自律が機能し、ソフト・ローの実効性が保たれている限りは
ハード・ローによる規制の必要はない、というのが現在の考え方。
「患者の治療という高い価値」、「科学研究の自由という基本的人権」の相克の中で、
専門家集団の自律が機能し、ソフト・ローの実効性が保たれている限りは
ハード・ローによる規制の必要はない、というのが現在の考え方。
位田氏は、特に日本では、こうしたソフト・ローがうまく機能してきた、とも。
論文は、
クローン技術、ES細胞、ヒトゲノム・遺伝子解析それぞれの研究規制について概観した後
次のように書き、広義の生命倫理法体系が必要な時期だと提言している。
クローン技術、ES細胞、ヒトゲノム・遺伝子解析それぞれの研究規制について概観した後
次のように書き、広義の生命倫理法体系が必要な時期だと提言している。
法は、一方で科学研究の自由を保護し、またその成果の応用を促進する役割があると同時に、研究に参加する試料提供者や患者の保護を図らなければならない。こうした研究の自由と提供者の保護の対峙の基盤には、人間の尊厳と人権という社会における基本的価値がある。この基本的価値の上にこそ、先端医学・生命科学研究はその意義を見いだし得るのであり、その尊重なくしては科学技術は成り立たない。
これを読んだのが、7日の夕方だった。
たまたま、その夜、昼間に行われた参議院厚労委員会の
臓器移植法改正の参考人質疑を国会のサイトで見ていたら、
たまたま、その夜、昼間に行われた参議院厚労委員会の
臓器移植法改正の参考人質疑を国会のサイトで見ていたら、
参考人の米本昌平氏が、これに関連した発言をされた。
具体的な文言は違っているかもしれないけど、
だいたい、次のような趣旨の発言だったと思う。
だいたい、次のような趣旨の発言だったと思う。
メディカル・プロフェッションの独立性と、法による国家の統治構造との間には
何度も揺り戻しが起こってきた。
独立性を守ろうとするのであれば、メディカル・プロフェッション自身が
社会通念から認められる形で、専門家集団として、きちんと自己統治をするべきである。
何度も揺り戻しが起こってきた。
独立性を守ろうとするのであれば、メディカル・プロフェッション自身が
社会通念から認められる形で、専門家集団として、きちんと自己統治をするべきである。
つまり、米本氏は、臓器移植については、法改正を求める前に、
移植医療のサイドで、まずソフト・ローの整備をきちんとやりなさいよ、
社会通念を無視して突っ走ることはできませんよ、ということを
言われたのかな、と思いつつ聞いたのだけど、
移植医療のサイドで、まずソフト・ローの整備をきちんとやりなさいよ、
社会通念を無視して突っ走ることはできませんよ、ということを
言われたのかな、と思いつつ聞いたのだけど、
(たとえば、週刊文春の今週号に柳田邦夫氏が書いておられる
「柳田さん、もっと臓器をとりやすくできるように、法律を改正してくださいよ」
といった移植医療の専門医の意識とか)
「柳田さん、もっと臓器をとりやすくできるように、法律を改正してくださいよ」
といった移植医療の専門医の意識とか)
とりあえず、お2人の専門家から、
医学と科学の研究、そして、多分プラクティスにおいても、
医師や科学者の独立性と、国家権力による統治・介入との間に対立があるということを学べて、
改めて知識として頭にしっかり座った。
医学と科学の研究、そして、多分プラクティスにおいても、
医師や科学者の独立性と、国家権力による統治・介入との間に対立があるということを学べて、
改めて知識として頭にしっかり座った。
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すると、やっぱり思い出すのは、Ashley事件からずうっと引っかかっている
2007年シアトル子ども病院生命倫理カンファで Norman Fost 医師が繰り返した主張。
2007年シアトル子ども病院生命倫理カンファで Norman Fost 医師が繰り返した主張。
「裁判所には医師を罰する実効性はないのだから無視して、拒みたい治療は拒め。
やりたいことがあったら、できなくなるだけだから裁判所には行くな」
やりたいことがあったら、できなくなるだけだから裁判所には行くな」
「医療については医師が決めればいいのだ」
確かに、例えば、知的障害者の不妊手術でも、
裁判所の命令を必要とすると州法で規定されている州が多いとはいえ、
それこそ医療職の側の遵守が前提だから、
医師と家族との間に対立さえなければ、
ほっかむりでやってしまうことも可能なわけで
実効性・拘束性はないに等しい。
裁判所の命令を必要とすると州法で規定されている州が多いとはいえ、
それこそ医療職の側の遵守が前提だから、
医師と家族との間に対立さえなければ、
ほっかむりでやってしまうことも可能なわけで
実効性・拘束性はないに等しい。
(米国では個々のケースの医療については州ごとの判断とされていますが、
じゃぁ、州法はソフト・ローに過ぎないのか。それとも
日本でいうハード・ローと、ソフト・ローの中間的なところに州法がある、ということ?)
じゃぁ、州法はソフト・ローに過ぎないのか。それとも
日本でいうハード・ローと、ソフト・ローの中間的なところに州法がある、ということ?)
現にAshleyへの侵襲は水面下で行われて2年も公表されなかったし、
公表された後にWPASの調査を受けて、子宮摘出の違法性を病院が認めたにもかかわらず、
誰も処罰されていないどころか、当該医師はまるで違法行為などなかったかのように無反省な行動を続け、
公表された後にWPASの調査を受けて、子宮摘出の違法性を病院が認めたにもかかわらず、
誰も処罰されていないどころか、当該医師はまるで違法行為などなかったかのように無反省な行動を続け、
つまり「医療については病院が決めればいいのだ、裁判所はいらない」と。
Norman Fostは極めてトランスヒューマニスティックなスタンスの医師――。
Ashleyの父親は、おそらくはMicrosoftの幹部で、同じく科学とテクノの合理の申し子――。
Ashleyの父親は、おそらくはMicrosoftの幹部で、同じく科学とテクノの合理の申し子――。
Ashley事件と、その、これまでの展開は、
今の時代の向かっている方向の象徴のように感じられてならない。
今の時代の向かっている方向の象徴のように感じられてならない。
もしかしたら科学とテクノは、
その急速な進歩と、科学とテクノ万能信仰の勢いを借りて
法の束縛から自由になろうと駄々をこね始めている──?
その急速な進歩と、科学とテクノ万能信仰の勢いを借りて
法の束縛から自由になろうと駄々をこね始めている──?
