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Daniel Hauser君はミネソタ州在住の13歳。
ホジキンリンパ腫という癌を患っている。
一度、抗がん剤治療を受けて癌が縮小したと思っていたが、
また大きくなっていることが判明。

医師は抗がん剤と放射線で治療できると説いたが、本人はもうイヤだと拒否。

母親Colleenさんも 
Nemenhah Band と呼ばれるアメリカ・インディアンの宗教グループの自然療法を信じており、
サプリやイオン水などで治療している、体に毒物を入れるのは宗教信条に反する、と抵抗。

そこで、病院が州に介入を求め、
裁判所はDaniel君に抗がん剤治療を命じた。

裁判所の命令では月曜日に病院にいくはずだったが、
母親は息子とともに逃亡。現在、警察が追っている。

裁判所はDaniel君を施設に入れて(つまり親から親権を剥奪し)
癌の専門医の診断を仰ぎ、今後の治療方針を決めよ、と命じている。

ちなみに、事件の展開に直接関係があるとも思えないけれど、
Daniel君には学習障害があり文字が読めない。

祈りで治そうとして糖尿病の娘を死なせた親の事件
火曜日にインタビューに出てきていたWisconsin大学の宗教学者 Peters教授がここでも登場し、
「こういう事件が厄介なのは
みんなが子どもの最善の利益を考えて動いている、という点」と。

以下のWashington Timesの記事によると
2003年にユタ州の Darren and Barbara Jensen夫婦が
抗がん剤治療の命令を拒否してIdahoまで逃げた例があるとのこと。

夫婦は有罪を認めたが、収監されることも罰金を科せられることもなかった。
Jensen夫妻はこうした問題での親の決定権規定を求めるアドボケイトとなっている。

Chemo case raises parental rights issue
The Washington Times, May 21, 2009



2006年には同じくホジキンリンパ腫の15歳の少年 Starchild Abraham Cherrixの
抗がん剤治療を続けず代替治療に切り替えたいとの主張を裁判所が認めて
和解に持ち込まれた画期的なケースがありました。

当時、リアルタイムでニュースを追いかけましたが、
堂々と自分の言葉で主張を述べるCherrix君の姿が印象的で
とても興味深い事件でした。

Cherrix君のケースについてまとめた当ブログのエントリーはこちら

乳児の腰椎穿刺をめぐっては
2002年にアイダホでMueller事件

腎臓透析を拒んで親権を剥奪された母親が我が子を病院から誘拐した
2006年シアトル子ども病院でのRiley Rogers事件

シアトル子ども病院生命倫理カンファでも米国小児科倫理の大物Dr. Lainie Rossが
「小児科における治療拒否」という興味深い講演を行っており、
Mueller事件における医師の行動を過剰だと批判しています。
内容はこちら

同じカンファでDr. Diekemaも小児科医療で意見が対立した場合の
子どもの最善の利益をめぐって講演しています。
これもまた、いろいろな意味で興味深い内容。
詳細はこちら
2009.05.21 / Top↑
男はLas Vegas出身で33歳の Jeff George Ostfeld。
Ostfeldは5月15日にメキシコで動物用の鎮静剤を購入する目的で
隠蔽用の容器まで持参してVegasから Texas州McAllenに飛んだ。

国境の橋で身柄を拘束された時には
バルビタール1000ミリとペントバルビタール200ミリを所持。
裁判所記録には「不特定の人の自殺を幇助する目的で購入」と記載されている。

Ostfeldが後にしたホテルからは
Oregon州の女性Jennifer Maloneさんの遺体が発見された。

ホテルの部屋からはウツ病に関する本のほか、
空になった抗不安薬の処方ボトルが見つかった。



確定的なことは書かれていませんが、

自殺を希望するウツ病の女性が
Oregon州の尊厳死法では医師による合法的幇助を受けられないため、
Texas州にやってきて、違法な助けを受けて自殺した、と考えられそうな事件。

獣医用の鎮静剤がメキシコから入って違法な自殺幇助に使われているという報道は
以前から、よく目にしていましたが、

2月以降問題となっているFENの違法な自殺幇助のネットワークなどと
このOstfeldという男性が繋がっているのかどうか、気になります。

いずれにしても、
自殺幇助合法化で議論されている
「ターミナルな病状で耐え難い苦痛がある」人という対象条件から外れた人の
自殺幇助が闇で行われている、ということではないでしょうか。

そこに蠢いているのは
「本人にとって主観的に耐え難い状況があり、
自己選択として死を望むのであれば手伝いますよ」という人たちであり、
「客観的な状況は問わず、死の権利は自己決定権」という文化。

「障害を負ってまで生きるくらいなら死んだほうがマシ」という嘆きに対して
過剰に共感的な──。


【8月5日続報】
公判でinsanity(精神状態による責任能力のなさ)を主張する予定だとか。
http://www.chron.com/disp/story.mpl/ap/tx/6559982.html


2009.05.21 / Top↑
英国議会での自殺幇助合法化法案、来月投票だと。他の記事で、党議拘束はずす、と。
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1184536/Lords-vote-legalising-euthanasia.html

新しいMRSAが広がっている脅威。感染すると死亡率5割以上。(新型インフルエンザでも思うのだけど、人間社会が遺伝子に手を出したことが遺伝子の変異をすごく速くしている……なんてことはないのかな。こんなふうにウイルスと強くなる速度競争をやらかしてしまったら、本当に超人類を作る以外に手がなくなって、障害者への切り捨てインセンティブがさらに働きそうだけど、そんな競争にそもそも勝ち目なんか、あるのか? こんな競争自体が人類滅亡のシナリオに思えるんだけど)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/8058841.stm

Googleマップがプライバシー法に触れる、とドイツで変更を迫られている。
http://www.nytimes.com/2009/05/20/technology/companies/20google.html?_r=1&th&emc=th
2009.05.20 / Top↑
米国の事例に関連した検索をしていたら
厚労省の終末期医療のあり方に関する懇談会資料がひっかかってきて、
軽い気持ちで覗いてみて、ものすごくびっくりした。

植物状態の人から栄養と水分の供給を停止して餓死させるというのは
日本でも行われていた──。

植物状態患者と高齢者の終末期医療
厚生労働省 第3回終末期医療のあり方に関する懇談会 2009年2月24日
社会福祉法人 聖ヨハネ会 桜町病院 名誉医院長 石島 武一


この資料が挙げている92年の脳外科71施設では
11%強の施設で栄養と水分の供給停止を経験している。

米国を始め、一部の国々のラディカルな医療倫理によって
起こっていることだとばかり思っていたので、
既に日本でも行われていたのだと知ると、
ちょっと呆然となるくらいのショックを受けた。

そして、ものすごく素朴な疑問が浮かぶのだけど、
人工呼吸器をはずして窒息死させたら殺人行為になるのに
栄養と水分の供給を停止して餓死させるのは殺人にならないのは、どうして──?

前にも書いた疑問も芋づる式によみがえってきた。

成人患者から呼吸器を外したら殺人になるのに、
患者が小児だったら今も既に外されていて、殺人にならないのは、
それもまた、どうして──?

