以下、まだ全然、掘り下げられていなくて、
ただの思いつき程度の内容なのですが、
とりあえず自分自身のメモとして書いておきたいので。
ただの思いつき程度の内容なのですが、
とりあえず自分自身のメモとして書いておきたいので。
社会で男性と対等の権利を手に入れることを重視するあまり
会社で男と同じだけ働いて、家に帰っても、また働かなければならない状況が作られたり、
会社で男と同じだけ働いて、家に帰っても、また働かなければならない状況が作られたり、
離婚の際の親権をめぐる男親と女親との評価においても
全く同じ条件で比較されることが平等だということになって
却ってシングル・マザーに非常に不利な状況が作られてしまったり、
全く同じ条件で比較されることが平等だということになって
却ってシングル・マザーに非常に不利な状況が作られてしまったり、
平等を求めたはずが、あまりにも政治的な正しさとしてジェンダー中立性にこだわったあまり
回りまわって不平等を後押ししてしまったじゃないか…・・・ということのようだったのですが、
回りまわって不平等を後押ししてしまったじゃないか…・・・ということのようだったのですが、
ふっと思い出したのが、Tom Shakespeareの
「健常者には認められる“死の自己決定権”が障害者には認められないというのはおかしい。
障害者にも健常者と同じように“死の自己決定権”が認められて然り」という論理。
「健常者には認められる“死の自己決定権”が障害者には認められないというのはおかしい。
障害者にも健常者と同じように“死の自己決定権”が認められて然り」という論理。
これ、読んだ時から、ずうっと引っかかっていて
自分がどういう理屈でこれを否定しようとするのか、
たびたび考えてみようとしては、いまいち整理できていないのだけど、
自分がどういう理屈でこれを否定しようとするのか、
たびたび考えてみようとしては、いまいち整理できていないのだけど、
Shakespeareはここで、
フェミニズムのジェンダー中立性重視の轍を踏んでいる、とは言えないかなぁ……。
フェミニズムのジェンダー中立性重視の轍を踏んでいる、とは言えないかなぁ……。
障害者が“生きる権利”において差別され、不利益をこうむっている事実を
女性が家庭において差別され、不利益をこうむっている事実と並べてみたら、
女性が家庭において差別され、不利益をこうむっている事実と並べてみたら、
社会での男女平等だけを求めすぎたために、
家庭での差別はそのまま温存されて、社会での悪平等を引きかぶることになった
フェミニズムの失敗と同じように、
家庭での差別はそのまま温存されて、社会での悪平等を引きかぶることになった
フェミニズムの失敗と同じように、
“生きる権利”における差別と不利益は温存されたまま
政治的正しさとしての“死ぬ権利”での平等を求めても、それは結局、
生きることにおいても死ぬことにおいても障害者が差別され、
さらなる不平等と不利益をこうむることにしか繋がらないんじゃないだろうか。
政治的正しさとしての“死ぬ権利”での平等を求めても、それは結局、
生きることにおいても死ぬことにおいても障害者が差別され、
さらなる不平等と不利益をこうむることにしか繋がらないんじゃないだろうか。
【Shakespeare関連エントリー】
ShakespeareのAshley療法批判(1月 Ouch!)(2007/12/14)
Tom Shakespeareが「自殺幇助合法化せよ」(2009/3/15)
Campbell/Shakespeare・Drake:障害当事者による自殺幇助論争 1(2009/7/9)
Campbell/Shakespeare・Drake:障害当事者による自殺幇助論争 2(2009/7/9)
ダウン症スクリーニングでShakespeare「技術開発と同じ資金を情報提供に」(2009/11/10)
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Tom Shakespeareが「自殺幇助合法化せよ」(2009/3/15)
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ダウン症スクリーニングでShakespeare「技術開発と同じ資金を情報提供に」(2009/11/10)
2010.01.19 / Top↑
Googleのサイトが中国で攻撃された件で、数日前にMicrosoftがInternet Exploreのぜい弱性が狙われたことを認めていたけれど、それを受けてドイツ政府がネット・ユーザーにIE以外のブラウザを使うように求めた。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8463516.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8463516.stm
「中国は我が国のコンピューターをハッキングしようとした」という話もインドから。
http://timesonline-emails.co.uk/go.asp?/bTNL001/mPJTGA2F/qZSK7A2F/uM9ZZ6/xCMORB2F
http://timesonline-emails.co.uk/go.asp?/bTNL001/mPJTGA2F/qZSK7A2F/uM9ZZ6/xCMORB2F
なぜ男は売春婦を買うのか。総勢700人の男性にインタビューして、その中から103人分をまとめた(?)研究報告。:記事も報告書も最初のところを見ただけなので、人数の解釈は違うかもしれません。報告書は記事タイトルの下のリンクから読めます。
http://www.guardian.co.uk/society/2010/jan/15/why-men-use-prostitutes
http://www.guardian.co.uk/society/2010/jan/15/why-men-use-prostitutes
認知症が進行した70歳以上の女性に、そのほかの女性よりも高い割合でマンモグラフ検査が行われている、との調査結果。:最近、この手の調査報告が多い。病院の利益だけを念頭に、どうせメディケアだからと不要な検査が行われているとしたら、それは確かに患者にとっても利益よりも害の方が大きいだろうし、確かに医療費の無駄遣いだろうとは思うけど。こういう調査がやたらと目につくと、ちょっと、いろいろ勘繰りたくなってくる……。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/176177.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/176177.php
スーザン・サランドン、63歳。最近、離婚したそうな。「ラブリー・ボーン」のプロモと思しきインタビュー記事。:この人、存在感があって大好きなのだけど、次回作になるのか、Kevorkian医師の半生を描いた映画についてのコメント(1月16日の補遺)に、ちょっと抵抗を覚えている。
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2010/jan/17/susan-sarandon-the-lovely-bones
http://www.guardian.co.uk/lifeandstyle/2010/jan/17/susan-sarandon-the-lovely-bones
2010.01.18 / Top↑
Thomas Inglisさん(22歳)は2007年7月に酒の上の喧嘩で怪我をし、
病院に運ばれる途中に救急車から飛び降りて(落ちて?)脳に損傷を負い、
生命維持装置と24時間の介護が必要な身となった。
病院に運ばれる途中に救急車から飛び降りて(落ちて?)脳に損傷を負い、
生命維持装置と24時間の介護が必要な身となった。
脳圧を下げる手術の後で改善傾向も見られていたし
医師も回復すると説明したのだけれど、
母親の Frances Anne Inglis(57歳)は信じようとせず、
インターネットで息子の状態について調べたのち、
悲観的な考えに取りつかれてしまった。
医師も回復すると説明したのだけれど、
母親の Frances Anne Inglis(57歳)は信じようとせず、
インターネットで息子の状態について調べたのち、
悲観的な考えに取りつかれてしまった。
そして事故の10日後には
近所の人に「悲惨な状態を終わらせてやるために」
息子を殺すので純度の高いヘロインがほしい、と話したという。
(本人は、かっとして、つい口走っただけだと主張)
近所の人に「悲惨な状態を終わらせてやるために」
息子を殺すので純度の高いヘロインがほしい、と話したという。
(本人は、かっとして、つい口走っただけだと主張)
その後、Thomasの症状は改善し、目を開けたり手足を動かせるようになったが
9月、彼の入所先のナーシングホームを訪れた母親は
職員が目を離した隙にヘロインを打ったとみられ、
Thomasは急変し呼吸が停止した。
9月、彼の入所先のナーシングホームを訪れた母親は
職員が目を離した隙にヘロインを打ったとみられ、
Thomasは急変し呼吸が停止した。
ナースが気づいて蘇生は成功したが、
その4日後に母親は「あの人たち、どうかしているんじゃない?
なんで、あのまま死なせてやらないのよ?」と言ったとのこと。
その4日後に母親は「あの人たち、どうかしているんじゃない?
なんで、あのまま死なせてやらないのよ?」と言ったとのこと。
またインターネットでも議論に参加して
「私の息子を生きさせておくことの倫理性」について云々し
「想像を絶する苦しみから息子を解放してやるために
オーバードースになる量のヘロインを与えました」と語ったともいわれる。
「私の息子を生きさせておくことの倫理性」について云々し
「想像を絶する苦しみから息子を解放してやるために
オーバードースになる量のヘロインを与えました」と語ったともいわれる。
裁判で有罪を認めることを前提に保釈となり、判決を待っていた08年11月、
Thomasが移された別のナーシング・ホームでは
スタッフに顔写真を配って母親への警戒を徹底していたが、
Thomasが移された別のナーシング・ホームでは
スタッフに顔写真を配って母親への警戒を徹底していたが、
叔母になりすまして入り込んだ母親は、
ヘロインを注射して息子を殺した。
ヘロインを注射して息子を殺した。
気付いたナースが部屋に入ろうとすると酸素ボンベでドアを封鎖。
ついにスタッフが押し入ると、
「そのままにしといてよ、バカ。
私がせっかく殺したんだから、生き返らせないで。
この子は、やっと楽になったんだから」と叫んだ。
ついにスタッフが押し入ると、
「そのままにしといてよ、バカ。
私がせっかく殺したんだから、生き返らせないで。
この子は、やっと楽になったんだから」と叫んだ。
Thomasの遺体からは致死量のヘロインが検出された。
母親は殺人も、殺人未遂も否定している。
母親は殺人も、殺人未遂も否定している。
Mother ‘injected brain-damaged son with fatal dose of heroin to end misery’
The Daily Telegraph, January 5, 2010
The Daily Telegraph, January 5, 2010
障害のある娘を殺した父親が「慈悲殺」を主張し続けている
カナダのLatimer事件を思わせる英国の事件として
Wesley Smith が自分のブログで取り上げています。
カナダのLatimer事件を思わせる英国の事件として
Wesley Smith が自分のブログで取り上げています。
この母親は明らかに常軌を逸しているのだけど、そういうことよりも何よりも、
どうして誰も、このニュースに驚かないのだ?
どうして誰も、このニュースに驚かないのだ?
……というのが、Smith のエントリーの趣旨――。
――そう。
Ashley事件の翌年、
英国でKatie Thorpeの母親が「うちの子にも」と子宮摘出を望んだ時
もはや誰も衝撃を受けないことに、私は大きな衝撃を受けた。
(詳細は「英国のKatieのケース」の書庫に)
英国でKatie Thorpeの母親が「うちの子にも」と子宮摘出を望んだ時
もはや誰も衝撃を受けないことに、私は大きな衝撃を受けた。
(詳細は「英国のKatieのケース」の書庫に)
Smithが書いているのは、つまりは、そういうことですね。
実際の議論の内容や行方よりも、
議論があることそのものによって、人々は
「死の自己決定権」、「治療は無益」といった概念や(「成長抑制」も?)
「障害を負うくらいなら死んだ方がまし」「障害のある生は苦しすぎて生きるに値しない」
などの考え方に、少しずつ馴染み、違和感を薄れさせていく――。
議論があることそのものによって、人々は
「死の自己決定権」、「治療は無益」といった概念や(「成長抑制」も?)
「障害を負うくらいなら死んだ方がまし」「障害のある生は苦しすぎて生きるに値しない」
などの考え方に、少しずつ馴染み、違和感を薄れさせていく――。
【Latimer事件関連エントリー】
母親による障害児殺し起訴同日かつての障害児殺しの父親Latimer釈放(2008/3/7)
Latimer事件についてHendersonが批判(2008/3/10)
重症児の娘殺したLatimer「裁判所は正直に」と(2008/3/29)
母親による障害児殺し起訴同日かつての障害児殺しの父親Latimer釈放(2008/3/7)
Latimer事件についてHendersonが批判(2008/3/10)
重症児の娘殺したLatimer「裁判所は正直に」と(2008/3/29)
2010.01.18 / Top↑
自殺幇助合法化の動きとの闘いで第一線に立ち続けているWesley Smithが
16日、Vermont州Montpelieでのプロ・ライフ派の集会で講演。
集まったのは約400人。
16日、Vermont州Montpelieでのプロ・ライフ派の集会で講演。
集まったのは約400人。
「自殺幇助の議論とは、実際は文化の変容の話だ。
我々がお互いを人間として見る見方に大きく影響するのだから」
我々がお互いを人間として見る見方に大きく影響するのだから」
「人間の苦しみへの解決策として
人工的な手段で命を終わらせることは許容の範囲だということに一旦なってしまうと、
その範囲が、どうしてターミナルな病人で終わるだろう?」
人工的な手段で命を終わらせることは許容の範囲だということに一旦なってしまうと、
その範囲が、どうしてターミナルな病人で終わるだろう?」
「オランダの医師らは、患者が望むなら、ターミナルな病人の安楽死にとどまらず
慢性病の病人の安楽死へ、さらに障害のある人たちの安楽死へと進んできた。
あげく実存的な苦悩をいう人の自殺幇助まで許容している」
慢性病の病人の安楽死へ、さらに障害のある人たちの安楽死へと進んできた。
あげく実存的な苦悩をいう人の自殺幇助まで許容している」
Smithは
2人の子どもを失った苦しみが耐えがたいといって
医師による自殺ほう助で死んだオランダの女性のケースを紹介し、
それをもオランダの最高裁は認めた、と。
2人の子どもを失った苦しみが耐えがたいといって
医師による自殺ほう助で死んだオランダの女性のケースを紹介し、
それをもオランダの最高裁は認めた、と。
オランダの最高裁は『苦しみは苦しみなのだから死んでもいい』と言ったわけだけれど、
子どもを失ったから自殺するというのが許される解決策なら、
もっと大きな苦しみで死にたいという人を止める方法などない。
実存的な苦悩以上の苦悩など恐らくないのだから」
子どもを失ったから自殺するというのが許される解決策なら、
もっと大きな苦しみで死にたいという人を止める方法などない。
実存的な苦悩以上の苦悩など恐らくないのだから」
「自殺幇助とコストは無関係だと考える人がいるなら、
Oregonで既に起こっていることを見てごらん、と言いたい」とも。
Oregonで既に起こっていることを見てごらん、と言いたい」とも。
集会を開いたのは、これまで中絶反対で毎年集会を行ってきたプロ・ライフの団体で
妊娠中の女性が交通事故で亡くなったとしたら、
事故を起こした過失のある側は、胎児の分まで殺人罪に問われて然りと主張してきた。
事故を起こした過失のある側は、胎児の分まで殺人罪に問われて然りと主張してきた。
初めて集会のテーマを中絶反対から自殺幇助合法化反対にシフトした。
中絶なにがなんでも反対のプロ・ライフと
自殺幇助合法化反対のプロ・ライフが重なるのは分からないことはないのですが、
自殺幇助合法化反対のプロ・ライフが重なるのは分からないことはないのですが、
この2つは必ずしも、重なる必要があるとも思わないし、
リベラルだから、どう、保守だから、どう……とは、もはや単純化できないような気がする。
リベラルだから、どう、保守だから、どう……とは、もはや単純化できないような気がする。
2010.01.17 / Top↑
Kevorkian医師の半生を描いた映画 “You Don’t Know Jack”この春に封切り。同医師を演じたアル・パチーノと共演のスーザン・サランドンらのインタビュー(会見?)。
http://latimesblogs.latimes.com/showtracker/2010/01/tca-press-tour-al-pacino-takes-on-dr-death-for-hbo-.html
http://latimesblogs.latimes.com/showtracker/2010/01/tca-press-tour-al-pacino-takes-on-dr-death-for-hbo-.html
米・医療ジャーナリストの自殺幇助合法化すべり坂懸念。すべり坂懸念はずっと出ているものと変わらないけど、現在の医療制度改革との関連も触れられている。
http://www.energypublisher.com/article.asp?id=25420
http://www.energypublisher.com/article.asp?id=25420
米国の医療制度改革は結局、高齢者の医療アクセスを制限する結果となる、と高齢者アドボケイトが懸念を表明。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175894.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175894.php
サリドマイド被害から50年たって、やっと英国政府が被害者に謝罪、2000万ポンドの賠償を約束。
http://www.guardian.co.uk/society/2010/jan/14/thalidomide-apology-government
http://www.guardian.co.uk/society/2010/jan/14/thalidomide-apology-government
電子たばこの輸入をめぐって、深刻な健康被害の懸念があるとして規制しようとするFDAと、嗜好品を薬物扱いして権力行使の範囲拡大を狙っているとそれを批判する裁判所の論戦。判決はFDAの負け。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/14/AR2010011402995.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/14/AR2010011402995.html
豚インフルの陰謀説で、WHOが製薬会社との癒着を否定する会見。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/14/AR2010011401784.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/14/AR2010011401784.html
マラリアの治療薬開発に有望な植物が研究されているが、作ったら儲かる仕組みを農家へのインセンティブにして生産量を上げよう、と。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8454721.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8454721.stm
相変わらずウォール街の大銀行では、幹部たちに経済危機前と同じ規模のメガ・ボーナスが支払われているそうな。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/14/AR2010011404621.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/14/AR2010011404621.html
一方、黒人の失業率は17%越え。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/14/AR2010011404085.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/14/AR2010011404085.html
看護学生の間で喫煙率が一般よりも高い。対策の必要を言う声。:看護師さんって、以外にたばこを吸う人が多いよね、というのは前から、何となく感じていた。いろいろストレスが多いんだよね……とも思っていた。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175958.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175958.php
カルト集団を作り、17人の女性に少なくとも40人の子どもを産ませていたユダヤ人の“メシア”をイスラエルの警察が逮捕。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jan/14/goel-ratzon-harem-police-arrest
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jan/14/goel-ratzon-harem-police-arrest
罪を犯して矯正施設に入れられる未成年が、その施設内部で虐待やレイプの被害者となっている。米。
http://www.nytimes.com/2010/01/15/opinion/15fri3.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2010/01/15/opinion/15fri3.html?th&emc=th
2010.01.16 / Top↑
The Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatryに発表された
2000年から2007年のデータによる研究で、
2000年から2007年のデータによる研究で、
米国で双極性障害と診断されて強い抗精神病薬を処方される2―5歳児の数が
この10年で倍増していることが明らかに。
この10年で倍増していることが明らかに。
2007年のデータでは、
民間の医療保険に入っている2―5歳児の1,5%(子ども70人に1人)が
なんらかの精神科薬を投与された。
民間の医療保険に入っている2―5歳児の1,5%(子ども70人に1人)が
なんらかの精神科薬を投与された。
双極性障害と診断された2―5歳児は
約半数がZyprexa, Seroquel, Risperdal など抗精神病薬を処方されており、
2歳児の3000人に1人が処方されている計算となる。
約半数がZyprexa, Seroquel, Risperdal など抗精神病薬を処方されており、
2歳児の3000人に1人が処方されている計算となる。
「親あるいは親子を対象に他の介入を試してみた後でなら、
これらの薬にも出番があるかもしれないが、
請求記録を調べると、そういう処方の仕方にはなっていない」と
報告書をまとめたColumbia大学の臨床精神科教授 Mark Olfson氏。
これらの薬にも出番があるかもしれないが、
請求記録を調べると、そういう処方の仕方にはなっていない」と
報告書をまとめたColumbia大学の臨床精神科教授 Mark Olfson氏。
この問題は時々指摘されていますが、そのたびに出てくるように、この記事でも
幼児の双極性障害の診断件数を40倍に増やした人物として
Biederman医師とそのスキャンダルが触れられています。
幼児の双極性障害の診断件数を40倍に増やした人物として
Biederman医師とそのスキャンダルが触れられています。
ところで、
この問題では、近くボストンで始まる裁判が注目を集めているようです。
この問題では、近くボストンで始まる裁判が注目を集めているようです。
2006年に4歳のRebecca Rileyちゃんが安定剤のオーバードースで死亡。
両親が殺人罪に問われている。
両親が殺人罪に問われている。
Rebeccaちゃんは2歳半の時に児童精神科医の Kayoko Kifuji 氏から
双極性障害とADHDを診断されて、Depakote、clonidine という強い薬を複数処方された。
(severalとあるのが、この2種のことなのか、この2種を含む数種類なのかは???)