2009.07.11 / Top↑
シスター Dorothy Quinn 87歳。
NY 州Rochester郊外のSt. Joseph修道院のナーシング棟でケアされている。
一時は重態で酸素タンクにつながれ、足はむくみ、既に食欲もなかった。
NY 州Rochester郊外のSt. Joseph修道院のナーシング棟でケアされている。
一時は重態で酸素タンクにつながれ、足はむくみ、既に食欲もなかった。
心臓病の専門医は23種類もの薬を処方したが、老年医の選り分けによって
シスターはそのほとんどを飲まないことにした。
シスターはそのほとんどを飲まないことにした。
片方残っている乳房にしこりがあるが、マンモグラムも受けないことに決めた。
激しい治療に体が耐えられないと思うからだ。
激しい治療に体が耐えられないと思うからだ。
その後、状態が改善し、週単位から月単位へと予後がよくなっても
Dorothyさんの望みは、生き続けることではなく、
趣味だったキルト作りがまたできるようになること。
Dorothyさんの望みは、生き続けることではなく、
趣味だったキルト作りがまたできるようになること。
「死は怖くはありません。死にそうになっていた時も怖くはありませんでした。
あるところまでくると自分で分かるんです。ああ、もう、あとは自然に任せよう、と(when to let it be)」
あるところまでくると自分で分かるんです。ああ、もう、あとは自然に任せよう、と(when to let it be)」
St. Josephでは、建物を1つ売却して、あらたに終末期ケア用の施設を作った。
現在40人がアシスティッド・リビングで、他の40人がナーシングホームと認知症ユニットで
ケアを受けている。
現在40人がアシスティッド・リビングで、他の40人がナーシングホームと認知症ユニットで
ケアを受けている。
シスターたちは、希望すれば先端医療を受けることもできるが、
大半は病院でのアグレッシブな治療を望まず、
仲間のシスターたちに見守られて、ここで穏やかな死を迎えている。
最後に誰かが病院で亡くなったのは思い出せないほど前のことだ。
大半は病院でのアグレッシブな治療を望まず、
仲間のシスターたちに見守られて、ここで穏やかな死を迎えている。
最後に誰かが病院で亡くなったのは思い出せないほど前のことだ。
彼女らのプライマリー・ケアを担うのはRochester大学の老年医学の専門医 Dr. Robert C. McCann。
シスターたちとの長い付き合いの中で、
危機的事態に陥る前に長期のケア目標を設定することや、
栄養補給や呼吸器についてどうするか、といった判断など、
病院の集中治療室の忙しさの中では不可能な判断が可能となる。
危機的事態に陥る前に長期のケア目標を設定することや、
栄養補給や呼吸器についてどうするか、といった判断など、
病院の集中治療室の忙しさの中では不可能な判断が可能となる。
より多くの治療をすることが、必ずしも、より良い治療ではないという姿勢、
より少なく行うことが、却って、より多くを行うことになる(less is more)ホスピスの理念が
ここでは病院に比べて受け入れられやすい。
それが、より良い選択に繋がっていく。
より少なく行うことが、却って、より多くを行うことになる(less is more)ホスピスの理念が
ここでは病院に比べて受け入れられやすい。
それが、より良い選択に繋がっていく。
病院で見るよりも、彼女たちの方が良い死を迎えているのは、
哲学と流れに任せる姿勢(happenstance)のコンビネーションによるものだろうと、Dr. McCann。
哲学と流れに任せる姿勢(happenstance)のコンビネーションによるものだろうと、Dr. McCann。
シスターたちは信仰によって実存的な苦しみを免れているので、
苦しみも抑うつも少なく、終末期に使用する麻薬の量が通常の3分の1ほどでよい、という。
苦しみも抑うつも少なく、終末期に使用する麻薬の量が通常の3分の1ほどでよい、という。
また、彼女らが高度な教育を受けていること、
引退後にも、積極的に活動を続けていることも影響している。
あるシスターはホームレスを支援する法律事務所を設立。
刑務所で初の女性チャプレンとして活躍した人もいる。
90代のあるシスターはアルツハイマー病の70代のシスターを見舞うことが日課だ。
引退後にも、積極的に活動を続けていることも影響している。
あるシスターはホームレスを支援する法律事務所を設立。
刑務所で初の女性チャプレンとして活躍した人もいる。
90代のあるシスターはアルツハイマー病の70代のシスターを見舞うことが日課だ。
人と人との大きなネットワーク。
知的刺激。
人生やスピリチュアルな信念と関わり続けること。
知的刺激。
人生やスピリチュアルな信念と関わり続けること。
サクセスフル・エイジングと穏やかな死のために必要だと
数々の研究が挙げるファクターがここには全て揃っている。
数々の研究が挙げるファクターがここには全て揃っている。
McCann医師は、病院から直接修道院にやってくると、
両者のあまりの違いに頭がくらくらすることがあるという。
病院や集中治療室では、死は苦しく、非人間的になることがあり、無意味に高価でもある。
ここでは、人々に一番大切なものに焦点を絞って、
無用なものをちゃんと見分けることができるのに、と。
両者のあまりの違いに頭がくらくらすることがあるという。
病院や集中治療室では、死は苦しく、非人間的になることがあり、無意味に高価でもある。
ここでは、人々に一番大切なものに焦点を絞って、
無用なものをちゃんと見分けることができるのに、と。
Stanford大学のthe Center on Longevityのディレクターである Laura L. Carstensen氏は
終末期医療の政策議論になると、すぐに安楽死か、それとも年齢で線引きした配給医療かと
2者択一で語られる傾向があるが、St. Josephの実践は反省材料になる、という。
終末期医療の政策議論になると、すぐに安楽死か、それとも年齢で線引きした配給医療かと
2者択一で語られる傾向があるが、St. Josephの実践は反省材料になる、という。
「生きさせるために全ての手を尽くすか、さもなければ路上で野垂れ死にか」みたいな
アメリカ的「白か黒か」の発想をやめて、もっと丁寧な議論をするヒントがここにある、と。
アメリカ的「白か黒か」の発想をやめて、もっと丁寧な議論をするヒントがここにある、と。
日本にも、仏教ホスピス「ビハーラ」の取り組みがある。
重症児の母親として体験した医療の中で、
どうして、この人たちは、いつも私たち親子の正面に立つのだろう、
なぜ正面の高いところから見下ろしながら、私たちに対峙するのだろう、
なぜ、傍らに、同じ方向を向いて、一緒に立ってくれないのだろう……と
いつも感じてきた寂しさに、応えてくれる医療がそこにあったからだろうと思う。
どうして、この人たちは、いつも私たち親子の正面に立つのだろう、
なぜ正面の高いところから見下ろしながら、私たちに対峙するのだろう、
なぜ、傍らに、同じ方向を向いて、一緒に立ってくれないのだろう……と
いつも感じてきた寂しさに、応えてくれる医療がそこにあったからだろうと思う。
上記記事の中で、St. Josephの修道院長さんの言葉がとても印象的で
「私たちは生にも死にも同じ姿勢で臨んでいます。洞察というアプローチで」
「私たちは生にも死にも同じ姿勢で臨んでいます。洞察というアプローチで」
7日の記事にmug*il*34さんがコメントで書いてくださった「生き死に」という捉え方。
同時に、思い出したのは、
Pediatrics誌6月号にDiekema、Fost両医師らが書いた成長抑制正当化論文の一説で
Ashleyに知的障害があるからといって侵襲してもいいのか、との批判に対して
Pediatrics誌6月号にDiekema、Fost両医師らが書いた成長抑制正当化論文の一説で
Ashleyに知的障害があるからといって侵襲してもいいのか、との批判に対して
Moreover,”doing nothing” in the situations under discussion cannot be assumed to lead to the best outcomes for these children.