           
もっとも、この資料では「米国における延命治療中止裁判」として
75年の Karen Ann Quinlan事件と
90年の Terri Schiavo事件の2件しか挙げられていないけれど、

でも米国における延命治療の現状となれば、
当ブログで読んできたニュースの感触では
きっと中止・差し控えがもう慣行化していて
病院側と家族とがよほど対立しなければ裁判にもならないし
表に出てくることもないのだろうな……と。

それよりも、今の米国での最先端議論の焦点は、おそらく、


そんなあたりにシフトしてしまっているんじゃないかと思われることこそ
本当はものすごく怖いのに……と思う。

米国での議論を参照して
日本の終末期医療の問題を議論するのなら、
もっと広く英米の医療で起こっていることを見据えた上で考えてもらいたいと思う。

植物状態の人や終末期の高齢者への治療の差し控えや中止を法整備した後に
今度は議論がどこへ向かって行くのか、

終末期医療の議論が、自殺幇助合法化にまで飛躍している――。
自殺幇助合法化の議論が行われれば行われるだけ「死の自己決定権」という概念が広まっていく――。
「抗がん剤はダメだけど自殺幇助ならOK」という話まで飛び出す――。
終末期でなくても障害者の医療は差し控えられる――。

今の英米で起こっている諸々を参照すると、日本国民の多くは
終末期医療を考えるのに、もう少し慎重になろうと思うのではないだろうか。
2009.05.20 / Top↑
前のエントリーで取り上げたWisconsin大学病院での
障害者に対する肺炎治療差し控えに関連して
同じくNDYのブログが参照を勧めているのが、

Syracuse 大学の障害学関連機関から出された
障害者の延命ケアと治療に関する声明。

あまり吟味せずに仮訳してみたものですが、とりいそぎ以下に。

障害のある人の延命ケアと治療に関する一般原則声明

以下の理由により

・全ての人に基本的人権、市民権、憲法上の権利がある。

・これら基本的人権の中には、延命ケアを受ける権利、および自己決定と自律の権利が含まれている。

・認知、精神、情緒、発達、知的、感覚、身体のいずれかの障害があることを理由に、これらの権利がおろそかにされてはならない。

・自己決定と自律を行使する能力が不足している人の代理として行動する人は、彼らの基本的人権を決しておろそかにしてはならない。またつねに本人の権利と最善の利益によって行動しなければならない。

さらに、以下の理由によって

・障害は人間の自然な状態である。

・歴史において、障害のある人々は偏見と差別を受けてきた。

・障害は人々の基本的人権を剥奪する正当化に使われてきた。

・特に重い障害のある児・者は基本的人権の侵害を受けやすい。その中にはルーティンの治療、栄養分と水分といった延命ケアと治療の剥奪も含まれる。

・障害のある人の中には、状況が変われば自己決定と自律の権利を行使できる人もいる。

・仮に自分が障害を負った場合に何を望むかを、障害のない人があらかじめ予測できるわけではない。

・延命ケアと治療に関して意思決定の能力がある人の、十分な説明を受けた上での決定は尊重されなければならない。

・ 延命ケアと治療について自己決定と自律の権利を行使する能力が十分でない人については、家族、友人、法的に認められた代理人が、本人の命を脅かさない限りにおいて、こうした事柄について十分な説明を受けた上での意思決定を支援することができる。

以下を帰結する:

基本的人権をまっとうし、社会において障害のある人々が歴史的に受けてきた扱いを認識すれば、

・障害のある人々には延命ケアと治療、および自己決定と自律の権利を行使する資格がある。

・死が間違いなく差し迫っており、延命ケアまたは治療が客観的に無益であって、ただ死のプロセスを長引かせるだけである場合を除き、障害のある人が延命ケアまたは治療を拒否したいと望んでいるとの明白で説得力のあるエビデンスなしに、そうしたケアまたは治療が差し控えられたり中止されてはならない。

・生涯に渡って認知障害を負っている人や、延命ケアと治療に関して自己決定を行う能力を一度も持ったことのない人であっても、死が間違いなく差し迫っており、ケアまたは治療が客観的に無益であって、ただ死のプロセスを長引かせるだけである場合以外には、そのようなケアと治療が差し控えられたり中止されてはならない。

・延命ケアと治療を提供すべきかどうかについて疑いがある場合の推論は常に、そうしたケアと治療を提供する方向寄りに行われなければならない。

【注】 原文中の life-sustaining は
必ずしも慢性的な終末期を前提としていないことを考えると
「延命」とすることには抵抗があり、
肺炎の治療差し控えが問題となっていた前のエントリーでは「命に関わる」と訳したのですが、
ここでは何度も出てきて、中には終末期を含む文脈もあるので
迷った末に、とりあえず通常訳されている通りに「延命」としました。

原文は以下に。
(賛同署名も個人・組織別にできます。)



Syracuse 大学のthe Center on Human Policy, Law, and Disability Studiesのサイトはこちら
2009.05.20 / Top↑
Not Dead Yet のブログによると、

障害のある人2人に対して命に関わる治療を差し控えて法を侵したとして
障害者の人権監視団体 Disability Rights Wisconsin(DRW)が
Wisconsin大学病院を訴えた、とのこと。

(”life-sustaining ”となっているので終末期であれば「延命治療」と訳されるところ、
この場合、仮に終末期だったとしても急性期の話なので「命に関わる治療」かな、と。
文脈からすると、いっそ「救命治療」だったような気がするし。)

DRWが訴訟で求めているのは
このような病院の慣行の変更と
これらのケースの調査に要した費用4700ドルと訴訟費用。

DRWとは、Ashley事件で調査に入り報告書をまとめたWPAS(現DRWただしWはWashington)と同じ組織で、
連邦政府からの資金を受け、一定の調査権限を認められた監視団体。

2人の患者はともに明らかに肺炎と分かる症状だったとのこと。

1人は亡くなり、
もう片方は助かった。

亡くなった患者の治療については両親が差し控えを求めた、とDRWの訴状にある。

助かったほうの患者では
ガーディアンが最初は治療の差し控えに同意したものの、
後になって撤回した。

州法では、
自分で意思決定できない人に代わって親や代理人が
治療の差し控えに関する意思決定を行うことができるのは
本人が「永続的植物状態」にある場合のみであり、
この2人のケースには当たらない、とDRW。

一方、病院側は
いずれのケースでも患者の最善の利益で行動した、
また家族の意向を汲んだだけだと主張し、

病院スポークスマンは
「このケースは
患者の親と家族が患者の最善の利益に基づき個人的な医療決定を行う能力の問題」。

ある倫理学者も、今回の訴訟によって
子どもや障害者など弱い立場にある患者に代わって
親やガーディアンが医療に関する決定を行うことが許される範囲が
州法において明確化されるのではないか、と。

DRWの弁護士は
UW病院の医師の中には障害のある人の生命の質を低いとみなして
それによって通常よりも早く治療を中止することを提案している者がいるのでは、と述べ

「WI大学病院はいい病院で、患者に素晴らしい医療を提供している。
死に瀕しているわけではない障害者にもそれと同じ素晴らしい医療を提供して欲しい。
我々が望んでいるのは、ただそれだけのこと」



なお、NDYのStephan Drake氏はこの記事末尾で
こういう場合に法定ガーディアンが治療を拒否できる基準を
2月にPennsylvania州の裁判所が出しているので参照せよとしています。

その基準については当ブログでまとめたものがこちらに。

           
それにしても、Wisconsin大学病院側の言い草。

「治療さえすれば助かる命だけど、ここは見殺しにしようね」という判断が
どうして「プライベートな医療判断」なんだ??

「無益な治療」ですらないじゃないか、そんなの──。


---- ----


Wisconsin大学病院といえば……あのNorman Fostがいる。
この論争にも、いずれ出てくるかもしれない。

なにしろ彼の持論
「コストが関係してくる以上、誰の命を救うかは社会が決めること。
医療の判断は医師がすることだから、治療を拒否したいなら裁判所など無視すればいい」。

2009.05.20 / Top↑
それぞれ父親が違う双子が誕生。母親が当時“浮気”していた。……と、まだ結婚していない母親と婚約者の男性が、実名で公表。双子は既に11ヶ月。(タイトルを見た瞬間、遺伝子操作でやってみたかった医師がいたのだとばかり……。世界に何例かはあるらしいから、また驚く)
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/150463.php

知能の高い人の方がそうでない人よりも健康で、それは遺伝子の健康度によるんだそうな。英米の研究者の研究。(いかにも、こういう仮説を思いつきそうな人たちの価値観によって今の科学研究の範囲が実はものすごく限定されているのかもしれない、ということも考えてみるほうがいいんじゃないか、と思う。)
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/150404.php

戦場に送られる兵士にも人権法は適用され、命の権利がある、と英国上訴裁判所の判断。不備な装具で前線に送られ、死亡した兵士の家族からの訴訟で画期的な判決。
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/uk/article6310732.ece?&EMC-Bltn=GCKGOA