双極性障害とADHDを診断されて、Depakote、clonidine という強い薬を複数処方された。
(severalとあるのが、この2種のことなのか、この2種を含む数種類なのかは???)
陪審員も州の医療免許委員会も既に
医師の行為には問題はなかったと判断。
医師の行為には問題はなかったと判断。
検察の主張は、両親が娘を落ち着かせるために意図的に薬を過剰に飲ませたというもの。
夫婦は、医師の指示に従っただけで、娘の死因は肺炎だと主張。
夫婦は、医師の指示に従っただけで、娘の死因は肺炎だと主張。
Rebeccaちゃんの事件によって
「幼児に双極性障害を診断することが可能なのかどうか、
また強い薬を処方することが賢明なのかどうか
精神科医の間での論争にスポットライトが当たっている」と記事には書いてあるのですが、
「幼児に双極性障害を診断することが可能なのかどうか、
また強い薬を処方することが賢明なのかどうか
精神科医の間での論争にスポットライトが当たっている」と記事には書いてあるのですが、
でも、この裁判の争点は医師の診断と処方の妥当性ではなくて、
医師が処方した薬を親が医師の指示通りに飲ませたかどうか、なんですよね……。
医師が処方した薬を親が医師の指示通りに飲ませたかどうか、なんですよね……。
その時々の児童精神科医療の知見やエビデンスに基づいた標準的な医療を行っている限りにおいて
現場の医師に過失があるとは言えない……ということなのだろうと思うのですが、
(それなればこそBiederman医師の行為は患者だけでなく現場医師への裏切りでは……と思うのですが)
この裁判については、詳細が分からないので、今のところ何とも言えません。
現場の医師に過失があるとは言えない……ということなのだろうと思うのですが、
(それなればこそBiederman医師の行為は患者だけでなく現場医師への裏切りでは……と思うのですが)
この裁判については、詳細が分からないので、今のところ何とも言えません。
ここで調べてみるほどの余裕はないので、また続報が出てきた時に。
2010.01.16 / Top↑
モンタナ州最高裁の合法判決を受け、
自殺幇助合法化に反対運動を続けてきたthe Montana Family Foundation などは
議会による法的禁止を求めていく、と表明。
自殺幇助合法化に反対運動を続けてきたthe Montana Family Foundation などは
議会による法的禁止を求めていく、と表明。
一方、FENの会長(?)Jerry Dincinは
今回の判決は米国人を「21世紀の最後の人権」に近付けたと評価しつつも
余命6カ月でターミナルと診断された、自己決定能力のある人にしか認められていない点が
まだ不十分だとし、今後も「死ぬ権利」を求めて闘いを続ける、と。
今回の判決は米国人を「21世紀の最後の人権」に近付けたと評価しつつも
余命6カ月でターミナルと診断された、自己決定能力のある人にしか認められていない点が
まだ不十分だとし、今後も「死ぬ権利」を求めて闘いを続ける、と。
Opponents Vow To Challenge Montana’s Legalization of Euthanasia
Personal Liberty News Desk, January 15, 2010
Personal Liberty News Desk, January 15, 2010
その混同を起こしているのは一体どっちなんだよっ、と
ムカついたものですが、
ムカついたものですが、
Montanaの判決への反応を見ても、
ターミナルな患者とその他の人たちとの間の区別を取っ払いたがっているのは
「死ぬ権利」を主張する側であることが明らか。
ターミナルな患者とその他の人たちとの間の区別を取っ払いたがっているのは
「死ぬ権利」を主張する側であることが明らか。
【関連エントリー】
裁判所が自殺幇助認めたものの、やってくれる医師がいない?(MT州)(2009/4/6)
合法とされたMT州で自殺幇助受けられず子宮がん患者が死亡(2009/6/18)
自殺幇助を州憲法で認められたプライバシー権とするか、2日からモンタナ最高裁(2009/9/1)
モンタナ州最高裁、医師による自殺幇助は合法と判断(2010/1/2)
MT州最高裁の判決文をちょっとだけ読んでみた(2010/1/5)
合法化判決出ても医師ら自殺ほう助の手続きに慎重(2010/1/11)
裁判所が自殺幇助認めたものの、やってくれる医師がいない?(MT州)(2009/4/6)
合法とされたMT州で自殺幇助受けられず子宮がん患者が死亡(2009/6/18)
自殺幇助を州憲法で認められたプライバシー権とするか、2日からモンタナ最高裁(2009/9/1)
モンタナ州最高裁、医師による自殺幇助は合法と判断(2010/1/2)
MT州最高裁の判決文をちょっとだけ読んでみた(2010/1/5)
合法化判決出ても医師ら自殺ほう助の手続きに慎重(2010/1/11)
2010.01.16 / Top↑
こうした考察を経て、では、どういう規制が望ましいのか、について
Dr. Qはだいたい、以下のような提言をしています。
Dr. Qはだいたい、以下のような提言をしています。
障害者に健常者と同じ医療を保障するADA(米国障害者法)違反となるので
これらの医療介入それ自体を法律で禁じることはできない。
そこで、やはり第三者の検討モデルを導入し、
親以外の第三者が本人の利益を代理するという方法をとり、
なおかつ親の提案が承認されるための明確な基準が作られるのがよいのではないか。
第三者の検討で親の要望が許容される条件としては、たとえば
1.その介入が子どもの最善の利益にかなう
2.より侵襲度の低い選択肢では目的を達せられない
3.介入のリスクが非治療的研究で許される最小限のリスクを超えない
4.子どもが成人するまで待てない
5.同じ目的を達成する一時的な解決策がない
障害者アドボケイトへの通知、本人のアドボケイトの任命
倫理委の検討、裁判所の同意などに触れた
WPASと子ども病院との合意をモデルとして議論をスタートしてはどうか。
これらの医療介入それ自体を法律で禁じることはできない。
そこで、やはり第三者の検討モデルを導入し、
親以外の第三者が本人の利益を代理するという方法をとり、
なおかつ親の提案が承認されるための明確な基準が作られるのがよいのではないか。
第三者の検討で親の要望が許容される条件としては、たとえば
1.その介入が子どもの最善の利益にかなう
2.より侵襲度の低い選択肢では目的を達せられない
3.介入のリスクが非治療的研究で許される最小限のリスクを超えない
4.子どもが成人するまで待てない
5.同じ目的を達成する一時的な解決策がない
障害者アドボケイトへの通知、本人のアドボケイトの任命
倫理委の検討、裁判所の同意などに触れた
WPASと子ども病院との合意をモデルとして議論をスタートしてはどうか。
ところで、
この論文の冒頭にある事件のまとめは詳細で
この複雑な事件と論争の全貌を、なるべく手近に知りたい方にはお勧めですが、
いくつかQuellette論文の事実誤認を指摘しておくと、
・部外者を含めた病院の通常の倫理委が検討したと誤解している
(実際は部外者を除外した「特別倫理委」だった)
・「その倫理委には利益の衝突がなかった」と誤解して書いている
(もしAshleyの父親がMicrosoftの役員だったら衝突があるというのが当ブログの指摘)
・ホルモン療法の期間が1年だったと誤解している
(「1年ちょっと」は06年論文のウソで、実際は2年半)
・医師らの論文と親のブログの内容の祖語に気付いていない
・WPASとの合意を病院が遵守していないことに気づいていない
(実際は部外者を除外した「特別倫理委」だった)
・「その倫理委には利益の衝突がなかった」と誤解して書いている
(もしAshleyの父親がMicrosoftの役員だったら衝突があるというのが当ブログの指摘)
・ホルモン療法の期間が1年だったと誤解している
(「1年ちょっと」は06年論文のウソで、実際は2年半)
・医師らの論文と親のブログの内容の祖語に気付いていない
・WPASとの合意を病院が遵守していないことに気づいていない
一か所だけ、思わず「ぶははっ」と吹いてしまった箇所があって、
それは、このケースでは親に虐待の意図がなかったことは
倫理委の検討を求めていることからも明らかだと書いた下りで、
「この親なら倫理委が承認しなかったら、その不承認に従ったであろう」と書いてあること。
それは、このケースでは親に虐待の意図がなかったことは
倫理委の検討を求めていることからも明らかだと書いた下りで、
「この親なら倫理委が承認しなかったら、その不承認に従ったであろう」と書いてあること。
――いえいえ。それは違います。
そんな生易しい親ではなかったからこそ、
病院は特別倫理委員会を招集して、冒頭で父親当人にプレゼンまでさせ、
「ほら、親が誰なのか、よく見てからモノを言え」と、関係職員にプレッシャーをかけ
批判・反論を封じなければならなかったんじゃないでしょうか?
病院は特別倫理委員会を招集して、冒頭で父親当人にプレゼンまでさせ、
「ほら、親が誰なのか、よく見てからモノを言え」と、関係職員にプレッシャーをかけ
批判・反論を封じなければならなかったんじゃないでしょうか?
Ashleyの主治医だった発達小児科医のDr. CowenがSalonの取材に対して
「あなた方は間違っていると、この家族に向かって言うなんて不可能でした」と
(たぶん言外に「この家族に」の部分に傍点をつけて)証言したように。
「あなた方は間違っていると、この家族に向かって言うなんて不可能でした」と
(たぶん言外に「この家族に」の部分に傍点をつけて)証言したように。
倫理委での検討を親が謙虚に求めたわけではなくて、
(あの父親の性格からして「私に自分で説明させろ」と言った可能性はあるでしょうが
もともと倫理委検討の必要の判断をするのは患者サイドではなく医師サイドでしょう)
(あの父親の性格からして「私に自分で説明させろ」と言った可能性はあるでしょうが
もともと倫理委検討の必要の判断をするのは患者サイドではなく医師サイドでしょう)
あの特別倫理委に限って言えば、
職員からの批判・反対を封じるための場として
(2年も表に出なかったことを思うと、かん口令を敷くための場としても?)
病院にとってこそ必要だったんじゃないかと私は思うし、
職員からの批判・反対を封じるための場として
(2年も表に出なかったことを思うと、かん口令を敷くための場としても?)