それに、ここで問題になっている状況で「何もしないこと」が
このような子どもたちに最善の結果をもたらすことになるとは思えない。
それに、ここで問題になっている状況で「何もしないこと」が
このような子どもたちに最善の結果をもたらすことになるとは思えない。
「医療で何もしないこと」は、必ずしも「いっさい何もしないこと」ではないし
何か人間にとって役に立つことができるのは
医学を含めた科学とテクノロジーだけだと、思い上がらないでほしい。
医学を含めた科学とテクノロジーだけだと、思い上がらないでほしい。
一般の無知な大衆である私たちのほうも、そろそろ
科学とテクノロジーの可能性という閉じられた世界の中からものを見ている人たちと
同じ言葉で同じところから同じものを見ているような錯覚から抜け出して、
科学とテクノロジーの可能性という閉じられた世界の中からものを見ている人たちと
同じ言葉で同じところから同じものを見ているような錯覚から抜け出して、
本来、私たちがいるところは、もっと広く開けた、もっと豊かな世界なのだということを思い出し、
薄っぺらい論理や”合理”を超えた、もっと深い”洞察力”を取り戻したほうがいいんじゃないだろうか。
薄っぺらい論理や”合理”を超えた、もっと深い”洞察力”を取り戻したほうがいいんじゃないだろうか。
2009.07.10 / Top↑
カナダの議会にも5月に自殺幇助を合法化する法案 C-384 が提出されており、
9月後半に審議の予定だとか。
9月後半に審議の予定だとか。
Francine Lalonde議員が自殺幇助合法化法案を提出するのは
2005年6月、2008年6月に続いて3度目。
2005年6月、2008年6月に続いて3度目。
記事が反対の立場に傾斜して書かれているため(というか記者さんの思いが先走っているため?)、
詳細がイマイチ定かでないのですが、
18歳以上の成人で激しい身体的なまたは精神的な苦痛があり、
治療拒否を表明したり、拒否しようとしたことがある人……?
詳細がイマイチ定かでないのですが、
18歳以上の成人で激しい身体的なまたは精神的な苦痛があり、
治療拒否を表明したり、拒否しようとしたことがある人……?
で、プロ・ライフの立場で反対運動を繰り広げている人たちは、そういう条件では、
ウツ病の18歳が治療を拒否して自殺幇助を求めたら対象になってしまう、と
批判しているらしい。
ウツ病の18歳が治療を拒否して自殺幇助を求めたら対象になってしまう、と
批判しているらしい。
この「治療拒否」というのが、自殺幇助との関連で、どういう文脈なのか、
よく分からない。
よく分からない。
Canadian Parliament Will Debate Bill to Legalize Assisted Suicide in September
LifeNews.com, July 8, 2009
LifeNews.com, July 8, 2009
カナダの医療は案外コワそうだ、とリアルに意識したのは
Kaylee事件からなのですが、
Kaylee事件からなのですが、
実は、同じ子ども病院で、Kaylee事件の直後に、重い障害を持って生まれた新生児が
親の意思を確認する前に薬殺されていた可能性が指摘されています。
親の意思を確認する前に薬殺されていた可能性が指摘されています。
Annie Fallow事件。
ずいぶん前からエントリーを立てようと思いながら
なかなか詳細を確認する作業ができずにいますが、
訴えを続けているAnnieちゃんのお母さんに近い人から個人的に聞いた情報では、
Kayleeちゃん事件に関与していた同じスタッフが
この件にも関わっている、とのこと。
なかなか詳細を確認する作業ができずにいますが、
訴えを続けているAnnieちゃんのお母さんに近い人から個人的に聞いた情報では、
Kayleeちゃん事件に関与していた同じスタッフが
この件にも関わっている、とのこと。
カナダの医療の一部に
「障害のある生は生きるに値しない、したがって医療に値しない」との
価値観・文化が既に存在しているのではないでしょうか。
「障害のある生は生きるに値しない、したがって医療に値しない」との
価値観・文化が既に存在しているのではないでしょうか。
Annie Fallow事件については、近く、まとめようと思っています。
悪くても、夏休みの間に必ずやりたいことの1つ。
悪くても、夏休みの間に必ずやりたいことの1つ。
2009.07.10 / Top↑
Obama政権の医療制度改革議論が本格化して、コスト削減の必要と合わせて終末期医療がいかに高くついているかが喧伝され、それがC&Cによって自殺幇助の議論と結びつけられていくことについて、Wesley Smithが疑念を呈している。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2009/07/07/obamacare-roadmap-under-healthcare-reform-will-we-still-get-to-decide/
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2009/07/07/obamacare-roadmap-under-healthcare-reform-will-we-still-get-to-decide/
モンタナ州が自殺幇助を合法とした裁判所の判断に見直しを求めている件で、裁判所に意見を申し述べる役割を担う中立機関が、7月1日、19の様々な意見the amicus briefs を提出。
http://www.bozemandailychronicle.com/articles/2009/07/09/news/10suicide.txt
http://www.bozemandailychronicle.com/articles/2009/07/09/news/10suicide.txt
またテキサスの施設の問題。アシスティッド・リビング(自立度の高い人向けの入所施設)で、入所者のセックスに関しては職員が干渉しない新ルールを作ったために、他人の目の前での性行為や集団でのセックスが行われることとなり、42歳の女性がレイプされたとして、女性の両親が施設を訴えた。
http://www.patriciaebauer.com/2009/07/08/family-sues-sex/
http://www.patriciaebauer.com/2009/07/08/family-sues-sex/
米国では75年に介護職員をcompanion と規定する裁判所の判断が下されて、介護サービス提供事業者が職員の残業に最低賃金程度しか払わないで済ませる現在の慣行に繋がっている。その見直しがやっと議会に提案された。「介護職に公正な給与を」とNY Timesの社説。
http://news.bbc.co.uk:80/go/em/-/2/hi/health/8140213.stm
http://news.bbc.co.uk:80/go/em/-/2/hi/health/8140213.stm
日本語情報。米国FDAが重度強迫性障害の治療で、電池内蔵式の脳深部刺激装置システムを認可。「人道的理由により承認基準を限定的に免除する医療機器」として初めての認可とのこと。なんて、トンデモヒューマンな……。でも「同システムでOCDが治癒するわけではない。その効果には個人差があり,装置を植え込まれた患者には軽度~中等度の機能障害が依然として残る可能性が高いため,薬物治療も継続する必要がある」って、強迫性障害は機能障害なの? 「機能障害が残る」んじゃなくて「機能障害が起こる」んでは? いいのか、そういう「人道」で? こういう人道がまかり通り始めたということは、これは、もう米国ではAshley療法の論理も、きわめて人道的ということになるのだろうか。……ヘンだよ。ぜったい。
http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno12/4227/27hp/M42270611.htm
http://www.medical-tribune.co.jp/mtbackno12/4227/27hp/M42270611.htm
2009.07.09 / Top↑
(前のエントリーからの続きです)
その2人のエッセイを受け、
Shakespeareの文章は事実を偽っていると指摘しているのが、米国の Not Dead Yet のStephen Drake 。
Shakespeareの文章は事実を偽っていると指摘しているのが、米国の Not Dead Yet のStephen Drake 。
Shakespeareはここ2年ほど、
たいていの場合「ターミナル」を定義しないまま、
ターミナルな人の自殺幇助の合法化を支持して盛んに発言し、
合法化に反対する障害当事者の活動家や障害者団体を批判しているが、
「Campbellは間違っている」と書いたShakespeareは間違っている。
あまりにも安易な論理と不正確な情報で書かれたエッセイで、
学者としてあまりにも不誠実である。
まず、Dignitasの“サービス”が支払いさえすれば無差別のものだということは
以前から周知の事実だったのであり、ターミナルでない英国人が含まれていたことは
いまさら驚いてみせるような事実ではない。
次に、スイスへ付き添っていった家族が罪に問われていないことが
法の不合理を証明するかのように説いているが、
家族に付き添われてスイスで死んだ人の全てがターミナルだったわけではなく、
その中には、Daniel Jamesの両親も含まれている。
Shakespeareは、ターミナルでない人に付き添っていく行為も
告発の対象外とせよと主張するのか。
そもそも彼の言う「ターミナルな状態」とは?