前立腺がんの3分検査ができるらしい。最近なにかと前立腺がんの話題が目に付く。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8055681.stm

自分の海外出張に、12歳の娘を学校を休ませて連れて行ったと英国の教育相が批判されている。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/northern_ireland/8056974.stm

NY Timesが「医療における患者心理」テーマ?の3題。最後の「患者は成長する」というのは、個人的にも実感。障害児の親も。ただ本当に成長すると、患者も親も専門家にとっては扱いにくくなる。
http://www.nytimes.com/2009/05/19/health/19well.html?_r=1&th&emc=th
http://www.nytimes.com:80/2009/05/19/health/19hosp.html?th&emc=th
http://www.nytimes.com/2009/05/19/health/19case.html?th&emc=th

イラクの米軍基地での兵士による乱射事件受け、NY Timesに兵士の心理的負担を考えるコラム。
http://www.nytimes.com/2009/05/19/opinion/19herbert.html?th&emc=th

「Dan Brownのアメリカ」というコラム。「天使と悪魔」読んで、さらに観たばかりだから、気になるけど今日のところはパス。
http://www.nytimes.com/2009/05/19/opinion/19douthat.html?th&emc=th
2009.05.19 / Top↑

11歳の娘 Kara Neumannの糖尿病が悪化しているにもかかわらず祈りによって治そうと
医師に診せずに死なせてしまった母親の裁判の準備が14日に始まった。

事件が起きたのはWisconsin州。

Faith Healing Court Cases
Religion & Ethics, May 15, 2009


この中で驚くのは
Oregon州Portland郊外に小さな墓地があり、そこには
祈りの力で病気を治せると信じる教会the Followers of Christ の信者の子ども
少なくとも75人が埋葬されている、という事実。

Wisconsin大学の宗教学者Shawn Peters教授の話では
Oregon州法には1999年まで、
祈りで治そうとする行為に除外規定があったため、
ここに埋葬された子どもたちの親はいずれも罪に問われていない。

こうした悲劇は米国のメインストリーズから外れたところで隠れたままになっており、
表に出るのは実は氷山の一角だろう、とPeters教授。

「問題を厄介にしているのは親が子どものために最善と信じることをやっている点」と。

Oregon州は1999年に除外規定をはずしたが、
今でもWisconsinを含む30の州には残っている。

今回、そのWisconsin州で
検察はKaraの両親の起訴(過失致死容疑)に踏み切ったわけだが、
そこで介入してきたのがChristian Science 教会

同教会は除外規定を含む最初の州法を書いた経緯もあり、
Neumann事件を機に、医療と信仰のバランスをとり子どもが守られるべく
新たな法規制を提案するという。

こういう教会が法文を書いたとか、
今回も親の逮捕で出張ってきて妥協案を云々している……みたいな話になると、

進化論を教えるな、インテリジェントデザインも教えろ、という
日本人にとっては冗談としか思えないような論争が
不気味なリアリティをもって思い返される。

そういう文化が今だに根強い国で、
遺伝子を調べて、病気予防だといって健康な内臓を取ってしまうような
科学とテクノロジーで何でも簡単解決文化が共存しているって、なんだか、ものすごく気色が悪い。


      ――――――――――

ところでWisconsin州で医療倫理がらみの事件となると必ず登場するのが、
Ashley事件の陰の立役者ではないかと当ブログで考えているNorman Fost教授。
Wisconsin大学の小児科医であり生命倫理学者。

この記事でもインタビューを受けています。
(上記リンクにビデオも)

ちなみに、世界で初めてヒト胚からES細胞を作り出したThompson教授に
ES細胞研究への倫理的なためらいを吹っ切らせたのが、このDr. Fost

この事件に関するインタビューでFostが言っているのは概ね、

「糖尿病の子どもの大半は適切な医療を受ければ
ほぼ通常の生活が可能になるので、
Karaさんも死ななくても済んだ可能性がある。

Karaさんの両親が有罪になったとしても、
自分としては懲役の必要まではないと思う。

ただ、親を刑事罰に問うことによって
『州の子どもを守ろうとしている』州の姿勢を示すことができる」

これだけだと至極まっとうに聞こえるのですが、
この同じ人物が米国で最も急進的なステロイド解禁論者で
「リスクがないわけじゃないとしても、自分の体なのだから
自己選択・自己責任でやりたいなら、やらせればいいじゃないか。
リスクを言うなら、フットボールやボクシング自体がもともと危険」と
なんとも乱暴な論理を振りかざし、

(ただし自分は頭痛薬すら極力飲まないようにしている)

Ashley事件では知的障害者への嫌悪感を露わに
「障害児の医療では親の選択権がすべて」と主張。

そして米国小児科医療倫理業界の大ボスとして、
重症障害児の命そのものを無益と呼ばわり、
重症障害児には裁判所など無視して「無益な治療」概念を適用せよと
小児科医相手に説く。

この件について
司法の介入によって州が「州の子どもを守る」姿勢を示せるのだと言うのは、
障害児への「無益な治療」では司法を無視せよと説くこととも、
障害児の体に医療で手を加えるのは「親の決定権が全て」との主張とも
矛盾しているのではないのか。

結局、Fostが言っていることは
「科学とテクノロジーの論理にかなう限りにおいて、
子どもの医療は親の決定権だし
自分の体も自己選択・自己責任」
という意味でのみ一貫性を持つのでは──?
2009.05.19 / Top↑
DISABILITY MATTERS という障害者アドボカシーのブログが
NY Timesが4月にObama大統領に行ったインタビューの中から
医療改革に関する気になる発言を指摘して
標題通りのタイトルの記事を書いています。

まず指摘されることとして、

“Ultimately, he’s the guy with the medical degree.”という表現を使い、
その前後の発言で大統領が語っているのは
患者の無知に対する医師の専門性の優位。

(この人、何の躊躇もなく代名詞 he を当てるのね……)

しかし現在のように「無益な治療」や安楽死が説かれて
医療が功利的な価値観を先鋭化させている中で
そう無条件に医師の専門性に優位性すなわち権威性を認められては困る、というのが
このブログの指摘。

特にまた別の箇所でObama氏は
「医療における政府の役割の1つは
国民の税金を財源とするメディケア、メディケイドにおいて
治療の有効性に関するアセスメントを行うこと。

現在は、国民をより健康にするわけではないことに
資金が使われすぎている」と述べており、

つまり、ここで言われているのは「無益な治療」概念そのものであり、
その治療によって、より健康になるのであればゼニは出してやるが
それで健康になるわけでないのだったら治療は受けられないよ、という話ではないのか、

医療の中で最もゼニがかかるといわれている終末期など、ずばり当てはまるぞ、と。

(ついでに日本のリハビリ制限も同じ路線ですね。
先の医療費削減に結びつかないリハビリは認めない、と。)

さらに大統領は治療効果のコスト効率の比較研究の重要性も強調しているが、
これを現場に移せばOregon州のように
抗がん剤を拒否されて自殺幇助を薦められる患者が出てくることになる。

大統領は選挙キャンペーン中に亡くなった祖母の話を持ち出してもいる。

既に末期がんだと診断されていたのにも関わらず
放っておくとQOLが低くなるからと腰の骨折手術を受けるよう、医師に勧められた。
ところが祖母は手術を受けた2週間後に容態が急変して亡くなった、と。

余命が3ヶ月か6ヶ月か9ヶ月か判然としない高齢のがん患者が骨折した場合に
その手術をするべきかどうかは難しい判断だが、と前置きして
Obama大統領が提案するのは

Well, I think that there is going to have to be a conversation that is guided by doctors, scientists, ethicists. And then there is going to have to be a very difficult democratic conversation that takes place. It is very difficult to imagine the country making those decisions just through the normal political channels. And that’s part of why you have to have some independent group that can give you guidance. It’s not determinative, but I think has to be able to give you some guidance. And that’s part of what I suspect you’ll see emerging out of the various health care conversations that are taking place on the Hill right now.