病院にとってこそ必要だったんじゃないかと私は思うし、
だから、最初から承認という結論ありきで
「承認しなかったら」という仮定はありえないだろうとも思うのですが、
「承認しなかったら」という仮定はありえないだろうとも思うのですが、
でも、もし、あの特別倫理委が「やっぱり無理です。できません」と回答していたら、
いったい、どういうことになっていたんだろう……。
いったい、どういうことになっていたんだろう……。
今、Diekema、Fost両医師が議論にもならない奇怪なヘリクツをこねまわしてでも
何が何でも”Ashley療法”の流布を目指し、せっせと奮闘している背景に思いを致すと、
まさか、Ashley父がおとなしく「その不承認に従った」とも思えないのですが……。
何が何でも”Ashley療法”の流布を目指し、せっせと奮闘している背景に思いを致すと、
まさか、Ashley父がおとなしく「その不承認に従った」とも思えないのですが……。
とても読みごたえのある論文でした。
改めて、科学とテクノロジーの飛躍的な発展のおかげで
これまでできなかったことができるようになり、
それにつれて変貌する価値観によって
人類が長い時間をかけて知恵を絞り、法律や文化を通じて
よりよい社会を作るために積み重ねてきた営為が脅かされていること、
これまでできなかったことができるようになり、
それにつれて変貌する価値観によって
人類が長い時間をかけて知恵を絞り、法律や文化を通じて
よりよい社会を作るために積み重ねてきた営為が脅かされていること、
まさに、その脅威を挟んで
2つの生命倫理の潮流が対峙していることを感じました。。
2つの生命倫理の潮流が対峙していることを感じました。。
Ashley事件は、やはり、ただ重症児一人の問題ではなく、
また“Ashley療法”だけの問題でも、障害児・者だけの問題でもなく、
むしろ、そうした今の時代を象徴して、
また“Ashley療法”だけの問題でも、障害児・者だけの問題でもなく、
むしろ、そうした今の時代を象徴して、
「無益な治療」論や「死の自己決定権」にまで通底していく事件なのだと
当ブログが当初から直感してきたことは、やはり図星だったなぁ……と改めて痛感。
当ブログが当初から直感してきたことは、やはり図星だったなぁ……と改めて痛感。
実は2007年の春頃に、
Ashley事件を日本でも広く知ってもらいたいと考えて、
ある出版社に企画を持ち込んだことがありました。
Ashley事件を日本でも広く知ってもらいたいと考えて、
ある出版社に企画を持ち込んだことがありました。
その時の出版社の返答は「所詮は海の向こうの話に過ぎない」という、つれないものでした。
でも、その後の数年間で、日本社会の空気の中にも、
「どうせ障害児・者」「どうせ高齢者」「どうせ自立できない怠け者」と
人への敬意を値引きする空気は着実に広がってきたし、
「どうせ障害児・者」「どうせ高齢者」「どうせ自立できない怠け者」と
人への敬意を値引きする空気は着実に広がってきたし、
フクヤマのいう our human essence は
日本でもじわじわと浸食され始めているのではないでしょうか。
日本でもじわじわと浸食され始めているのではないでしょうか。
2010.01.15 / Top↑
前段で、Dr. Quelletteは、
重症児への医療介入を家族のプライバシーだとする主張について
以下のような問題点を挙げましたが、
重症児への医療介入を家族のプライバシーだとする主張について
以下のような問題点を挙げましたが、
1.Ashleyに行われた介入セットを州が法律で規制することは可能か。
2.Ashley事件の記録から、規制が必要だと考えられるか。
3.もし必要だとすれば、どのような規制が妥当なのか。
2.Ashley事件の記録から、規制が必要だと考えられるか。
3.もし必要だとすれば、どのような規制が妥当なのか。
著者はここで改めて
州はどのような理念で親の決定権の規制を正当化しているか、を振り返ります。
そして「親の決定権を規制すべき根拠となる懸念のすべてがAshleyケースには存在する」と書きます。
州はどのような理念で親の決定権の規制を正当化しているか、を振り返ります。
そして「親の決定権を規制すべき根拠となる懸念のすべてがAshleyケースには存在する」と書きます。
All of the concerns that have justified limitations on parental decisionmaking in past cases were present in Ashley’s case.
医療上の必要もなしに医療介入が行われたこと。
ホルモン療法は本人の正常な成長を阻害したこと。
Ashleyは子宮と乳房を失い、ホルモン療法の結果は今後ずっと背負っていくこと。
Ashleyには現実の害が生じたし、Ashleyに行われた介入には
自分の意思でない人体事件や臓器提供の場合と同様の重大なリスクがあったこと。
ホルモン療法は本人の正常な成長を阻害したこと。
Ashleyは子宮と乳房を失い、ホルモン療法の結果は今後ずっと背負っていくこと。
Ashleyには現実の害が生じたし、Ashleyに行われた介入には
自分の意思でない人体事件や臓器提供の場合と同様の重大なリスクがあったこと。
それらの意味でAshleyに行われた介入セットは
「女性の性器切除にすら匹敵する」とまで著者は言うのです。
「女性の性器切除にすら匹敵する」とまで著者は言うのです。
また親の利益がAshley本人の利益と混同されていること。
さらに、当該ケースには当てはまらないにせよ、
親の決定権モデルをデフォルト扱いした今回の検討プロセスが前例となると
過去に繰り返されてきた障害児・者への虐待が起こる可能性もある。
さらに、当該ケースには当てはまらないにせよ、
親の決定権モデルをデフォルト扱いした今回の検討プロセスが前例となると
過去に繰り返されてきた障害児・者への虐待が起こる可能性もある。
これらによって、
現在の法規制が「当てはまらない」から親の決定権で、という解釈では
すまないことになるわけです。
現在の法規制が「当てはまらない」から親の決定権で、という解釈では
すまないことになるわけです。
The absence of a medical need for intervention, the permanent nature of change in the child, the unknowable risks of untested interventions, the parents’ conflict of interest, and the obvious potential for abuse change the equation entirely.
圧巻なのは、ここからの数ページ。
これまで抑えてきたものが堰を切ったかのように、手厳しく、
Ashley事件での倫理委の検討の姿勢とプロセスを批判します。
これまで抑えてきたものが堰を切ったかのように、手厳しく、
Ashley事件での倫理委の検討の姿勢とプロセスを批判します。
特に236ページから始まる長い段落で「誰も……した者がいない」と繰り返される非難は
力がこもり、静かな憤りが一文一文を押し出すかのようで、胸が熱くなりました。
力がこもり、静かな憤りが一文一文を押し出すかのようで、胸が熱くなりました。
この事件に興味のある方は、ぜひ原文を読んでみてください。
重症児の体の一部を切除することなど大したことではないとした倫理委の姿勢に対する
冷静な、しかし熱く、厳とした糾弾です。
冷静な、しかし熱く、厳とした糾弾です。
体の一部をもぎ取られることが、その人本人に与える
一見それとはわかりにくいかもしれないけれど、手ひどいダメージ。
(インターセックスの子どもたちが受けさせられる「性器の正常化」を例にとり
そのダメージは研究されて文献がある、とも、それらが親や健常者には
理解されにくいことも当事者らがちゃんと示してきたではないか、とも)
一見それとはわかりにくいかもしれないけれど、手ひどいダメージ。
(インターセックスの子どもたちが受けさせられる「性器の正常化」を例にとり
そのダメージは研究されて文献がある、とも、それらが親や健常者には
理解されにくいことも当事者らがちゃんと示してきたではないか、とも)
そして、身を守るすべを持たない弱者を管理するために身体改造をしようとする姿勢が
社会に与える重大な影響。
社会に与える重大な影響。
フランシス・フクヤマが”the sum of human unity and continuity”と定義し、
“our human essence”と呼んだものを、侵す行為だと指摘したものが誰もいない、と。
“our human essence”と呼んだものを、侵す行為だと指摘したものが誰もいない、と。
(私はここが特に印象的で、Tan論文で当ブログが考えたことに重なるように感じました。)
つまり、ここで言われていることは
法や障害者運動が社会を変えるために積み重ねてきたことの
その歴史性に逆行するほどの影響の大きさを言った者が倫理委に誰もいない、との非難と
私は理解しました。
法や障害者運動が社会を変えるために積み重ねてきたことの
その歴史性に逆行するほどの影響の大きさを言った者が倫理委に誰もいない、との非難と
私は理解しました。
また、これまでにも言われてきたことではありますが、
もっと具体的な検討手順への批判として、
もっと具体的な検討手順への批判として、
・侵襲度の低い選択肢が検討されていない。
・Ashley本人のアドボケケイトがいない。
・利益対リスク検討のアンバランス。
・Ashley本人のアドボケケイトがいない。
・利益対リスク検討のアンバランス。
特に利益対リスクについては、
医療外の目的を謳って社会的な利益を取り上げつつ、
リスクは医療行為の範囲内のみに焦点を当て、社会的リスクを無視している、と。
医療外の目的を謳って社会的な利益を取り上げつつ、
リスクは医療行為の範囲内のみに焦点を当て、社会的リスクを無視している、と。
これらの社会的リスクや害は、
Ashleyの立場だけを代理するアドボケイトがいたら指摘していたはずだと主張します。
Ashleyの立場だけを代理するアドボケイトがいたら指摘していたはずだと主張します。
それらの害として、
Future caregivers, peers, and acquaintances might react more negatively to an unnaturally stunted woman than to a full-grown woman with disabilities.
……the interventions would expose Ashley to what disability activists view as dehumanizing manipulation.
The specter of indignity and attendant moral harm
……Ashley suffered the moral harm that results when a person is denied full human respect.
……the interventions would expose Ashley to what disability activists view as dehumanizing manipulation.
The specter of indignity and attendant moral harm
……Ashley suffered the moral harm that results when a person is denied full human respect.
簡単に私自身の言葉でまとめると、
「障害のない人ならやっちゃいけないけど、この人はどうせ障害者だから」と
体に手を加えるなど、人としての敬意を値引きする姿勢が、また周囲の人の
「どうせ、そういうことをしてもいい人だから」という敬意の値引きにつながる。
それこそがAshleyが被る「道徳上の害」だ、ということでしょう。
(著者はこういう書き方はしていませんが)
「障害のない人ならやっちゃいけないけど、この人はどうせ障害者だから」と
体に手を加えるなど、人としての敬意を値引きする姿勢が、また周囲の人の
「どうせ、そういうことをしてもいい人だから」という敬意の値引きにつながる。
それこそがAshleyが被る「道徳上の害」だ、ということでしょう。
(著者はこういう書き方はしていませんが)
そして、そのような道徳上の害をこそ、
歴史の中で障害者はこうむってきたのであり、
だからこそ、Ashleyケースはまぎれもなく障害者事件なのであり、
だからこそ、こんないい加減な検討を許さない明確なガイドラインが必要なのだ、
というふうに論理が展開して、結論へと向かいます。
歴史の中で障害者はこうむってきたのであり、
だからこそ、Ashleyケースはまぎれもなく障害者事件なのであり、
だからこそ、こんないい加減な検討を許さない明確なガイドラインが必要なのだ、
というふうに論理が展開して、結論へと向かいます。
(次のエントリーに続く)
2010.01.15 / Top↑
Quelletteが事件の概要をまとめた後で展開する、
親の決定権をめぐる現在の法律の考え方の整理はおおむね以下の通り。
親の決定権をめぐる現在の法律の考え方の整理はおおむね以下の通り。
子どもの医療に関する親の決定権は
合衆国憲法修正第14条のDue Process(しかるべきプロセス)条項で保護されており、
一部の例外を除き、親には子どものために最善の決定をする能力があることを前提に
国家の介入を受けない家族のプライベートな領域とされる。
合衆国憲法修正第14条のDue Process(しかるべきプロセス)条項で保護されており、
一部の例外を除き、親には子どものために最善の決定をする能力があることを前提に
国家の介入を受けない家族のプライベートな領域とされる。
そのような親の決定権を制約する例外には3つのモデルがあり、
1.子どもの選択(子どもがmature minor "成熟した未成年"とみなされる場合)
2.法的に禁止された医療介入(女性器切除)
3.虐待・親子の利害の相克がありうる医療介入
a.不妊手術を受けさせる、または人体実験に参加させる決定
b.兄弟への臓器提供をさせる決定
2.法的に禁止された医療介入(女性器切除)
3.虐待・親子の利害の相克がありうる医療介入
a.不妊手術を受けさせる、または人体実験に参加させる決定
b.兄弟への臓器提供をさせる決定
3のカテゴリーの介入に対する規制は州ごとに細かい点では違っているものの
基本事項は共通していて、
基本事項は共通していて、
1.介入実施前に、親の決定について第三者が検討すること
(特に未成年への不妊手術についてはWA州を含む多くの州が裁判所の介入を求める。)
2.その第三者が親の決定に同意する条件が決められていること
(特に未成年への不妊手術についてはWA州を含む多くの州が裁判所の介入を求める。)
2.その第三者が親の決定に同意する条件が決められていること
このような第三者の検討が必要な例外は
優生政策、障害児・者に行われた非倫理的な研究など過去の出来事の反省に基づくもの。
優生政策、障害児・者に行われた非倫理的な研究など過去の出来事の反省に基づくもの。
次に著者は、こうした法規制をAshleyケースにあてはめてみます。
そして、
3つのモデルの最初の2つはAshleyケースには当てはまらない、
3つ目のモデルでも、子宮摘出では第三者の検討が必要かもしれないものの
成長抑制、乳房摘出、盲腸摘出は不妊手術でも実験でも臓器提供でもないから
当てはまらない、というのです。
3つのモデルの最初の2つはAshleyケースには当てはまらない、
3つ目のモデルでも、子宮摘出では第三者の検討が必要かもしれないものの
成長抑制、乳房摘出、盲腸摘出は不妊手術でも実験でも臓器提供でもないから
当てはまらない、というのです。
私は、この点、
そういう医療技術の応用に前例がないから法律が対応していないだけでは? と思うし、
そういう医療技術の応用に前例がないから法律が対応していないだけでは? と思うし、
著者は、子宮摘出についても、
親の弁護士の解釈に触れて、目的が不妊そのものでない場合にまで
裁判所の命令が必要なのかどうかは、まだ議論の余地がある、と言います。
親の弁護士の解釈に触れて、目的が不妊そのものでない場合にまで
裁判所の命令が必要なのかどうかは、まだ議論の余地がある、と言います。
ただ、この論理展開は、どうやら
今後でてくる可能性のあるケースへの懸念を
リアルに示すために著者が敢えて仕組んだワザのようでもあり、
今後でてくる可能性のあるケースへの懸念を
リアルに示すために著者が敢えて仕組んだワザのようでもあり、
すなわち、現状では、このような解釈が可能である以上、
今後「うちの子にも」と手を挙げる親に対して
子ども病院と同じように親の決定権モデルが適用される危険性があることを
著者はこうして提示して見せた……というわけでしょう。
今後「うちの子にも」と手を挙げる親に対して
子ども病院と同じように親の決定権モデルが適用される危険性があることを
著者はこうして提示して見せた……というわけでしょう。
では、そうした状況を踏まえ、
Ashleyのような重症児の“治療”は家族のプライバシーだとする主張には
どのような問題があるのか。
Ashleyのような重症児の“治療”は家族のプライバシーだとする主張には
どのような問題があるのか。
著者は以下の3点を挙げています。
1.Ashleyに行われた介入セットを州が法律で規制することは可能か。
2.Ashley事件の記録から、規制が必要だと考えられるか。
3.もし必要だとすれば、どのような規制が妥当なのか。
2.Ashley事件の記録から、規制が必要だと考えられるか。
3.もし必要だとすれば、どのような規制が妥当なのか。
(次のエントリーに続く)
2010.01.15 / Top↑
おととい、こちらのエントリーで触れた
AJOBのDiekema&Fost論文については、
コメンタリーの募集で公開された掲載前のバージョン全文を読み、
当ブログでも6つのエントリーでいくつかの指摘をしています。
(文末にリンク。ただし指摘できるマヤカシは、この他にも山のようにあります)
AJOBのDiekema&Fost論文については、
コメンタリーの募集で公開された掲載前のバージョン全文を読み、
当ブログでも6つのエントリーでいくつかの指摘をしています。
(文末にリンク。ただし指摘できるマヤカシは、この他にも山のようにあります)
このDiekema&Fost論文で、著者らが最も論駁できずにいたのが
今回もコメンタリーを書いているAlicia R. Quellette の以下の批判論文(2008)。
今回もコメンタリーを書いているAlicia R. Quellette の以下の批判論文(2008)。
Growth Attenuation, Parental Choice, and the Rights of Disabled Children: Lessons from the Ashley X Case
Alicia R. Quellette, J. D.
8 Houston Journal of Health Law & Policy 207-24
Alicia R. Quellette, J. D.