MS患者や、年齢とともに進行する慢性病の患者では、
どういう状態がターミナルで、どういう状態ならターミナルでないというのか?
しかし、ただの論理展開の戦術ですまないのは
彼がヨーロッパ各国の尊厳死法について事実を述べていないことだ。
オランダ、ベルギー、ルクセンブルクは自殺幇助と安楽死の対象を
ターミナルな病気に限定していない。
そんなことも調べずに書いたとしたら学者として許されることではない。
知っていて、読者をミスリードしているなら、それは知的な不誠実である。
どんな意見を持とうと個人の自由だが、
事実を偽るような不誠実は許されない。
Tom Shakespeare Makes a Less Than Honest Case For Assisted Suicide
NDY Blog, July 8, 2009
たいていの場合「ターミナル」を定義しないまま、
ターミナルな人の自殺幇助の合法化を支持して盛んに発言し、
合法化に反対する障害当事者の活動家や障害者団体を批判しているが、
「Campbellは間違っている」と書いたShakespeareは間違っている。
あまりにも安易な論理と不正確な情報で書かれたエッセイで、
学者としてあまりにも不誠実である。
まず、Dignitasの“サービス”が支払いさえすれば無差別のものだということは
以前から周知の事実だったのであり、ターミナルでない英国人が含まれていたことは
いまさら驚いてみせるような事実ではない。
次に、スイスへ付き添っていった家族が罪に問われていないことが
法の不合理を証明するかのように説いているが、
家族に付き添われてスイスで死んだ人の全てがターミナルだったわけではなく、
その中には、Daniel Jamesの両親も含まれている。
Shakespeareは、ターミナルでない人に付き添っていく行為も
告発の対象外とせよと主張するのか。
そもそも彼の言う「ターミナルな状態」とは?
MS患者や、年齢とともに進行する慢性病の患者では、
どういう状態がターミナルで、どういう状態ならターミナルでないというのか?
しかし、ただの論理展開の戦術ですまないのは
彼がヨーロッパ各国の尊厳死法について事実を述べていないことだ。
オランダ、ベルギー、ルクセンブルクは自殺幇助と安楽死の対象を
ターミナルな病気に限定していない。
そんなことも調べずに書いたとしたら学者として許されることではない。
知っていて、読者をミスリードしているなら、それは知的な不誠実である。
どんな意見を持とうと個人の自由だが、
事実を偽るような不誠実は許されない。
Tom Shakespeare Makes a Less Than Honest Case For Assisted Suicide
NDY Blog, July 8, 2009
私がこの3本を読んで個人的に感じたこと、考えたこととして、
・ CampbellもShakespeareも(特にShakespeareで)、
自分で意思を表現することの難しい障害者のことが頭から抜け落ちている。
自分で意思を表現することの難しい障害者のことが頭から抜け落ちている。
・ここ最近のいつからか、英国の議論はassisted dying に表現が切り替えられている。
(文末に関連エントリーへのリンク)
ここでも2人とも、assisted dying という表現を使っている。
・Campbellのエッセイへの読者コメントのトーンが、いつもながら、ひどい。
(文末に関連エントリーへのリンク)
ここでも2人とも、assisted dying という表現を使っている。
・Campbellのエッセイへの読者コメントのトーンが、いつもながら、ひどい。
「アンタがそう思うのは勝手だけど、だからといって、なぜアンタに
他人の自殺する権利にまで口を出す資格があるのよ」
他人の自殺する権利にまで口を出す資格があるのよ」
「誰も、アンタに死ねとは言ってないだろ。
死にたい人に死ぬ権利があるというだけなんだよ、すっこんでろ」といった
論旨とトーンのものが多い。
死にたい人に死ぬ権利があるというだけなんだよ、すっこんでろ」といった
論旨とトーンのものが多い。
障害者の視点からの社会への異議申し立てに対して、
嫌悪感や反発が露骨になってきている感じがしてならない。
嫌悪感や反発が露骨になってきている感じがしてならない。
でも、考えてみれば、これ、今の日本の臓器移植法改正議論と同じ論理だな、と。
「臓器あげたくないという人にまで提供しろとは言っていない。
したくなければ、したくないと意思表示すればいいだけのこと。
適当なセーフガードがあれば、それで何の問題があるのだ?」
「臓器あげたくないという人にまで提供しろとは言っていない。
したくなければ、したくないと意思表示すればいいだけのこと。
適当なセーフガードがあれば、それで何の問題があるのだ?」
反対している人が言っているのは、個々のケースで起こることだけでなく
そのことが社会の価値観に及ぼす影響まで含めて懸念しているということ、
そのことが社会の価値観に及ぼす影響まで含めて懸念しているということ、
個人の選択権が喧伝されることが個人の選択を超えた社会の圧力となっていくことの懸念を
分からないのか、分かっていて分からないフリをするのか……。
分からないのか、分かっていて分からないフリをするのか……。
・Shakespeareは区別すべきことを区別せず、グズグズのまま議論している。
一番引っかかったのは以下の部分。
As a supporter of disability rights, I back the right of disabled people to have control over the time and manner of their death, so they can avoid unbearable suffering and achieve dignity in dying. Being disabled in itself is no reason to die, but for many of those who have terminal illness, controlling the circumstances of their death becomes very important.