私が思うのは、医師、科学者、倫理学者の主導する話し合いがあるべきだろう、ということです。とても難しい民主的な話し合いがあるべきだろう、と。通常の政治手段だけで国家がそういう決定を行うのは考えられません。だから、アドバイスができる独立したグループが必要になるでしょう。決定するというのではなく、ガイダンスができるグループ。今、議会で行われている医療改革議論の中から、そういう仕組みも出てくると思います。

この発言と、
「専門職の優越性」
「治療の有効性を評価する政府の責任」
「コスト効率の比較研究の必要性」とを合体させると、

確かに、そこから導き出されてくるのは
テキサスなどの無益な治療法──。

この語り口調からすれば、
病院倫理委員会が「そういう仕組み」として使われるということなのでしょうが、
病院倫理委は(Ashley事件に見られるように)いかに恣意的・政治的操作に対して脆弱であることか……。

政治経済のニーズ、科学とテクノロジーのニーズに取り囲まれて
医療倫理という学問は一体なにものになろうとしているのだろう……と考えてしまった。

ちょっと変な表現だけど、「医療倫理」のアイデンティティって? みたいなことを。

Is Obama the First Pro-Euthanasia President?
DISABILITY MATTERS, May 12, 2009


【関連エントリー】
Obama大統領の医療改革は功利主義?(2009/1/21)

こちらの1月のエントリーで
政府が公費負担の治療内容を決める英国型システム導入をObama政権が狙っていることに触れましたが、
それに反対する対抗勢力がテレビコマーシャルでキャンペーンに乗り出したとのこと。

英国国民が登場してはNHSの医療がいかにひどいかコキ下ろし、
かつてWHOの癌プログラムのディレクターだったという英国人医師が
市場主義の競争がなければ質は維持できず官製独占医療は機能しない、と説くもの。

(Sikora医師の発言部分は以下の記事にビデオあり)

受診時原則無料のNHSとでは制度の枠組みそのものが違って、
単純には比較できないだろうと思うし、

Sikora医師が「競争がなければ患者を治そうというインセンティブも働かない」といわんばかりなのには
それって、医師の発言として、そもそも一体どうよ……と思ってしまうけど。


2009.05.19 / Top↑

1つは、CDCの新たな長官への
New York 市の保健医療コミッショナー Thomas R. Frieden氏(48)の抜擢。

(この人、豚インフルでNYで死亡者が出たという昨日夕方のニュースに出てました。
 顔の長い、あの人。)

氏はNY市における7年間の在任中、
禁煙の推進やトランス脂肪の消費削減にアグレッシブに取り組んで
時に批判を受けてきた人物。

Obama大統領は
「心臓病、ガン、肥満、肺炎とエイズなどの伝染病との闘いの最前線に立ち、
また電子医療記録の確立も率先してきた」と評価している。


②その電子医療記録への予算が
経済危機につけ込んで妙なところにもぐりこんでいると
指摘しているのは同じくWPの同日の記事。


Obama大統領の7870億ドルの経済刺激策の中で、
365億ドルが医療情報のIT化に当てられている。

当面の経済への刺激には何の役にも立たないものが、
しかも下院での議論が進展せずにいたというのに
ここへきて突然勢いを得て、こんなところに組み込まれたというのは
業界からの資金を背景にした10年来のロビー活動が
今回の経済危機を千載一遇の好機と
Obamaの側近に食い込んだ成果。

医療情報が電子化されてオンラインで患者情報を共有できれば
医療が効率化されて多額の医療コストが削減できる、と
推進派は主張してきたが、

そのエビデンスを提供する研究機関the Center for Information Technology Leadershipの
理事の一人 Blackford Middletonは
草創期から電子医療技術の研究と資金調達に関わってきた人物で、

ロビー活動に資金を提供し多くのアドボケイトや研究団体に影響力を行使する
業界グループThe Healthcare Information and Management Systems Society の理事でもある。

Middletonは2004年のJohn Kerryの大統領選挙の際にも、
また去年のObamaの大統領選挙のキャンペーンにもボランティアとして加わり、
側近に食い込んで、電子医療テクノロジーの効用を説いてきた。

しかし、経済刺激策としての予算のうち、
これだけの資金を割いて推進するほどのコスト削減効果が果たしてあるか
疑問視する声も。

(確か、去年、英国でまったく同じ批判が出て
医療情報の電子化が政治問題になっていたような……)
2009.05.19 / Top↑

州の調査が終了し、
職員が携帯で撮影した問題のビデオが公開された。
ビデオは以下の記事に。

明らかに職員が自分たちの娯楽にするために、
入所者をけしかけ、その姿を笑いながら“観戦”している。

携帯で撮影しながら“実況中継”のアナウンサーを気取って、ふざける職員も。



1年以上前から夜勤の職員によって行われていたらしい。

先週、元職員6名が起訴され、
このビデオは裁判で証拠として使われた。

テキサス州にある障害児のための学校は
処遇に問題があると指摘されて久しい。

この問題発覚前の去年12月に連邦政府の市民権調査によると、
2004年から施設入所者への虐待で停職処分を受けた職員は800人以上。
2009.05.18 / Top↑
19歳の青年の性犯罪暦を隠したまま、幼い子どもが複数いる家庭に養子に出し、その19歳に養家の幼児らが性的虐待を受けたという事件で、地方自治体が全面謝罪。職員3人が停職処分。さらに追加処分もありだと。(ひどすぎる。英国の児童福祉ズタズタという感じ。)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/wales/south_east/8055067.stm

歳をとっても働き続けることがアルツハイマー病予防になる。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8048523.stm
2009.05.18 / Top↑
このところ自殺幇助の合法化について会員に意見募集を行っている英国看護学会が、

医療現場で看護師に自殺幇助について質問したり相談する患者が急増していることから
患者から自殺幇助について尋ねられた際の対応について
会員にガイドラインを出す、と。

現在の英国の法律では
自殺幇助は違法行為とされている一方で、
既にスイスのDignitasクリニックで幇助自殺を遂げた英国人は100人を超え、
その際に付き添った家族でこれまでに罪に問われた人は誰もいない。

去年、MS患者のDebby Purdyさんが法の明確化を求めた際に、上訴裁判所も
自殺目的で家族を外国に連れて行った人が罪に問われることはないとの見解を示している。

特に事故で寝たきりになってスイスで自殺した23歳の元ラグビー選手 Daniel Jamesさん
ともに末期がんになりスイスで自殺した著名な実業家 Duff夫妻
事例が報道されて以来、看護師に対して自殺幇助を口にする患者が急増している、とのこと。

これまで英国看護学会は自殺幇助に反対のスタンスを表明してきたが
自殺幇助合法化議論に中立的なスタンスに立つとの動きか?

2009.05.18 / Top↑
2月末に幹部4人の逮捕者を出し、
違法な自殺幇助が問題となっている the Final Exit Network 事件で
新たに逮捕者が4人出ています。

(2月の FEN事件の詳細はエントリー末尾のリンクから)

2月当時にも関与疑惑が報道されていましたが、

2006年に58歳の女性Jana Van Voorhisさんの自殺を幇助したとして
このたび FENの関係者4名を逮捕。

4人のうち2人は ”exit guide”と呼ばれ
会員の自殺の現場に立ち会うボランティアで
Frank Langsner と Wye Hale-Rowe。

(exit guide には、ヘリウムによる自殺に立ち会う際に、
頭にかぶる袋を脱がないように自殺者の手を押さえるなど、
直接、自殺行為に関与しているのではないかとの疑惑も出ています)

2人はともに80代で、
Langsnerは退職した大学教授。
Hale-Roweは退職した家族カウンセラー。

2人は Van Voorhis さんがヘリウムで自殺した際に現場にいて、
普通に就寝した後に特定できない原因で死んだように見せかけた、として
容疑は殺人謀議(? conspiracy to commit murder)。