8 Houston Journal of Health Law & Policy 207-24
著者はAlbany Law Schoolの準教授で
Union Graduate College/Mt. Sinal School of Medicine Program in Bioethicsの生命倫理の教授。
Union Graduate College/Mt. Sinal School of Medicine Program in Bioethicsの生命倫理の教授。
この論文、実はもうかなり長いこと手元にあって、
読まなければと思いながら、ずっと先延ばしになっていたので、
コメンタリーで名前を見たのを機に、引っ張り出して読んでみました。
読まなければと思いながら、ずっと先延ばしになっていたので、
コメンタリーで名前を見たのを機に、引っ張り出して読んでみました。
全体の論旨をごく簡単にまとめると、
現在、Ashleyに行われた医療介入に対する明確な法的な規制はなく、
このままでは将来的にも子どもの医療に関する親の決定権の範疇に入ってしまいかねないが、
介入の侵襲度の高さやリスク、障害児の権利の侵害や虐待の可能性に鑑みれば、
Ashley事件での倫理委の意思決定プロセスの欠陥こそが教訓とされて
一定の規制とガイドラインがあるべきだ。
ガイドラインとしては、
Seattle 子ども病院とWPASとの合意内容を基本モデルとしてはどうか。
このままでは将来的にも子どもの医療に関する親の決定権の範疇に入ってしまいかねないが、
介入の侵襲度の高さやリスク、障害児の権利の侵害や虐待の可能性に鑑みれば、
Ashley事件での倫理委の意思決定プロセスの欠陥こそが教訓とされて
一定の規制とガイドラインがあるべきだ。
ガイドラインとしては、
Seattle 子ども病院とWPASとの合意内容を基本モデルとしてはどうか。
この論文の一番大きな意義は、Ashleyケースでの倫理委の検討プロセスについて
法学・生命倫理学者が明確に deficient (欠陥がある)と結論したこと。
そして、それを論拠に明確な規制の必要を説いたことではないでしょうか。
法学・生命倫理学者が明確に deficient (欠陥がある)と結論したこと。
そして、それを論拠に明確な規制の必要を説いたことではないでしょうか。
子どもの医療をめぐる親の決定権とその制約についての
米国の法律的な考え方が非常によくまとめられているので
内容をいくつかのエントリーに分けて、ちょっと詳しくまとめてみます。
米国の法律的な考え方が非常によくまとめられているので
内容をいくつかのエントリーに分けて、ちょっと詳しくまとめてみます。
まずQuelletteも、Ashley論文の常として最初に事件の概要をまとめていますが、
これが非常に詳細です。
これが非常に詳細です。
特に、医師らの論文とメディアでの発言などから倫理委の検討についての説明を拾い、
利益と害を比較検討したら利益が上回ると結論付けたという
Diekema医師らが主張するところの「倫理委での検討過程」をなぞり
逐一確認している部分は、これまでの批判論文で誰もやっていない作業です。
利益と害を比較検討したら利益が上回ると結論付けたという
Diekema医師らが主張するところの「倫理委での検討過程」をなぞり
逐一確認している部分は、これまでの批判論文で誰もやっていない作業です。
その後、障害当事者らから出てきた批判の論点を取りまとめた後で、
著者は子どもの医療に関する親の決定権をめぐる現在の法律的な考え方を整理します。
著者は子どもの医療に関する親の決定権をめぐる現在の法律的な考え方を整理します。
(次のエントリーに続く)
【Diekema&FostのAJOB論文に関するエントリー】
Diekema医師が今更のようにAshley論文書いて批判に反駁(2009/10/1)
Diekema&Fost論文を読む 1:倫理委に関する新事実(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 2:ホルモン療法の期間を修正(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 3:政治的判断を否定(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 4:窮鼠の反撃? 証明責任の転嫁(2009/11/2)
Diekema&Fost論文を読む 5:「だから、ちゃんと検討したんだってば」(2009/11/3)
Diekema&Fost論文を読む 6:司法の否定(2009/11/3)
Diekema医師が今更のようにAshley論文書いて批判に反駁(2009/10/1)
Diekema&Fost論文を読む 1:倫理委に関する新事実(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 2:ホルモン療法の期間を修正(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 3:政治的判断を否定(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 4:窮鼠の反撃? 証明責任の転嫁(2009/11/2)
Diekema&Fost論文を読む 5:「だから、ちゃんと検討したんだってば」(2009/11/3)
Diekema&Fost論文を読む 6:司法の否定(2009/11/3)
2010.01.15 / Top↑
日本のマスコミについては、日ごろから、
ある種類の海外ニュースについては報道しないなぁ……という不思議を感じていて、
ある種類の海外ニュースについては報道しないなぁ……という不思議を感じていて、
たとえば、大晦日の米国モンタナ州の自殺幇助合法化なども、
現在、厚労省で終末期医療のあり方について懇談会が議論している最中でもあり、
日本でも報道されてしかるべき大ニュースだと私は思ったのですが、
どうやら共同通信が地味な記事を打ったのみだったようす。
現在、厚労省で終末期医療のあり方について懇談会が議論している最中でもあり、
日本でも報道されてしかるべき大ニュースだと私は思ったのですが、
どうやら共同通信が地味な記事を打ったのみだったようす。
(私自身は検索しても、この共同通信の記事すら見つけられなくて
人に教えてもらって知ったので、まだ気づいていない記事もあるのかもしれませんが
それほど地味だったことは間違いないでしょう)
人に教えてもらって知ったので、まだ気づいていない記事もあるのかもしれませんが
それほど地味だったことは間違いないでしょう)
なんだか、やっぱり……なぁ……というのを引きずっていたところ、
昨夜なんとなく見た深夜のZEROというニュース番組で、
小沢氏の後援会事務所の土地購入資金問題で、何とも不可解な解説を聞いて言葉を失った。
昨夜なんとなく見た深夜のZEROというニュース番組で、
小沢氏の後援会事務所の土地購入資金問題で、何とも不可解な解説を聞いて言葉を失った。
昨日の強制捜査など一連の出来事を報じるVTRが終わってカメラがスタジオに戻った際に、
キャスターの男性が「なぜこの問題に我々国民が注目しておく必要があるかというと……」と
フリップをとりだした。
キャスターの男性が「なぜこの問題に我々国民が注目しておく必要があるかというと……」と
フリップをとりだした。
真中に描かれたゼネコンを挟んで、右側に政治家、左側に国民が描かれている。
そして、ゼネコンから政治家に札束が1つ。
国民からゼネコンに札束が4つ、それぞれ渡っていく矢印。
そして、ゼネコンから政治家に札束が1つ。
国民からゼネコンに札束が4つ、それぞれ渡っていく矢印。
そこで、「これは仮定の話ですが、もしもこういうことが行われていたとしたら」と
前置きしたうえで、キャスターの男性がフリップを使って行った解説は
だいたい、以下のような内容。
前置きしたうえで、キャスターの男性がフリップを使って行った解説は
だいたい、以下のような内容。
ゼネコンが何かの仕事を請け負ってやる時には、
その代金は、このように(4つの札束を指す)我々国民の税金で支払われます。
ところが、その陰で、
もしも便宜を図ってもらう目的でゼネコンから政治家にお金が渡されていたとしたら、
そこでゼネコンが使ったお金は、こちらの代金に跳ね返るわけです。
つまり、こちらで政治家に渡った、この金額分が(札束1つを指す)なかったら、
国民がゼネコンに支払う金額も、このように(一番上の札束に赤でバッテンがつく)
その金額分、少なくて済んだことになり、
その金額分を例えば福祉などに使うことができたはずなのです。
しかし、お金がゼネコンから政治家に渡ったために
国民は払わなくてもいい余分な税金をゼネコンに払うことになり、
福祉には使えなくなってしまったのです。
このように、これは税金の私的流用ということになるので、
我々としては、重大な関心を持って眺めていく必要があるのです。
その代金は、このように(4つの札束を指す)我々国民の税金で支払われます。
ところが、その陰で、
もしも便宜を図ってもらう目的でゼネコンから政治家にお金が渡されていたとしたら、
そこでゼネコンが使ったお金は、こちらの代金に跳ね返るわけです。
つまり、こちらで政治家に渡った、この金額分が(札束1つを指す)なかったら、
国民がゼネコンに支払う金額も、このように(一番上の札束に赤でバッテンがつく)
その金額分、少なくて済んだことになり、
その金額分を例えば福祉などに使うことができたはずなのです。
しかし、お金がゼネコンから政治家に渡ったために
国民は払わなくてもいい余分な税金をゼネコンに払うことになり、
福祉には使えなくなってしまったのです。
このように、これは税金の私的流用ということになるので、
我々としては、重大な関心を持って眺めていく必要があるのです。
もちろん、贈収賄が回りまわって国民の税金の無駄遣いにつながる構図そのものを
否定するつもりはありません。
否定するつもりはありません。
しかし「これは税金の私的流用ということになるので」と言うのは、
解説として、あまりにも不正確ではないでしょうか。
解説として、あまりにも不正確ではないでしょうか。
本当に「収賄」と「税金の私的流用」の区別ができない人物が記事を書いたのか。
それをそのまま読むキャスターも、疑問に思わないほど鈍いのか。
それをそのまま読むキャスターも、疑問に思わないほど鈍いのか。
それとも、
回りまわって国民の税金を余分に使わせることになったのだから、
わいろを受け取った政治家が私的に使う目的で直接的に国民の税金に手をつけたも同然だし、
“同然”である以上「収賄とは、すなわち税金の私的流用」なのだと解釈したとでも?
回りまわって国民の税金を余分に使わせることになったのだから、
わいろを受け取った政治家が私的に使う目的で直接的に国民の税金に手をつけたも同然だし、
“同然”である以上「収賄とは、すなわち税金の私的流用」なのだと解釈したとでも?
まさか「収賄」とするよりも「税金の私的流用」という方が、
いかにも自分の私利私欲で政治家が公金に手をつけたかのように
直接的な視聴者の憤りを掻き立てることができて面白いとでも?
いかにも自分の私利私欲で政治家が公金に手をつけたかのように
直接的な視聴者の憤りを掻き立てることができて面白いとでも?
考えてみれば、そのほかにも不思議はいくつもあって、
先の総選挙前の西松建設問題の際も、
検察の強引な動き方の怪や先走った報道の怪が指摘されていたような気がするけど、
先の総選挙前の西松建設問題の際も、
検察の強引な動き方の怪や先走った報道の怪が指摘されていたような気がするけど、
いまだ捜査段階で事実関係が確認されていない事柄に対しては
以前のメディアは、もう少し慎重に言葉を選んで、
言うならば「推定無罪」原則にのっとって報道していたのでは?
以前のメディアは、もう少し慎重に言葉を選んで、
言うならば「推定無罪」原則にのっとって報道していたのでは?
いつから、こんなふうに「仮定の話ですが、もしも行われていたとしたら」と
その事実があったかのように先走った、しかも不正確な解説をして
(図や写真の使用は無意識の潜入感植え付けにつながりやすいと思う)
国民の一定の感情を誘導するような報道をするようになったのか。
その事実があったかのように先走った、しかも不正確な解説をして
(図や写真の使用は無意識の潜入感植え付けにつながりやすいと思う)
国民の一定の感情を誘導するような報道をするようになったのか。
そして、とても耳についた、ことさらな「福祉」の繰り返し。
「本来なら福祉に使えるはずの国民の税金がこんなに無駄にされていること」への怒りなら
他にも言及すべき対象はたくさんあるはずなのだけど、
この番組はそれらについても「福祉に使えたはず」を
いちいち連発しているのかしら。
他にも言及すべき対象はたくさんあるはずなのだけど、
この番組はそれらについても「福祉に使えたはず」を
いちいち連発しているのかしら。
メディアの不正確な解説で煽られた国民感情が一定のところまで行くと、
その国民感情によって、なんとなく事実であったかのような幻想が先行して、そのうち、
それが事実であったかどうかすら意味がなくなってしまうんじゃないか……というような
そんな不気味を感じると同時に、
その国民感情によって、なんとなく事実であったかのような幻想が先行して、そのうち、
それが事実であったかどうかすら意味がなくなってしまうんじゃないか……というような
そんな不気味を感じると同時に、
このところ、ずっと考えているAshley事件の背景とも思い合わせて、
誰かの意図がメディアの報道姿勢や内容に影響を与えるということが
(私はA事件で一番恐ろしいのは“知っている”CNNが黙したことだと考えています)
彼の地だけでなく、もしかしたら我が国でも現に起こっている可能性について
あれこれと考えていたら、
誰かの意図がメディアの報道姿勢や内容に影響を与えるということが
(私はA事件で一番恐ろしいのは“知っている”CNNが黙したことだと考えています)
彼の地だけでなく、もしかしたら我が国でも現に起こっている可能性について
あれこれと考えていたら、
いったい、この世の中は、これからどうなっていくんだろう……と
ちょっと呆然となってしまった。
ちょっと呆然となってしまった。
2010.01.15 / Top↑
これ、余裕があったら改めて読みたいのだけど、英国政府が「尊厳大使」にトークショーのホストMichael Parkinson氏を任命。尊厳ある介護への啓発活動の一環。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175749.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175749.php
FDAが警告をつけることで高齢者への抗精神病薬の処方は減少してはいるものの、はたして警告システムのあり方は効果的なのか、との指摘。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175696.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175696.php
アルベルタ大学の研究者が小児を対象とした北米のさまざまな臨床実験のデータを調査したところ、そうした治験では安全性と利益とが強調される傾向があることが分かった。:What Sortsブログの関係でひいき目もあるのかもしれないけど、アルベルタ大学の倫理学、障害学、作業療法学、すごいなぁ……と思う。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175733.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175733.php
米軍とNASAのコンピューターをハッキングしたアスペルガーの英国人男性Garry McKinnon氏の米国側への身柄引き渡しを、英国内務省が拒否するかも。同氏の罪は米国では最高60年の懲役刑にあたることから、McKinnon氏は拘束されれば症状が悪化して自殺する確率が高いとして、引き渡しそのものが人権侵害になるのでは、と。:だいぶ前から論争になっていたらしいのだけど、このケース、今まで知らなかった。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jan/13/gary-mckinnon-hacking-extradition
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jan/13/gary-mckinnon-hacking-extradition
オーストラリア首都特別区の裁判所で、年末年始に家族に暴力をふるったDVで起訴された男性50人のケースをさばく事態となり、同時に2法廷を使用、非番の判事まで助っ人に駆けつけることに。この時期、DV事件が目に見えて急増するのだとか。
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/court-hears-50-family-violence-cases/1725030.aspx?src=enews
http://www.canberratimes.com.au/news/local/news/general/court-hears-50-family-violence-cases/1725030.aspx?src=enews