「障害」=「ターミナルな病気」ではないのだから、
この部分だけで、相当な自己矛盾をきたしている。
この部分だけで、相当な自己矛盾をきたしている。
これ以外のところでも、文脈によって
「障害者とターミナルな人」と言ったり、「ターミナルな人」だけに触れていたり、
いったいどういう障害像または病状の人への自殺幇助を合法化しろと言っているのか
はっきりしない。
「障害者とターミナルな人」と言ったり、「ターミナルな人」だけに触れていたり、
いったいどういう障害像または病状の人への自殺幇助を合法化しろと言っているのか
はっきりしない。
しかし、もしも「障害がある人がターミナルになった場合」のみを言っているのであれば、
「ターミナルな人」というだけで、そこに含まれるのだから、
「ターミナルな人」というだけで、そこに含まれるのだから、
わざわざ「障害者とターミナルな人」と両者に触れている以上、彼は
「障害はあるがターミナルではない」人も対象に含めているのだと思う。
「障害はあるがターミナルではない」人も対象に含めているのだと思う。
しかし、その状態で死ぬことに尊厳があるとする彼の主張は、
ターミナルではなくとも「障害のある状態で生きること」には尊厳がないと言い始めている
多くの人の価値観に組することにならないか?
ターミナルではなくとも「障害のある状態で生きること」には尊厳がないと言い始めている
多くの人の価値観に組することにならないか?
もう1つ、この問題で意見が分かれているのは障害者も健常者も同じだと
話を簡単に一般化していいのか、という点。
話を簡単に一般化していいのか、という点。
社会には障害者への差別がない、既に解消されていると考えるのでなければ、
障害者の間でだって意見が分かれているのは健常者の間で分かれているのと同じだ、とは
言えないのでは?
障害者の間でだって意見が分かれているのは健常者の間で分かれているのと同じだ、とは
言えないのでは?
奪われてきたから、それを取り戻すべく主張され獲得されてきた障害者の自己決定権と
死の時期と死に方とを自分で決めてもよいとする死の自己決定権は地続きではなく、
前者の延長上に後者があるわけではないと思う。
死の時期と死に方とを自分で決めてもよいとする死の自己決定権は地続きではなく、
前者の延長上に後者があるわけではないと思う。
結局、Shakespeareの主張は
「障害者にも死の自己決定権を」というよりも
「障害者だからこそ死の自己決定権を」と聞こえて、
「障害者にも死の自己決定権を」というよりも
「障害者だからこそ死の自己決定権を」と聞こえて、
「障害のある生は、社会の姿勢や支援によらず、苦しく生きるに値しない」と
今の英米の社会がじわじわと広げている価値観を裏付けることになるような気がする。
今の英米の社会がじわじわと広げている価値観を裏付けることになるような気がする。
・Stephen Drakeの文章の中に、オランダの障害新生児の安楽死に関する情報が出ています。
ざっと読んだだけでは、よく分からないのですが、
いずれ、ちゃんと読みたいと思うので、メモとして以下にリンクを。
ざっと読んだだけでは、よく分からないのですが、
いずれ、ちゃんと読みたいと思うので、メモとして以下にリンクを。
【関連エントリー】
Tom Shakespeareが「自殺幇助合法化せよ」(2009/3/15)
「自殺幇助」なんと今度は「幇助死」に化けたぞ(2009/6/24)
「死の幇助」とは本来ホスピスケアのことだった?(2009/6/24)
Tom Shakespeareが「自殺幇助合法化せよ」(2009/3/15)
「自殺幇助」なんと今度は「幇助死」に化けたぞ(2009/6/24)
「死の幇助」とは本来ホスピスケアのことだった?(2009/6/24)
2009.07.09 / Top↑
障害者運動の活動家と障害学の学者ら3人による、ここ2日間の論争を
2回のエントリーにて。
2回のエントリーにて。
(概要はいずれも取り急ぎのまとめで、さほど吟味した訳語ではありません)
まず、7日に英国上院で意見陳述を行った障害者運動の活動家で
The Disability Rights Commissionの前チェアマンのJane Campbellが
それに先立って Guardianに寄稿したエッセイ概要。
The Disability Rights Commissionの前チェアマンのJane Campbellが
それに先立って Guardianに寄稿したエッセイ概要。
今回議会に提出されている法改正案では、自殺幇助を認めることが、
あたかも障害のある人とターミナルな病気の人の利益になるかのように言われ、
特にMSと運動神経障害(ALS)の2つのある障害者がその代表であるかのように語られているが、
ごく一部に、そう望む声があるからといって
我々障害者が自殺幇助を望んでいるわけではないことを知ってもらいたい。
障害者にとって何がベストかを社会が勝手に決める時代は終わり、
障害者自身がエンパワし、自分で決めることができるようになった。
2004年にも上院でターミナルな人へ死の幇助法案が審議されたことがあったが、
その時の危機感から Not Dead Yet UK も創設されている。
我々を引き合いに出して自殺幇助を正当化するのはやめて欲しい。
我々はむしろ、そのような主張によって
障害のある人の生は生きるに値しない苦痛に満ちた生であるかのように思われて
慈悲殺の論理が社会に広がっていくことを懸念している。
さらに、医療と介護の経費削減のために最も安上がりでお手軽な解決策のように言われることや
自殺幇助を求める声の中に「家族に介護の負担をかけたくない」という理由が必ず挙げられてことも
懸念の材料となっている。
しかし、本当に、それでいいのか。
この社会は障害者とターミナルな病気の人に本当にそういうメッセージを送ろうとするのか。
Assisted dying: not in our name
Disabled and terminally ill people reject the view that our lives are a tragic burden. We can speak for ourselves – hear us now.
By Jane Campbell, July 7, 2009
あたかも障害のある人とターミナルな病気の人の利益になるかのように言われ、
特にMSと運動神経障害(ALS)の2つのある障害者がその代表であるかのように語られているが、
ごく一部に、そう望む声があるからといって
我々障害者が自殺幇助を望んでいるわけではないことを知ってもらいたい。
障害者にとって何がベストかを社会が勝手に決める時代は終わり、
障害者自身がエンパワし、自分で決めることができるようになった。
2004年にも上院でターミナルな人へ死の幇助法案が審議されたことがあったが、
その時の危機感から Not Dead Yet UK も創設されている。
我々を引き合いに出して自殺幇助を正当化するのはやめて欲しい。
我々はむしろ、そのような主張によって
障害のある人の生は生きるに値しない苦痛に満ちた生であるかのように思われて
慈悲殺の論理が社会に広がっていくことを懸念している。
さらに、医療と介護の経費削減のために最も安上がりでお手軽な解決策のように言われることや
自殺幇助を求める声の中に「家族に介護の負担をかけたくない」という理由が必ず挙げられてことも
懸念の材料となっている。
しかし、本当に、それでいいのか。
この社会は障害者とターミナルな病気の人に本当にそういうメッセージを送ろうとするのか。
Assisted dying: not in our name
Disabled and terminally ill people reject the view that our lives are a tragic burden. We can speak for ourselves – hear us now.