2人はアリゾナ州の住民で、
この問題でアリゾナ州から逮捕者が出たのは初めて。

他の逮捕者はFENの前メディカル・ディレクター Dr. Larry Egbertと
同じくFENの“ケース・コーディネーター” Roberta Massey。

Janaさんは慢性的な精神疾患はあるもののターミナルな病気ではなかったことが
2月当時から特に問題視されていたところ。



2009.05.17 / Top↑
「米国で最も影響力の大きな医師たち」。4つの専門分野。300領域。
http://www.usatoday.com/news/health/qforma-most-influential-doctors.htm

結婚せずに子どもを産む女性が増えている。米国で生まれる子ども10人のうち4人が結婚していない親の子ども。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/05/13/AR2009051301628.html

いったん退院させられた後に再入院になるメディケアの高齢患者が増えているとの報道を受け、ケア・サービス会社が新規退院高齢患者の家族に向けて、在宅療養への移行支援プログラムを開始。キャッチは「短期の支援で長期の健康」。(この支払いは、やっぱり自費だよね。きっと。じゃぁ、低所得だと支援は受けられないのかしらん。低所得層のほうが再入院になる確率高そうな気がするのだけど。)
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/149764.php

米国医療遺伝学会、29の障害と病気について全ての新生児に遺伝子テストを実施するよう提言。
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/149780.php

前にも見たので、最近話題になっているらしいのが、他所の国から米国に養子にもらわれてくる子どもたちのワクチン接種。記録は当てにならない、と。
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/149832.php

自宅分娩を巡って病院の産科医と助産師の間に不信。互いに敵意すら。
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/149779.php

オーストラリアの製薬企業協会が一定の資格のある看護師と助産師に一定範囲の処方を認める決定を公式に歓迎。
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/149889.php

Obama大統領の医療改革に反対する保守勢力がテレビ・コマーシャル作戦に出た。このままでは米国の医療は英国のNHSと同じ悲劇をたどる、と訴えており、英国人がぞろぞろと出てきてNHSの医療をこき下ろす、というもの。元WHOの癌プログラムのディレクターだった英国人医師まで登場して官製医療を批判。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/may/13/advertising-campaign-nhs-us-healthcare-reforms
2009.05.14 / Top↑
まず、去年の記事から。

Taking steps to ease economic burden of early birth
The Puget Sound Business Journal (Seattle), July 25, 2008


米国の新生児の8人に1人が未熟児で生まれ、そのうち毎年1万人が死亡。
そのため、早産が米国の乳児死亡率を上げる主因となっている。

ワシントン州でも毎年8000人、新生児の1割以上が早産で生まれており、
1994年以降、その割合は23%も増加している。

2007年のInstitute of Medicineの報告書によると
米国の未熟児にかかる社会経済的負担は1人当たり51600ドル。
ワシントン州全体では4億ドル以上がかかっている計算になる。

そのほかにも、早産の女性は出産時の入院期間が長くなるし、
出産後にも両親が病院で過ごす時間が長い、
その後も子どもの病院通いの頻度が高い、
母親が産後の休暇を長く取るなど、
社会経済に与える影響も大きい。

しかし現在の医療戦略には早産の抑止や予防が含まれていない。

そこでシアトル子ども病院が
早産・死産の原因を突き止め、予防するべく
2007年にスタートさせたプロジェクトが
The Global Alliance for the Prevention of Prematurity and Stillbirth(GAPPS)。

GAPPSは UNICEFF、First Candle, Save the Children, CDC, WHOなど
世界の関連機関と協働しつつ

またthe Washington Global Health Alliance(WGHA)を通じて
州内の研究資源を動員し、早産・死産の原因解明に努める。

そして世界の早産・死産研究の中枢として
2009年には国際会議をシアトルで開催する。

で、
ここに書かれている国際会議が5月7-10日にシアトルで開催される、という4月の記事がこちらで、
UNICEFから出されたプレスリリースを元にしたもの。



ただし出席は招待者のみ。

GAPPSは4月24日、
以下の組織と協働して早産・死産の原因究明と効果的介入に向け努力することを公にした。

ゲイツ財団、
March of Dimes、
PATH、
Save the Children,
UNICEF, WHO

GAPPAは現在、ゲイツ財団の資金によって、早産・死産に関する研究を徹底調査をおこなっており、
その研究成果は5月7-10日の国際会議後に発表される、とのこと。

Lancetの周産期救命シリーズからの統計では
生まれて28日以内に死亡する新生児の死因の第一位は早産で、

2005年の Institute of Medicineの試算では
米国の医療費の中で早産関連のコストは260億ドルを超える。

また未熟児は救命できても、脳性まひ、脳損傷、呼吸障害、発達障害が起こりがちである。
(はっきり書いてないけど、もしかして言いたいのは「死ぬよりもゼニがかかる」?)

そこでGAPPSのexecutive director Craig Rubens 医師は
「早産・死産によるご家族の大きな苦悩を放っておくことはできない。

 早産・死産撲滅に向け、
科学、公衆衛生、研究、施策の各分野の第一人者が集まったことを
GAPPSとしては誇りに思う。

シアトル子ども病院は
多くの患者が早産に関係した障害に苦しんでいることに気づき
この問題を我々の研究の最優先課題と位置づけた」。


ちなみに、こちらのSeattle Timesの記事によると
2007年に GAPPS が立ち上げられた際にゲイツ財団から150万ドルが出ています。


       ―――――――

今回の記事のタイトルは
グローバル・ヘルスのリーダーたち、早産と死産の危機に取り組む」と謳っており、

すなわち、シアトル子ども病院とゲイツ財団とは
“グローバル・ヘルスのリーダー”であり、パートナーでもあるわけですね。

「ご家族の苦悩」に触れられているのは、わずか一回だけですが
2つの記事では、ともに医療費へのburden(負担)という言葉は何度も繰り返されており、

ここに見られるのは、
ワシントン大学のIHME がゲイツ財団、Lancetと協働で進めている
DALYによる世界の保健医療施策の見直し Global Burden of Disease プロジェクトと
まったく同じ考え方。

命を奪う病気や状態だけでなく、
命が助かっても障害に結びつく病気や状態は
医療費コストに負担を強いているので撲滅しなければならん……と。
2009.05.14 / Top↑
遺伝子に特許が認められていることがガン患者の治療情報のハードルになっていると、訴訟が起きている。
http://www.nytimes.com/2009/05/13/health/13patent.html?_r=1&th&emc=th

環境ホルモンは本当に母親のおなかの中で男児を女性化している、という研究結果。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8047230.stm

米国、メディケアも高齢者の社会保障も2017年までに資金が底をつく見込み。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8047355.stm

ソマリアで過去10年で最悪の旱魃。国民の半数が既に栄養不良のところにダメージ大。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/8047273.stm

この2つは直接には繋がっていないのかもしれないけど、何百万人もの薬の処方情報が州のコンピューターからハッカーによって盗まれた。オバマ大統領の側近が国家安全委員会の下にホワイトハウスのコンピュータ・システムを管理するサイバー・キングを置くことを検討中。これ、大統領以上の権力者になるよ……という意味で Czar?
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/05/12/AR2009051201934.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/05/12/AR2009051201743.html

ベビーブーマーが高齢者差別を懸念している。英国の調査。
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/149709.php

Baby P 事件の調査報告書がケアの質コミッションから出ている。関与した医療・福祉の専門家の誰か1人でも「ここまでやったら義務は果たしたぞ」というラインをちょっと超えていれば、Baby P は今生きていたかも知れぬ、と。(米国のIDEAをちょろっと読んだ時に感じたことがある。結局すべてが「やるべきことはやりましたよ」とアリバイ作りの書類仕事・手続き整備に過ぎないのじゃないか……と)
http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/child_health/article6276087.ece?&EMC-Bltn=OIZFNA

ロンドンの荒れる若者たち。いわゆる“ギャング”のスライド・ショー。街歩いてて、こんなのがいるなんて、イヤだ。
http://www.timesonline.co.uk/tol/template/2.0-0/element/pictureGalleryPopup.jsp?id=6251599&&offset=0&§ionName=UKCrime
2009.05.13 / Top↑
5月は米国の脳卒中啓発月間。
仕事の関係で、ここしばらく、この脳卒中月間の周辺をごそごそしていました。