イラクで負傷して直後にモルヒネを与えられた兵士はPTSDを免れやすい。モルヒネには痛み止め以上の効能があるのでは、とする論文。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/13/AR2010011303721.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2010/01/13/AR2010011303721.html
南アフリカの海岸に「恐竜サイズ」のサメが出現。観光客が襲われて死亡。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jan/13/cape-town-giant-shark-attack
http://www.guardian.co.uk/world/2010/jan/13/cape-town-giant-shark-attack
2010.01.14 / Top↑
カナダ、アルベルタ大学のDick Sobsey氏がWhat Sorts ブログで
標題の通りの、たいそう面白い、そして極めて重大な指摘をしています。
標題の通りの、たいそう面白い、そして極めて重大な指摘をしています。
06年のGunther&Diekema論文には乳房芽の切除が触れられていない点は
多くの人が指摘しているが、実はもう一つ、触れられていない情報がある、というのです。
多くの人が指摘しているが、実はもう一つ、触れられていない情報がある、というのです。
それは、Ashleyの体重に関するデータ。
このまま重くなったら親が介護できなくなるという理由で
成長抑制療法が正当化されているというのに
論文はAshleyの体重について具体的な情報を一切明かしていない。
成長抑制療法が正当化されているというのに
論文はAshleyの体重について具体的な情報を一切明かしていない。
ところが親のブログは、例によって極めて率直で正確で正直ですから
ホルモン療法前から療法の途中、その2年後までのAshleyの身長と体重が
きちんと記録されている。
ホルモン療法前から療法の途中、その2年後までのAshleyの身長と体重が
きちんと記録されている。
そのAshleyの身長と体重のデータを、Sobsey氏は、
米国の女児の平均的な伸びグラフの中に位置づけてみているのです。
米国の女児の平均的な伸びグラフの中に位置づけてみているのです。
すると身長については
治療前には平均値の75パーセンタイルだったものが、治療中には50パーセンタイルに、
さらに治療から2年経過したところでは25パーセンタイルの位置へと
確かに抑制効果がはっきりと見られます。
治療前には平均値の75パーセンタイルだったものが、治療中には50パーセンタイルに、
さらに治療から2年経過したところでは25パーセンタイルの位置へと
確かに抑制効果がはっきりと見られます。
しかし、それなら体重も同様に抑制されているかというと、
なんと治療開始直後に増加しているのです。
なんと治療開始直後に増加しているのです。
06年のG&D論文は一切触れていませんが、
エストロゲンに体重が増えるという副作用があることは
更年期治療のホルモン療法をめぐって広く女性の間で共有されている常識でもあります。
エストロゲンに体重が増えるという副作用があることは
更年期治療のホルモン療法をめぐって広く女性の間で共有されている常識でもあります。
体重を抑制する目的で、体重が増える副作用のある療法を行うことの怪は
Sobsey氏が当初から指摘していた矛盾でした。
Sobsey氏が当初から指摘していた矛盾でした。
このたび氏は、みごとに、かねてからの指摘をグラフ化して見せてくれたわけです。
もともと22キロと、年齢からすると重いほうではなかったのですが、
治療開始直後にぐんと増加した体重は
治療中は順調に(女児一般の成長曲線をなぞるかのように)増え続けます。
そして2年半の治療終了間際になって下がり始めるのですが、
その結果、治療終了から2年後のAshleyの体重は平均値の25パーセンタイルあたり。
治療中は順調に(女児一般の成長曲線をなぞるかのように)増え続けます。
そして2年半の治療終了間際になって下がり始めるのですが、
その結果、治療終了から2年後のAshleyの体重は平均値の25パーセンタイルあたり。
(Sobsey氏は療法がおこなわれた期間を「2年」と書いていますが、実際は2年半)
ホルモン療法をしなくても、だいたいそこらに収まっであろう位置で
4年前のパーセンタイルのまま移行した場合との差はわずか2,5キロ。
4年前のパーセンタイルのまま移行した場合との差はわずか2,5キロ。
2,5キロなら、子宮と乳房の摘出のせいだとも言えるのではないかとSobsey氏。
もちろん、このように効果がないから反対するわけではない、
反対するのは、もっと重大な理由があるからだ、とエントリーは締めくくられています。
反対するのは、もっと重大な理由があるからだ、とエントリーは締めくくられています。
ホルモン療法での成長抑制効果については当初から疑問視する声はありましたが、
これほど明確に効果のなさを提示してくれたSobsey氏に、スタンディング・オベーションを。
これほど明確に効果のなさを提示してくれたSobsey氏に、スタンディング・オベーションを。
こんな程度の効果しかないものを、
ただ、こういう医療介入を思いついた親の自己満足のためだけに
倫理委員会がリスクや侵襲に目をつぶって重症児の権利や尊厳を侵し
やらせてあげただけでなく、
ただ、こういう医療介入を思いついた親の自己満足のためだけに
倫理委員会がリスクや侵襲に目をつぶって重症児の権利や尊厳を侵し
やらせてあげただけでなく、
(さすがに病院はここまではついていけないので、例のWGによる一般化の線はいつのまにか消滅して、
父親の意を受けた2人がどこまでも過激にゴリゴリとやっているのではないか……と
今のところ私は推測しているのですが)
父親の意を受けた2人がどこまでも過激にゴリゴリとやっているのではないか……と
今のところ私は推測しているのですが)
いいかげん、この茶番を終わらせなければならないと感じる人は、いないのでしょうか。
2010.01.14 / Top↑
Wesley Smithが個人的にゲットした情報で速報を流しています。
New Hampshire議会は 242 対 113 で
自殺幇助合法化法案を否決。
自殺幇助合法化法案を否決。
Smithは
Washington、Montana、Oregonでも医療職の非協力で抵抗し、
一線を守り続けよう、闘いは続く……と。
Washington、Montana、Oregonでも医療職の非協力で抵抗し、
一線を守り続けよう、闘いは続く……と。
2010.01.14 / Top↑
ニュージャージー州が、がん、ASL、MS、エイズなどの慢性病患者を対象に、モルヒネなどの鎮痛剤と同じ扱いで、マリファナの処方を合法化。
http://www.nytimes.com/2010/01/13/opinion/13wed3.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2010/01/13/opinion/13wed3.html?th&emc=th
過激なゲームはオンライのポルノよりも子どもへの悪影響が大きい。:この前、ゲーセンで現代版の射撃ゲームを初めて見て、本気でぶったまげた。これ、人殺しのシュミレーションをさせているんじゃん……。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8453043.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8453043.stm
人権活動家のメールアドレスに対する国内からのハッキングがあまりにひどいので、中国でのサービスを停止するかも、とGoogle。:そういう国が経済大国になっていくことの脅威。でも、もしかしたら、エコノミック・アニマルなどと揶揄された頃の日本だって、そんなふうに見られていたのかなぁ?
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8455712.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8455712.stm
ユニセフの子どもの死亡率を下げるプログラムが機能していないとするJohns Hopkinsの調査結果。ユニセフが介入していない地域の方が介入している地域よりも死亡率の低下が大きかった。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/8455444.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/8455444.stm
2010.01.13 / Top↑
以前、複数のエントリー(文末にリンク)で取り上げたDiekema & Fost のAshley論文は、
掲載予定の the American Journal of Bioethics誌が
かねて広く一般からもコメンタリーを募集していましたが、
いよいよ12日付の1月号に、当該論文とコメンタリーが掲載されたとのこと。
掲載予定の the American Journal of Bioethics誌が
かねて広く一般からもコメンタリーを募集していましたが、
いよいよ12日付の1月号に、当該論文とコメンタリーが掲載されたとのこと。
What Sortsブログで Dr. Sobsey が論評しています。
Sobsey氏の指摘は、おおむね私が指摘した点と同じですが、
重大な指摘が1つあって、
当初06年の論文では乳房摘出を隠蔽していた著者らが今回は
成長抑制のホルモン療法には乳房が大きくなるという影響があるので、
成長抑制をするなら、あらかじめ乳房摘出をしておいた方がよい、と書いていると。
当初06年の論文では乳房摘出を隠蔽していた著者らが今回は
成長抑制のホルモン療法には乳房が大きくなるという影響があるので、
成長抑制をするなら、あらかじめ乳房摘出をしておいた方がよい、と書いていると。
もともと06年の論文はホルモン療法の子宮からの出血という副作用の予防で
あらかじめ子宮を摘出したという論法でしたから、
あらかじめ子宮を摘出したという論法でしたから、
それらを総合すると、結局、成長抑制療法はいわゆる”Ashley療法”3点セットということになります。
いかに Diekema、Fost 両医師が
成長抑制だけでなく、セットで”Ashley療法”を一般化する必要を感じているかを、改めて思います。
成長抑制だけでなく、セットで”Ashley療法”を一般化する必要を感じているかを、改めて思います。
(去年1月に病院が開いたシンポでは、とりあえず成長抑制だけを一般化して収めたかったようですが、
それではどうにも気が済まない人が Diekema、Fost 両医師の背後にいるのではないでしょうか)
それではどうにも気が済まない人が Diekema、Fost 両医師の背後にいるのではないでしょうか)
また、この2人が他の著者らと去年6月に発表した成長抑制論文では
ホルモン療法の副作用の予防策として子宮摘出に言及すると同時に、
こちらのエントリーで書いたようにカロリー・コントロールも併用しろと言っています。
ホルモン療法の副作用の予防策として子宮摘出に言及すると同時に、
こちらのエントリーで書いたようにカロリー・コントロールも併用しろと言っています。
ここまで無茶苦茶な、論理にもならないヘリクツを振りかざして、
成長抑制をなにがなんでも一般化しなければ気が済まない――。
成長抑制をなにがなんでも一般化しなければ気が済まない――。
もはや論争としても、議論など成り立っていないと私は思うのですが……。
Sobsey氏のエントリーで、もう1つ面白いと思ったのは、
「著者らは、自らが負っている証明責任を批判する側に背負わせている」と私が指摘したのに対して、
Sobsey氏は「著者らは正当化し、批判し、その裁定を下すという3役を演じている」という表現で、
同じ点を突いていること。
「著者らは、自らが負っている証明責任を批判する側に背負わせている」と私が指摘したのに対して、
Sobsey氏は「著者らは正当化し、批判し、その裁定を下すという3役を演じている」という表現で、
同じ点を突いていること。
また、ただ論文を掲載するのではなく、
それに対するコメンタリーも同時掲載するという今回のAJOBの姿勢を評価。
それに対するコメンタリーも同時掲載するという今回のAJOBの姿勢を評価。
コメンタリーの一覧がSobsey氏のエントリーの最後につけられており、
Sobsey氏自身のものも含めて9本。
Sobsey氏自身のものも含めて9本。
――おや? と思うのは、
こんなところに批判コメンタリーを書くなら
あのWGはどうして「成長抑制は倫理的に妥当で他の重症児にも一般化できる」との
“妥協点”に達してしまったのでしょうか。
あのWGはどうして「成長抑制は倫理的に妥当で他の重症児にも一般化できる」との
“妥協点”に達してしまったのでしょうか。
この事件、本当に奇怪なことだらけです。
【Diekema&Fostの当該論文に関するエントリー】
Diekema医師が今更のようにAshley論文書いて批判に反駁(2009/10/1)
Diekema&Fost論文を読む 1:倫理委に関する新事実(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 2:ホルモン療法の期間を修正(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 3:政治的判断を否定(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 4:窮鼠の反撃? 証明責任の転嫁(2009/11/2)
Diekema&Fost論文を読む 5:「だから、ちゃんと検討したんだってば」(2009/11/3)
Diekema&Fost論文を読む 6:司法の否定(2009/11/3)
Diekema医師が今更のようにAshley論文書いて批判に反駁(2009/10/1)
Diekema&Fost論文を読む 1:倫理委に関する新事実(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 2:ホルモン療法の期間を修正(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 3:政治的判断を否定(2009/11/1)
Diekema&Fost論文を読む 4:窮鼠の反撃? 証明責任の転嫁(2009/11/2)
Diekema&Fost論文を読む 5:「だから、ちゃんと検討したんだってば」(2009/11/3)
Diekema&Fost論文を読む 6:司法の否定(2009/11/3)
2010.01.13 / Top↑
去年の一連のFEN自殺幇助事件で、
特に以下のエントリーで紹介した事件の続報がありました。
特に以下のエントリーで紹介した事件の続報がありました。
精神障害者の自殺幇助で新たにFEN関係者4人を逮捕(2009/5/17)
2007年に米国PhoenixでFENの関係者、ボランティア4人が
会員だった Jana Van Voorhisさんの自殺を幇助したとされる事件の裁判で、
逮捕・起訴されている4人のうちの一人 Wye Hale-Row(81)が
罪状認否において罪を認めた。
会員だった Jana Van Voorhisさんの自殺を幇助したとされる事件の裁判で、
逮捕・起訴されている4人のうちの一人 Wye Hale-Row(81)が
罪状認否において罪を認めた。
この事件では、
自殺した Voorhisさんがターミナルな状態ではなく、
精神障害があって、うつ状態だったことが問題となっている。
自殺した Voorhisさんがターミナルな状態ではなく、
精神障害があって、うつ状態だったことが問題となっている。
【FEN自殺幇助事件関連エントリー】
尊厳死アドボケイト団体の幹部4人を逮捕、他8週も自殺幇助容疑で家宅捜査(米)
精神障害者への自殺幇助でもthe Final Exit に家宅捜査
Final Exit 自殺幇助事件続報:130人の自殺に関与か?
Final Exit Networkの公式サイトを読んでみた
CA州の自殺幇助事件続報
自殺幇助合法化議論、対象者がズレていることの怪
Final Exit自殺幇助事件、週末の続報
「ホスピスだって時間をかけた自殺幇助」にホスピス関係者が激怒
FEN創設者GoodwinのAP通信インタビュー
FENの自殺幇助ガイド養成マニュアル
精神障害者の自殺幇助で新たにFEN関係者4人を逮捕
FENが自殺幇助合法化プロモビデオをYouTubeにアップ
OhioでもFENによる自殺幇助事件か(2009/6/18)
久々に Final Exit Network自殺幇助事件の続報(2009/10/16)
尊厳死アドボケイト団体の幹部4人を逮捕、他8週も自殺幇助容疑で家宅捜査(米)
精神障害者への自殺幇助でもthe Final Exit に家宅捜査
Final Exit 自殺幇助事件続報:130人の自殺に関与か?