By Jane Campbell, July 7, 2009
Champbellさんが上院で行った意見陳述の内容について書いたDaily Mailの記事はこちら。
このエッセイに対して、
「それは違う。多くの障害者とターミナルな病気の人が幇助死の合法化を望んでいる」と
反論するのはTom Shakespeare。
「それは違う。多くの障害者とターミナルな病気の人が幇助死の合法化を望んでいる」と
反論するのはTom Shakespeare。
現在既に115人もの英国人がスイスのDignitasで自殺幇助を受けていて
彼らに付き添っていった家族や友人が誰も罪に問われていない。
これは、いかなる自殺幇助も違法とする現行法が現実と整合していないことを意味するとの
今回の法案提出の理由は、正当なものである。
しかし、一方でDignitasでは無差別に自殺幇助が行われて
ターミナルでない人まで対象となっている問題を思えば、
今回の法改正は第一歩に過ぎず、さらに幇助死そのものが合法化されなければ
本当の解決にはならない。
ヨーロッパでは合法化する国が相次いでいる。
私は障害者の権利を訴えてきた者として、
耐え難い苦しみを回避し尊厳ある死に方をするために
障害者が自分の死の時と死に方を選択する権利を支持する。
Jane Campbellのような自立生活運動の活動家が
ここで障害者に人生の終わりの選択権を否定するのは矛盾している。
健常者の中でそうであるように、障害者の中でも、この問題で意見は割れているが
調査に見られるようにマジョリティは賛成している。
A chance for dignity in dying
Jane Campbell is wrong. Many terminally ill and disabled people want effective assited dying legislation.
By Tom Shakespeare
The Guardian, July 7, 2009
彼らに付き添っていった家族や友人が誰も罪に問われていない。
これは、いかなる自殺幇助も違法とする現行法が現実と整合していないことを意味するとの
今回の法案提出の理由は、正当なものである。
しかし、一方でDignitasでは無差別に自殺幇助が行われて
ターミナルでない人まで対象となっている問題を思えば、
今回の法改正は第一歩に過ぎず、さらに幇助死そのものが合法化されなければ
本当の解決にはならない。
ヨーロッパでは合法化する国が相次いでいる。
私は障害者の権利を訴えてきた者として、
耐え難い苦しみを回避し尊厳ある死に方をするために
障害者が自分の死の時と死に方を選択する権利を支持する。
Jane Campbellのような自立生活運動の活動家が
ここで障害者に人生の終わりの選択権を否定するのは矛盾している。
健常者の中でそうであるように、障害者の中でも、この問題で意見は割れているが
調査に見られるようにマジョリティは賛成している。
A chance for dignity in dying
Jane Campbell is wrong. Many terminally ill and disabled people want effective assited dying legislation.
By Tom Shakespeare
The Guardian, July 7, 2009
(次のエントリーに続く)
2009.07.09 / Top↑
カリフォルニア州オレンジ郡からのニュース。
Joshua Fry。21歳。
両親はともに薬物中毒者。
8歳で自閉症を診断される。
養家を転々とし、高校では問題行動が目立っていたが、万引きで逮捕され、
心理ケアの必要な青少年の施設に15ヶ月間収容された。
両親はともに薬物中毒者。
8歳で自閉症を診断される。
養家を転々とし、高校では問題行動が目立っていたが、万引きで逮捕され、
心理ケアの必要な青少年の施設に15ヶ月間収容された。
18歳の時に祖母が裁判所に申し立てて法的後見人(? conservator)となった。
グループホームで暮らしていたFryに海軍のリクルーターが接触し、入隊を説得。
祖母はFryの入隊には自分の同意が必要だと主張したがリクルーターに無視されたという。
(リクルーターの接触には気づかなかったとも言っているので、その点ちょっと矛盾も)
祖母はFryの入隊には自分の同意が必要だと主張したがリクルーターに無視されたという。
(リクルーターの接触には気づかなかったとも言っているので、その点ちょっと矛盾も)
2008年1月に海兵隊に入隊。
しかし、ブートキャンプが始まるとFryは
命令に混乱して上官に向かってわめく、
キッチンでピーナツバターを盗もうとして捕まる、
自室に放尿する、訓練の指揮官に逆らう、ひげを剃ろうとしない、
あげく、家に帰ろうとするかのように正門に向かったところを阻止された。
命令に混乱して上官に向かってわめく、
キッチンでピーナツバターを盗もうとして捕まる、
自室に放尿する、訓練の指揮官に逆らう、ひげを剃ろうとしない、
あげく、家に帰ろうとするかのように正門に向かったところを阻止された。
その時になって初めて自分に自閉症があることを上官に明かしたのは
当人にすれば、打ち明ければグループホームに帰してもらえると思ったからだったけれど、
当人にすれば、打ち明ければグループホームに帰してもらえると思ったからだったけれど、
実際には歩兵隊に戻されて訓練を最後までやらされた後に
任務放棄と児童ポルノ所持で逮捕され、現在までほぼ1年間、収監されている。
任務放棄と児童ポルノ所持で逮捕され、現在までほぼ1年間、収監されている。
この先の軍法裁判では自閉症であることを隠して入隊した罪状も加わる模様。
(隠した罪は本人よりもリクルーターにあると思うのだけど?)
(隠した罪は本人よりもリクルーターにあると思うのだけど?)
祖母は「向精神薬を飲んでいるし、双極性障害と診断されたこともあるんです。
監禁状態には耐えられない子なのに」と。
監禁状態には耐えられない子なのに」と。
弁護士は、
もともと本人の症状からすれば法的契約ができないとみなされて
入隊が許可されなかったはずだと主張し、起訴とりさげを求めたが、却下された。
もともと本人の症状からすれば法的契約ができないとみなされて
入隊が許可されなかったはずだと主張し、起訴とりさげを求めたが、却下された。
リクルーターにだまされて入隊させられた人たちの訴訟を扱う弁護士によると、
リクルーターがノルマを達成することが年々厳しくなっている事情で、
以前なら入隊を許可されなかったような人たちが許可されるケースが急増しているとのこと。
リクルーターがノルマを達成することが年々厳しくなっている事情で、
以前なら入隊を許可されなかったような人たちが許可されるケースが急増しているとのこと。
貧しい若者を騙して釣り歩くだけで足りなくなったら、
今度は誘導しやすい障害者がターゲットになる……ということか?
今度は誘導しやすい障害者がターゲットになる……ということか?
なぜか、このニュースを読んで、
7日の厚生労働委員会の脳死・臓器移植法改正の参考人質疑で
A案提出者の立場の参考人である医師から出た言葉が、
妙に生々しく思い出された。
7日の厚生労働委員会の脳死・臓器移植法改正の参考人質疑で
A案提出者の立場の参考人である医師から出た言葉が、
妙に生々しく思い出された。
社会の資源としての臓器──。
この人は臓器移植を推進したい医師として、こんな感覚を持っているらしい。
じゃぁ、これと同じ感覚を政治家がもっていたら、どう言うのだろう。
じゃぁ、これと同じ感覚を政治家がもっていたら、どう言うのだろう。
国家の資源としての国民──?
一部の国民は、ただ抱えているだけだったらコストがかかるばかりで厄介だけど、
資源として有効利用が、できないわけでもない──?
資源として有効利用が、できないわけでもない──?