その中で、ちょっと目を見張ったのが
米国心臓協会脳卒中部門 American Stroke Association の介護者支援。

ASAのサイトで「家族介護者の方へ」 → 「介護の心」とクリックしていくと、
こんなメッセージに出会います。

脳卒中や心臓病の症状は突然に起こって、人に待ったなしの役割を振ります。自分が誰かの介護をすることになるなんて、あなたは考えたこともなかったかもしれません。相手がそれまではあなたを世話してくれる立場の人だったとなれば、なおさらでしょう。まだ自分のことを「介護者」だとも思えないかもしれません。でも、心臓麻痺、脳卒中などの病気で一時的に障害を負っただけだとしても、その誰かのケアを担っているならば、あなたは介護者です。

あなたがやっているのは、愛する人の介護という、人としてできる最も重要で最も困難な仕事のひとつ。だからこそ、あなたが私たちにとって大切なNo.1なのです。介護は他の何よりも難しい仕事です。介護をしていると、悲しみや怒り、疲れ、フラストレーション、抑うつ状態、そして時に孤独に見舞われます。でも一方で、介護はやりがいのある、実りある仕事にもなります。そのためには自分のペースをつかみ、必要な時には助けを求め、そして何よりも、まず、あなた自身を大切にすることが必要になります。

ここから入っていけるカテゴリーは

Rights(介護者の権利)
Reality Check(現実的になりましょう)
Rejuvenate (健康を維持するために)
Reach Out (上手なコミュニケーション)
Responsibility (責任)
Refresh (リフレッシュ)
Replenish (栄養を取りましょう)
Resource (支援情報へのリンク)

例えば、この中の「責任」を覗いてみると、
まずこんなキャッチに出くわします。

あなたは介護者として
誰よりもまず第1に、あなたが介護している人への責任を担っていると
考えているかもしれません。

そうではなくて、
あなたが第1に担うべきはあなた自身への責任です。

そして、本文には

介護者として、自分が介護している人に対する責任が最優先だと、あなたは考えているかもしれません。しかし、最優先なのは、本当はあなた自身に対する責任なのです。家族介護者連盟の2006年の報告書 ”A Population At Risk” によると、家族介護者では高血圧、糖尿病、高コレステロールや心臓病などのリスクが高くなるなど、介護には心と体の健康リスクが沢山あることが指摘されています。またアルコール、タバコその他の薬物の使用頻度も家族介護者では高いとの報告もあります。

大切な人に最善の介護ができるためには、あなた自身が最善の健康状態でいることが必要です。心と体の健康のために、あなたもきちんと医師の診察を受け、その指示に従いましょう。また、バランスの取れた栄養豊かな食事を取り、定期的に体を動かして、タバコを吸わないようにし、趣味など自分が楽しめる活動をしましょう。それは身勝手ではなく、賢い介護者なのです

最後のゴチックは私がつけたものではなく、
サイトの文章がゴチックで強調しているものです。

なお一番最初のカテゴリー「権利」では、
以前このブログでも翻訳紹介した「介護者の権利章典」が紹介されています。

そして、罪悪感を感じることなく、こうした権利を求められるように、
介護している人にも読んでもらってはどうか、と提案しています。

(これは、しかし介護者自身は出しにくいに決まっているので、
支援するプロの方々がさりげなく他の資料と一緒に
介護する人される人の双方が読めるような自然な形で渡してくれると嬉しい。
 何よりも、もっと一般に広く周知されるといいと思う)

「権利」のページの最後にゴチックで強調されているのは

誰かの介護を担っているとしても
あなたにも健康でハッピーでいる権利があります。


【英国の介護者支援エントリー】
英国の介護者支援について


2009.05.13 / Top↑
英国の児童保護施設ケアホーム Haut de la Garenneでの、70年代の“歴史的”性的児童虐待事件で容疑者40名以上。現在46歳の男性が10歳以下の子どもへの性的虐待を2件認めた。事件で初の起訴。6月に判決。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/8045756.stm

女性の更年期のホルモン補充療法ほど、評価が急激なアップダウンを繰り返してきたものはない。2002年に心臓麻痺、脳卒中、乳がんに血栓症の恐れがあるとされて以来、エストロゲンとプロジェスチンの2剤併用がぱったり行われなくなったが、またぞろエストロゲンの専門家から揺り戻しが起ころうとしているらしい。(安全性が怪しいと成人女性が避けているホルモンを、小児期の、しかも健常児よりも虚弱な重症障害児に大量に投与しようという成長抑制療法の、一体どこが倫理的なんだよっ)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/05/11/AR2009051102793.html

現場の経験や研究の集積で児童虐待小児科学が新たな専門分野として成長、11月に初めての専門医試験が実施される。米。
http://www.nytimes.com/2009/05/12/health/12klas.html?th&emc=th

Obama大統領が、医師、病院、製薬会社、保険会社のリーダーをホワイトハウスに集め、今後10年間で2兆円の医療費を削減すると約束させたらしい。NY Timesは、歴史をかんがみても、こういう顔ぶれでそんなことができた試しはない、と。
http://www.nytimes.com/2009/05/12/us/politics/12health.html?th&emc=th

イラク最大の米軍基地のカウンセリングセンターで、米兵1人が5人を銃で殺す事件。
http://www.nytimes.com/2009/05/12/world/middleeast/12iraq.html?th&emc=th

車なしの生活を基本にするドイツの田舎町の実験。町民の7割が車を持たない。
http://www.nytimes.com/2009/05/12/science/earth/12suburb.html?_r=1&th&emc=th

イスラエル訪問中のローマ法王に、ホロコースト記念館でのスピーチで大戦中のカトリック教会の行いを謝罪しなかったとの批判。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/may/11/pope-pilgrimage-criticism

元ナチスの収容所警備員 John Demjanjuk(89)、車椅子で米国からドイツへ送還。大戦中のユダヤ人虐殺に協力したとして裁判が行われる予定。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/may/12/alleged-nazi-guard-john-demjanjuk-deported

世界の人口の3分の1が豚インフルに感染する可能性も、と英国の科学者。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8045364.stm
2009.05.12 / Top↑
患者家族が希望した場合には延命治療を継続できるように
「無益な治療法」の見直しを求める法案が
共和党のBryan Hughes議員らによって
テキサスの州議会に提出されている。

中絶反対のプロライフ・グループ Texas Right to Lifeのほか、
The Coalition of Texans With Disabilities,
Not Dead Yet のテキサス支部、
The American Civil Liberties Unionが支持。

テキサス州医師会、テキサス州病院協会や
いくつかの病院が個別に反対している。

6月1日の議会の閉会までには決着がつかない……という状況らしい。



記事で、引っ掛かりを覚えるのは
「無益な治療法」を支持する医師らが、この法律を
患者の事前指示やリビングウィルを尊重するためのものだと主張していること。

無益な治療法は
患者本人や家族の意向がどうであれ、
たとえ、もっと治療して欲しいと事前指示にあったとしても家族が望んだとしても
それを無視して病院側に治療を無益と判断し、打ち切る権利を認めるわけだから、

それを事前指示やリビングウィルの尊重だなんて、
大ウソもいいところじゃないかッ!