Final Exit Networkの公式サイトを読んでみた
CA州の自殺幇助事件続報
自殺幇助合法化議論、対象者がズレていることの怪
Final Exit自殺幇助事件、週末の続報
「ホスピスだって時間をかけた自殺幇助」にホスピス関係者が激怒
FEN創設者GoodwinのAP通信インタビュー
FENの自殺幇助ガイド養成マニュアル
精神障害者の自殺幇助で新たにFEN関係者4人を逮捕
FENが自殺幇助合法化プロモビデオをYouTubeにアップ
OhioでもFENによる自殺幇助事件か(2009/6/18)
久々に Final Exit Network自殺幇助事件の続報(2009/10/16)
2010.01.13 / Top↑
英国の名門公立学校で高1に週一回40分のメディテーションを導入。ストレス軽減のすべを学ばせる英国の学校で初の試み。
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/education/article6984113.ece?&EMC-Bltn=9ALF52F
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/education/article6984113.ece?&EMC-Bltn=9ALF52F
アンネ・フランク一家をかくまった人たちの最後の生き残りで、アンネの日記を保管していた人、ミープさんがオランダで死去。100歳。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8453331.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8453331.stm
先週、the Journal of the American Medical Associationに、抗うつ剤は重症でなければ偽薬とほとんど変わらないとする研究結果が報告されて、関係筋に衝撃を与えたが、この研究はこれまでの研究データを見直すというもので、必ずしも、その結果だけで抗うつ剤の効果が否定されるものではない、との反論。:なんとなく、ですが、このところ抗精神病薬に対する疑念の声がちらほらと上がり始めているような、なんとなく、流れが変わろうとしているのかしら……という気配が漂い始めているような……。
http://www.nytimes.com/2010/01/12/health/12mind.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2010/01/12/health/12mind.html?th&emc=th
2010.01.12 / Top↑
厚くて私にはかなり難解で、どこまで理解できたか不安もあるのだけど、
余裕がある限りエントリーにしておかないと読んだことすら忘れてしまうので、
とりあえず自分用のメモとして、自分なりに捉えたままに。
余裕がある限りエントリーにしておかないと読んだことすら忘れてしまうので、
とりあえず自分用のメモとして、自分なりに捉えたままに。
まず、Amazonの「Bookデータベース」によると、本書の概要は
子どもの頃はもとより、病を得たとき、障害を持ったとき、そして老いたとき、誰もが他の誰かに依存し、ケアを受ける。人は誰かに依存しなければ生きていけ ない存在なのだ。であるならば、ケアは社会全体で担うべきではないのか。自律、独立、自活の価値が称揚される陰で、結婚した男女によってつくられる家族の なかに隠されてきた依存とケアの現実を緻密に分析し、「性の絆」ではなく「ケアの絆」にもとづく家族、市場、国家の再編を大胆に説く。
……というのだけれど、私の印象では、
この本が緻密に分析しているのは婚姻家族における「依存とケアの現実」ではなくて、
依存とケアの問題が私事とされ、婚姻家族の中に押し込められ「隠されてきた」社会のカラクリの方。
この本が緻密に分析しているのは婚姻家族における「依存とケアの現実」ではなくて、
依存とケアの問題が私事とされ、婚姻家族の中に押し込められ「隠されてきた」社会のカラクリの方。
それはともかくとして、本書がタイムリーに興味深いのは自律・自己決定権花盛りの時代に
原題 the Autonomy Myth であるように「自律した個人」なんて”神話”に過ぎないと喝破したこと。
原題 the Autonomy Myth であるように「自律した個人」なんて”神話”に過ぎないと喝破したこと。
……自律と聞くと、誰もが獲得できる状態のように思われている。されにそれは個人が(自発的に)伸ばしてく特徴であり、結局はその人に資質があればこそ可能(ないときはそれまで)と受けとめられている。この最も単純化された自律観からは、避けられない依存や二次的依存という現実が抜け落ちている。ここで想定されている世界は、成人だけの世界である。しかも可能性や能力に恵まれているため、政府に求めるのは(安全保障と裁判所を除くと)才覚に任せて地位も名誉も掴めるような、勝手気ままを保証してくれる規則だけという人々の世界だ。本書の趣旨は、こうした視点が妄想で、このような自律が個人レベルでは本来得られず、望ましくもなく、したがって政策的な観点からは破壊的だと述べることに尽きる。(P.263-264)
ここで「二次的依存」と言われているものは、
依存状態にある誰か(子ども、障害者、高齢者その他)のケアを担う人が
自分自身も働けなかったり、生活に制約を受けて依存状態になること。
依存状態にある誰か(子ども、障害者、高齢者その他)のケアを担う人が
自分自身も働けなかったり、生活に制約を受けて依存状態になること。
簡単にいえば、
誰だって家で子育てや介護をやっていれば、やっていない人と同じように職場で働けるわけなどないのに、
それでも育児も介護も職場に持ち込んではいけないプライベートとされている。
(それで職場で「やっぱり女は……」と能力の問題にすりかえられたりもする)
誰だって家で子育てや介護をやっていれば、やっていない人と同じように職場で働けるわけなどないのに、
それでも育児も介護も職場に持ち込んではいけないプライベートとされている。
(それで職場で「やっぱり女は……」と能力の問題にすりかえられたりもする)
フェミニズムもまた家族をばらばらの「自立した個人」として
男女間の平等を重視するあまり、依存とケアの問題に取り組みそこなったために、
男女間の平等を重視するあまり、依存とケアの問題に取り組みそこなったために、
「家族の中で実践されている“母親業”の現状に目配りができていないため、
平等モデルが実際には不平等を後押ししている(p.175)」。
平等モデルが実際には不平等を後押ししている(p.175)」。
「女性が自律を手に入れ、家族問題の制約から自由になれるという考えは、
母親になると徐々に蝕まれていく。フェミニズム法学は妻としての女性の伝統的な役割に比べ、
母としての役割にははるかにあいまいな対策しか講じていないように思える。(p.161)」
母親になると徐々に蝕まれていく。フェミニズム法学は妻としての女性の伝統的な役割に比べ、
母としての役割にははるかにあいまいな対策しか講じていないように思える。(p.161)」
このように、女性が家族の中で依存とケアの問題を担うことを当然の前提としたうえで、
社会的財の再分配が家庭と職場を通じて行われるという仕組みを通じて
家庭の外の社会は依存の問題とは無縁の世界としてありえてきたし、
社会的財の再分配が家庭と職場を通じて行われるという仕組みを通じて
家庭の外の社会は依存の問題とは無縁の世界としてありえてきたし、
経済的な責任を負う男性のプライベートな管理責任の範囲として
プライバシー権も家族単位で捉えられてきた。
(そして、その中で男女間の権力関係・虐待もまた私事として隠ぺいされてきた)
プライバシー権も家族単位で捉えられてきた。
(そして、その中で男女間の権力関係・虐待もまた私事として隠ぺいされてきた)
しかし、米国では結婚して子どものいる世帯が全世帯の4分の1を割り、
シングルマザーと子どもから成る世帯が急増している(p.102)など、
家族はすでに多様化し、いわゆる“伝統的な”家族は揺らいでいる。
シングルマザーと子どもから成る世帯が急増している(p.102)など、
家族はすでに多様化し、いわゆる“伝統的な”家族は揺らいでいる。
一方、富の再分配にもゆがみが生じており、
労働者一人一人の窮状が強く懸念されるのは、アメリカではゲームのルールが変わってしまったと実感するからだ。資本主義の構造と受け止め方の変化によって富の分配の歪みはいっそうひどくなった。アメリカ社会の超富裕層の富と洋々たる未来とその他の人々との格差を思うと、個人主義と権利意識のなかにあるやったもの勝ちの感覚を抑制できるものはもはやないと感じられる。(p.250)
こうした社会の変化の中で、著者が唱えるのは「依存に対する集団的責任論」。
(これ、高齢者バージョンの日本語にすれば「介護の社会化」ですね)
(これ、高齢者バージョンの日本語にすれば「介護の社会化」ですね)
誰もがケアを必要とする状態になるし、
そのケアは誰かが担わなければならない、
そしてケアを担う人はそれによって依存状態を避けられない。
それを現実として認め、それに対して社会全体で責任を負うべく、
家族、市場、国家の役割を組み替えていこうとの提案。
そのケアは誰かが担わなければならない、
そしてケアを担う人はそれによって依存状態を避けられない。
それを現実として認め、それに対して社会全体で責任を負うべく、
家族、市場、国家の役割を組み替えていこうとの提案。
性的つながりに基づいた伝統的な家父長的な家族ではなく、
ケアする人される人という関係性に基づいた単位として家族を捉えなおす。
ケアする人される人という関係性に基づいた単位として家族を捉えなおす。
そして国家は家族単位ではなく個人に対して
①基本的な社会的財を一生涯保障し、
②ケア労働を支えるための扶助をまず直接的な支援として、
それから間接的には、ケアを担いつつ働ける職場づくりのため市場の再編を行う。
①基本的な社会的財を一生涯保障し、
②ケア労働を支えるための扶助をまず直接的な支援として、
それから間接的には、ケアを担いつつ働ける職場づくりのため市場の再編を行う。
もちろん、そこには権力の介入という問題が起きてくるので、
これまでの家族プライバシーという概念も刷新されなければならない。
これまでの家族プライバシーという概念も刷新されなければならない。
家族プライバシーは歴史的には
国家や権力の介入から家族や個人を守ってきたが
虐待や差別、権力関係を隠蔽してきた両面性を持つ。
国家や権力の介入から家族や個人を守ってきたが
虐待や差別、権力関係を隠蔽してきた両面性を持つ。
家族プライバシーと個人のプライバシーのバランスを捉えなおす必要がある。
著者は、夫婦間、男女間、親子間の関係を捉えなおしたうえで、
ウッドハウスの「子どもには基本的ニーズ権がある」とする考えを前提に
男女の性的結合を単位とした家族プライバシーではなく、
ケアする者とケアされる者の結合を単位としてプライバシー権を唱える。
ウッドハウスの「子どもには基本的ニーズ権がある」とする考えを前提に
男女の性的結合を単位とした家族プライバシーではなく、
ケアする者とケアされる者の結合を単位としてプライバシー権を唱える。
――――――
この本を読むと、「日本には家族介護の美しい伝統がある」という亀井静香氏らの反対を押し切って、
日本に介護保険制度が作られたのは改めて、すごいことだったんだなぁ……とつくづく思った。
日本に介護保険制度が作られたのは改めて、すごいことだったんだなぁ……とつくづく思った。
私は娘が2歳の時に大学専任教師の仕事を辞めたのだけれど、その直後に、
仕事を辞めざるを得なかった苦しさと格闘すべく「母性神話」についての翻訳本を読んだ際に、
「子どもに障害でもあれば話は別だけど……」というトーンで
障害児の母親だけはフェミニズムの主張の枠外に取り分けられたことに、
ものすごく傷つき、フェミニズムに対して深く失望したことがある。
仕事を辞めざるを得なかった苦しさと格闘すべく「母性神話」についての翻訳本を読んだ際に、
「子どもに障害でもあれば話は別だけど……」というトーンで
障害児の母親だけはフェミニズムの主張の枠外に取り分けられたことに、
ものすごく傷つき、フェミニズムに対して深く失望したことがある。
“Ashley療法”論争においても
「女の子の性器切除だから是認される」との女性差別は指摘されたけど、
「重症児はここまでしてでも親が一生涯面倒をみるのがよい」という主張の陰には
「重症障害児は子どもが死ぬまで親が(とくに母親が)ケアするのが当たり前」という
女性差別が潜んでいるとの指摘は、どこからも出てこなかった。
「女の子の性器切除だから是認される」との女性差別は指摘されたけど、
「重症児はここまでしてでも親が一生涯面倒をみるのがよい」という主張の陰には
「重症障害児は子どもが死ぬまで親が(とくに母親が)ケアするのが当たり前」という
女性差別が潜んでいるとの指摘は、どこからも出てこなかった。
著者のフェミニズム批判はなかなか鋭く力がこもっていて、そんなことを振り返りながら読んだ。
どんどん弱肉強食化する世界で、自律と自己責任を看板に押し立てて
国家と企業とが社会に対する責任をのがれ、弱者を切り捨てて終わろうとしているならば、
それを是正するために、まずすべての個人に最低限の社会財を一生涯保障し、
なおかつケアする人・される人に対する支援が行われる社会の再編を、というのは
とても妥当な提案のような気がする。
国家と企業とが社会に対する責任をのがれ、弱者を切り捨てて終わろうとしているならば、
それを是正するために、まずすべての個人に最低限の社会財を一生涯保障し、
なおかつケアする人・される人に対する支援が行われる社会の再編を、というのは
とても妥当な提案のような気がする。
「国家が基本的な社会的財を個人に対して生涯保証する」とはベーシック・インカムのことだろうか。
そういえば、こちらのエントリーで読んだ山森氏の「ベーシック・インカム入門」にも、
女性が担ってきた家事育児介護などはその他の労働と同じ労働であり、
かならずしも片方の性や家庭というゲットーに結び付けられる必要はない、という主張があった。
女性が担ってきた家事育児介護などはその他の労働と同じ労働であり、
かならずしも片方の性や家庭というゲットーに結び付けられる必要はない、という主張があった。
ただ、著者の主張で、どうしても引っかかるのは、
なぜ「ケアする人とされる人」がセットで家族に代わる単位でなければならないのか、という点。
なぜ「ケアする人とされる人」がセットで家族に代わる単位でなければならないのか、という点。
社会の変化と人口の高齢化に伴って、
今後、身近にケアしてくれる人がいない高齢者は増えてくるはずだし、
そうでなくても「ケアを必要とする人」に「ケアする人」が必ずしもいるとは限らない。
たまたま現在はいたとしても、い続けるとも限らないのだから
「ケアを必要とする人」個々への直接的な支援がまず最初にあって、
「ケアする人」への介護者支援もまた別建てで行われるという考え方では何故いけないのか。
今後、身近にケアしてくれる人がいない高齢者は増えてくるはずだし、
そうでなくても「ケアを必要とする人」に「ケアする人」が必ずしもいるとは限らない。
たまたま現在はいたとしても、い続けるとも限らないのだから
「ケアを必要とする人」個々への直接的な支援がまず最初にあって、
「ケアする人」への介護者支援もまた別建てで行われるという考え方では何故いけないのか。
ケアする人とされる人の組み合わせを家族に代わる社会的機能の単位とするのでは、
伝統的な家族において女性が男性の管理下に置かれる付属物のように扱われてきたのと同じように、
依存状態にある人の独立した人格や権利を認めず、ケアする人の責任と管理下におくことになるのでは?
伝統的な家族において女性が男性の管理下に置かれる付属物のように扱われてきたのと同じように、
依存状態にある人の独立した人格や権利を認めず、ケアする人の責任と管理下におくことになるのでは?