2009.07.09 / Top↑
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
【再要請】 臓器移植法改悪反対の声を参議院へ!
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
◆わたしたちは「脳死」が「人の死」だとは思いません!
◆脳死判定は絶対的な状態を判定できるものではありません。
◆参院厚生労働委員会で、森岡正博参考人が指摘されたように、「無呼吸テストを厳密に実施した脳死判定で、脳死のこどもの3割以上が長期脳死になっており、2割は100日以上、心臓が動いている」という厳然たる事実があります。
◆「脳死」を「人の死」とされれば、臓器提供以外の場面でも必ず影響があります。
◆「脳死」を「人の死」とされれば、安易な治療差し控えや打ち切り、そして尊厳死へと必ずつながっていきます。難病や重度障害を持って生きることも否定する社会風潮となります。欧米の例が証明しています。
◆命も臓器も本人のものです。本人の意思と家族の意思が同じとは限りません。家族といえども本人にとって最良の代諾者とはなりえません。
◆意思表示の困難な子どもや重度障害のひとたちが拒否できない法律は間違っています。
「欧米の例が証明しています」の部分については、
当ブログがその実例のいくつかを拾っていると思うので、
直接的に臓器移植と関連したものだけ一部をまとめた4月21日のエントリーを以下に再再掲。
当ブログがその実例のいくつかを拾っていると思うので、
直接的に臓器移植と関連したものだけ一部をまとめた4月21日のエントリーを以下に再再掲。
以下、4月21日のエントリーの再掲に、
最後に1つ最近のエントリーへのリンクを追加しました。
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夕方のニュースで日本の脳死・臓器移植法改正の問題が取り上げられていたのを機に、
当ブログ開設からの2年間に取り上げた臓器移植関連の海外ニュースをまとめてみました。
日本ではあまり報道されることはありませんが、
世界では(といっても読んでいるのが英語ニュースなので英米が中心になりますが)
こんなことが起こっている……というのを知った上で考えるのと
知らないままで考えるのとでは、
かなり話は違ってくるのではないかと
夕方のニュースを見ながら思ったので。
【Navarro事件 関連エントリー】
臓器ほしくて障害者の死、早める?
Navarro事件で検察が移植医の有罪を主張(2008/2/28)
臓器移植で「死亡者提供ルール」廃止せよと(2008/3/11)
Navarro事件の移植医に無罪:いよいよ「死亡提供ルール」撤廃へ? (2008/12/19)
【Hannah事件 関連エントリー】
13歳少女、延命効果なくても心臓移植やりたがる医師にNO(英)(2008/11/14)
Hannahの移植拒否報道に思うこと(2008/11/15)
【Kaylee事件 関連エントリー】
心臓病の子の父に「うちの子の心臓を上げる」と約束してヒーローになった重症児の父、呼吸器はずしても生きるわが子に困惑
Kaylee事件について障害者人権アドボケイトからプレスリリース
What Sorts ブログのKaylee事件エントリー
【救済者兄弟 関連エントリー】
救済者兄弟:兄弟への臓器提供のために遺伝子診断と生殖補助技術で生まれる子ども
”救済者兄弟”
英国の”救済者兄弟”事情 追加情報
兄弟間の臓器移植 Pentz講演
臓器目的で子ども作って何が悪い、とFost
「わたしのなかのあなた」から
「わたしのなかのあなた」から 2
「わたしのなかのあなた」から 3
【その他 臓器移植関連エントリー】
臓器移植で「死亡提供者ルール」廃止せよと(2008/3/11)
移植臓器不足は誇張されていた(2008/3/26)
脳死宣告された男性が回復し「気分良好」と(2008/4/3)
死体の闇売買のため障害者を狙って殺害(中国)(2008/9/11)
「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)
心臓を停止から75秒で摘出・移植しているDenver子ども病院(2008/10/14)
ブタの臓器10年後には人間への移植可能に?(2008/11/8)
”息をする死体”に過ぎない植物状態の人は実験利用に、と2006年から(2009/4/16)
「臓器提供に家族の同意得るためには医師はコーディネーター伴って」と(2009/4/22)
「脳死」概念は医学的には誤りだとNorman Fost(2009/6/8)
最後に1つ最近のエントリーへのリンクを追加しました。
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夕方のニュースで日本の脳死・臓器移植法改正の問題が取り上げられていたのを機に、
当ブログ開設からの2年間に取り上げた臓器移植関連の海外ニュースをまとめてみました。
日本ではあまり報道されることはありませんが、
世界では(といっても読んでいるのが英語ニュースなので英米が中心になりますが)
こんなことが起こっている……というのを知った上で考えるのと
知らないままで考えるのとでは、
かなり話は違ってくるのではないかと
夕方のニュースを見ながら思ったので。
【Navarro事件 関連エントリー】
臓器ほしくて障害者の死、早める?
Navarro事件で検察が移植医の有罪を主張(2008/2/28)
臓器移植で「死亡者提供ルール」廃止せよと(2008/3/11)
Navarro事件の移植医に無罪:いよいよ「死亡提供ルール」撤廃へ? (2008/12/19)
【Hannah事件 関連エントリー】
13歳少女、延命効果なくても心臓移植やりたがる医師にNO(英)(2008/11/14)
Hannahの移植拒否報道に思うこと(2008/11/15)
【Kaylee事件 関連エントリー】
心臓病の子の父に「うちの子の心臓を上げる」と約束してヒーローになった重症児の父、呼吸器はずしても生きるわが子に困惑
Kaylee事件について障害者人権アドボケイトからプレスリリース
What Sorts ブログのKaylee事件エントリー
【救済者兄弟 関連エントリー】
救済者兄弟:兄弟への臓器提供のために遺伝子診断と生殖補助技術で生まれる子ども
”救済者兄弟”
英国の”救済者兄弟”事情 追加情報
兄弟間の臓器移植 Pentz講演
臓器目的で子ども作って何が悪い、とFost
「わたしのなかのあなた」から
「わたしのなかのあなた」から 2
「わたしのなかのあなた」から 3
【その他 臓器移植関連エントリー】
臓器移植で「死亡提供者ルール」廃止せよと(2008/3/11)
移植臓器不足は誇張されていた(2008/3/26)
脳死宣告された男性が回復し「気分良好」と(2008/4/3)
死体の闇売買のため障害者を狙って殺害(中国)(2008/9/11)
「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)
心臓を停止から75秒で摘出・移植しているDenver子ども病院(2008/10/14)
ブタの臓器10年後には人間への移植可能に?(2008/11/8)
”息をする死体”に過ぎない植物状態の人は実験利用に、と2006年から(2009/4/16)
「臓器提供に家族の同意得るためには医師はコーディネーター伴って」と(2009/4/22)
「脳死」概念は医学的には誤りだとNorman Fost(2009/6/8)
2009.07.09 / Top↑
(補遺に取り上げる記事は、タイトルとリード部分のみか、
せいぜい最初のページの流し読み程度しか読んでいないものがほとんどになります)
せいぜい最初のページの流し読み程度しか読んでいないものがほとんどになります)
オーストラリアの首都特別区で、スタッフ不足から救急車ステーションがサービスを停止する事態が10ヶ月の間に9回も起こっている。これ、もしかしたら次に日本で起こる事態?