【テキサスの無益な治療法を巡る裁判、Gonzales事件関連エントリー】
Emilio Gonzales事件
ゴンザレス事件の裏話
生命倫理カンファレンス(Fost講演2)
TruogのGonzales事件批判
2009.05.12 / Top↑
各国から3000人を超える緩和ケアの専門家が集まって5月7-10日まで開かれた
欧州緩和ケア協会(European Association of Palliative Care:EAPC)会議において、
だいたい以下のようなことが確認された。

緩和ケアの専門的な養成過程が整備されてきた一方で
いまだ国によってばらつきがある。

緩和ケアを必要とする全ての人が病院外来と地域のクリニックで
適切なケアを迅速に受けられることを目標に、
専門教育を充実する必要がある。

ヨーロッパ各国で盛んに議論されつつある安楽死と自殺幇助については
様々に複雑な要因が含まれており、
それらを望む患者の気持ちも複雑で、尊重はしなければならないし、
こうした問題が議論されることは大事ではあるにせよ、

安楽死や自殺幇助を望んでいる患者が
緩和ケアが十分に行われれば気持ちを変えることは頻繁に起こることであり、

仮に医師による安楽死や自殺幇助が合法化されたとしても
緩和ケアの専門家はそうした責任を担うべきではない。

終末期の沈静と安楽死を同一視する誤解が広く見られるが、
緩和ケアの沈静は苦痛を取り除く目的で行われるものであり、
患者を殺す意図によるものではない。

いずれの国にせよ、安楽死や自殺幇助が合法化されれば
弱い立場にある人たちにプレッシャーがかかることになる。
また緩和ケアの軽視にも繋がる。

一度ドアを開ければ、社会全体が殺人を容認していくことになるだろう。

現代の医療には無用な延命や耐え難い苦痛に満ちた終末期への恐怖があり、
それが安楽死や自殺幇助の希望に繋がっている。

緩和ケアの専門家は安楽死や自殺幇助を推進する人たちと
オープンな議論を行い、一人ひとりの意思を尊重することは大切であるが、
高齢者、死にゆく病者、弱い立場にある市民へのケアを提供する責任を
全ての社会がもう一度再確認することが大切である。


Euthanasia And Physician-assisted Suicide: Danger Of Pressure On Vulnerable Persons and The Devaluation Of Palliative Care Structure
Press release from European Association for Palliative Care
The Medical News Today, May 11, 2009
2009.05.12 / Top↑
Ramirezの薬物疑惑で、またぞろステロイド解禁せよの声。これはABC。副作用の危険を説く医師らに対して、一人「健康被害も副作用もでっち上げ」と主張し続けるのは、Ashley事件のマスターマインドと私が考えているNorman Fost。Fost 自身は頭痛薬すら飲まないというのに。このビデオ、あきれ果てつつ、つい最後まで見てしまった。「ステロイドが100%安全じゃないのは事実。でも、薬に副作用は付き物じゃないか。リスクというならジャンクフードだってアルコールだって同じなのに、どうしてステロイドだけに目くじら立てる? 自分の体なんだから自分の勝手じゃないか」と、番組キャスターもボディービルダーも息巻いている。で、番組のスポンサーはもちろん製薬会社。
http://abcnews.go.com/2020/Stossel/story?id=7517412&page=1

平均収入ライン以下で暮らす子どもたちの数は「減らす」との英国政府の掛け声にもかかわらず、ここ10年でほとんど減少していない。政府は本気で取り組んでいない、との批判。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/149440.php

子どもの人身売買組織が英国をターゲットにしている。保護施設からも港からも運び出しやすい、と。去年5月30日のエントリーで取り上げた記事でも、英国の空港や港周辺の保護施設から外国籍の子どもたちが400人も行方不明になって問題となっていた。関係者が関与していないと、こんなことが起こるはずがないのに。子どもの売買が広がっている。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/may/10/child-trafficking-protection-laws

オーストラリア2011年から新しい育児休暇制度を実施。主たる介護者に18週間までの育児休暇。連邦政府の最低賃金と同じ金額が保障される。
http://www.canberratimes.com.au:80/news/national/national/general/long-gestation-paid-parental-leave-from-2011/1509233.aspx?src=enews

オバマ大統領は選挙公約で障害児教育予算を確保すると謳っていたはずなのに、今回公になった初の予算で教育関連予算が2.8%アップしたのにも関わらず、障害児教育の予算は上がっていない、公約を守る気があるのかとの批判が出ている。
http://www.patriciaebauer.com/2009/05/09/idea-funding/
2009.05.12 / Top↑
8日のエントリーオーストラリアのDr. Death、安楽死のワークショップのため英国へで取り上げた
Dr. DeathによるBournemouthでのワークショップに聴衆が約100人集まった。

ワークショップの対象者は50歳以上または重病のある人限定。

Nitschke医師はBournemouthには退職後の高齢者人口が多いことを意識したうえで、

ヘリウム自殺用の exit bag (頭にかぶる袋)や
メキシコで買える薬物や「Peaceful Pills(安らかに死ぬためのピル?)」などの
「Do It Yourself 自殺キット」を紹介。

致死薬を自動的に注射する装置によって自分が幇助したケースのことを話し、
ガンで自殺した人たちの生前のメッセージビデオを見せた。

Exit International の会員になっているのは健康な中高年で
選択肢があることを望んでいるだけという人が多いと主張し、

現在の法律で自殺幇助が懲役刑になることの不合理を訴えた。



「重い病気や障害のある人は死んでもいいんですよ」という巧妙かつ壮大な催眠術作戦が
まるで野火のように世界中に広がっていく──。
2009.05.11 / Top↑
1月にBBCが放送したドラマ A Short Stay in Switzerlandは
ターミナルな状態の人がスイスのDignitasへ行って自殺するという内容。

多発性硬化症のAngela Harrisonさん(44)は
ドラマが放送された夜にparacetamol他の薬を大量に飲んだ。
病院に運ばれたものの2日後に死亡。

日ごろから子どもたちに
重症化してまったく動けなくなる前に自殺したいと話してはいたが
自殺を図る数日前には休暇にクルーズを楽しむ計画を立ててもいて、
このドラマを見たことがきっかけになったと家族は考えている。

Huntingdonの法廷でヒアリング調査が行われた。

2009.05.11 / Top↑
NY Times が母の日を期して
5人のコラムニストの「途上国の母たちをもっと幸福にするための提言」を掲載。

そのうちの1つのタイトルが A Dose of Care。
a doseとは薬の一服なので「一服のケア」。
「必要なのは、ちょっとしたケア」というニュアンス?

ただし、ここの care とは、
いわゆる医療や介護のケアではなくて、いわゆる「お世話」でもなくて、
カウンセリングのことなので、多分、心のケアであり
「心にかける」「気にかかる」「気遣い」……などの
ニュアンスではないかと思うのですが。

で、コラムの内容としては、

米国は発展途上国に莫大な食糧支援をしていて、

支援経済学者たちも、
途上国の子どもたちの栄養不良の問題には
食料を届ければ対処できると考えているが、

実際には政情不安や貧困でトラウマを抱えた母親が
精神的に子どもとのアタッチメントを作れないことに問題があるので、

母親の心のケアをして
抱いてあやしたり、食事の世話をするなどの基本的な育児のテクニックを教えなければ
子どもの栄養不良の問題は解決しない。

ユニセフもWHOも最近では
食糧支援においてカウンセリングを重要視している。

途上国の栄養不良の子どもたちには、
ただ食料と医薬品があればいいのではない。

彼らに必要なのは愛情。

彼らを育むためには、
彼らの命を担う母親を育む必要がある。

A Dose of Care
The NY Times, May 9, 2009

ちなみに、5本のコラムはこちらから。


もちろん、ここで必要だと訴えられているカウンセリングとは
ただ「こうやって抱くんですよ」とか「こうやってミルクをやって」と
テクニックを指導し教え教育することだけではなく、

自分自身、傷つき、トラウマや多くの問題を抱えて
子どもどころではないところに追い詰められている母親の
心のケアをすることなんだろうな……と考えていたら、

これはきっと育児一般や障害児・者、高齢者の介護にも通じる、
ものすごく本質的で鋭い指摘なんじゃないのか……と思えてきた。

これは私が娘の療育を通じて
日本の専門家の「支援」にずっと感じてきた不満なのですが、

「教育」して「正しい知識と技術」を教えれば、
できるはずだと思われているところがあって、
だから「正しい知識と技術」を「指導」し「教育」することが
すなわち「支援」なのだと
どこかで思い込まれているみたいで、

だから「支援」というと、やたら「教室」や「講座」や「相談」が並ぶ。

でも育児や介護の困難や問題は
ただ単純に知識や技術がないために起こっているわけではなく、

(そういう問題もないわけではないけれど、
ちょっと教えてもらったら知識や技術で解決する程度の問題は
もともと大した問題のうちに入らないような気もするし)