どうも著者は子育てと高齢者介護だけを念頭にイメージしていて、
障害者のケアをあまりイメージしていないような気がするのだけれど、
依存状態にある人が子どもであれ障害者であれ高齢者であれ基本的には全く同じ問題のはず。
障害者のケアをあまりイメージしていないような気がするのだけれど、
依存状態にある人が子どもであれ障害者であれ高齢者であれ基本的には全く同じ問題のはず。
同様に、私が著者に賛同できないのは、
プライバシー権を、ケアする者とされる者の単位に認めようとの最後の部分の主張。
プライバシー権を、ケアする者とされる者の単位に認めようとの最後の部分の主張。
この部分に来て、
子どもの権利擁護の問題になると(障害者・高齢者虐待は話すら出てこない)、著者は
「だって親は基本的にはこどものためを思っているのだから、それを信頼して」などと、
論理展開がにわかに腰砕けになってしまう。
子どもの権利擁護の問題になると(障害者・高齢者虐待は話すら出てこない)、著者は
「だって親は基本的にはこどものためを思っているのだから、それを信頼して」などと、
論理展開がにわかに腰砕けになってしまう。
家庭における男女間の差別、権力関係、虐待と同じことが
ケアする人・される人の関係においては起こりにくいと、
どうして著者は、こんなにも簡単に信じられるのだろう。
ケアする人・される人の関係においては起こりにくいと、
どうして著者は、こんなにも簡単に信じられるのだろう。
それは、結局、フェミニズムによるジェンダー中立性重視という失敗を批判してきた著者自身が
やはり女性問題としての文脈でのみ、つまり「ケアする」側の視点からのみ、
「依存とケア」の問題を捉えているからではないのだろうか。
やはり女性問題としての文脈でのみ、つまり「ケアする」側の視点からのみ、
「依存とケア」の問題を捉えているからではないのだろうか。
2010.01.12 / Top↑
日本語情報。日本政府の「障害」定義、医学モデルから社会モデルに変換。:“Ashley療法”もその典型だけれど、英米を中心に“科学とテクノの簡単解決”が医学モデルを一層強化していっているように感じて懸念していたので、日本でこういう動きが出てくるというのは、とても嬉しい。ただ、障がい者施策改革推進会議に重心関係者がいないことが個人的にはちょっと気になる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100111-00000007-mai-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100111-00000007-mai-pol
たいそう長い記事で手が出ないけど、面白そうな記事。狂気は地域により時代によって、さまざまな形態、捉え方、対処をされてきて、その文化によっては必ずしも医療の対象ではなかったにも関わらず、科学の名のもとにアメリカ型の精神保健医療の姿勢(これは、そのままビッグ・ファーマの戦略でも)が世界中を席巻して、メンタル・ヘルスのアメリカナイゼーションが起こっている、と。
http://www.nytimes.com/2010/01/10/magazine/10psyche-t.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2010/01/10/magazine/10psyche-t.html?th&emc=th
世界中で絶滅する生物が増えていて、このまま種が減り続けると生態系へのダメージの影響は人類に及ぶ、との警告が国連から。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8449506.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8449506.stm
2010.01.11 / Top↑
最高裁が医師による自殺幇助は合法と判断したモンタナ州の医師らは、
この判決を受けて、自殺幇助に即座に乗り出すのではなく、
この判決を受けて、自殺幇助に即座に乗り出すのではなく、
むしろ、しかるべき手続きを決めるべく、今後の医療界での議論も、
また議会で法的枠組みを作ることも必要だ、とのスタンス。
また議会で法的枠組みを作ることも必要だ、とのスタンス。
また、宗教関連の団体など反対派ロビーは
改めて州議会が非合法とするよう法制化を求めていく、との動き。
改めて州議会が非合法とするよう法制化を求めていく、との動き。
【関連エントリー】
裁判所が自殺幇助認めたものの、やってくれる医師がいない?(MT州)(2009/4/6)
合法とされたMT州で自殺幇助受けられず子宮がん患者が死亡(2009/6/18)
自殺幇助を州憲法で認められたプライバシー権とするか、2日からモンタナ最高裁(2009/9/1)
モンタナ州最高裁、医師による自殺幇助は合法と判断(2010/1/2)
MT州最高裁の判決文をちょっとだけ読んでみた(2010/1/5)
裁判所が自殺幇助認めたものの、やってくれる医師がいない?(MT州)(2009/4/6)
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MT州最高裁の判決文をちょっとだけ読んでみた(2010/1/5)
2010.01.11 / Top↑
1.Terry Schiavoさんの脱水死
2.Bush 大統領による胎性幹細胞研究への助成禁止政策と、関連の議論
3.生殖補助医療の無軌道
4.Dignitasへの自殺ツーリズム
5.成人幹細胞研究における成功
6.Washington州での自殺幇助合法化
7.Obamaケアをめぐる議論(この問題は今後の10年の大きな課題にも)
8.米国人の中絶に対する姿勢の保守化。
9.バイオ植民地主義の成長(貧しい国の貧しい人たちが臓器や機能を搾取されている)
10.反ヒューマニズムの環境主義の台頭(優生思想と過激な人口統制への動き)
2.Bush 大統領による胎性幹細胞研究への助成禁止政策と、関連の議論
3.生殖補助医療の無軌道
4.Dignitasへの自殺ツーリズム
5.成人幹細胞研究における成功
6.Washington州での自殺幇助合法化
7.Obamaケアをめぐる議論(この問題は今後の10年の大きな課題にも)
8.米国人の中絶に対する姿勢の保守化。
9.バイオ植民地主義の成長(貧しい国の貧しい人たちが臓器や機能を搾取されている)
10.反ヒューマニズムの環境主義の台頭(優生思想と過激な人口統制への動き)
これを以下の Art Caplan の分析と比べてみると、
シャイボ事件の捉え方からして、まるっきり反対。
ただ楽観と悲観といって終われないものを感じる。
シャイボ事件の捉え方からして、まるっきり反対。
ただ楽観と悲観といって終われないものを感じる。
この10年の米国の生命倫理の流れをCaplanがまとめ「ハイテクよりも足元の問題を」(2009/12/29)
私個人的には、やっぱりSmithの方に賛同する。
彼が指摘している一連の動きは、それぞれ当ブログの書庫のネーミングに
そのままダブっていくような気がして、私にはとても分かりやすい。
彼が指摘している一連の動きは、それぞれ当ブログの書庫のネーミングに
そのままダブっていくような気がして、私にはとても分かりやすい。
医療制度の破綻と医療・介護費削減ニーズという7の問題は米国に限らず
Smithがいうように、各国で、今後10年間の最大の課題になるだろうし、
Smithがいうように、各国で、今後10年間の最大の課題になるだろうし、
その解決策として導入されるのは、きっと
「無益な治療」や「死の自己決定権」といった便利な概念による
強制的・自発的(誘導があるにせよ)命の切捨て(1,4,6,10)と
科学とテクノの”簡単解決”・”予防がすべて”能力至上の文化(3,5,9)。
「無益な治療」や「死の自己決定権」といった便利な概念による
強制的・自発的(誘導があるにせよ)命の切捨て(1,4,6,10)と
科学とテクノの”簡単解決”・”予防がすべて”能力至上の文化(3,5,9)。
それらが経済のグローバリゼーション・ネオリベと重なり合って、
おそらくは9、10の動きが世界中に広がっていく……。
おそらくは9、10の動きが世界中に広がっていく……。
我ながら、悲観的だとは思うけど、やっぱり、そういうことなんじゃないのかなぁ……。
2010.01.09 / Top↑
ゲイツ財団の私設WHOといわれるワシントン大学のIHMEのDr. Murray(DALYの提唱者)らが報告書を取りまとめ、米国の医療は世界で37位、と。現在議会で議論されている改革案では不十分で、何が必要かというと、予防可能なリスク・ファクター、地域による健康格差、現行のパフォーマンスの分析などへの対応。:前に、IHMEが地域による健康格差を云々していた際には、社会的な要因がまるで度外視されていた。
http://www.healthmetricsandevaluation.org/resources/news/2010/without_key_elements_0110.html
http://www.healthmetricsandevaluation.org/resources/news/2010/without_key_elements_0110.html
食品製造会社が論争を避けるため、この業界で既に広く導入されているナノテク技術の利用実態を秘密にしている、との批判。安全性に問題がないにしても、知らされていないことが多すぎる。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8446704.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8446704.stm
ハイテクによるイノベーションでデジタル経済が発展する可能性は大きいのに、政府は余計な口を出して邪魔するな、という声、米国で。:科学とテクノは国家を超えた権力となろうとしている?
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8447649.stm
http://news.bbc.co.uk/2/hi/technology/8447649.stm
現在、半数以上の提供は腕からの採血で可能で安全だというのに、骨髄ドナーが見つからないために死んでいく米国人が多いので、1984年の臓器移植法を改正して、骨髄ドナーに例えば3000ドルの奨学金とか住宅購入助成金とか、金銭的なインセンティブの支払いを認めることにして、ドナーを増やそう……と、84年法が憲法違反だとする訴訟を連邦地裁に対して起こしたMinnesota大学の小児科医で移植プログラムのディレクター John Wagner教授。骨髄移植が必要な白人米国人の“10人に7人しか”ドナーを見つけられないのが現状、黒人ならもっと確率は低い。:「ドナーがいないから死んでいく」とか「臓器が足りないために死んでいく」という表現には、いつもながら抵抗がある。「病気で死んでいく」のだと思うのですが。
http://www.nytimes.com/2010/01/08/opinion/08wagner.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2010/01/08/opinion/08wagner.html?th&emc=th
2010.01.09 / Top↑
インディアナ州で自殺幇助事件。逮捕されて保釈中なのは38歳の男性Robert Crowさん。台湾の事件以上に詳細が不明なのだけど、警察が通報で駆け付けたら銃で負傷した男性がいて、その人がその後、死亡。捜査の結果、この人が男性の自殺を幇助したとして逮捕された。
http://www.indianasnewscenter.com/news/local/80949177.html
http://www.indianasnewscenter.com/news/local/80949177.html
健康のために「これしなさい、あれしなさい」とあっちこっちから言われて、「健康的な生活をしなければならぬ」が最も健康に悪いストレスになっている。健康ルールを全部守れる人なんかいないし、だいたい「パーフェクトな健康」なんて神話。たまに何かを食べすぎたって、何かの摂取量が足りなくたって、たいした問題じゃない。Moderation (なにごともほどほどで)でいいんだ、と女性の保健医療の専門家 Dr. Loveの新著。Is the goal to live forever? I would contend it’s not. It’s really to live as long as you can with the best quality of life you can.:こんな常識的なことを専門家が本に書かないといけないということ自体が、おかしい。to live as long as you can with the best quality of life you can の you can がいい。それぞれ、できる限りのQOLで、できる限りの長生き。
http://well.blogs.nytimes.com/2010/01/04/new-health-rule-quit-worrying-about-your-health/?em
http://well.blogs.nytimes.com/2010/01/04/new-health-rule-quit-worrying-about-your-health/?em
加齢性骨減少を止める薬ができそうなんだか、できたんだか。:これでまた、年をとって骨の総量が減ることは、れっきとした病気として喧伝される。すでにサルコぺニアという名前が付いている。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175142.php
http://www.medicalnewstoday.com/articles/175142.php
2010.01.09 / Top↑
去年、自殺幇助合法化法案が議会に提出されていて
今月にも審議が行われるスコットランドで、
今月にも審議が行われるスコットランドで、
議員には審議することはできない、と申し立てる書簡を
プロ・ライフの活動団体 Care Not Killing が議会の当該担当者(? Presiding Officer)に送った。
プロ・ライフの活動団体 Care Not Killing が議会の当該担当者(? Presiding Officer)に送った。
私はヨーロッパ人権条約については何も知らないのですが、
「国には生存権を尊重する義務がある」という規定と
「個々人には死の自己決定権がある」との主張は
同時に成り立たないわけではないような気もするし、
「個々人には死の自己決定権がある」との主張は
同時に成り立たないわけではないような気もするし、
すでにオランダ、ベルギー、ルクセンブルクが合法化していることを考えると、
ちょっと、この論理には無理があるのでは……?
ちょっと、この論理には無理があるのでは……?
―――――
実は、年末に09年の自殺幇助関連の動きをまとめた際に、
Scotlandのことをすっかり忘れていました。
Scotlandのことをすっかり忘れていました。
【スコットランドの自殺幇助議論関連エントリー】
スコットランドでも自殺幇助合法化法案か(2009/2/20)
スコットランドでも「死の自己決定権」アドボケイトの医師が高齢障害者の餓死を幇助(2009/3/11)
スコットランドの自殺幇助合法化法案に倫理団体から批判(2009/4/22)
スコットランド議会で自殺幇助合法化案、提出へ(2009/4/25)
自殺幇助希望のスコットランドの女性、腎臓透析やめるよう医師に”命じ“る(2009/6/14)
英国看護学会、スコットランドの自殺幇助法案提出議員と会談へ(2009/7/28)
スコットランドの世論調査で3分の2以上が自殺幇助合法化を支持(2009/11/8)
スコットランドでも自殺幇助合法化法案か(2009/2/20)
スコットランドでも「死の自己決定権」アドボケイトの医師が高齢障害者の餓死を幇助(2009/3/11)
スコットランドの自殺幇助合法化法案に倫理団体から批判(2009/4/22)
スコットランド議会で自殺幇助合法化案、提出へ(2009/4/25)
自殺幇助希望のスコットランドの女性、腎臓透析やめるよう医師に”命じ“る(2009/6/14)
英国看護学会、スコットランドの自殺幇助法案提出議員と会談へ(2009/7/28)
スコットランドの世論調査で3分の2以上が自殺幇助合法化を支持(2009/11/8)
2010.01.09 / Top↑
去年1年間にDignitasで幇助を受けて自殺した人は89人。
1998年の創設以来の合計は1410人となった。
1998年の創設以来の合計は1410人となった。
アイルランド人で、これまでに会員登録をした人は29人。
そのうち、実際に自殺した人は
03,04年に1人ずつ。05年に3人。09年に1人で、計6人。
03,04年に1人ずつ。05年に3人。09年に1人で、計6人。
【Dignitas関連エントリー】
スイスDignitasで幇助自殺とげた英国人100人に(2008/10/3)
「病気の夫と一緒に死にたい」健康な妻の自殺をDignitasが検討中(2009/4/2)
最高裁、Dignitasにペントバルビタールのストックを認めず(2009/4/10)
うつ病患者の自殺幇助でDignitasにスイス当局の捜査(2009/5/27)
Dignitasに登録の英国人800人(2009/6/1)
これまでにDignitasで自殺した英国人114人の病名リスト(2009/6/22)
英国の著名指揮者夫妻がDignitasで揃って自殺(2009/7/14)
またしても著名英国人音楽家がDignitasで自殺(2009/9/20)
Dignitasの自殺者、ドイツ人は500人以上(2009/9/24)
Dignitasの内部をGuardianが独占取材(2009/11/19)
スイスDignitasで幇助自殺とげた英国人100人に(2008/10/3)
「病気の夫と一緒に死にたい」健康な妻の自殺をDignitasが検討中(2009/4/2)
最高裁、Dignitasにペントバルビタールのストックを認めず(2009/4/10)
うつ病患者の自殺幇助でDignitasにスイス当局の捜査(2009/5/27)
Dignitasに登録の英国人800人(2009/6/1)
これまでにDignitasで自殺した英国人114人の病名リスト(2009/6/22)
英国の著名指揮者夫妻がDignitasで揃って自殺(2009/7/14)
またしても著名英国人音楽家がDignitasで自殺(2009/9/20)
Dignitasの自殺者、ドイツ人は500人以上(2009/9/24)
Dignitasの内部をGuardianが独占取材(2009/11/19)
【スイスでの規制関連エントリー】
スイス議会が自殺幇助規制に向けて審議(2009/6/18)
Dignitas あちこち断られた末にお引越し(2009/6/28)
スイスで精神障害者の自殺幇助に「計画的殺人」との判断(2009/6/30)
スイス自殺幇助グループExit、当局と合意(2009/7/12)
APが「スイスは合法的自殺幇助を提供している」(2009/7/18)
チューリッヒ市が自殺幇助に“規制強化”とはいうものの……(2009/7/21)
スイス当局が自殺幇助規制でパブ込め募集(2009/10/29)
スイス議会が自殺幇助規制に向けて審議(2009/6/18)
Dignitas あちこち断られた末にお引越し(2009/6/28)
スイスで精神障害者の自殺幇助に「計画的殺人」との判断(2009/6/30)
スイス自殺幇助グループExit、当局と合意(2009/7/12)
APが「スイスは合法的自殺幇助を提供している」(2009/7/18)
チューリッヒ市が自殺幇助に“規制強化”とはいうものの……(2009/7/21)
スイス当局が自殺幇助規制でパブ込め募集(2009/10/29)
2010.01.08 / Top↑
モンタナの自殺幇助合法化判決の原告(というのか?)Baxter氏の娘さんから、喜びの声。Baxter氏が訴訟を起こすまでのことや死の前の様子など。それ以上には読んでいないけど、えらく長い記事なので、たぶん他にもあれこれ。
http://abcnews.go.com/Health/doctor-assisted-suicide-approved-montana/story?id=9492923
http://abcnews.go.com/Health/doctor-assisted-suicide-approved-montana/story?id=9492923
こちらモンタナの最高裁判決への批判。Wesley Smithが「妙だ」と。やっぱり彼も、「アンタらはC&Cの回し者か?」と思ったのでしょう。あ、もちろん、omission とcommissionには明確な法的線引きがされていると、ちゃんと論理的に反論しているようですが、読めていません。しばらく補遺で賛否の報道を拾ってみます。目に付いた範囲で。
http://www.sbcbaptistpress.org/BPnews.asp?ID=31992
http://www.sbcbaptistpress.org/BPnews.asp?ID=31992
2010.01.07 / Top↑
これで日本でもAshley事件について広く知ってもらえると思うと本当に嬉しい。
ずっと待っていました。立岩先生、堀田さん、ありがとうございます。
ずっと待っていました。立岩先生、堀田さん、ありがとうございます。
これまで拙ブログでもリンク集という形で
時系列のテーマごとに資料をまとめる作業をぼつぼつと続けてきており、
次は手元の論文資料のリストを作ろうと考えていたところでした。
時系列のテーマごとに資料をまとめる作業をぼつぼつと続けてきており、
次は手元の論文資料のリストを作ろうと考えていたところでした。
堀田さんが今の段階でもかなりの数の論文を拾ってくださっているので、
私もこのページを拙ブログのリンク集の中に挙げさせてもらい、便乗させてもらいました。
私もこのページを拙ブログのリンク集の中に挙げさせてもらい、便乗させてもらいました。
拙ブログのリンク集一覧はこちら。
arsviのAshley事件ページの論文を見ても、
探したり頂いたりして拙ブログで読んできた論文を振り返っても、
Ashley事件に関連して実に多くの論文が書かれていることに改めて驚きます。
探したり頂いたりして拙ブログで読んできた論文を振り返っても、
Ashley事件に関連して実に多くの論文が書かれていることに改めて驚きます。
それだけ大きな論争だし、いまだに続いてもいるわけですが、
こうした数々の論文で“Ashley療法”の是非や倫理性について考えようとされる方々に
ひとつだけ、知っておいてもらいたいことがあります。
こうした数々の論文で“Ashley療法”の是非や倫理性について考えようとされる方々に
ひとつだけ、知っておいてもらいたいことがあります。
それは、
この事件の本質は、本当は、この療法の倫理問題にはない、ということ。
この事件の本質は、本当は、この療法の倫理問題にはない、ということ。
当ブログで詳細に検証してきたように、
担当医らが嘘やマヤカシを重ねて巧妙な隠蔽工作をしてきたことそのものが
“Ashley療法”の倫理性について我々と彼らの認識が実は同じであることを物語っています。
担当医らが嘘やマヤカシを重ねて巧妙な隠蔽工作をしてきたことそのものが
“Ashley療法”の倫理性について我々と彼らの認識が実は同じであることを物語っています。
当初は担当医への懲罰も視野に調査に入ると言っていた州当局や
明らかにAshleyの父親が何者であるかを最初から知っていたメディアや
どう考えても真実を知りながら取引してしまったとしか思えないWPASが
本来の社会の“番犬”としての仕事をまっとうしていれば、
明らかにAshleyの父親が何者であるかを最初から知っていたメディアや
どう考えても真実を知りながら取引してしまったとしか思えないWPASが
本来の社会の“番犬”としての仕事をまっとうしていれば、
この事件は、非常に特殊な状況下で起こった単なる「例外」に過ぎず、
こんなにも不幸な「前例」にはならずに済んだはずなのに、
こんなにも不幸な「前例」にはならずに済んだはずなのに、
事態がそう推移しなかったために、
隠蔽工作でしかない医師らの議論に引きずり込まれて
療法の倫理性を議論せざるを得ない状況が延々と続いている。
隠蔽工作でしかない医師らの議論に引きずり込まれて
療法の倫理性を議論せざるを得ない状況が延々と続いている。
そこには実にタチの悪いジレンマがあります。
倫理問題があることを承知でやった担当医らの正当化の茶番に付き合わされて
この「例外」ケースを「前例」として扱わざるを得ない現状は
議論されればされるだけ「特殊な例外」を一般化してしまい、
このケースを実際に「前例」として強固に塗り固めてしまうからです。
この「例外」ケースを「前例」として扱わざるを得ない現状は
議論されればされるだけ「特殊な例外」を一般化してしまい、
このケースを実際に「前例」として強固に塗り固めてしまうからです。
議論されればされるほど、
医療関係者や一般の人たちが「重症児の成長抑制」という考えになじみ、
抵抗感・違和感を薄れさせていくからです。
医療関係者や一般の人たちが「重症児の成長抑制」という考えになじみ、
抵抗感・違和感を薄れさせていくからです。
それによって、さらに批判する必要が生じて、
またも議論が長引く……という悪循環もあります。
またも議論が長引く……という悪循環もあります。
でも本当は、この事件の一番恐ろしい本質とは、
行政も、メディアも、障害者の人権擁護団体ですらが
強大な権力の前にしかるべく機能できなかった事実なのではないでしょうか?