http://www.canberratimes.com.au:80/news/local/news/general/station-closures-plague-ambulance-service/1561736.aspx?src=enews
http://www.canberratimes.com.au:80/news/local/news/general/station-closures-plague-ambulance-service/1561736.aspx?src=enews
4州にまたがってJohns Hopkinsなど複数の病院において男性6人、女性10人を対象とした8方向の腎臓ドミノ移植が成功。Johns Hopkinsが6方向を成功させた去年4月のエントリーがこちら。この時、「次は7方向?」と書いたのだけど、8方向だった。じゃぁ、次は10方向なのかしら。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/07/AR2009070702696.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/07/AR2009070702696.html
黒人で白人よりも癌による死亡率が高いのは、貧しくて同じケアを受けられないからだといわれてきたが、2万人の癌患者を対象に白人にも黒人にも同じケアを受けてもらって比較した研究でも、やはり黒人の死亡率が高かったので、生物学的な理由によるものであるとのエビデンスだと。……一定期間のケアだけを同じにしたからといって、それ以外の社会的な要因がまったく影響していないと断定できるんだろうか……? こういう研究を見ると、医学・科学研究というのは、最初にある目的に沿った仮説が存在して、その上に成り立っているんだなぁ、とつくづく考えてしまう。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/07/AR2009070702252.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/07/AR2009070702252.html
幹細胞から世界初の精子を作ったぞ、不妊男性への光明だぞ、と胸を張って論文発表するNewcastle大の科学者。そんなのができるか、と眉にツバつける他の科学者。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8138963.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8138963.stm
英国もテロの容疑者に拷問を行っていて、その隠蔽をMI5が工作した、とのエビデンスが。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jul/08/mi5-torture-evidence-david-davis
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jul/08/mi5-torture-evidence-david-davis
米国の胚性幹細胞研究への公的助成の新ルールについて、NYTimesの社説。この先、治療的クローニングで作られる可能性のある幹細胞株を利用した研究は対象としないとのルールについて、「当面のところ、米国政府は科学と倫理に関する考え方で国民を引っ張っていくよりも、議会と国民についていくつもりらしい」と。
http://www.nytimes.com/2009/07/08/opinion/08wed3.html?_r=1&th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/07/08/opinion/08wed3.html?_r=1&th&emc=th
マイケル・ジャクソン追悼式が行われている間、利用が集中するWebが果たして機能し続けられるか危ぶまれていたものの、なんとか、もったらしい。
http://bits.blogs.nytimes.com/2009/07/07/the-web-holds-up-during-jacksons-memorial-service/?th&emc=th
http://bits.blogs.nytimes.com/2009/07/07/the-web-holds-up-during-jacksons-memorial-service/?th&emc=th
2009.07.08 / Top↑
――朗報。
かねてフォローしてきたように、
スイスDignitasで自殺を希望しているMS女性 Debby Purdyさんからの訴えを受け
自殺のために身近な人を海外へ連れて行く行為を罪に問わないことを
法律に明記する法改正案が英国議会に提出されていましたが、
7日、上院の投票で否決。
スイスDignitasで自殺を希望しているMS女性 Debby Purdyさんからの訴えを受け
自殺のために身近な人を海外へ連れて行く行為を罪に問わないことを
法律に明記する法改正案が英国議会に提出されていましたが、
7日、上院の投票で否決。
194 対 141 。
本当に、よかった──。
外は大雨だけど、いい日だ、今日は──。
外は大雨だけど、いい日だ、今日は──。
【5月末までの関連の動きをまとめたエントリー】
英国における自殺幇助関連の動き:エントリー一覧(2009/6/1)
【その後の関連エントリー】
Debby PurdyさんのBBCインタビュー(2009/6/2)
自殺法改正案提出 Falconer議員 Timesに(2009/6/3)
MSの教育学者がヘリウム自殺、協力者を逮捕(英)(2009/6/26)
作家 Terry Pratchett ”自殺幇助法案”を支持(2009/7/1)
英国医師会、自殺幇助に関する法改正案支持動議を否決(2009/7/2)
自殺法改正案提出 Falconer議員 Timesに(2009/6/3)
MSの教育学者がヘリウム自殺、協力者を逮捕(英)(2009/6/26)
作家 Terry Pratchett ”自殺幇助法案”を支持(2009/7/1)
英国医師会、自殺幇助に関する法改正案支持動議を否決(2009/7/2)
2009.07.08 / Top↑
Norma McCorvey。36年前、女性の中絶権を認めたRoe vs Wade 裁判の匿名の原告だった女性。今は、なんと、過激なプロ・ライフの活動家。判決の3年前に生まれた子どもは顔を見ることもなく養子に出し、彼女自身には中絶体験はない。ずっと女性の選択権を訴え続け、中絶クリニックで働いていたが、プロ・ライフの運動家と対話を重ねるうちに、だんだんと考えを変えるようになった。現在はプロ・チョイスのObama政権を批判し、最高裁判事候補のSotomayor氏の任命阻止活動をしている。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2009/jul/07/norma-mccorvey-abortion-america
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2009/jul/07/norma-mccorvey-abortion-america
米国の死産関連記事。死産・早産撲滅はシアトル子ども病院とゲイツ財団のワールドヘルスに掲げる目標。彼らが動き始めてから、関連の研究論文が増えているような気がする。関連ニュース記事も増えると思っていた。いずれ読む。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/06/AR2009070602918.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/06/AR2009070602918.html
米国連邦政府が昨日、ES細胞研究への公的資金提供の条件を緩和。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/06/AR2009070602076.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/06/AR2009070602076.html
先週出ていたアセトアミノフェンに長期服用リスクというFDAの諮問機関の警告に、規定どおりの量を飲んでる分には別に危ないわけじゃない、と。
http://www.nytimes.com/2009/07/07/health/07well.html?_r=1&th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/07/07/health/07well.html?_r=1&th&emc=th
英国警察のトップにウラ給与が支払われていたことが判明。私学の学費や妻の車など。英国では国会議員の経費流用が問題になってBrown首相があわや退陣に追い込まれそうになったばかり。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article6653377.ece?&EMC-Bltn=AEJGZA
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article6653377.ece?&EMC-Bltn=AEJGZA
葬儀社がウラで遺体にいかに酷い扱いをしているかをメディアに暴露した職員が首になった。この社員の写真に写っている葬儀社の車に大きく Dignity(尊厳)と書いてあるのが目を引く。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/06/AR2009070602767.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/07/06/AR2009070602767.html
一人暮らしの中年は、後々、認知症を発症するリスクが、結婚していたり同居人がある人の倍だとか。
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/156375.php
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/156375.php
オーストラリアの14歳の3割がメタボで、大人になってから心臓病、糖尿病、脳卒中を発症するリスク。
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/156467.php
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/156467.php
2009.07.07 / Top↑