むしろ、もっとずっと本質的なところにある問題が
いくら知識や技術を指導・教育してもらっても
とてもじゃないけど使いこなすどころじゃない……といった状況を作っているのだとしたら、

ここでもまた、案外に盲点になっているのが
実は心のケアという「支援」なんじゃないのかな、と。

ここのところを上手く説明するのが難しいので、いつも悶々としているのだけど、

たとえば、
ここで書いてみたようなこととか、
ここで書いてみたようなこと、とか。
2009.05.10 / Top↑
世界中の子どもたちの死因の第1位は肺炎。
(第2位は下痢。)

毎年、世界中で200万人以上の子どもたちが肺炎で死んでいる。
これは、エイズ、マラリア、はしかで死ぬ子どもの数を合わせたよりも多い。

エイズやマラリアは撲滅運動が活発に行われ
活動家らから欧米先進国の政府にプレッシャーがかかって資金も集まるが、
肺炎で死ぬ子どもを減らそうという声はなかなか上がってこなかった。

アフリカやアジアの貧困国で
1人の子どもの肺炎を治療するのに必要な抗生物質には
たった27セントしかかからないというのに。

しかし、先月やっと Save the Children他のアドボケイトが動き、
11月2日を世界肺炎デイとすることに決まった、とのこと。

また Hedge Funds vs. Malaria というアドボカシー団体が
名称を Hedge Funds vs. Malaria and Pneumonia に変更。

エイズやマラリアの子どもたちには既にアドボケイトがいる。
肺炎の子どもたちにも、やっとここにきてアドボケイトができたのだとすれば、
肺炎で死ぬ子どもたちが大幅に減るのでは、と、

コラムニストの Nicholas D KristofのOp-Ed。

The Killer No One Suspects
The NY Times, May 9, 2009


何年か前に医療ツーリズムを調べてみた時のことを思い出した。

欧米の富裕層をターゲットにしたインドの大都会の超豪華病院コングロマリットが
大当たり・大繁盛している一方で

インドの農村部の貧困層は簡単に治せるはずの下痢でばたばたと死んでいて、

さらに医療ツーリズムに力を入れて予算を投入しようとする政府に対して、
それよりも自国民の基本的な健康を守るほうが先だろう、と
一部の医師らから批判の声が上がっていたっけ……。
2009.05.10 / Top↑
インターネットやメールで首を吊って自殺するように他人をそそのかしていると英国の女性からミネソタの警察への通報を受けて、男性看護師が去年3月のカナダの女子大生の自殺に関与しているのではないかとミネソタ警察の協力のもと、カナダの警察が調査中だという、なんともややこしい話。また、このAP電を掲載しているのが台湾タイムズとくる。たぶん男性看護師がミネソタの人? あまりにややこしくて、ざっと読んだだけでは、よく分からなかった。ったく、ややこしい時代。
http://www.etaiwannews.com/etn/news_content.php?id=944068&lang=eng_news

米国の4月の失業率8,9%。悪化の度合いは緩やかになりつつあるものの。
http://www.nytimes.com/2009/05/09/business/economy/09jobs.html?th&emc=th

病院のフォローが悪いために退院した患者が再入院するケースが医療費を押し上げている一方で、よい医療を実践して再入院を減らした病院はメディケアの負担を軽減させているのに、それが報われないで逆に報酬が減る制度になっている、という矛盾。(これに近い話は、日本でも結構聞くような……。)
http://www.nytimes.com/2009/05/09/business/09relapse.html?_r=1&th&emc=th

英国で自殺ワークショップを続けるオーストラリアのDr. Death, Dr. Nitschkeに対して、長年の友人でthe Voluntary Euthanasia Societyの前会長のDr. Michael Irwinが、インターネットで買える薬を使った自殺方法を説明するなど、あまりにも無責任だと激しく批判。
http://www.telegraph.co.uk/health/healthnews/5299634/Suicide-expert-turns-on-Dr-Death.html

低賃金で働き続けるホームヘルパーへの密着取材。お金だけではない、その仕事のやりがい。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/05/01/AR2009050101793.html

教師志望の学生の中でspecial education障害児教育を志望する者が少なく、また教育畑の中で教師の転職率が一番高いのも障害児教育。結果的に、特別教育の生徒たちは適正な資格がない教師や未経験の教師に教えられる確率が、それ以外のクラスの子たちより高い

(今とは現場の状況がずいぶん違う、ずっと昔のことだけど、障害児の親の本音を聞きたいと中学校教頭会にお招きいただいた際に、「管理職にとって胃潰瘍の原因になるような先生方が養護学校や特殊教育のクラスに追いやられている実態があるとしたら、現場管理職である先生方ご自身が障害のある子どもたちを差別していることにならないか」みたいなことをしゃべったら、痛いところを突かれたという顔でうなずいた人も多かったのに、中の1人に「そんなことを言ってはいけません。じゃぁ養護学校や特殊教育クラスの先生方は劣っているのかということになり、養護学校の先生方に失礼です」と諌められたのを思い出した。そういえば帰り際にも「辛らつなお話を誠にありがとうございました」と言われたな。)

2009.05.09 / Top↑


米国コロラド州デンバーのアーティスト David Foox さんの作品。
記事は英国のDaily Telegraph紙
2009.05.09 / Top↑
ウィーンで開かれたEU緩和ケア専門医会議で、ターミナルな患者の苦痛を緩和する良質な医療が行われれば自殺幇助は無用になる、だからヨーロッパにおける緩和医療の改善を、と。
http://www.monstersandcritics.com/news/health/news/article_1475865.php/European_medics_seek_to_fight_assisted_suicide_with_palliative_care_

Guardianに毎日その日24時間に地球のあちこちで撮られた写真がまとめられるページがあって、最近よく覗いている。これは4月のフォト・コンペティション。「うぉ」って写真の連続。「地球って本当にあって、本当に地球には人がいるんだなぁ……」と、当たり前のことを実感する。いつも、なぜか「世界には」じゃなくて「地球には」という感じがする。
http://www.guardian.co.uk/travel/gallery/2009/apr/23/photography?picture=346707475

2005年の総選挙からの3年間で貧困層の収入が減り、富裕層の収入がアップして、英国の貧富の格差は60年代以降で最大に。
http://www.guardian.co.uk/society/2009/may/08/poverty-equality-britain-incomes-poor

国際助産師デイ……なるものがあった。今年は、たぶん昨日だった? 
http://www.medicalnewstoday.com:80/articles/149256.php
2009.05.08 / Top↑
オーストラリアでDr. Death と異名をとる Dr. Philip Nitschke。

オーストラリアのノーザンテリトリーが自発的安楽死を合法化した1996年に
世界で初めて、致死薬の注射によって4人を死なせた人物。

その数ヵ月後に、その法律はオーストラリア連邦政府によって覆されたが

Nitschke医師は Exit International という団体を作り、
自殺幇助の合法化を説いている。

自分で薬を飲んで自殺するのは別に違法でもなんでもないのに
その薬を誰かが本人に代わって手に入れてやったら違法だというのは
法律そのものがおかしい、と主張しており、

自身のホームページでも、
英国でのワークショップでは
ヘリウムと窒素を使った自殺の方法について話す、などと書いている。

ヒースロー空港に着いた際には予定されたワークショップの内容をめぐって
9時間も内務省とすったもんだがあった末に、やっと入国を認められたが、

今日金曜日にもStroudで安楽死について講演を行う。

Stroud選出の議員は木曜日に議会で
公然と法律を破れとけしかけているような人物を入国させるとはいかがなものか、と。

今回Stroudのほかにも
Bounemouth、Brighton, Glasgowでワークショップが予定されている。

どうやら去年もBounemouthで同医師の講演が企画されたことがあったが
彼の主催する国際組織 Exit International が
Bournemouthをターゲットにしたのは「高齢者が多いから」と
サイトに書き込んだために、

Bournemouthの地方政府がその集まりを中止させた……という、いきさつも。

Suicide doctor allowed into UK for latest tour
The Christian Institute, May 5, 2009

2009.05.08 / Top↑