行政も、メディアも、障害者の人権擁護団体ですらが
強大な権力の前にしかるべく機能できなかった事実なのではないでしょうか?
障害者の側に立って研究してきた人や活動してきた人たちまでが
この事件の真実に気づくや、口を閉ざし、いつのまにか論争から脱落していきます。
この事件の真実に気づくや、口を閉ざし、いつのまにか論争から脱落していきます。
その強大な権力が
科学とテクノの簡単解決文化・功利主義の切捨て医療の価値観と結びついている今の世に、
Ashley事件を通して見えてくる最も恐ろしい真実というのは、そっちの方だと
私は当初の論争当時から、ずっと思うのです。
科学とテクノの簡単解決文化・功利主義の切捨て医療の価値観と結びついている今の世に、
Ashley事件を通して見えてくる最も恐ろしい真実というのは、そっちの方だと
私は当初の論争当時から、ずっと思うのです。
あ、もちろん、これらはすべて、当ブログの「仮説」が当たっていたら……の話ですけど。
2010.01.07 / Top↑
英国中のケアホームで、特に認知症が進行した人に対して
ケアの手間・コストをはしょる目的で入所者に胃ろうが強要されていて、
中には入所の条件にしているホームも多いが、
ケアの手間・コストをはしょる目的で入所者に胃ろうが強要されていて、
中には入所の条件にしているホームも多いが、
必要でもない場合に施設側の都合で安易に作られている、と
英国内科学会のワーキング・グループが昨日発表した報告書で懸念を表明。
主流メディアが昨日、こぞって取り上げていた。
英国内科学会のワーキング・グループが昨日発表した報告書で懸念を表明。
主流メディアが昨日、こぞって取り上げていた。
WGのリーダーを務めた医師は、
胃ろうに延命効果があるとのエビデンスはないし、
リスクを伴う侵襲的な措置であり安易に導入するべきではない。
口から食べる喜びや食事をする際の人との交流まで奪ってしまうことを考えると、
胃ろう・絶経口食は最後の手段とするべきである。
時間をかけてケアすれば、嚥下に困難のある高齢者でも
口から普通に飲み食いすることができるようになることもある、
そういう人たちに必要なのはナーシング・ケアである。
リスクを伴う侵襲的な措置であり安易に導入するべきではない。
口から食べる喜びや食事をする際の人との交流まで奪ってしまうことを考えると、
胃ろう・絶経口食は最後の手段とするべきである。
時間をかけてケアすれば、嚥下に困難のある高齢者でも
口から普通に飲み食いすることができるようになることもある、
そういう人たちに必要なのはナーシング・ケアである。
経管栄養の患者数は急増しており、
ある調査によると06年から07年で11.6%も増。
ある調査によると06年から07年で11.6%も増。
この問題には、私は非常に大きなこだわりを持っていて、
当ブログでも以下のエントリーなどで何度か取り上げてきました。
当ブログでも以下のエントリーなどで何度か取り上げてきました。
ヘンだよ、Ashleyの胃ろう
有吉先生の卵焼き
食事介助の時間短縮策としてのみ語られる胃ろう(Wilfond論文)4(2009/4/27)
認知症が進んだ人の胃ろう、利益と害の検証が不十分(2009/4/27)
「老人は口から食べられなくなったら死」……について(2009/11/4)
「食べられなくなったら死」が迫っていた覚悟(2009/11/5)
有吉先生の卵焼き
食事介助の時間短縮策としてのみ語られる胃ろう(Wilfond論文)4(2009/4/27)
認知症が進んだ人の胃ろう、利益と害の検証が不十分(2009/4/27)
「老人は口から食べられなくなったら死」……について(2009/11/4)
「食べられなくなったら死」が迫っていた覚悟(2009/11/5)
私のこだわりは、もちろん、重症重複障害児の母親としての体験からくるものです。
大きくは2つの出来事が記憶にあります。その1つを以下に。
大きくは2つの出来事が記憶にあります。その1つを以下に。
ーーーーー
娘のかつての主治医は、家族全体の生活をちゃんと見てくれるし
説明もきちんとして、こちらの意見も取り入れてくれる、とてもいい先生だったのだけど、
欠点といえば2つだけあって、1つは点滴がものすごくヘタクソだったこと。
もう1つが、その時々に先生に訪れる“マイ・ブーム”。
説明もきちんとして、こちらの意見も取り入れてくれる、とてもいい先生だったのだけど、
欠点といえば2つだけあって、1つは点滴がものすごくヘタクソだったこと。
もう1つが、その時々に先生に訪れる“マイ・ブーム”。
低身長での成長ホルモン治療の研究をやっていた時は大して低くもない重症児の親にまで、
「ちょっと背が低いんじゃないかと思うんだけど」と持ちかけては迷惑がられていた。
「ちょっと背が低いんじゃないかと思うんだけど」と持ちかけては迷惑がられていた。
ウチの娘は背が高いほうなので、この時は声をかけられなかったのだけど
この先生のかなり長期にわたって続いた“マイ・ブーム”の1つが胃ろうだった。
この先生のかなり長期にわたって続いた“マイ・ブーム”の1つが胃ろうだった。
もう、ずいぶん前のことで
ちょうど高齢者医療で胃ろうが“すばらしい新技術”として導入され広まり始めた頃。
ちょうど高齢者医療で胃ろうが“すばらしい新技術”として導入され広まり始めた頃。
実際に、誤嚥性肺炎をよく起こして苦しんでいた超重症の数人がやってみたら
体重まで増え始めたんだよ、すごい技術だ、と、会うたびに感嘆しつつ話になった。
その口調には「ウチでも、もっとやってみたい……」感がにじみ出ていた。
(滲ませてしまう先生が正直者なだけで、科学者としての医師としてはそういうものなのでしょう)
体重まで増え始めたんだよ、すごい技術だ、と、会うたびに感嘆しつつ話になった。
その口調には「ウチでも、もっとやってみたい……」感がにじみ出ていた。
(滲ませてしまう先生が正直者なだけで、科学者としての医師としてはそういうものなのでしょう)
私は先生から聞く新技術の話にも、先生の「やってみたい」意識にも違和感と警戒感があって、
「でも、“食”はカロリーだけの問題じゃないんじゃないっすか」と反論しながら、
それでも、当時、うちの娘は、育ち盛りで、全介助で刻み食とはいえ
口からバクバク食べまくり飲みまくって何も問題はなかったので
“ブーム”がこっちに飛んでくることはないだろうと思い込んでいた。
「でも、“食”はカロリーだけの問題じゃないんじゃないっすか」と反論しながら、
それでも、当時、うちの娘は、育ち盛りで、全介助で刻み食とはいえ
口からバクバク食べまくり飲みまくって何も問題はなかったので
“ブーム”がこっちに飛んでくることはないだろうと思い込んでいた。
ところが、ある年のケース・カンファレンスで
(当時、ケース・カンファには保護者も参加させてもらっていた)
「ミュウちゃんも逆流の検査をしてみたら、どうだろう」と先生が言い出した。
(当時、ケース・カンファには保護者も参加させてもらっていた)
「ミュウちゃんも逆流の検査をしてみたら、どうだろう」と先生が言い出した。
一見問題がなくても検査してみたら胃からの逆流が見つかることがある
すぐに胃ろうを考える必要はないが、将来の可能性を考えると
そのうち一度、逆流の検査だけは考えてもいいのではないかというのが
一応の先生の言い分だった。
すぐに胃ろうを考える必要はないが、将来の可能性を考えると
そのうち一度、逆流の検査だけは考えてもいいのではないかというのが
一応の先生の言い分だった。
私は既に、先生との会話や議論を通じて
”カロリーと栄養”だけの問題にして”食”の問題を省みない胃ろう周辺の医療文化に
大きな偏見を抱いていたし(利益になる患者さんは全然いないと言っているわけではありません)、
「やってみたい」への警戒の壁がするすると上がった。
”カロリーと栄養”だけの問題にして”食”の問題を省みない胃ろう周辺の医療文化に
大きな偏見を抱いていたし(利益になる患者さんは全然いないと言っているわけではありません)、
「やってみたい」への警戒の壁がするすると上がった。
いかに“マイ・ブーム”でも、この子にまで言うか……という呆れ顔に一瞬なりつつも、
スタッフはさすがに黙り込んでいたけど、
スタッフはさすがに黙り込んでいたけど、
もともと私は婉曲な会話ができない「まっすぐ」な社会的バカなので、「まっすぐ」に反論。
議論となって、やりとりは、どんどんヒートアップ。
議論となって、やりとりは、どんどんヒートアップ。
ついに先生と私の言い争いの様相を帯びてきたところで、
見かねた看護師長(当時は婦長だった)が割って入った。
見かねた看護師長(当時は婦長だった)が割って入った。
その時に師長さんがいったことは、私は歴史に残す価値がある言葉だと思うのです。
先生、ミュウちゃんも将来的には重度化して摂食の問題が出てくるだろうというのは
私たちも考えておかなければならないことだと思います。
でも、今のミュウちゃんは、まだ口から食べることができています。
もうちょっと先には、問題も出てくるかもしれないし、検査も必要になるかもしれないけど、
それは、その時に考えたらいいじゃないですか。
それまでは、彼女がどこまで今のように口から食べ続けられるか、
そこにこそ、私たち看護職の仕事があるんです。
先生、経管栄養を急いで考える前に、
まず私たち看護師に、私たちの仕事をやらせてください。
私たちの看護で、どこまでやれるか、それでどうしてもダメな時がきたら、
またその時に、みんなで考えてはどうでしょうか。
私たちも考えておかなければならないことだと思います。
でも、今のミュウちゃんは、まだ口から食べることができています。
もうちょっと先には、問題も出てくるかもしれないし、検査も必要になるかもしれないけど、
それは、その時に考えたらいいじゃないですか。
それまでは、彼女がどこまで今のように口から食べ続けられるか、
そこにこそ、私たち看護職の仕事があるんです。
先生、経管栄養を急いで考える前に、
まず私たち看護師に、私たちの仕事をやらせてください。
私たちの看護で、どこまでやれるか、それでどうしてもダメな時がきたら、
またその時に、みんなで考えてはどうでしょうか。
私はこのエピソードを、
看護学部の授業では必ず1度は語るようにしている。
看護学部の授業では必ず1度は語るようにしている。
そのカンファレンスから、もう10年近くが経ち、
師長さんは、その後、他の病棟勤務を経て総師長となり、既に退職された。
師長さんは、その後、他の病棟勤務を経て総師長となり、既に退職された。
ウチの娘は、その後、体のねじれも進み、
確かに飲食の際の「むせ」が少しずつ多くなって、
いつからか、お茶にはとろみを付けるようになったし、
いよいよ経管も考えなければならない日が近いのかなぁ……と気を揉んだこともあったのだけれど、
確かに飲食の際の「むせ」が少しずつ多くなって、
いつからか、お茶にはとろみを付けるようになったし、
いよいよ経管も考えなければならない日が近いのかなぁ……と気を揉んだこともあったのだけれど、
園にも導入を検討してもらえないかとOTさんに提案してみたら、
ちょうど摂食委員会でも「滑らか食」を検討しているところだということで、
数ヵ月後から導入してもらえた。
ちょうど摂食委員会でも「滑らか食」を検討しているところだということで、
数ヵ月後から導入してもらえた。
ウチの娘の「むせ」は目に見えて減り、今でも変わらず口から食べている。
(ついでに座位保持装置のフィッティングをやりなおしてもらったら側わんも大きく改善した)
(ついでに座位保持装置のフィッティングをやりなおしてもらったら側わんも大きく改善した)
もう成長期ほどではないけど、この子は昔からハッピーな時にはバクバク食べる。
「えー、まだ食べるってか? アンタは一体バケモンかよ」などと言われても「ハ!」
大好きな白ゴハンを3回もお代わりしてみせたりもする。
「えー、まだ食べるってか? アンタは一体バケモンかよ」などと言われても「ハ!」
大好きな白ゴハンを3回もお代わりしてみせたりもする。
親が食べているものを、箸が口に入ろうとする瞬間に横からグイっと腕を引かれて
「それ、食わせろ」と、鳥の雛みたいな大口あけて、せびられることも、しょっちゅうだ。
「それ、食わせろ」と、鳥の雛みたいな大口あけて、せびられることも、しょっちゅうだ。
「ちょっとぉ、でも、これ、熱いよ」
「ハ! (でも食べたいっ)」と、さらに大口をあけて催促する娘に大笑いしながら
しぶしぶ自分の食い扶持をふーふーしながら分けてやる……そんな親子の食事の時間の豊かさを、
できる限り、長くこの子に味わせてやりたい、と思う。私たち親も、味わいたい。
「ハ! (でも食べたいっ)」と、さらに大口をあけて催促する娘に大笑いしながら
しぶしぶ自分の食い扶持をふーふーしながら分けてやる……そんな親子の食事の時間の豊かさを、
できる限り、長くこの子に味わせてやりたい、と思う。私たち親も、味わいたい。
それが、他になすすべもなく、この子にとって大きな苦痛になってしまう日までは。
その後、上記カンファの師長さんの後で、きわめて管理的な姿勢の師長の着任で、
子どもたちからどんどん笑顔が消えていった不幸な時代の体験。
子どもたちからどんどん笑顔が消えていった不幸な時代の体験。
2010.01.07 / Top↑